DESCRIPTION
前編はこちら https://moke.fanbox.cc/posts/1641459
森谷さんの同人誌クライウルフシリーズの二次創作小説です。
良ければ原作に目を通してから読んで下さい。
Crywolf①
https://www.digiket.com/work/show/_data/ID=ITM0098263/
Crywolf②
https://www.digiket.com/work/show/_data/ID=ITM0100814/
Crywolf③
https://www.digiket.com/work/show/_data/ID=ITM0151509/
Crywolf④
https://www.digiket.com/work/show/_data/ID=ITM0172625/
Crywolf⑤
https://www.digiket.com/work/show/_data/ID=ITM0209735/
Crywolf⑥
https://www.digiket.com/work/show/_data/ID=ITM0209736/
Crywolf⑦
https://www.digiket.com/work/show/_data/ID=ITM0209737/
2.
額から外れ落ちたマスクが、からんと乾いた音を発する。
硬い床に手をついて、跪くように蹲りながら目を見開く。今まで自分を包んでいた景色が霧散し、溶け果て、腐臭を放つ肉塊と半ば一体化したスーツを身につけた姿で、俺はここにいた。
「お、え゛ぇ……ッ」
体が鉛のように重い。立ち上がることすらも出来なかった。気を失いそうなほどの激しい耳鳴りがする。こみ上げる吐き気を抑えられずに胃液が喉の奥から溢れて、びちゃびちゃと音を立てた。
苦痛、恐怖、焦燥、不安、今までずっと忘れ去っていたあらゆる不快感が、頭の中で、胸の奥で、嵐のように渦巻いている。
なんだ。これは一体なんなんだ。分からない。一体何が起こった。乱交部屋で一晩中肌を重ねていた男たちはどこに行った。逞しい腕で俺を抱いてくれていた父さんはどこにいる。
少しでもこの場所の手がかりを得ようと、混乱した頭をフル回転させて記憶を辿る。なにか、きっとなにかがあったはず。この状況へと至るまでのきっかけが、状況を理解するためのヒントが、どこかに存在するはずだ。
「……」
……震える手を覆う銀色の手袋も、体を包むスーツも、今ではコスプレセックスのためにたまに使うぐらいで、身に纏うのは随分と久しぶりな気がした。
「うそ、だ……」
強烈な違和感があった。焦燥を取り繕う余裕すらも失せた震え声で呟きながら、俺は目を見開く。
「ありえ、ない……っ」
俺は深く、深く、憶えている限りの記憶を遡る。父さんと二人、街中のあらゆる場所で、名も知らぬ行きずりの男たちと性行為を繰り返す日々を。
毎日のようにケツにちんぽを突き挿れられて、雄の欲望を受け止めて、その悦びに酔いしれて、ガバガバになったケツ穴を父さんと二人クンニし合いながらザーメンをすすって……。
「――ッ」
おかしい。奇妙だ。ありえない。俺はそんな生活を一体何日、何十日、……いや何年に渡って――。
季節は移ろわず、加齢もせず、不都合なことは何一つとして起こらない停滞した世界の中に閉じ込められながら、俺は何の疑問も持たず与えられる快楽を享受し幸福さえ感じていた。
「あ、あぁ……、ああああああああああああああッ」
フィストファックをされて拳で前立腺を押しつぶされたとき以上の絶叫が、いっぱいに開いた口から溢れ出す。
地面に体を横たえ、両手で頭を抑えながら瀕死の獣のように体を丸める。
嘘だ。こんなものは嘘だ。現実ではない。全ては夢で、じきに父さんの腕の中で目を覚ます。父さんは怯える俺を安心させようと熱いキスをしてくれて、悪夢など忘れてしまうほどの激しいピストンで慰めてくれる――。
「ちがう、ちがう、チガウ……!」
溢れ出す涙を止めることが出来なかった。何が起こったのか、どこにいるのか、これからどうなるのか、そんなことはもう思考の外だった。
ただ自分を守るための言い訳に頭を回転さ、そしてそうするほどに性行為の快楽のみで構成された日常の不自然さと、その世界に組み込まれ、恭順し、順応してしまった自分の色狂いと成り果てた思考回路が浮き彫りになる。
……意図的に視野を狭めていた、思考の檻が消えていた。今の俺はありえないことを、ありえないと気づけてしまう。
その意味が分からぬほどの馬鹿になりたかった。今からでも地面に頭を打ち付け、この頭蓋骨を砕いてしまえば、そうなれるだろうか。そう本気で考えてしまう。
「覚めろ……、覚めてくれ……っ」
もうとっくに気づいているのに、俺はさんざん焦らされたあとに挿入をせがむとき以上の必死さで虚ろな言葉を繰り返す。
こみ上げる胃液で喉がチリチリと焼けていた。気を失いそうなほどの頭痛が続いている。目を背けても、耳をふさいでも、これが現実なのだと五感の全てが訴えかけてくる。
「あ、あぁぁ……ッ、……っ」
俺は子供のように啜り泣いていた。幸せな夢は覚めてしまったのだという悲しみに打ち震えて。
あのままずっと夢を見ていたかったという、自分が男狂いの淫売へと変わり果ててしまったという事実をこれ以上なく示す願望を抱えながら。
自分を奮い立たせるための怒りや復讐心の元となるような記憶は、淫蕩という麻薬にどっぷり浸かりながら過ごした年月によって遠く押し流され、色褪せてしまった。記憶と経験が人格を形作るのならば、俺はもう、かつての俺ではなくなってしまったのだ。
「……」
やがて涙は止まる。あとに残ったのは、途方も無い喪失感と絶望だけだった。
夢は終わり、俺は身動き一つすら出来ぬまま体を横たえるのみだった。
ただ一つ父さんのことだけは気がかりだったが、そのために奮い立つことも出来ない。今の俺を見られるのも、同様に変わり果てた父さんを見るのも、怖かった。
脱出を試みることすらせずに俺はただ横たわって、か細い呼吸を繰り返す。そのままどれだけの時間が経ったのか、自動ドアの開く音が聞こえた。
「どうも、お久しぶりですねルイくん」
やけに癇に障る声。だが、言葉通り俺にとってはその声を聞いたのも遠い昔だ。怒りに任せ殴りかかるどころか、顔を上げてそちらを見る気すらも起きなかった。
母親の敵を討つために戦い続けたことも、その戦いが俺の敗北で終わったことも、もうおぼろげにしか思い出せない。……ああやはり、俺は変わってしまった。
「おやおや、これはまた随分と消沈なされている様子。あまりの痛ましさに私も胸が張り裂けそうですよ」
内容とは裏腹に嘲りの感情を隠しもしない声色で紡がれる労りの言葉。声の主は数人分の足音を伴いながら近づいてくる。
返事をする気にもならない。身を守ろうという思いすらも湧いてこない。
心にあるのは、今や自らの大半を占めていた偽りの幸福を奪われたことへの喪失感からくる、絶望だけ。
「聞いてんのかオイ」
「……っ」
野太い男の声とともに、どすどすと、ひときわ下品で大きな足音がこちらへと近づいてくる。
太くゴツゴツとした手が俺の頭を掴んで脱力した体を持ち上げた。
俺の顔を覗き込んでくる、小汚い豚獣人の大男。その体から漂ってくる雄の芳香を吸い込みながら、きゅんと尻の穴が疼くのを感じた。
「あー、こりゃダメっすわ。シャブづけで一晩中輪姦したあとの女だって、こんな腑抜けた顔はしてねぇや」
「彼ならばもしやとも考えていましたが、思っていたより普通の子だったようですね。追いかけている間はどんなに魅力的に見えていた相手も、手に入れば魔法は解けてしまう。得てしてそういうものと分かってはいますが、こうして夢のない現実を突き付けられるのは寂しいばかりですね」
「だってよ? 負け犬。まあ俺はこう見えて優しい男だから、穴の具合さえ良けりゃマグロでも文句は言わねぇでおいてやるよ」
男たちの会話はもう頭に入ってこなかった。この匂いを俺は知っている。この無情な現実で目にし、感じた、どんなものよりも強く憶えている。
冷え切っていた体の奥に、微かな熱が燻りだしていた。下卑た薄ら笑いを浮かべる豚の顔を見ているだけで、雄膣で憶えた太く硬い肉棒の形を、ありありと思い出せてしまう。
息が荒くなる。鼓動が高鳴る。尻の奥が熱くてたまらない。じぃんと疼いて、粘膜から腸液が溢れ出して、堕落しきった体は雄を受け入れるための準備を勝手に始めてしまう。
「お、おう……?」
豚が困惑した様子で首を傾げていた。さっきまで絶望に支配され生きる屍も同然の姿を晒していた男が、今や誰の目にも明らかなほどに発情しだしたのだから、それも当然かもしれない。
しかし、そんなことはもうどうでもいい。俺の頭にあるのは、どうやってこの男を誘惑し淫乱ケツマンコにちんぽをハメてもらえるのか、それだけだ。
「ああ、そう言えば彼に見せた夢の中には、あなたをモデルにした竿役もいましたからね。……つまり失ったはずの夢のカケラとこうして再会できたわけですよ。ふふ、なんてロマンチックな。安いメロドラマのようでツボに入っちゃいそうです」
下半身に血液が流れ込む。固く勃起した雄の形がスーツに浮き出て、俺はそれを豚へと見せつけるように、足を広げながら膝立ちになった。
ハッテン場で目についた雄を誘うときのように、自分がどれだけ興奮しているかを見せつけながら、熱の籠もった視線を豚へと向ける。
変わり果てた自分の姿を晒すことへの葛藤も、自分、そして肉親を捕え辱めた相手に強靭を示すことへの後ろめたさも頭になかった。
それは絶望の中に差し込んだ光へと必死に手を伸ばす行為。どうしようもなく変わり果ててしまった俺にできるのは、こうして救いを求めることだけだった。
「へーえ……」
俺を見る豚の表情が変わる。じっとりと絡みつくような視線。獣慾で濁り淫らな熱を孕む、俺の最も欲する視線。
「はっ、はっ、はっ……」
俺の顔から豚の手が離れてゆく。男の股ぐらがゆっくりと膨らんでいき、ズボンの上から形が分かるほどの盛り上がりを作り始めていた。俺は食い入るようにその膨らみを見つめながら、発情した犬のような息遣いを漏らす。
スーツの展開をオフにして火照った裸と先走りを垂らす肉棒を見せつけながら、ストリッパーのバイトで憶えた扇状的な動作で腰をくねらせ、フェラのテクニックを見せつけるように舌を動かしてみせた。
豚はズボンの上から自らの股間を弄りつつ、遠い過去に見覚えのある継ぎ接ぎだらけの異形のヤギへと顔を向ける。ヤギは豚ではなく俺を焦らしているかのように、わざとらしく顎に手を当てて思案顔を浮かべてから、ゆっくりと頷いた。
「そんなに欲しいなら、仕方ねぇな……」
了承を得た豚は、べろりと舌なめずりをしながら、ズボンの金具へと手を伸ばした。俺は固唾を呑んでそれを見守る。
丸太のように太い太ももからズボンがずり落ちてゆく。露わになるのは、使い込まれ赤黒く色づいた巨根。俺の知るものと寸分の違いもない、お気に入りのちんぽだった。
どのような体位でそれを受け入れれば一番気持ちの良い場所を突いてもらえるか、どのようなリズムの腰使いをすればこの男のピストンと呼吸を合わせられるのか、俺はもう全て知っている。
「とりあえず自慢の舌使い、見せてくれよ」
「は、い……っ」
俺は尻尾を振りながら頷く。豚の眼前に跪いて、ちんぽにこびり着いた恥垢の匂い、汗と小便、そしてザーメンの残り香が入り混じる雄の芳香を深く吸い込んだ。
特濃の精液を溜め込んでいるずっしりとした玉袋を舐め上げ、イカ臭いちんぽにこびり着いた恥垢の味を堪能し、鈴口から溢れ出す塩辛い先走りに舌鼓を討つ。
この瞬間だけ、俺は元いた場所へと帰ることが出来ていた。あの幸せな夢の中、俺の故郷とも言える場所に。
「……ッ、すっげぇな。閉経しても風俗嬢やってるようなクソババアみてぇ」
「んンッ!?」
牙を立てぬように気をつけながら肉棒を咥え込み、喉奥で亀頭を締め付けながら竿へと長い舌を絡め、顔を前後に動かす。豚は快感に身震いをしながらその技巧を称賛し、太い手で俺の頭を鷲掴みにした
「ん゛ッ、じゅっ、は、あ――ッ」
頭を掴まれながら乱暴に前後へと動かされる。先走りを垂れ流す亀頭が、喉奥を貫いて更に深くへと叩き込まれる。
俺の喉に肉棒の形が浮かび上がるほどの、深く激しいイラマチオ。呼吸もままならぬほどに喉を蹂躙され、オナホ同然の存在として快楽を得るための道具として支配される感覚。それを再び味わうことが出来たという事実に、俺は涙が溢れそうなほどの悦びを感じていた。
……ああ早く、このピストンをケツマンコで受け止めたい。濃厚なザーメンで腹の中をいっぱいにしてもらいたい。
ごりゅっと喉を抉られるたび、ケツの奥がじんじん疼いて、穴がヒクついてたまらない。我慢などできるはずもなくて、右手でケツ穴をいじりながら腰を前後に動かし、豚の足元に先走りを撒き散らしてしまう。
豚ちんぽから香る雄の匂いが鼻腔を満たして、喉と一緒に脳みそまでぶち犯されてるみたいだ。
もっと、もっとと、下品に音を立てて豚ちんぽに吸い付きながら腰をくねらせる。指だけじゃ足りない。早くこれが欲しい。早く、早く……っ!
「やっべ……ッ」
――びゅるううううううううううううう!
喉へと叩きつけられるように、ザーメンが迸る。俺は言われるまでもなく、喉を鳴らしながらそれを嚥下していた。
豚の濃厚な精子が喉に絡みつく。精虫が喉で跳ね回っている様が感じられるような気がして、雌の役目を果たしているという悦びが胸に満ちていくのを感じた。
「はっ、んんっ、じゅる……ッ」
ぬらぬらと艶めく竿を丹念に舐め上げ、尿道に残るザーメンを吸い上げ、異臭を放つ雄竿に頬ずりをして、その匂いが毛皮に染み込んでいく事に興奮を感じる。
この淫らなメス犬が今の俺だった。物を知らない、短慮で無鉄砲なクソガキの、行末だった。
「こっちも、ちんぽ欲しくて、我慢でき、ない……っ」
豚ちんぽをマズルの上に乗せてその熱と重みを感じながら豚の顔を見上げ、とろとろと腸液の溢れ出すケツ穴に突っ込んだ指を動かしぐちゅぐちゅと音を鳴らしてみせる。
もう準備は万全だ。慣らす必要なんてなく、いつでもこのくせぇちんぽを根本まで受け入れられる。
だから早く、お願いだから早く、その想いを込めた熱い視線を豚へと向けた。
「へぇー……?」
「ふ、ンん……ッ!?」
ぺちん、ぺちんと、豚は唾液でぬらぬらと光沢する肉棒を揺らして俺の頬を打つ。ザーメン混じりの先走りを垂らす先端を、鼻先へとぐりぐり押し付けてくる。
この男の知る俺と、今の俺。その二つがどれほどまでに乖離してしまったのかを確認する、ねちっこい焦らしプレイ。
そんな事するまでもなく、かつての俺はとっくに消えているのに。目の前の愛しいちんぽを害そうという考えすら浮かんで来ないというのに。
俺は仕方無しに、しゃがんだままの姿勢で深く腰を落として、指先で自分の一番感じるところを捏ね回す。
ぐちゅっ、じゅちゅっ、俺の尻から漏れる湿った音だけが室内に響いている。溢れ出した腸液が糸を引きながら床へと垂れていく。
男の臭いちんぽから溢れ出す先走りを鼻から啜ると、たまらない雄の匂いが鼻腔を満たし、セックスの前にハーブを吸うとき以上の酩酊感が体を包んだ。
「ちんぽ、頼むから……っ、挿れてくれないと、気が、狂いそうに、なる……っ」
仰向けに寝そべって股を開き、とろとろと腸液を溢れさせる雌穴を見せつけながら、息も絶え絶えに叫ぶ。もうちんぽを突っ込んでくれるなら誰でも良かった。
指と変わらない太さの雑魚ちんぽしか持たない童貞のクソガキだって、ザーメンと一緒に魂まで抜けそうな死にかけの爺さんだって、それこそそこらを歩いている浮浪者や野良犬だろうが、ケツの穴にちんこを突っ込んでくれるなら全力で奉仕する。
全ての葛藤が頭から消えて、ただ一本のちんぽを恵んでもらうことだけが、俺の望む全てになろうとしていた。……俺の記憶の大部分を占める、それのみに。
「そんなに欲しがられちゃ、応えてやらねぇと悪ぃ気してくんな。仕方ねぇ……」
「あひっ、あ、ありがとう、ございます……ッ」
歓喜に口角を釣り上げた狼の口から出てくるのは、心底からの感謝の言葉。雄狂いの淫売が、今や水や空気と同じレベルで欲しているモノを恵んでもらえることの有り難さに、目の前の男に対して恋にも似た胸の高鳴りさえ抱いていた。
汗ばんだ巨体で体を押し潰される。汁塗れになった腸壁を見せつけるように口を開けた淫門へとあてがわれる剛直。幸せを感じるために必要なものが、これで揃ってしまっていた。
「おらっ」
「お゛ォォん――ッ!?」
開いた太ももを両手で抱えられながら、強烈に腰をぶつけられる。衝撃に背筋が反り返って腰が浮いてしまう
太い胴体に足を絡めて、もっと深くへ肉棒を受け入れようと腰を押し付けるのを止められない。痺れるような腰から背骨へと駆け抜けていって、豚の腹に押しつぶされた自身の雄からはぴゅるぴゅるとザーメンが溢れ出す。
浮いたままの腰がガクガク震えると同時に、頭に浮かぶのはこれが本当のセックスであるという事実だった。
幸せな夢の中で繰り返していたおままごととは違う、体を乗っ取られ意のままに動く操り人形となって強制されたときとも違う、自らの意思と肉体で味わう本当の性行為。
「あぁっ、あっ、ふと、あつ……っ」
悪の手に堕ち、夢の中に囚われ、その中で味わった全ての集大成とさえ感じる。俺はこの肉棒に犯されるために、産まれ落ちたのかもしれない。
そう思えてしまうほどの、快楽と充足感。ああもっと、この雄竿を何回も何回も打ち付けて、俺の全てを犯し尽くしてくれ。濃厚な豚ザーメンを腹の中にぶちまけて、俺が何のために産まれてきたかを分からせてくれ。
さあ、もっと――。
「なぁ、メス犬よお」
「……?」
だが、雌の体を貪る激しいピストンは始まらず、豚はニヤニヤと笑いながらこちらを見下ろしてくるのみだった。
繋がったまま豚が上半身を起こしてゆく。腹の中でちんぽが角度を変えて、腹筋を内側から押し上げるようになっていた。
「は――ッ、ひぃっ、んっ、あ……ッ!?」
硬い腹筋とちんぽが腸壁を隔ててごりゅごりゅ擦れている。豚のちんぽを支点にして腰が浮き上がって、重力に支配された体により深く肉棒が入ってくる。
「テメェがこれからどんな目に遭うか分かるか? あァ?」
「ひっ、ひんぽっ、ひんぽいっぱいっ、奉仕っ、しましゅっ!」
「あー、惜しいなー。もちろんそれもするけど、ついでなんだよな」
自ら腰を動かして快楽を貪っている俺を見下ろしながら、豚はちんぽの形が浮き出た腹筋へと手を伸ばしてくる。
腹筋の割れ目を太い指がなぞり、俺は直接的な快楽に繋がらない焦らすような刺激に身悶えしながら甘い声を上げる。
「テメェの親父がようやく折れて、上の人らが知りてぇこと全部引き出せるようになったんだよ。てめぇらの力の源がどうやって動いてんのか、どう利用できんのか、どうやって増やせんのか――」
「――そこからは、私が説明しよう。君は番いとして、穴の具合を楽しんでいてくれ」
誰よりも深く記憶に刻まれた声が、豚の言葉を遮った。低く、穏やかで、俺を心の底から安心させてくれるたった一人の肉親の声。
「とう、さ――ッ、あっ、ひィっ!?」
俺の言葉を待たずして、豚がピストンを開始する。結合部から愛液を飛び散らせながら、胎内を抉る激しい抽送。さっきまで俺が望んでやまなかったそれだが、今はもうそれのみに集中することが出来なかった。
父さんが、見慣れた痴態を晒す俺を見つめながらこちらへと歩み寄ってくる。研究者を思わせる白衣を着て、俺の見たこともないような冷たい表情をしながら。
「あっ、お、おれぇ、とう、さんと……ッ」
叶うなら、夢から覚めて初めて体を重ねる相手は父さんが良かった。父さんの肉棒を胎内に感じながら、父子の愛を誓いたかった。
しかしそんな俺の願望を否定するように豚の剛直は俺のナカを蹂躙し、父さんは人が違ってしまったかのように冷たい目で俺を見下ろしている。
「さて、彼の話しの続きだが……」
肉棒で貫かれ淫らに喘ぎ腰を揺らす俺の姿に、父さんは何の感慨も抱いていない様子だった。少しの興奮すら見せぬまま傍らにしゃがみこんで、豚のちんぽに突き上げられて変形する俺の腹へと視線を向ける。
「結論から言うと、お前には組織のために子を産み続ける苗床になってもらう。かつての私は、息子であるお前が危険に晒されぬよう、多くの知識をあえて伝えずにいたが、そのせいで私が組織へと忠誠を誓った今、お前の価値はその体のみとなってしまった。ならば、お前にはその体で役立ってもらうしかない。
彼が満足すれば、すぐ手術へと向かう予定だ。まずは外性器を切除し、睾丸を元に卵巣を培養する。同じくお前の体組織から培養した胎盤とともに下腹部へと移植し、そこへ繋がる外性器も整形する。番いを満足させられる名器となるよう、膣の造形には私も全力を尽くすつもりだ」
激しいピストンで潮吹きさせられているちんぽを指しながら、父さんは顔色一つ変えずにそれを切り取ると言ってのける。
ゾッと背筋が冷えるような感覚が走った。これは俺の知る父さんではないと、その物腰だけで確信させられる。
淫らな夢の中でその価値観に染め上げられた俺とは何もかもが異質で、例えるのならば、宇宙人とさえ思えてしまうほどの隔たりがあった。
「おま、え、えぇ……っ、だ、だれ、だぁ……っ」
溢れ出す涙を堪えることも、ピストンを受けるたび溢れ出す嬌声を抑えることもできぬまま、俺は父さんの皮を被った何かへと問いかける。
……彼は一瞬だけキョトンとした表情を浮かべたあと、なにか納得したように小さくため息をついた。
「自分の姿を見てみろ。かつてのお前と今のお前はまるで別人だ。今の私と、お前の知る私との違いに驚く必要がどこにある。……単に、持ち主の望む役割を果たすため加工されただけ。心も、体も、記憶も、今や組織の所有物だ」
父さんは当たり前の事実を確認しているかのように、その事実に少しの疑問すら抱いている様子もなく、淡々と言葉を並べた。
そして白衣の胸ポケットへと右手を伸ばして、小指ほどの大きさをした鉄製のカプセルを取り出す。親指で小さく押されるとそれの蓋が開いて、暗い赤緑色をした半透明の球体が父さんの手のひらに転げ落ちる。
ほどなくすると、球体に渦巻状の亀裂が入り、細くうねるワームのような本来の姿を表した。
「そしてもうすぐ、思考すら自分のものでなくなる」
「なっ……!?」
父さんはワームの端を摘み上げてぶらぶらとさせながら、もう片方の手で俺の頭を押さえつけ体重をかけてくる。
生物のような動きと質感に反してその中心には光沢を放つ金属製の神経のようなものが通っている。
「私の頭に入っているのと同じものだ。脳へと神経網を伸ばした上で癒着し、精神活動の全てをモニタリングしながら管理者の好きなように制御するための受信機だよ」
「――っ!」
その口から告げられる言葉に、絶句するしか無かった。
父さんは今や人格までをも支配下に置かれた傀儡であること、そして自分もこれからそう成り果てるという事実。性行為による高揚でも埋められないほどの穴が胸に空いた心地だった。
俺はもう、一人なのだ。味方はもうどこにも居ない。俺の身を案じてくれる相手など存在しない。己を失い、ただの資源として消費し尽くされる。その絶望しか無い未来を恐れる感情すら、もうすぐ自分のものではなくなる。
「ひっ……!」
右目の瞼を指で固定され、涙で歪んだ視界の中で禍々しく蠢くワームが少しずつ近づいてくるのが分かる。
もがいて逃げようとしても、下半身は豚のちんぽを挿入されたまま両腕でホールドされ、顔は父さんの力で押さえ付けられ、どちらもびくともしない。
逃れる術はなかった。俺はただ恐怖に悲鳴を上げ、子供のように泣き叫び、体を震わせる。
そんな弱り果てた心を溶かすように、不意に懐かしい声が聞こえた。
「――泣くな、ルイ。ほら、良い子だから」
震える幼子を暖かく包み込んでくれるような、優しい声。遠い彼方となった幼少期の記憶が脳裏に浮かぶほどの。
俺と同じ色の瞳が、深い慈しみを込めてこちらを見下ろしいた。奪い取られた肉親が、この瞬間だけスイッチを切り替えたかのように、愛情深い父親としての姿を取り戻す。
「……う、ん」
体が弛緩する。恐怖に震える俺は、それこそ父さんが精神までも支配下に置かれている証左とも言うべき人格の切り替わりを無視して、暖かな言葉による安心を求めていた。
そして涙に濡れた眼球へと、ワームが触れる。
「――あぁああああっ!?」
蠢く異物が、眼球の横をすり抜けて頭の奥へと進んでくる。痛みを伴わずとも、その圧迫感と顔の奥を虫が這う不快感、そしてそれらから生じる恐怖は到底耐えられるものではなかった。
……怖い。怖い。怖い!
肛門を犯される興奮に膨らんでいた肉棒はすっかり萎えきって、玉袋は脳みそのごときシワを浮かべるほどに萎縮している。
右目から溢れる涙に薄っすらと血が滲む。脳を包む薄皮を食い破られ、シワの表面をワームが這っている。
「いや、いやだ……っ! あぁああっ、ああああぁあ゛あ゛っ!!」
わざわざこんなことをしなくたって、絶対に逆らわない。言われた通り体を改造されたって構わない。雌のように子を孕めと言うならその通りにする。
母を殺されたことも、父親を奪われたことも恨んだりしない。全部水に流す。諦めるから、二度と逆らわないから。
「……ッ、……っ」
全身が痙攣し始めていた。強烈な吐き気が込み上げると同時に、脳裏には走馬灯が浮かび上がる。
夢の中で幸せに過ごした日々も、それ以前の復讐に燃えるガキとして無謀に戦い続けた日々も、全てが鮮明に思い出すことができた。
「ごっ、ごべ、なざい……ッ」
震える舌で、俺は必死に謝罪の言葉を口にする。あの当時の出来事を鮮明に思い出したところで、浮かんでくる感情はもう後悔だけだった。
俺が間違っていた。滑稽にも復讐者を気取って、幼稚な鬱憤を晴らすために自分の身を危険に晒していた、馬鹿なガキだった。
あのときのことは謝る。もう二度と逆らわない。母親を殺されたのは運が悪かったんだと諦める。父親を奪われたのは自分の軽率な行いのせいだと納得する。
どんなに変わり果てた自分も受け入れる、望まれればどんな命令にも従う。……だからせめて、お願いだから、自分が自分であるということだけは、奪わないで。
人形になんてなりたくない。せめて、ヒトでいたい。それ以外はもう、何も望まないから。何を奪われてもいいから――。
「――っ、――っ!」
頭蓋骨の中で、何かが根を張っていく。激しい体の痙攣が少しずつ落ち着いていって、いつの間にか父さんは俺の顔から手を離して、俺を心配する素振りもなく涼しい顔で手元のタブレットを見つめていた。
俺は浅く早い呼吸を繰り返しながら、両手で頭を抱え汗ばんだ毛皮に爪を立てる。頭の中に指を入れて、その中を這う虫を掻き出してしまいたかった。
体の痙攣が少しずつ収まっていって、頭の内側に虫が這う違和感が和らいでいって、それこそが怖くて堪らない。
……もう間に合わないかもしれない、だがそれでも。そう考えながら、血涙を垂らす右目へと指を近づけてゆく。
たとえ取り出すことができなくとも、いっそ……。
「無駄だ」
「……!」
そんな俺の考えを見透かしたように、いや実際に手元のタブレットを通して確認しながら、父さんは言った。
「お前にはもう、それを行える自由はない」
眼球のすぐ近くまで迫った指先を、それ以上動かすことができなかった。まるで見えない壁に阻まれているかのように手の動きが止まって、同時に身の毛もよだつほどの恐怖が胸の内から湧き上がってくる。
己の全てを他者の支配下に置かれる事への恐怖を遥かに上回る、自害を行動に移したときの痛みと苦しみへの不安、恐れ。
自分が人形と成り果てたことを理解するには、それで十分だった。
「中々スムーズに思考の大部分を掌握できたようだ。私と違ってルイの受信機はアクセスポートを全て開放しているから、加速劣化試験も兼ねて好きなように操作してくれ」
「やっとかよ。……待たされた分、楽しませてもらうか」
父さんはもう、俺に視線を向けることすらなかった。指先ほどの大きさをした電子チップを豚へと見せ、そのこめかみへと貼り付ける。
豚はニタニタと下卑た笑みを浮かべながら、ぎょろりと俺を見つめる。新しい玩具を与えられた喜びが、男の表情に現れていた。
俺という人形でどんな遊びをするか、どのように愉しむか、瞳を爛々と輝かせながら思考する姿に、俺は恐怖しか――。
「よくも……っ」
怒りのみが、胸を満たしていた。
悪辣な罠に嵌められて敵の手に堕ち、いまやその体を下卑た豚に組み敷かれながら、汚い肉棒を尻の穴に突き挿れられている。
いや、その程度であれば、これほどの怒りは湧かない。何よりも俺の神経を逆撫でるのは、傍らに立ち俺の痴態を見下ろす父さんの姿だった。
俺を助け出そうと自らを危険に晒したせいで捕まり、父さんのみが知る秘密を引き出すために洗脳されてしまった、その痛ましい姿。
「っ、ゆる、さ、な……っ」
豚が勝ち誇った顔で俺を見下ろしながら、ピストン運動を再開する。背筋を駆け上る甘い刺激に耐えながら、俺は唸るように叫んでいた。
たった一人の肉親さえ奪われ、俺自身もこうして囚われながら慰み者にされている有様だが、この怒りは決して薄れない。
いつか、俺の牙を奴らの喉元へと突き立てる瞬間まで、俺は諦めない。だから、待っていてくれ父さん。俺が、救い出すから。
「ぷっ、や、やっべ、これ……っ」
「な、にが、おかしい……!」
そんな俺の顔を覗き込みながら、豚は堪えきれないと言った様子で笑い声を漏らす。
ばちゅん、ずちゅん、と水音を響かせて腰を打ち付けられながら、誰にも触れられた事のない体の一番奥を好き放題に蹂躙されながら、目の前の豚の表情に、俺は言い知れない不安を感じてしまう。
「おらっ」
「ひあっ、あ、あぁあああ……?」
豚が角度を変えながら大きく腰を動かして、前立腺を押し潰すように抉ってくる。その責めによって情けのない嬌声を引き出されてしまいながら、俺は同時に困惑の声を上げていた。
「あ、れ……っ?」
妙だった。どすん、と全体重をぶつけるような重たいピストンを受けてケツマンコをこね回されるたび、目の前の男への恭順の気持ちが湧いて来てしまう。
奪われ、貶められ、俺はその怒りを原動力に反撃の機会を伺っていたはず。犯されながら快感を感じてしまうこと自体が、俺にとって耐え難い屈辱だったはず。
なのに、なんで……。
「……んー?」
豚が黄ばんだ太い舌を出し、粘ついた唾液をそこから垂らしつつ、俺の顔を覗き込んでくる。
逞しい腕に抱かれて欲望をぶつけられながら、そんな熱の籠もった視線で見つめられてしまうと、正気で居られなくなってしまいそうだった。
俺はほとんど無意識のうちに口を開き、笑みを浮かべながら滴る唾液を自らの舌で受け止める。
「ん、ちゅ……、じゅう……っ」
あとはもう、胸から湧き上がる衝動だけが俺を支配していた。首を伸ばして、愛する男へと口づけをする。
分厚い舌を自らの口腔へと招き入れて唾液を啜りながら、相手の動きに合わせて腰を動かし、より深く俺のナカを感じてもらおうとしてしまう。
(なんで……)
こんな感情を抱くのは初めてだった。さっきまでの俺はあんなにも彼を憎み、蔑み、その喉へと牙を突き立てる事しか考えてなかったというのに、今この胸に芽生えているのは、それとは真逆の感情。
俺は気づいてしまったのだ。ただ一人の肉親すら奪われ、一人になってしまった俺へと寄り添い求めてくれるただ一人の相手。それが俺にとってどれだけの救いであるのか、どれほど大切な存在なのかを。
(ああ、俺……)
重たいピストンを受けるたび、天にも昇るほどの悦びが湧き上がってくる。
俺はその感情を噛みしめると同時に、洗脳され人格を変質させられた父さんから先刻語られた言葉を胸の内で繰り返していた。
(このヒトの、子を……)
俺はもうすぐ手術を受け、彼の子を孕むことのできる体へと作り変えられるのだ。愛した相手の精を受け止めて、その子を腹に宿すことができるだなんて、なんて幸せだろうか。
彼の太い首に両腕を回し、両脚を腰に絡める。閉じた瞼の裏で、膨らんだ腹を撫でる自らの姿を夢想する。それはなんて、なんて……。
「――っ!」
脳髄に電流が走った。俺はさっきまで忘れさせられていた全てを思い出す。
「はっ、あぁ……っ、あ……っ」
太い舌を慌てて吐き出す。口の中に生臭い唾液の味が広がっていて、さっきまでその臭気すらもが心地良いと感じていた事が信じられなかった。
俺はこの胸を覆う絶望と諦めを忘れさせながら、目の前の男を本気で憎み、怒りに震えながら犯される屈辱に悶え、そして愛させられた。
ふわふわと胸が浮ついて、甘酸っぱい感情が膨れ上がる感覚の残滓が、まだ頭の中に残っていて、その事に吐き気を覚える。
俺が感じる怒りも、愛すらも、全てはもう他者の手で好きに作り上げられたもの。いつ記憶を書き換えられ、俺ではない別の誰かにされてしまうかも分からない。それに気づくこともできない。
口の中が急速に乾いていく。こんなに激しく犯してもらっているのに、体の芯が深く冷え切っていくような心地だった。
「……っ、しま、す……」
「あぁ? 聞こえねぇぞカス」
恐怖で体が震える。舌が上手く動かなくて、男の機嫌を損ねてしまった。ああダメだ、また、また頭の中を弄られてしまう。もう嫌だ、もう二度とこんな想いしたくない。
「……お、おねがい、します。……口答えなんて、しません。……なんでも、言うことを聞きます、……だ、だから、もう……!」
もう嫌だ。もう何も信じることができなかった。今ある記憶は本当のものなのだろうか。傍らに立つ白衣の男は本当に俺の父親なのだろうか。俺は、俺なのだろうか。
全てが現実感を失い、虚空に放り出されたかのような心地だった。
「ぜ、全部忘れさせて、ください……っ!」
絞り出すように叫ぶ。この不安と恐怖から逃れる術は他になかった。
身の毛もよだつほどの悪意に晒され気が狂ってしまいそうなのに、でも狂ったところで救いにすらならないことを、俺はもう理解させられている。
俺にできるのは目の前の男に懇願することだけ。他者を踏みにじり、貪り、打ち捨てる事になんの呵責すらも抱かぬ、外道へと。
……これは、若さに任せた愚行への罰だろうか。だとすれば、あまりにも重く、残酷だ。
「あー、そうだなぁ……」
「んっ、あ……ッ」
豚が黄色い歯を見せてニヤつきながら腰をしゃくり上げる。Gスポットを突き上げられちんぽを裏側から押される快感に悶えながら、俺は続きの言葉を待った。
だが、返事はない。代わりに豚の両手が俺の腰を掴んで、本気のピストンを行う準備をしているのが伝わってきた。それを感じていると、こんな状況だと言うのにあの乱暴な腰使いで与えられる快感の記憶が呼び起こされて、下腹部が熱くなってしまう。
……それは俺が堕ちきった証なのか、それとも豚によって精神状態を操作された結果なのか、俺にはもう判別がつかなかった。
「……オラァっ!」
「ヒィッ、ぐ……っ!?」
ばちゅんと盛大な音を立てて、結合部から泡立った汁が飛び散る。腸壁をごりゅごりゅ抉られて甘い刺激に全身を痙攣させながら心に湧き上がるのは、こんな快楽を与えてくれる最愛の男性への感謝と深い恋慕の情。
「あっ、あぁ……ッ!?」
ちんぽにびったりと吸い付いたケツ穴を隆起させられながら雄竿を引き抜かれ、そして再び脳天までも衝撃が伝わってくるほど強烈に腰を打ち付けられる。
その衝撃がスイッチだった。さっきまで胸に抱いていた温かな情愛の余韻も残ってるうちから、燃え盛る炎の如き憎しみが溢れ出していた。
牙が砕けるかと思うほどにギリギリと歯を食いしばりながら、俺は目の前の男の顔を睨みつける。母を殺し、父を人形へと変え、こうして俺の体を貪る仇への憎しみが、俺の中で燃え上がっていた。
「ひぃ、あっ、あぁん……ッ」
やば、前立腺が潰れされている。これだ、このぶっといちんぽでぶち犯されて、S字の名残りもなくなるくらい雄膣真っ直ぐに強制されてオナホにされるのたまんねぇ。こんな気持ちいいことなんて他にない。
もっと犯してくれ。俺はこの快感を味わうために産まれてきた、根っからのメス犬だ。ちんぽをもらうためなら、差し出せるものは全て差し出すから、もっと……!
「――ッ、あ……っ」
嫌だ。もうちんぽ嫌だ。誰か助けて。父さん、なんで見てるだけで何もしてくれないんだ。息子がこんな悪党に組み伏せられて犯されているのに、こんなに苦しんでいるのに。ちんぽを裏側からぎゅううっと押し上げられるたび、背筋がゾクゾクするような感覚に震えが止まらなくなる。
誰か、お願いだから助けて。誰か、誰か――。
「あっ、あっ、あぁ……っ!?」
豚の荒々しいピストンで体を射抜かれるたび、記憶も感情も全てがころりと切り替わる。前に抱いていた感情の名残りと新しく吹き上げる強烈なそれが混ざり合って、一秒ごとに全てが別のものに変わっている。
頭が割れるように痛くて、頭の中で虫がのたうち回っていて、目に見える全てがチカチカと明滅を繰り返している。
嫌だ。痛い。怖い。気持ちいい。
好き。憎い。助けて。恐ろしい。父さん、どこ?
おれ、なにしているんだ。ああ、好き。愛してる。殺してやる。ケツ気持ちいい。
だれ? なに? イくの止まんない。俺はマゾ犬。おれが悪かったから。ぶっといちんぽ最高。もう許して。ああ幸せ。いっそ殺してください。
「そろそろぶっ放すぞ? 聞いてっかオイ」
「おっ、おおええ、おごおおお、えげぇええっ!」
愛してるやめろ抜けこれでやっと終わる? 好き好き好き好きなに? なに? もう死にたいあなたの子種で殺してくれ孕ませて殺すください。
あたまいたいなにもみえないこえがでないいきできないしんじゃうくらいすきゆるさないあいしてるとうさんどこおなかあついこわれる。
「おっ、おっ、おっ……! イくぞメス犬!」
――ごぽおおおおおおおおおっ!
あたまいたい。あたまいたい。あたまいたい。あたまいたい。あたまいたい。あたまいたい。
「おごえっ、へっ、げ、げ……っ、おっ、ひゅ――っ」
「お、おぉ……?」
なに、これ。なに、あ、あついいたいなにしぬマゾ犬のケツマンコ気持ちよかったですか? あたまいたいなにここどこちんぽちんぽ子供何人作ろうか殺す殺す殺す殺すころす父さん好き父さん父さん。
頭痛い死ぬ死にたい殺してお願いザー汁腹の中にいっぱい♡許さない抜かないでもっとメス犬メス犬旦那様ちんぽ汁子種助けてあたまわれるとうさんどこだきしめておれのせいでごめんおまえのせいだしね。
「あぁ、やはりこのペースで操作を繰り返すのは脳にもワームにも負荷が重すぎたようですね。加速劣化試験を兼ねてなんて言ってましたが、それにしたっていきなりアクセル踏み込みすぎでしょうに。――さてお父さま、技術部主任として息子さんの状態への対処法は?」
「意識が混線し血圧の上昇も止まらずワームの回路もこの情報量が過負荷になっているようです。放っておけばどちらも機能停止してしまうでしょう。今はOSが破損してしまったような状態ですし、一旦初期化してしまう他ないでしょう」
「なるほど。まあ肉体が生きていれば十分ですし、やってしまいなさい」
「はい」
なにとけるあへへあをあごのぐぇあがおいふぁおえいねおいごいうえわのいのあうぇぃのわえね――。
『コレ、モウオワッテンスカ?』
―――――。
『ミタカギリ、ケイレンモウワゴトモナクナッテマスネ。アジケナイデショウガコウキュウナラブドールトオモッテツカッテアゲナサイ』
――――――――――――。
『マ、ツラトガタイニケツアナノグアイモナカナカダシソウサセテモライマスワ』
―――――。
―――――――。
―――――――――――。
3.
地球という星は今、大陸全土を包む大都市の輝きに包まれ、栄華の限りを誇っていた。
かつてとある大学教授が当時の大企業と協力して発見し、実用化へと至った新エネルギーは、学者たちにエントロピーの法則を無視していると言わしめるほどの効率でエネルギー問題を解決し、科学技術にブレイクスルーを起こした。
エネルギーインフラは今や星中に張り巡らされ、人々はその力に支えられた生活を享受している。
……そしてここは、その光り輝く大都市の地下。かつてない繁栄を維持するための場所だった。
窓一つすらもない薄暗く狭苦しい部屋の中に、ゴウンゴウンと機械の駆動する音だけが一定の感覚で響き続けていた。
部屋の中央にあるのは、大小多くのチューブを繋がれながら脈動する肉塊。
その周囲には複数の機材や肉塊のバイタルを表示するディスプレイが並んでおり、そしてそこには臨月を告げる情報が表示されていた。
――pipi
アラートが鳴り響く。その数秒後、肉塊が大きく震え、風船のように膨らんだその腹部と思しき場所にぱっくりと亀裂が入る。……ぷしゅう、そんな音を立てながら羊水が溢れ出した。……肉塊ははらんでいた。
目を凝らせば、人としての形を失ったその姿の中に、かつての面影が残っている。
チューブから送られる栄養によって命を繋ぎ、血液の循環や老廃物の排出すら機械の補助によって行われ、栄養を分解するための一部の内蔵を除いて肺も心臓も消化器も消え失せほとんど肥大した子宮のみが残る胴体は見上げるほどに丸く膨んだ水風船と化して、その中に四肢や首は飲み込まれている。
ただ、口や鼻は退化して消え去り眼球も耳も失われた頭部だけが、僅かにそれと認識できるほど形を失いながら、突起としてかろうじてその名残りを残していた。
そのかつて一人の獣人であった名残りでしかない部位には今も脳髄が残って、肉塊の内から無尽蔵に生産され続けるルナティックエナジーを最も効率良く出力するべく、その精神状態を固定されたまま音も光もない世界に取り残されていた。
――……っ、……っ。
肉塊が、声も出せぬままに痙攣する。大きく口を開けた腹部から血液の混じる羊水とともに、異物が排出されていた。
「――、――ッ」
ソレが、肉塊の胎より伸びルナティックエナジーを通わせた臍の緒を引きずりながら、生物と思えぬ奇怪な産声を上げた。
母体から受け取ったエネルギーを蓄える卵黄嚢を抱えながらびちびちとのた打つその姿は、哺乳類よりも魚類、グロテスクな稚魚を連想させる。
かつて闇夜の中で孤独に戦い続けたヒーローの宿していた無尽蔵のエネルギー、それを蓄えまた自らも生産する器官を備えて産み落とされたその生物は、出産を察知して起動した収穫用のドローンによって臍の緒を断ち切られ、運ばれてゆく。
それら一つ一つが、生産と維持のコストに到底釣り合わぬ膨大なエネルギーを供給する金の卵と言えた。
そして、出産によっていくらか萎んだ肉塊から排出される胎盤。回収用ドローンの一機が、それを切り裂いて中に残った最後の赤児を拾い上げる。
「……ッ、あ、あぁぁああああああん!」
兄弟達とはまるで違う甲高い産声が響く。それは青みを帯びた毛皮に身を包む狼獣人の赤児であり、仔を孕み産み落とす機能だけを残す肉塊へと成り果てた男の、以前の姿と能力を引き継いだ予備、新たな生産プラントを作るための材料。
……かつて闇夜の中で戦い続けたヒーローは、気高い血筋に宿す無尽蔵の力で、今も無辜の人々の生活を守り続けているのだった。
終