「タケ、お前一中だったよな!?」
学校が終わった後、いつもたまり場にしているスクラップ工場の
事務所の一室で、先輩は俺に聞いてきた。
「そうっすけど…何か?」
「お前の学校でイチバン可愛い子誰よ?」
「えぇ…わかんないっすけど、2年では、この娘が人気っすね」
「写真ねぇの?見せてよ」
俺はスマホで「高橋さん」の画像を先輩に見せた。
「へぇ~いいじゃん!俺ら出掛けるからよ。お前一緒に来いよ」
2年生の下校時間、帰宅する生徒たちが車の横を通り過ぎる。
先輩たちが出したワンボックスの後部座席から、
俺は高橋さんを探していた。
「あっ!あの子っす…」
「おっ、来たか?お前出て、因美山の公園まで連れて来い」
「えっ?俺がっすか?」
知り合いではなかったが、なかば強引に、俺は高橋さんを
因尾山まで連れて行った。
彼女は自転車に乗っていたが、徒歩の俺に合わせて自転車を
押して一緒に歩いてくれる。
(可愛くて優しい子なんだな…先輩たち、この子をどうするつもり
なんだろう…)
初めてしゃべった俺に対しても、明るく接してくれる高橋さんが
すっかり好きになっちまった俺は、今更ながら心配になってきた。
「わたし、お山の公園なんて、小さい頃以来だよ!」
山の麓に自転車を置いた高橋さんは、懐かしそうに公園への
階段を上っている。
「最初、誰かわかんなかったよ!」
「クラスの人気者は、俺の事なんて知らなくて当然だろ?」
「えっ?知ってたよ!だって幼稚園一緒だったじゃんw」
そんな昔の事、俺は全く憶えていなかった…
「ところで話って何なの?張本君…」
「着いてから話す…」顔が赤くなっているのを隠すため、
俺はあらぬ方向を向いた。
「わぁ~!懐かしい」
栗とリス公園に着いて、小走りに駆け出した彼女は
可愛らしく微笑んで振り向く。
「でも、なんか嬉しい…張本君が私のこと憶えていてくれて…」
あいまいな表情しか出来なかった俺は、ここに彼女を連れて
きたことを猛烈に後悔した。
彼女を連れて逃げようか…俺は高橋さんの腕をつかんだ。
その時、彼女の後ろの茂みから出てきた黒い覆面を被った
先輩たちが、彼女へ忍び寄るのが見えた。
先輩たちは、高橋さんに襲い掛かった…