DESCRIPTION
彼女の口が告げる。
「かーーん」
ゴング代わりの合図で試合が再開する。
だが俺は既にフラフラで、かいちょうの口移しで咥えさせられたマウスピースを噛みしめる以外にできる行動はなかった。
今までとは打って変わって恍惚とした表情で俺に向かってリングを駆けてくる彼女。
そして彼女のマウスピースは俺の口の中。
それが意味すること、それはここから彼女は一方的な試合展開を考えている。
そして、俺も自分のダメージからそうとしか思えない未来を見ている。
彼女はもう、ボクシングをしようと思っていない。
俺を一方的に殴ることに快感を感じているだけなんだ…。
彼女の狂気は言葉では止められない。
そんな解決策もないことを考えているうちにほぼゼロ距離までつめて来ていた彼女。
より彼女の火照った体温を感じる。
そしてその揺れている豊満な乳房にも目が行かないわけがなかった。
かいちょうは狂気を含んだ表情のまま、俺に向かって拳を突き出す。
バァンッ!ドゴォッ!!バキィッ!!グシャァッ!!ズドッ!!
「おふっ…うぐぇ…おええ…!ぶええええ…!?」
彼女のラッシュが俺の体のいたるところにクリーンヒットする。
情けない悲鳴を漏らしながらパンチを受け続けるしかない俺は痙攣してダウンするしか逃げ道はなかった。
もう、彼女のかわいいトップレスな姿だとか胸が揺れているとか、彼女のかわいい息遣いや汗にまみれた容姿を堪能する余裕などなく意識はほとんど奪われていた。
完全に彼女に蹂躙され、何十発、いや、100を超える数かもしれない女の子のパンチによってズタボロにされた。
男のプライドなどとっくに消えかけていた。
こんなかわいくて華奢な女の子にボコボコにされたんだ。
上半身裸でボクシンググローブを付けた女の子にこんなに体中痣だらけで顔もパンパンに腫れた状態にされて……
女の子にボクシングで一方的に……
そんな意識を失いかけ、虚ろな眼に映るのは左右の赤い拳を力を余すことなく振り絞って突き出し暴れる彼女。
そのグローブには俺の涎や鼻血やらがべっとりと塗られている。
すると、彼女が少し身を屈めているのが見えた
「あはッ♡とどめ…♡」
ボォンッッ!!!!!
とてつもない衝撃音がしたかと思えば目はチカチカと天井の照明を見ていた。
彼女の最期の強烈なアッパーカットによって強制的に上を向かされ、さらに彼女は拳を突き上げる。
顎から突き抜ける激痛によって体はついに完全に言うことを聞かなくなった。
ダァンッ!
と激しく何かがリング状に転がる音が遠くで聞こえたような気がした。
大の字にリングに仰向けに転がる俺。
横を向いた首からかすかに見えるリングの床。
そこには俺のまき散らした血や様々な体液がばらまかれていることに気づく。
潰れた鼻からは血が、そして口から泡を吹くように血と涎がブクブクと出る。
リング上をこちらに駆け寄ってくるかいちょうの少し心配ながらも満足げに満ちたような絶妙な表情。
それが俺が意識を失う前に見た最後の光景だった。
もし誰かがこの場にいてこの瞬間を見ているなら完璧なKOだと思うだろう。