「――ねえキミ、テレビで出てなかった?」
そう声をかけられたとき、彼女――七草にちかの胸が高鳴らなかったと言えば、嘘になる。
未だに駆け出し中のアイドルであるにちか。そんな彼女が、街中で声をかけられた。こうしたことに慣れているアンティーカや放クラのメンツ、283プロダクションの他のアイドルたちであれば、最初の手運びを間違えなかったかもしれない。
だが、にちかは最初の一手を間違えてしまった。ついつい少し得意げなニヤケ顔で振り返ってしまった。
「――いや、本当に……そういうの興味ないんで……」
「いいじゃん、ちょっとくらい~」
結論から言えば、相手はナンパ目的の声かけだった。最初の一言も、相手を振り返ったり立ち止まり易くさせるためのテクニックの一つだ。本当ににちかがアイドルだったことは、彼にとっても予想外だった。
今時にしては珍しいタイプの男だ。金色に染めた髪を逆立て、ジャラジャラと音のするくらいアクセサリーを付けている。ラフで細身なシルエットの服に、大きなアウター。目の前から歩いてくれば視線を逸らす、決してお近づきにはなりたくないタイプの男だ。
そんな男に、にちかはまとわりつかれていた。なまじ、最初に好感触な反応をしてしまったせいで、御しやすいと思われている。そのことがにちかの苛立ちを加速させた。
「もう、しつっこいですよ! 警察呼びますよ!」
彼女らしい蛮勇だ。カバンを半ば振り回すくらいの勢いで怒るにちかだが、それでも金髪の男はへらへらと笑ったまま。
「ッ~~~! んなしつこいから、ナンパだってロクに誰も引っかからないんでしょ!」
にちかも、もう黙ってその場からいなくなればいいものを。持ち前の負けん気が首をもたげて、言わずによい一言を言ってしまう。そしてその後、いい加減相手をしていられないとばかりに駆け出してその場を逃げ出した。
「――――へ~……生意気じゃん、あのガキ」
残された金髪の男は、小さくそう呟いた。実際のところ、今日の彼は釣果ゼロ。それをまるで逆なでされたようなカタチだった。挙げ句、周りにはまばらだが人影もある。周囲の視線は、否応なしに彼へ集中していた。
「見てんな! 殺すぞ!」
金髪の男が怒鳴り散らすと、周囲の人々はチラチラと散っていった。残されたのは、ちんけなプライドを逆撫でされたチンピラ一人。
「――――あのガキ、見てろよ」
金髪の男は、道ばたに唾をひと吐きしてからその場を去っていった。
■ ■ ■ ■ ■
「うわ~……最悪。めっちゃ遅くなった……」
数日後。にちかは、つい先日起きたことなどほとんど忘れていた。バイト帰りの道を急いでいる。色々と仕事を背負い込んでいるうちに、すっかり退勤が遅くなってしまった。
「ん~……アイドルの仕事の後ならプロデューサーさんに送ってもらえるのになぁ」
別にアイドルとしての仕事の後だけではない。深夜の道を帰ることを告げれば、プロデューサーは車で飛んで駆けつけてくれるだろう。しかし、にちかはそこまで彼に頼る気もなかった。
(早く帰ろ……)
冷え込みが厳しくなってきている夜の空気。手のひらをすり合わせて暖をとりながら、にちかは足早に歩道を歩く。
(あっ……ここ……。この前……)
そのタイミングで、ようやくにちかは今自分が歩いている道が、先日不快なナンパを受けたあの道だということに気が付いた。
(あ~……。やめやめ、ムカつくこと思い出しちゃった……。そもそも、なんなのあの男……最悪だし……。ナンパなら、もっとやり方あるでしょ)
自分の脳裏に思い浮かんだイヤな記憶を適当にはぐらかそうとしながらも、文句はいくらでも出てきてしまう堂々巡りを繰り返すにちか。
そんなときだった。
――ぐいッ……!
(えっ……?)
驚きの一声すら出せなかった。にちか自身は“な、なに!?”くらい叫んだつもりだったが、実際のところは喉から一言も声は出ていない。ただなすがまま、彼女は何者かに背後から羽交い締めにされて、路地裏に連れ込まれる。
「なっ……! やめっ……!」
そこでようやく声が出る。いま自分がどんな状況にあるのか理解できて、咄嗟に反応した声だ。次の瞬間、にちかの頭を駆けめぐる様々なこと。事務所で受けた、暴漢対策の訓練。声を出そうとすれば、相手は口をふさいでくる。そのときは、思い切り小指を捻りあげて全力で逃げ出せばいい。
(こんのぉ……!)
にちかは一瞬で覚悟を決める。いま叫びかけた自分に対して、背後にいる不審者は口を塞ぎにきて、自分はその相手の小指を思いっきり逆方向に――
ゴスッ……!
「おご……っ!?」
だが、次の瞬間、にちかに浴びせられたのは腹部に対する強烈な殴打だった。油断しているにちかの腹、その一番柔らかい部分、あばら骨の下。肝臓に近い部分を、思い切り殴りつけられた。
「っ゛……? い゛……ぁ……」
にちかは、もう満足に声も出せない。身体の芯から広がってくる不快感。内臓を揺さぶられたせいで、休憩中に食べた夕食のサンドイッチが逆流しそうになる。
そして彼女がそんなふうに混乱している最中も背後の男は止まらず、にちかはあっさりとほとんど何の抵抗も出来ず、路地裏に面している地下の廃墟へ連れ込まれてしまった。
「――ようこそ~。久しぶりだね~、お嬢ちゃん」
「あ、あん……た……」
廃墟へ入ると、にちかはホコリまみれの床へ放り捨てられた。身体の痛みに未だに混乱しているにちかは、ロクに受け身もとれずに固い床へ叩きつけられる。
軋む身体で、にちかは声の主を見る。暗闇の中でも、不愉快に煌めく金色の髪。急速に記憶が呼び起こされる。先日、ナンパを仕掛けてきた男だった。
「オレのこと覚えてるかな~? また会えたね」
へらへらと笑いながらにちかに話しかける男。しかし、当然ながらにちかはそんな男に返事をすることはない。痛みに呻きながらも、案外に彼女は冷静だった。誰か――それこそ警察に電話をしようと、カバンの中へ手を伸ばそうとする。
「あ? 挨拶も無しかよ、クソガキ」
しかし、実際のところにちかは冷静だが、正しい判断を出来ていなかった。この場でそんなことをしても、何の意味もないのだ。
ガッ……!
「い、っつ゛……!」
男のつま先がにちかの手を蹴り飛ばす。小さなにちかの手は、子供用のサッカーボールよりも簡単に弾き飛ばされる。予想もしていなかった一打に、にちかは“痛い”の一言も言えなかった。
にちかの手を蹴ると同時に、彼女のカバンも遠くへ蹴り飛ばされてしまう。中から化粧ポーチやハンカチ、そしてスマートフォン、色々なモノが散乱して廃墟の奥の暗闇へと消えていった。
「だ、誰か……! 誰か、助けて……!」
次ににちかが行ったのは、叫ぶというこれまた古典的だが不審者相手には有効な対応策。しかし、それはあくまでそこが屋外であった場合のみに効果的なのだ。
廃墟のドアは、すでに金髪の男以外の何者かによって閉められていた。にちかは知る由もないが、この廃墟は元々バーだった。とはいっても、上品にカクテルを酌み交わすような社交場ではない。音楽が鳴り響き、乱痴気騒ぎは日常茶飯事な、ほとんどクラブと変わりない店。つまり、ドアが閉まればにちかの甲高い声など外に届く余地が無いほどに防音がしっかりしているのだ。
「このっ……! なんなんですか、あんた……! だれかっ! 誰かっ!」
スマートフォンを探すために金髪の男へ対して背を向ける勇気も無く、にちかは虚しく叫ぶだけ。そんな彼女の様子を最初は下卑た笑みで見つめていた男だが、突然ふっと真顔になると――
「っせえな! 殺すぞクソガキ!」
そう叫んで、にちかに殴りかかった。
ゴッ……!
「っ゛ッ……ッッッ!!!」
彼の拳が、にちかの身体へ吸い込まれる。鎖骨を殴りつけられたにちかは、その予想外な痛みに目を白黒させた。先ほど殴られた胴の痛みも、蹴り飛ばされた手の痛みも消えていないのに更に新たな痛みが上書きされる。そのことは、にちかにとって紛れもない恐怖だった。
「あ゛……つぅ……! な、なん、で……!」
「なんでだ、コ゛ラぁ! てめえこの前のこと忘れてんじゃねえよ、ぶっ殺すぞ!」
殺す、なんて台詞が冗談に聞こえなかった。男は目前にいて、また拳を振り上げる。それが振り下ろされる瞬間、にちかに出来ることは恐怖で目を閉じて、両腕で必死に顔を庇うことだけだ。
「――おいおい、顔止めとけよ~、萎えっから」
金髪の男を制する声。それは明らかににちかの味方ではないにも関わらず、その声によって目の前で暴れる凶悪な男の動きが止まったことに、にちかは心の底から安堵した。
暗闇から現れたのは、声の主であるスキンヘッドの男――だけではない。その他にも数名。全員が、金髪の男と同じ雰囲気――チンピラよりも更にゲスな空気をまとっていた。
「お~、マジでアイドルじゃん。ぜんぜん人気無いけど」
「あれか、シーズの。なんだよ、せっかくならアンティーカの月岡恋鐘とか連れてこいよ。八宮めぐるとか~」
好き勝手なことを言いながらにちかを取り囲む男たち。こうなってしまっては、にちかに出来ることは殆ど残されていなかった。彼らの機嫌を損ねないよう、矮小な小動物として輪の真ん中で震えるだけ。なぜなら、彼らが本気でにちかに襲いかかれば、彼女がボロ雑巾のようにズタズタにされるまでさして時間はかからないからだ。
「いやぁ、にちかちゃん。今日はなんでここに来てもらったかわかるかな?」
恐らく、スキンヘッドの男がリーダー格なのだろう。彼が話している間は、他の男たちも咳ひとつ立てない。
問いかけに対して、にちかはどう答えるべきか逡巡する。そんな彼女に対して金髪の男は不快感を露わにし、握った拳を大きく振り上げた。
「ひっ……! わ、私が……! 私が、こ、この……この人の……さ、誘いを……! こ、断ったから……です……」
ゴスッ……!
「あッ……がっ……!?」
にちかの返答に対して、無言で男の脚が振り抜かれた。柔らかいお腹に対して、つま先が容赦なく食い込む。警告のひとつもない、容赦のない蹴りを受けて、にちかは呻き声をあげることしかできない。
「てめえ、オレがナンパ断られただけでキレるような奴だと思ってんのか? やっぱ見下してんなァ!? アイドル様はすげえなぁ! あぁ!?」
「ご、ごめんなさい……! ゲホッ……! すみません……!」
金髪の男の機嫌を損ねてしまったことが恐ろしく、にちかは必死に謝る。その無様な様子を、他の男たちはゲラゲラと笑いながら眺めていた。
「おいおい、にちかちゃん可哀想だろ~。ちゃんと何が悪いか言ってやらないと~」
スキンヘッドの男が笑いながら暴行を制するが、それは別ににちかを庇おうとしている訳ではない。
「なあ、にちかちゃん? こいつ、にちかちゃんに酷いこと言われて傷ついちゃったんだよ~。だからさ、謝ってあげてほしいのよ」
「は、はい……。あ、謝ります……」
「ん? なんか強要されたみたいなカンジするね? 俺たち、別ににちかちゃんに無理やり謝ってほしい訳じゃないんだよなぁ」
コンッ……コンッ……。
意図的に床を鳴らす男の靴。その固さを知っているにちかにとっては、恐怖のリズム以外の何物でもない。
「あっ……! い、いえ……あ、あやま……謝らせて……いただきます……」
「そうそう。謝り方もちゃんと考えてな~」
ほとんど脅迫に近い男たちからの言葉。けれど、この場でにちかを助けてくれる人間は一人もいない。彼女に出来るのは、恐怖に震えながらなんとかこの場を切り抜けようともがくだけだ。
にちかは、男たちの輪の真ん中で床に手を付く。何が正しいかはわからないが、そうするほか無いと思ったからだ。
そうして、土足で踏み荒らされた、汚ればかりの床に額をすり付けて土下座した。少女、というよりも人間としてあまりに屈辱的な行為だが、そのことを考えている余裕は、今のにちかには無かった。
額を床にすり付け、男たちに服従し、抵抗の意思がないことを示しながら許しを乞う。それしか今のにちかには出来ない。
そんな彼女の後頭部に、固い感覚が乗せられる。金髪の男が、彼女の頭を踏みつけているのだ。
「ん゛……く……ッ!」
頭を床と靴に挟まれて、ギリギリと圧迫される。その不快感と屈辱感に、思わずにちかは呻いた。
「なんだ? なんか文句あるなら聞いてやるけど?」
「い、いえ……。ご、ございません……。お、お兄さんに……た、大変……失礼な言葉遣いと、態度をとってしまい……ほ、本当に……申し訳ございませんでした……」
ギリギリと頭蓋を締め付けられながらも、にちかは必死にそう謝った。周囲から浴びせられるのは嘲笑。どうしようもないクソガキ。イキらなければこんなことにならなかったのに。そんな言葉を投げかけられていると、にちかの目からは自然に涙がこぼれてくる。
(なんで、こんなことに……。お姉ちゃん……プロデューサーさん……助けて……)
いまのにちかの心にあるのは、姉が待っている暖かい家だけだ。そこへ帰りたくて、何とかこの場を脱したくて、何でも出来る。
――そう、思っていたのに。
にちかの頭から重さが無くなり、顔を上げるように命令される。これで許してもらえるのかと、この廃墟へ連れ込まれてから初めて感じる微かな安堵を胸にしながらにちかが顔を上げる。
すると、目の前に男根があった。
比喩でも何でもない。目の前に、金髪の男の男根があったのだ。
「なっ……!」
咄嗟にそれを押しのけたりしなかったのは、先ほどまで行われていた“教育”の賜かもしれない。そんなことをしては、冗談抜きでにちかの命は無かっただろう。
「こ、これは……な、なんでしょうか……?」
眼前に突きつけられた男根。その臭気に顔をしかめながら、それでもにちかは彼らの機嫌を損なわないように丁寧な口調で訊ねる。
「悪いと思ってんだろ? なら、あの日する予定だったことしようや。ほら、早くしゃぶれよ」
まるで当然のように、金髪の男は言い放った。
「あっ……。しゃ、しゃぶ……る……?」
意味は、わかる。にちかだって思春期の少女だ。その意味も、どういう時にするのかもわかる。だが、父親を早くに亡くしているにちかにとっては男根はほとんど未知の存在と言ってもよく、そのグロテスクな外見に怖じ気付いてしまうのは、ごくごく自然なことだ。
「っせえな。カマトトぶってんじゃねえぞ、アバズレが。どうせ枕営業でパコパコしてんだろうがよ」
グイッ……!
男の手がにちかの後頭部に延びる。殴られるのかと警戒して萎縮したにちかの隙を突くようにして、彼女の後ろ髪を鷲掴みにした。
そうしてそのまま、彼女の頭を思い切り後ろに引っ張る。そうすれば勝手に口が開いて、チンポしゃぶり穴の出来上がり、といった寸法だ。
「ほら、たっぷりかわいがってくれよ」
そう言いながら、男はにちかの口へ向けて男根を挿し込む。未だに勃起してはいない。口にくわえるのも、まだ易いサイズだ。
「んごぅ……ッ!」
だがにちかにとっては、あまりにも初めてすぎる“異物”だった。
(なにコレ……ッ!)
口の中に広がる異臭と生臭い味。それらが全て自分の口に収まっているという事実は、にちかくらいの年頃の少女にとっては強烈すぎる物だった。
思わず吐き出そうとする。だが、別に男根はそれ単体で口に収まっているのではない。男の下半身によって、にちかの口へ押し込まれているのだ。そう簡単に押し返せる訳がなかった。
結果として。
ガリッ……!
「い、っっっっってえ……ッ!!」
にちかは混乱する口内で、思わず男の男根に歯を立ててしまったのだ。
あまりの痛みに腰を引く男。にちかに戻る正常な呼吸。だがそれと引き替えに、彼女の腹部へ再び男の爪先が吸い込まれていった。
「おガッ……! い、たい……!」
「痛いじゃねえよクソガキ……! てめえよくも……! わかってねえみたいだな、ゴミカスがよ!」
まさに激怒と言った有様。明らかな自業自得にも関わらず、男は怒り狂っている。にちかに蹴りを見舞っただけでは飽きたらず、血走った目で彼女を見ている。今にでも襲いかかってきて、彼女を殴り殺してしまいそうな勢いだ。
「す、すみません! すみません! そ、そんなつもりじゃなかったんです! お、お願いします……! 許してください……!」
自分がしてしまったことの重大さ、これから自分の身に起きる暴力の嵐を予見して、にちかは必死に詫びる。だが、その程度の謝罪で大切な男根を噛まれた男の怒りが収まるわけがなかった。
「っせえぞガキ……! おい、バケツ持ってこい!」
怒りに我を忘れた男は、仲間たちに指示を飛ばす。仲間たちは焦るわけでもなく、男に同情して怒るわけでもなく、“これはおもしろいことが始まるぞ”といった様子でニヤツきながら、ぼろぼろになったバーカウンターの裏からバケツを持ってくる。水道は生きているようで、少し色のボヤケた青いバケツの中には並々と水が注がれていた。
「ガキ押さえとけよ! 思い知らせてやるからな……!」
「や、やめてっ! やめてください! も、もうしません! おちんちん、ちゃんとしゃぶりますから……!」
必死の懇願も虚しく、にちかは両脇から男たちに腕を抱えるように押さえつけられてしまう。そうしてそのまま、先ほど男根を噛んでしまった金髪の男によって後頭部を髪ごと鷲掴みにされて――
ドボッ……!
そのまま顔面をバケツの水へと押し込まれた。
「んぶッ! ん゛ッ! んんんッ!!!」
突然のことに、にちかは思わず大量の水を飲んでしまった。そしてそのことが彼女を焦らせて、さらなるパニックへと誘う。けれど、どれだけ暴れても無駄。男数人かかりで押さえつけられていては、にちかがそれを跳ね退けてこの水責めから脱出するのは不可能だった。
「んぼッ! ごボッ! ンッ! んブフォア!」
じたばたと暴れるにちかの身体。呼吸は一気に苦しくなってくる。空気が吸いたい。空気が吸いたい。だが、どれだけ詫びたくても声を発する自由さえ奪われている。
気が遠くなってくる。暴れることも出来なくなってくるが、それでも酸欠とそこからくる死の恐怖のせいで時折身体が痙攣する。
(ああ……私、死んじゃうんだ……)
本気で、にちかはそう覚悟した。
「――――――ッハァ……ッ!!! はぁ……! はぁ……! ぶはっ……! はぁっ……! はっ……! ゴホッ……! ゲホッ……! おぇぇぇ……!」
にちかが本当に意識を手放してしまう直前、ようやく彼女は水責めから解放された。
「ガホッ……! ゲホッ! ひっ……! いぃ……ッ!」
にちかは、恐怖でおかしくなってしまいそうだった。すぐ目の前にまで迫ってきていた死の気配。いくら苦しくても、許してほしくても、声を発することすら出来ないような暴力的行為。それらを小さな身体いっぱいに浴びて、とうとうにちかの心は折れてしまった。
だが、彼らはそんなにちかを許すつもりはないらしい。
「よ~し、次はもっと長くな~」
「めざせ世界記録、ってやつ」
ゲラゲラと笑いながら、にちかの後頭部が再び捕まれる。にちかは半狂乱に叫ぶ、が――間もなく、もう一度水に顔を沈められた。
「――――ヒッ……かはっ……ひゅっ……。し、失礼……致しました……。お、お詫びの……気持ちを込めて……お、おちんちん……しゃぶらせていただきます……」
水でびしょびしょ、無惨な有様のにちか。ほとんど力もなく、ただ脱力して座っているだけのような状態。そうしておとなしくなった彼女に、再び男根が突きつけられた。
「んっ……んぐっ……。んっ……んっ……」
にちかは素直に男根をくわえ込む。あれほど拒否反応を示した、汚物のように感じていた存在に対して、一切の抵抗感無く唇を付け、そのまま口の中へと迎え入れた。
「歯立てたら殺すからな」
その言葉が嘘でも脅しでもないことを、にちかは知っている。視線で恭順の意を示して、にちかは何度も何度も口のストロークで男根を刺激した。
しかし、にちかのフェラチオは、彼にとっては些か不満の残る内容であったらしい。それもそのはず、クスリを打たれたせいで一心不乱に肉棒をしゃぶる普段のシャブ中女たちとは雲泥の差だ。不慣れどころか経験すらないにちかが、彼らを満足させる奉仕を出来るわけもなかった。
ではどうするか。
「チッ……。いいわ、お前。下手くそ」
そう言って、彼はにちかの頭を掴んで思いっきり腰を押し入れた。
「んぐ……ッッ!?」
これから何が起きるのか。身構えるか、一度口を離して彼に詫びるか。にちかが迷っている間に蛮行は始まった。
ずずず……ッッッ!!!
「ん゛……ッッッ! んんんーッッッ!!」
にちかは呻く。だが、声もろくに出せないどころか息も苦しい。それもそのはず、彼の男根はにちかの喉奥深く、食道までを埋め尽くしてしまっているのだ。
いわゆるイラマチオという状態。勃起した肉棒で喉を塞がれ、頭から首にかけて全体をまるでオナホールのように使われてしまう、女性のことなど一切考慮しない暴力的な行為だ。
ズブッ! ズッ! ズッ!
にちかの顔面へ陰毛だらけの下腹部を押しつけている男は、そのまま腰を前後に動かし始める。喉を押し広げて、塞いで、ぐりぐりとこねまわす。苦痛のあまり、にちかの両目には涙が滲み、ほとんど反射的に男を睨みつけた。
「あ゛?」
だが、男に凄まれればにちかはそれ以上視線を上に向けていることも出来ない。今は幸運にも、男がにちかを使ったイラマチオに満足している。だが、彼がもし不満に思うことがあれば、すぐ脇に用意されている水バケツと再び対面することになるだろう。
そう考えれば、にちかに抵抗する気力が残っているはずもなかった。ただ耐えるしかない。アイドルとして大切に守るべき喉という部位を男性器で抉られながら、男を押し退けようと本能的に出そうになる両腕を押さえるため、必死にスカートの裾を握りしめることしかできない。
「んグッ! ン゛! おン゛……ん゛!」
幸か不幸か、彼はにちかの喉奥レイプにある程度満足していた。異物を押し返そうとする喉の動きが心地いいし、口の中では唾液が絶え間なく分泌されている。オナホールとして見れば、にちかは及第点だった。
唯一足らないとすれば、締まりだろうか。男根はにちかの細い喉を無理やりに押し広げてピストンを繰り返しているが、全体的な締め付けは不満が残る。しかし、それに対する解決方法は簡単だった。
――――キュッ。
「ッ…………ッッッ!!!」
先ほどまで微かに、しかし確かに漏れ出ていたにちかの呻き声が止まる。男の手が、彼女の喉に添えられたのだ。そのまま少し力を加えられてしまえば、すでに内側から肉棒に圧迫されているにちかの気管は、簡単に締まってしまう。
「ッッッー、ーッッッ!!」
にちかは目を白黒させる。だが、男は自分の手の力加減で締め付けを操作できるようになったにちかの喉オナホにご満悦だ。気持ちよさそうに吐息など漏らしながら、腰の振りを速くしていく。
(死ぬっ……! 死んじゃう……! 息、息できない……!)
にちかは必死に自らの生命の危機を訴えようとした。だが、そんな非常事態であっても、にちかは男の身体を押しのけるとか、せめて叩くだとか、そういった抵抗すら出来なかった。先ほど水責めをされたときの恐怖がフィードバックしてきて、苦痛を堪え忍ぼうとする奴隷根性が植え付けられてしまっているのだ。
ジュブッ! ジュブッ! ズブッ! ズブッ!
否応なしに垂れてくるにちかの唾液と、速くなる男の腰。それに伴って彼女の首を締め上げる力も強くなり、男根はにちかの細い喉など突き破ってしまいそうな勢いで暴れ回る。
(し、死にたくない……! 死にたくない……! おちんちんで死にたくない……! おちんちんで窒息したくない……!)
にちかは心の中で懇願する。あまりに恥辱的な自らの死に様を想像して、せめて普通に死にたいと願ったほど。刻み込まれた恐怖は身体を縛り、自らを苦しめる男の身体ではなく、自分自身の太股へ爪を食い込ませて血を滴らせていた。
ズンッ! ズンッ! ズンッ! ズンッ! ズッ――――!!!
男がひときわ深く腰を突き入れた瞬間。
ビュグるッ……! ブッ!ビュルル……!
「ん゛、っぐぅっぅうぅぅ……ッ!!!」
にちかの喉奥に、男根から汚濁が吐き出された。
ねっとりとして黄ばんだ男の精液は、顔をしかめたくなる臭気だった。
今までその臭気を経験したことのないにちかにとっては、まるで腐敗物のような錯覚さえ覚えたかもしれない。
味はあたかも悪夢を固めたかのような味。これが子種ならば、生まれてくる子供はきっと人のカタチをしていないだろうと、そんな確信すら抱いたかもしれない。
だが、にちかは幸運だった。その強烈な臭気や味を、経験せずに済んだのだ。
ボビュル……ッ! ビュルル……ッ!
その代わりにちかに与えられたのは、男根によって直接胃袋へ精液を注ぎ込まれる苦痛だった。自分の意志など関係なく、まるで流動食でも注がれているみたい。限界まで喉奥へ差し込まれた男根から放たれた精液は、にちかの胃袋へ向けてボトボトと音を立てながら落ちていく。
その間も、男はにちかの首を圧迫することを止めない。普通であれば射精後も緩いストロークで肉棒を刺激したりするのだが、それが出来ない分、手の圧で尿道に残った精液まで絞り出そうとしているのだ。それによって生じるにちかの苦痛などはお構いなしに。
「ッ゛……つ゛、ぅ……ん……ッ!」
いよいよ呼吸が限界になってくるにちか。もうどうしようもなく、身体が本能に負けて男を押し退けようと両腕を突き出そうとした、その直前だった。
ズッ……ズルルルルル……!
まるで濡れたホースでも引きずり出すような音と感触を伴って、にちかの喉から男根が抜けていった。
「カハッ――――う、げぇぇぇぇぇ……ッ!!!」
男根が引き抜かれた瞬間、にちかがしたことはようやく与えられた自由に呼吸する権利を享受することではなく――胃袋の中身を、ありたけ吐き出すことだった。
「うわ、きたねえな!」
「テメエ、反省したと思ったら……!」
ゴッ……!
「おごッ!? おげ……ッ! ぅぇ……! ぇ……ぇぅ……」
ほとんど四つん這いになりながら吐瀉物をまき散らすにちか。そんな彼女のお腹に、何度目かの蹴りが見舞われた。
腹部に加えられる衝撃のせいで、にちかは更に盛大に嘔吐する。だが、すでに夕食は消化されていたのか、彼女の体内から遡ってきた物体はおおむね先ほど出された精液だけだった。
「このクソガキ……」
「ひっ……! ご、ごめんなさい……! ごめんなさい……! すみ゛ません……! も、もう吐きません……! 精液吐いてすみません……!」
怒りで震える男の声を聞いて、にちかは震えながら必死に命乞いをする。次こそあのバケツの水の中で自分は命を終えるのだと、にちかは本当にそう考えていた。
しかし、男たちも別ににちかを本気で殺す気はない。それよりも、この完全に心が折れて自分たちに服従しきった少女を使ってどうやって楽しむか、それだけを考えている。
「キミ、反省してるの? え~っと、七草にちかちゃん、だっけ? なんか、さっきから口だけなんだよね~」
「そ、そんなことないです! ほ、本当に……本当に反省してます……!」
「え~、そっか~。う~ん、僕たちもにちかちゃんのこと信じてあげたいんだけどなぁ~……」
にちかに語りかけたのは、今まで黙っていた、というよりもにちかに加えられる暴行を笑って見ていた優男風の青年だった。
「じゃあさ、それ。綺麗にしてよ」
彼はニヤニヤと笑いながら、指輪で彩られたその指でにちかの吐瀉物――ザーゲロで汚れた床を指さした。
「は、はい! も、もちろんです……! 綺麗にします……!」
終わりのない理不尽な暴力ではなく明確な行動を示されたことに、にちかは安堵を覚えた。そんな心は彼らの暴力を前にして心が屈服してしまった証拠以外の何物でもないのだが、そんなことを気にしている余裕は今のにちかには無い。
にちかはカバンから散乱していたハンカチを拾おうと、四つん這いのまま床を移動しようとする。
「あ~、違う違う」
しかし、そんなにちかの行動を彼女に命令を下した彼が止めた。
「えっ……え……?」
どういうことかわからずに不安そうな声を漏らすのはにちかだけ。だが、疑問に満ちた顔をしていてはまた理不尽な暴力に晒されるのではないかと思って、顔だけはにへらにへらと媚びを売るように笑っている。
「ど、どういうこと……ですか……?」
これからなにが命じられるか。それを予想できていないのは、この場でにちかだけだった。
「その床のやつさ、せっかくコイツがにちかちゃんに飲ませてやろうと思って出したんだしさ、ちゃんと飲んであげないと可哀想じゃない?」
「あっ……あ……あ、あぁ! そ、そう……ですよね……!」
一瞬何を言っているのかわからない顔で呆けたにちかだが、次の瞬間に求められていることを理解した。そして、絶対に受け入れ難い行為だというのに、ただ暴力を受けたくない一心だけで再び媚びた笑みを浮かべた。
「そうそう。にちかちゃんは賢いね~。じゃあ、ちゃんと直接、口で舐めるんだよ」
「へ、えへへ……わ、わかってますよぉ……」
にちかは無理やりに笑顔を作りながら返事をする。視線の先にいる優男より、脇で今にも拳や蹴りを繰り出してきそうな金髪の男が恐ろしい。
「は、は……ぁ……ァ……」
にちかはゆっくりと身体を屈め、地面に顔を近づける。ここへ連れ込まれたときは周囲の様子などまったく見えなかったのに、暗闇に慣れてきた目が恨めしい。床の汚れている様子がハッキリと見えてしまう。
天気に関わらず土足で歩き回られ、掃除もされていない床は外のアスファルトと大差ない有様だ。ホコリも溜まっていて、そこへぶちまけられた自分のザーゲロ。見なくて済んでいた黄ばみ精液がはっきりと見えてしまう。
(イヤだ……イヤだ……。イヤだイヤだイヤだ……)
心の中で何度も何度も同じ言葉を繰り返すにちか。それは本心でもあり、そしてそうやって心の中で呟いていないと自分が本当に進んでこんな屈辱的な行動をしていると錯覚してしまう気がしたのだ。
れろ……れろ……。
にちかは小さな舌を垂らして床を舐め始める。舌の先に広がる感覚。味とも言えない、味と認めたくないような刺激だ。ビリビリと痺れて、苦くて、まずい。自分がそんな汚物を舐めているという事実が、にちかの吐き気を更に強くさせる。
けれど、歯を食いしばって堪えた。そうして必死に心を殺しながら、床にぶちまけられたザーゲロを舐め取っていく。
「おいおい、アイドルが床モップかよ」
「自分からやるなんて、頭おかしいんじゃないのか?」
好き勝手に投げかけられる言葉と響くシャッター音。いつの間にか、男たちがスマートフォンのカメラでにちかの無様な姿を撮影していた。
(やだ……やだ……。と、撮らないで……)
心の中で必死に念じるにちか。だが、そんな願いが叶うわけがない。それどころか、心は顔に出る。にちかの感じている屈辱が、彼女の顔に出てしまった。
「なに、にちかちゃん? なんか不満そうじゃん~」
優男がにちかに近づく。そんな彼の動きに気が付いたにちかは、顔を伏せて一心不乱にザーゲロを舐めようとするが――
ガスッ!
「っつッ……! っぐぅ……!」
それより早く、優男の靴底がにちかの後頭部を踏みつけた。
「ほらほらにちかちゃん、もっと美味しそうに舐めてよ~」
「は゛……い……。す、すみ……ませ゛ん……。せ、精液……おいしい……です゛……」
「おいおい聞いたか? ザーゲロ美味いってよ」
「頭おかしいんじゃねえのか~」
男たちからの罵声、嘲笑を浴びながら、それでもにちかは必死に床を舐め続けた。
■ ■ ■ ■ ■
そうして床を舐め掃除し終わった後、にちかは代わる代わる男たちによってイラマチオをさせられた。精液を吐き出せば床舐め、苦しさで歯を立てれば水責め。そんなことを繰り返して、全員が射精を終えるころには、にちかは疲労困憊だった。
だが、それだけで終わるはずもない。
「いや~、にちかちゃん結構がんばるじゃん。じゃあ、そんなにちかちゃんにはご褒美あげちゃおうかな」
そんなことを言い出した男がいた。
彼は立ち上がると、店の備品だったのか彼らが持ち込んだのか定かではないソファに座った。ただし腰を下ろすのではなく、座面に膝をついて、まるで尻を突き出すような体勢だ。
端から見れば間抜け。だが、この場ではどんな非道でも実現することを知っているにちかにとってはどんな行動でも恐怖でしかなかった。
またもや、何が求められているのか理解できていないのはにちかだけだ。
「にちかちゃん、ザーゲロとか汚いもん舐めるのが好きみたいだし、俺たちのケツ舐めさせてやるよ」
にちかをあざ笑うように囁きながら、先ほどの水責めと同じく男たちが彼女の両脇を抱えた。
「えっ……あっ……、お、お尻、舐め……?」
すでに疲労で意識が朦朧としているにちかは、自分が何を求められているのか未だに理解できない。尻を舐める、という行為自体は、正直に言えば先ほど床を舐めさせられたことよりもマシに思えた。
しかし、にちかが想定していたのは男の尻肉。
対してケツを舐めるとは、つまりは尻穴を舐めしゃぶれと言うことだったのだ。
にちかがそれを理解したのは、自身の身体がソファーの前まで半ば運ばれるように誘導されて、目の前の男が尻肉を自分の手で広げたときだった。
「あっ……! ま、待ってください……! そ、それは……!」
思わず、にちかは身体を大きく仰け反らせた。眼前に現れた男の尻穴。毛にまみれて、精液ともザーゲロとも異なる臭気。それは、明らかに汚物――その中でも排泄物に分類されるような不快な臭いだった。
そもそも、アナル舐めという行為自体が一種異常な行為だ。普通に生きていればまず体験しない、AVくらいでしか見ない行為。風俗で大金を払って行われるか、本当に愛情を感じあっている男女の間でのみ行われる行為。それをいきなりにちかにさせようとすれば、彼女が拒否反応を示すのも無理はなかった。
「そ、それだけは……! おちんちんだったら、いくらでも舐めますから……!」
両脇を男たちに抱えられているのに、にちかは懸命に抵抗する。
「大丈夫だってにちかちゃん。ファーストキスもチンポに捧げたんだからさ」
「う゛……ッ! っぐぅぅぅぅ……!」
唐突に投げかけられた言葉。それが、先ほどまでは苦痛に意識を割かれていたにちかに辛い現実を思い出させた。
少女にとっては、恐らく何よりも大切なファーストキス。それを、誰かの唇ですらない男根へ捧げてしまったのだ。
「う……ッ! ひぐっ……!」
にちかの目から涙があふれてくる。悔しさや空しさ、そして何よりも情けなさ。どうして自分がこんな目に遭っているのかという理不尽を呪いながら、にちかは涙を流すことしかできない。
しかし、彼女がどれだけ涙を流そうとも、男たちは自らの快楽以外を優先させる気は微塵も無かった。
「ほらほら、もうチンポもケツも変わんないって」
「にちかちゃ~ん、早く舐めて~♡」
ふざけた口調でにちかのアナル舐めを誘う男たち。だが、いくらファーストキスを男根に奪われたといえども、それでアナルにキスを出来るようになるわけでもない。
「い、イヤ……! イヤ、です……!」
先ほどまでの苦痛や恐怖も忘れて、にちかは首を振って断固拒否する。だが、すでに両脇は男たちに抱えられている。自由になる部分は首から上だけだ。
そして、そんな僅かな自由さえも奪われた。にちかの後頭部に手が添えられる。先ほども水面とハグする度に何度も感じた後ろ髪を無遠慮に掴まれる感覚。にちかの背筋にゾッと冷たい予感が走る。
「ま、まっ――」
待って、の一言すら言えなかった。にちかの顔面は、問答無用に目の前で四つん這いになっている男の尻に押しつけられる。開かれた割れ目、そこに覗く菊門。その穴めがけて、にちかの口が押しつけられた。
「ん、むっ……ッッッ!」
にちかは必死に口を閉じる。ただ唇を結ぶだけではない。上下の唇を噛みしめるように口の中へ仕舞い、なるべくケツ穴に唇が触れないようにする無駄で儚い抵抗。
だが、にちかの顔面がケツ穴と密着していることに変わりはない。口をつぐんだ分、呼吸は鼻でするしかない。
(くっさい……! くさい、くさい……! 最悪……!)
鼻で呼吸をすると、強烈な臭気が流れ込んでくる。ほとんど排泄物といっても過言ではないとにちかは感じた。しかも、鼻呼吸に合わせてそよぐ尻毛の感触がにちかの心を逆なでする。
「おいおいにちかちゃん、鼻息がスースーくすぐったいんだけど」
「クソガキ、ケツの臭い嗅ぐのが趣味かよ。とんだマゾ女じゃねえか」
好き勝手な言葉を浴びせかけられても、にちかは口を閉じたまま。それこそ、このまま尻穴にキスをして舌で舐めさせられるくらいならば、水バケツの中で溺れ死んだ方がマシだとすら思っていた。
ぐりっ……ぐりぐり……ッ!
にちかの顔面が、男の力で尻肉へ押しつけられる。そしてそれに答えるように、尻を晒している男もまるでマーキングするかのようににちかの顔面へ尻をこすりつけた。
「ん゛ッ……! ん゛ん~~~……ッ!」
にちかはじょりじょりと不快な感触を伝えてくる尻の割れ目とケツ穴に抵抗しようと、必死に呼吸を止め続けている。しかし時には我慢が効かなくなり、鼻で大きく呼吸をしてしまい、その臭気に吐き気を催すことになる。
そんなことの繰り返し。しかし、最初はにちかの無様な様子と懸命な抵抗を楽しんで見ていた男たちだが、すぐにそれも飽きてきた。
「おいおい、お前本当にアイドルかよ? 流れわかってる? 流れ」
「にちかちゃ~ん、そろそろ嫌がる演技は終わっていいよ~」
「流れがわかってねえな~。だから売れないんだよ」
好き勝手な言葉を投げかけられるにちか。自分が惨めになってくるが、それでも口を開ける気にはならない。
「ま、しゃーない」
――――そんな溜息混じりの声と、“パキッ”という音を聞くまでは。
「いッ――――た゛ぁぁぁぁぁ……ッ!!!」
廃墟の中に、にちかの絶叫が迸る。何が起きたか理解できないが、理性よりも認知よりも、激痛が真っ先に脊髄を駆けめぐって脳までたどり着いた。
にちかの手、そこについている細い小指。それが、歪な方向へ折れ曲がっていた。
男たちのうちひとりが、何の感慨もなく、まるで手持ち無沙汰な時に空き缶を潰すような無感動さでにちかの小指を折ったのだ。
後頭部を押さえつけている男の手を弾き飛ばさんばかりの勢いで叫ぶにちか。先ほどまでの呼吸不全や、蹴られることによる痛みとは根本的に違う。自分の身体が破壊された痛み。
「おい、いいからケツ穴舐めしゃぶれって言ってんだろ!? これ以上意地張るなら、その生意気が治るまで指一本ずつ折っていって、最後ぐちゃぐちゃに混ぜて固めて握り拳にしてやろうかっ!?」
「あ゛……ッ、い゛っただぁ……ッ!」
男の声が聞こえているのかいないのか。にちかは激痛に悶え苦しんでいる。もっとも、両脇は男たちに押さえつけられたままで、満足に痛みを表現することも出来ないのだが。
「はい、キレた~。指もう一本な~」
「な~。そろそろ尻冷えてくるんだけど~」
「く゛、ぅぅぅうぅ……ッ! な、なめ゛ます……ッ! 舐めます、か゛らぁ……ッ!」
「いい度胸じゃん。じゃあ、もう一本折ってからな」
バキッ。
「ぎッ、あぁああぁぁぁぁああぁあぁぁぁぁ……ッ!!」
次は全て鮮明にわかった。自分の指が予期せぬ方向へ曲がり、ゆっくりと軋みながら折れていく感覚まで全て。
骨を折られる激痛に絶叫するにちかだが、次はコレだと言わんばかりに人差し指を握る男。しかし、もうにちかはその恐怖へ耐えきれない。先ほどは尻穴を舐めるくらいなら死んだ方がマシだと本気で思っていたにちかだが、今ではアナル舐めをすれば許してもらえるのであれば、ホームレスのアナルだって舐めるつもりだった。
「ま゛ってぇ……。ま゛って゛……くた゛さい……」
両目から涙を流して次の骨砕きをやめてもらうよう懇願するにちか。彼女は、命じられるわけではなく、自分からアナルへ向かって顔を近づけていく。
「うッ……。ぉぇ……ぇ……。ハッ……あぁ……」
終わってしまう。ここでお尻の穴なんて舐めたら、もう元には戻れない確信があった。
だが、そんな未来の予感よりも、いま目の前の暴力の方が恐ろしい。
れろ……。
「んっ……ぅぇえええ……ッ!」
勇気をもって舌を出し、臭気を放つ菊門を舐めたにちか。だが、拒絶感を強く煽る強烈な味――苦みとも、えぐみとも表現できないその感覚を前に、吐き気を押さえるので精一杯だ。まさか自分が、知らない男の尻穴を舐めることになるなんて。
そう思うと、いったい何をしているのかと死にたくなる。だが、それ以上に折られて逆方向に曲がった指の痛みが酷かった。
「んっ……れろ……っる……れる……ぇぅ……」
積極的とは遙かに遠い舌使いでにちかは男のアナルを舐める。もはや自分が何を抵抗しても意味などないと悟って、にちかは素直にアナル舐めを続けていた。
「ちゅっ……んちゅ……れろ……れろ……」
「ほら、キスもするんだよ!」
グッ……!!
「ん、っむ……ッ!?」
にちかの後頭部が再び掴まれて、尻穴へ押しつけられる。先ほどまで固く結ばれていた口だが、今では舌を出しながら開かれている。その状態で尻穴に密着などしようものなら、さながらディープキスの様相だった。
「ん゛ぐッ……。んっ……んっ……つ゛、うぅ……。――カハッ! かふぅ……」
尻穴にキスをするにちか。男に命じられるがまま、尻穴のシワへ舌先を這わせて、その汚れをこそぎ落としていく。
時折弄ぶように後頭部を掴んでいる手を後ろに引かれ、アナルから顔を離される。にちかにとっては正常に呼吸が出来る代え難い機会ではあるものの、新鮮な空気を吸うことによって逆に自分の鼻の周りや舌先の臭さがハッキリと認知できてしまった。
「次からは自分でできるかな~」
「はい……。でき……ます……」
「おっけーおっけー。じゃあ、みんなのアナル舐めよろしくね」
「はい……」
それから、にちかは代わる代わる目の前で尻穴を晒す男たちへ奉仕を行った。もはや自分の抵抗など無意味だと知り、せめてこの拷問のような空間で痛みを伴わないで彼らに気に入ってもらおうという考えしか浮かばない。
「んちゅっ……んれろれろ……。ちゅぱっ……。ちゅっ……ちゅっ……。ちゅずる……ずりゅりゅ……」
尻穴へ唇を着け、下品なバキューム音を立て、何人もの男たちの尻穴を舐めた。ただ舐めるだけでは飽きたらず、尻穴に舌を入れるように命ぜられればそれに従った。小さな舌で必死になって尻穴をこじ開け、その中をドリルのようにレロレロと舐め回す。
当然ながら、にちかのアナル舐めは巧みではない。だが、現役の女子高生、しかもアイドルを監禁して思うがままに肉便器扱いし、アナル舐めまでさせている。それが、男たちの優越感を刺激した。中には、アナル舐めだけで射精してしまう者もいる始末。
「いやぁ、まじでいい拾いモンしたわ」
「アナル舐め練習させて、おっさん相手にウリさせて稼ごうぜ」
ゲラゲラと笑いながら話し合う男たち。そんな彼らへ意識を割くことも出来ず、折られた指の痛みで脈拍を速くしながら、にちかはアナル舐めを続けるのだった。
■ ■ ■ ■ ■
「はい、アナル舐めお疲れ~、にちかちゃん」
「やれば出来るじゃんよ」
「じゃあ、次は俺たちがにちかちゃんにご褒美あげちゃおうかな~」
にちかにたっぷりとアナル舐めをさせたあと、男たちはそう言って再びにちかを取り囲んだ。先ほど折った指は、雑に添え木をして固定されていた。別に大した意味があるわけでもなく、単にひん曲がったままだと萎えるからという理由で。
「じゃあ、にちかちゃんのおまんこ、ご開帳で~す」
アナウンスの声とともに、一人の男がにちかのスカートの中へ手を入れる。そして彼女のショーツを握って、ずるずると乱雑に脱がせ始めた。
「あ……あぁ……」
これから何が起きるか、にちかにだってもうわかる。けれど、もはや抵抗する気力も勇気もない。ただの肉の穴になり、ひたすらにこの時間が早く過ぎ去ってくれるように祈るだけだ。
ずる……ずる……。
にちかの穿いていたショーツは剥ぎ取られ、汚れた床に打ち捨てられる。
「じゃあ、脚開いて見せてくれるかな?」
「は、はい……」
命令されるがまま、にちかは体育座りの体勢で脚を開き、自身の秘所を露わにした。
「いや~、にちかちゃん、おまんこは可愛いじゃん」
「おいおい、おまんこもだろ」
にちかの秘所を好き勝手に品評する声と、シャッター音。女性として最も神聖で隠す必要のある部位ですら、今や彼らの話の種にされてしまっている。
「じゃあ今から、このおまんこの中にチンポいれちゃいま~す」
「でも俺たちレイプとかだと萎えちゃうからさ~、にちかちゃんにお願いしてほしいな~」
何を今更言うのか。にちかは憎悪の籠もった視線で男たちを一瞬だけ見た。だが、彼らの誰もが笑っていない瞳で笑いながらにちかを見ている。ここで拒否すれば、自分がどうなるかは明白だった。
「わかり……ました……」
消え入りそうな声。アイドルとしてやってきたボイストレーニングも何もかも、何ら見る影はなかった。
「お、お兄さん……たちの……おちんちん……。えっと……ここに……」
「ここってどこだよ」
「あっ……えっと……。わ、私の……お、おまん……こ……に……ぃ……」
「あ? 聞こえないよ~。ちゃんとスマホで動画撮ってるからさ、アイドルらしく堂々とがんばって~」
「うっ……う、うぅ……。私の……おまんこ、に……おちんちんを……い、入れて……ください……」
「はい、よく言えました~」
「和姦けって~い」
にちかの言葉を映像に納めた男たちは、悠々とした足取りで彼女に近づいてくる。どうやら彼らの中で、捕まえた女を誰から抱くかは決まっているらしい。
男たちのうち一人が、にちかの脚を掴んで無理やり広げる。にちかは驚いて、反射的に股に力を込めそうになった。だが、それだけだ。抵抗など無意味だとわかっているから、それ以上は何もしない。
すでに勃起している男根。先ほどイラマチオで射精させたのに意気軒昂なソレを前にして、にちかは狼狽えた。そもそも、喉ですら苦しかったサイズだ。自分の股間の穴に、あんなものが入るのだとは想像もできなかった。
「ま、まって……、やめて……。股、裂けちゃいますから……」
「おっ、いいねにちかちゃん。レイプされる女の演技バッチリじゃん。でも、裂けてもにちかちゃんが痛いだけだから安心してね~」
女性のことなど1ミリも思いやることのない男の言葉。にちかの心には、諦めと絶望が広がっていく。
処女を失う。いつかくるであろうその日が、まさかこんなものだとは思っていなかった。
ミリッ……メリッ……。
「つ゛……ぅ……ッ!」
にちかが声を漏らす。男根が、ゆっくりとにちかの秘所へとめり込んでいくのだ。
「い、いた゛、い……ですっ……!」
「いいじゃん、いい声出てるよ~」
男はわざとゆっくり挿入を行う。にちかの秘所の痛みが最高潮になるよう、腰を動かしては止め、動かしては止めを繰り返していた。
「う、ッ、うぅ……ッ」
身体を裂かれるような痛みに呻くにちか。だが、もはや涙も枯れてしまって流れてこない。指の折れた両手で抵抗できる訳もなく、ただただ痩身を弄ばれるように肉棒を挿入されていくことしかできない。
ミチッ……メリメリ……ッ……メリ゛ッ……。
「お~。にちかちゃんの中あったけ~」
そうして数分をかけてじっくりと、にちかの膣穴は破壊された。二度と戻らない不可逆な行為。処女膜を引き裂かれ、赤い血が滴っている。
「うわ、まじでにちかちゃん処女かよ、笑うわ」
「やっぱ処女膜破る感覚たまんねぇなぁ~」
「いた、い……。痛い、です……。ぬ、抜いて……」
先ほどのイラマチオよりもずっと全身を占有されている錯覚がにちかを襲った。股間から焼けた鉄の棒を刺されているみたい。無理だとわかっていても抜いてほしいと懇願し、当然のように無視される。
「っしゃあ、じゃあ処女にセックス教え込むわ。処女膜全部チンポで削って、最後にお前の口でチンポに着いた処女膜掃除させっからな」
にちかの耳元で身の毛もよだつような宣言をしたあと――
ずんッ! ずんッ!
男は腰全体を使ってピストンを始めた。
「い゛ッ! いたい! 痛い、って! 痛いですって……ッ!」
まるで傷口を何度も何度も殴られるような痛みだった。マンガや想像で描いたような気持ちよさなど一切無い。ただただ暴行されているだけ。
「あ~、けっこういいなコイツ……。にちかちゃん、アイドルなんて辞めて、俺たちの肉便器やんない? 毎日大好きなセックスし放題だよ」
「マジ? そんなにいいの?」
「マジマジ。JK抱くの久々だけど、やっぱいいわ~」
「お前がロリコンなだけだろ、それ」
好き勝手なことを言いつつも、周りの男たちも色めき立ってくる。目の前で男根を気持ちよくなっている男がいるのならば、自分もそうなりたいと思うのが常なのだ。
「よく考えたら、こいつアイドルなんだよな……」
「確かに。いろんな女抱いてきたけど、アイドル抱ける機会なんてなかなか無いよな……」
男たちも、自分たちの置かれた状況を理解し始める。先ほどまでにちかを痛めつけていたにも関わらず、その脳は性欲に支配されつつあった。
パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!
そんな周囲の羨望のまなざしを受けて、にちかに男根を挿入している男の腰の振りは更に速くなっていく。そしてそんな彼の腰とにちかの股がぶつかり合う音が、更にほかの男たちの劣情を高めていくのだ。
「くっそ……我慢できねえな」
「そう言うときは、やっぱここっしょ」
交わり会っている二人の体勢を強引に変えてしまう他の男たち。彼らが指し示したのは、にちかのお尻の穴だった。
「この際アナルでもいいわ、処女いただき~」
まるで残り一個のお菓子を横取りするような気軽さで、別の男がにちかのアナルに男根を添える。これから何が起きるのか、察したにちかは思わず青ざめた。
「ま、まって……ください……。む、むり……。お、お尻……こわれちゃう……」
「大丈夫だって、ぜってー気持ちよくなるから」
口から出任せだ。いきなりのアナルセックスで気持ちよくなれるはずがない。それでも、にちかに彼らの蛮行を止める術は無かった。
ミリッ……!
「ひっ、いぃ……っぎぃ……ッ!」
アナルにあてがわれた男根が一気に押し込まれてくる。ほとんど潤滑油もない状態で、まるでアナルを掘削するかのようだ。
にちかの口から悲鳴が漏れた。身体の中の空気を無理やり押し出されているような歪な悲鳴。だが男はにちかのことを思いやることもなく、ずんずんと身勝手に挿入を続ける。
メリッ……ミリミリッ……。
にちかのアナルがかすかに裂けて、赤い血が流れてくる。男たちは処女喪失だなどと騒ぎ立てているが、単なる外傷だ。しかし、不幸にもその流血が男根の滑りをよくしてしまい、挿入をスムーズにしてしまった。
「っとぉ……はいったぁ……。やべ、にちかちゃんのケツマンコまじで気持ちいいわ……。全身でセックスの才能ありすぎだろ、こいつ……」
好き勝手なことを言いながらも、ふたりの男は一心不乱に腰を振る。にちかのことなど、男根を締め付けるための穴程度にしか思っていないのだ。
「いたい……。いたい、よぉ……。た、たすけ……て……。だれか……」
にちかの声が届くことはない。むしろその悲痛な叫びによって嗜虐心を刺激された男たちは、腰の動きを更に加速させる。自分勝手で、息を合わせる気もない動き。にちかは前からも後ろからも力を加えられて、身体がふたつに分かれてしまいそうな錯覚すら感じていた。
「あ~、やべえ。チンポ苛ついてきたわ。おいガキ、口開けろ。歯立てたら殺すからな、マジで……」
目の前で3Pを見せつけられて、他の男たちもいよいよ色めき立ってきた。我先にとにちかに群がり、その口に男根を押し込んだり、両手を取って自分のチンポを握らせたりしている。
小さなにちかの身体は、今や完全に男たちによって覆い隠されてしまった。そうして群れた男たちの中で、にちかは身体をむさぼられている。まるで力つきた蝶の死骸が、アリの群によって引き裂かれているようだ。
「あ゛~~~ッ、っくそ……。搾り取ってくるぞこの奴隷まんこ……。そんなにチンポ好きかよ……」
「ケツもめっちゃいい感じだわ……。すげえの引き当てたかもな、俺たち」
「おい、口の締め付け弱いからいつまで経ってもいけねえぞ。イラマで殺すから、せいぜい喉絞めろよ……!」
好き勝手なことを言いながら責めを加速させていく男たち。膣穴とアナルに男根を押し込んでいる二人は、にちかの苦痛など考えずに手荒なピストンを繰り返す。手コキをさせている二人は、にちかの手を上から握って好みの強さで男根をシゴき続ける。そして喉奥イラマを堪能している男は、何度目かの首絞めを行い、そして――
ビュルルルルルッ!! ゴボビュルルルルッ!!!
にちかへ向けて、次から次へと黄ばんだ白濁液をぶちまけた。
「ん゛……ッ……んぐっ……ッぅぅう……!」
にちかはされるがまま。身体の穴という穴から、そして全身へ精液をぶちまけられ、全てを汚されてしまった。
「いやぁ、マジでいい拾いもんしたわ」
「いい子だね~、にちかちゃん」
「あ~、早くまんこ使いたいわ。交代しようぜ、さっさと」
口々に感想を言い合いながらも場所を入れ替わる男たち。先ほどまで群がっていた男たちの身体という支えを失って、にちかはその場へと崩れ落ちた。
「マジで最高だわ、にちかちゃん。これから俺たちで可愛がって飼ってやるからな~」
にちかにとっては絶望しか感じない台詞。しかし、ここから逃げ出すことは叶わない。男たちの肉便器としてのにちかの人生が、新たに始まったのだ。
■ ■ ■ ■ ■
しかし、そんなにちかの第二の人生はわずか数時間で転機を迎えた。
簡単な話だ。男たちが飽きたのだ。
「いや~、最初はよかったけどなぁ……」
「なんか、よく考えたら大したこと無かったな。胸ちいせえし」
「てか、汚くなりすぎだろ。抱く気も起きねえわ」
先ほどの様子とは打って変わってにちかを罵倒する男たち。彼らの視線の先には、変わり果てたにちかがいた。
髪は何度も掴まれてボロボロ。服などは当然残っておらず、身体には無数の痣や歯形が残っている。股間から垂れ流される精液には血が混じっていて、しかも膣穴だけではなくアナルからも漏れ出していた。そして、全身へ幾重にもかけられた精液。固まってしまい髪の毛へ固着している物もあれば、まだぬるぬると温かい物まである。
そんな状態で、にちかは床に寝ていた。もはや身体を起こす気力もないのだ。
「み……みず……。みず……のみたい……」
唯一発した言葉はそれだけ。ここに来てからというもの、にちかは一滴の水分も取らずに犯され続けていたのだ。
「水だってよ~?」
「お~、確かにそうだわ。ほれ、水だぞ~」
そう言いながら、男のうち一人がズボンのファスナーを下げる。勃起していない、だらんとした男根。それを持って、床に寝たままのにちかに狙いを定めると――
じょっ……じょろろろろろろろ~~~……。
なんの躊躇いもなく、彼女の顔へ向けて放尿を始めた。
「んぶふッ……!?」
いきなりのことに驚くにちか。一瞬せき込み、目を見開き、しかし……。
「んっく……んっく……んっく……」
数時間ぶりの水分に飛びつくように、大きく口を開けた。
「おい! こいつションベン飲んでんぞ」
「うわっ、最悪だわ。もう絶対フェラさせらんね~」
「てか、マジで変態だなコイツ。ワンチャン、俺たちに犯されたくて絡んできた説あるだろ」
「そんなにションベン好きなら、シャワーも浴びさせてやるよ」
その言葉が合図だった。男たちは各々ズボンから男根を取り出すと、にちかの身体に狙いを定める。
じょろろろろろろろ~~~……。
ジョボボボボボボ……。
じゃ~~~~~~……。
そうして彼らは、にちかの全身へ尿を撒き散らし始めた。辺り一面に立ちこめる臭気に、本人である彼ら自身ですら顔をしかめる。だが長い時間冷たい床に放置されていたにちかにとっては、尿ですら温かい物はありがたかった。
やがて、長い放尿が終わる。にちかは床に出来た尿溜まりに寝転がる、まさしく雑巾のような状態。
「いや~。マジでくそだなお前。生まれてきて恥ずかしくないのかよ」
「そんだけマゾならさ、俺やってみたいことあんだよね」
そう言いながらにちかに近づいていくのは、咥え煙草をしながら放尿していた男だ。彼は短くなってきた煙草を指で摘むと、にちかの側へ寄り――
ジュゥゥゥゥゥゥゥ……ッッッ!!!
「あ゛ッッッ!!! ッガァアッァ……ッッッ!!」
彼女のへそに、その煙草を押しつけて灰皿にしてしまった。
さすがのにちかも、大きな声を挙げて身体を起こそうとする。けれど彼女の四肢は他の男たちによって先んじて踏みつけられる形で押さえられていて、にちかに出来ることは、ただ関節が外れそうになるくらいの激しさでのたうち回るだけだった。
「おっ、これ面白いな。めっちゃ跳ねるじゃん」
「こいつのヘソ、吸い殻でいっぱいにしようぜ」
そう言いながら、男たちが一斉に煙草へ火を点ける。この後起きること、自分の身に降りかかることを想像して――けれどにちかには何も出来ず、あまりの苦痛と疲労、そして恐怖のせいで、自ら意識を手放すことしかできなかった。
■ ■ ■ ■ ■
次に七草にちかが目覚めたとき、彼女は全く別の場所にいた。
まず、寒い。風が流れ込んできていて、空間全体が冷え切っている。先ほどまで暴行と凌辱を受けていた廃墟は、まだ風を防げるだけ良心的だったと思えるほどだ。
「あ……え……? な、なに……?」
自分の状況を理解できていないにちかだが、更にわからないことがある。身体が動かせないのだ。全身を固められていて、動くのは指先くらい。肘膝、手首や肩に至ってもロクに動く部位はない。
「おっ、気がついたね〜。まだ寝てたら、根性焼き増やすとこだったわ」
そんな声が、頭の上からかけられた。
首だけは辛うじて動く。全身が固められているせいでそれすらも痛みを伴うが、にちかは必死に首を動かして、声の方を向いた。
あの廃墟にいた男だ。にちかへ、最初に煙草を押し付けた男。彼がニヤニヤと相変わらず下卑た笑みを浮かべながら立っている。
しかし、彼だけだ。他の男たち――にちかを散々に嬲り、貶め、汚しきった男たちは何故かいなかった。
ここに至って、ようやくにちかも自分の状況がわかってきた。縛られているのだ。ロープやビニール紐、あるいは結束バンド。そんな、ありとあらゆる拘束具のごった煮キャンバスのようにされている。
そして、自分がどこにいるのかもわかった。トイレだ。公衆トイレ特有の薄い壁にドア。そして、ドアの方に立っている男の背後にチラチラと見えるのは、にちかには馴染みの薄い男性用の小便器だった。
やっとのことでにちかは全てを理解した。度重なる暴行と凌辱で意識を失った自分は、いつの間にかあの廃墟から、どこかわからない公衆トイレに連れてこられていた。
そして、個室の洋式便器のうえに座らされていて、全身をギチギチに拘束されていて動くこともできない。脚をM字に広げられて、手は後ろに。両脚を限界まで広げているような体勢のせいで、狭い個室目いっぱいに詰まっているような状態だ。身体を揺らして、便器から落ちることすら出来ない。
「な、なんで……ここ……?」
状況は理解できても、彼らの意図は一切理解できない。なぜこんなことになっているのかと問いたそうに口を開くにちかだが、身体を縛られているせいで声も満足に出せない。
「いやさー。にちかちゃん、犯しすぎて汚くなったじゃん? 俺たち綺麗好きだからさ、汚い女の子抱きたくないんだよね〜。――だから、にちかちゃんは、他の人にあげようと思って。にちかちゃんもマゾだから、知らない人とセックスすんの好きでしょ?」
すらすらと、正しく他人事のように並べ立てられる言葉。その一個一個が、にちかには絶望的な全国だった。
「やっ……やだ……。な、なんで……。か、飼ってくれる、って……」
「いや、にちかちゃん自分をマワした奴らに飼われたいとかマジでマゾすぎ〜。そんなことなら、この先も楽しめるから平気だよ」
「あっ……。や、やだ……。置いてかないで……助けて……。な、何でもします……。おまんこ使っていいし、お尻の穴もいいです……。せ、精液も……おしっこも飲みます……。は、灰皿にされたっていいですから、たから……!」
必死に懇願するにちか。男はその様子を楽しみつつも、もうにちかに対しての興味は然程残っていないようだった。
「う〜ん、別にいいかな〜。だって、にちかちゃん普通だし。最初はアイドルだからって燃えたけど、よく考えたら大したことないしね〜。ちゃんとにちかちゃんがマゾだってわかるようにしておいたから、たぶん平気だよ。じゃあね、バイバイ〜」
「や、やだ! やだ! 待って! 待って! 行かないで! お願い! お願いします! お願いします!」
にちかの悲鳴は虚しく響くだけ。男の足音はカツカツとトイレの床に響き、そしてそのまま去っていった。
にちかが痛む身体に鞭打って何とか脱出しようと足掻き、決して自分の力では拘束を解けないと悟って絶望してから、しばらくして。
男子トイレに何人かの足音が入ってきた。
若い男たちだ。小便器へ向かい合う前に、空いたままの個室に放置されているにちかと目があった。
「あっ……ぇぅ……た、たすけて! 助けてください!」
なりふり構っていられずに、にちかは叫ぶ。男たちは面食らったように驚いたが、しかしにちかを助けようとはしなかった。
「うわ、やばくね……? 撮影かな?」
「いや、カメラは流石にないだろ」
にちかのことを観察しながらも、決して近付いたり、助けようとはしない男たち。彼らは、にちかの傷だらけの身体をカメラに収めたり、全身に書かれた落書きを読み上げたりしていた。
「中出し回数二桁はヤバすぎ」
「“セックス大好きなド変態です”、って見ればわかるわ!」
「“犯してください”って言われても、流石に汚すぎるわ……」
彼らがにちかの助けを求める声に対し、耳を傾けることはなかった。
「えーっと、七草にちかちゃん? ネットで宣伝しといてあげるから、変態プレイ頑張ってねー」
そう言って、彼らは去っていった。
次に現れたのは、にちかのファンを名乗る男だった。
「うおおおお! にちかちゃんとセックス! にちかちゃんとセックスだっ! 絶対、絶対妊娠してねッ!!」
「や、やめて! イヤッ! 助けてッ!」
拘束されて動けないにちかに抱きつき、便器ごと押しつぶすような激しい交尾を繰り返す。当然、避妊などしない。にちかが抵抗してもやめず、助けを求めても助けず、ただ濁りきった劣情をぶつけていく。
先程の男たちがSNSに投稿した画像が、深夜のネットを駆け巡っていく。しかし、悪い情報というものはそれを悪用したい人間たちに集まるもの。にちかを必死に探すプロデューサーたちは、まだ流れている情報に気がつけていない。
いつの間にか、公衆トイレには列ができていた。にちかを知る者、野次馬、ただハメたい者。そんな人間たちがやってきては、代わる代わるににちかを犯していく。
「痛い……痛いよぉ……」
一晩で何回も犯されすぎて擦り切れてしまった膣穴。けれどそんなことはお構い無しで続く凌辱。
最初は、にちかを抱きたい人間が集まっていた。けれどだんだん、自らの順番が来ても顔をしかめて、何もせずに去っていく人間が増えていく。ただ去っていくだけならまだしも、にちかへ唾を吐きかけたり、根性焼きを増やしたり、蹴りを見舞う者もいる始末だった。
そうして最後に残ったのは、この辺りを根城にしているホームレスたちだった。
(くさい……! 汚いっ……!)
「あー、女抱くなんていつぶりだろうなー」
「しかもこんな若い女の子をなぁ。今日はいい日だなぁ」
ホームレスたちは、にちかに暴力を振るうことはなかった。しかし、性欲は並大抵ではなく、何度も何度もにちかを犯す。得体のしれない斑点の浮いた、もうどれだけ洗っていないのかもわからない男根を挿入され続ける。
(あぁ……。私……ゴミになっちゃった……。私……ゴミ箱、なんだ…………)
そうしてにちかが正しく一晩中、日の出るまでの間、何十人にも犯されたあと。
誰もが去った男子トイレに、ようやく警察とプロデューサーが駆け込んできたのだった。
弊社所属アイドルの七草にちかにつきまして
日頃より弊社の活動に対し、ご理解ご支援を賜り感謝申し上げます。
弊社所属アイドルの七草にちかについて、健康上の問題から、しばらくの間活動を休止することとなりました。休止期間は長期に渡る見通しです。
復帰時期は未定ですが、また皆様の前で万全のパフォーマンスが出来るまで回復するものと信じております。
今後とも、七草へのご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
283プロダクション 代表取締役 天井努