DESCRIPTION
「「今、お客さん2人入ったよー」」
「「おっけー」」
ドスンッ!!ドスンッ!!
(ひぃぃっっっ!!!)
果てしなく広い教室という空間で、むちむちのJK美脚が空を飛び交っていく。重機のような足が床に着地する度にドスンッ!!と恐ろしい音が響き渡り、次の瞬間には肌色の巨大な柱が遠くの方に去っていく。かと思えば、また別の巨人が足踏みを降らせてきて。
さっきまで対等なクラスメートだったはずの女子たちの歩行に、何度も命を刈り取られそうになった。
(にげっ、にげ、ないと…!!)
お化け屋敷の外に出た後に、段ボールのトンネル内に戻る穴をガムテープで塞がれてしまった俺は。段ボールの壁に必死でへばりつきながら、自由気ままに歩き回る女神たちの脚に恐怖しながら、その凶悪な重量の足がこちらに落ちてこないことを祈り続けるしかなかった。
「「あははっ!!」」
ズンッ!!ズリッ…ズリッ…!!
(っっ……)ビクッ…!ビクッ…!!
俺がいる場所から1タイルだけ離れた所に、また別の女子たちが脚を踏み下ろす。何気なく談笑しつつ、時折笑っては上履きを教室の床に無意識に擦り付ける。その音が恐ろしく、まるで自分のような小さい虫を擦り潰そうとしているように見えてしまって。
(ごめんなさい……ごめんなさいっ……!!)
クラスメートの巨体に、心の中で命乞いをする始末。ローアングルすぎて顔もよく分からない巨大女子にいくら祈り続けた所で、帰ってくるのはむっちり太ももが重力に合わせて揺れるえっちな光景だけ。当の巨人本人は足元の矮小なクラスメートに気づくわけもなく、いつも通り友達と駄弁っているだけなのだ。
ただ、体格差があるだけで。ただ縮小スプレーをかけられただけで、神様と虫レベルの関係性まで堕ちてしまうなんて。…もはや、意思疎通を図ろう、気づいてもらおう、という気にすらならなかった。
「はあっ…!!はあっ…!!」
そして、俺が取った行動は。とにかく、あの美脚が落ちてこない教室の隅まで逃げることだった。幸い俺がいた場所は教室の後ろ側にやや近かったため、そちらを目指して必死に手足を動かして走っていく。…本当に命がかかっているだけあって、あまりに必死だった。
そして1分後。教室の後ろでマス目状に並んでいる、扉のないロッカーの目の前までたどり着くことができた。ロッカーはクラスの人数分あり、ここは空き教室だがお化け屋敷のスタッフである女子たちの荷物置き場と化していた。一つ一つのロッカーがちょっとしたコンサートホールくらいの大きさで、その空間を容易に埋め尽くすほど大きなスクールバッグや水筒、脱ぎ捨てた上着などが押し込まれている。
(でか………)
女子たちの私物のあまりの大きさに気圧される。無造作にロッカーに詰め込まれたそれらは、その一つ一つがこちらを質量で威圧してくる。私物の大きさは、持ち主である女子たちの部位の巨大さを物語っていて、それを嫌でも想像させられる。あのバッグを持てる手の大きさ、あの水筒を飲める口の大きさ、あの上着を羽織ることが出来る上半身の圧倒さ。
しかし、そこに圧倒されている場合ではない。…幸いにも、一番下のロッカーは教室の床と段差がなく。俺は誰かの私物が詰め込まれたロッカーの空間に足を踏み入れた。ここなら、女子の足が直接降ってくることはないはずだ。
(…………)
ロッカーの空間の中は、甘く漂う思春期女子の香り。それがどの私物から出ているのかは分からない。上着やスクールバッグに僅かに染み込んでいた匂いは、虫のような人間にとっては強い強い香りとなって鼻腔を支配する。対等なサイズだったら、よっぽど近づかないとこれほどの匂いは感じないだろう。…本人さえ意識していなさそうな私物の香りを強制的に意識させられるという、倒錯的な被支配感。この匂いが誰のものなのかすら分かっていないのに、変な興奮が生まれてきてしまう。
「ここならしばらく大丈夫だろ…「「あっつ~」」
ドスンッ!!ズンッ!!
「ひっ……あ……」
突然ロッカーの外の景色に現れたのは、巨大な上履き。ロッカーの中に避難しているから大丈夫とは言え、本能を揺さぶるデカさの上履きが無造作に降ってくるのだから、いちいち怯えて絶句してしまう。
「「上履き履いてるの暑くなってきた~」」
「「脱いじゃえばー?」」
目の前に鎮座する上履きに突っ込まれているのは、肌色の巨大おみ足。他の女子のように紺色のソックスに包まれておらず、すべすべの素肌がむき出しになっている。素足をそのまま上履きに突っ込むという行儀の悪い履き方は、恐らく運動部の誰かだろう、と直感で思った。
ただの素足なのだが、何となくあまり見てはいけないような気がしていた素足履き。女子の素足に興味があったわけでもなかったのに、こうしてあまりにも巨大な景色でそれを見せつけられると、目が離せなくなってしまう。
「「よいしょっと」」
ぎゅむっ……ぎゅっ……!!
ズンッ…!!!
(あ…………)
足だけの巨人は、上履きに突っ込んでいた素足を無理やり外に開放する。くたくたになった上履きがドンッ!!ドンッ!!と教室の床に叩きつけられると、その後を追うようにズンッ!!ズンッ!!と生の素足が2つ、遅れて降ってくる。
初めて、女子の素足をこんなにまじまじと見たかもしれない。足の指一本一本だけで、俺の身体を容易に捻じ伏せてしまえる大きさ。その指を従えている足本体はすべすべの肌色で、美しい足の造形美を主張していた。ちょっとだけ骨の形が見えて、それでいて柔らかな肉付きもあり。運動部女子の何気ない素足は、美しさと健康的な柔らかさを兼ね備えていた。足の裏は見えてはいないが、巨体を受け止めるためのクッションとなる柔らかな肉が少しだけはみ出していて。
あの足裏に踏まれてしまったら、どうなるのだろう。
「「んっ」」
ドンッ!!ゴロゴロッ…!!
「うわあっっ!!??」
ぼーっとしていた所に、突然巨大な上履きがロッカー内に転がり込んでくる。JK素足が、行儀悪く上履きをロッカー内に蹴り込んだのだ。この女子にとっては足を纏うだけの取るに足らない大きさかもしれないが、小人にとっては凶器となり得る巨大なオブジェクトが無造作に転がってくるのだ。あまりに大きな質量が迫ってくる光景に、俺は逃げる判断すらつかず、頭を抱えてうずくまるしかなかった。
「「あー、涼しー♪」」
ダンプカーのような上履きが、一方は俺の右隣に着地し、もう一方は左隣に横向きになって着地する。左右の上履きに取り囲まれ、巨大な女子の足に直接挟まれているような気分に陥る。
「…っ、げほっ!!げほっ!!」
強烈に濃厚な足裏の匂いが、一瞬でロッカー内の空気を塗り替える。あまりの刺激臭に思わず咳き込んでしまう。左側の上履きは、足を入れる上側の部分がちょうどこちらに向く形で倒れており。汗にじっとりまみれた素足が押し込まれていた、上履きの内部がこちらに曝け出されていた。運動部女子の素足に散々踏みしだかれた中敷きは黒ずんでおり、その中にどれだけの汗が染み込んでいるのか想像するだけで途方もない。その中敷きから香り立つ匂いはあまりに過激で、目から涙が出てくるほど。
「「脱いだの?」」
「「うん、床ひんやりして気持ちいいよ~」」
ロッカーの外から聞こえてくるJKの声と、ロッカーの中を蹂躙する上履きの濃厚の匂いが、同一人物のものとは到底思えない。あまりのギャップに鳥肌が立ち、それが興奮によるものなのかよく分からなかった。…ただ、少なくとも、目の前に広がるくたびれた中敷きを見て、散々巨大素足に踏みしだかれて汗を染み込ませられた中敷きを見て、羨ましいという気持ちが僅かに心の隅にあったのは確かだった。
それでも、あまりの刺激臭に、ロッカー内に留まることはできなかった。
(は、早く、外へ…!)
俺はふらふらとよろめきながら、ロッカーの外へ一目散に逃げだす。とにかくこの空間には留まっていられない。外の危険性も顧みず、俺はロッカーの外へ飛び出した。
「「~~♪」」
ズンッ!!ズンッ!!
「ひああっっ!!??」
当然、まだロッカーの外には巨大素足が鎮座していて。上履きから解放された素足が、遥か上空でスマホでも弄っているように思われる巨人の気の向くままに、床にぽんぽんと叩きつけられている。素足の熱気は凄まじく、ズンッ…と教室の床に着地した足裏が数秒後に持ち上げられると、みちちっ…♡と汗が引きはがされるような音を響かせる。足裏が密着していた部分の床は一瞬で湿ってしまい、巨大素足の形が刹那的に教室の床にその造形を残していくのだ。
「はあっ、はあっ…!!」
JK素足が恐ろしくて、魅力的で、しかし凶悪で。一心不乱にその素足の領域から逃げ惑う。必死で走り、息が切れ、ふと後ろを振り返った時に、巨大な生脚のテリトリーから一向に抜け出せていない現実に絶望する。いくら走ろうと、この女神が一歩踏み出すだけで容易に跨ぎこされるスケール感。
それでも必死に歩みを進め、ついに段ボールトンネルの側面のところまで走った俺は。
(あ、開いてる…!)
トンネルの側面に、まだ女子が気づいていないであろう別の隙間が開いていることに運よく気づいたのだった。俺はその隙間に何とか身体を入り込ませた、その瞬間。
ドスンッッ…!!ドスンッ…!!!
「「シフト終わったしどっか行こー」」
数秒前まで俺がいた床の上に、先ほどの巨大素足が凶悪な音と振動を立てて着地したのだった。
「…………」
すんでの所で回避した俺は、段ボールトンネルの中に入ってからへたり込む。誇張でも何でもなく、あと一瞬遅れていたら死んでいた。誰のかもはっきり分からない素足の柔らかな足裏にむにぃぃっ♡と圧し潰され、人知れず息絶えていた。
リアルな命の危険を実感させられた俺は、もはや腰が抜け、足を進める勇気を失っていた。
(もういやだ…動きたくない……)
俺はトンネル内で座り込み、外から少しだけ聞こえてくる足音や振動に恐怖して震えながら、そのまま動くことができなかった。
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キーンコーンカーンコーン……
"あと10分で、文化祭が終了します"
(……え?)
トンネル内で塞ぎこんでいた俺は、不意に外から聞こえてきたチャイムと放送の音を聞いてハッとした。もうそんな時間か。いや、俺がずっとここで震えてたから、時間が経ってしまったのか…。
「「あと10分だってー」」
「「お客さん、後何人トンネルに残ってる?」」
外から女子の声が聞こえてくる。ここはトンネルの壁の隙間に近い場所なので、外の声が聞こえてきやすい。
「「30分前から新しい人入れてないから、もう順路の最後の方にしかいないと思うよ」」
「「じゃあ、そこまでは片付けて大丈夫だね」」
女子たちの打ち合わせの声が聞こえてくる。が、ぼーっと聞いていた俺は、その内容が何を意味しているのかを頭で分かっていなかった。
「「よっと」」
バリバリバリッッ!!!
「ああああっっっ!!????」
突然の出来事だった。トンネルの天井に亀裂が入ったかと思うと、もの凄い音を立てながら巨大な手のひらが割って入ってくる。それは今までのようなお化け屋敷としての驚かせではなく、業務的な、このトンネルを破壊しようとする手の動きだった。
メリメリッ!!ビリッ!!!
「やめっ、いる、いるからっ!!!」
トンネルを繋いでいたガムテープが乱雑に剥がされ、俺がいた場所の5メートル後方からのトンネル部分が容易に切り離される。一瞬にして教室の明るい光が差し込み、トンネルを素手で破壊する巨大クラスメートの姿が見えてくる。その姿は、都市を破壊する怪獣にしか見えなかった。
「「なんかもったいないねー」」
「「でも使い道ないし(笑)」」
バリバリッッ!!!
JK巨人がしゃがみながら、巨大なトンネルを恐ろしい音を立てながら破壊していく。耳をつんざくような破壊音がひたすら恐ろしく、何か巨大な災害に遭っている感覚。しかし実際は災害ではなく、目の前で無意識にしゃがみ巨大パンツを見せつけている元クラスメートの片付け行為でしかない。むにぃ…♡と張り出した太ももの付け根は女の子の柔らかな肉付きを主張しているのに、その巨人は人間を破壊してしまえる怪力を持って俺の居場所を襲っているのだ。
(逃げないと死ぬっ…!!)
美脚を見せびらかしながら破壊の限りを尽くすJKたちから逃げようと、全力でトンネルの奥の方へ走っていく。早く順路の奥の方に行かなければ、この片付けという名の蹂躙に巻き込まれてしまう。
バンッッ!!!
「ぎゃあああっっっ!!??」
一瞬の出来事。走っていた俺の僅か2, 3メートル後方に、巨大重機のような上履きが着地した。
「「あははっ、気持ちー♪」」
「………」ビクッ…ビクッ……
トンネルの天井ごと突き破って出現した巨大上履き。その風圧で転ばされた俺は、腰を抜かしたまま身体を震わせる。見上げれば、天に向かってそびえ立つぶっといJK美脚。むちむちのたくましい太ももとふくらはぎが、格の違いを見せつけるかのように見下ろしてくる。
後少しでも逃げ遅れていたら。誰かも分からないただのクラスメートに、虫のように踏み殺されていた。
「「足で壊した方が早いかもね」」
「「おっけー」」
バンッ!!ドンッ!!!
メリメリメリッッ!!!
(いやだっ、いやだっ…!!)
女神たちのむっちり滑らかな脚が、天から雷を落としまくる。段ボールの天井を容易に踏み抜き、破壊し、感じたことのないようなレベルの地響きをそこら中に響かせる。もう何が起こっているか分からない。無数の上履きが、まるで俺という虫を踏みつぶそうとよってたかっているように被害妄想する。巨大な上履きが、女子たちの履物でしかないことも忘れていく。ただただ、圧倒的な上位存在に蹂躙される感覚だけが残っていた。
バンッ!!ドンッ!!!
ドンッ!!!バリバリッ!!
「「早く終わらせて遊びたいね」」
「「そうだね~」」
世間話をする女神たち。命を懸けて逃げる小人。その差はあまりに残酷で、俺に一生治らない被虐心を刻みつけようとしていた。
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「はあっ、はあっ、はあっ!!!」
たっぷり5分間。俺は女神たちに踏み抜かれていくトンネルをひたすら走り、お化け屋敷の順路の奥へ奥へと進んでいった。
…そして、最後の部屋らしき空間にたどり着いた。立方体のような真四角の段ボール空間まで走り込んできた俺は、次に向かうべき通路が無く立ち往生していた。
(…もう…終わりなのか…?)
ここがお化け屋敷のゴールなのだろうか。出口は見えないけど…。女子たちの破壊の手がここまで及んでいないことから、恐らく順路の一番最後の方であることは予想できた。
もう、一刻も早く元の大きさに戻りたい。それしか考えていなかった。
(早く出してくれ…!)
小さくなって、大きな女子たちの部位に興奮していた自分が愚かしい。興奮できていたのは自分が段ボールトンネルに守られていたから。女子に手加減してもらっていたから。いざ巨大な女子の無意識な行為に巻き込まれると、こんなにも危なくて恐ろしいのかと実感させられた。巨人たちに勝てる要素なんて何一つない。矮小な存在の俺は、女子たちの指一本にすら勝てない。クラスメートの気まぐれ一つで、上履きのシミになってしまう存在なのだから。
バタンッ!!
「っっ!!」
いきなり、後方で音がした。
「…え?」
後ろを振り返ると、元来た道が段ボールの板で塞がれていた。…俺は、一瞬にしてこの立方体の空間に閉じ込められたことを知った。
嫌な予感がむくむくと膨れ上がってくる。
「「こんにちは~」」
「ひっ…!!」
段ボール内に、かなり鮮明な女子の声が爆音で響いてくる。明らかにこの段ボールの近くまで口を近づけて、中にいる小人に向かって話しかけている。
「「あなたは、このお化け屋敷で最後のお客さんです」」
爆音は続けて響き渡る。
「「特別サービスとして、怖さ100倍サービスしちゃいまーす♪」」
「は……?」
プシュゥゥゥッッ……
響き渡った台詞の意味を考える間もなく、段ボールの隙間から何か白い空気が流れ込んでくる。
(え…うそ……)
その空気が何か、すぐに分かってしまう。お化け屋敷に入る前に吹きかけられたスプレーの色と全く同じ。
…しかし、抵抗する間もなく意識が遠くなる。
------
「………う……」
すぐに、目が覚めた。たった今スプレーのようなものを吹きかけられたことを覚えている。だとすると、じゃあ…。
起き上がって周りを見渡すと。
「な……広すぎ…だろ……」
先程までは教室くらいの広さだった段ボール空間が、野球場くらいの広さまで拡大していた。その中央当たりに佇んでいる俺からは、もう段ボールの壁など遠すぎてたどり着ける気がしない。段ボールの床の波打つ高低差もかなりのもので、ちょうど平坦な所に立っていないとバランスを保てないほど。天井は、今まで見た建物のどの天井よりも高くて。普通なら雲がありそうな高度にやっと段ボールの天井が存在しているのだ。
明らかに身体を再度縮められた俺は、途方もない大きさの空間に取り残された。
「こん…なの……」
バンッ!!!!!!
「っっっっっ!!!!???あああああああああっ!!!!」
突然空間に加えられた衝撃と爆音。
ビリビリビリビリッ……!!!
続けて、余震が10秒ほど続く。片耳がおかしくなって音が聞こえづらくなった俺は、放心状態のままビリビリ震える段ボールの床に揺らされ続ける。
もはやどれだけ巨大になっているか想像もつかない女子たちが、ダンボールの天井に平手打ちをしたのだろう。…それはもう、文字通り災害ともいえる規模。粒のような俺の身体は、空間越しとは言え女子たちの何気ない手の動きに耐えられない。何か一つでも掛け違いがあれば、一瞬で命を奪われる。
そう、確信した。
バリバリバリッ!!!
ズウゥゥンッッ…!!!
「………あ…あ………!!」
再び途方もない爆音が響き、ついに天井が破られる。そこから降ってきたのは、天を埋め付くすサイズの肌色の手。人の手とは到底思えないサイズのそれは、一瞬のうちにこちらに降ってきて、肌色の巨大な柱の鉄槌を降らせて。
10メートルほど近くの場所に、ビルのようなサイズの肌色の指が突き立てられた。
(これが……女子の……指……?)
想像を超えたサイズ差に、脳が正常な認識をしなくなる。この高層ビルのような巨大建造物が、ただの女子高生の、指?…しかしよく見れば、側面にはピンク色の固くて薄い爪のようなものがあって。その裏側は複雑な模様の指紋が、指の腹いっぱいに広がっていた。柔らかそうな指の腹、爪、それぞれが普通の人間の指であることを主張している。しかし、そのサイズは凶悪なほど大きくて。
「……っっ」ビクビクッ……
近くに指を突き立てられただけで、震えが止まらない。だって、こんなの。こんな大きなものを自由自在に動かせる上位存在がいるという事実が、恐ろしくてたまらない。俺の命は、この指の持ち主であるクラスメートに完全に握られているのだ。女神が指先を少しでもずらせば、なんの手ごたえもなく数ミリサイズの男子が擦り潰されて一巻の終わり。
メリッ……
「っっ!!!」
そんな神の指先が、音を立てて持ち上がる。指先の位置は少しだけ調整され、再び床に向かって降ろされていく。
降ろされる指の向きは、明らかに俺のいる場所に向いていた。
「ああああああああっっっ!!????」
ズウゥゥゥゥンッッッ!!!!
……
…
「………?」
死んだ、と思った。女子の指先に潰され、人生が終わることを確信した。
ただ、生きている。
「………あ………な……」
伏せた状態から恐る恐る周りを見て、驚愕した。
(指の先の…した……?)
目の前に肌色の壁。真後ろには、白みがかった半透明の固そうな壁。左右は塞がれていない。…俺は、床に突き立てられた指先の肉と爪の間に囚われていた。
指先にこんな空間があることすら知らなかった。砂粒のように小さくさせられた俺は、女子たちと同じサイズだった時には想像もしなかったような部位の隙間に入れられてしまったのだ。
そして、自分の場所を把握したのも束の間。
メリッ……
もはや俺の世界同然の巨大指先が、また少しだけ空中に浮かせられる。
そして、
ズウゥゥゥゥンッッッ!!
ズウゥゥゥゥンッッッ!!!
ズウゥゥゥゥンッッッ!!!!
「ぎゃああああっっっ!!???いやっっ!!???ああああああっっ!!??」
何度も、何度も、世界がひっくり返るような衝撃と爆音と光景を見せつけながら、指先が打ち付けられる。俺のすぐ目の前と後ろに、巨大指の肉と爪が何度も突き立てられる。指が着地する位置が少しでもズレれば、その瞬間に死ぬ。俺は指先が持ち上げられる度に自分の死を覚悟し、1秒後に激しく着地した女神の指先に命乞いをする。しかし再び持ち上げられる指先に絶望し、何度も何度も命を奪われる覚悟をさせられるのだ。
どんな恐怖体験よりも恐ろしい、自らの死を突き付けられる最凶体験。
ズウゥゥゥゥンッッッ!!
ズウゥゥゥゥンッッッ!!!
「やめて下さいっ!!!お願いしますっ!!!お願いっ!!!」
涙と鼻水を垂らしながら、みっともなく泣き叫び続ける。誰に命乞いをしているのかも分からない。ただひたすら、俺に天罰を下し続ける女神様の指先に向かって、声を枯らしながら願いを乞うしかなかった。
ズウゥゥゥゥンッッッ!!!!
「あああ……ああ………」
トドメのように、ひと際激しい力で突き立てられた指先。力を入れたことで少し座標がずれたのか、俺の身体のギリギリ50cm後方に巨大な爪の壁がそびえ立っていた。
俺は、失禁していた。人生で初めて、恐怖で漏らしてしまったのだ。クラスメートの女子が、戯れに指先をつんつん突き立てているだけなのに。たったそれだけの動きが恐ろしく、泣き叫び、失禁させられた。もう、元のサイズだったころの自分が想像できなかった。目の前の指先の持ち主は、絶対に逆らえない上位の神様。住む場所も、見ている世界も違うのだ。…そう考えないと、プライドがズタボロになってねじれそうだった。
ズズズズッ……!!
高層ビルのような指先が、天に向かって上昇していく。そのまま、天井に開けられた穴を通って外の世界に帰っていく。…天井の大穴からは、外の世界の明かりが差し込んでいた。
「「「ちょっとやりすぎたかな?」」」
「「「いいんじゃない?最後のサービスだし」」」
遠くの方から、神々の声が響いている。先ほどまで爆音のように感じていたそれは、今や天から全世界に向けて鳴り響く福音のようで。音の発生源が遠いのか近いのか分からないが、とにかく脳に直接なり響いて止まないのだ。
「「「息かけてあげよー♪」」」
鳴り響く声と共に、何か巨大な物体が段ボールの外でズンッ!!ズンッ!!と動いているのが分かる。…一瞬上空に見えていた顔の雰囲気と、この声。明らかに冬野のものだった。1週間前、小さくなった俺の前に巨大な太ももを無意識に見せつけた冬野。彼女の一挙手一投足は全て段ボールの世界を震わせ、その中にいる小人を際限なく転ばせ続けた。
そして、
ズボッ……!!!!!
「ぎゃあっっ!!??」
段ボールの側面が、またも巨大な手によって容易に穴を開けられる。女子高生の手の一撃で、直径何十メートルにも及ぶ大穴がやすやすと開けられてしまう。
そこに、
「「「………♪」」」
「あ…………」
現れたのは、巨大な巨大な桃色の唇。そのシワですら俺の身体より大きいくらいの、途方もないサイズ。もう少し俺が大きかった時に目の当たりにした唇は、まだ俺の全身のサイズと対等で、キスしてほしいという倒錯的な欲求を感じさせるほどだった。
…しかし、今目の当たりにしている唇は、もう別の世界の存在で。あの唇にキスされようものなら、その重量感に耐えきれず一瞬で唇のシミにされてしまうだろう。そのまま、ぶっとい巨大な舌で舐め取られて終わりかもしれない。
にちゃぁっっ…♡♡
そんな女神の唇が、卑猥なリップ音を世界に響かせながら開け放たれる。
むわあぁっっ…♡
それだけで、巨大な口内に閉じ込められていた蒸れ蒸れの吐息が、段ボールの世界に大量に流れ込んでくる。まだ意図的に息を吐いてもいないのに、そこら中が蒸れた女子高生の吐息の熱と匂いでいっぱいになっていく。
冬野の唇の匂い。吐息の匂い。唾液の匂い。全て埋め尽くされ、塗り替えられていく。完全に冬野の支配下に置かれた段ボールの世界は、ねっとりとした濃い匂いの唾液で床中が濡らされ、湿度がまだ高まっていく。
そして、
「「「……はあぁぁぁー…♡♡」」」
むわあぁぁっっっっ……♡♡
冬野の唇の奥から暴風のような吐息の風が放出され、世界の空気をめちゃくちゃに塗り替えていく。このサイズ差で吐きかけられる吐息の湿度は、容易にこちらの覚悟を超えていた。一瞬にして俺の身体に数十センチサイズの唾液が付着し、足先から髪までねっとり唾液でびしょびしょになる。髪からは常時唾液が流れ続け、口を少し開ければ冬野の唾液が大量に入ってくる。
「げほっ!!げほっ!!げほっ!!!」
思わずむせた俺は、それでもかなりの量の唾液を飲み込んでしまう。ずっしりとした液体が胃の中に入っていくのを感じる。身体の中から冬野の体液で犯されていく感覚に、鳥肌が止まらない。
辺りを見渡せば、唾液の水たまりどころではない、完全に洪水状態。段ボールの床が直接見えている部分は存在せず、冬野の唾液が数十センチ溜まった状態となっていた。
ばしゃっ…びしょっ……
一歩踏み出すたび、べとべとの液体が纏わりつく。まさに、女神の唾液の災害だった。あの冬野の可愛らしい唇の中から、こんなにも恐ろしい量の唾液が放たれるなんて。…冬野の顔と、目の前の異常な光景を対比するほど、脳がおかしくなりそうだった。
「「「すぅ……」」」
巨大な唇がおもむろにすぼめられる。柔らかなリップの細かな動きまで全て見せつけられ、その度に目を奪われてしまう。
「「「すうぅぅぅー…♡♡」」」
ばしゃばしゃばしゃっっ!!!
「うわあっっ!??ああっ!!??」
また強烈な吐息を吐きかけられたのかと思った。ものすごい量の空気が移動し、俺は耐えきれずその方向に走らされ、しまいにはもんどりうってバシャッッ!!と唾液のプールにダイブしてしまう。
「「「すうぅぅぅー…♡♡」」」
「げほっ!!!がぼっ!!!」
冬野のよだれをしこたま飲み込みながら、非常事態に気づく。俺は今、あの巨大な唇に向かって吸い寄せられていた。あの巨人の唇が、とてつもない力で空気を吸引しているのだ。…いや、本人は軽々と吸っているだけかもしれないが、今や砂粒レベルの大きさの俺にとっては破壊的な吸引で。
「ひぃっ…!!」
ばしゃばしゃばしゃっっ!!!
そこらじゅうの唾液も、空気も、俺の身体も、強引に唇の方へ吸い寄せられていく。思い切り吐息を浴びせられるよりもずっと怖く、何か巨大な化け物に沼に引きずり込まれるような、得体のしれない恐怖。
このまま行きつく先は、冬野の口の中しかない。
「「「すうぅー…ちゅっ…♡♡」」」
空気を吸いながら、時々えっちなリップ音を響かせながら、悪戯のように吸い続ける悪魔の唇。
そして、
「え………」
気づけば、俺の身体は空中に浮いていた。
ごおぉぉぉぉっ!!!
周囲の空気が轟音を立てている。視界がぐるぐる回り、自分がどこにいるかも分からなくなる。時間の感覚も、何もかも。
そんな訳の分からない感覚が終わったのは、全身に柔らかい衝撃が訪れた時だった。
ぺちっ………
ピンク色の巨大な壁に激突した俺は、その壁のぬめぬめした成分によってそのまま磔状態になった。この壁が何かも分からない。ただ、先ほどまで嗅いでいた濃厚な唾液の匂いがより強くなり、さらに爽やかな甘い香りも強烈に漂っていた。柔らかな壁はあったかくて、むっちりしていて、どこか安心するような。
俺はぼーっとする頭で、ここが冬野の下唇の表面であることを自覚した。
「「「んえー……♡♡」」」
にゅるっ…♡にゅるにゅるっ……♡♡
上空の景色を、真っ赤な肉の塊が埋め尽くしている。うねうねと蠢くそれは、身じろぎする度にぬちょっ…♡ねちょっ…♡と細かい唾液が弾ける音を響かせる。これがJKの舌だなんて。冬野の小ぶりな唇に隠されているベロが、こんなにも卑猥で凶悪で恐ろしい。この舌の上に乗せられても、味すら感じ取ってもらえないだろう。
「「「んっ……♡」」」
にゅるにゅるっ……♡♡!!
もう、抵抗する気力は失っていた。巨大なベロが上唇と下唇にはむっ…♡と咥えられ、そのままにゅるにゅるにゅるっ…♡♡と唇の表面を丹念に舐め取っていく。唇の向こう側からこちらに向かって、あっという間に化け物じみたベロが襲い掛かってくる。唾液の音で鼓膜が破けそうなほどで、俺は終わりを悟って目を瞑り、頭を抱えた。
「「「んん…♡」」」
にゅるにゅるにゅるっ…♡♡
……
…
------
「「「んえー……♡」」」
「「「あ、出てきた出てきた!」」」
「「「動いてる??」」」
「「「おーい、だいじょうぶー?」」」
気が付けば、俺は超巨大女神たちの顔に囲まれていた。…自分の身に何が起こったのか、正確に把握できない。でも…恐らく、俺は冬野の巨大な口内に舐め取られてしまったはずだ。
最後には冬野が気づいて、俺を吐き出してくれたのか。
「「「あ、反応してるよ」」」
「「「よかった~」」」
「「「元に戻るまでもうちょっとかかるからね」」」
冬野の手のひらの上に乗せられた砂粒のような俺に、その俺を唇一つで簡単に舐め潰せる超巨大な女子たちが、無遠慮に顔を近づけて声をかける。…上位存在に見下ろされて爆音を浴びせられ、俺はもう、女子たちと対等にコミュニケーションを取る意欲を失っていた。
「「「元気無さそうだね」」」
「「「虐めすぎたんじゃない?笑」」」
「「「ごめんねー♪」」」
そんな俺をからかう巨大女神たち。その顔のパーツの一つ一つが神々しいほどに大きくて、圧倒的で。
例え身体が戻っても、この女子たちを元の目で一生見られない気がした。
…俺の精神は、上位存在である女子たちの奴隷にまで成り下がったのだった。
---終わり---