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『速報です。100倍縮小区の×□地区にて、16歳の女子校生が器物損壊、住民への暴行容疑で逮捕されました。具体的に何が行われたかは明らかになってしませんが、現場には巨大な靴の足跡で潰された建物や、窓から何かを入れられてかき回されたような痕跡が残されています…』
そんなニュース速報が流れてから、2週間くらいがたった。
この2週間の縮小区の治安は、前に比べて異常に悪くなってしまった。
『また別の事件です。100倍縮小区の〇△地区でも、住宅街が何者かの踏みつぶしによる被害を受けました。その痕跡からローファーを履いた複数人の人物による犯行だと見られていますが、犯人は見つかっていません…』
縮小区に入り、ミニチュアのような家、マンションを、遊び半分で壊していく女子校生たち。当然、住んでいる男たちは、100倍の大巨人である女子の蹂躙を止めることも、逆らうことも叶わない。そして、そんな暴挙が行われたとしても、必ず女子たちが補導されたり逮捕されたりするわけでもなく。
巨大すぎる女子校生たちの顔を、住民たちはちゃんと認識すらできないのだ。降ってくるのは2tトラックよりも大きな重厚なローファーで、その遥か上の方に位置する女の子の顔をはっきり覚えている住民などいなかった。よって目撃情報が十分になく、かなりのケースで犯人は見つからないままだったのだ。
…それだけでなく、女性側の警察もそこまで捜査に本腰を入れていないようで。
結局、縮小区が破壊されたとしても、女性側の世界で困ることなんて一つもない。むしろ、その維持費が低減されるメリットの方があるかもしれない。
さすがにそんなことは公言されなかったが、本質的にこれらの事件を「どうでも良い」と捉えられていることは、かなり濃厚だった。
「……ここが…」
大学からの帰り道、たまたま通りかかった事件現場。5階建てくらいだった横長のアパートの中央付近が、無残にも巨大な何かで踏みつぶされて粉々になっていた。踏まれた部分だけに大穴が空き、部屋の半分だけむき出しになってしまっている箇所がいくつもあった。
どれだけの恐怖なのだろうか。自分の家で普通に過ごしていたら、茶色く光る巨大なローファーが天井を突き破って落下してくるのだ。その重量は並みではなく、女子校生のむちむちな生脚が全体重を思い切り載せきった凶悪な重量で、自分たちの営みが破壊されるのだ。
そんな死を感じるほどの体験が、ただの女子校生の遊びとして、たまにSNSのネタとして、消費されている事実。
「これは……?」
事件現場のがれきの上に、黒くて太いロープ状のものが落ちていた。何となく手に取ると、それがただのロープではないことに気づいた。
そこはかとなく良い匂いがするそれは、この惨状を引き起こした女子の髪に違いなかった。はっきりと厚みを感じるロープ状のものは、女子の大量の髪のうち一本にしか過ぎないものだった。
…よく見れば、現場には犯人の痕跡がいくつも残されていた。
「…ぐっ…ひどいな」
薄い緑色の、自分の身長ほどもありそうな柔らかな物体の塊。少し濡れているそれからは、濃厚な匂いがそこら中に振り撒かれていた。明らかにその匂いは、人の唾液成分。…この惨状を引き起こした女子が、噛んでいたガムをその上に吐き捨てた。そう考えるのが自然だった。
巨大なガム以外にも。何かを拭いて捨てられたティッシュの塊や、チュッパチャップスのような棒付きの飴が、舐めかけで捨てられてもいた。さらに、これは無意識に落としてしまったのか、今流行のキャラクターを模した巨大なストラップも。学生用カバンにでも付けていたのだろうか。
あまりの非人道的な光景に、俺はどこか怒りを覚えていた。体格差が違うというだけで、ここまでされてしまうのか。何故こんなことが許されているのか。
ふと、これらの痕跡は証拠になるのではないかと思い当たった。
「…いや、ちゃんと捜査してくれてないから痕跡が残ってるのか…」
100倍巨人に対する捜査は、同じく100倍の女性しか行えない。しかし同様の事件、遊びが色んな縮小区で蛮行されている中、捜査の手はこの場所に回ってきていないのだろう。
DNA鑑定とか。保存しておけば、やがて重要な証拠になるかもしれない。
そう思った俺は、その場にある痕跡を集め出した。
「………こんなにデカいなんて…」
心の中にポッと現れた正義感で思わず持ち帰ってしまった俺は、リビングに並んだ巨大すぎる証拠品たちを見て、呟いた。
ロープのような太さの髪を、1メートルくらいに切って持ち帰った。自分の身長くらいデカかったガムの食べかけは、直径50cmくらいの大きさにちぎって、持ち帰った。その他、広げたら畳1畳分になりそうなティッシュの切れ端や、ボウリングの玉の2倍くらいはありそうな舐めかけの飴を棒付きで、さらに大きなストラップも持ち帰っていた。…さすがに床が汚れてしまうので、ビニールシートの上にそれら証拠品を並べていた。よくテレビで警察が証拠品を並べている光景に近かったが、そのサイズ感だけが異常で。
いや、しかしいずれ役に立つかもしれない。あんな凄まじい行為を遊び半分で行う女子校生は、どこかで罰を受けなければならない。もし捜査が進んでいけば、この巨大な物体たちが証拠になり得る。…ちょっと大きすぎて、この広かったはずのリビング空間を圧迫しているが…。
自分の中の正義感が少し満たされ、満足しかけたその時だった。
ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!
「っっ!!??………」
毎日のように効いているはずの警告音がスマホから流れ、しかし俺はいまだに驚いてしまう。
『女性警報が発令されました。対象区は、○○区、△△区……』
「…少し遠いな」
人工音声で流れた地区の場所は、俺が住んでいる地区から少し離れた所だった。この距離だと、かすかに地響きを感じる程度だろう。
『緊急ニュースです!只今○○地区で、女子校生と思われる3人の集団が住宅街を破壊しています!近隣の住人は速やかに避難してください!』
「…え………」
付けていたテレビの画面が突然ニュース画面に切り替わった。縮小区独自で放送しているテレビ局のアナウンサーが、切羽詰まった様子で叫んでいる。そのまま、画面が切り替わる。
「な………」
その画面は。現場から1kmくらいは離れた場所だろうか。密集した住宅街やマンション群を映し出しているカメラは、明らかに縮尺のおかしい、100倍の女子校生3人の姿も同時に映し出していた。いや、正確には、太ももから下の部位くらいしか映っていない。巨大すぎる女子たちの上半身は上空にありすぎて、上手く撮影できていない。
ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!
メリメリッッ…!!
『『あはは、ちょっと踏んづけたら簡単に壊れちゃうね』』
『『この家とか、手で握れちゃいそうだよ?ほら』』
『『ぎゅってしてみれば?笑』』
『『いくよー?ぎゅーっ…♡』』
メリメリメリメリッ……!!!
言葉を失う光景と音声が、緊急ニュースの生放送で映し出される。立派に立てられている2階建ての一軒家の屋根に、巨大な手のひらがかざされたと思ったら。そのまま女子の力で握りしめられた手が、いとも簡単に一軒家をぐちゃぐちゃに握りつぶしていく。無残に破壊される一軒家は、スカートのまましゃがみ込んだ女子校生のすべらかな太ももと、真っ白で巨大な下着に肉薄されていた。
残虐な破壊活動と、女子校生の何気ない下半身の姿が、同じ画面に同居している異常事態。しゃがみこんだことで、その女子の上半身や顔が生放送の画面にようやく収まる。その脇に置かれた、一軒家よりも大きな学生カバンも見えていた。
「っっ!??あれって…」
その学生カバンに付けられたストラップを見て、寒気が走った。今女子校生の中で流行っている、3人組のキャラクター。そのキャラクターがセットになったようなストラップが付けられているが、そのうち一つだけが途中で千切れて無くなっていた。
リビングの端に置いていた、巨大なストラップを慌ててみる。…そのキャラクターは、今画面に映っている女子校生のストラップでちょうと千切れて無くなっているキャラクターそのものだった。
「これが……この、女子校生が……」
今画面に映っている、今縮小区の家を破壊している、この女子たちが、俺が持ち帰った証拠品を残した張本人。間違いなかった。
『『ねえ、マンションの人怖がってるよー?』』
『『ほんとだ、窓から部屋の中見えるね。可愛いー♪』』
『『はあーっ…♡♡』』
『『うわ、めっちゃびびってる(笑)…窓も息で真っ白になっちゃったよ?』』
衝撃的な一部始終が、ニュースの生放送で繰り広げられていた。俺は途中から思わず録画を開始した。
これは、現実に起こっていることなのだろうか。映像だけみれば、精巧なミニチュアセットの中で女子たちが遊んでいるようにも見える。しかし細部をよく見れば、しゃがみ込んだ女子校生の足の下を必死で逃げていく小さな人間の姿が映っていた。紛れもなく、今この縮小区の中で起こっていることだった。
それに、しても。
『『ちっちゃくてかわいー…持ち帰っちゃダメかな?』』
3人組のうち、今しゃがみ込んで映像に映っている女子。綺麗な黒髪が肩にかかり、時々画面に映るその顔は、控えめに言って、可愛かった。整った顔。瞳はぱっちりと開いていて、小ぶりでぷるんとした唇。活発そうながらも、男子に人気がありそうな顔。
残酷な蹂躙を繰り広げている女子が、こんなに可愛らしい顔をしていると想像していなかった。思わず、リビングに置いているロープのような髪を手に取る。映像に映っている3人のうち、黒髪はその可愛い子だけ。手元の巨大な一本の髪から香ってくる良い匂いと、映像の中の巨大で可憐な姿が、脳内でリンクしてしまう。
『『んー…♡』』
遊び半分に、しゃがみ込みながら10階建てくらいのマンションの窓に唇をつける様子が映し出されている。可愛い唇が部屋の窓にむにぃっ…♡と押し付けられ、中にいる住人がしどろもどろになっている様子もまとめて、他の女子高生がスマホで写真撮影している。
倒錯的で、どこか性的な匂いのする遊び。そんな映像と、目の前の巨大な黒髪。その匂い、存在感。もし俺が映像の中のマンションにいたら、あの子はどう見えているのだろう。
頭の中が、危険な領域へ思考を進めようとしていた。
この髪だけではない。巨大なガムの塊、ねっとりと濡れた飴。映像の中でその可愛い子が明らかに飴を舐めており、もうこのガムや飴もあの子が口に入れていたものとしか思えなかった。
あの桜色の柔らかそうな唇の中で、ぐちゃぐちゃに噛みしだかれたはずのガム。唾液成分をこれでもかというくらい染み付けられ、強靭な臼のような歯で何度も咀嚼されて。飴のほうは、巨大な絨毯くらいはあるであろう舌に何度も擦り付けられ、少しづつ味を吸い取られていっただろう。…あの子の巨大な口内がこの世に存在しているという事実が、既にあまりにえっちで。その中で蹂躙されたガムや飴が、今目の前に存在する。そして、映像の中で繰り広げられる、残酷で甘美な遊び。
ついさっきまで感じていたはずの正義感が、全く違う感情で上書きされていた。
「はあっ、…はあっ……」
映像の中で縮小区を蹂躙する女子たちの巨体を眺め、その顔を眺め、俺は巨大な髪やガム、飴に縋りつきながら、もう夢中で自慰行為を行っていた。
全然、さっきは理解できていなかった。住宅街が破壊された現場だけを見て、怒りが湧いてきていた。しかし。その本人たちの姿を目の当たりにしたことで、あくまでその行為が4,5歳下の健康的で可愛い女子校生たちに行われていたことを思い知った。
その事実を知っただけで、怒りの感情が塗り替えられてしまったことに悔しさを感じた。情けなさを感じた。あの巨体にもし襲われたら、という恐怖感も間違いなくある。
しかし本能で、正義感とか恐怖とかとは、異なる感情を抱き始めている。それが、もはや自分の中で止めようがなかった。
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ざくっ、ざくっ……
「っ………」
次の週、俺はまた別の現場へ、足を踏み入れていた。そこもまた、多くの一軒家やマンションが無残にもぐちゃぐちゃに踏みしだかれていて。…昨日のニュースで、あの黒髪の可愛い女子校生がまた蹂躙を繰り広げていたエリアだ。
(何か、落ちているものとか……)
1週間前にニュースを見たときからすっかりその女子校生に心を奪われていた俺は、今回のニュースを聞いてすぐにこの現場に飛んできてしまった。また落とし物を拾えないだろうか。あの子が噛んでいたガムとか、何か私物が落ちていないだろうか。そんな下心から、のこのこやってきてしまったのだ。
…大学をさぼって、俺は一体何をやっているのだろう。
ふと我に返ると、もの凄い罪悪感を覚え始める。
「…あれは……」
30分ほど、がれきの山と化した住宅街を歩いていると。明らかに周囲から浮いた、巨大な人工物が落ちているのが見えた。
「でか……これって、画面…?」
真四角の平ぺったいディスプレイの左右から、ベルトのようなものが伸びている。形状的には腕時計のような…いや、腕時計だ。スマートウォッチ。確か…ニュース映像の中で、あの女子校生が手首に付けていたような…。
女子校生の細い手首に巻き付いていたスマートウォッチが、こんなにも大きいなんて。結構コンパクトなタイプだとは思うが、それでも俺の足から首元くらいの大きさがある。…そこから類推される手のひらの大きさは、恐らく途方もないものだろう。
さすがに、持って帰れないか。いや、でも…。
「………」
俺の頭の中では、あの女子校生の持ち物、というだけで魅力を感じてしまっていた。あの綺麗な手首に密着していたスマートウォッチ。もしかしたら、何か写真とか入っているかも…。
そんな考えの末。
「…俺は、暇なのか……ぜえっ、ぜえっ……」
やっとの思いで部屋に巨大なスマートウォッチを運び込んだ俺は、息も絶え絶えにベッドに倒れ込んだ。蹂躙現場から1時間ほど、スマートウォッチを引きずりながらも何とか運びきった。講義のある平日にこんなことをしている自分は一体何なのかと、途中何度も我に返ったが。
こうして俺の部屋の中に、あの女子校生の持ち物が一つ増えたのだった。
そして人間の行為は、どんどんエスカレートしていく。
最近は女子校生の蹂躙事件が多く発生するようになり、俺はその度に現場に出向いて何か落とし物が無いか、探し回った。巨大なマスクやリップクリーム、菓子パンの食べ残しなど、彼女たちの巨大さを感じることができる落し物は割とたくさん残されていた。
俺は毎回それらの落とし物を部屋に持ち帰り、コレクションを増やしていたのだ。
終いには部屋の押入れが巨大女子校生たちの落とし物でパンパンになり、リビングや寝室も大量の巨大なオブジェクトで埋め尽くされ始めていた。
そんな火事場泥棒的なことを行い続け、1か月くらい経ったとき。
ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!
「っっ…!!またか……」
今日は大学の講義がない平日。このけたたましいアラートで朝起こされることも、非日常ではなくなっていた。
「…〇×区に女子校生が出現…近いな……」
いつも大体は、数km以上離れた地区での出現情報だった。しかし今回のアラートの内容が指す地区は、まさに今俺が住んでいるマンションがある地区。
これはすぐに地響きがやってくるぞ、と思うのと、
ズンッ…!!ズンッ…!!
重苦しい音を立てて世界が揺れ始めるのが、ほとんど同時だった。
ズンッ!!ズンッ!!!
「ひっ………」
恐らく、このマンションの前の道を通る。最近あまりこの道を通る巨大な女性が少なくなっていたので、この大きすぎる揺れに新鮮な恐怖を感じていた。
ズンッ!!!ズンッ!!!!
ガタガタガタッ!!!
ぐらんっ、ぐらんっ……
部屋中の家具が軋み、電灯が揺れ、まともに立っていられなくなる。今にもその巨大な姿が窓から見えるだろうと思った、その時。
「「「あ、この辺かも……」」」
「あ………」
あの、女子校生だった。黒髪セミロングの、可愛い女子校生。俺がいくつもの落とし物を部屋に持ち帰った、その持ち主。このマンションの窓から直接見えるのは初めてだった。
「「「どう、ありそう?」」」
「「「位置情報的には、このマンションかな……」」」
ずいっ……
巨大すぎる可憐な顔をマンションの方に向けられ、ドキリとする。圧倒的なスケールの顔が向けられて、窓の外の景色は女子校生の表情のみで埋め尽くされる。その表情は手元のスマホに向けられていて、彼女は何かを探しているようだった。
「「「まさか、マンションの中…?」」」
「「「誰かが持ち帰っちゃったとか?」」」
「「「えー、盗まれたってこと?」」」
「………ん……え………」
大音量で響いてくる、女子校生3人分の会話。その内容が脳内で反芻され、その意味を咀嚼し、ようやく一つの事実に思い当たったのだ。
まさか。あのスマートウォッチを探しに来たのではないか。
「「「んー………」」」
きっと、そうだ。スマホの位置情報サービスを使って、連携しているスマートウォッチの場所を表示し、この場所までたどり着いたのだ。そして、このマンションの中にあることまで、既に見破られている。
冷や汗が流れ出す。…この女子校生たちの残虐性は、数々のニュースから十分すぎるほど伝わっている。
この状況で彼女たちが何をするか。想像するだけで、寒気がした。
「「「ねえ、このマンションに住んでるみんなー」」」
ビリビリビリッ!!!
わざとらしく顔を近づけ、大声で呼びかける黒髪女子校生。俺の部屋の窓からは、その巨大な唇がむにむにと蠢いている様子が見せつけられていた。あまりの爆音に部屋中の家具がガタガタと暴れ出し、鼓膜が破れそうなほど耳にダメージを与えられる。
「「「私のスマートウォッチ盗んだ人、いるでしょ」」」
どこかニヤニヤと表情を浮かべているような喋り方で、次は囁くように、この巨大なマンションの住人全員に向かって妖艶に語り掛ける。こんな巨体に目の前に立たれながら囁かれれば、もう脅迫されているも同然だった。
「「「怒らないから、持ってる人はベランダに出てきてね~♪」」」
可愛らしい声が、全く可愛く聞こえない。
「「「10秒経っても出てこなかったら…力づくで探しちゃおうかな♡」」」
「ひっ……あ………」
全身の震えが止まらなかった。このまま部屋に隠れ続けていたら、間違いなくこの女子高生は、マンションごと破壊活動を行い始めるに決まっている。今から逃げようとしたって、エレベーターを使って地上に出るまでに1分以上かかってしまう。でも。正直に名乗り出たとしても、いや、その方が、何をされるか…。
「「「じゅーう、きゅーう、はーち……」」」
「「「ほらほら、出てきた方がいいよー♡」」」
自分がやっていたことが普通に窃盗であるという罪悪感が、どんどん恐怖を掻き立てていく。この残虐な女子校生たちの前に出て懺悔したとしても、絶対に無事では済まされない。
「「「ごー、よーん、さーん……」」」
ニュースの画面越しで野次馬的に蹂躙劇を見ていた自分を、初めて恥じた。100倍の巨体に立ちふさがれることが、脅迫されることが、こんなにも怖いなんて。怖いどころか、自分の「死」という現実が、一瞬にして目の前まで迫っているという恐ろしい状態。
「「「にー、いーち……」」」
「あっ、あっ、ああっっ……!!」
俺はリビングの端に置いてあった巨大なスマートウォッチを必死に引きずり。ベランダの方まで持っていこうとした。
が、
「「「ぜろー♪…残念だなー…」」」
「「「じゃあ、おっきいマンションだけど…ぐちゃぐちゃにしちゃおうかなー♡」」」
「あ…………あ………」
可愛らしい声で死刑宣告を掲げられ、血の気が引いていた。窓の目の前までスマートウォッチを引きずってきた俺はその場で立ち尽くし、窓の外で笑みを浮かべる3人の巨大な表情を見るしかなかった。
「「「……ん?…あれ、この階の子、……」」」
と、一人の声が、何かに気づいたようだった。
「「「あれ、落としたスマートウォッチじゃない?」」」
「「「ん…?……あ、ほんとだ、私のかも」」」
黒髪女子校生の瞳の巨大な視線が、俺の部屋の中に注がれていることに気づいた瞬間。
バリバリバリッ!!!!
「ああああああああっっっ!!!????」
ずっ…………
この世の終わりかと思った。一瞬にして、部屋の窓ガラスが粉々に割られていた。目の前には、自分の身体よりもぶっとい肌色の巨大な指が、何本も鎮座していた。それが女子校生の細くて白い指であると認識する前に、俺は自分の死の恐怖で腰を抜かし、一瞬で失禁していた。
「「「……ふふ」」」
目の前に広がる幾何学模様がは、女子校生の指の指紋。その凹みでざらざらと撫でられる想像をしただけで恐ろしい。ぷにぷに柔らかそうなはずの指の腹が、もし次の瞬間俺の身体の上に押し当てられたら。ほんの少し、ほんの一瞬この巨大女子が力を入れるだけで、俺の人生はそこで終わる。
むん……
女の子の指の匂い、熱気を感じたのは初めてだった。何も飾られていない生の指の匂いは、この女子校生の生来の匂いそのもの。100倍の巨体の色々なところに触れているであろうその指から、強烈な熱気が部屋の中に振り撒かれる。男の大学生が暮らしている部屋全体が、たった一本の女子校生の指の熱気に支配されてしまうのだ。
「「「もらうね」」」
ガチャガチャガチャッ!!!!
「いやああっっ!!??許してっ!!???」
大蛇のような巨大指が暴れ回る。その指で圧し潰されると思った。もしくは摘ままれて、捻り殺されると思った。狂ったスケール感は、ほんのわずかな指の動きを凶悪な暴力へと変貌させていた。
しかしその指は器用にも、俺のそばにあったスマートウォッチに触れると。
ズズズッ!!!
ガシャンッ!!!ドシャッ!!!!
………
「「「おー、とれたとれた」」」
あんな巨大だったスマートウォッチが、いとも簡単に指に挟まれて連れていかれた。部屋の窓ガラスをさらに破壊しながら。…俺の部屋と外界を繋ぐものはもはや何もなくなり、マンションの外でそびえ立つ3人の女子校生の顔が遮られることなく見えている状態だった。
ちょっとした息遣いも、身じろぎによる服の擦れる音も、全て聞こえてくる。
スマートウォッチを確かめるように眺め、自分の腕に付け直した可愛い女子校生の顔を、思わずぼーっと見つめてしまう。
その巨人と目が合っていることに気づいたのは、少し遅れてからだった。
「「「………で、」」」
むっちり巨大な唇が開かれ、大音量で言葉が紡がれる。
次の瞬間、
ずいっ!!!
ぶわああっっ!!!
「あ…………」
これ以上なく息を呑んだ。巨大すぎる顔の急接近に反応すらできず、ベランダの数メートル先の場所に、大きな大きな瞳が近づけられた。カラフルな虹彩の模様が余すことなく見せつけられ、その瞳が女子一人のものだという認識すらできないくらいで。
「「「分かってるよね…?♡」」」
「えっ……あっ……ひ………」
巨大な瞳が細められる。顔全体を見なくても、この女子校生がどんな顔をしているか想像できた。小さな弱者、獲物を選定するような妖艶な笑み。ニュース映像で何度も見た、支配者の余裕の笑み。
この表情で見つめられた街並みは、全て無残に破壊されてきたのだ。
もはや自分でも分からないうちに腰が抜け、床にへたり込む。恐怖で体が一切動かない、というのを始めて経験した。
「「「じゃあ…」」」
さらに瞳が細められ、強烈な視線が胃までずっしりとのしかかり。
「「「お仕置きするね?♡」」」
恐怖の宣告が、下されたのだった。
---続く---