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その映像を目にすることになったのは、たまたまのことだった。
ふだんあまり付き合いのない友人から連絡があり、彼が携わっていた仕事……倒産した映像制作会社の整理に関連して、倉庫の眠っていた古いビデオテープの引き取りを打診されたのだ。
テープ媒体に記録されているということは、昭和から平成初期に記録されていた映像である可能性が高い。
当時もののそうした映像にいささか詳しいということを、友人は覚えていてくれていたということだ。
量にして段ボール箱に2、3箱ほどのテープには、当時記録された諸々の映像が記録されていた。
古い映像の価値をどうこう評価することは難しい。
当時の様子を知る資料的価値は多少成りはあるとしても、商業的価値がつけられるものかは怪しい。
といって、誰かにとってはかけがえのないほど価値のあるものであるということもある。
今日ここで話題にするのは、その時に引き取ったテープのうちのひとつについてだ。
収録されていたのは、1970年代に制作された特撮テレビドラマの映像だった。
50年近く以前の作品とはいえ、今日でも映像ソフトが販売されているから、その点では取り立てて珍しいものとはいえない。
問題は、テープに収録されていたのが、ドラマシリーズの第33話と34話だったということだ。
視聴後に調べたところ、このドラマは視聴率が低迷し、第32話で打ち切りになっていた。
平成10年ごろになって、未収録の脚本の内容がネットに公開され一部の界隈で話題になったことがあり、その内容は今でも見ることができるが、その収録が行われていたという事実は確認されていない。
(当時公開された脚本の記録)
https://web.archive.org/web/20060131201248/http://www10.ocn.ne.jp/~xrevenge/ganba-rock2002.html
それに……テープに収められていた内容は、ネットに出回った脚本とは明らかに違っていた。
それは、こんな内容だった。
[newpage]
「第33話 新たなる敵!ネガロン帝国の陰謀」
優れた科学力を持ちながら、様々な悪だくみで、街を混乱に陥れる悪の怪人ドワルダー。
だが、街を守る正義のヒーローガンバロックにより、彼の悪だくみはいつもあと一歩のところで食い止められていた。
ここは、地下にあるドワルダーの秘密研究所の一室である。
照明の消えた薄暗い部屋の中で、机に半ば突っ伏すようにしながら、初老の男……芥博士は、手に持ったグラスを一気にあおった。
かつては天才科学者として名をはせた芥博士も、人倫を無視した研究の数々が世間から糾弾され、いつしか世間から離れ、恨みを募らせ、暗い復讐の情熱を燃やす悪の科学者となってしまったのだ。
彼の超科学の結晶であるブラックマントを羽織ることによって、芥博士は悪の怪人ドワルダーに変身するのだ。
「うぃぇ~、ガンバロックぅ……あいちゅさえ……あいつさえ、いにゃけれぇば!」
すっかり酔いつぶれてろれつの回らない調子でつぶやく芥博士。
よくみれば空になった焼酎の瓶が、何本も床に転げていた。
ガンバロックに対する度重なる敗北で、彼のただ一人の部下であるマネージャー阿久兵衛までもが愛想をつかし、彼の元を去っていてしまった。
いまや、芥博士は完全に孤独な存在となってしまったのだ。
その時。
「フフフフフ。ガンバロックにずいぶんと、苦しんでいるようだな。ドワルダーよ」
部屋の隅にあったテレビの電源が突然入った。
部屋の中がブラウン管の発する光に照らされる。
画面には、灰色の背広姿に覆面を被った謎の人物の姿が映っていた。
「にゃ……だ……だぁれだ!きしゃまは……!」
芥博士は酔いつぶれて座った視線をテレビに映る人物に向けた。
「私か。私は、ネガロン帝国の司令官=-&%、だ」
名前の部分はよく聞き取ることができなかった。
「ね、ねがりょん帝国ぅ?」
初めて耳にする名前に目を白黒する芥博士。
「そうだ。今日はおまえと取引をしようと思ってな」
怪人物は、言葉を続けた。
「ネガロン帝国の力でガンバロックをおまえの元にひざまづかせてやろう。その替わり、おまえの科学力をネガロン帝国のために役立ててももらうぞ」
怪人物のその言葉に、芥博士の顔色が変わった。
それは、あまりにも怪しすぎる提案だった。
「にゃ、にゃんだとぅ……だが……だがそんにゃことが本当にできるのか……」
だが、今の芥博士にとって、それは、実に魅力的な提案でもあった。
「簡単なことだ。おまえの元にネガロイドをひとり既に派遣した。その者の指示に従うのだ」
芥博士の気持ちが乗り気に傾いたことを察したのか、覆面の怪人物は話を進めた。
「ね……ネガロイド……」
「もう、おまえのすぐ後ろにいるぞ。ククククク」
笑い声をあげた後、唐突にテレビの映像はぶつりと途絶え、部屋に暗闇が戻ってきた。
はっとして芥博士は、背後を振り向いた。
この秘密研究所は、厳重な防護装置に守られている。
だが芥博士のいる研究室の扉は、いつのまにか開いていた。
そこに、何者かが立っている。
暗闇で酔いつぶれていた芥博士の目には、その人物の姿がよく見えない。
「お、お前は、お前は一体、何者だ!」
無言で暗い部屋の中に進み出た人物の姿を見て、芥博士は息を飲んだ。
(つづく)