「そのx」で始めたのは間違いではなかったようだ(展開進まねぇ・・・)
◆
私は今、巨人の同僚の膝の上にいる。
「わあ、お腹すべすべだねえ」
ねっとりと絡みつくように……というわけではなく、仲の良い間柄なら
ふつうに行ってもおかしくないようなスキンシップの範疇だろう。
ただ彼はただの同僚で、リモートで顔を突き合わせる頻度こそ高いが
昔からの知り合いでもなければ仲が深まるような何かがあったわけでもない。
「あれ?摘まめるよ~。不摂生かな」
たった二本の指で腹筋ごと摘まんでいく。普通に痛いし、攣りそう。
もう少し深かったら内臓がやられていたかもしれないと思うとドキっとする。
「どっちかというと、お腹より肋骨の方が危うい感じがして怖いな。
いや細っそいよ?よくこんなんで生きてるね」
特にいやらしい手つきではないのに、巨人に触られているということで
どうしても、あの体験を思い起こすのだ。既に不必要な情報がそぎ落とされ
理想化されたそれだから、トラウマではないし、過呼吸になったりもしない。
寧ろ……寧ろ逆なのだ。そういう、そう言った体験の、空気感だけが
残り香のように脳裏を刺激していく。
「んっ」
「わー、ちゃんと乳首もあるんだね♡哺乳類だ」
服の中から感触で探り当てたらしく、こりこりと指の腹で弄ってくるが
いかんせん抉るような強さで快感やくすぐったさよりも痛みが勝るので
興奮どころではなくなってしまう。
「おっぱいは出るのかな???」
「っ出るわけ……」
言いきる前に無理やり体勢を変えられ、シャツをたくし上げた状態のまま
天井近くまで抱えあげられる。
「服もこれ、ティッシュくらいじゃない?薄さ。一応気を付けてるけど」
そのまま腋の下に顔を差し込んで、口を開けた先にあるのは……
「ちょ、だから出ないって、やめ…」
「あ¨あああっ」
これだけの勢いで乳首を吸われた経験など誰にもないだろう。
あったとすればこれと同じ状況に遭遇した人だけだ。
強烈な痛みに自然と涙が出てくる。
上体ごと引っ張られそうになるほどの吸引力と、ざらざらとした
巨大な舌で先端を舐めている感触さえも、最初のうちは気づかなかったほどに。
それでも慣れとは恐ろしいもので、吸ったり離したり、舐めたり突いたり。
時には歯で撫でてみたり。…さすがに齧るのは試そうとも思わなかったらしい。
想像しただけでも冷や汗が出てくるから、やらずにいてくれたことに
感謝の念さえ抱いてしまう。
一度刺激に慣れてしまうと、また元の問題が首をもたげてくる。
「んっ……」
「ね?上手いもんでしょ?まだ出ない?」
この男は人間を何か特殊な生物か何かだと思っているのだろうか。
期待しても出ないものは出ない。これを永遠に続けるつもりか?
「はー、なんか熱くなってきたな。うーん、ちょっとこれ持ってて」
私を床の上に降ろした同僚の彼は、そう言って後ろから眼鏡を渡してきた。
それなりに度の入った眼鏡は、レンズ一枚が掌くらいの大きさで、
見た目にはスリムなデザインなのに持ってみるとずしりとした重みを感じる。
「うわ、重っ」
「え?いちばん軽いやつだよ」
そうか、この巨人は、これを毎日ずっと着けて生活しているんだ……