「いい子にしてないとあんな風になっちゃうからね。ナツメはいい子にしてなきゃだめだよ」
幼い頃、母にそんなことを言われた記憶がある。
テレビに写っていた、国家奉仕奴隷の姿。服も着させてもらえず、家畜のように金属の首輪を付けられ、とても人間にはさせられないような仕事をさせられる。
その姿は、幼い私にとってはあまりに衝撃的で、刺激的で、今までの価値観全てが揺るがされてしまうほどに、そして、この先の価値観全てが歪んでしまうほどに、私はその姿に見入ってしまった。
私は今年成人を迎える。お酒はまだだけど、年齢を理由に制限されてきた様々なことができるようになった。そうなれば行きたい場所は決まっている。
「本日案内を務めさせていただきます、サナダです。よろしくお願いします」
国家奉仕奴隷の労働施設。今まではどれだけ調べても実際の様子を知ることができなかったそれも、成人したら見学に入ることができる。
当然安くないお金はかかるが、このために貯めてきたお金だ。今使わなくていつ使う。
街外れ、山の麓にある白を基調とした清潔な施設の中、私とサナダさんが一対一で向かい合う。
今日来たのは快楽発電所。女性が絶頂した時に生み出される微弱な粒子。それを収集し、電気エネルギーへと変換する施設だ。絶頂発電機として働くのは、当然人権のない奴隷たち。
もっと見学希望者が集まると思っていたけど、やっぱり金額で断念したのだろうか。まあ、職員の人と一対一で話せるなんてまたとない機会だ。幸運だと思おう。
「では、こちらへ……」
施設にはエントランスのような場所はなく、無骨な、工場のような雰囲気を漂わせている。
サナダさんがIDカードをかざして門をくぐると、初めに軽い体調検査を受けさせられた。
「奴隷に人権はありませんが、種族としては人間ですから。病気にさせるわけにはいかないんですよ」
それは、健康状態というイレギュラーによって今の状況から逃げることはできないことを意味している。
気遣っている様にも聞こえるが、奴隷たちにとっては残酷な言葉だろう。
「御存じかと思いますが、この施設では奴隷を5つのグループに分けて、ローテーションで発電作業を行っています。これによって奴隷の発電効率を最大限にすると同時に、24時間変化なく発電を続けることができます」
当然、その情報は知っている。しかしそれ一つ一つの詳しい内容は知らない。
下腹部にじんわりとした感覚が広がり、心臓が痛いほどに高鳴る。
「こちらが睡眠の工程です」
ガラスの向こう側には人一人が丁度収まるサイズの箱が無数に並んでいて、その中ではピンク色の液体が蒸気を上げ、その中に女が寝かされている。
「食事は発電中にも行うことができますが、睡眠はそうはいきません。奴隷はここに運び込まれると同時に、催眠ガスで気絶するように眠ります。その後、媚薬プールの中で眠ります。性的刺激にはどうしても慣れが出てしまいます。ですがこの工程を挟むことによって毎日奴隷が新鮮に快楽を取り込むことができるようになります」
束の間の休憩。それすら奴隷にとってはガスで眠らされている間の一瞬で過ぎ去り、その間に体は発情させられ、翌日の地獄のための準備を整えさせられるのだ。
一面のピンク色は見ただけで息が荒くなり、体が熱くなるような景色。
「あの媚薬、後遺症が残るようなものなので。一般には流通していないものなんです」
「そんな……なんですか」
「はい。なんでも、下着が擦れただけで絶頂してしまうとか」
思わず内股を擦り合わせてしまう。
愛液はすでに下着をぐっしょりと濡らしている。
「ここは動きも少ないですし……次、行きましょうか」
眩しいほどに明るい照明の下、2人で廊下を歩く。奴隷たちは基本自分で歩くことはないらしく、通路にはレールが敷かれている。
そしてしばらく歩いた先、視界が開けた。
「ここでは乳房による絶頂を促します」
気を付けの姿勢のままベルトでがっちりと縛られた奴隷たちが壁際にずらっと並ぶ。
胸の上下には二本のベルトが通り、絞り出すように乳房を強調している。
目隠しで視界を奪われ、手足を動かすことは当然かなわない。なのにどの奴隷も必死で体を捩り、ベルトを引きちぎらんとする勢いで手足を暴れさせていた。
その理由はもちろん、乳房に取り付けられた責め具たちだろう。
「乳房というと絶頂効率はあまり高くないのでは、とお思いかもしれませんが、彼女たちの乳房は開発されています。乳房全体が触れることすら厭いたくなる性感帯へ、乳首は丸でクリトリスのように敏感になるんです」
乳房を丸ごと覆う透明なドーム状の器具。その中は吸引されているのか、奴隷たちの乳房は引き延ばされている。
ドームの中には電マのヘッドのような物が不規則についており、それは振動で乳房全体を揺らし、ドームの内部全体が回転することで揉み解す。乳首は小型のオナホールのようなものに飲み込まれ、全方位からそれを擦りあげられていた。
「すごく……苦しそうですね」
「健康状態には細心の注意を払っておりますので、心配はいりません。彼女たちに人権はありませんので、精神的には壊れてしまっても何ら問題はありません」
サナダさんが手元の端末を操作すると、スピーカーから中の音が聞こえてきた。
「っあ゛あああ……!!! や゛、っあ゛!!!!」
「や゛め゛てっ!! おっぱいや゛だ……っ゛!!!!」
「ああああああ゛!!!! も゛う゛や゛めてっ!!」
嬌声、悲鳴のような声、濁った声。人間の尊厳などない、雌の喘ぎ声。その声だけで頭が真っ白になりそうだ。
目の前の奴隷が私を見た気がした。
腰をガクガクと震わせ、目隠しで見えないはずの視線は上を向き、獣のように叫んで少しでも快楽を逃がそうとする。にも関わらず機械は絶頂の瞬間を見計らったかのように、さらに激しく責め立てる。
絶えず股間から床へと落ちる液体。ひたすらに体を震わせて、絶頂の苦しさに身悶える。
「……大丈夫ですか?」
サナダさんの表情には苦笑いが浮かんでいた。
下着で吸収しきれない愛液が太腿を伝う。きっと今、私はとんでもなくはしたない表情をしている。
「はい。……大丈夫です」
「では、次にまいります」
乳房を責められる女たちを後にして、私たちは施設の奥へと歩く。
「次は陰核絶頂の工程になります」
ゲートが開き、視界が開ける。
先程同様に並んでいる女たち。
彼女たちは手枷天井から吊るされて、膝立ちの体勢で一列に拘束されていた。
当然服は着ておらず、身に着けているものといえば陰核を責める道具だけ。
「あ゛あっ!! っあ゛あ!! も゛う゛や゛だぁっ!!」
残像を纏い、強烈な振動音を響かせる電マ。性感帯に当てられればひとたまりもないであろうそれを受け止める陰核はアームによってつままれ、振動をどこにも逃がすことのできない状態でクリトリスが壺れるほど電マが押し付けられる。
当然すぐに絶頂させられてしまうが、電マが動きを止めることはなく、絶頂直後の陰核を容赦なく責め立てた。
他の奴隷を見ると、小型のオナホールに陰核を飲み込まれている奴隷やローションに浸したガーゼでクリトリスを磨かれている奴隷も居る。
「責めの内容は日ごとにランダムになっています。慣れというのは効率的な絶頂を阻害しますから」
「拘束は……ちょっと緩いんですね」
今回は乳房の工程と違い、絶頂すれば腰を引かせたり、体を跳ねさせたりすることはできる。当然それで快楽から逃れられることはないが、この違いは大きいだろう。
……が、奴隷たちは不自然なほどに体を動かしていない。まるで我慢しているかのように。
「絶頂成績が良ければ特別工程に送られる。それは事前に知らされています。ですから自分がイってるってばれたくないんでしょうね。たまに拘束を緩めてやると、こんなふうになっちゃうんです。絶頂回数も、快楽係数も機械で測ってるので、全然意味ないんですけどね」
サナダさんは小さく、楽しそうに口元を綻ばせた。
「……いいんですか? こういうの」
「絶頂回数は保ってあります。それに、こういうのが好きだからやってるんです。この仕事」
くすくすと上品に笑うサナダさん。その眼には嗜虐的な色が浮かんでいた。
「っ゛、ん゛っ!!! ぅうう゛う!!!」
絶頂。
必死に我慢してはいるが意味はなく、結局は体をビクビクと震わせてしまう。
拘束の中で跳ねる体。職員の意志ひとつでその唯一の自由すらも奪うことができる。
権利なんて何一つない、そんな存在。
「おっと……時間押してますね。次行きましょうか」
絶頂に身悶える奴隷たちの横を通る。顔も名前も知らないが、間違いなく人格があり、死ぬまで永遠に苦しみ続ける誰か。
「次は膣絶頂の工程です」
再び開けた部屋に出る。
今までと同じようにずらっと並んでいるのは、M字開脚の状態で椅子に拘束された裸の女。
今度は指一本たりとも動かせないほど各部の関節を固められ、ピストンマシンの銃口が膣内へと向けられていた。
「んん゛ぅ゛ぅ゛っ!!! っうう゛う゛!!!!!」
響き渡る呻き声のような嬌声。
奴隷たちの口にはボールギャグが嚙まされていて、垂れた唾液が胸の上を伝って地面に落ちていく。
奪われた言葉。叫ぶことすら自由にできない状態で、必死に声を漏らす。
その膣内を蹂躙するのは男性器をかたどったディルド。高速で往復するそれは膣内を押し広げながら突き進み、最奥の子宮口を突き上げる。
「使われているのはこのディルドです。一人一人に快楽を与えるのに最適な形に作られており、先端には媚薬を放出する機能も搭載されています」
サナダさんの手の中には、見ただけで苦しくなるほどの大きさのディルド。
子供の腕ほどの太さと、へそまで届くであろう長さ。ゴム製のようで柔らかそうなそれは、奥の方に行くにつれて膨らみ、カリ首に該当する部分以外にも、Gスポットに当たるであろう部分にも突起付いている。
その凶悪な形状のディルドを、中から吐き出された媚薬によってさらに敏感された膣内で受け止めなければならない。
「う゛うう゛う゛う゛!! んんん゛っ゛!! っぅ゛、ぅ゛ん゛ん゛ん゛んっ!!」
考えただけで頭がおかしくなってしまいそうな責め。
正面の奴隷が激しく体を震わせながら絶頂を迎え、ボールギャグから獣のような声が零れる。
他の奴隷よりも絶頂の頻度が高い彼女。絶頂直後の一番敏感な瞬間にもディルドは容赦なく膣内を犯し続け、そのまま連続で絶頂させられた。
「う゛、ぁ゛……ぁあ゛……」
快楽から逃げる余地も与えられず、為す術もなく責めに屈服させられ、終わらない絶頂地獄に堕とされる。
ボールギャグから涎と共に泡が零れていて、涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃ。一目見ただけで責めの辛さがわかる光景だった。
普通に、真面目に、大人しく生きていれば絶対に出会うことのできない何かが、目の前にある。
「次が最後ですが……最後はちょっと特殊な工程になります」
「特殊?」
「ええ。電流にって絶頂信号を体内に送り込む。俗にいう絶頂パルスといったところでしょうか」
初耳だった。そんなものが現実にあるだなんて。
だが本当にそんなことができるなら、最大効率で発電することができるだろう。
「では、こちらです」
奴隷は皆、柔らかなベッドに拘束されていて、傍らに医療機器のような機材が置いてある。
ベッドの上に拘束されているのは恐らく、身体を痛めて、否、壊してしまうから。
それを証明するかのように体を締め付けるベルトは今までの倍以上に多く、今までよりも強く肉に食い込んでいた。
目隠しと口枷を付けられ、表情を窺うことはできないが、涙でぐっしょりと濡れた顔だけで十分にこの責めがどういうものか理解できる。
「っ゛――――!!!!!!! っ゛っ!!!!!」
息もできないほどの絶頂の奔流。全身の筋肉が硬直し、呼吸すら忘れて絶頂に打ちひしがれる。
「ぅ゛……っ゛っ゛!!!!」
汗と涎と愛液と尿と、色々な汁が混ざり合ってベッドの上を汚していく。
体は痙攣する。必死になって体を動かしている様ではあるが、厳重に拘束された体を動かすことは叶わない。
「これの優れているところは常に絶頂させられるという点です。絶頂というのはどうしても途切れてしまいますが、これを使えば絶頂から降ろすことなく、絶頂させ続けることができます」
深く、苦しい絶頂。
終わることはなく、どれだけ絶頂しても途切れることはない、文字通りの無限絶頂。
「……」
「この後は睡眠ですから、ある程度負荷をかけても問題ありません」
言葉が出ない。見る人が見れば、悲惨だというであろう光景。
あんなことしちゃいけない。人をそんな風にしてはいけない。けれども、彼女たちは人じゃない。国によって認可された施設で、人間を辞めた存在として扱われている。
施設を出て、自宅までの帰路を歩く。
足取りはフラフラで、頭の中はハッキリとしていない。
「ふうっ……」
公園のベンチに座って空を仰ぐ。
背中に冷たい夜風を感じながら、これまでの人生を振り返る。
ずっと、親に言われたままにまじめに生きてきた。”あんな人たち”のようにならないようにという、親からの教えの通りに。
だけど、だけど、私が欲しいのは、そんなものじゃない。
リュックの中に入った一枚の紙。今まで妄想に使うのみだったそれを、私は手に取った。
「こんにちは。国家奉仕奴隷管理局です。マカタミユキさんで、間違いありませんね?」
書類を役所に提出した翌日の早朝、私の家の前に管理局の制服を着た女が立っていた。
彼女は心底軽蔑するような冷たい目つきで私を見据え、淡々と何かを手帳に書き込んでいる。
「はい。間違いありません」
「では、現時点をもってあなたを正式に国家奉仕奴隷として扱います。現時点をもって戸籍を抹消。以降の名称は12743番国家奉仕奴隷とする。以降、あなたに一切の権利は認められず、国家の所有する物品として扱われます」
「……はい」
淡々と読み上げられる言葉。その一つ一つが、もう後戻りはできないということを知らせてくれる。
絶望的な言葉。胸は破裂しそうなほどに高鳴り、股間から垂れた愛液が太腿を伝う。
「では、簡易拘束に移ります。服をすべて脱いでください」
服を脱ぐ。冷たい空気が肌に刺さる。
それなりに大きな胸。きれいに剃り、毛の一本たりとも生えていない股間。誰にも見せたことのないそれが、白昼の元に晒された。
顔が燃え上がるように熱い。だけど、その羞恥心さえ私を昂らせる。
「腕を後ろに組んで。直立してください」
そんな私に一切の遠慮をすることもなく、女は私に淡々と拘束具を取り付けていく。
まず取り付けられた鉄製の首輪。ずっしりと重く、氷のように冷たいそれは私の喉を押さえつける。
「っあ゛!!!!」
真っ白になる視界。熱した鉄で突き刺されたような激痛。
首輪から流れた電流。女の手元の端末の操作一つで私に奔った強烈な痛み。
もう逃げられない。そのことをより強く実感する。
同じく金属製の手枷が後ろ手に組んだ手に掛けられ、二つの手が離れなくなった。
そして首輪に取り付けられた鎖を引かれ、私は全裸で街中を歩きだす。
「おい、見ろよあれ」
「うわ、すげ……」
「かわいそう……」
「恥ずかしくないのかな……」
向けられる視線は酷く鋭く、私を串刺しにする。
道行く人は好奇に満ちた表情を浮かべ、中にはカメラを向ける人もいて、顔に浮かんだ嫌悪感を隠そうとしない人もいる。だが全員に共通していたのが、侮蔑的な感情。
人以下の存在が惨めに歩いている。彼らにとってはそう映っているのだ。
「入ってください」
しばらく歩いた後、輸送用のトラックの中に入れられ、壁に鎖を繋がれる。
「どうでしたか? 最後の散歩は」
今まで冷徹に仕事に徹していた女の口元が歪んだ。
「まあ、……お疲れさまでした」
嘲るような言葉を残し、扉が閉まる。
裸にされて、それで街中を歩かされて、みんなに見られて。
私はもう、戻れない。
なんだか頭が重い。遠ざかっていく。視界が、音が、意識が――。
「久しぶりですね。マカタさん。……おっと、もう名前はありませんでしたね」
白い光で目を覚ます。
まず全身に感じた違和感。体が動かない。体を捩ろうと向きは変わらないし、手足はちっとも動かない。
「……サナダさん」
「せっかく口枷付けないであげたんですから。ちゃんとおしゃべりしましょうね」
嗜虐的な感情を顔いっぱいに広げながら、サナダさんは私を見下ろす。
私の両手はギロチン拘束のように首の横に固定され、両足はM字開脚のまま固定されていた。
「……で、これから何されるか、わかりますか」
「……わかりません」
「開発です。一定の基準まで性感を開発しないとまともに発電機としては働けませんから。……ちなみに、これが人間と喋れる最後の機会ですよ」
そう言いながらサナダさんはゴム手袋を二重に重ねて付け、ピンク色の粘液の入った瓶を手に取る。
瓶を開くと蒸気を上げるそれは見学の時に見たものと同じ、下着を履いただけで絶頂すると言われていたものだろう。
「あの……それ……」
「媚薬です。毎日塗ってあげますから。全身敏感になりましょうね」
体が震える。一切抵抗できないのが怖くて仕方がない。だけど、今更逃げ出そうなんてできるわけなかった。
だって、私は自ら志願してここまで来たのだ。それに、奴隷になった私は人ではない。たとえ何をされても文句ひとつ言う権利は持っていない。
「っぅ……!」
どろりと垂れた液体。重力に従ってゆっくりと体に近付き、胸の先端に触れる。
じわじわと広がる温かさ。際限なく大きくなるそれは熱さとなり、体の中で破裂しそうなほど膨らんでいく。
その中でどこよりも破裂しそうなのは、胸の先端。
ピンク色の乳首は赤く、痛々しいほどに腫れあがり、触れられるのを今か今かと待っている。
「っふっ……!!」
体の上に乗った媚薬がサナダさんの手によって広げられる。
腋、横腹、腰。
だんだんと降りていく腕は濡れ細った股間へと向かう。
「っああ゛っ!!!」
サナダさんの指が股間の割れ目に触れた瞬間、全身に奔る灼けつくような疼き。
体が勝手に逃げようとし、しかし体はビクともせず、ただガチャガチャと拘束具の擦れる音だけが反響する。
「っあ゛……っ゛、ゃ……っ!!」
指が割れ目に沿って滑り降り、膣の入り口を撫でる。
頭の中で弾け飛ぶ思考。
自慰なんか比じゃない快感。私はただ媚薬を塗られているだけだというのに。
「こんな状況で、……何濡らしてるんですか」
指は女性器の隅々まで這い回り、媚薬を塗り込んでいく。小さな肉芽を擦り上げ、膣の入り口を何度も撫で、Gスポットを指で抉る。
媚薬で何倍にも増幅された、思わず声を漏らしてしまう快楽。
なのに、絶頂だけができない。
それを迎えようとした瞬間、私の心を見透かしたかのようにサナダさんの指が止まるのだ。
「っ……ぅう……!!」
絶頂の波が引くよりも早く真田さんの指は再び動き出す。
絶頂寸前。ギリギリをキープされたままずっと降りることができない。
「毎日オナニーばっかりしてたから、敏感で辛いですよね。でも、まだまだですよ」
「っ、また……あ゛っ!!」
媚薬は私の体の中に染み込み、体の至るところが性感帯へと変えられる。どんな風に触れられても耐え難い快楽が襲い掛かり、しかも体は何も拒めない。
際限なく流れる、無限の快楽。体はとっくに限界だというのに、ただ絶頂だけが与えられない。
「……じゃあ、開発していきましょうか」
体から指が離れる。
そして、私の乳房にどんどん器具が取り付けられていった。
乳房を丸ごと覆う透明なドーム状の器具。その中は吸引されていて、乳房常に引っ張られる。
ドームの中には電マのヘッドのような物が不規則についており、それは振動で乳房全体を揺らし、ドームの内部全体が回転することで揉み解す。乳首は小型のオナホールのようなものに飲み込まれ、全方位からそれを擦り上げようとしていた。
見覚えがある。それは、乳房発電の工程で使われていた責め具だった。
「じゃあ、はじめますね」
「っぁ゛……っっ!!!」
乳房全体を責める無数の刺激。
媚薬によって敏感になった体はそれを余すことなく受け止め、あっという間に絶頂への道を昇り詰める。
それだけではない。
サナダさんの指先がクリトリスの先端を執拗に擦り、膣内に挿入された指でGスポットをしつこく突き上げていた。
無理やり、引きずられるように連れてこられた絶頂。
その寸前、クリトリスと膣内を責める指だけが、動きを止めた。
「っ゛ぅ゛!!! イ゛……っ!!!!」
止まらない乳房への責めは一線を越え、私は絶頂を迎える。
痙攣する体。甘い快楽の波。
しかし股間は物寂しそうにぴくぴくと震えている。
絶頂直後の乳首は容赦なくオナホールに扱かれ、尋常じゃない快楽を生む。
渇望と、あり得ない快楽。2つの感覚が合わさり、目の前が白く霞む。
股間を責める指も再び動き出す。
頭が焼け焦げそうだ。
「や゛っ!! お゛っぱい゛や゛だ……っ!!! し゛た゛も……っ!」
「中もクリも、触ってるじゃないですか……」
何倍にも敏感になった乳房は延々と責められ続け、何度も絶頂を迎えさせられた。なのに股間を責める指だけは絶頂直前で止められる。
乳首はもう1秒だって耐えられないのに、イきたいという渇望は消えないまま。
「あ゛っ!! クリ゛っ、イ゛か゛せてっ!!!!」
それから、どれだけ時間が経ったのだろうか。
ひたすら延々と乳房で絶頂させられ、股間は求めてもそこで達することはなかった。
体は快楽に溺れ、口からはみっともない喘ぎ声が絶えず漏れ続け、気を失うこともできずにただ拷問のような時間を過ごす。
脳に刻みつけられたのは、圧倒的な快楽と、底知れない渇望。
ようやく気付いた。開発っていうのは感度だけの話じゃない。
欲望、感情。それすらも性欲で塗りつぶして、快楽を求めるだけの肉塊にする。それが開発だ。
「おはようございます。……そろそろ、ですかね」
サナダさんが来たから、きっと朝なのだろう。
真田さんの白い指が、私の胸をそっと撫で――。
「っっ……あ゛!!!!」
軽く指で触られた。それだけなのに、絶頂してしまう。
普通の人だったら、一番敏感なクリトリスを触られたとしてもこんなふうにはならないはずだ。
開発されきった私の胸は快楽神経丸出しの、大きな性感帯と化していた。
「もう下着も履けないですね。……まあ、もう服を着る機会なんてありませんけど」
そう、私は奴隷なのだ。
クリトリスも、膣も、肛門も尿道も口さえも、全身全てを開発されつくしたうえで、見ただけでイってしまいそうだったあの責めを死ぬまで受け続ける。
だけど、私はそれを求めている。
クリトリスを押し潰されて、膣内いっぱいに物を押し込まれて、乳房を乱雑に揉みしだかれたい。
イって、イって、狂ってしまうほどに、絶頂し続けたい。
それが開発の成果のなのか、私の元来の性格かすら、今ではわからない。
だけど、きっと、これは私が望んだことだ。
「で、ここが……特別工程」
「発電量が優秀な奴隷を集中的に絶頂させる……でしたっけ」
「そうそう、今のがすごい優秀だから、もう5年はずっと変わってないかなー」
目の前では先輩が呑気に笑っている。
私には年の離れた姉が居た。顔もはっきりと覚えていない、優秀な姉。
居た、というのは、彼女の戸籍が抹消されたから。
簡潔に言うと、姉は自ら望んで奴隷になった。
勉強もできて、来年から良い大学に行くことも決まっている。そんな時期に突然、姉は奴隷になった。
私がここで働くのを選んだのは、きっとそのせい。
名前も消されて、顔も覚えていない。そんなほとんど他人な肉親に、どうしても思いを馳せてしまう。
お金もあった。容姿もいい。勉強も運動も、出来ないことは何一つない。そんな人が、どうして……。
「あ、ここを担当するのはもうちょっと偉くなってからだからねー。サボりは先輩の特権だから」
扉が開く。
漂ってきた濃厚な雌の匂いと、鼻を突く媚薬の匂い。
そして、鼓膜に響く機械の駆動音。
「っ、……!! っ゛……!!」
私は、そこに居たのが人間だとはにわかに信じられなかった。
顔全体を覆うマスクは五感を奪い、全身を締め付ける拘束具は見えている肌色の方が少ないほど。
乳房、膣、クリトリスと、それぞれ単独でも負荷限界ギリギリになっているはずの責めが同時に行われ、その上で絶頂電流を流されている。
耐えられる訳が無い。体は不自然に痙攣し、マスクの奥からは苦しそうな呼吸の音とかすれるような悲鳴が聞こえていた。なのにバイタルは不思議と安定している。
「なに、これ……」
正直、怖かった。
こんなことをしていいのか、人をこんな風に扱っていいのか。
「これ、志願奴隷なんだよね……。才能と性格が一致したって感じかな」
自ら。
姉と同じ、自ら望んで奴隷となった女。
どうして。さっぱり理解できない。
何回も無理やりイかされたって苦しいだけだ。
普通の生活。食事。寝て、起きて、どこかに行って、誰かと話して。そんな当たり前を、幸せを、全部捨ててまでこうなるだなんて、私には微塵も理解できない。
「なんで、どうして……志願なんて……」
私が思わずそう呟くと、先輩は何でもないことのように、こう答えた。
「抗えないんじゃないの? 変態の性に」
性、さが。
生まれた時から、決まっているのだろうか。
私の姉は……。
なら私は?
私の性は、いったい――。