■ ヒトイヌ公園が冬季に行っている、ヒトイヌ勉強会。それに参加することを決めたある一組のカップル。結果、彼女たちはとんでもないことになっていきます0w0クワッ!
■ この世界でもヒトイヌプレイはマニアックなプレイのはずですが、資産家にヒトイヌ愛好家がやたら多いということで……ーw-ウム まあ、いまさらですけどね! 書きたいように書きます!0w0クワッ!
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ヒトイヌ公園は私の想像していた倍以上の規模があった。
全国的に有名な有料公園並みの広さがある。正直、マニアックなプレイだし広いと言ってもせいぜい野球場とか、サッカースタジアムくらいの規模かと思っていたのだけど。
「これだけの規模、どうやって運営してるのかしら……」
整備費用も人件費も並大抵のものではないはずだ。
思わず計算してしまっていると、隣に立つ海咲ちゃんが首を傾げていた。
急に立ち止まった私を不思議に思っているようだ。
「ああ、ごめんなさい。……ええと、受付はどこかしら?」
私がそう呟くと、海咲ちゃんが一方向を指差す。
そこに案内板があって、簡単な地図が書かれていた。少し離れていたのだけど、海咲ちゃんは視力がいいので、見えたのだろう。
近づいてみると、確かに『公園受付』と書かれた表示があった。
「ありがとう。それじゃあ、行きましょうか」
そう告げた私は、海咲ちゃんと一緒に歩き出す。
公園の敷地はそこそこ高い壁に覆われているため、中の様子はうかがえない。やっていることがやっていることだから、フェンスなどで覆うわけにもいかないのはわかるけれど、これだけ大規模に壁を立ててそれを維持するのは相当なコストだろう。
「……に、しても広いわね」
「…………」
私のぼやきに海咲ちゃんがコクコクと頷く。
相当先まで壁は続いていて、まだ受付の建物は見えてこない。
数分歩いてようやく、それらしき建物が見えて来た。
壁の一部がその建物になっていて、公園内にはその建物からしか入れない。
いよいよヒトイヌ公園に足を踏み入れるとなって、ドキドキと心臓が鳴るのがわかる。
「さぁ……行きましょうか、海咲ちゃん」
「…………ん」
さすがの海咲ちゃんも若干の緊張を滲ませていた。
海咲ちゃんを安心させるために手を繋ぐ。この公園には同性カップルもよく訪れるというし、不審な目では見られないだろう。
そもそもここに来てる時点で、そういうプレイをするために来ているわけで、特別な関係なのは自明のことなのだし。
そんなことを考えつつ、私は海咲ちゃんと一緒に建物の中に入った。
建物の中は、高級ホテルのロビーみたいな雰囲気だ。とても有料公園の受付という雰囲気ではない。
入り口正面のカウンターに受付の人が座っていて、私たちを見てニコリと笑顔を向けてくれる。
「ようこそいらっしゃいました。当公園はご予約制となっておりますが、ご予約は御済みでしょうか?」
「あ、はい。ここで行われる、勉強会に応募してます。……これが、予約票です」
私はそう言ってあらかじめ印刷しておいた予約の概要が書かれた用紙を手渡した。
それを受け取った職員さんは、改めて穏やかな笑みを浮かべる。
「勉強会はこの建物の二階、小ホールにて行われます。その後は当施設内で体験していただけますので、ぜひお楽しみください。よい一日になることをお祈りしております」
そう言いつつ、職員さんは私たちに小さな金属片に、細いチェーンがついたものを渡してくれた。
「こちらは本日の参加者様に身に着けていただいている認識票です。施設を利用するために必要なものですので紛失しないようにお気をつけくださいませ」
「……ありがとうございます。はい、海咲ちゃん」
私は二つのうち片方を海咲ちゃんに手渡し、もう片方は自分の首にかける。
だが、ネックレスとかそういうものをあまりかけたことがないので、かなり手古摺ってしまう。
手を首の後ろに回して金具を操作して別の金具に引っ掛ける、というのが上手く出来ない。
「むぅ……っ、この……っ」
「…………やったげる」
もたついていると、海咲ちゃんが手伝ってくれた。
海咲ちゃん自身はあっさりと身に着けられたようだ。自分からあれこれするタイプではないのだけど、やろうと思えばなんでもできる器用さを海咲ちゃんは持っているのである。
「……ありがと」
ちょっと悔しいし情けないけれど、意地を張って受付前でグダグダしてはいられない。
海咲ちゃんにそれを取り付けてもらい、私と海咲ちゃんは二階へと向かった。
向かいつつ、首にぶら下がって揺れているそれを見て、苦笑いを浮かべる。
「にしても、これってあれよね……ドッグタグ、って奴よね……」
洒落が利いているというべきか、滑っているというべきか。ちょっと判断に困る。
海咲ちゃんは興味深そうにそのドッグタグを指先で弄り、見つめていた。
「……首輪にこういうのつけたら、なんか、いいかもしれないわね」
雰囲気が出るかもしれない。
迷子札じゃないけれど、実際首輪に連絡先が記録されたタグやらチップやらを仕込んでいる犬の飼い主はいるらしいし。
そんなことを考えているうちに二階に到着し、私たちは案内板に従って小ホールへと向かった。
小ホールは文字通りの小さなホールで、大学の小さな講義室みたいな感じだ。
十数人ほどが座れるように段状になった席が並んでいて、その正面にはちょっとしたお立ち台というか、ステージがある。
全体的に作りがすごく丁寧で、ロビーや廊下もそうだったけれど、床も椅子も机もステージも、かなり高級感があった。
例えるなら、小さな映画館という雰囲気だ。
何となくそのイメージが強いのは、床に柔らかい絨毯が敷き詰められているからだろう。
(もしかしてここもヒトイヌプレイに使ったりすることもあるのかしら?)
四つん這いで移動するヒトイヌの負担を減らすため、あるいはそこで倒れても体を傷めないようにという配慮なのかもしれない。
そんなことを考えながら、私と海咲ちゃんは小ホールへと踏み込んだ。
よく見ると数十ある席のうち、 いくつかに人が座っていた。
男女のカップルっぽいのが三組、男性の二人組が一組、それ以外は一人で来ているのか、男性二人と女性一人が離れた位置に座っている。
女性の二人組は私たちだけのようだ。
(結構来てるものね……)
私たちだけか、いても数人程度だろうと思っていたので、想像よりも参加者が多い。
とりあえず私たちも適当な席に座った。周囲から関心を向けられているのがわかる。お互い様だ。
少なくともこの場にいるということは、同好の士であることは間違いないのだから。
(……どっちがご主人様か、わかりやすいわね)
見た感じでどっちがご主人様なのかは何となくわかる。
気が強そうだったり、明らかに体格に差があったり、醸し出している雰囲気がそうだったり。
(私たちに関しては……どうかしら。勘違いされてそうな気もするわね)
悔しいが体格的には海咲ちゃんの方が大きい。性格とか性質とかを抜きにして考えれば、私が犬側で海咲ちゃんがご主人様側だと思われても仕方ない。
でも雰囲気を踏まえれば、私の方がご主人様側だと気づくことは出来るだろう。 海咲ちゃんは明らかにそういう覇気というか、自己主張が激しくないし。
別に誰にどう思われようと関係はないのだけど、ついそんなことを考えてしまった。
「ふぅ……」
こっそり周りの様子を窺うのをやめて、気持ちを落ち着ける。
海咲ちゃんはじっとステージの方を見つめていた。
待つこと数分。
ステージの上にスーツを着た職員さんが現れる。後ろの方で扉が閉められる音がした。いよいよ始まるみたいだ。
改めて居住まいを正していると、トコトコと不思議な音が聞こえて来た。
その音がした方を見ると――ステージ脇から、一頭のヒトイヌが現れていた。
全身真っ黒なスーツに身を包んだそれは、紛れもなくヒトイヌだった。手足を折り畳んで、短い手足で一生懸命動いている。
顔も下半分が犬の顔立ちを意識していると思われる形状のマスクで覆われており、本人の肌が露出しているのは目の周りだけだ。
お尻からはふさふさとした尻尾が生えていて、歩く度にゆらゆらと揺れている。まるで本物の犬みたいだ。
ヘッドフォンのような耳当てと一体化している犬耳もぴょこぴょこ動いていて、本当に生えているように見える。
(本当に生えてる……わけじゃないわよね? めちゃくちゃ自然な動きで勘違いしそうになるけど……付け耳よね?)
想像以上に犬っぽさを醸し出しているその姿に、思わずごくりと息を呑む。
大なり小なり、この場にいる者の気持ちは大体同じなのか、それぞれからざわめきが上がっていた。
ステージの上に立った職員さんは、一緒に登場したヒトイヌに対し、自分の隣を指し示す。
するとそのヒトイヌはその辺りまでいくと、短くなった手足で器用に体を起こし、その場で両腕――前足を持ち上げた。
足は九十度くらいに開いているため、それなりにバランスが取れている。
それは犬の芸でいう、『ちんちん』の体勢に近いものだった。
体の前面を無防備に晒す、とても恥ずかしい格好だ。
実際、そのヒトイヌは体にぴちぴちに張り付いたスーツのせいで、体の輪郭がもろに見えてしまっている。
特に胸の膨らみは、かなり露骨に露わになっていた。髪の長さや艶的にそうだろうとは思っていたけれど、そのヒトイヌは女性だった。
晒し出している股間部分にも膨らみはなく、ぴっちりとスーツが張り付いている。
よく見ると股間部分には縦に筋が通っていて、開くような構造になっているみたいだった。
なぜそこが開くようになっているかは、少し考えれば理由がわかる。
肌の露出はほとんどないのに、非常に性的な魅力を感じさせる姿だった。
「…………っ」
思わずごくりと生唾を呑み込む。海咲ちゃんも目を丸くしてそのヒトイヌに注目している様子だった。
そんなヒトイヌを隣にしながら、職員さんがマイクを手にする。
『えー……皆さま、この度はヒトイヌ公園主催、ヒトイヌ勉強会、ヒトイヌのすゝめにご参加いただきまして、誠にありがとうございます』
職員さんは淡々と挨拶を始めた。あまりにヌルッと始まったから、一瞬ついていけなかったくらいだ。
『今回の勉強会では、ヒトイヌの基本から応用の説明をした後、実地練習まで行う予定です。皆様の良きヒトイヌライフの一助となりますように』
そう職員さんが締めくくると、ドアを閉めた職員さんらしき人がやってきて、パンフレットのようなものを配ってくれた。
可愛らしくデフォルメされたヒトイヌのイラストが表紙にプリントされた、いかにもヒトイヌプレイの説明書らしきもの。
開いてみると、細かなヒトイヌの説明が図と共に丁寧に書かれている。
ヒトイヌ拘束で気をつけておかなければならないポイントや、ヒトイヌに快適に過ごさせるために主人側が気をつけておかなければならないこと――まさに私の知りたかった情報がその冊子には詰まっていた。
『それでは、勉強会を始めましょう――』
職員さんの言葉に、思わず居住まいを正してしまう私。
勉強会は想像以上に静かに、淡々と始まった。
職員さんの傍らで待機しているヒトイヌの尻尾が、ゆらゆらと揺れていた。
つづく
ヒトイヌ公園は私の想像していた倍以上の規模があった。
全国的に有名な有料公園並みの広さがある。正直、マニアックなプレイだし広いと言ってもせいぜい野球場とか、サッカースタジアムくらいの規模かと思っていたのだけど。
「これだけの規模、どうやって運営してるのかしら……」
整備費用も人件費も並大抵のものではないはずだ。
思わず計算してしまっていると、隣に立つ海咲ちゃんが首を傾げていた。
急に立ち止まった私を不思議に思っているようだ。
「ああ、ごめんなさい。……ええと、受付はどこかしら?」
私がそう呟くと、海咲ちゃんが一方向を指差す。
そこに案内板があって、簡単な地図が書かれていた。少し離れていたのだけど、海咲ちゃんは視力がいいので、見えたのだろう。
近づいてみると、確かに『公園受付』と書かれた表示があった。
「ありがとう。それじゃあ、行きましょうか」
そう告げた私は、海咲ちゃんと一緒に歩き出す。
公園の敷地はそこそこ高い壁に覆われているため、中の様子はうかがえない。やっていることがやっていることだから、フェンスなどで覆うわけにもいかないのはわかるけれど、これだけ大規模に壁を立ててそれを維持するのは相当なコストだろう。
「……に、しても広いわね」
「…………」
私のぼやきに海咲ちゃんがコクコクと頷く。
相当先まで壁は続いていて、まだ受付の建物は見えてこない。
数分歩いてようやく、それらしき建物が見えて来た。
壁の一部がその建物になっていて、公園内にはその建物からしか入れない。
いよいよヒトイヌ公園に足を踏み入れるとなって、ドキドキと心臓が鳴るのがわかる。
「さぁ……行きましょうか、海咲ちゃん」
「…………ん」
さすがの海咲ちゃんも若干の緊張を滲ませていた。
海咲ちゃんを安心させるために手を繋ぐ。この公園には同性カップルもよく訪れるというし、不審な目では見られないだろう。
そもそもここに来てる時点で、そういうプレイをするために来ているわけで、特別な関係なのは自明のことなのだし。
そんなことを考えつつ、私は海咲ちゃんと一緒に建物の中に入った。
建物の中は、高級ホテルのロビーみたいな雰囲気だ。とても有料公園の受付という雰囲気ではない。
入り口正面のカウンターに受付の人が座っていて、私たちを見てニコリと笑顔を向けてくれる。
「ようこそいらっしゃいました。当公園はご予約制となっておりますが、ご予約は御済みでしょうか?」
「あ、はい。ここで行われる、勉強会に応募してます。……これが、予約票です」
私はそう言ってあらかじめ印刷しておいた予約の概要が書かれた用紙を手渡した。
それを受け取った職員さんは、改めて穏やかな笑みを浮かべる。
「勉強会はこの建物の二階、小ホールにて行われます。その後は当施設内で体験していただけますので、ぜひお楽しみください。よい一日になることをお祈りしております」
そう言いつつ、職員さんは私たちに小さな金属片に、細いチェーンがついたものを渡してくれた。
「こちらは本日の参加者様に身に着けていただいている認識票です。施設を利用するために必要なものですので紛失しないようにお気をつけくださいませ」
「……ありがとうございます。はい、海咲ちゃん」
私は二つのうち片方を海咲ちゃんに手渡し、もう片方は自分の首にかける。
だが、ネックレスとかそういうものをあまりかけたことがないので、かなり手古摺ってしまう。
手を首の後ろに回して金具を操作して別の金具に引っ掛ける、というのが上手く出来ない。
「むぅ……っ、この……っ」
「…………やったげる」
もたついていると、海咲ちゃんが手伝ってくれた。
海咲ちゃん自身はあっさりと身に着けられたようだ。自分からあれこれするタイプではないのだけど、やろうと思えばなんでもできる器用さを海咲ちゃんは持っているのである。
「……ありがと」
ちょっと悔しいし情けないけれど、意地を張って受付前でグダグダしてはいられない。
海咲ちゃんにそれを取り付けてもらい、私と海咲ちゃんは二階へと向かった。
向かいつつ、首にぶら下がって揺れているそれを見て、苦笑いを浮かべる。
「にしても、これってあれよね……ドッグタグ、って奴よね……」
洒落が利いているというべきか、滑っているというべきか。ちょっと判断に困る。
海咲ちゃんは興味深そうにそのドッグタグを指先で弄り、見つめていた。
「……首輪にこういうのつけたら、なんか、いいかもしれないわね」
雰囲気が出るかもしれない。
迷子札じゃないけれど、実際首輪に連絡先が記録されたタグやらチップやらを仕込んでいる犬の飼い主はいるらしいし。
そんなことを考えているうちに二階に到着し、私たちは案内板に従って小ホールへと向かった。
小ホールは文字通りの小さなホールで、大学の小さな講義室みたいな感じだ。
十数人ほどが座れるように段状になった席が並んでいて、その正面にはちょっとしたお立ち台というか、ステージがある。
全体的に作りがすごく丁寧で、ロビーや廊下もそうだったけれど、床も椅子も机もステージも、かなり高級感があった。
例えるなら、小さな映画館という雰囲気だ。
何となくそのイメージが強いのは、床に柔らかい絨毯が敷き詰められているからだろう。
(もしかしてここもヒトイヌプレイに使ったりすることもあるのかしら?)
四つん這いで移動するヒトイヌの負担を減らすため、あるいはそこで倒れても体を傷めないようにという配慮なのかもしれない。
そんなことを考えながら、私と海咲ちゃんは小ホールへと踏み込んだ。
よく見ると数十ある席のうち、 いくつかに人が座っていた。
男女のカップルっぽいのが三組、男性の二人組が一組、それ以外は一人で来ているのか、男性二人と女性一人が離れた位置に座っている。
女性の二人組は私たちだけのようだ。
(結構来てるものね……)
私たちだけか、いても数人程度だろうと思っていたので、想像よりも参加者が多い。
とりあえず私たちも適当な席に座った。周囲から関心を向けられているのがわかる。お互い様だ。
少なくともこの場にいるということは、同好の士であることは間違いないのだから。
(……どっちがご主人様か、わかりやすいわね)
見た感じでどっちがご主人様なのかは何となくわかる。
気が強そうだったり、明らかに体格に差があったり、醸し出している雰囲気がそうだったり。
(私たちに関しては……どうかしら。勘違いされてそうな気もするわね)
悔しいが体格的には海咲ちゃんの方が大きい。性格とか性質とかを抜きにして考えれば、私が犬側で海咲ちゃんがご主人様側だと思われても仕方ない。
でも雰囲気を踏まえれば、私の方がご主人様側だと気づくことは出来るだろう。 海咲ちゃんは明らかにそういう覇気というか、自己主張が激しくないし。
別に誰にどう思われようと関係はないのだけど、ついそんなことを考えてしまった。
「ふぅ……」
こっそり周りの様子を窺うのをやめて、気持ちを落ち着ける。
海咲ちゃんはじっとステージの方を見つめていた。
待つこと数分。
ステージの上にスーツを着た職員さんが現れる。後ろの方で扉が閉められる音がした。いよいよ始まるみたいだ。
改めて居住まいを正していると、トコトコと不思議な音が聞こえて来た。
その音がした方を見ると――ステージ脇から、一頭のヒトイヌが現れていた。
全身真っ黒なスーツに身を包んだそれは、紛れもなくヒトイヌだった。手足を折り畳んで、短い手足で一生懸命動いている。
顔も下半分が犬の顔立ちを意識していると思われる形状のマスクで覆われており、本人の肌が露出しているのは目の周りだけだ。
お尻からはふさふさとした尻尾が生えていて、歩く度にゆらゆらと揺れている。まるで本物の犬みたいだ。
ヘッドフォンのような耳当てと一体化している犬耳もぴょこぴょこ動いていて、本当に生えているように見える。
(本当に生えてる……わけじゃないわよね? めちゃくちゃ自然な動きで勘違いしそうになるけど……付け耳よね?)
想像以上に犬っぽさを醸し出しているその姿に、思わずごくりと息を呑む。
大なり小なり、この場にいる者の気持ちは大体同じなのか、それぞれからざわめきが上がっていた。
ステージの上に立った職員さんは、一緒に登場したヒトイヌに対し、自分の隣を指し示す。
するとそのヒトイヌはその辺りまでいくと、短くなった手足で器用に体を起こし、その場で両腕――前足を持ち上げた。
足は九十度くらいに開いているため、それなりにバランスが取れている。
それは犬の芸でいう、『ちんちん』の体勢に近いものだった。
体の前面を無防備に晒す、とても恥ずかしい格好だ。
実際、そのヒトイヌは体にぴちぴちに張り付いたスーツのせいで、体の輪郭がもろに見えてしまっている。
特に胸の膨らみは、かなり露骨に露わになっていた。髪の長さや艶的にそうだろうとは思っていたけれど、そのヒトイヌは女性だった。
晒し出している股間部分にも膨らみはなく、ぴっちりとスーツが張り付いている。
よく見ると股間部分には縦に筋が通っていて、開くような構造になっているみたいだった。
なぜそこが開くようになっているかは、少し考えれば理由がわかる。
肌の露出はほとんどないのに、非常に性的な魅力を感じさせる姿だった。
「…………っ」
思わずごくりと生唾を呑み込む。海咲ちゃんも目を丸くしてそのヒトイヌに注目している様子だった。
そんなヒトイヌを隣にしながら、職員さんがマイクを手にする。
『えー……皆さま、この度はヒトイヌ公園主催、ヒトイヌ勉強会、ヒトイヌのすゝめにご参加いただきまして、誠にありがとうございます』
職員さんは淡々と挨拶を始めた。あまりにヌルッと始まったから、一瞬ついていけなかったくらいだ。
『今回の勉強会では、ヒトイヌの基本から応用の説明をした後、実地練習まで行う予定です。皆様の良きヒトイヌライフの一助となりますように』
そう職員さんが締めくくると、ドアを閉めた職員さんらしき人がやってきて、パンフレットのようなものを配ってくれた。
可愛らしくデフォルメされたヒトイヌのイラストが表紙にプリントされた、いかにもヒトイヌプレイの説明書らしきもの。
開いてみると、細かなヒトイヌの説明が図と共に丁寧に書かれている。
ヒトイヌ拘束で気をつけておかなければならないポイントや、ヒトイヌに快適に過ごさせるために主人側が気をつけておかなければならないこと――まさに私の知りたかった情報がその冊子には詰まっていた。
『それでは、勉強会を始めましょう――』
職員さんの言葉に、思わず居住まいを正してしまう私。
勉強会は想像以上に静かに、淡々と始まった。
職員さんの傍らで待機しているヒトイヌの尻尾が、ゆらゆらと揺れていた。
つづく