■ ヒトイヌ公園が冬季に行っている、ヒトイヌ勉強会。それに参加することを決めたある一組のカップル。結果、彼女たちはとんでもないことになっていきます0w0クワッ!
■ ヒトイヌ公園内でのトロッコ移動。この要素めちゃくちゃ久しぶりに出した気がすますーw-; 一応初期からある設定のはずなのにw そういう設定が他にもありそう。そろそろ「ヒトイヌ公園②」として作品を纏めると同時に、設定も纏めたいですね0w0クワッ
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「フーッ……フーッ……ンゥ……っ」
完全なヒトイヌ拘束を施された私は、四つん這いでどうにか廊下に出ることが出来た。
移動した距離としては全然大したことがないのに、自然と息があがってしまっている。
(動くだけでも……結構、大変……っ、いや、わかっては、いたけど……!)
ヒトイヌ拘束で動くと言うのは、想像以上にキツい運動だった。
キツイとは思っていたけれど、まさかここまでとは。
それに、今の私が身に着けているのは、ヒトイヌ公園という専門機関が作ったもので、かなり楽なはずだ。
私自身の運動不足も大いに関係しているとは思うけれど、それでも不十分な装備でもあれだけ動いて見せてくれた海咲ちゃんには申し訳ない気持ちになってしまう。
(また後で……褒めてあげなくちゃ……っ)
そんな海咲ちゃんは現在、私のすぐ側に立っている。
いつも通りの無表情っぷりだったけど、私の様子をしっかり伺ってくれていた。
この上なく不自由なヒトイヌ拘束を施されていても落ち着いていられるのは、海咲ちゃんという信頼のおけるパートナーがすぐ側にいてくれるからだ。
もしも彼女がいなければ、全ての自由を投げ出したこんな無防備な姿には、とてもなれそうもない。
(信頼関係が大事……ってことよね。実際にヒトイヌプレイをするときは、信頼関係を壊さないように気をつけないとね……)
海咲ちゃんに安心して楽しんでもらうためにも、私は彼女の信頼に応えなければならない。
信頼を裏切るような真似は、絶対にしては駄目だと強く思う。
(飼い主サイドの責任が重いのよね。ヒトイヌ側は文字通り手も足も出ないんだから……)
ちゃんと相手に注意を払うべきなのは、ヒトイヌの方じゃなく飼い主側の方だ。
そんな風に思いながらも、私は廊下を歩いて行く。
最初はどうしても慣れなくて、亀より遅い鈍足になってしまっていたけれど、長い廊下を一生懸命歩いているうちに、ヒトイヌ拘束で動くのにも少し慣れて来た。
(んっ、んっ、んっ……! 手も足も上げすぎるとしんどいから……肘当てを滑らせるように……っ)
ヒトイヌとして歩くコツのようなものを掴みつつあった。
そうしているうちに、どうやら目的の場所についたようだった。
そこは、大きなエレベーターホールだ。
確かに公園内に出ようと思うと、まずは一階に降りなければならない。でも四つん這いで階段を降りるのは危険、というレベルの話じゃない。
エレベーターが来て、扉が開く。乗り込む私と海咲ちゃん。
いまの私の視点は極端に低いから、さほど特徴的でもないエレベーターの中の光景が、すごく新鮮に感じる。
エレベーターで降りていく私たち。
(……外に出る、のよね?)
いよいよ外が近付いてきているのを感じつつも、私はふとそう思った。
こんな格好で野外に出るのかと思うとドキドキするけれど、冷静に考えると外はかなり寒いはずだ。
そもそも、冬場外に出れない環境だからこそ、このヒトイヌ勉強会が行われているのではなかったか。
いまさらながらそのことを考えて不思議に思っていると、エレベーターのついた先は一階ではなかった。
(地下一階……? 一体、どうして……)
不思議に思って海咲ちゃんを見上げてみたけれど、海咲ちゃんは無言のままリードを牽いて、私を先に促す。
仕方なく私はそれに従って、エレベーターの外へと歩き出した。
ほどなくして、先ほどの職員さんとは別の人が待っている場所にたどり着く。
「勉強会の参加者様ですね。お疲れ様です」
そんな労いの言葉をかけてくれるその人が立っている背後には、何やら大きな設備のようなものが見える。四つん這いだから全体が見渡せず、何なのかよくわからない。
「こちらはヒトイヌ拘束が施されたまま、公園内の施設を移動するためのトロッコ乗り場です」
「ンぅ……!?」
予想もしていなかった設備があることを知り、私は目を丸くして驚いてしまう。
まさかそんな移動手段が存在するなんて思ってもみなかった。
そんな風に私が驚いている間にも、職員さんは説明を続けてくれる。
「公園内の移動は、本来であれば屋外の散歩コースになるのですが……いまの時期は少し外を歩くだけで凍えてしまいますからね」
いまの私はかなり暑いというか、不自由な身体で必死に動いた結果、汗ばんですらいたけれど、さすがにラバースーツ一枚では冬の寒さはどうにもならないようだ。
その思いが顔に出ていたのか、職員さんが説明を追加してくれる。
「ラバースーツに保温性はありませんから、外気の影響をもろに受けてしまうのです。……寒さにも対応できる、着ぐるみタイプのヒトイヌスーツもなくはないんですが……数も少なく、貸出も限定的なんですよね」
一応そういうものも存在はしているらしい。
今回の勉強会でそれの貸し出しはないのは、それだけその装備が特殊なものなのだろう。
(着ぐるみって結構するらしいし、軽々に貸し出したりできないんだろうなぁ……)
いま私が身に着けているヒトイヌ拘束の一式だって、買おうとすると相当するであろうことは想像に難くない。
私がそんな風に納得していると、職員さんが壁にある扉を開いた。
その扉はすごく低い位置にあった。というか、床と同じ高さで、例えるならペット用の出入り口のような感じだ。
四つん這いの私がちょうど入れそうな高さであることから、私がそこに入ることは明らかだった。
「こちらの中に入ってください。この中はいわゆるコンテナとなります。あとは自動で次の施設へ移動します。コンテナの鍵はパートナーの肩にお渡ししますので、パートナーの方以外はコンテナを開けることができませんので、ご安心ください」
一時的にパートナーと離れることになるから、そういった処置をするのだろう。
私は納得して海咲ちゃんを見上げると、彼女も私を見ていた。
海咲ちゃんの目には少しの不安が除いていたけれど、私はあえて笑顔を浮かべて見せる。
(大丈夫だから、すぐに来てね)
そう目で伝えつつ、私は早速その扉の中へと進んでいった。リードは一端外され、海咲ちゃんが纏めて手に持っていた。
中は非常に狭い空間だった。一応多少の余裕はあるけれど、閉所恐怖症の人なら絶対無理なレベルで四方からの圧がかかる。
長方形であるあたり、正しく電車とかのコンテナの小さい版みたいなものなのだろう。
「それでは、いってらっしゃいませ」
職員さんがそう言って、私の背後で扉が締まる。
がしゃん、と音がした後、静かな駆動音が四方八方からし始める。
『まもなく発車します。移動にかかる所要時間は五分です。壁にもたれかかっても問題ありません。必要以上に暴れると危険ですので、リラックスして動かないでください』
まるで電車内で流れるようなアナウンスがひっきりなしに聞こえてくる。
静かすぎて不安にさせないようにという配慮みたいだ。
アナウンスが言っていたから安心して、軽く体を壁に預けてみると随分と楽になった。
(ふぅ……狭苦しいけれど……これくらい狭いと逆に落ち着くかも)
ヒトイヌ拘束されていることも関係しているのかもしれない。
下手に広いところで人目が気になるよりも、狭苦しくても誰の目もないという今の方がずいぶん楽な気がする。
そんなことを考えているうちに、いつの間にかトロッコは発車していた。
『現在、受付所から移動しています。目的地は遊技場です』
あまりに静かすぎて、動いている実感がわかない。でも確かに、僅かに加速と減速による慣性の力が働いているような気がしないでもない。
移動中もアナウンスの声は止まることなく、常に何かしら喋り続けていた。
そんなアナウンスの声が急に止まり、切り替わる。
『目的地に到着しました。パートナーの方が到着するまで暫しお待ちください』
どうやらあっという間に目的地に到着したみたいだ。
海咲ちゃんは普通に公園内を歩くのか、それともゴルフカートのような移動手段があるのかどうかはわからないけれど、少し待たないといけないだろう。
無音にならないようにか、待機している間もアナウンスは続いていた。
ヒトイヌ公園関連の話だけでも色々紹介するものはあるらしく、ちょっと気になるイベントや販売品のアナウンスもあったので、退屈しなくて済んだ。
(そういえば……あんな下に扉があったってことは……ひとりで来ても設備を楽しめるようになってるってことよね……)
ヒトイヌ拘束をされたまま、一人で行動することも可能なのかもしれない。
私には海咲ちゃんがいるから、一人で公園に来るようなことはないだろうけれど、そういうのがちゃんとあるというのはサービスとして親切だと思う。
(頻繁には来れないけど……暖かくなってから来てみたいし)
そんな風に考えながら待っていた時間は、およそ十五分くらいだっただろうか。
私が収まっているコンテナの壁から、カチャカチャと鍵を弄るような音が聞こえてきた。
コンテナに入る時にはそのまま頭から入ったので、入って来た時の扉はお尻の方にあるはず。
だけどそのカチャカチャという音は目の前の壁から聞こえて来ている。
壁の端に隙間が生まれ、開いていく。
(前後に扉があったのね……)
外が見えるようになると、すぐ目の前に海咲ちゃんがしゃがんで、コンテナの中を、私を覗き込んで来ていた。
いつも通りクールな目が、ぱちくりと瞬いて、その瞳の奥に安堵の感情を滲ませる。
ほとんどの人にはわからない変化だったけれど、海咲ちゃんとの付き合いが長い私にはその変化がハッキリとわかった。
(ふふ……心配してくれたのね。大丈夫よ、案外快適だったし……)
私がコンテナの中から這い出すと、海咲ちゃんの手が私の頭に伸ばされる。
リードを着けようとしているようだ。
ただ、海咲ちゃんの指先が首に触れた時、思わずびくりと体を震わせてしまった。
(んっ……! 冷たい……!)
どうやら外を移動して来たのは間違いないみたいだ。歩きだったのだろうか。
コンテナに詰められたとはいえ、ぬくぬくと移動したのが少し申し訳なくなる。
リードが私の首輪に繋がれ、その先端を持った海咲ちゃんが立ち上がる。
(トロッコのアナウンスでは確か遊技場……だったかしら?)
海咲ちゃんしか見えていなかったけれど、私は改めて周囲を見渡してみる。
一言でいえばそこは駅のホームのような場所だった。
私が乗っていたトロッコは、コンテナ部分が真横に回転して、ホームの上に降りれるようになっていた。
そのコンテナの扉が閉まり、コンテナ自体が回転してトロッコと向きを揃え、そして音もなく去っていく。
(外からでも静か……中にいて全然感じないわけだわ……)
一応レールのようなものはあるみたいだけど、ほとんど擦れたりするような音がしていないところを見ると、あるいはリニアカーみたいな、僅かに浮いている仕様なのかもしれない。
(いや、移動するだけにどんだけお金かけてるの?)
ヒトイヌが自由に、そして負担なく公園内を移動するためと思えば、あるいは間違ってないのかもしれないけれど。
本当に採算が取れているのか、不思議に思えてくる。
そんなことを考えていた私のリードを海咲ちゃんが軽く引いてくる。
海咲ちゃんを見上げると、彼女は視線で移動しようと訴えかけて来た。
「ンっ……ンわウッ」
私は軽く口枷を噛み締めて、犬の顎の形をしたマスクを開いて見せた。
海咲ちゃんはほんの少し微笑み、私を先導して歩き出す。
私は遅れないようにそれについていきながら、これから何をするのかが気になった。
(ヒトイヌ体験の時間ってだけで、細かい説明はなかったし……海咲ちゃんは職員さんから聞いてたみたいだけど)
海咲ちゃんに聞きたくても、いまの私はそれを言葉に出来ない。
ヒトイヌ側に伝えないように指示があったのか、海咲ちゃん自身の性格によるものかはわからない。
ただ、ヒトイヌ側から質問することは出来ないのだから、自分が飼い主側の立場に鳴った時は、出来る限り今後の流れについて説明しようと思った。
(不安になっちゃうものね……こういうのを普段の飼い主側に自覚させるのが、この体験会の目的だろうし……)
本当はそんな意図なんてないのかもしれないけれど、少なくとも私は勉強会の趣旨だと受け取った。
またエレベーターに乗るのかと思ったけれど、どうやらトロッコで移動してる間に地上の高さに戻っていたようで、駅っぽかった部屋から出たらすぐに広い空間へと繋がっていた。
そこは学校の体育館くらいの広さで、何となく色合いがカラフルというか、賑やかだった。
例えるなら、デパートなどで子供を遊ばせるキッズスペースのような。
その印象が強いのは、床が固いフローリングとかではなく、程よく柔らかいクッション性のある床だからだろう。
遊技場というらしいその空間は、ヒトイヌとして存分に遊ぶことの出来る空間だった。
つづく