Previous Post

堕ちた王者と砕かれた友情~凛香VSあきら~Part.2/The Fallen Champion and a Shattered Friendship: Rinka vs. Akira—Part 2

Next Post
堕ちた王者と砕かれた友情~凛香VSあきら~Part.2/The Fallen Champion and a Shattered Friendship: Rinka vs. Akira—Part 2
1 / 11
DESCRIPTION

■前回


■試合内容

当サークルで一番の人気シリーズである「堕ちた王者」の最新話です。

前回のPart.1も導入編の中では過去最高のいいね数を頂いており、皆様楽しんで頂き本当にありがとうございます!!


ネタバレ防止の為に詳細は控えるのですが、Part.2である今回は試合開始~序盤戦までの流れをお送りします。


挿絵は全5枚+α(試合前の立ち絵含む)、SSは約10000文字です(pixiv換算で読了まで約20分)。

それでは対戦よろしくお願いします~。



凛香さんスランプ編こと堕ちた王者シリーズは下記にまとめてありますので、もし良ければそちらも是非~。




■Content of the match

This is the latest installment of “The Fallen Champion,” our circle's most popular series.

Part 1 received the highest number of likes ever for an introductory chapter, and we truly appreciate everyone enjoying it!!


To avoid spoilers, We won't go into too much detail, but in this Part 2, We'll cover the action from the start of the match through the early stages.


There are a total of 5 illustrations +α (as usual, there are character portraits).


Thank you for your support.


The “Rinka's Slump” arc, also known as the “Fallen Champion” series, is summarized below, so please check it out if you're interested.



★最後にアンケートがあります。プラン内容の方針を決める要素になりますので、よければ皆さんのご意見を教えていただけると幸いです。

There is a survey at the end. This will be a factor in deciding the content, so if you would like to give us your opinion, please do so. (Japanese)


★For non-Japanese users★

Please take a moment to translate and read this short story on sites such as https://www.deepl.com/translator m(_ _)m


---

堕ちた王者と砕かれた友情~凛香VSあきら~Part.2

The Fallen Champion and a Shattered Friendship: Rinka vs. Akira—Part 2




「皆様、大変長らくお待たせいたしました!! これより本日のメインイベント……プロスペクトボクシングリーグのランクマッチを行います!!!」


割れんばかりの歓声が特設会場の重苦しい空気を爆発させていく。

リングライトの眩い光が白いキャンバスを冷酷に照らし出す中、実況の声がスピーカーを通して鼓膜を震わせた。



「まずは青コーナー……かつて公式戦無敗のままベルトを掴み取ったのも遥か昔、今やリーグ最下位にまで落ちぶれてしまったこの女!!!」


細く締まったウエストに艶めく長い黒髪。

地下格闘技という言葉の響きとはかけ離れた、その雌として余りにも魅力的な肉体は、観客たちの視線を一気に引き寄せていく。


「新たな二つ名に相応しい惨めな敗北を繰り返してしまっておりますが、果たして今日はどうなるのか!!? …………”堕ちた王者(ブロークンチャンピオン)”こと、プロスペクトリーグ現在9位、凛香~~~~!!!」





入場曲が鳴り響く中、ゆっくりと花道に姿を現した凛香。

実況の物言いに眉をピクリと動かすも、緊張からか、その端正な顔立ちは若干硬く強張ってしまっていた。


(今日は……今日だけは、絶対に負けられない!!

 …………由乃と、約束したんだから……)




「続きまして赤コーナー……先日のちかる選手との試合では惜しくも敗れてしまった彼女ですが、他リーグの王者クラスを相手に見事な意地を見せてくれました!!」


対角線のゲートから、華やかなポニーテールを揺らしながらあきらが姿を現す。

薄く割れた腹筋とそのすぐ上にある二つの豊かな膨らみが、彼女の地下女子ボクサーとしての魅力をありありと映し出していた。


「リーグ随一のカウンターの名手であり、プロスペクトリーグ現在4位…………”紅の返し刃(レッドリバーサル)”こと、あきら~~~~~!!!」




赤コーナーの前に立ったあきらは観客に脇目もふらず、真っ直ぐに親友の方を見つめていく。


その紅い瞳には燃え盛るような熱い闘志と、確固たる決意が宿っていた。






「この試合は皆様ご存知の通り、同じ大学に通う親友対決となっております!!

…………が、それだけではありません!!!」




実況の言葉と共にスクリーンに現在のランキング表が映し出される。


そこには『Tournament of Champions Roster』、すなわち、アンナがベルトを返上してエリートリーグに移籍した為、空白となっていた王座を決める闘いの参加者の記載があった。


「あきら選手は現在ランキング4位の為、この試合の勝者は近く開催される『王座決定トーナメント』への参加にぐっと近づきます!! 栄光のベルトへ王手をかけるのは果たしてどちらなのか!!?」



王座決定トーナメント開催の告知に会場がどよめく中、一拍置いてから実況はトーンを一段下げ、残酷な現実を観客たちへと突きつけていく。


「また、凛香選手は現在泥沼の9連敗中となっており……もし万が一今日も負けるような事があれば…………前代未聞の”10連敗”という不名誉極まりない大記録を打ち立てることになってしまいます!!!」



(そう、今日は……今日だけは、絶対に負けられないんだから…………)


スクリーンに『10連敗王手』という文字が踊る中、少女は蒼いグローブを握りしめる手に力を込めていった。




そんな中、会場のスクリーンが切り替わり、この試合の賭けオッズが披露されていく。




「さぁ、本日の最終オッズが発表されましたが…………なんと、8割近い紳士の皆様があきら選手の勝利にベットしております!! 凛香選手の復活に賭けているのは、大穴狙いのギャンブラーしかいないのかぁ!!?」


最下位ランカーであったまこと相手に完敗を喫した上に、先のアイアンマンマッチでは前代未聞の”完全降伏”という余りにも惨めな敗北を喫してしまった事実。


それらが観客達に強い印象を与えてしまった結果、もはや凛香は”かつての王者”ではなく、”UBC屈指のジョバー”として認識されるまでに至ってしまっていた。



「…………ッッ!!」


少女が悔しげに唇を噛み締めるものの、このオッズはまだ甘い方である。


現在最下位ランクの凛香では上位ランカーであるあきらに手も足も出ないだろうという見方が強く、彼女の敗北を確信している客は実際のオッズよりも更に多い。


凛香の熱心なファン達が金をドブに捨てる覚悟で彼女の勝利に賭けているからこそ、この程度の差で済んでいたのだが、少女はそれを知る由もなかった。



「おねぇ……大丈夫だよ! オッズなんて関係ない……あきらさんには何回も勝ってるんだし、今日もきっと…………」


圧倒的なアウェーの空気に呑まれそうになる中、青コーナーでセコンドについている妹の由乃が、ロープ越しに必死に声をかけてくる。


「えぇ……ありがとう、由乃」


妹の言葉に凛香は無理やり口角を上げてみせるものの、それが単なる気休めでしかないことは、由乃も、そして言われた凛香自身が誰よりも深く理解していた。



そして、圧倒的な格下評価を突きつけられた事で、凛香の脳裏にある光景がフラッシュバックしていく。




(っっ……!!)


脳裏に浮かんだのは、今朝方見たばかりの生々しい悪夢の光景。


愛しい親友の拳によってサンドバッグの如く滅多打ちにされ、リングロープから半身を乗り出して無様にスタンディングダウンを喫してしまう自身の情けない姿。


(まさか……あの夢が、正夢に…………?)


背筋を冷たい悪寒が駆け抜け、一瞬だけ最悪の未来が頭をよぎる。

だが、凛香は強く首を振り、心に生まれかけた暗い予感を必死に振り払っていった。


(あーちゃんは確かに強い…………でも、今日は絶対に負けない!!)


深く息を吸い込み、乱れかけた心を落ち着かせる。


そして、背後で心配そうに見守ってくれている愛する妹の姿をもう一度見つめ返すと、少女は今度こそ己を奮い立たせるように、ギュッと拳を握りしめて気合を入れ直していった。






「両者、リング中央へ!!」


レフェリーの声に促され、二人の美少女がリングの中央で向かい合う。

互いの息遣いすら聞こえる至近距離。張り詰めた空気の中、あきらが氷のように冷たい声で静かに口を開いた。


「凛香……今日は貴女のその負け犬根性を、アタシがきっちり叩き直してあげるから……覚悟しなさい」


「あ、あーちゃんこそっ……この前ちかるさんに負けた時みたく、ボッコボコにしてあげるんだから、覚悟しといてよね!!」


己の不安を打ち消すように、凛香は声を張って強気に言い返す。

だが、そんな親友の虚勢を前に、あきらはフッと余裕の笑みを浮かべた。


「ふふっ……口だけでもやる気はある様で安心したわ。

 …………ねぇ、”堕ちた王者”さん?」


「ッッッ…………!!!」


触れられたくない屈辱的な二つ名で呼ばれ、凛香は動きを止めてしまう。

完全に痛いところを突かれ、少女は言い返す言葉を見つけられずに視線を泳がせてしまっていた。




そんな動揺する親友の姿を見下ろしながら、あきらは自らのスポーツブラへと手をかける。


「それにしても……地下の正装はトップレスだって、前に教えてあげたわよね?」


言葉と共に布地が剥ぎ取られ、あきらの引き締まった肉体と、それに不釣り合いな二つの柔らかな膨らみが眩いリングライトの下へと無防備に晒された。


「ふぇっ!? ……え、えぇそうね…………勿論覚えてるわよっ」


突然のトップレス要求に一瞬だけ驚きを見せてしまった凛香だが、負けじと自身のスポーツブラを脱ぎ捨てていく。


あきらを遥かに凌ぐ、雌として極上に仕上がった豊満な双丘が、ぷるんと重力に従って大きく揺れた。





「ふふっ……安心したわ♪」


(相変わらず…………本当にいいカラダしてるわね)


その豊満な胸の谷間と、汗に濡れた艶やかな造形美。

あきらは一瞬だけボクサーとしての冷徹な仮面を外し、恋する少女が発するような熱を帯びた瞳で、愛しい親友の肉体に思わず見惚れてしまう。


だが、その甘い隙はほんのコンマ数秒の出来事。

瞬きを一つした直後、彼女の瞳は再び真剣勝負へ臨む闘士のそれへと戻っていた。


「それじゃ、今日は一切手加減してあげないから………よろしくね、凛香♡」


妖艶さを孕んだ微笑みを浮かべながらそう言い残すと、あきらは背を向けて自陣の赤コーナーへと歩み去っていく。


「……………………」

(トップレスマッチは予想外だけど……それでもやることは変わらない。

 今日こそ絶対に勝って…………由乃との約束を守るんだから!!)


10連敗という最悪の瀬戸際、王座決定トーナメントへの出場権、そして愛する妹との約束──────凛香は自らが背負ったものの重さを改めて実感すると共に、露わになった豊かな胸の横で、ギュッと青いグローブを硬く握りしめていった。






カーン!!!


「さぁ始まりました親友対決!!!

 オッズは大分差が出てしまいましたが、果たしてどうなるのか!!?」



(ジョルトは絶対に貰えない……アレだけは、最大限に警戒しないと)


試合開始のゴングが鳴り響く中、凛香はすぐさまファイティングポーズを取り、慎重に間合いを測り始めた。


(まずは、距離を取って様子をみないと)


あきらの絶対的な必殺技であるジョルト・カウンター。

それを過剰なまでに警戒してか、凛香はいつものような踏み込みを控え、ゆっくりと動き出していく。



だが────────その判断が間違いであったことを、数秒後にようやく理解する。


「えっ……!?」


凛香がゆっくりとステップワークを披露していく中、あきらは弾丸のような踏み込みで瞬時に相手の懐へと潜り込む。


「くっ……あっ!!」


そして、慌てて放たれた凛香の迎撃の拳を紙一重で躱すと、カウンター気味に強烈なボディブローを放っていった。




「んぶぅぅぅっっ!!!」


速攻からのボディという、本来カウンターを主体とするあきらのファイトスタイルからは想像もつかないような一撃。


予想外のタイミングで土手っ腹を抉られてしまった凛香は、薄桃色の唇から白いマウスピースを覗かせ、瞳から大粒の涙を零していく。


(なんでっ…………お腹っ、効かされっ……ガード下げない、とっ)


胃袋を直接殴りつけられたような衝撃で思わず少女の腕が下がり、無防備な的が大きく晒されるとほぼ同時に─────────紅の弾丸が、少女の顔面へと迫っていった。


「そこっ!!」


「ぶひゅっっ……へぶぅっっっ!!!」


左右のフックが容赦なく叩き込まれていくと共に、情けない嬌声がリングに響く。

頭が激しく振られるのに合わせて、少女の長く艶やかな黒髪が宙で大きく波打つように揺れていた。



(顔、弾かれっ…………このままじゃまずい、一旦離れないと!!)


脳を揺らされながらも、凛香はこれ以上の被弾を避けるべくバックステップで距離を取ろうとするのだが────────


「おぶぅぅっっっ!!!」


まるでその動きすらも完全に読まれていたかのように、あきらはキッチリとついていき、逃げようとした凛香の腹部へ再び重いボディストレートを突き刺していった。



「お゙っ……がぁっ…………」

(なにこれっ……動きっ、読まれてっ…………)


少女の想像は当たっていた。


それも当然のことで、あきらはこれまで凛香がどれだけ無様な姿を晒しても、常にセコンドとして声を張り上げ続けてきた唯一の絶対的な味方であり──────彼女が幾度となく敗北する姿を、誰よりも間近で見続けてきた女である。


故に凛香の動きの癖はおろか、その思考パターンまでもが、あきらには手に取るように理解できていた。



「初っ端からあきら選手、怒涛の連打~~~~~!!

 凛香選手、親友の猛攻を前に手も足も出ないか!!?」


あきらが凛香の試合をすぐ近くで見ていたのと同様に、凛香もあきらの試合をセコンドとして近くで見てきたはずなのだが──────二人の互いに対する”熱量”の違いが、その観察眼に致命的な影響を及ぼしていた。



「ぶふぅっっ……ごぶっ…………がひゅぅぅぅ…………」

(またっ……動き、読まれっ…………なんで……)


あきらがなぜそこまで凛香の動きを完璧に見透かせるのか。


それはあきらが常に親友の背中を追い、友情以上の特別な感情を抱き、その姿を執念深く見つめ続けてきたからに他ならない。


その、愛情という名の一途な想いが、両者の間にある情報の格差を絶対的なものにしていた。



「ぁっ……ゔゔっっ…………」

(だ、だめっ……ガード、固めないと…………)


開幕から手も足も出ず、一方的に殴られ続けるという余りにも予想外の事態に動揺した凛香は反撃を諦め、亀の様に丸まり全力で防御を固めていったのだった。






カーン!!!


「ここでゴングですっ!!

 凛香選手、終始あきら選手の猛攻に晒されつつも何とか耐え凌ぎました!!」


「ぜぇっ……はぁっ…………」


嵐のような猛攻からようやく解放された凛香は、そばにあったロープに力なく身体を預け、露わになった胸を激しく上下させている。


そんな満身創痍の親友を見下ろし、あきらは呆れたような、ひどく冷ややかな視線を向けた。


「本当に情けないわね…………貴女、それでも元チャンピオンなの?」



「はぁっ………はぁっ……………」


荒い呼吸を繰り返すばかりで、凛香は気の利いた言葉一つ言い返すことができない。

そんな無様な姿を晒すかつての王者へ、あきらは鋭い言葉を投げつける。



「アンタにまだ少しでもプライドが残ってるのなら…………守ってばっかじゃなく、正々堂々向かって来なさいよ!!」


挑発するようにそう言い残すと、あきらはひらりと身を翻し、赤コーナーへと戻っていった。






「おねぇ……大丈夫?」


スツールに深く腰掛け、大量の汗を流す姉の顔をタオルで拭いながら、由乃が心配そうに声をかける。


「ふぅっ…………えぇ、大丈夫よ……心配かけちゃって悪いわね」


ラウンド後半は亀のように丸まり、防御主体で立ち回ることで致命的な被弾こそ減らしてはいたものの、それでもなお肉体には確実にダメージが蓄積している。


未だダウンを奪われていないとはいえ、誰の目から見てもその圧倒的劣勢は明らかであった。



「でも、次のラウンドからは私があきらをボッコボコにしてやるんだから……安心して見てなさい!!」


第1ラウンドではパンチの一つも当てられず一方的に殴られ続けてしまったにも関わらず、凛香は妹の前で気丈に振る舞い、無理やり強気な笑みを浮かべてみせた。



(このままじゃダメだ……たとえ動きが読まれてても、次のラウンドはこっちから攻めていかないと!!)


スツールの上で固く拳を握りしめ、覚悟を決める凛香。

だが、彼女の心に重くのしかかっているのは、肉体的なダメージだけではない。



(でも……もし踏み込んだ所に、”あのジョルト”を合わされたら…………)


あきらの必殺技であるジョルト・カウンター。

もしあの構えをしている所に不用意に攻め入りジョルトを貰ってしまった場合、最悪一発で試合が終わってしまうかもしれない。


見えない刃を常に突きつけられているかのような拭いきれないプレッシャーが、少しずつ、だが確実に、少女の精神を削りつつあった。




カーン!!!








「あ~っと、凛香選手またしてもダウン~~~~!!

 このラウンド2回目のダウンを奪われてしまいましたっ!!!」


「ぜぇっ…………はぁっ…………はぁっ…………」


リングの中央で両膝と両手をついて四つん這いになりながら、キャンバスにポタポタと大量の汗と唾液を垂れ流している凛香。


第2ラウンドに入ってから、彼女はあきらの得意技であるカウンターを顔面や腹部に幾度となく貰ってしまっており、その肉体には第1ラウンドとは比較にならない程のダメージが蓄積していた。



「アンタはこんなもんじゃないでしょ……休んでないで早く立ちなさい!!」


「っっ…………!!」


カウントが進む中、ニュートラルコーナーから飛んできたのは、嘲笑でも煽りでもなく、対戦相手からの熱い檄であった。



(あーちゃん…………)


その声に背中を叩かれるようにして、凛香はガクガクと震える膝に無理やり力を込め、ふらつきながらもすぐさま立ち上がっていく。


「くっ……負けるっ、もんかぁっっ…………!!」


幾度となく滅多打ちにされてもなお立ち上がるその姿は、かつて”堕ちない少女(アンブロークン)”と呼ばれていた頃のタフネスさが、未だ彼女の中で健在であることを示していた。






「ボックスッッ!!!」


レフェリーの鋭い声と共に試合が再開される。


(ワンデイトーナメントの時から薄々分かっていたけれど…………あーちゃん、今の私よりもずっと強い)


ファイティングポーズを取りながら、凛香は彼我の圧倒的な実力差を肌で痛感していた。


(でも…………もう、これ以上負けたくないっ!!)


それでも、愛する妹の前でこれ以上無様な姿を見せるわけにはいかない。

少女は悲壮なまでの強い想いを拳に込め、決死の覚悟で前へと踏み込んでいった。



「やぁぁぁぁっっ!!!」


気迫の籠もった叫びと共に、全身のバネを解放して放たれた渾身の右ストレート。


だが────────


「ぶぎゅっっっっ!!!」


愛する親友の放った決死の一撃に、あきらは無表情でカウンターを合わせていた。



「凛香選手、果敢に飛び込むも呆気なくカウンターの餌食となってしまった~~~!!!」


「あ゙っ…………ぅぁっ…………」


強烈な一撃に脳を揺らされ、凛香はたたらを踏んで大きく体勢を崩す。


そのままキャンバスへと崩れ落ち、このラウンド3度目のダウンを喫するかと思われたが──────少女の意地が、ギリギリのところで彼女の足を踏みとどまらせた。


(まだっ……まだ、いけるっ!! 次はっ、これで…………ッッ!!!)


霞む視界の中、凛香は強く拳を握りしめ腕の捻りを極限まで加えた後に、弾丸のように拳を鋭く突き出していく。


「このぉっっっ!!!」


放たれたのは、幾度となく逆境を乗り越えてきた彼女の相棒とも言えるコークスクリュー・ブロー。


だが、絶対の信頼を置く最大の武器であるということは、一番近くにいたあきらにとって、最も見慣れた軌道であるということでもあり────────



「貴女……困った事があると、いつも”それ”に頼るわよね」


「えっ……!?」


氷のように冷ややかな声が耳元を掠める。

あきらは放たれたコークスクリューの軌道を最小限の動きでスリップすると、完全に無防備となった凛香の顎下へと潜り込み───────カウンターとなるアッパーカットをカチ上げていった。


「がぴゅっっっっっ!!!!」


「あきら選手、起死回生のコークスクリューを完全に見切ったぁ!!

 そしてお返しとばかりにカウンターアッパーを叩き込んでいく~~~~!!!」



顎を的確に打ち抜かれた凛香の身体が、ふわりと宙に浮く。

完全に脳を揺らされた少女の意識は、急速に深い闇の中へと沈みつつあった。


「ぁ…………んぁぁっ……………………」


膝の力が完全に抜け、今度こそキャンバスへと墜落していくかと思われたのだが────────ボクサーとしての本能が、半ば無意識に少女の肉体を動かしていく。


「んぅっ……ぁっ………………」


「あ~っと凛香選手、意識朦朧としながらもなんとか相手にすがりついたぁ!!

 たまらずクリンチでエスケープです!!!」


崩れ落ちる寸前、凛香は目の前にいたあきらの身体へと倒れ込むように両腕を回し、辛うじて致命的なダウンだけは免れていったのだった。






激しい打撃の応酬の末、リング中央で二人の少女の肉体が深く絡み合う。


それは、互いに布の防壁を持たないトップレス同士のクリンチ。

激しい運動で火照り、汗に塗れた柔肌同士がぴたりと密着し、互いの薄桃色の固い先端が不意に擦れ合った瞬間──────半ば無意識状態であった凛香の口から、甘く艶やかな嬌声が漏れ出した。


「んぅっっ♡♡」


「…………ッッ!!」


耳元で響いたその色っぽい吐息に、あきらの身体がビクッと大きく跳ねる。


親友に対して友情以上の特別な感情を抱いているあきらが、この無防備すぎる密着状態で冷静にいられる筈もなかった。


(りっちゃんのおっぱい……柔らかくて、熱い…………)


押し付けられた豊満な双丘の柔らかな感触と、鼻腔をくすぐる愛しい親友の甘く濃厚な雌のフェロモン。


あきらの傷一つない整った顔は一瞬にして朱に染まり、口からは思わず熱っぽい吐息が漏れる。


「んんぅっ……りっちゃ…………♡♡♡」


その瞳は闘志に溢れたボクサーのそれから、”一人の恋する少女”の淫靡な熱を帯びた色へと変わり、彼女もまた完全に動きを止めてしまっていた。




だが────そんな甘く幸せな時間は、第三者の声によって唐突に引き裂かれていく。


「ブレイクッッ!!」


レフェリーの鋭い声が響き、二人の間に強引に割って入る。


「ッッ…………」


その声でハッと我に返ったあきらは、身体が引き剥がされた瞬間、スッと表情から一切の熱を消し去った。


(試合中なのに……我ながらどうかしてたわ)


ほんの数秒前まで浮かべていた恋する乙女のような赤面と甘い息遣いは完全に影を潜めており、その紅の瞳には、熱く激しい闘志と確かな覚悟の色だけが浮かんでいた。






「ボックスッッ!!!」


レフェリーの声と共に試合が再開される。


先程のクリンチで昂ってしまった気持ちを鎮めるように、あきらは一度ゆっくりと目を瞑り、大きく、静かに息を吐き出していく。



そして次に目を開いた瞬間、彼女の身体は極端な前傾姿勢へと沈み込んでいた。


(あの構えはっ……!!)


全身のバネを極限まで圧縮したような独特のフォーム。

それは間違いなく、あきらの必殺技であるジョルト・カウンターの構えだった。



「貴女…………”これ”が怖いんでしょ?」


「っっ…………!!」


氷のように冷たい声で図星を突かれ、凛香の身体がビクッと大きく跳ねる。


「ふふっ、分かりやすいわね…………先手は譲ってあげるから、かかってきなさい」


余裕の笑みを浮かべ、あきらは挑発するように手招きをしていく。

乳房を曝け出しているその姿は上質な雌としての妖艶さと共に、紛れもなく強者特有の雰囲気を醸し出していた。




(あっ……だめっ…………コレっ……今行ったら、絶対に貰っちゃう)


あきらの全身から放たれる、底知れぬ凄みと絶対的な自信。

それに気圧された凛香は、足がキャンバスに縫い付けられたかのように一歩も動くことができず、ただ額から冷や汗を流して立ち尽くしてしまう。



「ねぇ貴女…………いつまで固まってるつもり?」


そんな中、動けない親友を見下すように、あきらは残酷な言葉を紡いでいく。


「…………後ろで、由乃ちゃん見てるわよ」


「ッッ!!!」



妹の名前を出された瞬間、凛香の身体は自然と動き出していた。


「このっ……やぁぁぁっっ!!!」


不安な心を誤魔化すかの様に叫びながら、凛香は半ば自暴自棄に近い形で前へと踏み込み、右拳を振り抜いていく。



だが──────雑に振るわれたその拳は、”紅の返し刃(レッドリバーサル)”の格好の的でしかなかった。


「シッッッ!!!」


放たれた拳を紙一重で躱し、あきらは全身の体重を乗せた紅い拳を、ガラ空きとなった親友の顔面へと叩き込んでいく。


「ぁっ…………ぶぎゅぅぅぅぅっっっ!!!!」





あきらの切り札であるジョルト・カウンター。


現在の未完成なそれは、本来であれば彼女自身が限界まで追い詰められ、極限の集中力を発揮した状態でなければ放つことのできない不安定な技である。


だが今回に限って言えば、あきらは凛香の動きを完全に予測する事が出来ていた。

故に、極限状態に追い込まれていなくとも、その一撃をこれ以上ないほど完璧なタイミングで合わせることができたのだ。




紅の閃光を描きながら親友の顔面へと炸裂した必殺の拳は、着弾の衝撃そのままに強引に振り抜かれ、意識を失った少女の身体ごとキャンバスへと豪快に叩き落としていった。


そして、凄まじい衝撃音がリングに響き渡った、正にその瞬間────────


カーン!!!


第2ラウンドの終了を告げるゴングが、会場に鳴り響いた。


「あ~っとゴングっ……ここでゴングですっっ!!

 凛香選手、ジョルトを貰いつつも奇跡的なタイミングでゴングに救われました!」





「ぁ………………んぁ……………………」


黒髪の少女はピーンと背筋を伸ばしたまま、キャンバスの上で言葉にならないうめき声を漏らしている。


トップレスのまま地下特設リングの冷たい空気に晒された乳首は固く屹立しており、完全に脱力しきったその肉体は、目の前に立つ女との圧倒的な”格の違い”を本能レベルで理解してしまったかのように、ビクビクと激しく痙攣し続けていた。



「凛香選手、ゴングに救われたものの…………

 果たして、次のラウンドまともに闘うことは出来るのかぁ!!?」


「ん……………………んぅ………………………………」


意識を完全に刈り取られ、白目を剥いたまま口からだらしなく涎を垂れ流し続けている凛香。


レフェリーがダウンを取る前に鐘が鳴り響いたため、彼女は”まだ”負けずに済んでいるものの、あとほんの数秒でもゴングが遅れていれば間違いなく10カウントKOを喫していたであろうことは、会場にいる誰の目にも明らかである。



「おねぇ…………」


「ぅ……ぁ………………よし…………の………………………………」


傷だらけの肉体でキャンバスに綺麗な大の字を描き、ぷるぷると不規則に乳房を揺らすだけとなっている元王者。


ベルトを巻いていた時の凛々しさはもはや欠片も残っておらず、余りにも無様なその姿は、誰がどう見ても”KOされた惨めなジョバー”のそれでしかなかった。






【堕ちた王者と砕かれた友情~凛香VSあきら~】Part.3へ続く___________



■あとがき

ここまでお読み頂き誠にありがとうございます!!

堕ちた王者と呼ばれるまでになってしまった凛香さんの敗北の記録は下記にまとめてありますので、もし良ければそちらも是非~。


Thank you so much for reading this far!!

I’ve compiled a record of Rinka’s defeats—which led to her being dubbed the “Fallen Champion”—below, so please check it out if you’d like.



■次回




HATE(ヘイト) PIXIV FANBOX 104 favs
VIEWS1
FILES11 files
POSTEDMay 31, 2026
ARCHIVEDMay 31, 2026