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スケベスキルで世界最強~やっぱ最強はちんぽっしょ!!~ 19

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「ジェルはおれにしてほしいことってある?」


 ベッドの上で、おれはジェルに問う。

 ふわふわの毛皮に寄り添って手を握ると、狼の顔が嬉しそうにほころんだ。互いに下着だけなのは親子というくくりではありえないことなのだけど、これがおれらの新しい日常だった。

 一度肌を合わせてからというもの、触れても問題なくなったジェルにおれは全力でくっついた。今まで我慢してきた分を発散させるように近づけば、この狼は喜んで服を脱ぐんだ。

 おれに触れられても大丈夫だと示したいのはわかるけど、それは誘ってるんだよなあ。そのくせパンツを脱がせようとすると神速で逃げていくの、生殺しなんだよ。エッチなことまでしたのに、いまだにジェルはどこか抜けたままだった。


「私はお前のしたいことならなんでも応援するさ」頭を撫でる優しくて大きな手。「もうお前を脅かすものは何もない。好きなことをしていい。これからは町にもたくさん遊びに行っていいし、友達も作れる。権力闘争は……避けられないだろうが、それでも、私がお前を全力で守ろう」


 異世界人ということで保護されてきたおれに、降ってわいた自由。おれはその使い道を持て余していた。


 何がしたいのか、なんて言われても正直困る。それにコハクの要請に従ってエッチな軍を率いるのも悪くないとは思っているんだ。

 今回の事件を経て、みんなと仲良くなったから。体だけじゃなく、心の方で。

 

 せっかくの異世界だから旅をしたい気持ちはある。だけど、ジェルやヤードたちと離れるのは嫌だ。知り合いが誰もいない異世界を一人で歩けるほど、おれはメンタルが強くない。バタバタしてたせいでこの世界のことをよく知らないからなおさらそう思う。


「わがままを言ってもいいんだぞ」


 たくましい胸板に埋められて、やさしい言葉がしみこんでくる。手入れされた毛皮は柔らかく、おれを安心させる匂いが包んでくれた。


「じゃあ旅をしたいって言ったら?」

 おれを抱きしめる腕がこわばるのがわかった。家を出ると同義だから、さみしく感じるんだろうな。


「……そのときは私のすべてでお前をサポートしよう」

「じょ、冗談だから、そんなに真剣にならなくてもいいよ」

「だがもし旅がしたいのなら、私がコハク王子に掛け合おう。異世界人、しかも二つ名持ちに匹敵する人材を野放しにしては他の国が何をするかわからないからな。根回しが必要だ」

「あー……」


 そうだった、おれは今回の事件で結構名前が売れてしまったんだった。そりゃエロで内乱を制したとか言われたらまず耳を疑うからね。後から知ったことだけど、ジェルがおれへの二つ名授与を断ったのも、これ以上おれを目立たせないようにするっていう意図があったらしい。

 騒動がでかかったから絶対にどこかから情報は漏れているはずだ。そんなおれが旅に出るとなれば、確実に周囲の国からアクションが来る。

 それをおれ一人で対処しないといけなくなるのか。めんどいしできる気がしない。

 やるとしたらこっそりするしかないけど、顔ばれしてそー……。


「でも、旅行くらいは行きたいな……」


 ジェルたちとこの世界を見て回れたら、それが一番いいと思う。おれはもうみんなのことが好きだから、一緒にいたいと思ってる。

 それに、ヤードにも責任を取るって言っちゃったしなぁ。


「そうだな。お前をこの家に閉じ込めたままだった私を許してくれ」

「それはおれを守るためだったじゃん。気にしてないよ。……最初はおれも怖がってたしね」

「謹慎が解けたら、どこか旅行しよう。この国には観光名所がいくつかある」

「みんなも呼んでいい?」

「もちろん」


 たくましくて暖かい腕の中で、おれは眠りに落ちていく。スキルのおかげで腕枕をしてもしびれないって便利、なんて薄れていく意識でそんなことを思った。


「ジェル、愛してるよ」

「私も愛してる」


 その言葉がすれ違っていることは知っている。

 だけど、ジェルからそう言ってもらえるとおれはとてもうれしくなるんだ。

 あとそろそろエッチなことしたいな。最初にやって以来できてないし……。


 まあそれでも、こうして眠れるだけで満足してしまうんだけど。

 そろそろコハクへの返事を出さないといけないなと思いつつ。


 おれは幸せな夢を見るのだった。


****


 冷静に考えれば、おれはまだやらなきゃいけないことがあるんだった。

 旅とか言ってる場合じゃねえわ。


「どうされましたかちんぽ❤もしお時間を持て余しているようならおれらのくそ雑魚マゾちんぽ腰振りでもご覧になりますか❤❤」

「おっ、それはいいじゃねえか❤❤おれらのなっさけねえへこへこ腰振りでも見て、たくさん笑ってくれ❤この『ちんぽどM兄弟』のちんぽはいじめられればそれだけ気持ちよくなるからな❤❤」


 王宮のとある部屋で、いかつい獅子と狼がおれにこびっこびな視線を注いで蕩けた顔で笑う。『華炎』という二つ名持ちだった兄弟は今ではその名を使うことはほぼなく、自ら発現した『ちんぽどM兄弟』という二つ名を勝手に名乗っては誇らしげにちんぽを見せつけている。

 兄である獅子エフィルと弟である狼ソムリティ。どちらも盛り上がった肉体を持つ騎士であり、雄臭さをぷんぷんさせている。


 だが、制服であった深紅の軍服を着ることはなく、手足の半分以上を覆う赤いグローブとブーツ、そして何の意味もない紐パンと首輪だけという格好だ。紐パンはあまりに小さすぎて萎えている状態でも金玉まですべてがはみ出しているので、本当に何の意味もない。ちんぽを見せつける性癖になった二人にとって、それを隠すという思考はないのだろう。


 体毛豊かな雄からは想像もできないほど甘くとろけた声。エフィルとソムリティは完全にちんぽ最優先の価値観になってしまっている。


「そして、それをばらまいたんだよなぁ」


 おかげでこの城の兵たちの大部分が『ちんぽどM』や『腰振り射精』に毒されている。そのせいで変態性全開の格好にもお咎めがまったくない。それどころか、『華炎』が管理する部隊の兵たちは全員同じ服飾をしている始末。

 窓の外に目をやれば、二人と同じ格好をした兵たちが巡回しているのが見えるだろう。そんな装備で何を守るつもりなんだこいつら?


 正直、この後始末はいつ終わるかもわからない。そもそも絶対完治することはないだろうから、新しい日常への折り合いをつけられるように手助けするしかないんだけどさ。


 性癖の元祖となった二人にはコハクの『無効化』も効かない。だってこいつらの性癖は勝手に芽生えたものだから消しようがない。それこそ、洗脳とかしない限りは無理。

 そして、これは後から知ったことだけど、性癖って根付くみたいで時間が経った後だと『無効化』の効果が薄くなるみたい。そりゃ気持ちが良いって記憶があれば、勝手にはまりだすよな……。おかげで兵たちの変態化が深刻だ。


 それを何とかできないかとコハクに相談されてきたけれど、やっぱり方法はあまりない気がする。洗脳していい? けど、解けたら結局元に戻るだけなんだよな。


 おれがうんうんうなっている姿を見て何を勘違いしたのか、短髪の獅子エフィルが勃起を突き出しながら懸命におれの気を引こうとする。


「ちんぽ腰振りの気分でないのなら、おれら兄弟のちんぽバトルはいかがでしょうか❤❤互いのちんぽをぶつけ合い、どちらが真の雑魚マゾちんぽかを決める戦いです❤❤」

「おれらは軍の中じゃ1,2を争うほどの雑魚ちんぽだからな❤他の兵じゃ相手にならなくてすぐ射精勝ちしちまうんだ❤❤あいつらが一回出す間に、おれらなら三回は余裕だ❤❤」

「あ、それ射精したら勝ちなんだ。斬新」


 なんか『腰振り射精』の元祖アリギラドよりも悪化してない? アリギラドを躾けたのはリブラだし、あの竜もここまで到達しそうで怖いな。落とした時しか面識ないだろうし、絶対に会わせないようにしよ。


「っていうか、そんなに雑魚くて日常生活大丈夫なの?」

「問題ありません❤下着をはいて歩くだけで射精する雑魚ちんぽですが、現在は新しい制服のおかげで快適に動けます❤❤」

「そうそう❤萎えてても足にぶつかるだけで勃起するし、勃起が腹に当たるだけで射精するけど、無様気持ちいいから何の問題もねえですよ❤❤❤」

「問題しかないが?」


 何とかしないとやばいやつじゃん!

 じゃあひょっとして、さっきから外の兵がちんぽを握ってるのって、オナニーしてるわけじゃなくってぶつからないようにするため?


「その通りです❤おれらの雑魚ちんぽは本当にくそ雑魚なので❤」

「リブラ様の『射精管理』でちんぽ腰振りかちんぽバトル、もしくはセックスでないと射精できなくしてもらってるけど、気持ちいいものは気持ちいいんで❤❤」

「まあ結局握ってても気持ちがいいので、おなってしまうのですが❤❤」

「重症だぁ」


 こうして見ると、『騎士道走行』や『茜差す栄光』の二人はまだましでよかった。リブラを相手にしてよく性癖が無事だったよ。おかげで部隊の再編成において、まともな人材はあの二人の下に行ける。


 この兄弟に関してはどうしたものかと悩んでも、解決策は出ない。洗脳がだめなら記憶を戻すくらいしかないけど、さすがにそんなスキルは使えないしなぁ。

 黙っているとこいつらは本当にちんぽバトルを始めそうだ。ずるむけ巨根の遺伝子はしっかり兄弟に根付いているようで、おれの手じゃ握ってもあまるだろう。しかも毛皮とは違った色をした体毛のせいで、雄らしさに拍車がかかっている。ちんぽどMさえなければ、さぞかしイケメンだっただろうに。


「一応確認するけど、戻りたいって希望はある?」

「全くございませんちんぽ❤おれらはすでにちんぽをいじめてもらうことでしか満足できないちんぽ奴隷でございます❤」

「潮やしょんべんをびゅーびゅー噴いて、アヘ狂わされてるときが一番の幸せなんだぁ❤❤普通のセックスなんてもうする価値もねえ❤❤」

「重症だぁ」


 兄弟は頭に手を回して腰を落とし、ちんぽ腰振りの体勢を取ってわめきたてる。ちんぽを揺らして先走りを飛ばしながら、いかに自分たちが雑魚ちんぽかと説明するのに余念がない。


「貴方様はおマンコされることに興味ないようですので、おれらにできることはこの雑魚ちんぽで楽しんでもらうことだけでちんぽ❤ちんぽちんぽ❤」

「フォグ様たちを躾けたそのお手前で、おれらの雑魚ちんぽにもお慈悲を恵んでくださいちーんぽ❤❤」


 肉槍を突き出す二人の目は期待に潤んでおり、鈴口からはとろとろと汁が漏れ続けている。聞いたところ『潮吹き』のスキルも手に入れたらしいし、ちんぽから体液を出すことに関しては一流なのだろう。なんの名誉でもない一流だけど。


 さすがにここで押し問答をしていてもらちが明かない。コハクに診断結果を報告しないと。今日も進捗なしだって。


 おれは雄臭すぎるちんぽを横目で見ながらため息を一つ。マンコに好まれるためか、こいつらのちんぽは本当に雄臭い。汗や精というわけでもなく、雄という概念の噴出って感じ。


「おれらは『ちんぽ魅了』のスキルも有しておりますゆえ❤❤」

「え、なんでおれの知らないところで変なスキル開花させてるんだこいつら……」

「レベルが低いのでフォグ様たちには効きませんが、そこらのおマンコには十分喜んでいただけております❤❤」


 戦いの爪痕として多数の雌落ち兵を抱える王城で、こんなスキルを振りまかれたらたまったものじゃない。二つ名持ちというだけあって、エロスキルの吸収速度も段違いすぎる。


「スキルのオンオフはできる?」

「もちろんです❤ですが、おれらはおマンコ様たちによろこんでもらうためのちんぽ奴隷❤お見掛けしたらついアプローチをしてしまうのです❤❤」

「それに、早くこのスキルレベルを上げて、フォグ様たちに飼ってもらいてえんだぁ❤❤❤おれらはちんぽにしか価値が無い雑魚ちんぽだからなぁ❤❤❤」

「重症だぁ」


 やっぱりこいつらが二つ名持ちの中で一番重症だわ。ここまでしたのがリブラではなくフォグだというのが驚きだけど、絶対に加減を間違えてる。リブラならまだうまい落としどころを見つけてくれてたはずなのに。


 ひとまず、こいつらはこのくらいでいいか。今日の診断結果はかなりの重症継続っと。これから『影に満ちた鏡』との面談もあるけど、さすがにこいつらほどじゃないからまだ気が楽だ。

 とにかく、まずは隊長になるフォグに報告して……。


「さすがのお前でもどうにもならないみたいだな」


 と思ったらちょうどやって来てくれた。屈強な体を深紅の軍服で着飾ったフォグは、いつもよりきりりとしたかっこよさがある。ただ、胸あたりがきつそう。特注のはずなのに。


「スキルのせいか、また大きくなってなぁ。モウダンにもからかわれるくらいだ」

「ああ、おっぱいブラザーズとしては良いんじゃない」

「そのダサい名前で呼ばないでくれ! それで、所感は?」

「無理。重症。洗脳くらいしかない。治る気配を見せない」

「やっぱりかぁ……」


 熊の髭がヘタレているところを見るに、罪悪感があるのだろう。性癖を混ぜ込んで相当狂わせたみたいだし。


「すでに当主はエフィルなんだが、そのエフィルがこの調子じゃ亡くなった前当主に申し訳が立たねえ。記憶を封印してもらうのが一番な気もするが……」

「でも『潮吹き』とかのスキルは消えないよ。『技能泥棒』リンドンにも、おれ関係のスキルはいじれないって言われてるしね」

「それなんだよなぁ……感度も戻らない状態で記憶だけ封じても、結局元に戻るだけなのは目に見えてる」

「なので現状は経過観察だと思うよ」

「そうなるよなぁ……」


 つまり兄弟はこのままマンコに奉仕することが生きがいのちんぽどMとして生きていくということだ。唯一の救いは、本人たちが幸せそうってことかな。


「フォグ様❤我らはすでにちんぽだけの存在として覚悟はできております❤❤」

「おれらのちんぽはおマンコ様に喜んでいただくためにある❤❤その喜びを教えてくれて感謝しています❤❤」

「はぁ~~~~~~このままかぁ。診断は終わったんだ、そろそろ持ち場に戻ったほうがいいんじゃないか?」

「「はいちんぽ❤❤❤」」

「はぁ~~~~~~」


 でかい尻二つを見送るフォグががちの辟易顔でため息をついた。


 『華炎』の部隊を引き継いだフォグは特に症状がひどい――この兄弟のようにセックスに傾倒している者を集める予定だ。『疑似人格』の治療もあるし、内部のごたごたが収まらないからまだ正式に就任はしていないけど、すでに『竜の爪』の副隊長はヤードに譲り、今はこうして隊員からのお誘いに頭を悩ませる日々を過ごしていた。


「治療の方はどう?」

「だいぶ終わったらしい。人格の統合のおかげか、『強制テレポート』の使い勝手も上がった。リンドンからも、もうすぐ完治すると言われている」

「それならよかった」


 貴族籍もはく奪されてないし、騎士としての活動も許されている。そこは本当にコハクに感謝だ。まあ、もともとフォグ自身は最初からコハク王子に組していたし、恩情という点でも変なことはない。


「お前、コハク王子の提案する新しい部隊の件、引き受けるつもりか?」

「まだ考え中。おれが隊長って実感なくてさ」

「今までそんなこと考える余裕もなかったからな。もし引き受けることになったら、多分あの二人がそっちに行くからよろしくな」

「いや、まあ……それもそうだわ」


 なにせ二つ名付きだ。通常時の戦力としても優秀なのに、エロスキルの恩恵を考えると確実におれの管轄になる。やっぱ無理な気がしてきた……。


「補佐に誰か付くから、そこまで心配する必要もないと思うがな。コハク王子だって、お前に戦いや政治を期待してるわけじゃない」

「そりゃそうかもだけどさぁ……」

「本当はおれが行ければそれが一番いいと思うんだが……」

「でもフォグはもう配属決まったんでしょ?」

「それはまあそうだが、お前を一人にするのは心配でしょうがねえ。せっかくコハク王子がくれた昇進だが……あーやっぱりそのほうがいいな」

「え、え? 本当に?」


 新設部隊でエロまみれの副隊長より、歴史ある部隊の隊長の方が絶対いいのはおれでさえわかる。それをあっさり捨てようというのか。


「言っただろ、武勲をおごらず、地位に固執せず――」

「陛下の剣としてあればそれでいい。さすがに覚えたよ」

「ジェル様の受け売りだってことも覚えただろ。だから別に、隊長になりたいとかはどうでもいいんだ。それよりも、ジェル様やお前を放置しておく方が問題だと思ってる」

「まあ、おれとしてもフォグがいてくれた方が心強いけどさ」

「だろ?」


 ふふんと胸を張るフォグは親しみやすさが上がっていて、醸す雰囲気も温かい。この事件で一番成長したのは誰かと問われたら、やっぱりそれはフォグだろう。父との確執を乗り越えた熊は、角が取れた顔でおれを見つめていた。


「それに」そしてにやりと口角を歪ませて。「ジェル様にふられたお前を一人にすると何しでかすかわからねえからなぁ」

「人の失恋を笑わないでくれる?!」

「笑ってねえさ。しっかり告白したことはえらいと思ってる。慰めてやりたいっていのは本音だ。だが、まあ、なんだ……やっぱりジェル様を取られなかった安堵がどうしてもな」

「くそが!」


 このデカぱい陥没乳首雌熊め! 自分がジェルの心を射止める気でいやがるぞ!


「当然。お前が駄目なら、おれしかいねえよな! おれがジェル様の妻になれば、お前とは家族だ。今のうちにお母さんって呼んでもいいんだぞ?」

「絶対いやだね!!」


 いやまあ、そんな未来もちょっとは良いと思ってる自分はいますけど。本当にちょっとね。


「でもおれはジェルとエッチしてるしぃ? エロスキル開拓のためにいろんなことしてるしぃ?」

「うぎぎぎぎぎいぃ……!!!」


 最初以来できてないけど、見栄を張ったらフォグが血涙流さんばかりの顔で歯ぎしりしてる。なんだったら周りに白い霧が漂ってて臨戦態勢だよ。超怖い。


 これ以上のあおり合いは喧嘩になる。結構な付き合いになったおれらは、ここら辺が切り上げ時だと理解していた。

 だから、深呼吸で紳士協定を結び直して、会話の仕切り直しといこう。


「だからもしお前がコハク王子の案を受けるなら、手伝いはしてやるよ。副隊長の職務経験はあるから頼りにしてくれ」

「するする。フォグはいつだって頼りになるからね」

「そして、ジェル様におれがいかに頼りがいのある男かってこと、ちゃんと伝えるんだぞ」


 訂正、紳士協定破綻してた。


「それに、あの兄弟みたいなやつが来ると考えれば、おれが適任だろうしな」

「実際あの二人はおれのところに来るのがわかり切ってるし……」


 となるとやっぱり副隊長には経験豊富な人の方がいいってことだ。いやまだ受けるとは決めてないけど、もしもの話ね。


 フォグは自分の地位を捨ててでもおれをサポートしてくれる。本当にいい友人を持ったと思う。


「それを言うのはおれの方だ。お前のおかげで親父のこととか、いろんなことが吹っ切れたんだ。感謝してる。だからこれはただの恩返しだよ」

「別におれは大したことしてないよ」

「大したことしたやつってのはみんなそう言うんだ。おれにとってのジェル様とかな。そういう意味じゃ、お前らは親子だよ」

「そうかなぁ」


 なんて言いながらおれらは部屋を後にする。そろそろ昼食の時間だし、フォグもそのつもりでおれの様子を見に来たと思ってる。

 だから特に何も言わず、手をつないで外に出る。最近フォグとは通じ合うことが増えていて、互いに何をしたいのかが何となくわかるようになってきた。気の置けない友人ってこんな関係のことを言うのだろう。


「確かに、おれもそうだな。お前がスケベなこと考えてるときとか、特にわかりやすいぞ」

「えぇ……じゃあ今は?」

「腹減った」

「正解」

「せっかくだから城外のおすすめにでも行くか。お前もそろそろ町になじんだ方がいいだろ」

「やったね。お金ならジェルからたくさんもらってるから、どこでもいいよ」

「いいって。親父がためてたから心配するな。恩情を乞う時にコハク王子にいくらか差し出したけど、まだまだあるんだ。それについてはお前のおかげでもあるからな。ここはおごらせてくれ」

「さすがグリッジ……周到すぎる……でもおれのおかげってな――」

 

 疑問を投げようとしたのだけれど、それより早くおれのお腹が鳴る音の方が早かった。熊に噴出されてしまい、恥ずかしさに口が閉じる。

 ごまかすように手を強く握れば、硬くて大きな男の掌が握り返してくれた。指一本とってもおれの倍くらいあるんだ、子どもに戻った気分になるよ。


 熊の手は硬いけどふわふわで、つい指を絡ませたくなってしまう。最低出力の『愛撫』がフォグを興奮させたとしても、そのくらいは自制できるでしょう。

 だからにぎにぎしながら他愛ない会話をして歩いていく。


「グリッジは元気?」つっこまれるまえに話題転換の作戦。

「まあな。今はまだ廃人みたいにぼーっとしてるけど、食事はしてくれてるから心配はしてない」


 国家転覆をはかった罪に問われたグリッジだが、コハク王子の意見と武勲をたてたフォグの陳謝によって、命は取られなかった。罪を考えれば破格の恩情だが、グリッジ自体が持つ情報もあってか、好待遇が取られているのもある。

 あれやこれやと手を回していたおかげで、偉い人の弱みをかなり握っているのだ。それがコハクの手にあるということで、かなり主導権を取れているらしい。

 

 本人はあの事件の後は吹っ切れたのかわからないが、聞かれたことを素直に答えるようになっていて、コハクにとっても大事な情報源だから丁寧に扱っているそうだ。


「親父もさ、今のお前と同じなんだよ。好きなことをしていいってのに、何をしたらいいのかわからねえんだ。お前と違って完全な自由じゃないけれど、もう強迫観念に駆られる必要もねえのにな」

「おれと違って、人生ずっとささげてきたんだもんね」

「まあな。ジェル様に会わなければ、おれもああなってたんだよなぁ……」

「フォグは違ったと思うけど」

「それはおまえ、ジェル様に会う前のおれを知らないから」

「んーでも想像つかないなぁ」

 

 おれの知ってるフォグは真面目で厳しいけど、いつも優しい。ジェルに会ったくらいでグリッジがフォグみたいになるかと言われたら、多分ならないと思うんだよ。

 

「それはきっかけなだけで、後はフォグの性格なんじゃないかな」

「だといいな。……そう言ってもらえると楽になる。おれは未だに、親父と同じだと思ってるところがあるから」

「ないない。おれに会う前からジェル大好きな変態だったじゃん。ジェルに会わなくても、誰かに一途な変態になってたと思うよ」

「……否定できねぇ」


 まあ、たらればの話をしていても意味がない。今のフォグは今のフォグなのだ。

 お腹がすいたので腕を引っ張ると、フォグが鼻息と共に口元をほころばせる。しょうがないなと笑う顔は、本当に柔らかくなった。


 太い腕がおれを抱えあげて、肉付きのいい体に押し付けられる。

 もうお姫様抱っこも慣れたもので、プライドとか一切揺るがなくなってきた。無の境地。熊のたくましい首に腕を回す動作もスムーズにできる。


「しょうがねえ。抱えていくか」

「え、馬車じゃないの?」

「自分で走ったほうが早いからな」

「……そうだ、こいつらの身体能力っておかしいくらいに高いんだった」

 

 しかもおれのせいでバフもりもりだし、単純な身体能力で勝てるヴィジョンは全く見えない。


 王宮の窓から屋根に飛ぶ姿は軽々としているが、普通は無理だって。ジェルに育てられてたからそこら辺の感覚がマヒしてるようで、普通基準だとフォグも十分化け物らしい。


「昼食が終わったら診断の続きだろ?」


 風を浴びながら熊が言う。


「そうそう。改善の見込みがない人がちらほらいて、どうしたものかなーって感じ」

「逆に考えれば、そういうやつらはお前の強化を受ける適性があるんじゃないか」

「それもそうかも」


 そう考えるとおれ主体の部隊ってアイデアは悪くないんだよな。

 才能の原石を発掘できるだろうし、淫乱たちを押し込められる。


 跳躍の飛距離がバグってるから、町まであっという間だった。確かにこれを普通という枠に入れられるとおれも困るわ。

 ちなみに、落ちるかもとかは全く心配してない。フォグが落とすわけないしね。それにうっすらとまとう『乳霧』のおかげで、落ちても無傷なことが確定してる。


「なんだ、やっぱり引き受ける気なのか?」

「考え中は継続中。外堀だけ埋められてる気分」

「ははっ、でもまあここにいるのなら仕事はあったほうが良いぞ。お前なら雄に貢がせるって方法もあるが、それはさすがにジェル様が認めないだろ」

「大正論だよぉ……」


 屋根から屋根へ、よどみなく跳躍する熊。確かにこれは馬車より早いわ。住民も見慣れてるのか、特別な反応を示すことはない。スキルのある世界って、こんなことになるんだなぁ。

 ……おれは今までこんなことも知らなかったのか。


 やがてなんか豪華そうなお店の前に降りたフォグは、そのまま、おれを抱えたまま歩き出した。

 ……え、下ろしてくれないの? まあいいや、心を無にして耐えよう。


「もしくは旅に出てもいいかなとは思ったんだけど、考えることが多くってさぁ……」

「は?」


 急に熊の足が止まった。そんなに驚くようなこと言ったつもりはなかったんだけど、フォグは目を丸く見開いておれを凝視している。


「お前……ここを出ていくのか……?」

「いやだから、それもいいかもとは思っただけで、実際にはやらないよ! ジェルから離れるのは無理だし、一人で旅とかできる気がしないしさあ」

「ま、まあ、そうだよな……お前は誰かが見てないと不安だからな……」

「悔しいけどその通りなんだよなぁ」


 おれを抱きかかえる腕に力が入ってきたから、ちょっと痛いんだけど。でもなんか考え込んでしまったせいでかける言葉がなかった。絶対おれを野放しにした時の惨状を想像してそう。


 お店の前で抱っこされたまま固まられると恥ずかしいのですが……。

 しょうがないので熊の頬をむにっとつまんで、我に返ってもらおうか。


「ふぉーぐー、だからどこにも行かないって言ってるでしょ。それよりほら、早くおいしいもの食べよう」

「……っと、そうだな悪い。お前がいなくなった後のことを考えてたら胃が痛くなっちまって……」

「やっぱり……大丈夫だって。さすがに今更どこか行くとかないから」

「だ……だよな」


 安堵のため息をついて、ようやくフォグが戻って来た。それでも下ろす気はないようで、高級そうなお店を抱かれたまま入ることになってしまった。二度と来れない。

 

 おすすめということもあって顔パスで案内されるフォグに揺られながら、これからのことをぼーっと考える。

 旅という選択肢はない。だから、次に考えるべきは何をするかということだよなぁ。

 ってなると、やっぱりコハクの提案を飲むべきなんだろう。ヘッドハントってことは賃金交渉とかできそうだし、なによりコハク直属だから悪いことにはならないと思うんだ。


 でもせっかく自由に決められる時間があるんだ。もうちょっと悩みたい。

 他にいい選択肢があるかもしれないじゃん。おれはこの世界のこと、あんまり知らないんだからさ。


 それに、おれが何を選んでもジェルやフォグは受け入れてくれる。そう信じられるから、重く考えなくて済むんだ。


「フォグ」

「なんだ?」

「ありがとうね」

「別に声をかければいつだっておごるぞ。むしろ、お前はもっと物欲を出していけ。ジェル様が何をプレゼントしたらいいか困ってたぞ」


 そういうことじゃないんだけど、全部説明するのも照れくさいから。

 あいまいに笑って、おれは熊の胸に顔をうずめることにした。


****


 フォグとご飯を食べて、午後からも頑張るかと気合を入れなおす。

 こんなルーチンだと本当に働いてるみたいだな。元の世界のサラリーマンに比べるとだいぶ緩いけど。


 フォグもフォグでまだ軍の整備とか仕事は残ってるみたいだけど、おれに付き合うつもりらしい。大体終わってるからってさ。やはり優秀だ。

 もしおれの部隊ができたら、本当に来るつもりなのだろうか。


「そうじゃないと不安なんだよ。『華炎』の二人がこっちに来れば、軍の方は誰が隊長になっても変わらんだろうが、お前の方は違うだろ。誰が雑務やその他の仕事をするんだ」

「さあ……おれは詳細を聞いてないから、コハクがどう考えてるのかはわからないなぁ」

「多分だが、お前には性に溺れさせて、雑務を誰かがするって形になると思うぞ。白竜宮ともなると侍女長やらとの交流が必須だし、礼儀作法も問われるだろうな」

「めんどいなぁ……白竜宮ってお妃が使うところだっけ。別に他の場所でもいいのに……」

「ここしか空けられなかったのだからしょうがないだろう。乱を制したとはいえ、コハク王子の立場はまだ不安定。他の部署と衝突する可能性が最も少ないのがここだからな」

「それはわかってるけどさぁ……」


 まあ確かに世継ぎを生む場所はエロ目的の部隊を常駐させるのにはちょうどいいのもわかる。でも、正妻じゃなくて妾とかそこら辺の人が使う場所でもいいじゃんとは思う。


「それはおれも考えたが、功績を出したお前への礼なのかもしれないな。国を安定化させるうえでも他国との婚姻は大事だが、このごたごたを見るにまだ先の話だろうし」

「そんなわけないだろうがこの鈍感どもめ」


 排他的な音を吐き捨てながらやってきた獅子は不愉快そうに黄金のたてがみをかきあげた。今日のリブラは『竜の爪』の軍服ではなく、なんか高貴そうな服で雄々しい体を飾りたてている。


「リブラ、それどういう意味?」

「……はぁ。なぜおれ様が馬鹿にいちいち解説せねばならんのだ。少しは自分の頭で考えるという癖をつけないと腐り落ちるぞ」


 珍しく毒舌のキレがすごいな。最近は丸くなったと思ったのに。

 それはフォグも同意見だったのか、首をかしげて問う。


「どうした、何か嫌なことでもあったのか?」

「この鈍感熊が……おれ様は自分のものを取られることを良しとしない。それだけの話だ」

「はあ?」


 言っている意味が分からないけど、こうなったリブラに解説を求めても無駄だということは知っていた。


 もとから王族であったリブラは今回の一件でかなり評判を上げた。王位継承には遠い立場であり過去の経歴から腫れもの扱いだったが、発言権が増した……らしい。

 まあ何でもこなせる天才肌だから、扱いさえできれば優秀なんだよね。問題はその扱いが難しいということだけど。


 今はグリッジが務めていた軍部の元帥、要はまとめ役や元老院を臨時で担当している。王族という地位を存分に活かした、というよりかはコハクにいろいろ押し付けられた形であり、本人は大いに不満を募らせていた。

 さらに傭兵街とのパイプ役も兼ねているおかげで、最近は軍服の姿を見る機会が減ってしまった。おれらの中で最も忙しいと思う。


「くそコハクめ……おれ様をこき使いおって……なぜこんなにも働かねばならんのだ……おかげであの馬鹿が狂った部隊を立ち上げると知ったのがこの前だったのだぞ」

「大方、お前にばれると面倒だと思ったんだろ」


 フォグの意見はわかる。なにせ面白いと思ったら横槍だろうがちゃちゃだろうが何でも入れてくる性悪獅子だから……。

 そしてコハクはリブラの横槍が入らないように、傭兵街に行っていた間を見計らったというわけか。狸同士の化かしあいがすごいな。


 まあ冷静に考えたら、王位継承権持ちのリブラってコハクにとっては現在最大の障害になる可能性があるともいえるしね。仲は悪くないと思うんだけど、リブラだしなぁ。

 

「それでなにか、おれ様が汗水たらして働いている間に、貴様らはエロを仕事にして乳繰り合っていたというわけか」

「そういうわけじゃないよ。おれはまだ受け入れたわけじゃないから」

「……ほう、そうか。国王への戴冠が確定しているコハクの庇護を断る理由もないと思うのだが、何が目的だ?」

「何って言われても……」


 おれはただ、この世界に来て初めて自分のことを決められるから、悩んでみたいだけなんだよな。

 確かに答えは決まってるかもしれないけれど、そんなのわからないじゃん。もっといい選択肢があるかもしれないし……。


「ないだろう」


 おれの躊躇を獅子は一刀両断する。


「貴様は国王や神風からの庇護を受けられる立場にいる。しかも好意的に、だ。他に行こうものなら奇異の目や政治の道具にされること請け合いだぞ。貴様の雄を篭絡する手腕は、さぞかし便利に使えるだろうからな」

「た、旅に出るとか……」

「はっ。もっとも愚かな選択だな。貴様がこの国を出たなら、着いてくる雄がどれだけいると思っている。あの馬鹿犬を筆頭に、パーティでも組むつもりか? 冒険者稼業など、しょせん金持ちの道楽に消費される遊具にすぎん。権力の前では、無力もいいところだ」


 痛いところを正確に遠慮なく突いてくるの、リブラって感じ。


「じゃあどうすれば……」


 そこで獅子がするにやりとした表情。仕事のストレスとは無縁の笑みは、絶対ろくでもないことだというのがわかる。


「なに簡単だ。コハクの提案を受け入れればいい。そして、適当な場所には経費で行けばいい。雄をスカウトするためと言えば、軍の目的とも反しないだろう? 貴様は王から庇護される立場のまま、好きな場所で雄を食らうことができるというわけだ」

「でもそれだとこの国の中だけにならない?」

「じゃあ世界征服でもするしかないな」

「はぁ?!」


 今とんでもないことをあっさり言ってのけたぞこの性悪獅子。


「傭兵街を陥落させたように、貴様には世界を手玉に取れる才能がある。貴様の才能とおれ様の手腕があればおそらくは可能だろうな。どうだ、楽しくないか?」

「まったくっ!」


 傭兵街での任務を嬉々としてこなしていた獅子だ。こういう侵略行為が大好きなんだろうな。そしてその行きつく先があの娼館のようになることは想像に難くない。

 ん、でも似たような単語をどこかで聞いたことがあるような……。


「全くの夢想ではないと、フォグもわかっているだろ?」

「……まあな。こいつのおかげでこの国は歴史上もっとも二つ名持ちが多くなった。それはつまり、他国からも警戒されるということだ」

「そしてそれは異世界人のおかげだと知られれば、世界は荒れるだろうな。なにせ人工的に二つ名持ちを作ることができるのだ。貴様を擁した国が世界のトップに立てる。そして、それを夢見る国が確実に出る」


 リブラが旅に出ることをもっとも愚かな選択肢とこき下ろした理由が分かった。おれはそこまで考えられていなかったけど、ジェルやフォグの反応を見るにリブラと同意見だろうということはわかった。


「だとしたら、おれ様たちが頂点に立つしかないだろう? 今この国は最も強い。ただでさえ最強と名高い『神風』を有していたというのに、貴様までいるのだ。負けるわけがない」


 獅子の手がおれの頬を撫でる。こちらを見据える目は細められながらも、獲物を狙って剣呑に光っていた。

 

「世界征服。何とも愉快な響きではないか。貴様がいれば、無血開城も夢ではあるまい」

「え、えぇっと……」

「そこらへんにしとけ」おれの救難信号をフォグはしっかり受け取ってくれた。「そもそもどんな国があるのかすらこいつは知らないんだ。それに、コハク王子がそれを望むとは思えん」

「あれは臆病な小動物にすぎん。不穏な気配を見せれば過剰に対処しようとするだろうから、あることないこと吹聴すればたやすい……昔だったらな」


 そこでリブラはつまらなさそうに肩をすくめた。


「今回の一件で、落ち着きを得てしまった。ここに戻ってきた時点で覚悟を決めてやがったわけだ。昔のままならまだ傀儡にしやすかったというのに」


 相変わらず逐一単語が不穏すぎる。どうしてお前は話すたびに不穏を振りまくんだ。


「だがまあ、手がないわけではない。せっかく夢を見れるのだ、どうせならつかみたいというものだろう?」

「まーた何か悪だくみか?」

「いやなに、元老院や元帥の仕事などつまらんと思っておったが、そう考えればやりがいはあると気づいただけだ。それに、あの臆病者が王になるのだ、これくらいがちょうどいいだろうとも」

「頼むから内乱だけはやめてくれよ……」

「くふふっ、さあどうなるやら。少なくとも、おれ様が退屈してない間は安心していい。もっとも、どこからの馬鹿が旅に出るなどということをすれば、すぐにでも退屈になるだろうがな」


 脅してきたぞこの猫……。素直に引き留められないのか。

 いやまあ、それでこそって感じはするけどさ。


「今は臨時とはいえ、おれ様が軍を束ねるものだ。おれ様がより効果的に貴様やジェルを使ってやろう。グリッジのように己が利益しか考えない小物に比べたら、はるかに働きやすくなるだろうな」

「雰囲気は大悪党なのに言ってることは良いことなんだよなぁ」

 

 リブラの価値観は面白いかどうかの比重が大きいけど、それ以外は案外真っ当なのだ。比重が大きすぎるっていうのが問題なだけで。……いやそれだけで詰んでたわ。

 

「信賞必罰を整えることは兵のやる気向上につながるというのに、グリッジが幅を利かせすぎたせいでまともに機能していないから面倒なことこの上ない。だが、ちょうどいい。貴様がいるのだ、エロ方面に関しての技量も評価項目に入れておこう」

「待て待て待てっ! お前、軍紀をどうするつもりだ!」


 さすがに聞き捨てならなかったのだろう、フォグが前のめりにつっこみをいれる。


「この惨状では風紀などあったものではないだろうが。それなら、エロを織り込んだ規律を新しく作ったほうが早い。こいつの強化から新たな二つ名持ちが生まれる可能性があると考えれば、コハクも了承するはずだ」

「……うぅ」


 フォグは頭の回転が速い方だから、リブラの言いたいことはすぐに理解したようだ。

 つまり、エロを中心としたおれの軍を新設するだけでなく、すべての軍にエロを求めるようにするってこと?


「察しがいいではないか。だが、一番の大本は貴様であることに変わりない。おれ様やフォグでは『華炎』に『潮吹き』や『ちんぽ魅了』を覚えさせるのがせいぜいだったからな」

「それでも十分すごいんだけどね……」


 でもそんなスキルのためだけに価値観を狂わされたって考えると割に合わないな。

 やっぱりおれが直接やるしかないみたい。


「ふむ、ふむ」思考を重ねるごとに獅子の口が愉悦にゆがんで。「悪くない、堅苦しい軍紀などつまらんと思っていたところだ。コハクがエロを中心とした軍を新設するというのなら、おれ様もそれに便乗しよう。楽しくなってきたな」


 国の立て直しが遠のいている気がする……大丈夫なのか……。


「まあコハク王子なら多分大丈夫かと……いざとなったらおれも止めるさ」

「ふん。今回の事件でエギザクタ家の権力は地に落ちたようなものだ。フォグがいかに優秀とはいえ、敵にはならん。今のおれ様を止められるとするならば、それこそコハクくらいのものだろう」

「それに、ゴライザらの傭兵街の面々を引き抜いた功績もだいぶお前のものになったしな。ヤードも頭は悪くないんだが、どうしても政治になると経験不足が否めねぇ」

「後ろ盾もないしな。フォグも、あの政治不得手なオオカミを参考にしすぎてもろくなことにならんぞ」

「別にジェル様を真似して功績を譲ったわけじゃねえよ。ナハトラ派を落とした功績なども含めて、お前の取り分を多くしたほうがいいと判断しただけだ。おれが言いたいのは、ヤードが受け取るはずだった名声も、ちゃっかりお前が持っていってるだろうってことだ」

「おれ様とて、尋ねられれば譲ったとも。だが、最近のあいつは名声より武を好むようになってきた。心境の変化があったんだろうな」


 つまり、今コハク王子に次いで権力を持ってるのって、リブラってことになるわけ……?

 それは恐怖だよ。絶対ろくなことにならない。


「くふふ、まあどうなるかを楽しみにしているがいい。貴様も、変な意地を張らずに早くコハクの提案を受け入れろ。悪いようにはしないと、おれ様が保証してやる」

「まあ、フォグが手伝ってくれるって言うし……」

「は?」


 獅子の丸い耳がぴんと立ち上がって、信じられないと言わんばかりにフォグを見た。

 大抵のことを道理立てて考えることができる獅子がここまで驚くのだ、さぞかし不条理なことだったのだろう。


「貴様まさか、こいつのところに行くつもりか? 何のためにコハクが貴様を隊長に据えたのか、理解していないわけではないだろうが」

「長い目で見て、そのほうがいいと判断しただけだ」

「はぁ……これだから善良な馬鹿は困る。貴様らが道を譲れば、強欲な愚者が得をするだけだというのに……」


 えっと、どういうこと? まあ確かに、わざわざ隊長の座を辞退するのはもったいないなとは思うけど……。


「コハクはな、エギザクタ家の名声が地に落ちたことを憂いて、フォグのために隊長という職をくれてやったのだ。要するに名誉挽回の機会として使ってほしいという配慮だ。反乱を企てたエギザクタ家に対する配慮という形ではなく、武勲を建てたフォグ自身への褒美という形で、わざわざ気を回したのに、だ」


 そういうことだったんだ。それなのに、フォグは隊長を辞めてまでおれのところに来てもいいと言っている。


「まあもともと貴族籍をはく奪される覚悟だったんだ。今でも十分ありがたく感じている。だというのに、そんな待遇までもらうのは少し気が引けてなぁ」

「こんのくそ馬鹿! 貴様が辞退したところで、他の馬鹿が恩恵にあずかるだけだと分かってるだろうが!」


 それからリブラはため息を吐く。重く長く、付き合いきれないと憂う色が強いため息を。


「まったく……ジェルといいフォグといい、あのファンダルといい……なぜ他者に対してそこまで思いやれる。理解できんな……だが、ああ不愉快極まりない……!」


 何が気に食わないのかわからないが、細い尻尾で自分の尻を叩くリブラは相当機嫌が悪くなっていた。


「こんなくそつまらん場所で油断を見せれば寝首をかかれるだけだというのに……だがそれでもこいつらは生き残った。貴様が生き残るために手を貸したおれ様が言えたことではないが、気に食わんな。ちぃ」


 特大の舌打ちをかまして、踵を返す。苛立ちにたてがみが逆立っていて、近寄りがたい雰囲気を発していた。

 おれはちょっと声をかけづらいんだけど、フォグにとってはいつものこと。気圧されることなく、困ったように話かけてくれた。


「お、おい、お前が怒ることじゃないだろうが。おれは納得したうえで、コハク王子に進言するつもりだぞ」

「ふん、少し待っていろ。貴様に勝手なことをされると、元帥としてのおれ様が苦労するからな。何のために貴様を助けたと思っている」

「それは感謝してるが、おれの道はおれが決める」


 え、どういうこと。リブラがフォグを助けたってなに?

 だけど、おれの疑問なんて聞く耳もたないようで、獅子は歩き去っていく。何か企んでいるみたいだけど、おれは特に心配していない。リブラも丸くなったし、そんなひどいことにはならないはずだ。

 それはフォグも同意見のようで、姿が見えなくなるとおれに向き直って口を開いた。


「何をするつもりなんだか……。まっ、そろそろおれらも仕事に戻らないとな。コハク王子の件、前向きに考えてくれ。この国にはまだお前が必要なんだ」

「わかったよ」


 やっぱりどう考えてもそれが一番安定だよね。おれとしても、これ以上の条件はないように思えるし。


 それからフォグと別れて、本日の予定者の診断をして、今日という日がようやく終わろうとしていた。

 やることが少ないというのもあるけれど、落ち着いているから最近は時間の進みが遅く感じることが増えた。平和なんだなぁと思う。


 さてと、後はコハクに今日の報告をして終わりだ。

 おれは寂しがり屋な龍が待つ、執務室へと足を運ぶことにした。


****


「……以上が今日の結果。『華炎』の兄弟が一番ひどくて改善の余地はやっぱりなし、グリッジの兵がその次くらいかな。『影に満ちた鏡』は対処が早かったおかげかそこまでひどくないし、『騎士道走行』や『茜差す栄光』は全然大丈夫。ただ……」

「『竜の冠』、我が父は未だに起きる気配はない、か……」


 コハクの父であり現国王、ガネートさんはベッドの中で眠り続けていた。

 グリッジの仕掛けた『疑似人格』や調教によって摩耗した精神が防衛反応を取っているのだそうだ。『疑似人格』自体はすでに取り除かれているけれど、もとの人格はど淫乱のちんぽ狂いに調教が完了している。


 執務室に向かったおれは、休憩がしたいとだだをこねるコハクに従って私室に連行されていた。向かい合ってお茶をしながら、おれは今日の報告を終える。

 竜のため息がカップの水面を波立たせ、物憂げな表情が揺れた。


「あまり仲の良い関係ではなかったが、こうなるとやはり気がかりなものだ」

「そうなんだ」

「傀儡にし辛い私を、グリッジは早々に見切りをつけていたからな。それに従って、父も弟ばかり構うようになった」

「……よくグリッジを許したよね」

「許したわけではない。ただ、フォグの諭す言葉を聞いてしまえば、殺すのもためらわれるというだけだ。家によって縛られているという点で、私もグリッジも変わりないからな」


 確かに、あの環境だったらおれも似たような感じになってそう。だからといって許されるわけじゃないけれど、コハクはコハクなりに、最大の譲歩をしてるんだろう。


「フォグとはいい関係性を気づいていきたいという思惑もあるぞ。あれは頼りになる」

「真面目で人がいいからね。おれも頼りにしてる」

「今回の件で、一気に環境が変わった。父上不在ということもあり、人事異動でも考えることが多くてかなわん。だからフォグのような頼りになる存在は一人でも多く欲しいのだ」

「大変そうだよねぇ」

「しかも急に降ってわいた王子が継承するということもあって、貴族連中の立ち振る舞いがあわただしくて面倒だ。ゴマすりに構っている時間などないというのに……」


 ウィザロンの帰還と、ゴライザやトリドスの参入。名のある武人が入って来たこともあって、軍部だけでも再編成が大変なんだ。国全部となると、かなりの大仕事になるはずだ。

 

「もっとも大変なのが軍部だがな。ウィザロンにも席を用意せねばならんし、ゴライザら傭兵街の面々への対応も手厚くせねばならん。となると、金が要る。それは隠れ住んでいた我々が持たないものだ。どこかから調達せねばならんのだが……はぁ……悪い、君を前に言う話ではなかったな」

「……あれ、そういえばおれらが傭兵街にいた時に稼いだお金ってどうなってるんだっけ?」


 娼館でありえないくらい稼いでいたはずだけど、飛ばされてしまったからそのお金がどうなってるのか知らないんだった。


「それはフォグらから報告をもらっている。ゴライザが王都へ進軍するための資金として使われたそうだ。あとは商人が多いナハトラ派からの融資をリブラが取り付けたりと、いろいろしていたようだな」

「なるほどね。みんないろいろやってたんだなぁ。じゃあもうあんまり残ってないの?」

「いや、実はエギザクタ家に恩情を与える見返りとして、フォグからかなりの額をもらったのだ。普通に考えれば家が傾いてもおかしくないくらいだ。その補填に売り上げを当てたと聞いている」

「ああ……」


 そういえば、さっきリブラがフォグを救ったって言ってたし、フォグもおれのおかげって言ってたな。絶対これのことだ。

 リブラがおれらの稼ぎを使って、フォグの名誉を守ったんだ。っていうか、あの娼館はいったいどれだけ稼いでたんだよ。怖くなってきた。


「まったく、あれは素直じゃないな」

「本当に。一言くらい言ってくれればいいのに……」

「おおかた、恥ずかしかったのだろう。あれは裏で手を回すか尊大に接することでしかコミュニケーションが取れないからな。我が弟ながら、嘆かわしい」

「言うじゃん。その通りなんだけどさ」


 さすがに腹違いとはいえ兄弟というだけあって、互いの性格は熟知しているようだ。どちらも性格に難はあれど、優秀という点では似た者同士だ。


「それじゃあ、国営の娼館とかあればいいのにね。そうしたらおれが稼ぐよ」

「国営の……娼館……?」


 コハクが目を丸くしているけれど、いいアイデアじゃないかな。

 傭兵街で荒稼ぎできたから、たぶんいけると思うんだけど……。


「そうだな……国営という発想はなかった。資金を稼ぐというのならそれでいいかもしれないが、国が急にそんな事業を展開すると、王都の商人に何と言われるかわからん」

「ああ、確かに。リブラも傭兵街の時に苦労してたからねぇ」

「だが、できないことはない」

「え?」


 カップを飲み干して、龍は尻尾をくねらせる。勝ち誇ったような顔は、なにやら光明を見つけたように輝いている。


「今回の騒動で精神を捻じ曲げられたものは多い」

「そうだね。『華炎』もそうだし、グリッジの兵もそう」

「その働き先をあっせんするという名目で、国主導の娼館を建てるという案は悪くないな。そうすれば被害者救済の面目が保てるし、国営で稼ぐことができる。問題は誰に任せるかという話なんだが……」

「うーん、だれかいるかな」

「別に軍部から呼ぶ必要はないのだが、今私が信頼できるものはほとんど軍部にしかいない。ジェルやウィザロンといったな。だから、できればそこに任せたいのだが……」


 そういうことが得意なリブラは他の仕事で手いっぱいだろうし、たとえ傭兵街との橋渡しの仕事が終わってもこれ以上任せると大変なことになる。

 ヤードは『竜の爪』副隊長が確定してる。そして、おれがコハクの下につけばフォグがやって来る。

 …………となるとぉ。


「おれの所しかないのでは?」

「一応聞きたいのだが、できる自信は?」

「……実はおれがコハクの下につくってことになったらフォグが手伝ってくれることになってて」

「それなら確実だが……いいのか? 昇進は今のエギザクタ家にとって大事なことだろうに」

「いいみたい。名誉より国とかおれらのためになることをしたいんだって」

「そうか。やはりグリッジに恩情を与えてよかった。エギザクタ家は変わるだろう」


 フォグはとっても良い奴なので、コハクが後悔することはないと思う。おれがそう念押しすると、なぜか微妙な顔をされた。なんでだよ。


 まあつまり、おれは王宮でエッチなことをしながら、娼館の運営をして王宮にお金を流す仕事ってことになるわけだ。まあエロだけで毎日を過ごすのはあまりに自堕落だからいいんだけどさ。


「……ふむ、報告によるとフォグらも傭兵街の娼館で働いていたそうだし、レベルアップのためにもいい場なのかもしれんな。副隊長を務めてくれるのなら願ってもないことだ」

「傭兵街にはおれらの使ってた娼館が残ってるだろうしね。今は締めてるみたいだけど、すぐにでも再開できるよ」

「悪くないな。だが――」


 そこでコハクは席を立ったかと思ったら、おれの前に膝を付いた。一国の王子がしていいしぐさではなかったので、めちゃくちゃ驚いた。


「どうしたのコハク?!」

「だが、それは君が私の提案を受け入れてくれる前提だ」

「それはそうだけど……」


 うろたえるおれに構うことなく、龍の長い口唇がおれの膝の上に置かれてそのまま抱きしめられる。眼下で揺れる真っ赤なたてがみに手を伸ばすと、思ったよりさらさらとした手触りが迎えてくれた。王子という立場を取り戻したことで、いいシャンプーを使ってるのだろうか。


「なあ君、君よ。どうかお願いだ。私のために残ってくれないか。そばにいてほしいんだ」

「コハクはもう一人でも大丈夫……じゃないよねぇ」


 強くはなったけど、だからといってずっと強いままでいられるわけではない。

 それは当然のことだから、ここに戻って来ただけでも成長したことをおれは知っている。


 マズルを撫でると前よりも綺麗になった鱗に指紋が付く。申し訳ないと思ったけど、コハクは気にしていないようで、それどころか嬉しそうに目を細めてきた。

 角が当たらないようにと配慮してくれているが、やはりそれだけでは足りない。不安そうな光が瞳を揺らすから、吸い込まれそうになってしまう。


「依存に近いことも理解している。だが、もう少しだけ、甘えさせてはくれないだろうか。このまま頼れる人の少ない王宮にいては、崩れてしまいそうだ」


 こうして心情を吐露できているだけで、成長したことをおれは知っている。

 隠れ住んでいた時は王子らしくと我慢し続けて、壊れる寸前だったから。こうして不安な時には、ちゃんと相談してくれるようになった。


 それを無下にすることなんて、おれにはできなかった。

 だから、許諾を口にしようと開いたが、それより早く龍が遮った。


「すまない、聞かなかったことにしてくれ」

「いいの?」

「ああ、ジェルを見殺しにしようとした私をここまで手伝ってくれただけでも感謝すべきなんだ。これ以上強制しては嫌われてしまう」

「そんなことないよ。結局助けに行ってくれたじゃん」

「もちろん君はそう言ってくれるだろう。だが、私が嫌なんだ。私は君と友でありたい……まあそれ以上でもいいのだが、今言うべきではないなうん。失恋したばかりのようだし」


 後半なんかもごもご言ってて聞き取れなかったけど、恥ずかしかったのだろうか。


「ゴホン、とにかく、私は王子という立場ではあるが、君とは対等でいたいのだ。だから、考えたいと言った君の意見を尊重する。君がどんな結論を出すか、待つことに決めたんだ。今のはその……ちょっと寂しかったということで許してくれ。最近来てくれなかったし……」

「それはごめん……」


 そこで黄金の龍は立ち上がり、身につけていた高貴な衣服を脱いでいく。

 私室に呼ばれたときから察していたから驚くことではないけれど、久しぶりに見たコハクの体は記憶よりもずっときれいだったから、つい凝視してしまった。

 鍛えられた体に黄金に輝く鱗、真っ赤な体毛は一層艶を増している。造形がかっこいいことも相まって、人目を引きつける気品に満ちていた。


「だから、その寂しさを今埋めてくれると助かる」


 そして、顔に浮かぶのは淫らな笑み。

 臆病で初対面の人となんてできないコハクだけど、おれの前では自分のなりたいエッチなお兄さんとしてふるまえるんだ。


「まったく。こんなエッチなお兄さんを放置するとは、けしからんやつだ」

「きれいになったよね」

「それはもう、政治の風向きはこちらにあるゆえ、蝶よ花よと世話を焼かれておるからな。見違えただろう?」


 良いものを食べ、丁寧に磨かれた体がベッドに横たわる。ごつい指がスリットを開けば、陰毛とは違う赤が生々しい光でおれを惑わそうときらめいた。


「最近忙しさのあまり全くできておらんからな。好きな方を犯していいぞ❤」

「それじゃあ、後ろで。でも、前も味あわせてもらおうかな」


 こんなにアピールされて、スリットを使わないなんて言えない。顔を近づけると、石鹸の匂いにまぎれて雄の色香が鼻をくすぐった。自分の手でなぞると、隙間からじわりと汁がにじんできた。

 

「…………っ❤❤」


 縦割れをガン見されていることに興奮したのか、屈強な太ももが震える。自分の身は守れるようにと、戻ってからもウィザロンと訓練している肉体は、硬く太い雄々しさで満ちていた。

 そんな筋肉のついた股間にある縦筋は倒錯的で艶めかしい。思わず凝視してしまい、にじんだ汁が滴って、陰毛の根元を濡らしながら凹凸際立った足へと滑り落ちる光景が見えた。

 

「ふふっ❤そんなに見つめられると蕩けてしまいそうだ❤エッチな汁ならたくさんためている❤好きなだけすすっていいぞ❤❤」


 それならお言葉に甘えて割れ目を舐め上げると、舌に絡みつく毛の感覚としみこんでくる塩辛さが興奮のボルテージを上げてくれた。肺には雄臭さがたまり、逃げ場のない熱が股間へと集中してくる。


 この雌にハメたいという欲求を想起されて、はち切れんばかりに自己主張するおれの一物。コハクがそれに気づけば笑みを深め、湿っぽい吐息を漏らす。


「んはぁ❤私に興奮したのだな❤早くハメたいとちんぽ泣いておるぞ❤❤」

「それを他の雄の前でもすれば、ちんぽには困らないと思うんだけどねぇ」

「無理!」


 エッチなお兄さんが上手になっても、やっぱりコハクは変わらない。

 舌先でスリットをほじくって、内外の皮膚の違いを堪能しよう。


「ひゃぁ❤んっ❤あっつぅい……舌がねっちこいぞ❤んっふぅ❤私のおマンコがぁ❤気に入ってくれたようでよかった❤❤」


 外は白くスベスベで、張りもあるため舐めやすい。陰毛がなければ唾液の光沢がさぞかしきれいに光ったことだろう。

 対して、内はやはり粘膜であり、柔らかくうごめいているのがわかる。それでいて汁が絶えず染みてくるから、時折潮となって俺の顔に当たった。


 だけど、今は自分の顔をぬぐう時間すら惜しい。舌で内壁を突けば、収納されているちんぽが大きく震えるのがわかった。ずんぐりとした肉棒を舐めてみると、浮き上がった血管をつぶす感覚がした。


「お゛❤❤ふふ❤ちんぽに興味があるなんて珍しい❤勃起させてほしいのか?❤」

「んーどっちでも。立ったら後ろ使うだけだし……」


 おれのちんぽはさっきから痛いくらい張り詰めているんだ。早く挿入できるのなら、それでもいいと思っていた。

 だがそれが不満だったようで、コハクは尻尾でおれの背中をぺしぺしと叩き、頬をちょっと膨らませてみせた。


「君は優しすぎる。それはまあ、最初にやったときは泣きじゃくっていたからしょうがないかもしれないが……私とて、立派になったのだぞ!」

「今でもたまに泣くくせに……」

「うっ……」


 屈服するのが大好きなくせに臆病だから塩梅が難しいんだよね。そもそも、大半のスキルを無効化する実力者だから、並大抵のことじゃもう屈服しないでしょ。


「やーだー! やだやだー! 私も種壺マンコとして欲望のはけ口になりたいー!」


 一国の王子が口にしていい言葉じゃないんだよなぁ。知らない雄に迫られたら泣くくせに、おれ相手だと遠慮がない。わがままを言えるようになってよかったね、と思ってしまうおれも甘いのだけどさ。

 

「それなら……」


 『ローション作成』を発動。ヤードの十八番ではあるが、おれだって使えるのだ。

 粘液でコハクの体を封じ込め、折りたたんだちんぐり返しを取らせる。


「わわ……っ!」


 足の間から見下ろせば、龍の瞳に動揺が走る。それでも、その奥にじっとりとした期待がくすぶって、黄金の頬が赤く染まっていく。


「嫌なら『無効化』なりなんなりでも使って抜け出してもいいよ」


 さっきからクンニしても『愛撫』が全く効いていないから、無意識のうちに対処してるんだと思う。だから、それを上回る出力でいかせてあげようか。

 最近、ヤードやジェルなど、おれのスキルが通じない雄とやることが増えてきた。対策されたら弱いという自覚はあるけれど、だからといってこのままでいいとは思っていない。


 おれだって成長したんだ。フォグらの頑張りを見てただけで終わるなんて嫌だ。


「ふふっ」コハクがうっとりとほころばせる。「なんだ、えらく攻撃的じゃないか❤珍しい❤」

「みんなのことを気持ちよくしようと思ったら、本気を出すしかなくなったってだけだよ」

「なるほど❤ヤードやジェルには効かなかったらしいからな❤君が真面目なのもわかる❤だが……」


 それでもコハクは自らの手で尻を広げて、秘部をさらけ出す。雌として覚醒しているそこは濡れそぼっており、芸術品のような体躯に不釣り合いな肉の赤を強くしていた。


「私は君を受け入れるぞ❤好きにしていいんだ❤君が私を害すことなどないと知っているからな❤」


 今度は尻尾が優しく背中を撫でてくれるから、おれの体から不要な力が抜けていく。真面目というかプライドが傷ついてただけだから、そんなことされるといつも通りやっちゃうじゃん。


「よい❤屈服したいのは確かにそうだが、私は君とできれば満足なんだ❤だから、君がそんな顔をするくらいなら、私はすべてのスキルを切ってもいい❤」

「『愛撫』は切れないから、かなりひどいことになるよ」

「構わない❤私は君と一緒がいいだけだから❤言っただろう、さみしさを埋めてほしいと❤それだけでいいんだ❤❤」

「あー……」


 今、完全に空回ったな。主導権を握られてばかりだったから、ちょっと焦ってたみたい。

 深呼吸して笑顔を作ると、コハクも応えて笑ってくれる。だから、これでいいかと思えた。


 コハクの拘束を解いて、上から抱き着いた。おれよりもでかくて広い肉体はしっかりと受け止めてくれて、胸毛の顔が埋まる。

 首に手を回してわかる分厚さ。首筋にキスをすれば、お返しとばかりに頬に返ってくる。今度はマズルの先端に口をつけると、四肢の全部で抱きしめてきた。


 抱き合ったまま横になったり、おれが下になって覆いかぶさられたり。シーツの上でただ肉体をすり寄せあう時間が流れた。

 その間何度もキスをしたし、キスをされた。内皮の白い部分とおれの肌には、いくつもの赤い花が咲く。寂しさを埋めてほしいと言ったコハクの願望通りに、満足するまで絡みあった。


「やっぱりスリットに入れていい?」

「もちろん❤❤」


 唾液まみれの口で問えば、あっさりと了承が返って来た。

 抱き合ったまま挿入をしようと思えば、やはり前しかないのだ。


 龍の頬を舐め、口角からのぞく牙まで舌を這わせる。口唇が長いから抱き合ってもキスしづらい。その不便さをコハクも感じ取ったのか、また自分を下にしておれを乗せることにした。


 体を起こせば生まれた隙間に空気が入り込み、龍の色香が飛んだ。へたってきた胸毛を横目に、おれは顔を近づける。


「あてがってもらっていい?」

「しょうがないなぁ❤❤」


 おれはコハクの顔を触りながらキスをするのに忙しい。だから少し腰を浮かせて誘えば、おれのちんぽをごつごつとした手が握ってくれた。


「んっんっ❤❤」

「ちゅぅ……」


 頬を撫でてたてがみをすいたり、おれはコハクの顔を好きにいじる。

 されるがままのコハクだけど、まんざらでもない表情をしているからつい調子の乗っちゃう。

 その間にもおれのちんぽを割れ目にくっつけて揺らし、先端で筋をなぞらせる。敏感な亀頭が陰毛でくすぐられているような感覚がして、ぞわりと背筋が粟立った。


「うっ」

「ふふふぅ❤割れ目がぬるぬるしてるのがわかるだろ❤おマンコしてほしくてたまらんのだ❤❤」


 おれの鼻面を舐めながら嬉しそうに微笑むコハクは、スリット汁を掬ってはおれのちんぽにこすりつける。両手で磨くように愛撫されると、ちんぽが硬度を上げた。


「んふ❤ふふ❤がっちがちではないか❤手がやけどしそうだ❤おマンコが溶けてしまうかもしれんなぁ❤❤」


 こちらを見上げながらニヤニヤするコハクは、エッチなお兄さんとしてふるまえてとても満足そうだ。何も言わずにいると、上目遣いに興奮が強くなる。


「というか、でかすぎるぞ❤こんなものが入るのか……❤入るかな……」

「自信なくさないで。何度もしてるでしょうが」

「それは、まあ、そうだが……。こーんなに硬くて大きなおちんぽ❤私としても、ぜひ入れてほしいと思っているぞ❤」


 あ、持ち直した。エッチなお兄さんも上達してきたな。


 両手を股座に持っていく黄金の龍は、意図せずおっぱいを挟み込んでいる体勢を取っている。鍛えられて程よくデカい胸筋がむにぃと持ち上がって、胸毛とともに山を作っていた。

 フォグやモウダンとか、さらにはゴライザとか巨乳に囲まれているおれだけど、コハクの胸も好きだ。あいつらは豊満すぎて雌みたいだが、コハクは鍛え上げた雄の形をしており、その上揉みやすいときている。フォグとヤードを足して二で割った感じ。

 おれのちんぽを撫でまわすたびに挟まれたおっぱいがたわむ。これ、本人は絶対気づいてないが、かなりエッチだぞ。


「なあ君、君よ❤まさかおマンコする前に出してしまうなんてこと、あるまいな❤❤」

「すぐ調子に乗る……」

「攻める時に攻めるのは将として当然のこと❤君が遠慮しているからこそ、好きにできるのだ❤」

「自覚はあるんだ」


 上は発情した目とむっちりおっぱい。

 下は優しくしごいてくれる鱗の手。

 これで興奮するなというのは無理がある。おれの理性は限界を訴えており、思わず腰が前に出る。


 そうすると、亀頭がスリットを広げて、熱した肉が粘膜に欲望を焼き付けていく。


「うひゃぁ?!」龍が大きく目を見開いた。

「あ、ごめん」

「君、君ぃ! 入れるときはちゃんと言わないか! おかげで少し、いってしまった……❤」


 その言葉通り、スリットから漏れた汁がちんぽに当たるのを感じる。久しぶりということに加えて興奮もあるとはいえ、さすがに早すぎるでしょ。


「だ、だって、君とするのが久しぶりだったから……こんなに気持ちが良いとは思わなくて❤❤」

「ひょっとして、『無効化』切ってる?」


 恥ずかしそうにうなずくコハク。さっきの言葉を実践したのか。対策なしに『愛撫』をもろに受けたらそうなるよ。


「無理なら調節していいから」

「ふん、この程度問題ないさ❤君が心配するようなことじゃない❤」

「すぐ意地を張る……」


 考え直す時間を与えようと、先っちょだけいれたまま腰を回して、割れ目を揺さぶった。

 境目はやはりきつく、気を抜けば締め出されそうだ。挟まった亀頭がこすれる感覚は気持ちよく、おれの先走りがスリットにこぼれていく。


「う、あ、あぁ……❤気持ちいいぃ……❤❤」

「全部入れたらこれ以上になるよ」

「だい、じょうぶぅ❤あっ❤問題などあるわけがないっ❤❤ひぅ❤」


 それなら今度は浅く、亀頭だけを出し入れしてみようか。

 肛門のように全方位を包んでくれるわけじゃないけれど、その分カリへの引っかかりが強く、抜けた時の快楽が電気のように走る。

 これはどちらかというとおれが気持ちいいだけの行為なのだけど、それでもコハクは喘ぎながら瞳を潤ませていた。


「やっ❤これ、だめ❤勃起してしまう❤ちんぽが立てば、あぅ❤中がっ、きつくなってしまうぅ❤❤」

「そこに無理矢理入れたら、きっと気持ちいいよ」

「ううぅぅ~❤こんな大きいちんぽが❤入るわけないだろ❤❤」


 コハクの体の大きさを考えればいけると思うんだけど、怖がっているようだ。確かに今まで勃起したスリットに入れたことってなかったな。


 エッチなお兄さんはもうおしまいのようで、ハの字にゆがんだ目で左右に揺れる。やっぱり、余裕を保てるのは挿入までか。


「もう、もうぅ……❤入れてくれ❤まだ勃起してないうちに❤私のスリットマンコを、っ、ぐちょぐちょにしてっ……❤❤」


 おれの尻をつかみながら奥へと求める龍に、忍耐も底を突きた。目線でうなずき合ったのちに、割れ目の中へちんぽを突っ込んだ。


「ひ、ああああぁぁっ~~❤❤」


 きれいな龍がのけぞりながら叫び、角がシーツに引っかかって破れる音がした。口角からこぼれた唾液がシミとなった布に、裂け目が広がっていく。

 手をおれの背中にまわして、足も絡ませて、コハクはおれをもっと深くへと誘う。

 それならと遠慮なく、陰毛が恥骨に当たるまで腰を進ませることにした。


「はぁ❤入ったぁ❤中が、きっつぅ❤❤」


 大好きホールドを決めながら、たくましい龍はとろけた顔で笑う。

 スリットの中には大蛇のようなドラゴンちんぽが半立ちになっていて、弾力豊かな圧がおれのちんぽにかかっている。血流はかなり豊富なようで、おれのにも負けないくらい熱かった。


「コハクのちんぽ、びくびくしてるね」

「ふはぁ❤勃起する寸前だったんだぞ❤まったく、人をじらしすぎだ❤❤」

「『無効化』をつけるなら今の内だよって教えたかっただけだよ」


 最低出力とはいえ、『愛撫』を直に食らっているんだ。さっきからスリットの中はけいれんしっぱなしなことくらい気づいていた。


「はふはふ❤だかりゃ、問題ないとぉ……いって――」


 言葉の途中でコハクは体を回転させ、おれらは横になったまま向かい合う形になった。

 そうすれば当然ちんぽが内壁をこすって、背中越しに見える尻尾の先端がピンと硬直した。


「ふおおぉおぉ❤❤別に、今日の私は激しく犯されたいわけではないんだ❤このままゆっくりといければそれでいい❤❤」

「本当に寂しかったんだね」

「そうだぞ!❤君が来てくれぬから、号泣する準備をしていたくらいだ」

「ごめんて……」


 確かに『愛撫』さえあれば無理に腰を振らずともいかせるなんて余裕だ。コハクは先ほどしていたまぐわいの延長戦を所望しているようで、硬く抱きしめることで意を汲むことにした。

 胸毛にまた顔をうずめると、頭に顎が乗る。マズルが長いコハクとはこの体勢が一番くっつく面積を大きくできるのだ。


「ああ……❤温かいな❤❤」


 むしろ暑いくらいで、汗ばんでは互いの肌への吸着が強くなる。蒸れた臭気がおれを包んで、ちんぽの収まる気配がない。

 こういうときキスできないのがちょっと不便だ。首筋やおっぱいを舐めることでごまかすけれど、コハクにいたっては長いマズルのせいでどこも舐められない。

 ただ荒い呼吸で快楽を流そうとしていることだけはわかった。


「なあ君、キスをせんか?❤」

「いいよ」


 胸から顔を離して、何度目かもわからない口づけを交わす。もう互いの唾液の味を覚えてしまった。味なんてしないはずなのに、それはとても甘く舌を悦ばせてくれる。

 スリットに収まっていたちんぽを引くつかせると、とがった呼吸が流れ込む。快楽が嬉しかったのだろう、コハクはおれの舌を唇で甘噛みしながら、うっとりとしていた。


「んふぅ❤んっんっ❤君の舌はうまいな❤❤」


 酔っているかのようなまどろみを浮かべながらも、おれの頬をつかむ手はキスを止めるなと発破をかけている。互いに口がふやけるほど唾液にまみれ、接合を繰り返した。


 その間に龍に敷かれてしびれそうになっていた腕を引き抜いて、胸部の下、うつむいた乳首をつまむと断続的な呼気がおれの顔にかかる。


「っふうぅ❤❤❤」


 コハクの乳首はもとから敏感ではあったが、今は『愛撫』のおかげで特に感じやすくなっている。こりこりと指の腹でこねくり回すだけで、スリットの中に水気がたまりだす。


「んおおぉおぉぉぉ❤❤❤おっぱい、たまらんっ❤すごっ、あっあっ❤❤」


 さらに腰をゆっくり回して内壁を刺激してやれば、勃起を封じられたちんぽがどんどん硬くなってきた。体積を増したせいでスリットの内圧が高まって、割れ目に押し付けられる形になる。コハクが力を抜けば、二人のちんぽが勢い良く勃起するだろう。


「おおぉおぉぉぉぉ~~❤❤スリットきっくぅうぅ❤ちんぽ出るうぅ❤」

「硬くなってきたね。乳首もほら、大きくなってる」

「あああぁっはあぁ❤胸のしびれる感覚が、たまらんっ❤んふぅー❤君、ひゃぁ、我慢できなくなったのかぁ?❤❤」

「うん、もう出したい。コハクの中でいいでしょ?」

「も、もも、もちろぉん❤❤スリットマンコにびゅーびゅーだしでぇ❤❤」


 目じりから雫が一筋流れたけど、これは生理的な涙だ。顔はずっとまどろんで幸せそうなまま。


「怖くない?」

「怖いわけがあるか❤君が、こんなに優しく抱いてくれているんだぞっ❤そんなことも、ふぉ❤わからぬほど、鈍感ではないわっ❤❤」


 マズルの先端から舌をのぞかせるコハクに、恐怖は見えない。おれに慣れてくれただけかもしれないけど、とても嬉しかった。


 コハクのちんぽと割れ目に押されて、動かすたびに強い圧が快楽につながる。きっとスリット周りはこんもりと盛り上がっていることだろう。コハクはそれを何とか押さえつけようと、必死にしがみついていた。

 

「もぅ、スリットがきついぃ……❤❤あうぅ❤君、なあ君よ❤私のスリットマンコは気持ちが良いか❤❤」

「うん、きつきつだからちょっと動かすだけでも肉が締まって、はぁっ、すごいよ」

「んふふふっ❤そうだろうとも❤君がここも使いたがるだろうと思ってぇ❤あん❤ちゃんと膣トレもしてたんだ、ぞぉ❤❤」


 だからこんなにもスリットがきついんだ。緩い人だとすでにはじき出されているからね。

 相変わらず、性的な知識好奇心が旺盛すぎる。


「じゃあ腰を振っても大丈夫かな。おれもいきたいし」

「ま、任せておけ❤君にも満足してもらえなければ、エッチなお兄さんの名が廃るというものだ❤❤」


 そんな無理しちゃって。とは思うけど、お言葉に甘えさせてもらおうか。


 カリが引っかかるまで引き抜いて、狙うはちんぽの根元。雄の弱点を前から思いっきり穿った。

 兜合わせではなく内壁をえぐる子作りの動きで、おれはコハクのマンコを犯す。柔らかい肉は衝撃を伝播させて、膨大な快楽を生み出した。


「――ひううぅぅぅぅぅぅ~~~~❤❤❤❤」


 可愛らしい声できつく抱きすくめられ、また胸毛が顔に押し当てられる。おっぱいの肉でみっちりと埋まるから、おれの声は谷間で反響するだけに終わった。


 長くたくましい手足でホールドされたおれにできることは腰を振ることだけ。あと、乳首をいじるくらい。

 できる限り引き抜いては突っ込んで内壁やちんぽを打ち据えながら、肉の芽をつぶす。片方は爪を立て、もう片方は表面をなぞる。緩急付けると、黄金の全身がのたうつように震えてくれた。


「ふおおぉん❤君、それはぁ❤すっごすぎるぅ❤せめて、どっちか❤にぃ❤してぇ❤❤」

「ふごごごぉ」

「両方はきつぅい❤おマンコすぐいってしまう❤んおおぉ❤おっ❤ぎぼちいぃいぃ❤❤❤」


 コハクがなんか言ってるけど、息が苦しいので全力でいかせます。あしからず。

 ぐりぐりとちんぽを押し付け、前立腺をじっくりとなぶる。『愛撫』によって生まれる快楽が弱点を刺激するんだ、たまったものではないだろう。

 叫びながらよだれを振りまくコハクの顎が何度もおれの頭を打った。


「んおおぉおぉ❤おっほぉ❤そこだべっ❤ぎぐぅ❤弱いところなんだ❤❤無理ぃ❤ぐすっ❤無理だと言ってるだろうがぁ~❤❤❤」

「もごぉ!」


 泣かせたいわけじゃないけれど、理性も体も限界なので許して。


 スリットはブシャブシャ汁を噴いていて、おれの恥骨がびしょぬれになっている。『華炎』ほどではないけれど、雌として進化しているのだろう。

 おそらく、ちょっと勃起しかけているコハクのちんぽが亀頭をのぞかせているはずだ。わずかに立たせることで、より根元が狙いやすくなっている。

 ちんぽに当たらなければ内壁はケツマンコとそん色ない柔肉で、熱くとろけそう感覚で包んでくれる。そこを小刻みにぶん殴るとドロッとした液体がかかる感覚がした。たぶん先走りが噴出したんだな。


「ひゃううぅ❤しょこばかりっ❤ずるいぞ❤気持ちいいに、あぅ、決まっておろうがぁ❤❤もう立つっ❤勃起する❤ちんぽが制御できんっ❤❤」


 それは予想できていたことだったので、その前にいかせてしまおう。

 乳首を両方ぎゅうっとつまむと、マンコ肉が硬直してスリットがきつく締め付けてくれる。その隙にまた何度も腰を打ち込んで、おれらの絶頂を合わせようと努力した。

 

 コハクの体からは発情臭が立ち上り、汗ばんだ雄の色香が肌から直に鼻腔へと届いてくる。頭が自由だったら乳首をしゃぶったのだけど、押さえつけられているからしょうがない。

 

「もういいっ!❤私も好きにさせてもらうからなっ❤❤おおぉおぉ❤そろそろっ❤出すぞっ❤ぎもちいぃ❤んふぅ❤ひゃ❤たまらんっ❤❤」


 泣いているのをごまかすためなのか知らないが、語気を強くして言い切られた。鼻をすすってる音で丸わかりなのだけど、指摘するほどこっちにも余裕はない。


 おれがいかせるつもりだと気づいたのか、コハクも腰を振って絶頂に向かって進みだした。

 しがみついてへこへこする姿を見ることはできないが、さぞあさましくなっていることだと思う。まるで肉ディルドのような扱いで、そこにいちゃいちゃという文字は完全に消え去っている。


「んお❤んおぉっ❤本物ちんぽよいぃ❤おマンコ蕩けるううぅぅっ❤❤❤んふふふふ❤ああぁ~~仕事の疲れが吹き飛びそうだ❤もっと❤もっとぉ❤❤」


 こうなれば後は絶頂するだけ。

 おれらは呼吸を合わせ、最奥へと快楽を叩きつける作業に没頭する。


 肛門より硬いスリットは少しほぐれたところできついままだ。勢いよく挿入するたびに中の粘液が押し出され、先走りと混ざってシーツを汚す。

 苦しいくらいきつく抱かれて視界が埋まっているのだが、それでも収縮するスリット肉やおっぱいからコハクが感じている快楽の強さがよくわかる。


「んっおおぉおぉ❤君のちんぽもぉ❤びくんってじだなぁ❤出して出してぇ❤私の中に、たっくさんっ❤❤おおっほぉ❤出してもいいんだ❤からなあぁぁ❤❤❤」


 もうエッチなお兄さんムーブとか頭にないだろうコハクが、スリットを恥骨に押し当てる。要は最奥に出せと言いたいのだろう。割れ目から亀頭がのぞくちんぽが当たる。どうやらすぐにでも勃起してしまいそうだな。


 それならそろそろ終わらせようとおれは絡みつく手足の範囲内で出来る限り腰を引き、とどめの一撃を打ち込んだ。

 亀頭が柔肉をえぐりながら奥へと進み、粘膜に快楽を響かせる。狙いは正確に一点、そこを突けば頭上で息を飲む声がした。


「ふおぉ――」


 さらに『愛撫』の出力を上げると、どんな雄でも一撃でいかせる快楽の暴力が誕生する。おれの金玉もここが子宮だと誤解してくれたようで、尿道からマグマの湧き上がる気配がした。


 きゅうぅと締まるのは肛門と同じ。だが一つ違うのは、ちんぽが完全に勃起すればおれが追い出されるということ。

 二本のちんぽが同時にスリットから勢いよく抜けていく。それが駄目押しとなって、おれらはザーメンを吐き出した。


「んおおおおおおぉぉぉぉぉぉ~~~~❤❤❤❤❤」


 もはやどっちの物かもわからないザーメンがおれらの隙間を埋める。二つのちんぽはぶつかり合いながらのたうち、射精しながら何度も跳ねていく。

 酸欠でぼーっとなった頭に叩き込まれる絶頂は過剰なまでの幸福感でおれを満たす。よだれで胸毛をべとべとにしているのだが、それすらもマーキングに感じられてほの暗い欲が満たされた気がした。


「ああ❤出てる❤こんなにたくさん❤やはりっ❤生ちんぽは最高、だっ❤❤うぇん❤ぐす❤きもちいいよおぉぉぉ~~❤❤❤」


 呼吸すればコハクの雄臭い空気しか入ってこなくて、体の中が作り変えられているようだ。ひょっとしてマーキングされているのはおれの方なのかもしれない。

 なんて思いながらも、あさましく精を吐き出すことに夢中になって止められない。頭上から聞こえる涙交じりの嬌声が一層おれを高ぶらせてやまないのだ。


 視界も匂いも味も、全部コハクになっている。

 臆病でかわいい黄金の龍が醸す雄に、おれは全部が支配されているようだった。


「うえぇ……気持ち、よかったよぉ……❤❤」


 ぼんやりとしている間に射精は終わり、やがてすすり泣く声だけが部屋に響くようになる。

 汗とザーメンまみれの体で抱き合ったまま、龍は愛おしそうに顎をこすりつけてきた。


「今日こそは泣かないって決めたのに……❤君が、あまりに気持ちいいから❤❤」


 それは良いけど本当に酸欠になって来たからはがしてお願い。

 腕をタップしてようやく気付いてくれたのか、ほどなくして新鮮な空気を吸うことができた。でも雄臭いわ。部屋中に充満してる。


「き、君……大丈夫か……すごい顔をしているが……」

「え、そんなに……?」


 慌てて口元をぬぐうと、唾液と胸毛でやばいことになってた。あとちょっと泣いてた。

 

「すまない、力加減も考えず抱きしめてしまった。風呂に入っていくといい、こんな顔で返してはジェルに殴り込みされる」

「……否定できない」


 とか言う割には離してくれないじゃん。早く掃除しないとザーメンがどんどんシーツにしみこんでいくよ。


「んーだが、もうちょっとこのままでいいか? 今度は気を付けるから」

「まあいいけど」


 実際コハクの腕の中は嫌いじゃないのだ。さっきのいちゃつきも心地よかったし。

 射精後の倦怠感を分かち合いながら、緩い時間を一緒に揺蕩うことにした。汗ばんだ体を撫で合って、たまにキスをするだけの緩い時間。ピロートークというには言葉少ないおれらだったけど、その必要もないくらい満ち足りていた。


「これで明日からも頑張れそうだ」

「忙しそうだからね。また来るよ」

「そうしてくれ。できれば……何でもない」


 さっき待つと言ったばかりだから。コハクは言葉を飲みこんでおれにキスをする。

 コハクの手を握ってキスの応酬をしながら、内心申し訳なく思っていた。

 おれはコハクの提案を飲む。だけど、その答えはもうちょっと待ってほしい。


 正直ここまで求められたことなんて元の世界ではなかった。だからいいのではないかと思ってしまう。


 でも、それじゃあ傭兵街に行った時と何も変わらない。求められるがまま流されてばかりじゃ、駄目なんだって理解したから。

 おれは自分の意志でこれだと決めたい。選択肢なんてないも同然だけど、胸を張って選びたいから。


「ああ、そういうことか……」


 コハクの体温を感じながら、この生活がとても素晴らしいとしみじみする。みんなに受けいられているここが、おれの居場所なんだと思える。

 もし帰れたら……おれはそれを選ぶのかな?


 え、帰るって……そういえば……。


「あああああああっ!!」

「ど、どうしたのだ君っ!」

「すっっっっっっっかり忘れてた!!!」


 そうだよ、最初トラックにはねられてここに来た時、なんだかよく分からない神様に頼み事されてたわ! いろいろありすぎて頭から飛んでた!


「え……私もそれは初耳なんだが……神とはつまり……」

「なんか、創世神? みたいな人から」

「……本当に?」

「おおまじ」


 なんかコハクの顔が蒼白になったかと思ったら、さめざめとため息を吐かれた。

 うん、何も言い返せない。


「確かに異世界人が来るときには神託があったこともあると歴史書に書いてあったな。だが、まさか忘れていたとは……」

「だって飛ばされたときは誰も聞いてくれなかったし、おれもそれどころじゃなかったから……」

「まあ転生ともなるとそうだろうな。それを責めるのは酷というものだ。して、何を託されたのだ」

「……つ」

「ふむ?」


 いやね、おれも忘れてたのはそれが絶対不可能だと思ったからなんだよ。

 あ、これ無理だなって思ったから、思考の外だったわけ。おれにできるわけないじゃんって、はなから考えもしてなかった。


 それも無理ないと思うのは、コハクの表情からも感じ取れた。一国の王子ともなると、やっぱり無理だと思うよね。


 おれが託されたこと。今の今まですっかり忘れてたこと。

 それは……。


「世界統一……」


****


 おれがこの世界に飛ばされてくる前、創世神と名乗るそれは言った。


 世界、統一しよっ!

 と、軽々しく。それはもう放課後遊びに行こうっ、みたいなノリで。


 正直死んだショックとかでそれどころじゃなかったし、まだ夢だろうと思ってたから軽く流したんだよね。まさか本当に異世界転生するとは、この時には露ほども信じてなかったから……。

 なんか神様としてはそろそろそういうフェーズが見たいらしい。フェーズって何。


 なんだよ世界統一って。絶対無理だろ。

 おれ一人に何ができるんだよ。って思ってたけど……。


 すでに王子であるコハクとコネができて、地位をもらえるまでになっている。

 おれの一声で最強格であるジェルやゴライザが手伝ってくれるようになった。

 世界征服に乗り気なリブラとかいう仲間もいる。


 ……なんか、できそうな気がしてきたなぁ。いける気がしてきたなぁ。


 えぇ……まじぃ……?

 もしうまくできたら元の世界に返してくれるらしいけど……。

 どーしよっかなぁ……何でここに来て考えることが増えてるんだよ。いや正確には増えているというか忘れてただけとも言えるんだけど。


「どうしたんだ?」


 思考の海に沈んでいたおれを、狼が引っ張り上げてくれた。

 視線を上げればテーブルの向こうでジェルが心配そうにこちらを見ている。どうやら相当物思いに悩んだ顔をしていたらしい。


「おいしくなかったか?」


 そんなことはまったくない。ジェルが選んだ新しいシェフの人はとても料理が上手で、毎日の楽しみになってる。食に、というよりかは娯楽全般に疎いジェルがおれのために用意してくれた食事だ。おいしくないわけがない。

 一口食べれば舌が喜ぶくらいにおいしい。けど、考えることが多くてどうしても食の進みは悪かった。


「聞きたいことがあれば、何でも聞いてくれ。答えられる範囲なら助けになるだろう」

「あのさ……」


 フォークを置いて狼と向かい合う。これは言わなきゃダメなことだと思ったから。

 

「元の世界に帰る方法が見つかった……って言われたらどう思う?」

「…………っ?!」


 狼の手から落ちたフォークが皿とぶつかって硬い音を立てる。丸く見開いた目が驚愕を表現して、口が呆然と空いていた。


「み、見つかったのか……?」

「というか、思い出したって感じなんだけど……」


 おれはここに来るときに何があったのかかいつまんで説明した。

 創世神という神から世界統一を頼まれたこと、達成したら何か叶えてくれる、もとの世界に帰るとかなんでも叶えてくれるらしいこと。

 

 ジェルは相槌を打ちながら、真剣に聞いてくれた。食事が冷めるのも構わず、フォークを置いたまま。

 やがて話が終わってから、少しの間思考をまとめて重々しく吐き出した。


「そうか……創世神様が……そんな頼みごとを……。お前はそれを実行するつもりなのか?」

「いや、頼まれはしたけど、したいわけじゃないから。もう戦いとか嫌だし……」


 今でもたまにゴライザが血の海に沈んでいることを思いだすんだ。そんなことが日常になるのは絶対に嫌だ。


 ジェルならおれの立場だったらどうするだろう。答えを聞きたかった。

 だけど、うだうだ悩んでいるおれにジェルがかけた言葉は、想像よりずっと硬い音を持っていて。


「だというのに、お前はコハク王子の軍に入るかを悩んでいるのか?」

「……あ」


 おれに向けた視線はいつものほんわかした狼のものではなく、糾弾するような鋭いものだった。怒らせたんだと、気づくのはたやすい。


「私はお前の意志を尊重する。だがそれは、甘えを許すという意味ではないのだ。……まあ、お前の境遇を思えば甘やかされてもいいだろう。私はできるだけそうしてきたつもりだ」


 わかっている。ジェルはいつでもおれにやさしかったから。


「それでも、隊長という職には責任が付きまとう。部下の命を預かるだけではない、グリッジがいたころはだいぶ無理難題を押し付けられた。政治というものに対しても、お前は戦わなければならない。不得手な私が言えたことではないかもしれんが、だからこそ、やらねばならぬことの責任を知ってほしい」


 でも、ジェルが隊長をずっと続けられたのは、その無理難題を圧倒的な力でねじ伏せてきたからだ。おれに同じことができるのかと問われると、首を横に振るしかない。


「……私の意見を述べるのなら、お前が隊長になるのは反対だ。お前はまだ経験が足りない。もちろん怪我などしてほしくないという親心があるのは否定しないが、今のままでは……ああ、そうではないな」


 狼が頭を振って口を開きなおす。


「私は怖いのだ。お前が私の庇護できない位置に行くことが。傭兵街に行ったお前が行方不明になったと聞いた時、私は……ひどく自分を恨んだ。自分の政治力のなさを、無力さを。あれだけ守ると誓ったのに……私は何もできなかった」


 拾ったフォークを握り締めて感情を吐露する狼は、沈痛な顔をしていた。おれがコハクの下にいた時、どれだけ落ち込んでいたのだろうか。グリッジに洗脳される隙を与えるくらいだ、相当憔悴していたことは想像に難くない。


「本当のことを言えば、お前には戦いとも政治とも無関係な道を歩んでほしい。創世神様が何と言おうが、コハク王子が何と言おうが、私はお前には幸せでいてほしいのだ……もちろん、これがただの私のわがままだということは承知だ。だからこそ、今まで言わなかった」


 そして、何度か口の開け閉めを繰り返すジェルは葛藤しているようだった。次に言うべき言葉がわかっているのに、それを口に出せないもどかしさがうかがえる。

 それでもジェルはおれの父親だから。言うべきことは言わねばならないという意志があった。


「それでもお前が……帰りたいというのなら、私は全力で応援しよう。それがお前の幸せだというのなら、その意志を……尊重する」


 そんな顔で言わないで。泣きそうになってしまう。

 帰らないよと言うのは簡単だ。だけど、おれの口からは言葉が出なかった。自分の未練がましさが嫌になる。このスキルがあれば、ひょっとしたらって思ってしまったんだ。


 ああ、結局優柔不断なだけで、おれはまだ何も選べていない。

 今までうだうだしていたのは覚悟を決める時間が欲しいだけなんだなと、ようやくおれは気づいたのだった。


 急に飛ばされた異世界は怖かった。でもジェルが守ってくれたし、みんながいてくれた。最初はおれがスキルで無理矢理抱いていたけれど、気づけばそんなものがなくてもそばにいてくれるようになった。

 いろんなことがおれの知らないところで決まって、おれはそれに流されるがまま選んできて、やっと自由を手に入れた。


 だけど、自分で選ぶということは責任が伴うことだ。流れされたばかりじゃなくて、自分で決めたということだから。

 コハクの提案を受け入れる。それはつまり、おれは戦いの場に身を置くことになる。いくらコハクが戦わなくていいと言っても、おれの部下になる人たち、フォグらが戦うことになるんだ。世界統一なんて目指したら、もっと戦いは熾烈になる。


 だからおれは踏ん切りがつかなかったんだ。

 落ち着いて初めて、考えないといけないことが見えてしまった。

 おれはこれ以上みんなを怪我させたくないのに。


「ジェルの、言う通りだね……」


 口に出した言葉は自分が思った以上にかすれていた。


「何も考えてなかった。考えてたつもりだったんだけどなぁ」


 そもそもフォグやらリブラやら、もともとが軍人なんだからその意見になるのも当然じゃん。自分が怪我をしてもいいと思える人たちだ。おれに責任を負わせることもないだろう。ただ、おれが嫌なだけ。聞き取る相手に偏りがありすぎ。


 帰れるかもしれない。なんてこと思い出したくなかった。変な目標作らないでほしいなぁ。


「先は長いんだ。もう少しよく考えてもいい。相談にはいつでも乗るし、お前の意志を尊重する。愛しているよ」


 いつの間にかそばに来ていたジェルが頭を撫でてくれた。その顔はもういつも通り柔らかい、お父さんとしての狼だった。


「うん……」


 それでも、おれの気分は重い。

 自分で決めることの責任。隊長になることの責任。世界統一することの責任。


 ああ、自由って大変だ。


****


「ご主人! ご主人! どうしたんだ、何か心配事でもあるのか?! んなもん俺が全部ぶっ壊してやるわんっ❤」


 ベッドの上でおれをのぞき込む犬は、いかつかった顔をでれでれに蕩けさせて舌を垂らしていた。

 黒に近い灰色の毛皮が作る山のような体躯はでかいという言葉ですら足りないくらいでかい。筋肉と脂肪で膨らみすぎて遠近感がバグっている。おれが知る中で最も巨大な男、それがゴライザだ。

 傭兵街からおれらの国に付いたゴライザは、コハクから譲られた屋敷で戦闘の怪我を癒していた。

 ただ、最強クラスの身体能力保持者なので、回復力も化け物相当。医者の見立ての数倍早い速度で回復し、現在は傭兵街での仕事をしながらこっちに拠点を移している。


「ごめん、ちょっと考え事。大したことじゃないから気にしないで」


 ジェルに諭されてから数日たっても、いまだ答えが出ない。ただ悶々と同じところをぐるぐるしているだけになっていた。


「そうか❤んでも、何かあったらすぐ俺に言えよ❤ご主人のことは、俺がちゃんと守ってやるからな❤❤」

「うん、ありがとう」


 それから砲弾のような体がおれを抱きしめ、全力で頬ずりをかましてきた。おれが隠し村に飛ばされてからあんまり会えてなかったこともあって、かなりのフラストレーションがたまっていたみたいだ。


「ごっしゅじ~~ん❤❤❤会えなくて忠犬は寂しかったんだわんっ❤わんちゃんの寂しがりやおマンコ、いい子いい子してぇ❤❤❤」


 お見舞いに来た瞬間にベッドに引きずり込まれ、こうしてずっと甘えられている。正直ものすごく重いからつらいのだけど、この前ヤードとセックスしててお見舞いに行けなかった手前、止めるのもはばかられた。


 おれの姿を見たとたんに服を脱ぎ捨てて首輪だけになった忠犬だ。しかもプライドがものすごく高いので、こうして二人っきりじゃないと犬として甘えられない。

 今までかまってあげられなかった分まで撫でてあげると、極太ちんぽが嬉しそうに跳ねる。忠犬性癖の祖だから、おれがいないと満足に射精もできてなさそう。


「はふはふ❤あおーん❤❤ご主人のなでなで好きぃ❤❤❤ご主人~俺、金玉パンパンなんだぜ❤ご主人にたっくさん褒めてもらいたくて、ずっとオナ禁してたんだぞ❤❤」

「そっか。約束したもんね、いい子いい子するって」

「おうっ❤❤」


 特注の巨大ベッドの上で降参のポーズで腹を見せるゴライザ。これで『鉄塊拳』の二つ名持ちで、狂犬と言われてるって聞かされても信じられないよね。

 その股間では先走りをおもらしのようにこぼすちんぽと、でっぷりとした玉がゴロゴロとしていた。早く射精したくてたまらないようで、よく見たら乳首もビン立ちだった。


 丸々とでかい山のような腹を撫でてあげると、忠犬の目が細められる。どうやらご満悦のようだ。よくこの性癖を抱えて今まで生きてこれたよなぁ。

 手入れされた毛皮は艶もよく、整えられている。傷跡も全然見えないし、本当にすごい回復力だ。


 あの血まみれの姿からよくここまで治ってくれたと、安堵にため息がこぼれた。


「本当によかった。あのまま死んじゃうんじゃないかと思ったよ……」

「俺がご主人を残して死ぬわけねえだろ❤ご主人が生きろと言えば、どんな逆境でだって生存してみせるぜ❤❤」

「そうだね、ゴライザは強いからね」

「当たり前だ❤❤俺はご主人の優秀なわんちゃんだぜ❤」


 降参ポーズで言われても説得力ないけれど、実際最強クラスに強いからなぁ。

 今では傷跡もなくなるほどに回復して、見た目にはまるで分らない。毛皮がそろうのも早いとか、便利すぎるな。


 それでも、おれは盛り上がったお腹を抱きしめる。無事でよかった。心臓の音がこんなにも嬉しい。


「ご主人、泣いてるのか?」

「ううん。ちょっと嬉しくなっただけ。生きてくれてありがとう」

「へへ、こんなに愛してくれるご主人を持って、俺は幸せ者だ❤でもよ、挙兵も戦闘も、俺がしたくてやったんだ❤ご主人が気にすることなんてねえんだぜ❤❤」

「ゴライザは強いね。おれはまだ隊長をやるかどうか悩んでるよ。誰にも傷付いてほしくないからさ。向いてないんじゃないかなって」

「んなこたぁねえよ」


 突然大きな掌で顎をわしづかみにされたかと思えば、顔中を舐めまわされる。犬らしい表現ではあるが、なんで急にそんなことを?


「大方ジェルに余計なことでも言われたんだろ。けっ、あの過保護野郎が」

「そ、そうだけど……」

「でもなあご主人。俺は知ってんだ。ご主人が危険を冒して俺を助けに来てくれたからこそ、俺は助かったってな。俺が生きてるのは、ご主人のおかげなんだ」

「治したのはモウダンでおれじゃないよ」

「二人のおかげだよ。ご主人が精力をくれたからモウダンの治療が間に合ったんだ。それに、時間を稼ぐために『影に満ちた鏡』相手に立ちふさがっただろ。俺はちゃんと見てたぜ」


 そして、深い口づけをするゴライザは目を細めて笑う。忠犬として蕩けた表情ではなく、牙をにぃっとむいた頼もしい笑みだ。


「ご主人はやるときはやるんだよ。戦闘経験なんかねえってのに、真っ向から立ち向かっていった。んなの、スキルが強いからってできることじゃねえよ。そんなご主人だからこそ、俺は大好きなんだ。ジェルの野郎が何と言おうが、ご主人ならできると俺は信じてるぞ」

「ゴライザ……」

「それに、俺のために怒ってくれたご主人、さいっこうにかっこよかったぜ❤」


 あの時はゴライザを助けたくて無我夢中だった。おれが間に合っていれば怪我なんてしなかったのにと、後悔もした。

 それでもゴライザはこうしておれに甘えてくる。おれの記憶にある血だまりが、ちょっとだけ小さくなった気がした。

 だって、目の前にはこんなに元気なゴライザがいるじゃないか。


「そっか……おれもできるんだ……」


 ゴライザを救えたのは、おれが戦いの場にいたからこそできたことだ。

 だったらおれがすべきことは一つしかなかった。おれにしかできないこと、あるじゃん。

 それに気づかせてくれたゴライザに感謝しないと。


「じゃあいい子いい子してあげるよ」

「本当か❤ありがとうなご主人~~❤❤わんわん❤❤」


 もう一度お腹を出したポーズをして尻尾を振れば、いきり立ったちんぽが呼応して汁を噴く。完全に射精しないと収まらなさそうだなぁ。

 とにかく両手を使って腹の山を撫でまわしてやれば、どんどん先走りが濃くなっていく。いくら『愛撫』があるとはいえ、感じすぎでしょ。

 

「ほーらわしゃわしゃー」

「わふ~ん❤わん❤わん~❤気持ちいぃわん❤❤俺ぇ、ご主人のなでなでだーいすきぃ❤❤次はちんちんもなでなでしてほしいわんっ❤」


 人として駄目なくらい蕩けた顔してる。これでもジェルと同じくらい強いんだから、人ってわからないなぁ。

 でも世界統一するには絶対欲しい人材であることは間違いない。


「世界統一かぁ……」思わずこぼした言葉を、忠犬はちゃんと拾った。

「ん、なんだご主人。世界でも欲しいのか?」

「そういうわけじゃ……あるかもしれないけど」

「それなら俺に任せとけ❤俺がご主人の欲しいもの、ぜーんぶ取ってきてやるよ❤❤」

「いやー別にそこまで無理させられないよ。また怪我されたらいやだもん」

「ごーしゅじん❤」


 がばっと体を反転させた巨体が、おれに覆いかぶさって来た。影を作る顔は笑ってはいるけれど、牙だけは爛々と輝いている。

 その威圧感を前に、おれができるのは唾を飲みこむことだけだった。


「俺はご主人に甘やかされて優しくされるのは大好きだけどよ❤これでも『鉄塊拳』としてのプライドはちゃんと持ってるんだ❤んな室内犬みてぇな甘っちょろい扱いなんてしなくていいんだぜ❤❤」

「それはわかってるけど……別におれがしたいわけじゃないから。ただ、そうすれば元の世界に帰れるかもってだけだし……」

「わふっ?!?!」


 あ、帰るって言っちゃった。

 案の定ゴライザは耳をへたらせて鼻をひすひすと鳴らし始めてしまった。その姿は完全に捨て犬のようで、おれの良心がかなり痛んだ。


「ご、ご主人は帰っちまうのか……俺も一緒だよな、なあ?」

「ゴライザ……あのね……」

「せっかくこうして所属も同じにして、これから忠犬として優秀なわんちゃんの姿を見せられると思ったのに……」

「あの……」

「ご主人~~~~っ! 帰らねえでくれよぉ! 頼む! ここにいてくれ!」


 体重三桁以上のデカ犬に飛びかかられると普通に死ぬ。一応遠慮してくれているけど、今回はその遠慮が薄いから衝撃が結構大きかったぞ。

 だけどこんなストレートに言われるとどうしたって躊躇してしまう。正直帰りたいかと言われるとそんなことも、まあ、ないし。


「帰らないよ」


 だから、かわいい犬の頭を撫でながらおれはなだめるのだ。


「本当か?」

「うん、みんなと離れるのはおれだっていやだからさ」


 それで旅もあきらめたくらいだ。

 元の世界に彼らはいない。もう会えなくなるんだ。


「ご、ご、ご主人~~っ!!」


 感極まってちぎれんばかりに尻尾を振った忠犬が思いっきり抱き着いてきた。コハクより力が強いくせにおっぱいもでかいから、完全に空気の入り込む余地がない。窒息するぞ。

 ふわふわの毛皮にむちむちの肉がおれを沈めていく。さすがに苦しい!


「よかったぁ! これからも、俺はご主人にいい子いい子されたりお散歩したりできるってことだなぁ❤❤俺の忠犬おマンコはご主人にしか使わせたくねぇから、ずっとついて行くぜ❤❤」


 それはありがたい話だけど、そろそろおれの救難信号に気づいて。さっきからずっと腕を叩いてるんだ。こいつ、防御力が高すぎて何も感じてねえ!

 もっと早くに見舞いに行けばよかった。そうすればゴライザもここまで寂しがることはなかっただろうに。


 でもそれはそれとして、死ぬから早くほどいて!


 危うく意識が飛びそうになったけど、すんでのところで救世主がやって来た。


「ゴライザ、彼が来ているとのことだが……ああ、やっぱりここだったか」


 バカでかい角を持つ黒牛、トリドスはデカパイと巨根を見せびらかすようなホットパンツとぴっちりしたシャツだけを羽織っている。一応元ギルドマスターで地位ある人だったが、今は退職してこちらの要職に就く予定だ。

 というか、部屋着こんなスケベでいいの。この世界の貴族ってもっと優雅なバスローブとかだと思ってた。


 規格外の角を支える肩幅に、歴戦の武勇を感じさせる無数の傷跡。

 その姿は勇猛果敢な武人そのものなのだが、内面は雄らしさに興奮する雌になっている。レースの下着で仮性包茎の極太ソーセージを包み、雄を誘惑する淫魔へと成長していた。

 ……まあおれのせいなのだけど。なまじ元傭兵街の最強だっただけにスキル習得も尋常じゃなく早いんだよなぁ。今はスキルの弊害で淫乱になった兵たちの相手を自主的に努めてくれている。


「ちっ」忠犬から狂犬に戻ったゴライザが特大の舌打ちをかます。「人の部屋に無遠慮に入ってくるとは、いい度胸じゃねえか。互いのプライベートは不可侵、それが約束だったはずだが?」

「お゛ほ❤❤」


 鋭い眼光に肉付きのいい腿を擦り合わせる黒牛。狂犬たるゴライザの雄々しさに、マンコがうずいているのだろう。元は敵対していた二人だけど、同じ立場として結構打ち解けている……らしい。

 傭兵街を拠点としていたトリドスもゴライザと同じようにここを一時の宿としている。正直十分でかい屋敷だと思うんだけど、どうやら二人は満足できないようで新しい物件を探しているらしい。まあ、ゴライザの家ってここよりでかかったしね。


 確かによく考えると雄が好きなトリドスにとってゴライザはその権化ともいえる。忠犬を隠している以上、それはしょうがない。けど、今全裸に首輪だけなんだけどいいのか。


「ゴホン……すまない。実は相談したいことがあってね。急いで来てしまった。気を害したなら謝ろう」

「まあいい。今日の俺は気分がいいんだ。そのくらいの粗相は許してやるさ……せっかくのご主人とのふれあいだったってのによ」


 後半はおれにしか聞こえなかった。さっきの狂乱を思えばもっとかまってあげたほうがよかったかな。また近いうちに遊びに行こう。


「おれに?」

「ああ。近々淫乱な雄をまとめる部隊を作るという話を聞いていてね、よければ私をそこに入れてくれないだろうかと、お願いしに来たんだ」


 鬼がいる軍勢が勝つとまで言わしめたおとぎ話の主、『戦勝鬼』がおれの下に来たいと言っている。『華炎』も来ると考えれば、すでに戦力がやばいことになってそう。


「本当ならゴライザ君の部隊の副隊長らへんになるだろうと思っていたのだが、私のような雌は君の所でならより活用できるはずだ」


 黒牛がシャツのボタンを外せば、ボルンと弾むようにレースに包まれた爆乳が飛び出してきた。トリドスの胸は前線を退いたために乗った薄い脂肪によって、とろけるような巨乳になっている。霜降りのような柔らかさが手を悦ばせる雌の胸だ。


「ふふふ❤もとはといえば私を女の子にしたのは君なのだからね❤それはもう責任を取ってもらわないといけないだろ?❤❤」

「う、おおぉ……」

 

 谷間を見せつけて微笑むトリドスに圧倒されて、鼻の下が伸び切った声が出た。

 なんだこのドスケベなオーラは。母性と性欲が混ざってやばいことになってる。いや、まじで何? おれの知らない間に、みんな成長しすぎじゃない?


 ギルド長という冒険者を育成する立場に長くいたおかげか、もとからの世話焼き性分なのかわからないが、包容力が突き抜けている。トリドスを落とした時にコハクの所に飛ばされたから、その変性を直に確認していなかったんだ。

 まさかこんな母性の塊になっていたとは……昔は鬼の名を持つバーサーカーだったという話なのに……。

 これ、リンドンにばれたらフォグから鞍替えするのでは?


「ん? 確かに、リンドン君からはそのうち正式にママハーレムに招待すると言われていたな。なんでも、後はフォグ君やファンダル君、それにジェル君も狙っているそうだよ」

「納得の人選過ぎる……」


 そいつらはおれが知る中でも包容力四天王だよ。その四人に囲まれたらおれも赤子に戻る自信があるわ。

 リンドンがここに研究室を構えたがってる理由って、スキルの研究とかではなくこいつら目当てなのでは……。そうだとしても何も不思議じゃないな。


「おい」


 そこに割り込んでくるものすごく不機嫌そうなゴライザの声。

 見ると、黒牛を射殺さんばかりに鋭くにらみつけていた。慣れてきたとはいえ、近距離は無理。吐くぞ。

 

「てめぇ……聞いてりゃ好き勝手言いやがって。抜け駆けとはいい度胸じゃねえか」

「抜け駆け、というかギルド長の職を辞して来ているのだから、新たなポストは必要だという話だろう? 君は傭兵街の代表として少なくとも隊長以上の席を取らねば、功績に対して扱いが悪いと傭兵街でもこの国でも不満が出るから難しいだろうが」


 ああ、確かに。挙兵したのがゴライザである以上、ある程度の地位につかないといけないんだ。そうじゃないと傭兵街のみんな、主にゴライザの部下であるアリギラドやスレイスは納得しない。主を軽んじられていると取られる。


 だから、ゴライザはおれの所に来たいって言わないんだ。この忠犬なら真っ先に言いそうだったのに。そこら辺の分別がちゃんとあるから、派閥のトップをやれてたんだな。

 まあ、嫉妬からの殺気はバシバシに感じるけど。


 吐きそうになるほどの重圧を意にも返さず、トリドスはおれの目線におっぱいを合わせて震わせる。柔らかさとは裏腹に、この胸は筋肉で出来ているからこんな芸当も朝飯前だった。


「『戦勝鬼』にして元ギルド長だ。仕事はできると自負しているよ。新設部隊の副隊長など、うってつけではないかね?❤」


 フェロモンの洪水に当てられて、思わずうなずきそうになってしまった。母性というかエッチなお姉さんみたい。いやなんで角がでかすぎるガチムチ巨体の牛にお姉さん味を感じないといけないんだ。


「お姉さんという年ではないが、体はまだ若いものには負けんよ。それでどうだろうか?」

「えっと……実はフォグが手伝ってくれるって話になってて……」

「ああ、フォグ君か。それなら安心だ。でも、君が隊長という職に慣れていないというのなら、副隊長が二人いてもいいとは思わないかい?」


 さすがの弁に、おれは同意も否定もしかねてしまう。言ってることはもっともだけど、それを決めるのはおれじゃない気がする。


「君がコハク王子に進言すればおそらく通るはずだ。王子からは王都のギルド支部の要職についてはどうかと言われたが、ギルドの意向を無視した私を据えれば衝突が表面化しやすくなるだろう?」

「だから、おれのところがいいと? でも、ギルドって王の権力とか効くの? 確か世界規模な組織じゃなかったっけ」

「私は『戦勝鬼』だぞ」


 その一言で解決できるのすごいわ。

 にこりとした微笑みで当然のように言われれば、返す言葉もない。傷と角が目立つこわもてなのに、笑うと柔らかい印象を受ける。

 眼前にまでおっぱいを差し出されて思わず言葉が弱気になってしまう。フォグとかゴライザのムチムチ巨乳を見慣れてるのに、トリドスのはなんか色気がすごいんだよな。レースのブラのせいかも。


「はんっ」見かねた狂犬が吐き捨てる。「トリドス派がこの国に対して敵対的だったことを思えば、お前を要職に据えることでギルドをけん制したいって思惑だろ。お前が目を光らせていれば勝手なことはできないからな」

「だが、傭兵街ならいざ知らず、王都はすでに権力の構造ができている。たとえ要職に就けたとしても、それ以上の出世ができるとは思えんからな。かわいい冒険者を育成することができんのなら、君の所の方がいいのだ」


 あ、なるほど。もともと後進の育成目当てでギルド長してたのか。それならこの包容力も納得だ。

 それに、こんなフェロモンの塊みたいな人をギルドに入れたら風紀が乱れるでしょ。コハクのなんちゃってキャラとは違う、ガチのエッチなお姉さんだぞ。

 

 でも確かに、おれが隊長になるのなら二人は補佐が欲しいな。フォグ一人に仕事が集中するのもかわいそうだし。おれも頑張るけど、できる気がしない……

 トリドスなら職歴も実力も申し分ないだろうし、ありだな。


「それに娼館もするなら絶対いたほうがいいな……」

「なるほど、膨らんだ軍費をそうやって調達するつもりなのか。それならなおのこと、私がいたほうがいいだろ?❤ギルドの運営で培った手腕はきっと役に立つ❤」


 あの……話すたびに眼前のおっぱい弾ませるのなんなの。あとなんか甘いにおいするし。こいつ、谷間に香水仕込んでやがるぞ。しかも女性向けの甘いやつ!

 へたすればキスしてきそうなスケベっぷりだが、ゴライザが牙をむいてけん制してるおかげでおれの股間の平穏が保たれている。そうじゃなかったら絶対やってた。


 感謝の意を込めて忠犬の頭を撫でると、口元がむずむずしだした。でれそうになるのを必死に抑えてるっぽいな。ごめん。


「ふんっ。こいつに迷惑をかけたら、俺が貴様の喉笛を噛みちぎってやるから覚悟しとけよ」

「肝に銘じておこう」


 抱き着いたままのゴライザに、肉薄するトリドス。暑苦しさより性欲が沸き上がってくる時点で、おれはだいぶ毒されてきている。この世界に来る前の性癖なんて、全然思い出せない。

 どんどんと外堀が埋められていくのを感じる。確かに考えれば考えるほど断る理由が消えていく。こうしていろんな人と話すと、より離れがたくなっちゃう。

 みんなの思い描く未来には、おれがいる。それを一層実感できるから、ここにいたいと思ってしまう。守りたいって思えるんだ。

 今までに出会った人みんなが、おれがいる未来を語ってくれた。なんでもっと早く気付かなかったのだろう。みんな、おれに帰ってほしくないって思ってるんだ。


 そうだよね、おれはもうここに居場所があるんだ。今更どこに行く必要がある。

 それに戻ってもこいつらみたいなでかい雄がいないし、不完全燃焼になるのがわかり切ってる。毛皮や鱗の感触がないなんて、耐えられないぞ。


「うーん、やっぱり帰らなくてもいいや」


 そばで聞いていたぎゅっとゴライザの手が抱擁を強くした。我慢できなくなったのか、口元が中途半端にニヤいて凶悪さに拍車がかかってるよ。嬉しさを隠すためだっていうのがわかってるからいいけど、知らなかったら怖くて逃げだしてる。


「ん、どうしたんだい?」

「なんでもない。どうなるのか保証はできないけど、コハクに頼んでみるよ」

「頼んだ。きっと後悔させないと約束しよう❤」


 そう言いながらトリドスも嬉しそうに笑う。

 部屋は暑苦しいのにやさしくて、つられておれも笑ってしまう。

 せっかくだから、二人とエッチしてもいいだろう。ゴライザは隠したがっているから別々に、だけど。


「ねえ、ゴライザ」

「どうしたご主人」

「もう絶対怪我とかさせないから」


 そうだよね。怪我するのが嫌だったら、おれがなんとかすればいいんだ。

 こんなとても簡単なこと、どうして考えなかったんだろう。


 おれは自分にできることをすればいいんだ。


****


 そしてまた診断の日。おれはみんなの様子をまとめてコハクに報告に行くところだった。

 今日は提案を受け入れるって話もしたかったから、ちょっとだけ緊張してる。


 そんなおれの向こうにはサメと狼がいる。どうやら入れ違いに報告を済ませてきたようだ。『竜の爪』の隊長と副隊長はこちらに気づいて口角を上げてくれた。


「今日もご苦労様……コハク王子と話しをするのだろ?」

「ようやく決めたわけだ」


 ジェルとヤードは軍服姿をしていて、まだ勤務中なことがうかがえる。謹慎の解けたジェルとこうして王宮で会うのは初めてかも。並べてみると、ジェルの方がちょっと豪華なのは隊長だからだろう。

 話振りからいって、おれが来たってことでわざわざ待っていたみたいだ。一応ジェルには今日コハクと話すと伝えてあるから、待つのは簡単だっただろう。


「どうしても気になってね。お前の意志を折ろうというわけじゃないんだ」

「わかってるよ。提案を受けようと思ってるってちゃんとコハクに話をしてくるから」

「お前がそれでいいのなら私は何も言わない。お前が悩んで出した答えだ、私は応援するとも」

「ありがとう」


 ジェルならそう言ってくれると思ってた。

 どうやらもう怒っているわけではなさそうだけど、なんかちょっと緊張する。

 そうして二人して沈黙を流していたせいだろう。サメから呆れ交じりの声が飛んできた。


「あのさぁ……そのくらい、ちゃんと話をつけておけって思うのはおれだけか? お前はいつもジェル様と家で何を話してるんだ」

「うっ」


 突然の正論が胸に突き刺さる。最近はちょっと……ジェルと話すのを避けてたところがあったから。


「はあ」ものすごいジト目でこちらを見るヤード。「なんでお前らっていっつも無駄な遠慮して会話してんだろうな」


 田舎で多くの兄弟と暮らしてきたサメからすれば、おれらの関係が遠慮しがちに見えてもしょうがない。

 ただその言葉はおれだけじゃなくってジェルにも効果抜群なんだ。狼は耳を伏せて申し訳なさそうにつぶやいた。


「確かに、ヤードの言う通りだ。私はまだ父として何を話していいのか迷っている段階だ。お前からいうまで何もできない父親ですまない」

「あージェル様も、もっと遠慮せず話してもいいと思いますよ。怒ったらちょっと避けられて悲しいとか、おれに言ってる場合じゃねえでしょ」

「うぅ……」


 あ、そうだったんだ、確かにジェルも少しよそよそしかったかもしれない。互いに怒ったりとか初めてだったから、仲直りのやり方がわからなかったんだ。


「ごめんね、ジェル」だからおれから言わないと。「ジェルはただおれのことを心配してくれただけだってのはわかってるよ」

「私こそ、すまなかった。もう少し言いようがあっただろうに……」

「ジェルは全然悪くないよ! おれが本当に考えなしだったってだけ!」

「いや……」


 とか押し問答に発展しそうになったところを、サメがバッサリ切る。フォグではできない芸当だから、案外副隊長向いてるんじゃないかな。


「んで」サメが心配そうに口火を切る。「新設部隊の隊長とか大丈夫なのか? コハク王子がエロだけでいいとは言っても、他にもすることは絶対にあるんだぞ」

「わかってるよ。でも、フォグとトリドスが来たいって言ってくれたから、副隊長を二人体制にできないかなって相談するつもりなんだ」

「……行きたいって言えば行けるのかよ」


 なんだか悔しそうに歯噛みするヤードだけど、どうしたんだろう。確かに同じ副隊長ではあるけど、『竜の爪』の方が歴史も深いし名声も高い。これからせっかくの副隊長で、ゆくゆくは隊長だって目指せるのに。


「別に、大したことじゃねえよ。ただ、そういうのも悪くねえかもって思っただけだ。でもまあ、確かに副隊長を二人にするのは良い考えだ。お前の補佐は多ければ多いほどいい」

「一理ある。だが、お前の所も『竜の爪』と同じ王家直属になるというのなら、これから仕事での交流も増えるだろうし、何かあれば話を聞けるぞ」


 言われてみればポジション的にはジェルと同じなのか。


「ふん、だから隊が違えども、接点は増えるわけだ。困ったことがあれば、いつでも相談に来いよ」

「……っ! そ、そうだな。困ったらいつでもヤードに言うといい。彼はとても頼りになる男だからなっ!」


 え、急にどうしたの。いつもなら自分に相談しろって言うのに。

 明らかな挙動不審なんだけどなんだ、ヤードが何か言ったのか。と思ってサメを見ると、ものすごくげんなりした顔をしていた。


「……ほのめかしがへたくそすぎる。やっぱりジェル様に思い人のことを言うのは早計だったかもしれねぇ」

「ねえ、どうしたの?」

「なんでもねえよぉ! ジェル様な事は気にするな。息子との付き合い方に悩んでるだけだから」

「はあ……」


 これも会話が足りないせいなのだろうか。帰ったらもっとジェルと話そう。おれは心に決める。


「いや、あの子が好きなのはフォグ……だとしたら私はどっちを応援すれば……!」

「お願いですからもう黙っててください! 誰も幸せにならねえ!」


 ぶつぶつ悩み始めたジェルをヤードが叱咤し始めた……。フォグの時は気色悪いキャラを押したコントだったけど、こっちは普通のボケとツッコミって趣がある。王家直属の親衛隊『竜の爪』がそれでいいのかとは思うが、ジェルがトップの時点でしょうがない。

 前まではめちゃくちゃ甘いフォグが副隊長だったけど、仕事はバリバリにできたからヤードは大変だ。疲れたらいつでもエッチしに来ていいからね。


「そーさせてもらう。なんでこの仕事量をさばけてたんだってくらいやばいからな……ジェル様にも頑張ってもらいますからね! おれはフォグ程仕事ができないんですから!」


 これじゃあどっちが上司かわかったもんじゃない。ひょっとして、ジェルって仕事あんまりできないタイプ……?


「というよりかは、隊員の福利厚生を考えてできない分を明日にまわすタイプだ。今まではフォグが高速でさばいてたからよかったんだが……おれら傭兵街に行っている間に、えぐいほど溜まってなぁ」

「うわぁ理想の上司じゃん」


 しかも残ったのがほんわかした面子ばかりだと、誰も異を唱えたりもしないだろうし。

 何でも屋みたいな扱いの部隊だと、雑に仕事を割り振られて大変だ。

 

「まあ大半がグリッジのいやがらせでもあったから、もうちょっと落ち着くとは思うがな」

「あー……だからフォグが必死にさばいてたのか……」


 責任感じてたんだろうなぁ。おれのところではゆっくり仕事させてあげたい。


「それで、後悔はないか?」


 念押しの確認として、ジェルが聞いてくる。その目は優しくて、おれは安心しなうなずくことができた。


「うん。決めたから大丈夫」

「そうか」


 確かにヤードの言う通り、おれとジェルには会話が足りてないかもしれない。

 ジェルが何でも受け入れてくれるってわかっていたから、自分で決めてしまった。

 遅いかもしれないけど、今からでも聞いてほしい。


「あのさ」


 王宮の冷たい廊下におれの声が響く。

 自分の気持ちを暴露するなんてこと、慣れてないから恥ずかしいな。

 けど、二人はただおれの言葉を待ってくれているから、ちゃんと言いたいと思った。


 たくさん考えたんだ。帰れるかもしれないってことも、旅に出るってことも。

 でも、結局どこに行ったって、みんながいないとだめなんだって気づいた。

 おれはジェルが好きだし、ヤードも好きだよ。フォグもコハクもみんな好き。

 だから、みんなのいるところがおれの居場所でありたい。みんなにとっておれもそうありたいと思ってる。

 帰りたくなんてない。おれは、ここにいたい。

 

 おれはただ、みんなといたいだけなんだ。コハクは依存って言ったけど、おれもそう。誰もおれのことを知らない異世界で出来た大事なつながり。おれはそれに依存してる。

 今日も明日も明後日も、ずっと一緒にいたい。みんながとてもやさしいから、つい甘やかされてしまっている。

 隊長の責任も不安だし、誰かが怪我するかもなんて今でも怖いよ。

 それでも、そんなおれでも役に立てるのなら、それを精いっぱい頑張りたい。コハクがその方法をくれるなら、乗ってみたいんだ。


 だっておれは、この世界で生きていくって決めたから。

 

「…………」

「…………」


 口に出していくたびに、ぐちゃぐちゃになった感情がまとまっていくのを感じる。

 ジェルに面と向かって言うのがすごく恥ずかしくて避けてたけど、こうして言ってしまえばとてもすっきりする。もっと早く話をしておけばよかった。


 言葉が詰まって、続きが出ない。気づくと目に熱い水滴がたまっていることに気づいた。

 これまでいろんなことがあった。異世界に飛ばされたってだけでもびっくりなのに、落ち着いてたのは最初だけで、傭兵街に行ってからあわただしい日々を過ごしていた。

 フォグがグリッジとの確執を乗り越えたり、ゴライザが死にかけたり。目を閉じれば本当にいろんなことが浮かび上がってくる。


 覚悟を決めるまで、時間がかかったなぁ。


 気が付けば、おれはジェルに抱きしめられていた。綺麗に整えられた軍服に顔を押し付けて、労るように頭を撫でてくれる。


「お前が私の息子であることを誇りに思う」


 腕の隙間から頷くヤードもちょっと涙ぐんで頷いている。意地っ張りだけど優しいサメが泣いてるところなんて初めて見た。おれが帰るかもって、心配してたのかな。


「たとえ帰ることを選んだとしても、それがお前の意志なら尊重しようと思っていた。だが、こうしてここで生きていくと言ってくれて、本当に嬉しいんだ。家族になりたいと言ってくれて、残ってくれて、本当にありがとう……」


 ジェルの硬い抱擁はもう離さないと語ってくれる。すれ違っているけど、おれらはようやく家族になれた。今更帰りたいとは思わないよ。

 抱き返そうと思った手がすべらかなものに止められる。目線をずらすと、恥ずかしそうなヤードが握っているのが見えた。


「……よかった。お前がいなくなっちまったら、おれの目標が無くなっちまうからな。責任取るって言っただろうが……」

「じゃあそう言って迫ってもよかったのに」

「できるかよ、そんなの。お前が帰りたいって言ったら誰が止められるんだ。でも、本当によかった……」


 『愛撫』で触るのも大変なのに、サメは気にせず地肌でおれを確かめる。身を焦がす快楽より、おれを感じることを選んでくれたみたい。

 

 ああ、やっぱり残るって決心してよかったな。ジェルとヤードの暖かさを感じると、特にそう思う。


 少しして、鼻をすすりながらジェルが離れていく。安堵が瞳を濡らしているけれど、気にすることなく笑ってくれた。


「それなら、それをコハク王子にも伝えておいで。あの方もお前が帰ってしまうのではないかと大層心配していた」

「うん。でも、世界統一しないといけないから、そんな現実味あるわけじゃないのに、大げさだよ……」

「お前がしたければ私が何とかしていたさ」


 ……さすが最強。当然のように言ってくれる。

 ひょっとして、だから神様もおれをここに飛ばしたのかもしれない。最強を手玉に取って、世界統一をしやすくするためにって。

 でも残念なことに、おれはジェルに傷ついてほしくないんだ。世界大戦なんて望んでない。


 弱虫って馬鹿にされそうだけど、死にかけたゴライザの姿が頭から離れないんだ。

 ゴライザが血の海に沈んでいるのを見た時、鼓動が止まりそうだった。それを繰り返すなんて絶対いやだ。ギリギリ助かったからいいけど、次は駄目かもしれない。できれば二度とこんな感情を抱きたくはない。


 多分コハクのところに行ったらそこらへんも話を聞かれそうだな。創世神の頼み事とか世界にとっても一大事だろうから。


 おれの両手が二人に握られて、励ましてくれた。子ども扱いしすぎだと思うけれど、やっぱり強くなれた気がする。自分の選択に胸を張れるよ。ありがとう。


「どういたしまして。私はいつでも、お前の味方だ」

「別に、お前が望めばいつだって助けてやるさ。だから、おれの隣にいろよ」


 そうしておれらは前に進む。いろいろあったけど、ここがおれの居場所だ。

 これからどうなるのかわからないけど、少なくとも今は。


 みんなと一緒に歩いていくことにした。


****


「――――というわけで、これから新しい部隊が稼働する……します」


 晴天の下、おれの戸惑った声が突き抜けていく。たくましい肉の壁を前に、新たな一歩を踏み出そうとしていながらもビビっているのだ。


「いつも通りでいいだろ。お前の知ってる奴が多いんだからさ。ほら、リラックスリラックス」


 隣にいるフォグがニヤニヤしながら補佐してくれるが、それで落ち着けたら世話ないんだよ!


「まあまあ、誰であれ初めては緊張するものだ。君は今、素晴らしい一歩を踏み出したんだ。胸を張るといい」


 逆側にいるトリドスがにこにこしながら背中をさすってくれる。それだけで落ち着くから不思議だ、多分そういうスキルでも持ってるんだと思う。あと、甘さ控えめの落ち着いた香水も、鎮静に一役買ってそう。


 今日はおれがメインとなるエッチな部隊が発足する日。

 コハクの直轄として、エロスキルで兵を育成しながらお金を稼ぐことが目的の、世界広しといえどもここにしかないであろう部隊だ。


 でかすぎる角と肩幅を持ちながら母性多めの笑顔で立っているトリドスだが、ここにいたるまで結構大変だったんだ。

 副隊長を二人にすると発表した瞬間、激戦が勃発した。

 モウダンやノインが立候補し、挙句の果てにはリブラやウィザロンも首を突っ込みだした。全員が強いしエロいとくれば、もはや収拾なんてつかない。コハクも頭を悩ませ、なぜか就任が確定しているフォグと一緒にいろいろ悩んだものだ。


 結局、発案者ということや傭兵街との交流面、実績や力量を踏まえた結果トリドスが就任したというわけ。

 そもそもギルド長をやめてまで来てるから、ここに席を用意しないとかわいそうだしね。それに、傭兵街にも娼館があるからツテのある人の方がいいし。

 リブラは元帥とかの仕事がでかすぎて端から除外されてた。それにグリッジがやらかした後始末をさせるうえでも、地位も能力も申し分ないから動かせないってコハクも言ってたしね。労働環境が結構改善されたってヤードが喜んでたよ。本人はぶち切れてたけど。


「ごほん」改めてここにいる全員を見渡して。「じゃあ普段通りにしゃべるね。ここへの異動はこちらからのスカウトや本人の希望がメインで、そこまで人数が多いわけじゃないことは周りを見てもらったらすぐにわかると思う」


 白竜宮というとても大きな宮殿をおれらだけで使うのはもったいない。そう思わせるほど規模の小さな部隊だ。それでも『華炎』の兄弟や『戦勝鬼』、それとなぜかついて来たモウダンも含めて、戦力としては相当強い。

 全員鍛え上げた肉体を持っているけれど、エッチなことが大好きな淫乱ばかり。これから彼らをエロで育てあげ、立派な兵にすることが目的だ。その過程で娼館とか使ってお金を稼ぐけど、それもコハクの命令だから。


「普段の仕事は戦闘訓練とエッチなことをして、より強くなること。アドバイザーにリンドンを呼んでいるから、効率的なスキル習得ができると思う」


 もともとマッドサイエンティスト気質なリンドンだ。異世界人のスキルが研究できるということもあって、二つ返事で了承した。絶対フォグとトリドスがいるからっていうのもあると思うけど。


「普通の部隊とは全然違うから、最初は戸惑うかもしれない。おれも隊長なんて初めてだし、コハクにはエロだけでいいとは言われてるけど……」


 そこでおれはもう一度、みんなの顔を見る。

 これからここでおれと一緒に活動する仲間。上に立つ責任を取らないといけない顔だ。


「おれがやりたいって決めたからここに立ってるんだ」


 ジェルは言った。隊長はみんなの命を預かっていると。何かあれば、その責任を取らなければいけないと。

 それでもおれはここに立つと決めた。みんなと一緒に進むために。


 さっきフォグが教えてくれたけど、実はジェルたち――『竜の爪』に加えてコハクやウィザロンらがこっそりばれないようにおれの演説を聞いてるらしい。授業参観みたいな恥ずかしさがあるからやめてくれ。

 と言いたかったけど、せっかくだから見てもらおうと思った。だって自分の息子が立派になったところを見たくない親なんていないでしょ。


「本当のことを言うと、戦いなんてしたくない。誰かに傷ついてほしくない。だけど、強くないといつか怪我をしてしまうってことを、おれはこの戦いで知った」


 ゴライザにはもっと強くなってもらいたい。みんなにも。

 そのためにおれができることがあるなら、何でもしよう。


「だから、おれの全スキルを使って、みんなを最強にする!」


 これがおれの目標。みんなを『スケベスキルで世界最強』にすること。誰も傷つかないように、また、傷つけずに戦いを終わらせるようにしたい。

 モウダンとフォグが『華炎』の部隊相手にやったように、怪我させることなく戦いを終えられたらそれが一番いいと思う。甘いかもしれないけど、現代社会から来たんだからしょうがないでしょ。


「みんなにはとびっきりスケベになってもらって、とびっきり強くなってもらう! もう元の性癖に戻れないだろうけど、絶対強くするから!」


 おれはみんなと歩いていく。

 この広いかもしれない世界を、エッチなスキルと共に。

 これからも大変なことなんてたくさんあるだろうし、また誰かが怪我をしてしまうかもしれない。喧嘩もするだろうし、エッチも当然する。


 だけど、それがおれの決めたことだから。頑張って歩いて行こうと決めたんだ。

 来てくれた隊員や隠れて聞いているジェルやヤードたちに精一杯の笑顔で見せつけよう。


 おれはこの世界で生きていくと――――


 完


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POSTEDSep 9, 2023
ARCHIVEDJun 10, 2026