ヒーローシティは文字通り、ヒーロー本部がある都市として世界中に知られている。この世にはびこる様々な悪事に対応すべく、日夜ヒーロー達が研鑽し、また休息をとる場所である。
そのため、都市自体も要塞化している。都市全体を強固なシールドでかため、セキュリティも万全。ヴィランの侵入は不可能と言われているほどである。
科学技術の発展にも様々な寄与をしており、人々のために活動している不夜城。決して眠らない都市として、経済的にも重要な拠点だ。
「ヒーロースタンヴァルド、ただいま帰還しました!」
本部のヒーロー課に所属する虎のヒーロー、スタンヴァルドは凛々しい相貌ではきはきとあいさつを述べた。
凹凸際立つ筋肉を覆う青いヒーロースーツが特徴の彼は、派遣任務から帰って来たばかりだった。その報告のため、こうして本部を訪れたのである。
黒いスポーツサングラス越しに見つめているのは彼の上司、スタンヴァルドが所属するヒーロー二課をまとめるリーダーでもあり、自身も凄腕のヒーローとして名高いシャチのオルタナヴィアである。本部のヒーロー課をまとめられる実力と言えば、どれだけすごいかがわかるだろう。
シャチは虎が送った報告書を眺めながら、にんまりと口角を上げた。体のごつさに全く似合っていない小さな目はかわいらしいと課でも評判だ。暖かく迎え入れられて、サングラスの奥で虎がほっこりと目を細めた。
「よくやったな。敵戦力が想定より強かったようだが、お前なら問題なかったようだ。現場の機動隊もほめていたぞ」
「恐縮です! 危ない場面もありましたが、すべて問題なく処理できたと思っております。こうして無事リーダーの顔が見れて安心しました」
「それ、俺の顔がかわいいって意味で言ってるか?」
「はい! ……あ、いえ、違います! 自分は決して、リーダーの丸っこい頭のフォルムがかわいいと思っているわけではなく……っ!」
「……どうやらスタンヴァルドは元気が有り余っているようだ。この後手合わせしようか。お前がどれくらい強くなったか見せてもらいたいからな」
「お手柔らかにお願いします……」
下手を打ったと尻尾や髭をしおれさせてスタンヴァルドは自身の軽率さを呪った。判断も返事も早いのが現場での彼の強みなのだが、コミュニケーションという場では短所だ。気を付けていても、今回みたいなうっかりが出てしまう。
周りの同僚たちもあきれた目で彼らを見ているだけで、どうやら悪をさばいてきたヒーロースタンヴァルド自身に救いはないようだった。
ヒーローとして先輩であり、凶悪犯罪に立ち向かってきた腕っぷしの強いオルタナヴィア相手にどれだけ立ち回れるのか。おそらくかなり痛めつけられる、それを確信して虎の耳が伏せた。
「……そのあとおごってください」
「しょうがねえな。というか、お前もちゃっかりしてるよ」
「リーダーがそんな無用な鍛錬をするとは思っていないので、どうせそのつもりだったんでしょう?」
「んなわけねえだろ。なんでお前の成功をわざわざ祝わねえといけねえんだよ」
とか言いながらシャチは小さい目を不機嫌そうに歪めて、尻尾で床を打つ。
実は報告に来る前に同僚から、今日は飲み会があると事前に聞いていたのだ。その証拠に、二課のヒーローたちは全員早上がりだ。六課まであるヒーロー課によって、この都市には過剰ともいえる戦力がある。そのおかげで全員の早上がりが認められたのだ。
単独任務は危険が大きい。その解決祝いにと、オルタナヴィアが提案したと虎は聞いている。本来ならまだ日が浅いスタンヴァルドを一人で行かせたくはなかったようだが、他のヒーローとの都合がつかなかったせいだ。
そのお詫びの意味もあるのだろう。このシャチはなぜかぶっきらぼうにふるまうのだが、面倒見の良さは同じ課の全員が知っていた。
本部に所属できるくらいにはスタンヴァルドは優秀だ。
しかし、周りが優秀すぎるせいでかわいい後輩として扱われていることに、この虎はちょっとだけ不満を覚えている。
(おれだって、もう一人前なんだけどなぁ)
そんなジト目に何を勘違いしたのか、シャチはごまかすように窓の外に視線を移すと、そこには灰色の曇天が広がっていた。
「雨が降りそうだな。おかしいな、天気予報では晴れだったんだが」
「確かにそうですね。この都市はバリアに囲まれていて、中の環境は完全管理されてるのに。都市内部の空調システムに不備でも起こったんですかね」
「かもな。まあそういうのは技術班の仕事だ。俺らは現場解決の祝いに、繰り出すぞ!」
「やっぱり祝いじゃないですか。リーダーってなんでそんな変なところで素直じゃないんですか?」
「……元気が有り余ってるなぁスタンヴァルド? その減らず口を叩けないようにしてやるから、そのあと飲めばいい。ついでに脳みそもアルコールで消毒できるな」
「あー……まーた余計なことを言ってしまった」
周りでは、同僚がすでに待ち構えている。どうやらシャチと虎のじゃれあいを見るために仕事を切り上げてきたようだ。そのあとに飲み会があるとくれば、余興のつもりということだろう。
現場では頼れるヒーロースタンヴァルドも、こうなってしまえばただの新米に逆戻りだ。人々から希望の星として祭り上げられていても、二課ではまだ若輩なのだから。
ヒーロー都市ではヒーロースーツ自体が一種の身分証明書だ。オルタナヴィアも白いラインが走る赤いスーツに身を包んでおり、あたりのヒーローもすべてスーツ姿だ。彼らにとってスーツは制服であり、科学技術の粋を集めて作られた兵器は、選ばれた人にしか着用を許されない憧れである。
彼らはこれに身を包むことによって、あらゆる能力が使えるようになる。人知を超えた怪力に脚力、果てにはオペレーターの補助さえあれば分析機能すら持ち得ている。人体という神秘を最高に高める技術によって、ヒーローは世界最強の名を冠することができた。
兵器による戦いの行きつくところは、結局人力だった。どれだけ硬く強い機械だろうと、ヒーローからすれば紙よりもたやすく破れてしまうのだから。
ゆえに、彼らはその制服に恥じぬ活動を求められる。
彼らがこのヒーロースーツを脱いだ時はすなわち、ヒーローをやめるときだろう。
もっとも、そんなことは万に一つも起こりえない。彼らは死ぬときでさえ、ヒーローであり続けると誓ったのだから。
****
「マンキニ❤❤❤マンキニ❤❤マンキニさいっこおぉおぉぉ❤❤❤マンキニヒーローちんぽいぐいぐうぅうぅ❤❤❤俺はヒーローを辞め❤❤❤新たにマンキニヒーローオルタナヴィアとして❤❤再スタート射精んほおおぉおぉぉ❤❤❤」
「マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニぃいぃ❤❤❤そしてヒーロースタンヴァルド❤❤❤これよりマンキニヒーロースタンヴァルドとして❤❤マンキニ射精のすばらしさを世界に広めていきます❤❤マンキニ❤マンキニ❤❤んぅうぅぅいぐいぐうぅうぅうぅぅ❤❤❤❤」
画面の中で、巨体二人が雨の中で踊っていた。
Vの字にしか布面積がない衣装を身につけ、鍛え上げた肉体を誇示している。
だが、その方法は誰が見ても狂っているとしか言いようがない方法だった。
がに股になった彼らは鼠径部に手の側面を当て、マンキニという奇怪な叫び声と共に股間から一気に引き上げる。これを繰り返しながら、ヒーローたちは射精し続けた。
「マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニシャちんぽたまらん❤❤ああ、すっげぇ❤❤洗脳❤洗脳だこれぇ❤❤んでもぉ❤マンキニ射精気持ち良すぎて逆らえんん❤❤❤脳みそが洗われるううぅうぅ~~~~❤❤だべぇ❤❤❤マンキニ❤マンキニ❤もっとマンキニ射精してぇええぇ~~❤❤❤❤」
黒と白の体にスーツと同じ赤のマンキニ。ヒーローオルタナヴィアは巌のような体で永遠にマンキニを繰り返す。
スリットから伸びる巨根はマンキニからはみ出しており、幾度もの射精で白く汚れ切っていた。それでもなお、シャチの一物からは真っ白な精液が吐き出されている。それだけでも、彼が感じる快楽が尋常ではないのがわかる。
「マンキニ❤マンキニ❤マンキニちんぽ最高❤ヒーロースタンヴァルド❤マンキニ射精に完全敗北して❤マンキニヒーローに生まれ変わりました❤❤この射精を❤世界中に❤届けたい❤これがおれの正義だぁあぁ~~❤んぎもぢいいいぃいぃぃ❤❤❤❤」
黄色い体に青いマンキニを着た虎は、オルタナヴィアに負けないくらいごつい体で嬉々としてマンキニを繰り返す。
でれでれに緩んだ顔を真っ赤にして、ずれたサングラスの隙間から崩れた笑みが見える。だが、そんな表情と対比して、がに股になった足腰は筋肉が盛り上がってパンパンに膨れ上がっていた。普段からの鍛錬が、彼らをより無様なマンキニヒーローに仕立て上げていた。
「マンキニ❤❤マンキニ❤❤リーダー❤さっきの鍛錬では不覚を取りましたが❤マンキニなら負けませんよ❤❤見てくださいおれのマンキニ❤❤マンキニ❤❤きれっきれでさいっこぉじゃないですか❤❤❤❤」
「なにをぅ若造がよぉ❤❤んなのはなぁ、俺みたいに現場をたくさん経験してから言いやがれ❤❤見ろ❤この俺のマンキニ❤❤ぶっとい手足でするマンキニが❤さいっこぉに無様だろお?❤❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤」
先ほどまでよきヒーローであった彼らはその面影をすべてなくし、向かい合ってマンキニポーズを披露しあった。
体格の違いはあれど、どちらも筋骨隆々な雄である。まるで鏡合わせのように、完璧なタイミングでポージングを繰り広げていく。
下卑た笑顔で胸を張るオルタナヴィアは筋肉で膨らんだ胸を激しく揺らし、マンキニのひもが左右にずらしていく。むちっと食い込んだ紐からあふれんばかりのおっぱいを見て、スタンヴァルドが舌なめずりをした。
「んっふうぅぅ❤❤リーダーの雄臭マンキニ姿やっばぁ❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤さすがリーダー❤❤❤マンキニおっぱいがたまんねぇですぅ❤❤あ、ああぁ❤❤やっぱりおれではまだ勝てないのかぁ❤❤❤」
「そういうお前も❤っほおぉん❤❤鍛え上げたいい体じゃねえか❤❤マンキニ姿がすごく映えてるぞ❤❤本部のヒーローにふさわしいマンキニ姿だ!❤❤」
「ありがとうございます!❤❤マンキニ❤マンキニ❤日頃の鍛錬もすべて❤立派なマンキニヒーローになるため❤❤これからも、精進していきますから❤❤いろいろ教えてくださいリーダー!❤❤」
美しい師弟関係をマンキニポージングで確認しあい、二人は耽溺していく。
もはやしゃべる時間ももったいないとばかりに、口から出るのは「マンキニ」ただ一つ。汗ばんだ巨体が必死に無様な格好を誇示して、快楽をむさぼっていた。
『マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤』
そして、マンキニに取りつかれたのは彼ら二人だけではない。
周りには屈強な雄たちが何人もマンキニで射精を繰り広げている。それらすべて、スタンヴァルドの祝いにやってきた二課のヒーローたちだった。
『マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤』
雨の中行われる、マンキニコールの大合唱。筋肉を隆起させてマンキニポーズを続けるむくつけき雄たち。誰もが鍛え上げた雄の極致のような体をもつが、変態射精には逆らえない。むしろ、筋肉があればこそ長時間マンキニができてしまう。
彼らはすべて、シャチのようにマンキニがすべてという価値観へと変わっている。変態射精にいそしむ上官を止めるどころか、尊敬すらして真似するのだ。
『マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤』
オルタナヴィアの周囲は密林がごとくの肉密度で、汗とザーメンにまみれた雄の距離が近い。もはや性癖すらねじ曲がった彼らは互いの変態筋肉をおかずに、より一層のマンキニ射精に邁進する始末だった。
「お前らぁ❤❤❤あそこにカメラがある❤きっと司令も見ているはずだ❤飲み会は中止して、これからマンキニヒーローへの転向届を射精で示すぞ❤❤❤❤」
『了解しましたリーダー❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤』
この異常事態において、ヒーロー本部の司令室が気づいていないわけがない。
オルタナヴィアはこれが異常だと理解したうえでマンキニヒーローとして突き進む決意を固めた。たった数分の間で、マンキニは彼にとってそれだけのウエイトを占めるにいたったのだ。
リーターであるシャチを中心に横に広がるヒーローたち。全員が屈強でたくましく、まさに出来上がるのは肉の壁だ。肉壁は色とりどりのマンキニから無様な勃起をカメラに見せつけ、卑猥なポーズを行った。
『マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤』
一糸乱れぬ統率力で、寸分のぶれもない綺麗なマンキニポージング。ヒーローとして活動していた頃でさえ、ここまでのシンクロはなかった。
――――そう『画面の向こう』にいる者は思った。
濡れた体でマンキニを続けるヒーローたち。
その一人、シャチの隣にいる虎のちんぽから白濁がびゅるっと漏れて、鉄筋のような太ももが大きく震えた。
「マンキニ❤❤――っほおぉ❤❤」
「スタンヴァルド❤てめえ気を抜くんじゃねえ❤❤司令が見てんだぞ❤❤きばってマンキニしやがれ❤❤❤」
「はっ!❤失礼しました!❤若輩ちんぽがマンキニで気持ちよくなってしまいました❤❤」
「マンキニが気持ちいいのは当然なんだよ❤❤だからこそ、こうやって司令にお伺いをたてるんだ❤❤おれらをマンキニヒーローとして認めてくださいってな❤❤おらっいくぞお前ら❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤」
『マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤』
「ちんぽきばれよてめえら❤❤射精はまだだぞ❤❤マンキニ射精することしか頭にない変態ヒーローでも❤タイミングってもんがある❤❤まずは金玉ぱんぱんにする運動からだ❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニポーズが脳にきくぅ❤❤」
『はいっリーダー❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニポーズが脳に効きます❤❤』
「馬鹿っ❤そこまで真似しなくていい❤❤」
狂っている。それが、画面の向こうでの感想だった。
大の男、それもヒーローとして活動してきた屈強な猛者たちが、マンキニで気持ちよくなって射精するだけでも不可解なのに、それを大真面目に認めてもらおうとしている。
異質であるという認識を持ったうえでの行動。彼らはもう壊れてしまっていた。
オルタナヴィアは数々の難事件に出向し、解決に導いてきた敏腕だ。そんな彼でさえ、抵抗らしい抵抗もできずに変態へと洗脳された。
今では鼻の穴を広げた好色な顔で、股間を見せびらかす変質者へと落ちている。
どうしてこうなった。雨が降ってから幾度となく発した問いを、画面を見つめる『彼』は繰り返していた。
そんな絶望など届くわけもなく、でかく頼りがいのあったシャチは汁で輝く体を見せつけながら叫んだ。どう見ても変質者でしかありえない格好を誇らしげに、これこそがヒーローだと胸を張って。
変態は言う。
「司令❤❤マンキニ❤マンキニ❤我らヒーロー本部二課のヒーロー一同は❤ただいまをもちまして❤マンキニヒーローへと転職いたします❤❤」
『マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤』
「見てください❤この素晴らしいマンキニ姿を❤これこそが新しいヒーローの形❤鍛えた体を見せびらかすマンキニ❤正義を貫く意志を示すがちがち勃起ちんぽ❤セックスよりずっと気持ちがいいポージング❤❤これ以上ヒーローにふさわしい衣装はありません❤❤」
『マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤』
「どうか司令も俺らと一緒にマンキニヒーローになりましょう❤❤世界を守るためにも❤司令のような素晴らしいヒーローにはマンキニがふさわしい!❤❤……そうだろお前らぁ!❤❤」
『マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤――――その通りですリーダー❤❤我らの司令にはマンキニがふさわしい❤❤いや、マンキニ以外ありえません❤❤』
「マンキニ❤マンキニ❤司令も一度味わえばわかります❤❤この素晴らしさを知ってしまえば❤正義はこのためにあったのだと理解できます❤❤この俺のようにっ❤❤❤マンキニィイィイィィ❤❤❤❤❤」
オルタナヴィアは力強く引き上げた手を肩の上まで伸ばし、マンキニの肩ひもを引っ張ることで自身の股間にきつく食い込ませた。おかげでスリットにめりこむマンキニがちんぽを直角にする光景が鮮明に映る。
これを見せつけることで、説得できる。そんな妄想を信じた狂人のたわごとが止まらない。
「おおうぅうぅうぅぅう~~~~❤❤❤❤マンキニくるうぅうぅ❤❤見てください司令❤俺のマンキニちんぽ❤」
くいっくいっと腰を突き出して、先走りをまき散らす。体格に見合った立派なちんぽが、根元をマンキニで押さえつけられて震えていた。
「司令は昔、俺がヒーローに向いているとほめてくださったことを覚えていますか❤❤あの時の言葉を胸に研さんを積み❤こぉんな立派な勃起ちんぽマンキニヒーローになりました❤❤今の俺があるのは司令のおかげです❤」
ちんぽのでかさなどヒーローには全く関係ない。そんな常識すら雨に洗い流され、オルタナヴィア一同は腰を誇らしげに突き出すのだった。
経験を積んだものも、新進気鋭と言われたスタンヴァルドも。いきり立った股間を見せることに何も羞恥を感じていないようだ。
「ですので司令も❤ああっ❤早く司令もマンキニヒーローになりましょう❤❤世界のために❤世界はマンキニヒーローを求めているのです❤❤❤今、俺が変態化の先輩としてお手本を見せします❤❤これを見ればきっと、司令もマンキニヒーローになりたくなるはずです❤❤」
やがてシャチが肩ひもを離すと、ばちんと小気味良い音がする。
準備が整った。そう言わんばかりに掌を股間にあてがう。
「っしゃぁお前ら、金玉の準備はできたかぁ?!❤❤❤」
『はいリーダー❤二課のヒーロー一同❤いつでもマンキニ射精できます❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤』
「マンキニヒーロー二課の初合同マンキニだ❤❤真っ先に無様洗脳されたヒーローとして、みっともねえ真似さらすんじゃねえぞっ❤❤❤❤」
『かしこまりました❤マンキニ❤マンキニ❤』
「……すぅ、一同、構えっ❤❤❤」
筋肉で覆われた腹から高らかな宣言が響く。悪を前にしても決してくじけなかったオルタナヴィアの咆哮が、淫蕩にねじくれまがって曇天にとんだ。
ヒーローたちが深々と腰を下ろし、掌を固定する。常人であればきつい自重も、たくましいヒーローにとっては苦にもならない。むき出しの太ももは筋肉で膨らんでおり、雫が流れて凹凸を描く。
誰もかれもが真剣な顔でカメラを、否、『画面の向こう』を見ている。そこにいるであろう人に向かって最高のマンキニを届けるため、彼らはちんぽをひくつかせた。
先ほどから射精し続けたちんぽはいまだ硬く。血管を張り詰めて破裂寸前のようだ。あとほんの少しの刺激で、彼らは射精するだろう。
そして、そのほんの少しの刺激を与える号令を、オルタナヴィアは叫んだ。
「――――――マンキニっ❤❤❤❤❤」
『マンキニっ!!❤❤❤❤』
示し合わせたかのような狂いのないタイミングで、全員の手がVを描く。
それは一瞬のことで、気づいた時には掌が腰少し上で止まっている。ちんぽに触れてもおらず、快楽という単語とは無縁の行為にしか見えない。
だがすぐ後で、むしろ動作の終了と同時に。
――――全員が射精した。
「おぅんっほおぉおぉおぉぉおぉぉぉぉぉ~~~~~~❤❤❤❤マンキニ射精きたああああぁ~~~~❤❤❤❤」
先ほどまでの真剣な顔は何だったのかと疑いたくなるほど、崩れた顔でシャチがのけぞった。巨根からは真っ白で太いザーメンがびゅるびゅる噴きあがり、雨にぶつかりながら頭上すら超えていく。
あまりの快楽に足腰が震えているが、気合と尻尾だけで支えているようだ。よく見れば、スリットからはじけた潮がマンキニを飛び越しているのがわかる。
「んぎもぢいぃ❤ぎもぢいいぃいぃいぃいぃぃぃぃぃ~~~~❤❤❤❤マンキニ射精最高❤マンキニ最高っ❤マンキニこそが正義いいぃいぃ❤❤❤❤」
度を越した快楽にアヘ顔を決め、いかつかったシャチは眼球をひっくり返す。カメラを見ることもできず、ただ終わらない射精に腰を揺らすだけ。
シャチの後ろに控えるヒーローたちも似たようなもので、全員が無様なアヘオホ顔で射精の快楽に酔っていた。どれだけ性機能が亢進すればこれだけの大量射精ができるのか。無様極まりないヒーローたちだが、人生で最高の快楽を味わっているのは間違いなかった。
そんな中でも真っ先にマンキニポーズを構えるオルタナヴィアは、やはりリーダーとして胆力に満ちた雄だ。おもらしを続けるちんぽ付近に手を置き、また部下たちを叱咤する。
「いぃ、いっぎに畳みかけろぉ❤❤マンキニヒーローに洗脳された俺たちをぉっほぉ❤司令にしっかりと見てもらうんだぁあぁ~❤❤マンキニ❤マンキニ゛ぃぃ❤❤❤」
『かじごまりまじだぁ❤❤マンキニぃ❤おっほ❤❤マン゛キニっ❤❤マンキニぃぃ~❤❤』
もはや射精中ということもあり、さっきまであった規律正しい動きはてんでバラバラだ。シャチ自身も快楽に浸り、よだれをすする余裕さえない。
それでも、後ろに目でもあるかのようにオルタナヴィアは部下の不備を見逃さない。
「スタンヴァルドぉ❤❤てめえ、なんで手を止めてやがる❤❤ヒーローはコンビネーションも大事だってぇ❤いつも言ってんだろがぁ❤❤❤」
「はっ!❤その通りですリーダー❤❤しかし、今っ手を動かすと❤軟弱ちんぽがお漏らしてしまいます❤❤❤」
「馬鹿野郎っ!!❤❤漏らすためにやってんじゃねえか❤❤マンキニヒーローはちんぽからザーメン出してなんぼだろっ!❤❤洗脳されたくせに、んなこともわかんねえのかっ❤❤❤」
「し、しかしっ❤自分だけ先輩方とタイミングが合わないなどっ❤司令に情けないところをお見せするわけにはいきませんっ❤❤おれの恥は二課の恥だって、いつも言ってたじゃないですか❤❤」
「――――ばーか❤❤」
ずっと前を向き変態な己を貫いてきたオルタナヴィアが、首を曲げた。ヒーローとして司令に訴えることよりも、部下に笑いかけることを選んだのだ。
口調こそぶっきらぼうだが根がやさしいことを、『画面を見ている彼』は知っている。部下にも慕われ、現場でも慕われ、まさにヒーローに向いているといったのは他ならぬ『彼』だから。
顔を背けたせいでカメラには映っていないが、その表情が昔のようにしょうがないなと笑っているものであるなんて――――見なくても『彼』にはわかった。
続いて発せられた言葉がどんなに狂っていて、どんなに意味不明であったとしても。
あのシャチは、ヒーローオルタナヴィアなのだ。
「確かに言ったが、同時にこうも言ったよなぁ❤困ったときは先輩を頼れって❤❤だろスタンヴァルド❤❤」
「は、はい……❤❤」
「お前らぁ❤❤」腹の底から、シャチが叫ぶ。「俺らのかわいい弟分がもうすぐにでも射精しちまいそうだ❤❤お前らなら合わせられるよなぁ?❤洗脳されて射精することしか考えられなくなった頭なら❤朝飯前だ❤そうだろ?❤❤」
『マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤その通りですリーダー❤マンキニヒーローちんぽは、すでにザーメン発射準備を完了済みです❤❤❤いつでもいけますっ!❤❤』
「いい返事だっ!❤いくぞぅ❤胸を張ってマンキニっ❤ちんぽを見せつけてマンキニっ❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニヒーロー見参っ❤❤❤」
『マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤』
彼らは理解不能なポージングを繰り返す。まるで壊れた機械のように。
そのポーズにどんな必要性があるのか、それは彼らにしかわからない。誇らしげにする意味も、快楽を感じる理由も、『彼』にはわからない。
「マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤いいぃ~ぐ❤いぐいぐいっぐうぅ❤マンキニしながらまた射精するぅ❤お前ら準備はいいかぁ?❤❤」
『はっ❤マンキニヒーロー二課❤射精に問題ありません❤❤❤』
「スタンヴァルドもいいか?❤❤」
「はいっ❤お手数おかけじまじたぁ❤❤でも、もう、ちんぽ限界ぃいぃ~~❤❤」
「たく、かわいいデカちんぽびくびくさせやがって❤これが終わったらまた鍛え直してやる❤❤おーし❤たまった分だけ気持ちよくぶっぱなそうなぁ❤おっほ❤マンキニちんぽ❤発射準備ぃ~❤❤」
『了解っ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤』
動きだけはきれがあり統率もあるくせに、顔は全員がとろけて同じものなど一つもない。ヒーローにあるまじき顔でVを描き続ける、敗北者のなれの果て。汗水たらしていても疲労など全く見えず、ただ快楽を求めて動くだけ。
むき出しの肌や毛皮から浮かぶ筋肉の雄々しさを見せつけて。
怒張して血管を浮かべるいきり立ったちんぽを見せつけて。
ヒーロースーツを変形させたマンキニを誇らしげに見せつけて。
――――彼らはまた射精した。
『マンキニぃ~~~~❤❤❤❤❤❤❤』
****
「……何が、起こっているんだ」
本部にある司令室で一部始終を見ていた『彼』こと、司令官ヒーローアガラリオラはかすれた喉を震わせた。
乾いて張り付いた舌を何とかはがしたところで、出せたのは呆然とした声だけ。そしてそれはこの場にいる全員の代弁に他ならなかった。
本当に突然だった。予定にはない雨が降ったかと思えば、人々が、とりわけヒーローたちが狂ってしまった。先ほどのように変態的な格好をして、股間を見せつける狂人へと変わり果ててしまったのだ。
前線から退いたとはいえ、強靭な肉体を誇る竜。赤い鱗にアイボリーの内皮を筋肉の起伏が強い肉体で誇示する彼こそ、このヒーロー本部を束ねる頂点である。首から下を黒いスーツで覆い、凹凸を走るラインは彼の鱗と同じ赤い色。
オルタナヴィアより年は取っているのだが、種族柄と屈強な肉体も相まって、彼の実年齢を初見で当てるのは困難だろう。実際は経験豊富な大ベテランである。
そんな赤い竜の英雄は画面越しにかつての教え子と顔を合わせ、そして、現状の理解不能さに頭を抱えてしまう。
ヒーローシティは鉄壁だ。すぐさまアガラリオラが確認をとっても、外部からの不審な侵入やハッキングなどは見当たらない。出てきた痕跡はすべて内部からのものだ。平和の象徴の中で悪事を働かれるなど、あってはならないことだった。
『マンキニ❤❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤』
画面から響く敗北した二課の合唱が、彼をさいなむ。新人だった頃から面倒を見ていたオルタナヴィアの変わり果てた姿に、胸を痛めずにはいられなかった。
だが、そんな弱音を吐くほど、彼はもろくはない。すぐさま切り替えて、司令室に集まったオペレーターたちに指示を飛ばした。
「『雨』の解析結果は出たか?」
「はい。技術開発研究所の所長によると、これは情報の集合体とのことです」
「情報?」
「詳しくは自分にも……。ただ、甘いものを食べれば甘いと認識するように、あれは人々にそういう認識をさせる情報源だそうです」
「……そうか」
説明を聞いてもいまいちぴんとこなかったが、そういうものだと理解するしかない。現に、オルタナヴィア含め二課のヒーローたちはその情報によって狂わされたのだから。
彼らがおかしくなった原因について、ヒーロー本部は『雨』だけではなく様々な要因を考えた。むしろ、当初は雨などというものが洗脳に関与しているとは誰も想像だにしていなかったのだ。
だが、現場の状況などを加味してみれば、どういうことか、あり得る可能性は『雨』しか残っていなかった。そして今、ヒーローたちを支えるヒーロー技術開発研究所からその裏付けの意見がでてしまった。
「やはりあれを浴びることは相当のリスクがあると考えることに変わりない。対処法についての意見はあるか?」
「……いえ、新技術のためまだ解明が進んでいないようです。ひとまず、既存の対応で様子見するしかないと、コメントを頂いています」
「だろうな……。何かわかったことがあれば速やかに情報共有を行え。これ以上犠牲を出してはならん。他のヒーローたちは持ち場についたか?」
「はい。一課、三課のヒーローたちは天候管理場への突入準備を済ませ、合図待ちです。四課と五課は都市に仕掛けられたハッキング元の調査を。六課は不測の事態に備えてここ本部で待機してます」
「よし。確認だが、この『雨』は天候管理場から出ているもので間違いないのだな?」
「はい。ドローンによる調査の結果、『雨』を降らせる雲は間違いなく天候管理場から出ています。ただ、天候管理場との通信はつながらず、監視カメラの映像を受信できておりません。中の状況は全くの不明です。また、通信状態からジャミングによる妨害があると考えられます」
「わかった。……聞こえたなジャラード。突入するとこちらからの援護は受けられなくなる。今のうちに聞きたいことがあるなら聞いてくれ」
赤い竜の通信に応えたのは、低く落ち着いた声だった。
『特にはない。この『雨』によって戦力を削られたとはいえ、三課のヒーローを回してくれているおかげで戦力は潤沢だ。すぐさま制圧してみせる。お前は二課や、街のことを心配してやれ』
「簡単に言ってくれる。ただまあ、気は楽になったさ」
画面に映し出されたのは純白のヒーロースーツを着た男。その顔をガスマスクで覆っているため一見しただけでは種族がわかることはないが、長いマズルと尻尾、それにシカのような角から龍であるとあたりをつけることができるだろう。
ヒーロージャラードは自身の深い青のすべてをスーツで覆い、完全防護体制で事件に臨んでいた。
『ふん。何がマンキニだ。下種な真似でヒーローをこけにしおって。犯人が誰かはわからんが、見つけ次第張り倒してくれる』
「犯人がいるのかはわからんが、交戦になる確率は高い。注意してくれ。お前の腕は疑っていないが、今回は三課の指揮権も渡してある。焦って失敗するなよ」
『誰に言っているんだ?』
「お前だよ、お前」
ヒーローの中でも古株であり、司令のアガラリオラと同期でもあるジャラードは経験と腕前を買われて本部のヒーロー一課のトップを任せられている。司令と軽口を交わせる数少ないヒーローということでもあり、アガラリオラの顔から少し緊張感が取れていた。
「現状の対策は完全に後手に回っている。有効な対策が見つからない以上、突入した中に雨雲が充満していたらお前もすぐああなるんだぞ」
『問題ない。経皮吸収の可能性も考えて、ガスマスクに加え、スーツで皮膚すべてを覆っているんだ。これでだめなら、どのみち本部の装備では対応不可。どこにも逃げ場などないことになる。つまり、お前もああなるってことだ』
「……ごめんだな」
『私もだ』
軽口を言い合っているが、追い詰められているということを二人とも理解している。
どの課もこの『雨』によって戦力を削られ、三課のリーダーも外にいたためマンキニヒーローに洗脳されている。画面を切り替えれば、一人マンキニに耽溺する白虎の姿が見えることだろう。
今の戦力は最大より四割削られている。それだけのヒーローが、すでに洗脳されているのだ。
だからこそ、ジャラードや無事なリーダーの元で部隊を再編成し、任務に当たらせた。敵の規模すら把握できていない中、これが多いのかすらアガラリオラには判断できない。手探りの中、経験を頼りに最善と思われることを何とかやってのけた。
『たとえ私が失敗しても、情報だけは何としても送る。そこから打開してくれ。お前も、そのために六課を温存してあるのだろ?』
「これが陽動の可能性も捨てられないからな。この洗脳ですべて処理するつもりなのか、それともただの目くらましで、本命がどこかにあるのか。それすらも今の我らにはわからない」
『しかもご丁寧にハッキング元は都市内だと分かるようになっている。どう考えても誘われているな』
『雨』の投下と同時に、ヒーロー本部にサイバー攻撃が仕掛けられた。それは大した精度ではなく、技術オペレーターたちによって事なきを得た。『雨』という新技術に比べれば、お粗末ともいえる練度である。
本部ではこれを時間稼ぎ、つまり、『雨』の分析を遅らせるためであると判断した。場所の割り出しにもあっさり成功したこともあり、現場では罠であるという意見が強い。
「それでも、現場に行くしかないんだ。我らには選択肢がない。マンキニなんてふざけた洗脳も考えれば、愉快犯である可能性もある。そういうやからは、わざと現場に証拠を残すことが多い」
『ゲーム感覚でヒーローを試すヴィランの例を挙げれば枚挙にいとまがないからな。その挑戦に乗ってやろうではないか。だから今は情報がいる。任せておけ。何があっても、お前の役に立ってみせるさ』
「それでも俺はこう言うぞ。……絶対無事に帰ってこいよ、ジャラード」
『言われなくてもそのつもりだ。そもそもヒーローとは事件現場に突入することがほとんど、事後にしか現れない正義の味方なのだ。だから、こんなことはいつも通り。肩の力を抜いておけ、眉間にしわが寄ってるぞ。司令の顔が険しいと下が不安になる』
「……わかっているつもりなんだがな。どうにも俺は顔に出やすいんだ」
『それがお前のいいところでもある。人の好さが顔からにじみだしているからな。だからこそみんなお前を司令として認めている』
「お前もか?」
『…………今更なことを言わせるな。情報の追加がないなら切るぞ。これでも死地に行く身なので忙しいんだ』
「ああ、健闘を祈る」
『まあ……お前以外の司令など、私には考えられない。それだけだ』
あまり素直ではないジャラードがぶっきらぼうに通信を閉じれば、竜は深いため息をつく。現場に行けないもどかしさが、この竜を不安にさせてしかたがないのだ。
指揮にも慣れたつもりだったのだが、やはり、こういう時は前線を見たい。素早い情報こそ、今最も求められているものだからだ。すべてを守るためにも、彼はできる限りのことを行いたかった。
「……信じるしかできないというもの、もどかしいものだな」
気楽に動ける身分でない焦燥を言葉一つで呑み込んで、顔を上げる。
前を見据える眼光はいつものように鋭く、本部を支える大黒柱として立つ頼もしい司令官であった。
「洗脳されたと思われる二課、およびその他ヒーローたちのスーツ権限の一時停止は終わったか?」
「はい。そちらは第二司令室が担当しております。これで彼らは本部などへの移動や、スーツによる身体能力強化の恩恵を受けられません。もっとも、そのせいでマンキニ状態からの変形も不可能になりましたが……」
六課まであるヒーローたちを援護するために、本部では第三までの司令室を設置している。もしものために全員出動しても手を回せるようにしていたのだが、そんなときなど来てほしくなかったと、竜は沈鬱なため息をはいた。
「まさかスーツの変形機能をこんな風に使われるとは、誰も思わなかっただろうな。こればかりはしょうがない。情報漏洩に配慮して、第二司令室は彼らの情報は監視しておいてくれ。本来なら救助したいところなのだが、今は人手が足りないうえにこの『雨』の中に繰り出すリスクがある。不審者の接触などあれば、直ちに報告するように、聞こえているな第二司令室」
『かしこまりました。不審者の情報が浮かび次第、ご連絡いたします』
「それと、四課、五課の任務遂行経過はどうだ?」
「今のところ空振りばかりです」答えたのは同じ部屋のオペレーターだ。「罠でもなく、ただがらんどうになった部屋があるばかりで、めぼしいものは何も見つかっておりません。『雨』に当たらないように細心の注意を払っているおかげか、特に洗脳の予兆もありません」
そもそもここはヒーロー本部を擁する最先端都市。建物への移動は地下通路なども完備されているため、危険がわかってさえいれば対処はたやすいのだ。
「はあ。やはり、ただの陽動か。それにしては、どこにも動きがないのもおかしい話なのだが……。念のため、第三司令室に都市中の防衛機構に異変がないか定期的に確認するように指示を出しておいてくれ。些細なことでもいい、一瞬の判断ミスが致命的になることを忘れないように」
「はっ! ……それと司令、六課のリーダーオーダーハントから通信要請がかかってきております。対応しますか?」
「わかった。こちらで出よう……アガラリオラだ」
『司令っ! なにとぞ、自分にも出撃許可をっ!』
単刀直入というにはあまりに前のめりな発言に、アガラリオラは一瞬虚を突かれてしまった。言葉の隙間を縫うように、オーダーハントは畳みかける。
『二課が壊滅し、三課のリーダーが戦闘不能になった今、自分を遊ばせておく必要なんてありません! おれらだってやれます! だから、現場に行かせてください!』
「やる気があるのはいいことだが、お前らにはお前らにしかできない仕事がある。耐えるのもヒーローの務めだと教えたはずだ、オーダーハント」
『ですが……っ!』
アガラリオラの脳裏には、血気盛んに吠える狼の姿がありありと浮かんでいた。
青が混じるきれいな灰色にきりりとした相貌は黙ってさえいればクール系の美形なのだが、ひとたび口を開けばこれだ。やる気と熱意だけで構成されているとはジャラードの評だが、この竜もおおむね同意している。
リーダーの中では最年少であり、少し先急ぐ癖がある。慎重な対応が求められる現環境にそぐわないと判断され、そのため待機に選ばれたことに本人は気づいていないようだった。
『ジャラードさんやマスキュリオンさんも頑張っているのに、自分だけここで見ているだなんてできません! おれらはヒーローです! 困っている人がいるなら、いち早く駆け付けるべきです!』
マスキュリオンは五課のリーダーだ。アガラリオラは任務を逆にしたほうがよかったのではないかといったん思考し、すぐさま棄却した。オーダーハントだけではなく、六課は新設されたばかりの課ということもあり、全員がリーダーに似てせわしない。慎重な対応が求められる現場では相性が悪いだろう。
「オーダーハント。私がなぜおまえを残しているのかわかるか?」
『……不測の事態に備えてかと。敵の目的が不明瞭ですから、ヒーロー全員が出動してもし何かあれば、本部は機能停止に追い込まれます』
「そこまでわかっていてもなお、おれの言葉が必要か?」
『それでも……自分はじっとなんてしていられませんっ!』
「お前は優秀だ。だからわかるだろう。今焦ったヒーローを現場投入することのリスクを」
『…………っ』
本来なら、ここは叱るべきところだと理解している。だが、アガラリオラはこのヒーローには甘かった。
「手柄を立てたい気持ちも、誰かを助けたいという気持ちも、痛いほどよくわかる。おれも通った道だからな。ジャラードに聞いてみるといい、昔のおれも、お前と似たようなやんちゃだったよ」
『司令も、ですか?』
「意外か? 誰にだって若いときはあるんだぞ。だから焦るなオーダーハント。おれがお前を必要としないことなど、絶対にない。それが今回でなくとも、だ。必要だからこそ六課が作られたんだ。お前は、自分にできることをしっかりと考えて待っていろ。大事な時に役に立たないことほど、情けないことはないぞ」
『かしこまりました。……少し頭が冷えました。こんな忙しいときに、お手数おかけしてすいません』
「構わん。言っただろ? 似た者同士だと。実際おれも許されれば現場に突撃したいくらいだからな」
『ははっ、じゃあお互い様ですね。そんなことを聞いちゃうと、現場に出せなんてわがまま言えないじゃないですか。それでは六課は待機を継続。何かあれば、すぐに出動できるよう準備しておきます』
「頼んだぞ」
通信を切った竜は大きくため息を吐く。気持ちがわかるがゆえに、オーダーハントの焦燥が痛いほど伝わってくるのだ。
それだけひっ迫した事態ということだ。アガラリオラは床を尻尾で打ち据え、気合を入れなおした。これ以上、不安を感染させてはならない。
『大変だなぁ司令も。あいつは待てができない犬だから、とどめておくにも骨が折れる』
「マスキュリオンか。通信が開いているとは思わなかった」
『緊急回線だよ。いいだろ、実際やべえんだから。一応オペレーターには許可を取ってあるから𠮟責はなしにしてくれよ?』
「どうやらおれは司令として相当舐められているようだ」
『冗談。あんたを馬鹿にするやつがいたら俺がぶっ飛ばしてやるよ。がーっはっはっはっ!』
真っ赤なスーツを筋肉で押し上げたガスマスクのヒーローが笑っているようだが、通信画面では表情が読めない。それでも、この豪快な黒獅子なら本当に笑っているだろうというのは容易に想像がついた。
五課のリーダーマスキュリオン。尊敬するヒーローにアガラリオラの名を上げながらも、傲岸不遜な態度を崩さない堂々とした男だ。
オルタナヴィアと違い、赤いスーツに黒いラインが肉体の起伏を強めている。そんな彼はつまらなさそうに掌を振った。
『目標ポイントのすべてを四課との合同で調査を終えた。今は五課全員の集合を確認。洗脳の予兆もなしで、誰一人欠けてねえ。そして調査結果は聞いての通りなんもなし。どうする司令? こちらもジャラードさんに合流するか、犬のように待機するか』
「街の様子はどうだった?」
『あー……そっちはやばかったな。この『雨』のせいで洗脳されちまってて、俺らが出歩いてても、どうしてマンキニじゃないんだろう、なんてひそひそしてやがる。一応無事な奴は家に避難しておくように指示は出しておいたが、この調子じゃ民意が牙をむきそうだ』
「そうか、そんな中活動ご苦労だった。それなら洗脳されたヒーローの回収をお願いしたい。ジャラードが成功し『雨』さえ止めば、彼らを治療しておきたいんだ」
『了解。最悪オルタナヴィアたちを抱え込んで情報を抜くことが目的かもしれねえからな。こっちでも注意しとく』
「頼んだ。彼らの位置情報に関しては、オペレーターに頼んで常時更新しておく。もし他に不測の事態あれば――」
『わーってるよ。すぐさまそちらを優先。結局のところ、俺らは現場待機ってわけだ』
「全くお前は。指示くらいちゃんと最後まで聞いてくれ。四課も同様だ。クロックパンプ、安全な場所で待機し、何かあればすぐ連絡するように」
『かしこまりました』
続いて画面に現れたのは巨大な青いスーツの男。ガスマスクの形から、長く平べったい口を持っていることがわかる。
『四課リーダークロックパンプ。司令の指示を確認。これより待機にはいります。ご入用の際はすぐさまご連絡を』
「ちなみに、そっちでは変わったことがあったか?」
『特には。すべての報告はオペレーターにあげております。それ以上のことはございません。任務中に洗脳された四課のヒーローはゼロ、調査結果もゼロです。司令の手を煩わせる時間が惜しい現状ですから、通信を切断します。それでは』
「あ、ああ……」
相も変わらずの無機質な対応に、竜はいまだに慣れていない。マスキュリオンのようななれなれしい態度との温度差もあるが、このワニのヒーローは人一倍反応が淡泊なのだ。
それでも、頼れるヒーローであることに変わりはない。アガラリオラはすぐさま頭を切り替え、状況を整理する。
「ハッキング場所に何もなかった? だとしたらこれに何の意味が……本当にただの時間稼ぎか? いや、おれの勘が違うと言っている、これは……それなら……」
――――それならこれは、ヒーローを誘い出すための罠だ。
そんな結論を導き出せたのはアガラリオラの経験がなせる業だ。確証などなくとも、彼はこの勘でいくつもの現場を乗り越えてきた。その天啓を信じないわけにはいかない。竜はすぐさま四課と五課に対する通信を開き、叫ぶ。
「全員、直ちに撤退! 至急本部まで戻り、オーダーハントと待機してくれ!」
『四課了解』
『五課了解。やっぱ罠ってことかぁ』
素早く返答したヒーローたちが駆け抜ける。常に冷静なクロックパンプはもとより、軽口をたたくマスキュリオンにさえ油断などあるはずがない。
だから、これが失敗するということは、相手の方が一枚上手だったというだけ。
そのことを示すかのように、一人のオペレーターが声を張り上げた。
「司令! 五課の進行方向には二課のオルタナヴィアさんが、四課には三課のワイドストロークさんがいます!」
「なんだと! 近づいてきていた……いや、『帰還を読まれていた』のか!!」
『っはん、ってことはだ司令。あのチェックポイントは俺らの行動を読みやすくするためにあったってわけだ』
『マスキュリオンに同意です。おそらく敵は洗脳したヒーローたちと私たちが会敵するように仕組んでいたと考えられます。オルタナヴィアとどうやってやり取りをしていたのかはわかりませんが、そこに敵へとつながるラインがあると想定されます』
『つまり、できれば捕まえたい。が、あんな洗脳済みでスーツの機能も封印されたヒーローたちを使って、俺らを負かす何かを仕込んできた。そうじゃなかったら向かわせる意味がねえ。おい、オペレーター。オルタナヴィアたちがいる付近に不審なものはあるか?』
「い、いえ、とくには見当たりません。現場では例のポージングで盛り上がっている彼らしかいません」
『っとくれば何か兵器を持ってきてるってこともねえし、おとりって線もねえ。本当に丸腰か? スーツの機能が停止されてるなんて、とっくに気づいてるだろうに』
『それでも何か勝ち目を作ってきたのは明白。警戒を、マスキュリオン』
『言われなくてもするさ。司令にあんな変態な格好を見せるなんて、死んでも嫌だね!』
『どうしましょう司令、相手はスーツの恩恵もないただの男性集団ですが、万が一ということもあります』
この二人のリーダーはアガラリオラと同じことを一瞬で考えだした。すべてのヒーローの頂点、本部でリーダーを務めるにはこれくらいの能力が必要なのだと、彼らは行動で示す。
竜は頼もしいと思うと同時に、いやな予感がぬぐえなかった。まだ自分は敵の術中にいる。そんな予感が背中を冷たい手で撫でるのだ。
スーツの力で移動速度を高めているヒーローたちが会敵するまであとわずか。
徐々に速度を落としているのが座標からもわかるが、今は一分一秒を争うかもしれない状況だ。意を決してアガラリオラは口を開く。
「そもそもだ、『雨』だけでは都市のすべてを洗脳できないことなど、敵もわかっているはず。だから、建物の内部でも使える何かが必ずある。そして、それに関しての情報を我らは何一つとして持っていないんだ。危ない橋は渡らないに限る」
帰還を読んでいたことといい、この敵はヒーローをかなり研究している。
わずかな隙すら見せてはならない。
「総員迂回経路を取れ! 一つの課で対応することなく、各課から数名を斥候にしろ。クロックパンプとマスキュリオンは本部にて待機。斥候からの情報を確認し次第、行動に移す。斥候は各リーダーが決めてくれ。会敵するより早く、迅速に行動するように!」
『『了解!』』
「オペレーターはオルタナヴィアやワイドストロークたちの通信履歴を調べ、指示を出したものを探れ! また、カメラの映像から接触したものがいなかったか再度確認するように!」
『かしこまりました!』
二人のリーダーはまるで事前に決めていたかのように、素早く指示を飛ばす。おそらくそう言われることも予想していたのだろう。歴戦のヒーローは司令官候補でもある、この程度は造作もない。
斥候に任命されたヒーローが離脱し、前へ。残ったヒーローが大きく迂回していくことを座標とカメラから確認し、竜はほっと一息つく。
この間わずか数秒。人命救助にも駆り出される彼らにとって、一秒を惜しむのは当然のこと。そしてこの一秒が明暗を分けるのだ。
アガラリオラの指示は完ぺきだった。
得体のしれない『情報』という武器を前に、隙を見せることなく探りを入れる手腕。鋭い勘を信じ、洗脳済みヒーローに背後を取られることを避けたタイミング。もしこの勘が無ければ、二つの課は逃げようもなく会敵していたことだろう。
ヒーロー本部司令官にふさわしいふるまいに、司令室にいた誰もが竜を信じた。この人さえいれば大丈夫だと、現場のヒーローたちでさえ思っただろう。
――――その視界が、真っ白に塗りつぶされるまでは。
「な、なんだ……っ! 何がどうなっている!」
「オルタナヴィアさんとワイドストロークさんが急に光りだしました! カメラからの視界確保は困難! あたり一帯が光りに包まれています! ですが、ヒーローたちのガスマスクには一定以上の光量を遮断する機能があり、作戦に支障は……」
「ではなぜ、『彼らは足を止めている』!!」
座標で確認できる点は微動だにしない。光の中、ただ立ちすくんでいるようにしか、アガラリオラには見えなかった。
アガラリオラの采配をもってしても逃れられない不吉な手は、ついにヒーローたちの足首を捕まえたのか。そんな馬鹿なことが起こっていいはずがないと、背筋に走る寒気をごまかすように竜は叫ぶ。
「クロックパンプ! マスキュリオン! 聞こえているか! 応答しろ! 現状を報告してくれ!」
不測の事態を前に微動だにしないなどありえない。視界が確保されているというのなら、すぐさま物陰に潜んでいるはずだった。
どれだけ竜が願っても、座標が動くことはなかった。それは光が収まっても変わらず、カメラ映像の中で、ヒーローたちは呆然とするだけだった。
ガスマスク越しでその表情をうかがい知ることはできないが、竜に最悪の想像を抱かせるには十分すぎる。
「誰か応答しろ!」
『ま、ま、ま……』
それはリーダーではなく、斥候として前に出ていたヒーローのものだった。
画面の中の数人は、すでにあの格好を――変態でしかないマンキニを着ていた。
ガスマスクを脱ぎ捨ててスーツを卑猥に変形させ、ヒーローにふさわしい屈強な体を見せつけるようにがに股で腰を突き出して。
聞きたくもない言葉を叫ぶ。
『マンキニィイイィイィィィィッ!!❤❤❤❤』
高らかにとろけた声を張り上げ、ヒーローはポージングを繰り返した。鼠径部にあてた手をVの字に往復させ、勃起ちんぽを揺らして悦に浸る。
まさに一瞬で、ヒーローは陥落したのだ。
「おまえたち、何をしている! 何があった?!」
『マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤』青いマンキニを着た牛がよだれをまき散らしながら叫ぶ。『はっ、司令❤我らはあの光によって洗脳され❤敗北いたしました❤❤マンキニヒーローのすばらしさを教えていただいたのです❤❤マンキニこそ❤ヒーローが着るべき衣装❤これほど誇り高く無様なものはありません❤❤』
『マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤』緑のマンキニを着たサメが追従して。『その通りです司令❤❤おれたちはマンキニ❤ひーろぉ❤マンキニっ❤マンキニぃいぃ❤❤マンキニちんぽから射精することこそ❤正義だと洗脳されてしまいました❤❤これより❤自分たちはマンキニヒーローとして❤正義のためにおもらし射精いたします❤❤』
『マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤』別の画面では赤いマンキニを着た熊が射精しながら。『マンッキニイィイイィイっほおぉおぉぉ❤❤❤❤マンキニきぼっちいぃいぃ❤こんなにちんぽが気持ちいいことが❤悪いはずがありません❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニヒーローさいこぉ❤マンキニ射精最高っ❤雄である以上❤ちんぽには逆らえませんっ❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤』
理解不能な事態に竜の胸中を絶望という単語が駆け抜ける。光だけで人が洗脳されるなどあっていいことではない。
しかし、彼はヒーローたちの大黒柱ゆえ、決して膝を折るわけにはいかなかった。ふがいなさに慟哭するのは、今ではない。すべてが終わった時だ。
斥候から離れていたクロックパンプたちがまだスーツを着用していることに一縷の希望を託し、赤い竜は自身を奮い立たせるように声を張り上げた。
「おれは無事だ! つまりこれは『カメラ越しには効果がない』ということ! おそらくフィルターなどには弱いはずだ! 至急クロックパンプたちのガスマスクの視界を遠隔で暗視ゴーグルに切り変えろ! これ以上、あの光を直接見せてはならん!」
「は、はい! かしこまりました!」
「クロックパンプ! マスキュリオン! お前たちがまだヒーロースーツを着ていることを信じて命じる! 大至急撤退するんだ! マンキニなどという下品なものに、惑わされるな!」
『あ、あぁ……司令ぃ……』
まるで風前の灯火のような声を上げるのは、先ほどまで呵呵大笑としていたマスキュリオンだ。気を抜けば蕩けてこぼれていきそうな、そんな危うい声で獅子はすがった。
『あの光を見たら、俺、マンキニも悪いもんじゃねえって……思い始めちまって……❤んなの、絶対に嘘だってわかってるのにぃ❤感情が制御できねえんだ❤これが正しいって❤マンキニこそ、ヒーローの正しい服装だって❤』
「おれが断言する。そんなものはヒーローでは断じてない! お前が憧れるのはおれだろう?! おれを信じろマスキュリオン!! おれはそんなふしだらな衣装を認めない! そしておれは、お前を信じている! お前はこんなところで負けるヒーローではない!」
『そうだ……司令が俺を、信じてくれてんだ。ふがいねえまね……なんて、できねえよなぁ!』
「お前もだ、クロックパンプ! お前はいつも冷静で正しいヒーローだ! 自分の理性を信じるんだ! いや、お前が信じられなくてもいい、おれが信じる! ヒーロー本部司令官として、お前の活躍をおれは知っている。お前もこんなものに負けやしないと胸を張って断言できる!!」
『…………』
「クロックパンプ! 聞こえているか、応答しろ!」
『は、はいっ! 司令……❤迂回経路の計算を失敗して、申し訳ありません……。まさか、これほどまで遠くに洗脳が届くとは……。マンキニを、着たいという感情が❤すごく❤湧き上がってきます❤ですが……まだ、私はやれます!』
間一髪だった。迂回を指示していなければ、今頃彼らはすべて洗脳されていただろう。一撃必殺の技を前にしては、どんな警戒など無意味だった。竜の機転が、現場のヒーローたちを救ったのだ。
まだ勝機はある。アガラリオラは声でしか鼓舞できないふがいなさに尻尾を床に叩きつけながらも、必死に叫んだ。
「クロックパンプ、マスキュリオン。すぐさま本部に撤退し、メンタルチェックを受けろ! 今お前たちを失うわけにはいかん! また、お前たちはリーダーとして、部下の様子確認を怠らないでくれ。洗脳が進んでいそうなヒーローがいれば、オペレーターに報告するように!」
『四課了解』
『五課了解。……ちぃ、司令にかっこ悪いとこみせちまったなぁくそ』
考えなくてはならないことは山のようにある。竜の目が今度はオペレーターに向けられた。
「今洗脳されたヒーローたちのスーツ機能の停止を頼む。だが、先ほどの光はオルタナヴィアたちから発していた、スーツの機能は停止したのではなかったのか?」
「そ、そのはずですが、しかし……確認したところ、再起動しているようです! おそらく遠隔操作によるハッキングかと思われます……」
「そんな馬鹿なことがあるのかっ?!」
科学技術の最先端を行くヒーロー本部の兵器がハッキングされるなどあっていいことではない。対策は完全であり、どんなヴィランも手出しできないはずだった。
「強制シャットダウンは受け付けるか?」
「先ほどから試していますが、不可能です……。こちらの操作を全く受け付けないようになっています」
「そうか……くそっ。どういうことだ。あの『雨』にそこまでの機能があるとでもいうのか……。それならオルタナヴィアたちの通信履歴は解析できたか?」
「はいっ、そちらは問題なくできました! ですが、特に不審な点はなかったため、ログの調査を切り上げ、映像から接触者について調べています!」
「そうか……だが、本来あんな機能などヒーロースーツにあるはずがない。スーツ機能をハッキングした際に、機能を追加したのかもしれない。そちらの線から解析をしてくれ。必要なら科学技術研究所にバックアップを頼み、ハッキング対策と並行して……待て、待て待てっ!」
「どうなさいましたか、司令?!」
最悪の想像に、脳みそが理解を拒んでいる。だが、竜はその先に行かねばならなかった。
「いや、普通に考えれば洗脳装置などそんな一朝一夕でつけられる機能なはずがない……。だとするなら、『これはもともと備わっていた』ということか? そんなことがあるとするならば……」
今まで得たわずかな情報を組み立てる。司令として、ヒーローを守るためにはどんな些細な情報も見逃していないつもりだった。
あとはそれを分析すれば、おのずと敵の正体が見えてくるはずだ。
アガラリオラは思考を回し、回し、その仮説をかためていく。
「天候管理所はどこの管轄だ?」
「科学技術研究所です」
「ヒーロースーツのメンテナンスを担当しているのは?」
「科学技術研究所です……」
「さきほど、オルタナヴィアたちの通信に不審なところはないと言ったな。通信自体がないのではなく、不審がない。それは科学技術研究所からの着信だったのではないか?」
「その通りです……科学技術研究所の所長が、オルタナヴィアさんとワイドストロークさんに連絡を入れていました。てっきり、洗脳状態の確認かと思い、私は何も……」
「よい。盲点だった。おれも見逃していたんだ、誰の責任でもない。だが、これではっきりした」
オペレーターたちも竜の考えに気づいたのだろう。全員が真っ青な顔をしている。
オルタナヴィアたちのスーツをハッキングできたのは、オペレーターたちがクロックパンプたちの方に注力していたからだ。ハッキングという手段が明らかになった今、無事なヒーローたちのスーツに手出しすることは難しくなった。
それでも、ヒーローの命ともいえるスーツが敵の術中にあるだけで、かなり動きが制限されたのは間違いない。アガラリオラはヒーローたちの無事を祈るように、硬く拳を握り締めた。
「オペレータ各位、残りのヒーローたちを全力でサポートしてくれ! このままではヒーローという存在が負けてしまうかもしれない。だが、みんなは誰よりもヒーローを間近で見てきた存在だ。おれたちが絶対に負けないなんて、言うまでもなく知っているだろう」
司令室を静寂が包む。頷く必要もないほど、誰もが知っていることだから。
ヒーローは負けない。負けさせない。彼らにだって裏方としての意地がある。
その決意を見渡して、竜は破顔した。上に立つものとして、彼は決してふがいない顔をさらさない。
「おれらが戦い続けられるのは、君らのおかげだ。ヒーローが君らの手助けを必要としている。ここはヒーロー本部、ヒーローたちが集う正義の象徴だ。決して負けられない。だから、もうひと踏ん張りしてくれ! おれらで、勝つぞっ!」
『はいっ!!』
科学技術研究所が敵と知り、落ちてきた士気を高めるために竜は吠える。だが、これは竜の本心でもあった。前線に出たい彼は裏方として働くオペレーターを尊敬しているし、それは向こうも同じ。彼らは互いに尊重しあい、任務にあたっている。
「全司令室、またこれを聞く全ヒーローに伝令! これより仮想敵に科学技術研究所所長をすえる! 第二司令室のオペレーターたちはスーツのハッキング対策を行い、第三司令室は通信環境の安定を頼む! 科学技術研究所は我らの命綱だった。ゆえに、ヒーロースーツの機能や通信設備に深い造形がある。これから決してそれらを好きにさせないように全力を尽くしてくれ! 都市環境の監視やヒーローの補佐任務と並行することになるが、頼む、ここが踏ん張り時だと頑張ってくれ」
『かしこまりましたっ!』
『了解いたしました』
『っしゃあ、やってやろうじゃねえか』
三つすべての司令室、さらにはすべてのヒーローから勢い良く返事をもらい、それが竜の足腰に力を与えてくれる。まだ負けたわけではない。勢いそのままにアガラリオラは通信を入れ、待機していた犬に向かって吠えた。
「現状は把握しているな? 六課の出番だ! 科学技術研究所に行き、所長を連れてこい! 力づくでも構わん、責任はおれがとる! 何としてでも、話を聞かねばならない!」
『了解しました! 通信の傍受により状況は把握できております! このオーダーハントにお任せください! いくぞ皆! 先輩方の無念を、我々が晴らすのだっ!』
「もし科学技術研究所が敵なら、おそらく向こうも罠を張って待ち構えているに違いない! それに、スーツの機能をハッキングしてくる可能性がある。こちらも対策するが、万が一のためスーツに頼り切った行動を極力控えるように! 絶対に油断するな! お前たちだけが頼りだ!」
『はい! はい! 司令の信頼を我々は裏切りません! 絶対にです! 朗報をお待ちください! うおーーっ! おれはやるぜーっ!』
決して負けられないと息巻く竜は、モニターに映る情報を逃さぬよう目を皿のようにして注視していく。
だから、先ほどから更新されない情報を視界に映しては、心配せざるを得なかった。
「……ジャラード」
敵はガスマスクを貫通して洗脳し、さらにスーツ機能までもハッキングできる存在だ。対策を講じなければ一瞬で洗脳されてしまう。
いまだ連絡が付かない同僚にこれらの情報を伝えられないことが悔しくてたまらない。いくらジャラードがベテランとはいえ、万が一ということは十分にあるのだ。
それでもアガラリオラは信じることしかできない。現場から遠のいて、今日ほど自分の無力さを痛感したことはなかった。時間を巻き戻せればどんなにいいだろうと夢物語を描こうにも、肩にのしかかる責任が逃避を許さない。
司令として、自分にできることを。それしかできないならせめて、現場の役に立つことを。
竜は覚悟を決めると、通信を入れる。それは、洗脳されたオルタナヴィアたちへだった。
「オルタナヴィア、ワイドストローク。聞こえているか、アガラリオラだ」
『マンキニ❤マンキニ❤はい、こちらマンキニヒーローオルタナヴィア❤聞こえております、マンキニっ!❤』
『マンキニ❤マンキニ❤同じくこちらマンキニヒーローワイドストローク❤通信状況は良好です❤マンキニっ!❤』
画面に映るシャチと白虎のヒーローは赤と黄色のマンキニ姿を嬉々として披露する。今この二人をヒーローたらしめているのは、頭につけたインカムだけ。首から下は変態でしかない。
その洗脳前を知っているため、アガラリオラは直視に耐えないといわんばかりに眉をしかめた。
だが、マスキュリオンたちが安全に離脱するには、こうして時間を稼ぐしかない。そう判断し、一縷の望みを託して問いかけた。
「おれは仲間を洗脳しろという指令を出したつもりはない。そのくせお前らはおれを司令と呼び敬っている。どういうつもりだ?」
『マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤ただのヒーローである司令が怒るのも重々承知の上❤ですが、マンキニこそヒーローが着るべき衣装です❤おれらは世界をより正しくするために、すべてのヒーローにマンキニのすばらしさを伝える義務があります❤❤❤』
『マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤その通りです司令❤しょせん我らも雄❤ちんぽを気持ちよくしてくれるものには勝てません❤❤そしてそれはヴィランも同じ❤奴らも悪事を働くよりも素晴らしい快楽を与えることで、我らは正義を成せるのです❤❤』
「……その言い草だと、ヒーローのみならず世界中をそんなもので満たそうとしているように聞こえるが」
馬鹿げていると一蹴したい願望を何とか抑えながら竜が問うと、二人はさらに口角を上げる。誇らしげに胸を張り、ちんぽを突き出し、変態ポージングをしながらも彼らに恥はない。
『それこそがマスターの望む未来❤』
『世界中をマンキニ洗脳で満たし、平和を実現する❤❤』
『おれらヒーローはその先兵に選ばれたのです❤なんてありがてぇんだぁ!❤❤❤』
『洗脳の実験体として変態マンキニヒーローにされたおかげで、ずっとちんぽがきもちいぃぃ~❤❤』
『これから変態マンキニヒーローの名に恥じぬよう努力し、ケツマンコなども鍛え上げていかねえと❤❤これからの時代、ホモセックスもできねえヒーローに価値はないっ❤❤』
『マスターの望む未来のために❤我らはもっと変態にならねばならぬ❤❤』
『『マスター万歳❤マンキニ洗脳万歳❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤』』
それはただの世界征服だろうと、アガラリオラはこみあげる吐き気を何とか飲み込んだ。あの二人は自分たちこそ正義の味方であると、疑うことすらできない。いきり立ったちんぽからは止まることない先走りを垂らし、振り子のように揺らしてVの字を描くことを正義だと信じている。
その後ろでは二課のヒーローたちがマンキニポージングで呼応し、大合唱となって空間を揺らしていく。
誰もが筋骨隆々とした雄であり、先ほどから『雨』と汗によって濡れた体を見せびらかしながら射精にいたる。悪を討つための肉体は、変態ポーズをするためだけに成り下がっていた。
『『『『マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤』』』』
竜が酩酊を起こしたように頭を抱えるが、これがまぎれもなく現実だった。
ヒーローたちは本気でこんな変態そのもののポージングに酔っている。それがヒーローとしてトップに立つアガラリオラにとって耐えがたい屈辱だった。
「一応聞くが、そのポーズを辞めろと言ったら聞くか?」
『マンキニ❤マンキニ❤いくら司令のご命令でも、それだけは不可能です❤❤❤』
『マンキニ❤マンキニ❤我らはマスターのオナホ❤最も優先すべきはマスターの命令ですので❤❤』
『司令もマンキニヒーローになれば我らの言わんとすることがわかるはずです❤❤マスキュリオンらもじきに知ることになるでしょう❤マンキニ❤マンキニ❤』
それを避けるためにこの二人と通話している竜としては、断固として受け入れられない未来だった。
敵の思惑も把握できたため、後は時間稼ぎをするだけだ。しかしやはり、直視に耐えない光景を見せられてしまえば、どうしても憔悴してしまう。人の心を踏みにじる洗脳という悪意に嫌悪を募らせていると、やっと待ち望んだ連絡が竜の耳に届いた。
『こちら四課クロックパンプ。全員危険域と思わしき場所からの離脱に成功しました。ここからならあの光も届くことはありません。もうすぐ本部に到着いたします』
『五課も同様に離脱完了だ。だが、部下たちの中には光の影響で錯乱に近い状態になっている者もいる。自身の正義が揺らいじまってる。くそっ、やっかいな攻撃だぜ』
『こちらもです。今はオペレーターからの説得によって自我を保っておりますが、危うい均衡と言えるでしょう』
「了解した。離脱ご苦労だった。本部ではすでにメンタルチェックの用意ができている。兆候があるものに対しては、こちらで個別に精神分析が得意なオペレーターと通信をつなごう。なにかあればすぐに連絡を入れるようにしておく」
『司令? 応答願います。こちら四課。危険域と思わしき場所からの離脱に成功しました。こちら四課……』
「もしもし? なんだ、通信が不調なのか……?」
そんなことあるわけがなかった。ここはヒーロー本部のある都市であり、最先端の技術の結晶が詰まっているのだ。天候管理所のような密室でのジャミングならいざ知らず、この都市にそのような不純物を設置するなどできるわけがない。
次の瞬間には、アガラリオラをはじめとする司令室の面々から血の気が引く。虎口を脱したかと思われたが、実際はまだ敵の罠の中だったのだ。
「オペレーター! 通信状況はどうなっているっ?!」
「ジャックされており、こちらからの応答はありません! おそらく科学技術研究所の個別ラインからのハッキングかと思われます!」
「……くそ、間に合わなかったかっ!」
通信は現場のヒーローたちにとって命綱だ。幅広い情報を拾い上げるオペレーターがいて初めて、ヒーローたちは全力を出せる。
オルタナヴィアたちにマスターの正体について言及しなかったのは、こちらの情報アドバンテージを守るためだったというのに、無意味なことだったようだ。
竜は悔しそうに歯を噛みしめながら、それでもヒーローを守るために叫ぶ。
「やはりヒーローというものを熟知しているな。完全に先を読まれているっ! 畜生っ!」
本部に近づいていた彼らを迎えに行くための人手はもうない。オーダーハントは科学技術研究所に向かっており、今更呼び戻しても間に合わないだろう。タイミングから見て、おそらく出動させたことも感づかれているはずだ。
「オーダーハントに至急連絡を。敵対行動がばれたと伝えろ。通信回復を最優先目標に設定し、クロックパンプたちへは本部の警備員を回して連絡手段を確保――」
『クロックパンプ、マスキュリオン、いったん止まれっ!』
「これは、おれの声……っ?!」
通信に飛び込んできたのはまごうことなくアガラリオラの声。司令の指示ということもあり、二つの課は本部手前で足を止めてしまった。
「『合成音声』か、小癪な真似を……っ!! 通信状況はっ?!」
「第三司令室総出でかかっているようですが、まだ回復までに時間がかかります!」
「頼む……できるだけ早く……そうでないと……」
『どうしたのですか司令。本部はもう目の前ですが?』
『なんだなんだ、また何か厄介ごとか?』
信頼高い司令官からの指示が通信機から聞こえてきたのだ。二人は疑うこともなく、周囲を警戒しながら応答を続けた。
『本部のシステムが科学技術研究所によりハッキングを受けている。今はまだ凌いでいるが、通信障害も起こりメンタルケアができる状態ではない。本部への帰還はキャンセルし、四課と五課は合流するように。こちらのシステムが落ち着くまで、二つの課を再編成し、まだ行動できる者と本部に帰還する者に分けておいてほしい。互いの現在位置はそっちで把握して、至急行動に移ってくれ』
『やーっぱ科学研かぁ。五課了解、というわけでクロックパンプ、お前今どこだよ』
『四課了解。本部近く……座標を送信します。ここにある本部が所持するセーフハウスがあります。そこで合流しましょう』
『おっ、その通信は生きてんのか。ここならすぐに合流できそうだ』
「待て……!」
アガラリオラが介入できないうちに、事態はより悪い方向へと進んでいく。だが、獅子と鰐のヒーローは自らが虎口に近寄っているという自覚はない。アガラリオラというヒーローへの信頼が、彼らを敗北へと導いてしまう。
「通信状況は!」こらえきれず竜の口が吠える。「明らかに敵の狙いは彼らの合流だ! それを阻止する方法がなければ……!」
「第三指令室総出で回復に当たっています! もうそろそろかと!」
「指令!」別のオペレーターが声を張り上げる。「各課ともに、迎えに寄こした警備員たちから猛烈に遠ざかっていきます! ヒーローの身体能力に追いつくのは不可能かと!」
「撤退して本部に帰還しろ! オルタナヴィアたちとかち合えば強制的に洗脳される! 今のところ、雨と光にさえ気を付けていれば、問題は――」
『こちらアガラリオラ。四課、五課緊急連絡だ!』
「今度はなんだ……!」
忌々しい合成音声が指令室に流れると、赤い竜は歯をむき出しにする。何もできない焦燥感に流されるような精神はしていないが、かといって、安心できるだけの材料は何もないのだ。音声から得られる情報を一言一句逃しはしないと、アガラリオラは牙の隙間から熱した吐息を漏らし、雑念を排しようと努めた。
『こちらのシステムをハッキングされ、ゴーグルの内側に洗脳光の照射を確認した! おかげで六課に甚大な被害が出ている! 念のためゴーグルを外し、最大限の注意を払って行動してくれ!』
その言葉は明らかな罠だ。今ゴーグルを外すことは、無防備になるということに他ならないのだから。
だが、それが罠だと分かるのは、指令室にいるメンバーのみ。次々とゴーグルを外していくヒーローたちの映像を前に、懸命に挽回しようとしているのだが、事態は刻一刻と変化していくだけ。
「……彼らの合流予定地点の周囲に、他のヒーローはいるか?」
人の上に立つ身として、焦燥をさらすわけにはいかないと。竜は間をおいてから低く問いかける。
「いえ、指令が彼らを足止めしてくださったおかげで、オルタナヴィアさんたちの行動は少し遅れているようです。セーフハウスにさえ入ってしまえば、問題はないはずです」
「なら、その間に通信を回復させ、彼らにゴーグルの着用を指示してくれ。この音声は裏を返せば、ゴーグルさえあれば洗脳されないということだからな。その間、警備員の指揮はおれが執る。オペレーターたちはそれぞれの任務に注力してくれ」
「はいっ! 全力を尽くします!」
アガラリオラは自身にできることを最大限の力で行う。それしかできないのだから、くじけている時間などない。
彼の肩にはヒーローの未来が乗っているのだ。しゃんと立つ堂々とした姿は、それだけで指令室の光となる。
「オルタナヴィアたちが洗脳を行ったことで、クロックパンプたちも気づいているはずだ。自らの課の中に洗脳者が出た場合、連鎖的な洗脳が起こるだろうことに」
「おそらくは……リーダーたちの状況判断能力は、確かなものですから」
「それなら、ゴーグルを外したことの危険度を彼らは理解している。今はそれに賭けるしかない。おれらは今できることに最善を尽くすぞ!」
「はいっ!」
「今まで得た情報をまとめ、外部のヒーロー支部に伝達! 本部の指令室が対応に追われている今、敵が洗脳に使う手口の解明を任せたい。また、増援が必要になる可能性を考え、いつでも動けるように待機要請をしてくれ!」
それは保険でもある。もし本部が陥落したとしても、支部に情報がいきわたればヒーローは負けないと希望をつなぐためだ。それでもアガラリオラは常に最悪を想定しつつ、そんな未来が起こらないように最善を尽くそうとあがいている。
指令室はヒーローたちの命綱だ。と言えば聞こえはいいが、実際は前線で戦う彼らに寄り添うことしかできない部屋でもある。大人になったとはいえ、もとより気が短いアガラリオラにとって、このもどかしさはいつまでたっても慣れることはないものだった。
「六課の様子はどうだ?」
「科学技術研究所に到着しました。今は周囲の様子を手分けして見回っています。また、六課のサポートは第一司令室が担当してします」
「わかった。何か異変があればすぐに報告してくれ。オーダーハントには、決して無茶な突撃はしないか、注意しておくように」
「はいっ!」
今やオーダーハントたち六課は頼みの綱だ。彼らから得られる情報が、今後の情勢を左右するかもしれない。
いまだ音沙汰のないジャラードが気がかりだが、信じるしかないのだと自分を律して、竜は司令官として背筋を正す。
冷静を装いながら画面を見つめていると、ついに、ワニと獅子が邂逅する。
セーフハウスにやってきた十数人のヒーローたちは、洗脳されていない同胞の顔に安心感を向けていた。
ゴーグルを外したことで、彼らの瞳に映る緊張がよく見える。当然彼らは一瞬の油断が命取りになると分かっている。だからこそ、合流後の行動も的確だった。
『部下への注意は怠らないように、マスキュリオン。急にあの光を撃たれてはたまったものではありませんから』
『んなのわかってるよ。そっちで危険人物はどれほどいる?』
『おそらく数名……オペレーターからの呼びかけが途絶えた今、葛藤が強くなっている様子です』
『こっちも大体そんなもんだ。ヴィランを拘束するための部屋はあるが……こっちで監視するのがめんどうだな。オペレーターとの通信ができないのはやっぱいてえな。通信できてりゃ、内部カメラで様子を見てくれるだろうに』
『本部からの連絡が来るまでの間、監視する方法も考えないといけませんね』
雨の影響がない地下のセーフハウスはヒーローたちが準備を整える中継点として活用されている。地下通路の一角にある普通の部屋のようにしか見えないが、実はさらに地下があり、ヒーローたちの隠れ家として使用できるようになっている。
いくつも部屋はあるため光を浴びないようにすることはたやすいが、監視するとなれば途端に難易度は跳ね上がる。ゴーグルが無い今、洗脳者を見ることだけでも一苦労なのだ。
そして、洗脳者をまとめておくことでマンキニヒーローこそ正しいのだと共通認識ができてしまえば、もはや手元に爆弾を置くことと同義になってしまう。それは悪手だと彼らは理解しているため、声掛けができる範囲で隔離という条件も付いてしまう。
それでも彼らはてきぱきと洗脳深度によって隊員をふるい分け、再編成をしていく。監視していたオペレーターたちが納得できるものを最速で行い、すぐさま行動可能な四五課合同チームが出来上がる。
危険状態のヒーローたちを縛ってから一ヵ所に集め、他のヒーローたちが背中を向けながら声をかける。単純だが今できる最善を尽くしたと、指令室で映像を見ているアガラリオラも不満はない。
『マスキュリオン』獅子と肩を並べたワニが口を開く。『指令の通信を覚えていますね』
『ああ、当然だ。あの様子じゃ、六課が壊滅だろうな』
『つまり、私たちに科学技術研究所への調査依頼が回ってくる可能性が高い』
『……どっちが行く?』
現状を把握し次の手をすでに頭の中で描いている彼らは、当然のように会話を続けていく。
科学技術研究所の調査は彼ら合同課に割り振られるとするならば、当然それを指揮するリーダーが必要だ。つまり彼らは、洗脳被害者を本部に引き連れてメンタルケアを受けるために先導する者と動けるヒーローたちを引き連れて調査に向かう者、ワニと獅子のどちらが引き受けるのかと相談していた。
『貴方は手柄を司令に見せびらかしたいでしょうし、譲りますよ』
『はんっ! 見せびらかさなくたって、俺の優秀さを司令はよーくご存じだよ。っま、もらえる手柄はもらっておくさ』
『では次に司令から連絡が入ったときには、そのように進言しましょう。私は本部に戻り、洗脳の予兆が見られる課員にメンタルケアを受けさせ……』
『俺が無事な奴らを引き連れて研究所を調査する、で行こうぜ』
『了解しました。ただ、六課も壊滅したとなれば、半分のヒーローが寝返ったということになります。その状態で調査を命じられるかは不透明ですが』
『それはまあジャラードさんの結果次第だな。もし駄目なら……退路確保か本部防衛が仕事になるだろう。司令は絶対に守らねえといけねえし』
『……貴方の司令大好き思考は置いておくにしても、それに意義はありません。なにせ、指令は全ヒーローのトップなのですから』
それを聞いているアガラリオラは複雑そうに視線を下げる。気持ちは嬉しいが、前線を張ってもらっている手前、ここで尻尾を巻いて逃げるのは彼の矜持に反するのだ。本来ならだれよりも前に出たいという気概を持っている彼にとって、司令室は狭すぎる。
「……そんなことにならないように頑張らねばな。セーフハウスの保護はできているか?」
「はい。全システムをロックして、指令室以外からの操作を封じています。もとからヒーロー本部管轄の建物ですから、問題ないはずです」
「よし、それなら今のうちに通信の奪還と、近場のヒーロー支部から応援を募ってくれ。そろそろ敵のデータも採れたことだ、外部のヒーローを呼んでも問題ないだろう」
「わかりました。いくつかの支部より臨時でヒーローを回してくれると返信が来ております。渡した情報はまだ解析途中ですが、その脅威は十分伝わっているはずです」
「歴戦のヒーローが一瞬で洗脳される。そんなものがあっていいはずないからな」
セーフハウスに逃げ込めたとはいえ、状況が依然不利なことに変わりはない。頼みの綱であったゴーグルを外したままであり、一瞬の油断が命取りになるのだから。
『情報を整理しましょう』
そんなことは彼らもわかっている。だが、常に冷静なワニは先を見据えていた。
『今仮想敵は科学技術研究所の所長となっていますが、これに異議はありません。ヒーローを知り尽くした手腕の数々、そしてスーツのハッキングだけでなく洗脳手段の組み込みまでを考えれば、十中八九間違いないでしょう。仮に所長が根源でなかったとしても、何らかのつながりがあるのは確定かと想定できます』
『しかもシステムのハッキングときてる。こうなりゃ、最初のダミーのハッキングは俺らを動かすためだけじゃなく、システムに爆弾を仕込む何らかの準備だった可能性が高いな。相当入念に準備してやがるぜ』
『ではそれを踏まえて聞きましょう。マスキュリオン、貴方はヒーローの中に裏切り者がいると思いますか?』
その言葉が流れた瞬間、司令室にも緊張が走った。現状後手に回って対処に追われているオペレーターたちにはそんなことを考える余裕がなかったゆえに、クロックパンプの提示した視点は衝撃的だった。
数人が司令へと不安そうな視線を向ければ、アガラリオラは神妙に頷いて落ち着くように指示をするだけ。彼は元からその可能性を十分吟味していたが、口にしなかっただけなのだ。
なぜなら――――
『俺はいないと考える』
『なぜですか?』
『仮に俺らを秘密裏に洗脳できる手段があるとするならば、こんな事件を起こす必要が無いからだ。こっそり勢力を広げて、指令を洗脳して終わればいいだけの話だろ。今頃司令なら他の支部に情報を回している。情報ってのはばれちまうと効果が薄れるんだ、そんな危険を冒してまで事件を起こすとするなら、それ相応の理由が必要だ』
『例えば、洗脳後の変容が大きいため、隠し切れないとかでしょうね。人を洗脳するというのは並大抵のことではできません。ましてや我々はヒーロー、対策も履修済みです』
『だからあんな変態的な洗脳なんだと思うぜ。あそこまで人格を歪めねえと、効果が無い。ってことは、誰かが洗脳されればすぐばれるし、ヒーローの中に裏切り者は作れねえ』
『そして持続力がないのでしょう。オルタナヴィアたちを見ている限り、記憶まで操作されているわけではありませんでした。つまり、ヒーローとしての意志さえしっかりしていれば、いつか解けるかもしれません』
『快楽を付随させてる理由ってそこだよな。洗脳への依存度を高めて、効果を長持ちさせようって魂胆が透けて見えてる。だから、さっきから『雨』が降ってやがるんだ。これが止めばあいつらが元に戻る可能性がある……これで満足か?』
『はい。マスキュリオンが同じ結論でいてくれて、助かりました』
『ったく、お前もリーダーなんだから、部下への説得は自分でしろよ』
通信も使わず部下たちが聞こえるように会話を持ち掛けたのは、彼らを安心させるため。洗脳に抗う部下たちへ声掛けが必要としているのはクロックパンプもわかっているが、励ましなどを苦手としているため、マスキュリオンと共に現状を整理することで彼らに希望を見せた。
これによって、洗脳にむしばまれているヒーローたちが自我を分厚くすることができる。マスキュリオンはその意図を察して、ワニの話に乗ったのだった。
アガラリオラもおおむね似たような結論を持っている。それでも竜が口を開かなかったのは、混乱を避けるためでしかない。
そのことをマスキュリオンたちも理解していることを確認して、竜はほっと胸をなでおろした。
「司令っ! 第三指令室が通信の回復に成功しました! これでリーダーたちと交信できるはずです!」
「よくやった! ゴーグルやスーツのハッキング対策はどうだ?」
「そちらも第二指令室から問題なしと報告が上がっています」
これでやっと彼らに連絡を入れ、作戦を遂行することができる。ゴーグルの着用さえできれば、洗脳への対策は万全だ。
そう勇んだアガラリオラだったが、それはほんの少し、タッチの差で遅かった。
窓の外に異変が起きたのは、司令官の指示が届く数秒前のこと。この差がすべての明暗を分けたのだった。
「なんだっ! 外に煙が……オルタナヴィアたちか?!」
「い、いえっ! オルタナヴィアさんたちはまだたどり着いていないはずです! これは……」
『発煙筒っ?! 誰がこんなものを!』
答えは現場のヒーローが驚愕を以て教えてくれた。セーフハウスにある窓から近くに置かれた発煙筒がもくもくと煙を流し続ける光景が映る。それは地下街を覆い隠し、ヒーローたちを取り囲んだ。
「これは……民間人です。付近にいた民間人がセーフハウスに発煙筒を投げ付けたようです」
「洗脳済みの民間人か……! だが、ただの発煙筒だ。セーフハウスの窓はすべて特殊加工されている、この程度なら…………いや待てっ! まずいっ!」
アガラリオラが気づいたのと、リーダーたちが気づいたのは同時だった。
『全員、すぐにゴーグルを着用するように!』
『お前らっ! 今すぐゴーグルを着けろ!』
とっさにゴーグルを取り出せたのは獅子とワニだけであり、その声が課員たちへと届く前に――――
――――スプリンクラーが発動してしまった。
『ぐおおおおおぉおぉ❤❤❤❤』
地下は火災対策を徹底している。防火扉はもとより、スプリンクラーも完備だ。そして、ヒーローたちを洗脳するのは『雨』という情報。
その結果が、洗脳されていくヒーローたちの断末魔だ。『雨』はスプリンクラーに仕込まれていたのだ。
『んおおぉん❤駄目だっ❤マンキニっ❤洗脳される❤❤❤ちんぽ気持ちよくしたいしたいしたいいぃいぃ~❤❤❤』
『マンキニが、染みこむうぅうぅ❤❤❤ヒーローはマンキニを着るべき❤そうだ、そうだったんだああああぁ❤❤マンキニ❤マンキニいいぃ❤❤❤』
一人、また一人と『雨』に打たれたヒーローがマンキニ姿に変わっていく。勃起させたものを見せびらかしながら、鍛えた体で卑猥なポーズを取って気持ちよくなってしまう変態へと。
『お前ら、落ち着け! まずはゴーグルを着けて皮膚を保護しろ! さっきの光と同じように、この情報ってやつは何かかませれば無効化できるんだ!』
そんなマスキュリオンの声など誰にも届いていないようで、狂乱の声はますます激しくなるばかり。濡れた肢体から白濁が何本も飛んで、狂った嬌声を響かせる。
黒獅子のそばにいたサイのヒーローは灰色の巨躯に黄色のマンキニを身に着け、アヘ顔を決めながら必死にポージングをしていた。むちむと実ったおっぱいを揺らしながら何度も射精し、がに股の足元を白く汚し続けている。
『ルーヴァルデイン! お前もヒーローだろうが!』
『申し訳ありませんリーダー❤❤マンキニ❤マンキニ❤❤❤マンキニちんぽきもちいぃいぃ~❤❤洗脳されで❤ヒーローとして終わってしまうというのにっ❤ちんぽが❤んひぃ❤気持ち良すぎて止められませんんんんん❤❤❤』
『アンテリバル!』次に呼んだのは黒いマンキニを付けた虎のヒーローで。『ヒーロースーツの変形機能を使用するな! ゴーグルを着けろ!』
『マンキニ❤マンキニ❤❤マンキニ❤❤❤マンキニ❤❤❤❤マンッ❤キニイイイィィィ❤❤❤申し訳ありません❤すでにおれはマンキニヒーロー❤ちんぽの気持ちいい方が正義なのです❤❤マンキニ❤❤❤勃起ちんぽこそ❤正義の証いいぃいぃ❤❤❤❤』
すでにセーフハウスの中は隆々とした男たちの変態ポージング会場に変わっている。
これこそが正義だと信じた慣れの果てたちは、自身のちんぽを気持ちよくすることしか考えられず、射精の瞬間を嬉々として迎える変態だ。マンキニから飛び出す勃起はどれも限界まで張り詰めており、血管を浮かべて天を突いている。
敵がゴーグルを外したのは、光による洗脳を通らせる意味もあったが、皮膚を露出させる意味もあったのだと、ようやく彼らは理解した。それが致命的に遅かったことを理解しながらも、アガラリオラは止まれなかった。
「遠隔でスプリンクラーを停止できるか?!」
「すぐに!」
セーフハウスのセキュリティはしっかりと管理できているため、『雨』はすぐさま止んだ。
だが、洗脳されたヒーローたちは戻ることはなく、濡れた体で何度もマンキニポーズをしながら悦に浸る。一瞬の隙を突かれて、二つの課は壊滅していた。
それでも希望を見捨てないのがヒーローだ。
マスキュリオンはゴーグルをつけた同胞、クロックパンプに近づいて叫ぶ。
『畜生! ここはもう駄目だ、俺らだけでも今すぐ本部に撤退するぞクロックパンプ!』
『え、ええ……』
『お前までどうした?! お前はちゃんとゴーグルを着けてんだろうが! なに洗脳されかかってんだよ!』
『すみません、マスキュリオン……実は、先ほどの光で洗脳された後遺症が出て……今、とてもマンキニが……着たいのです……!』
『はぁ?! お前、まさか……さっきの分担の話は、自分がメンタルケア受けたいからってことだったのかよ!』
『はい、リーダーへの信頼が揺らぐと洗脳が進むだろうと判断し、部下の前では言えませんでしたが、かなり……浸食されていると思われます』
こうしてマンキニに耽溺している姿を見るだけでも混ざりたくなるほど、クロックパンプの状態は深刻だった。今までは意志の力で押さえつけていたが、世界がマンキニに染まってしまえば、興奮がワニの体をなぶってしまう。
「クロックパンプ!」
それを見ていたアガラリオラがすぐさま通信を入れ、ワニに喝を飛ばす。同時にオペレーターへと指示を出し、洗脳に抗っているヒーローのケアを行った。
『し、司令……❤ああ、司令のマンキニ姿が見たいと、思ってしまいます……❤マンキニこそ、ヒーローの着るべき……』
「衣装などでは、断じてない!」
洗脳を脳からはじき出そうとするかのような大声が、ヘッドホンから響き渡った。
「そこまで耐えたお前の意志を信じろ! お前はまだヒーローだ! そのような洗脳に負けることなど、おれが許さん!」
『そうだぜクロックパンプ! 今は撤退して、ケアを受けろ! このままだと俺らもあいつらと同じになっちまうだろうが!』
マスキュリオンの言葉は正しい。そして、判断も正しい――いや、正しかったと言える。
ここまで的確だった獅子のたった一つの間違いは、クロックパンプを連れて行こうとしたこと。そのために背後でマンキニヒーローになった元同僚たちに背を向けてしまったことだった。
「……っ! マスキュリオン、後ろだ!」
『ちぃ、しまった……!』
アガラリオラの言葉ですぐさま自身の間違いに気づいたが、もう遅い。
いくらマスキュリオンがリーダーになるほど優秀なヒーローだったとしても、ここはすでに二つの課のほとんどが洗脳された、いわば敵の巣窟と化している。そんなところで隙を見せればどうなるのかなど、火を見るよりも明らかなことだった。
『アンテリバル……てめえ……!』
マスキュリオンは殴りかかった元同僚に鋭い視線を向ける。
『すみませんリーダー!❤しかし、すべてのヒーローはマンキニヒーローになるべきなのです!❤❤この気持ちよさを一緒に❤味わいましょう❤そして正義を成すのです❤マンキニ❤マンキニ❤マンキニ❤❤』
虎の拳は獅子に当たらなかったものの、ガスマスクを打ち据えてゴーグルごと歪ませた。
だが、それだけでマスキュリオンが詰んだことをアガラリオラは理解した。
光は隙間さえあれば、どこからでも入り込むのだから。
『……司令』
「マスキュリオン! お前だけでも撤退するんだ! 今すぐ!」
声を荒げる竜に対して、獅子は申し訳なさそうな声音で返すだけ。
マンキニヒーローに囲まれた今、逃げ場などないことはすでにわかっている。それでも竜は喉が枯れるほどの勢いで叫ぶしかできないのだ。
『悪い、失敗しちまった。……あーあ、司令に俺の情けねえ恰好を見せるなんて死んでも御免だったのによ』
そして、光がすべてを覆いつくした。
「マスキュリオン――――っ!」
多くのマンキニヒーローが放つ洗脳光は部屋を埋め尽くし、竜の叫びさえ飲み込んでいく。隙間からの洗脳では不十分なのではないか、そう希望にすがって呼びかける竜であったが現実は残酷だ。
光が収まった後に残されたのは、マンキニを着た変態ヒーローのみだったから。
【続きは来月の支援者限定公開となります】