女神の加護を受けた勇者が現れた。
その知らせは世界中に広まり、魔王を打倒し平和をもたらしてくれるに違いないと、希望が芽吹き始めている。
世はまさに混沌の時代であり、魔族と生存をかけた熾烈な戦いが各所で繰り広げられている。
そんな中で、勇者到来の知らせは吉報として民を沸かせたのだ。
だが、人々は知らない。
女神に愛された勇者がくそ野郎であることを――――
「はあ……」
もう何度目かもわからないため息を兜の中で反響させながら、ヴルネイは目の前の惨状を憂いている。
隆々とした肉体をフルプレートの鎧で包んだ虎にとって、この勇者は頭痛の種以外の何物でもない。
勇者用にとあつらえられた豪華な宿の一室では、実に低俗なやり取りが行われていた。
「やだーーーー! 今日こそは娼館に行くんだ! 放せ! おれは今日、漢になる!」
「駄目ですってば! 女神様は嫉妬深いお方! 世俗の女性と交われば、加護が無くなってしまいます!」
「そんなの知るか! 世界よりおれの童貞消失の方が大事なんだ! 男ばかりの環境なんて、もうこりごりだーー!」
逃げ出そうとわめく白獅子を赤牛が必死に引き留めている。
上質な装備を身に着けた獅子は黙っていれば美麗な見た目なのだが、発情期のケダモノさながらの言葉を吐いている。よく見ればその股間はすでに臨戦態勢になっており、理性などない醜態に、虎の脳裏でつぶすという選択肢がよぎった。
「ヴルネイさんも手伝ってください! 勇者様は世界のために必要なお方なんですから、加護を消失なんて絶対に駄目です!」
白いローブを来た赤牛、ロンベグが泣きそうな声で救援を求めている。
勇者に尽くすよう教会から派遣されてきた神官にとって、その暴挙を見過ごすことができないのは虎にもわかる。だが、毎日毎日繰り返される日常に、さすがのヴルネイも辟易としていた。
ロンベグは戦えるよう鍛えられた神官であり、綺麗な赤の毛皮はしっかりとした筋肉で盛り上がっている。だが残念ながら白獅子は勇者であり、加護によって腕力も相当に強くなっていた。
「だいたい暑苦しすぎるんだよ! どこを見てもガタイのいい雄しかいねえ! 普通可愛い女の子を一人くらい入れるもんじゃねえのかよ!」
「入れられるわけないだろうが馬鹿」思わず虎がうなった。「女神様は嫉妬深い。同じパーティに女性を入れて反感を買えば、どうなるのかわからんのだぞ」
「知ったこっちゃねー! なんでおれが勇者なんだよ! おれが騎士になったのは女の子にもてるためだぞ! どうして雄にもてなきゃいけねえんだ!」
「悪いが俺はお前のことを一ミリも好きじゃないぞ」
「それはそれで悲しいだろ! もっとおれのことを好きになれよ!」
「死ぬほどめんどくさいなこいつ……」
虎は尽きることないため息を吐きながら、今度はどうやって落ち着かせようかと頭をひねっている。前回は本気で頭を殴ってしまい、ロンベグに怒られてしまった。
じゃあ次は腹だなと拳を構えたとたん、殺気を察知した獅子がそそくさと赤牛の後ろに隠れてしまった。
「お、お前、今おれのことをぶん殴るつもりだっただろ?!」
「股間をねじ切られないだけ、ありがたいと思ってほしいんだが……」
「何か悪いことか? みたいな声をするなー!!」
白獅子の勇者カランがテンポよく突っ込むが、それでほだされる虎ではない。むしろぶちぎれていないだけまだ有情だったりする。
ヴルネイとて好きでこんなことをしているわけではない。聖鎧教で行われた選定の儀という、勇者の仲間を選ぶ儀式で指名されたから仕方なく付き合っているだけなのだ。
勇者の仲間と言えば聞こえはいいが、実際のところは人身御供だとヴルネイは思っている。ただの宮仕え騎士だった虎にとって、この大任に対してはめんどくさい以外の感情が無い。
「ロンベグ、そろそろ股間をねじ切ったほうが楽だと気づかないか?」
「さ、さすがにそれは無情が過ぎませんかね……?」
「だがどうせ今後ずっと性欲に悩まされるくらいなら、いっそのこと取り払ったほうが優しさだろ」
「うーん……そうでしょうか。女神様は素のカラン様をお慕いしていると思うので、できれば現状のままがいいと思うのですが……」
「おれの! 意見を! 聞け!」
「なら切り取るのと握りつぶすの、どっちがいい?」
「取る前提で話すな!」
こうしてやいのやいのと騒がしいのが日常になっている勇者パーティは、何も解決しないまま、今日も冒険へと出かけるのであった。
****
「はあ……」
もはや癖になっているため息で区切りをつけて、ヴルネイは座り込んだ。
外では勇者パーティとしての品格を求められるため、宿屋に戻ってようやく肩肘から力を抜くことができていた。
「お疲れ様です。今日の魔物は手ごわかったですね」
赤牛がコップに水を入れて持ってきてくれた。虎は感謝を述べてから受け取ると、一気に流し込む。自分が想像以上に疲れていたのだと知り、またもため息を漏らした。
「そうだな。だがやはり、腐っても勇者だな……危なげなく倒せてしまった」
「騎士としての訓練も受けていましたから、基本的な戦い方は問題ありませんしね」
「それで、あの馬鹿は?」
「疲れて眠っていますよ。女神様の加護は体に負担がかかりますから」
「そうか……」
「一応結界は張ってあるので、抜け出そうとすればすぐにわかるはずです」
ここまで付き合えばさすがにロンベグも手慣れたもので、扱い方を心得ている。
もてるために騎士になったと言ってはばからないカランは、外面がものすごくよい。今日の魔物退治でも、報酬を渡そうという意見を拒み、復興に当てるよう指示している。人気取りに余念がなく、童貞喪失が目標だと知っているのは彼ら二人だけだった。
そのため、顔のつくりも整っている白獅子は市井での人気がうなぎのぼりになっている。町を歩けば黄色い歓声が響き、常に人目にさらされた状態だ。勇者をモチーフにした物語なども吟遊詩人が好んで歌うことから、仲間である虎や赤牛の相貌も知れ渡っていた。
だからこそ、こうしたプライベートな空間でなければ、ヴルネイはため息をつくこともできないのだ。
「お前も大変だな。あんな奴に仕えないといけないなんて」
「それが私の使命ですから。そのために今まで教会で育てられてきたのです。覚悟はできております。むしろ、ふいに抜てきされたヴルネイさんの方が大変ではありませんか?」
「そうだな……まあでも、気楽ではある。あいつは馬鹿だが悪人ではないからな。馬鹿さ加減に目をつぶれば、気ままなもんだ。問題はその馬鹿さ加減にほとほと嫌気がさしているっていうところなんだが……」
「カラン様も、いつかわかってくださればいいのですけど……」
「俺としちゃ、ちょん切ったほうが早いと思っているがな」
虎の過激な発言に肯定も否定も返さず、ロンベグは困ったように眉を下げるだけだった。
ヴルネイも半分本気ではあったが、それ以上の言及は避ける。頭痛の種がおとなしい今、わざわざため息の数を増やす必要もないのだから。
「そのことなのですが……」
だが、赤牛はおずおずと口火を切り、虎へ現実を直視させようとしている。
「お気分を害したら申し訳ないのですが……ヴルネイさんは男色の経験がありますか?」
「人並みには。騎士なんて上下関係が激しい世界だからな。求められたことは……ないことはない」
「なるほど。ヴルネイさんなら、皆さんに好かれるのも当然ですよね」
「褒めすぎだ。それで、どうかしたのか? ……まあ、言いたいことは大体察しがついたが」
嫉妬深い女神を祀る聖鎧教は、聖職者にも清廉潔白を求めることでも有名だ。だから男性同士での交流が盛んであり、赤牛もその価値観が染みついている。
「私は勇者様にお仕えするために、その、夜伽の方も仕込まれております。……あ、もちろん、本番はまだですよ! 最初は勇者様に捧げるよう、言われておりますから!」
「はあ、つくづくお前も大変だな……同情しかしない」
「い、いえ、それが私の使命ですから。……カラン様は女性との性交を強く求めていますが、男性も悪くないのだと思っていただければ……」
「毎日やっている馬鹿みたいな騒動も治まるかもしれん、ということか」
「おそらくは……」
虎からしても悪い話ではない。どうせあの獅子は一生潔白を貫かねばならないのだ。なら、早いうちに諦めてもらうに越したことはない。
「なので、これからカラン様を誘惑していこうと思います。だから、私がただふしだらなだけだと思わないで欲しいのです……」
「事前に根回ししてくれて助かる。何も知らなければ、お前が壊れたのかと思ってしまうところだった」
「ふふ、それはそれで慌てるヴルネイさんが見られたかもしれませんけどね」
「勘弁してくれ……」
額を押さえる虎に、赤牛が薄く笑う。世間から勝手な勇者一行像を押し付けられているヴルネイにとって、ここだけが癒しだった。
ロンベグは赤く綺麗な毛皮に金色のたてがみを持つ屈強な雄牛だが、こうして笑うと周囲に柔らかい雰囲気が形成される。普段青筋を立てることが多い虎が、この柔和な笑みに何度救われているのかわからないほどだ。
「まあ、俺も経験は人並みくらいにはある」
ヴルネイは鎧を鳴らして立ち上がり、赤い手から空になったコップを奪い取る。
「だから誘惑の人手が欲しいならいつでも言ってくれ。……想像通りあんまり得意じゃないが、それで胃痛から解放されるならやってみるさ」
「あ、片付けなら私が……」
「持ってきてくれたんだ、それくらいさせてくれ。お前も疲れてるだろ」
「私はヴルネイさんのような重装備ではないので、そこまで労力がかかりません」
「この程度、問題にならんよ。俺にとってこれは服みたいなもんだからな」
「ふふ、そうですか。ではお言葉に甘えて、お願いしますね」
全身をフルプレートの鎧で覆う重戦士ヴルネイ。彼は表情の読めない兜や大きな体躯、加えて緩急の少ない話し方のせいで勘違いされやすいのだが、根は善良なのだ。
選定の儀で選ばれるだけはあると、ロンベグは改めて女神への祈りをささげるのだった。
こうして、ロンベグによる勇者ホモ化作戦が始まった。
「……どうでしょうヴルネイさん、私変じゃありませんか?」
「いや、まあ……変と言えば変だが……それでカランを起こしに行くのか?」
朝早くからヴルネイの部屋にやってきた赤牛の恰好は、お世辞にも聖職者がしていい格好ではなかった。
乳首だけを隠すブラに納まりきらず根元をさらけ出すパンツ、いわゆる極小ビキニのような恰好をしたロンベグがちらちらと虎をうかがっていた。
ロンベグは普段ローブで隠しているたくましい肢体をさらけ出しており、その屈強な筋肉と恰好のミスマッチさにヴルネイは何と言っていいものかと頭をひねる。
生い茂る陰毛や腋毛などは当然として、腕や脛にまで金の毛を混ぜ込んでいるのだ。この赤牛は柔和な顔から想像もつかない雄々しさを持っていた。
そういうのを好む層がいることは承知しているが、あのノンケ勇者が見たら卒倒するんじゃないだろうか。虎はそんな意見をどうにかマイルドにできないかと、寝ぼけた頭を必死にひねる。
……が、何も出てこなかった。
「はい、香水などにも気を配りましたし、男性はこういった衣装を好むと教わっております」
誰にでも似合うものと似合わないものがあるんだと、ヴルネイは今すぐにでも力説したかった。ご丁寧に鼻輪まで着けてきたその気概こそ買うが、絶対に方向性が間違っている。雄がトラウマになるんじゃないだろうか、なんてことまで考えていた。
だが、赤牛は鎖骨まで伸ばしたみつあみを弄りながら、虎の言葉を待っている。
ロンベグは男を悦ばせる教えを受けてはいるが、実戦は初心者だ。ましてや相手はノンケの女好き。ヴルネイは、経験はあると言った昨日のうかつさをさっそく呪い始めていた。
「ヴルネイさんから見て、私は魅力的に見えているでしょうか……?」
「あー……俺の好みがあいつの好みとは限らんしな……」
「それは承知の上ですが、カラン様はナイスバディな女性を好むとリサーチ結果が出ております。手前味噌で恐縮ですが、これでも教会の戦闘訓練での成績は上位でしたし、今でも肉体の維持は怠っておりません。体の分厚さには、少々自信があります」
男性の豊満と女性の豊満は違うのだと、男色はびこる教会で育ったロンベグに説くのは難しい。赤と金で作られた雄々しさの権化を前に、虎は説得を諦めた。
元より口下手な性分であり、赤牛の真剣な目を見てしまえば引き留めるのも気が咎める。ひとまずはやらせてみようと、思考放棄の構えに入った。
「そうだな、お前は十分魅力的だ。……まあ、あくまで俺からしたらの話だが」
「いいえ、そう言ってもらえるだけで自信が持てます。カラン様にもそう思っていただけると嬉しいのですが……」
ロンベグは嬉しそうに顔をほころばせて歩き出し、勇者へと続くドアノブに手をかける。
「あの……」だがそこで恥ずかしそうに顔を伏せて。「昼までには終わらせるつもりですが、もし戻らなければ……今日の予定はすべてキャンセルさせてください。申し訳ありません、せっかくお誘いいただいたのに……」
今日は休息日ということで旅の予定などは何もなく、羽を伸ばすためにヴルネイはロンベグを誘って食事に行く予定だった。
だからこそ勇者の寝込みを襲うことができているのだが、虎は表情の分かりにくい兜の中でこっそりため息を吐いて取り繕った。
どうせすぐ帰ってくる、そんな言葉を飲み込んで。
「しょうがない。世界のためにはそっちが優先だ。それに一緒に行動していれば機会はある。その時はまた相手をしてくれ」
「はい。今度は私の方からお誘いいたしますね」
そうして決意を込めた足取りで突撃をかけた赤牛の後ろ姿を見送って、ヴルネイは肩を落とす。鎧がガチャリと硬い音をたてるとともに、辟易とした声が兜から漏れてきた。
「まったく……俺はいったい何をしているのだか……」
あれではうまくいくわけないとわかっていても、止めることはできなかった。ビキニの紐をはさんだ豊満な尻が扉に消えるまで、できたのはただ視線を注ぐだけ。
はみ出した細い尻尾が、鎧に覆われた虎で唯一感情がわかりやすい部位だろう。
それは肩と同じようにしょんぼりとしおれ、どう見ても気落ちしている。
「何が悲しくて、あんな奴に抱かれるロンベグを見なきゃならんのだ……」
勇者パーティで守りの要であり、感情の起伏がわかりづらいとよく言われる男。そんな彼は今、ひそかにロンベグへ懸想している最中なのであった。
品行方正を求められる世間での堅苦しさやカランのお守に辟易とする中、あの赤牛だけが虎にとっての救いなのだ。信頼が愛情に代わるまで、そう時間はかからなかった。
ヴルネイはそわそわと兜の顎部分をさすりながら、先ほど見た赤牛の肢体を脳裏に反芻している。
「危なく俺が手を出しそうになったじゃないか……凝視してたのばれてないよな……?」
兜で視線がわからないのをいいことに、胸元や根元をガン見していた。旅の最中、水浴びで何度も見る機会はあったのだが、こんな近くで拝めたのは初めてだった。
だが、どれだけ懸想していても、赤牛は聖鎧教の神官だ。勇者に仕え、純潔を捧げることを使命にしているため、ヴルネイの入る隙間などあるはずがない。
「カランめ……」
完全に私怨の入ったつぶやきが消えるかどうかの瞬間に、くだんの勇者が出す叫び声が宿に響き渡る。
まあそうなるだろうという虎の予想はぴたりと当たった。ノンケにとってあの猛牛は恐怖の対象でしかない。いくら温和なロンベグだろうとも、体は雄でしかないのだ。
「暴言など吐かれて、ロンベグが傷ついてないといいのだが……」
だとしたらそれを慰めるのはヴルネイの役目だ。彼は重い脚を動かして、愛する人を迎えに部屋へと踏み入れた。
****
「悪夢かと思った……」
げっそりとした白獅子のつぶやきに赤牛はしゅんと身を縮こまらせる。発狂したカランによってローブを着せられ、一見すれば中に極小ビキニを着こんでいるとはわからないだろう。
三人は部屋で食事をとっているのだが、明らかに獅子の食欲は無いようだった。普段であれば平らげる量も、ちまちまとしか減っていない。
結局ロンベグは早々に戻ってきたもののデートするテンションではなく、いつも通りの食事をすることになってしまった。虎にそのことを悔やむ気持ちはあるが、気落ちした赤牛をなだめる方が優先だ。
「申し訳ありません、男性はああいうものを好むとばかり……」
「いや、合ってるけどさ……おれは可愛い女の子が着る水着が好きなのであって、お前じゃないからな?」
「肝に銘じておきます……」
全力の拒絶がこたえたのか、ロンベグのフォークも進みが遅く、食卓を包む重苦しい空気にヴルネイはどうしようかと兜の中で頭を抱えている。
それでも神官としての使命を全うしようとする赤牛はくじけない。
「ですが、私は勇者様にお仕えする者です。カラン様は今後女性との交流を制限される以上、その身で猛る性欲を私が処理して差し上げたいのです……」
「……その気持ちはありがたいけど、おれは女の子での脱童貞を諦めたわけじゃないぞ」
「いけません! カラン様が加護を失えば、誰が魔王を倒すというのですか!」
「女神が直接やればよくない?」
あまりに不敬すぎて傍で聞いていた虎も思わず手が止まってしまった。ロンベグにいたっては口をあんぐり開けて言葉もない様子だ。
「お前、それは絶対外で言うなよ……」
「わかってるよ。けど、おれだって勝手に選ばれた愚痴くらい言わせてくれてもいいだろ」
「それもそうだが……せめてロンベグの前では抑えてやってくれ」
「嫌だね」
思ったよりはっきりと言われて、さすがの虎も面食らう。
「前から思ってたんだけどさ、ロンベグは使命使命って、別に本当におれとやりたいわけじゃないんだろ? そんなの可愛そうだし、おれも立たねえよ」
「……珍しくまともなことを言う。娼館で脱童貞しようとしていた奴とは思えんな」
「娼館の女の子は仕事だから、おれも金払うし。でも、ロンベグは完全無私で、おれにとって都合のいい男じゃん。なんか申し訳ねえんだよなあ……いやそもそも男相手に立たねえんだけどさ」
思ったよりまともな返答を返されて、ヴルネイは返す言葉を失った。女好きのくそ野郎ではあるが、やはり女神の加護を受けるだけはあるのだ。
「そんなことはありません」小さく顔を横に振った赤牛が。「私は幼少の頃より、勇者様にお仕えするために育てられてきました。それが私の存在意義だからです。ですのでどうかご遠慮なさらないでください。この体はすべて、カラン様に使っていただきたいのです」
「そういうところなんだよなあ……」
カランが持つ常識は聖鎧教内部で純正培養されたロンベグには通じない。虎としては赤牛の肩を持ちたいが、今回ばかりは獅子の味方だった。
「せっかく旅に出ているんだ。いろんなものを見てからでも遅くはないだろ?」
「そう! ヴルネイの言う通りだ。ロンベグもさ、教会から出たんだし、知見を広める絶好の機会じゃん。そしたらいい出会いとかあるかもだし……」
「いえ、女神様の加護がかかっている以上、カラン様には一刻も早く性癖を拡張していただきたいのです!」
ロンベグにしては珍しく切迫した物言いに、二人は呆気に取られてしまう。赤牛は鼻息を荒げて、獅子のホモ化にやる気を見せている。
その理由はいたって簡単だ。もちろん勇者のためというのもあるが、それ以上に――
(でないと、私がヴルネイさんといたすことができません!)
女神を祀る聖鎧教の神官ロンベグ。誰にでも優しく、絵に描いたように清らかな男であり、模範的な聖職者だが、実はヴルネイのことを好いていたのだ。
初めては勇者に捧げよと教育を受けている彼は、裏を返せば、初体験さえ済ませてしまえば好きな人とできるのだと解釈している。そのため、何としてもカランには自分を使ってもらいたかった。
ヴルネイの力強くも優しい包容力は旅に出たばかりの不安だったロンベグにとって、何よりもありがたいものだった。騎士として経験豊富な彼はいつも落ち着いていて、側にいるだけで心休まることができる。
だから気付けばいつの間にか、好意が彼の中に生まれていた。
「カラン様の好みに合わせるよう努力いたします。ですので、私にチャンスをいただけないでしょうか……」
「まあ確かに、俺も毎度毎度カランの馬鹿騒ぎにはほとほと呆れかえっているからな。ちょん切るか男とやるかを選んでほしいのはある」
「だから! おれの意志は?!」
「残念だが、勇者に選ばれた以上無理だな。選定の儀で選ばれた程度の俺ですら、毎日が堅苦しいのに」
神の決定を前に、人権は意味をなさない世界だ。虎はカランの感情を理解できるものの、どうにもならないことだと諦観が入っている。
それでも根がお人好しでもあり、ロンベグの手助けをしたいという意味でも、食事を終えた虎はしれっと助け舟を出した。
「ロンベグが駄目なら、俺でもいい。俺個人としてはお前とやるなど反吐が出そうだが、世界のためなら一億歩譲って認めよう」
「そこまで嫌ならやらなくていいだろ! おれだってお前みたいな岩山みたいな大男、お断りだよ!」
「最初はそうだろうが、まずは触ってみるだけでもいい。ロンベグのやり方は少々刺激が強すぎたんだ。最初は俺も男とやるのに抵抗があったが、慣れるとそんなに悪いものじゃない」
「だ、駄目です!」
だが、虎の想いは届かず、ロンベグは勢いよく立ち上がって椅子を鳴らす。
「ヴルネイさんのお手を煩わせることなどありません! これは私の使命です!」
(駄目です駄目です駄目です! ヴルネイさんは選定の儀で選ばれた勇者のパートナー。すなわち、お二人の相性はものすごくいいはずなのです! 今はまだですが、ベッドを共にすることで、もしお二人が結ばれるようなことになれば……!)
「お前の熱意は認めるが、世界のためなら協力したほうがいいだろ?」
(ロンベグ、そこまでこいつのことを……。やはり勇者に仕える神官にとって、俺なんぞ邪魔者にしか映っていないのだろうか……)
二人はお互いのことを想いながらも、すれ違い続けていく。矢印は向き合っているというのに、それを口に出す勇気がないのだ。
ヴルネイは神官の一番は勇者だと信じており。
ロンベグは重戦士と一番相性がいいのは勇者だと信じている。
こうして勇者ご一行は解消できないもやもやを抱えたまま、共に過ごすことになる。
数日たっても、彼らの関係性に進展はなかった。
ロンベグはあきらめることなくアプローチをかけ続けるが、カランにはまるで効かない。娼館に行けば大枚はたいても抱くことが叶わないような肢体でも、ノンケにとっては対象外なのだ。
「私、気付いたんです。前までは性器を強調していたのが悪かったのだと」
普通のローブ姿の赤牛は、気を入れて鼻息を鳴らした。
魔物退治を終えてへとへとになったカランは、お風呂上りで湿った毛皮をロンベグに拭かれるまま、げんなりと尻尾をへたらせた。だが逃げることはなく、話に耳をそばだてている。
背中を流されたりたてがみを乾かされたりと、積極的なコミュニケーションの成果によって、少しは慣れの気配が見えていた。
「まずはこの服のまま、カラン様には雄に慣れてもらいます」
「あーまあ、それなら、いけなくもない……か?」
金の体毛が茂った胸元や根元さえ隠れていれば、カランは嫌悪をそこまで感じない。しかもソープのさわやかな匂いにまぎれ、赤牛から雄の気配はだいぶ薄れている。
それでも誰が見てもロンベグは雄々しさの塊であり、この場にヴルネイがいたら教育の成果を感じていただろうが、彼は今お風呂中だ。
「今晩は私を抱き枕にお使いください。女性のような柔らかさはあまりありませんが、胸はでかいので存分にいじっていただいて構いませんよ」
「それは無理だろ……男の胸に興奮する気がしねえ……」
「でしたら、お尻でもいいですよ。でかさなら自信があります!」
「そういう問題じゃねえ!」
たてがみをブラッシングされている獅子は吠えるが、きょとんとした顔が返ってくるだけ。女性のでかい胸や尻に興奮するのなら、男性に対しても同じだろうと言いたげな視線だった。
カランにとって、ロンベグは仲間としてはこの上なく頼りになるが、性欲の対象にはどうしても見ることができない。ノンケというのもあるが、勇者としての自覚がない彼は、捧げられる無垢な献身に対して罪悪感がぬぐいきれないのだ。
だましているようで気が引けると何度も伝えているのだが、やはりこれも伝わっていない。
「ロンベグはさ、無理に体を捧げなくてもいいんじゃねえかな」
「どうしても私では興奮しませんか……?」
「悪いけど……」
「では……では、私はどうしたら……」
ロンベグの声はだんだんと震え、広い肩が小さくなっていく。それを背中で受けるカランはどうしたものかと気まずそうに言葉を探していたが、ふいに、後ろ髪に牛の鼻面を感じた。
「お願いでございます。私は初めてを勇者様に捧げるよう育てられました。どうか、一度だけでも、この体を使っていただけないしょうか……そうでなければ、私……」
これまで敬虔な赤牛を支えてきた信仰や価値観は、致命的なくらいに揺らいでいる。勇者に仕える者として育てられたロンベグにとって、求められないことは自身の否定も同義だった。
ヴルネイのことは好いているが、それはそれであり、彼は心身ともに勇者に仕える身の上なのだ。閨を共にすることを義務だとすら思っている。
もしこのまま勇者が加護を失えば、ロンベグは教会内で責任を問われ、最悪命をもって償うことになりかねない。それは今までの人生が無に帰すばかりではなく、ヴルネイとの旅も終わってしまうことを意味していた。
それを思うと、赤牛はどうしても視界が潤んでしまう。教会から出て三人でする旅が、彼は大好きだから。
「う……」
あまりに真摯なお願いをもらえば、白獅子がたじろぐのは当然だ。
カランはロンベグがどういう教育をされてきたのか大体把握しており、それを誇りにしているのも理解している。だが、獅子は無償の奉仕などという胡散臭いものが好かない性格だ。
それにロンベグを仲間として大事に思っているからこそ、自分の意志を持ってほしいと思っていた。
「……はあ」それでも隠しきれない善性を持つ獅子は。「一度だけで、いいんだな……?」
「……はいっ!」
ぱあっと牛の顔が華やげば、後には引けない。獅子は覚悟を決めるために尻尾で自分の背中を叩き、ロンベグへと向き直る。
「おれは童貞だし、ノンケだし……立たないかもしれねえぞ」
「構いません。男を立たせるくらい、造作もないことです。カラン様はただ横たわっているだけで問題ありません、私がすべてを終えましょう。そうして、男性も悪くないのだと、思ってほしいのです」
「それは保証できねえけどな……まあでも、そうなったらロンベグやヴルネイが相手してくれるし、楽っちゃ楽なんだろうけどさあ」
「いえ! カラン様の性欲は、私一人がすべてお引き受けいたします! ヴルネイさんにはくれぐれも手を出さないよう……」
「確かに……あいつに手を出したら頭蓋骨がへこむまで殴られちまうか……」
そうと決まれば早く早くとロンベグは勇者を急かし、二人は寝室へと消えていく。
すでに湯あみは済ませており、いつでも絡める状態だ。時間が惜しいとばかりに、赤牛の行動は迅速だった。
そして、その二人の後ろ姿を、風呂から帰ってきたヴルネイが呆然と見つめていた。
「ロンベグ……」
あれだけ必死に夜伽を求める想い人を見てしまい、虎は声をかけることもできずに突っ立ていた。
それが彼の使命だと理解はしているが、どうしても受け入れられない。普段は聖職者として穏やかな赤牛が、先の懇願はまるで娼婦のようであった。
今のヴルネイは風呂上がりで鎧を着ておらず、黄色い毛皮にいくつもの傷跡を走らせる素肌が見えている。下に伸びる鋭い牙も相まって、虎の顔はまさに猛獣のようだ。
「俺は……好きな奴が他の男に抱かれるのを黙って見ているだけでいいのか……? だが、それがロンベグの使命だというのなら……しかし……」
そんな猛獣の相貌が不安そうにまなじりを下げ、心のざわつきと必死に向き合っている。認めねばならない理性と、認められない感情とのせめぎ合いの末、彼は一つの決断を下す。
「よし……!」
まだ乾ききっていない毛皮を揺らし、彼が向かう先は二人の所。
二人は急な来客に驚いて目を見開いていたが、虎はそれどころではない。
今まさにベッドに倒れ込んだ二人を前に、ヴルネイは顔を真っ赤にしてこう叫んだ。
「そのセックス……お、俺も混ぜてもらおうか!」
「……へ?」
カランの呆けた声を聞きながら、虎は恥ずかしさで死にそうだった。いくらロンベグの純潔が散る様を見たくないとはいえ、自分の体を捧げようというのだから。
元から口下手でアプローチなども不得手なヴルネイにとって、この突撃はまさに、一世一代の決意ともいえる。
風呂上りの虎は全身の筋肉を盛り上げた巌のような体つきを、薄着にはっきりと浮かび上がらせている。張り詰めた肉体はどこも角ばっており、鋭利な印象を見る者に与えていた。
歩くたびに揺れる股間はでかいと評判であり、本人の意志とは関係なく求める声を引き寄せる逸品だ。どんな下着を使っても隠し切れない一物も、カリ首までしっかりと見えている。
ロンベグとは違うタイプの、雄々しさの権化。男性性の凝縮とまでうたわれた男こそ、ヴルネイなのだ。
「カランの筆おろしは俺がやる……俺なら、本番もしたことがあるからな……」
(悪いロンベグ……俺は、お前が他の男に抱かれるところを見たくないんだ……!)
「ヴルネイさん……! どうして……」
(やはりヴルネイさんは勇者様のことがお好きなのでしょうか……! これが終わっても、私を抱いてはくださらないのかも……)
徹底的にすれ違う二人が視線をぶつけて数秒。言葉ではらちが明かないと悟った後の行動は、一気に勇者へと詰め寄ることだった。
きちんと巨体同士の絡み合いに対応できるようにと、聖鎧教が気を効かせて用意したベッドが、壊れそうなくらいきしんで不満の音をたてる。
「カラン! 抱くなら俺にしろ! 俺はケツも胸も全部が頑丈だぞ! 初めての腰振りでもしっかりと感じてやる!」
「カラン様! 私は未使用ですが、しっかり男性を悦ばせるように教育を受けております! どうか私をお使いください!」
「待って待って待って! 圧がやばい圧がやばい! 猛獣二人に食われる~~~~っ!」
顔面凶器の虎と雄の色気に満ちた牛が目をぎらつかせて獅子に覆いかぶさっている。例え男色をたしなんでいたとしても、恐怖を覚えて当然の場面だ。
だが、自分を捧げようと必死な二人はそれどころではない。隆々とした肉体で抱き着き、左右から獅子を羽交い絞めにしている。いくらカランが鍛えていたとしても、さすがに屈強な男性二人分は重い。
「ほら、俺のおっぱいでも吸え。でかさは見ての通りだ」
圧倒的な筋肉量で膨らんだヴルネイの胸部は明らかに女性とは違う膨らみ方をしている。みっちりと詰まった筋肉が作るフォルムは非常に豊満で、しかもあまり傷が無いうえ白く綺麗な毛皮が広がっているものだから、ノンケ勇者も一瞬呆気に取られてしまった。
胸元に金の体毛を混ぜ込んだ赤牛とは違って、谷間だけ見るとギリギリいけなくもないかも、とカランに思わせるくらいだ。ロンベグの雄々しさに慣れすぎているせいで、本人も気づかないうちに価値観がゆがみ始めている。
もちろん視界を上げればそんな思考は霧散したが。
普段は無表情か怒っているところが多いこわもての虎が、顔を赤らめながら下向き乳首をすくい上げて懇願しているのだ。興奮より恐怖の勝るノンケがこれは何かの罠なのでは、と勘繰るのもしょうがない。
「カラン様、おっぱいなら私も負けておりませんよ。揉み心地は抜群だと、教会からお墨付きですから」
負けじとロンベグが獅子の手を取って自分の胸に押し当てる。ヴルネイに比べれば少し脂肪の層を持つ胸にむにっと掌が埋まり、強い弾力で包み込む。
虎に比べて丸みのあるでかさを持つ胸であり、普段の手入れをかかしていないためか、毛皮もふわふわだ。これで赤に混じる金の体毛さえなければまだいけたのに、とカランがたびたび評しているくらい、ロンベグの胸はムチムチに実っている。
だから揉み心地は最高なのだ。硬い胸板の発展形であるヴルネイと比べると、ロンベグの胸はすべてを受け入れる包容力がある。カランは複雑な心境で指を動かしながら、絶対二人より胸の大きい女の子とやろうと決めた。
「カラン、男も悪いもんじゃないだろ。俺で童貞を卒業しとけ」
「カラン様。どうか共に初夜を盛り上げていただけないでしょうか」
黄と赤の巨体が白を挟み込み、たくましい筋肉で覆い隠していく。三人の間で雄密度が上昇し、せっかく香っていたソープも今となっては薄れ、ごまかしきれない雄の色香を不慣れな獅子に嗅がせていた。
「うわ、わわわ……お前ら、雄臭すぎるだろ! 食われる……! 食われる~~~~!」
ずいっと迫る猛獣二人の顔にせっかく芽生えた決意もしおれ、カランは半狂乱で巨乳の圧から逃れようと暴れ出す。くさっても勇者であり身体能力は抜群だ。何とかベッドから降りると、わたわたと情けない足取りで部屋から一目散に逃げだした。
「やっぱりおれが男とやるのは無理だ~~!」
「あ、おいカラン……!」
「カラン様……」
そうして、残された黄と赤は少し呆然とした後、気まずそうにおずおずと視線を互いにへと向かわせる。
「悪い……」口火を切ったのは虎だ。「お前の使命に水を差してしまった……頭ではわかっているつもりだったのだが……」
「いいえ、ヴルネイさんがそこまでカラン様とやりたいとは思っておらず……私の方が水を差したのかもしれません」
「いや、俺は別に、そこまであいつとやりたいわけじゃない。まあ、あいつが求めてくるなら多少は考えるが、それだけだ。馬鹿騒ぎされるくらいなら、互いの性欲を発散させた方が有意義だからな」
「え? ではなぜ……?」
わざわざ割って入った理由を聞かれて、虎は口ごもる。
告白するなら、今が一番だと本人もわかっている。これからずっと邪魔するわけにもいかない以上、さっさと言うべきなのだ。
「お、俺は……」
だが、虎の頭を駆け巡るのはこれまでのこと。
ロンベグは勇者に仕える神官であり、人並みの幸せというものを希求してはいない。聖鎧教の教えを守り、その枠組みの中で生きることを定めた聖職者だ。
「お前のことを……」
それでも好いてしまったのならしょうがないだろう。いくら勇者相手とはいえ、自分の想い人を目の前で抱かれていい顔ができるほど、虎は大人ではない。
ヴルネイは逃げようとする舌をはがし、感情を言葉にしようとする。言ってしまえば後戻りできない。わかったうえで、言葉は続く。
「ヴルネイさん……?」
首をかしげる赤牛の純粋な視線が、虎のストッパーを外しかけた時。
――――アラームのような音が部屋に鳴り響いた。
「な、なんだこれは……!」
完全に不意を突かれたヴルネイはビクンと大きく跳ね、毛を逆立てながら周囲を見渡した。どうやら発信源はロンベグの腕輪のようだった。
当の本人はしまったと言いたげな顔をしており、何か悪いことが起きているのだと虎は理解する。
「ロンベグ、それはいったいなんだ?」
「これは……緊急連絡用の魔道具です。この町の娼館に渡したスイッチを押せば、鳴る仕組みになっています」
「娼館……カラン対策か?」
「はい。カラン様がやってきたら知らせるようにと。女神様の加護は世界にとっての問題ですから、聖鎧教総出を上げて保護すべきものです。説明すれば皆さん快く協力してくださいました」
「いつの間にそんなものを……」
聖鎧教からの圧で快くと表現するところにロンベグの無垢さが見えているが、今はそれどころではない。何としてもカランが女性で脱童貞することを阻止しなければならないのだから。
「カラン様が来たらできる限りその場で留めるようにと指示を出してあります。今から行けば間に合うはずです」
「はあ……そうだな、とりあえず急ごう」
結局告白は打ち切りになってしまい、完全にタイミングを逃してしまった。
ヴルネイは安堵と失意の入り混じった感情を悟られないように兜をかぶり、さらには鎧も着こんで完全装備へと変わる。
今の虎は誰が見ても重戦士ヴルネイであり、先のおっぱいを差し出していた様子など影も形もない。
「面倒なものだな。緊急事態だというのに、勇者パーティの一員として、常に体裁を考えねばならんというのは」
「すでに教会の者も向かっているでしょうし、時間は稼いでくれているはずです。それに娼館はどうしても人目がありますから、ある程度はきちんとしなければなりません。ですが、ヴルネイさんはしっかりとこなしておりますよ。いつ見ても凛々しくてかっこいいお姿です」
「……そうか」
ローブ姿になった赤牛に褒められ、まんざらでもない様子で返す虎。面倒な規律に縛られていながらも、この温和な顔を向けられるとほっこりと和んでしまうのだ。
そうして二人は宿を飛び出し、娼館へと急ぐ。
勇者の童貞が無くなってしまう前に。
なんやかんやあった後、ヴルネイは眼前にいる獅子をねめつけた。
「反省してまーす」
明らかに心のこもっていない言葉はヴルネイの神経を逆なでして、黄色い毛皮を威嚇のために逆立てさせた。もっとも鎧のせいで何も見えていなかったのだが、放たれる怒気は察したのか、カランが尻尾をビクンと震わせた。
二人が娼館に駆けつけた時、全裸のカランはいつでも準備万端だった。ふたり相手では萎えていた一物を完全戦闘態勢へと移行させ、童貞喪失に向けて逸ってすらいた。
そんな有様をなんとか収めることには成功したが、獅子の勇者にとって気に食わないのはしょうがなく、こうして口をとがらせている。
「はあ……」兜の中でため息が反射して。「どうしてお前はそう……。もっと女神に選ばれた自覚を持ってくれ……お前の加護が消失したら、次の勇者を待つのにどれほどの時間が必要だと思っている」
「そんなこと言われてもさ。おれにだって夢があるわけよ。いきなり勇者に選ばれたからって、それを無かったことにできるわけないだろ」
「……ちなみにその夢ってのは?」
「今それ聞く?」
恨みがましく股間を指す獅子を見て、虎は言葉を無くす。女神に選ばれたせいで人生設計が狂ったことは同情するが、いい加減勇者として成長してほしい。ヴルネイがくどくどと説教をかまそうと口を開いた時。
赤牛が物憂げな顔で部屋へと入ってきた。
「話は終わりました。これで宿に帰れます」
「お疲れ様。教会はなんて?」
アラームのせいで教会を総動員させたこともあって、ロンベグは大司教と話をしていた。その表情を見ればいい話ではなかったんだろうと、獅子も虎も察しが付く。
「その……今回のことを大司教様は重く受け止めておられまして……」
「まあそうだろうな。勇者が加護を失うなど、あってはならないことだ」
「でも、無くさないかもしれないんだろ。なら物は試しで……」
「試しで加護を賭けるな。無くした例の方が多いんだぞ」
ふたりのやり取りに赤牛は乗ってくることはなく、カランへと視線を一瞬だけ移して、歯切れの悪い言葉をなんとかつなげて文章を作り出す。
「カラン様には一度……教会での教育が必要だと、大司教様はおっしゃいました」
「あー、女神どうたらとか、加護を与えられた勇者の行動がどうとか、おれが勇者になったときに受けさせられたやつね」
「いえ……それもあるのですが、やはり事の発端を考えて……」
「おい……」何か察した白獅子が顔を青ざめさせて。「まさか教育って……」
「はい」
ロンベグの放った言葉は最悪な想像を裏付けるもの。カランにとって地獄の入口へと招待する申し出だった。
「カラン様には教会で男性同士の行為について、性教育を受けていただきます」
****
カランが教会に教育という名の監禁をされたことで、勇者パーティの日常はがらりと変わった。拠点は宿から教会へと移り、男だけの環境になったのだ。
嫉妬深い女神を祀るために男しかいない教会では、四六時中男同士の絡み合う光景が繰り広げられている。聖鎧教にとって女神に身を捧げるということは、自分は女性に興味がありませんと告白することと同義であり、積極的な男性同士のアプローチへと繋がっていた。
教会の外では慎み深い信徒たちも、中ではやはり、性欲たぎった雄でしかない。
むしろ、女性に気を取られないためという名目で、絡み合うことを推奨してすらいる。
そんなところにノンケの勇者が放り込まれて、耐えられるわけがなかった。
「もういっそ、おれを殺してくれ……」
たった数日で生気を無くした白獅子は、ベッドの上で現実から逃げるように布団をかぶった。
あつらえられた部屋は簡素ながらも綺麗に整っており、人手と金のかかり具合から教会内部の最高待遇であることがわかる。寝具一つとっても、教会は勇者への尊敬が見て取れた。
「カラン様、本日は教会騎士団長のアパック様との訓練が入っておりますが……疲れているようならお休みしますか?」
ロンベグが布団の山をさすりながら心配そうに声をかける。カランのノンケぶりを知っている赤牛からすれば、ここがどれほど苦痛なのかわかってしまう。
だが、教会の一員として勇者の補佐をするのが彼の使命だった。
「騎士団長との訓練……? それって今日はエロいことなしで、剣術だけか?」
「残念ながら……本日はアパック様の乳首を吸いながら手こきされることになっています。カラン様はおっぱいがお好きなので、騎士団長様がわざわざ気を利かせてくださって……これならカラン様もいけるのではないかと……」
「いけるわけ! ねえだろーーーー!」
怒りに任せて身を起こしたせいで布団が舞い、部屋に勇者の悲痛な叫びが満ちた。
「アパックってあいつか、あのでっけえ狼男! ヴルネイと並ぶ巨体だぞ! そんな奴のおっぱいなんて吸えるわけねえだろ!」
「で、ですがアパック様はヴルネイさんとは違って、豊満さが売りです。胸も丸みがあり、おっぱいのでかさは私よりも大きくむちむちですよ……!」
ただでさえ豊満に実った巨乳を持つ赤牛以上となると、さすがの四肢も耳を傾けざるを得なかった。なにせロンベグはローブ越しにでも胸のでかさがわかってしまうほどのなのだ。
「ロンベグよりでかい……? でも顔の怖さもヴルネイと並んでただろ……」
「それに関しては問題ありません! カラン様には目隠しをしていただき、アパック様の触感だけを堪能してもらいますから!」
聖鎧教騎士団長が授乳手コキのためだけに動員されるなど前代未聞であるが、それを可能にするのが勇者である。女神を信奉する彼らに取って、勇者への奉仕は光栄なのだ。
「もしカラン様が望めば、そのままおっぱいを弄り倒してもいいですし、なんならベッドインまでいけますよ! アパック様からも問題ないと了承を得ております!」
「騎士団長って教会の中でも相当えらい人だよな……そんな人まで来るのかよ……」
「アパック様は恋人を魔物との戦いで無くし、それ以来教会に身を捧げてきたお方です。勇者様への期待も人一倍なのでしょう。それが勇者様のためになるのならと、快く引き受けてくださいました」
「はあ……勇者に対する希望の重さってのが、肩にのしかかるよ。別にそれはいいんだけど、童貞喪失できねえのはなあ……」
「アパック様で喪失もできますが……?」
「男相手は童貞喪失にならねえんだよ!」
聖鎧教で育った赤牛にこの価値観が理解されないのは獅子とてもう承知している。だが、教会にいることでカランは勇者に対する敬意や期待が、想像以上なことを痛感した。
道を歩けば尊敬を向けられ、男色経験を積ませたいと乞われれば二つ返事で股を開く。ここで生活しながら、相手が女の子だったら……と数えきれないほどカランは思っていた。
そこまで憧憬を向けられたところでカランは負担に思うような性格をしていない、というよりかは加護よりも童貞喪失を優先する程度には図太い獅子であるが、やはり実感はわいてくるものだ。さらに根は善良なため、流されてしまいそうになっている。
「でもどうせ拒否権はねえんだろ。なら、とっとと終わらせて来るだけだ。頭の中でかわいい女の子を思い浮かべながら、何とかやり過ごすさ」
「それでもかまいません。少しずつ慣れていけばいいのです。アパック様も恋人を無くしてから人とするのは久しぶりだとおっしゃっていましたので、気楽に接してもらえれば大丈夫なはずです」
「そこまで守った貞操をおれに捧げるのかよ……はあ、勇者だからってみんな献身しすぎだって」
ようやく勇者としての自覚や責任が芽生え始めて来た白獅子は、ぶつくさ文句を言いながらもベッドから立ち上がる。
そこでようやく周りを見渡して、いつも口うるさい鎧の巨人がいないことに気が付いた。
「ん、そういえばヴルネイはどこいったんだ?」
「ヴルネイさんなら一足先に修練場に向かって、アパック様と剣の鍛錬をしております。せっかく騎士団長様に時間を作ってもらったのですから、有意義に使いたいとのことです」
「あいつも真面目だよなあ。おれみたいに急に選ばれたくせに……」
「それがヴルネイさんのいいところですから」
「本当にな。小言が多いのが玉に瑕だが……じゃあロンベグはどうするんだ?」
「私もこれを機に魔法の練習をしようと思います。実戦は何度かしたので、それで痛感した不足分を埋められればと」
「お前も十分真面目だよ……」
どうやら牛と虎の二人は本気で魔王を倒すつもりでいるらしい。加護があるとはいえ、勇者カランにはそれが荒唐無稽な話であると思えてならない。
(たった三人で魔王を倒すなんて、神話じゃあるまいし……)
内心冷ややかな思考を巡らせるカランは表に出さないようにしながら、牛の言葉に適当な相づちを投げる。自覚が芽生えたとはいえ、現実味はまるでないのだ。
「前々から思っていたのですが……」
「なんだよ」
「カラン様は魔王を倒せるとは思っていないのですか?」
だがさすがにずっと世話を焼いてくれていたロンベグの目はごまかせていなかったようで、鋭い質問に獅子は言葉を詰まらせる。
「あーまあな」気まずそうに濁した後。「だって魔王だぞ? 女神の加護があるとはいえ、たった三人で勝てるわけないだろ」
「私は信じていますよ。女神様の加護を受けたカラン様がいれば、きっと成し遂げられると。……私が聖鎧教の人だから、というのもありますが」
「おれが斜に構えてるだけだよ。ヴルネイも似たようなこと考えてそうだけどな」
「ヴルネイさんも同じ気持ちですよ。あの人はずっと鍛錬を頑張っていますから……カラン様や世界のために、身を粉にしているのです」
「あいつが勇者やってくれれば、おれはこんな目に合わなかったのにさあ」
「女神様が選んだのはカラン様ですよ。いくらヴルネイさんが素晴らしい人でも、カラン様にはカラン様のよさがあるのですから」
「……んん?」
そこで獅子はとある違和感に気が付いた。
先ほどからロンベグがヴルネイについて語る時、言葉に少し熱が混じっているような気がするのだ。
(そういえば、前におれの相手をする話をしてたら、ヴルネイが会話に入って来た時に声を荒げていたような……)
カランが思い返せば、この牛はつねに虎のことを気にかけていた気がする。それはロンベグが優しいからだと思っていたが、ひょっとして、違うのではないだろうか。
いつも奉仕されてきたカランはそういうものだと認識していたけれど、気付いてしまえば気になってしょうがなかった。
「ロンベグってさ……」
「なんでしょう?」
「ヴルネイがおれとするの嫌なのか?」
「ひへぇ?!?!」
「うわ、わかりやす……」
目を見開いて飛びのいたロンベグは赤毛をいっそう明るく発色させ、視線をさまよわせる。うつむきながらみつあみを弄る姿は、可憐な乙女と言って良い。もはや何も言わなくとも丸わかりな態度だが、気の利かない獅子が気づくわけもなく。
「え、なんでだ? ヴルネイは確かに聖鎧教信徒じゃないけど、別に経験くらいあるって言ってただろ」
「いえ、それは……そうなのですけど……あうあう……」
「もしかして、自分の役目を取られるのが嫌なのか?」
「そういうわけでは……ありませんが……」
「じゃあ、なんでだ?」
ここまで来たらもう気づいてもよさそうなものだが、それができていれば童貞を貫いてはいない。きょとんとした顔を牛に向けるカランは、本当に感づいていないのだ。
対してロンベグは顔を真っ赤にしていて、赤い毛皮の顔だけが鮮やかな発色をまとっている。ド直球に聞かれてしまえばはぐらかすこともできず、小さな声でこうつぶやいた。
「……それは、私がヴルネイさんのことを、す、好きだからです……」
「えええぇぇ!?!? まじ?! 全然気づかなかった! なら別に無理してまでおれとやらなくてもいいだろうが!」
「あ、いえ……私は勇者様に仕えるよう教えを受けておりますから。その、ヴルネイさんとそういうことをしたくないわけではないのですが……あくまで私は勇者様の従者ですので……」
「お前も大変だな……なんかよけいやりづらくなっただけな気がするけど……まあでも、あいつはいい奴だからな。抱くのは無理だけど、友人としてなら嫌いじゃないし」
「しかしヴルネイさんは選定の儀で選ばれたお方。本来なら勇者であるカラン様と結ばれる可能性が最も高い人なのです。私などが入る隙間があるはずも……」
「無理だろ……この前迫られたけど、筋肉の壁って感じで生存本能が警鐘ならしまくってたぞ。いくら選定の儀は女神の力を借りて行う占術だからって、確実ってわけじゃねえんだしさあ……」
獅子の脳裏に前に見た虎の全裸が浮かび、頭を振って即刻追い出した。あれはトラウマものであり、カランの忘れたい記憶堂々一位でもある。
カランとて年頃の男子であり、恋バナも嫌いではない。むしろこんなところで好きでもない雄を摂取しているため、娯楽というものに飢えていた。
辟易とした顔が一転、にやりと口角を上げて赤牛をのぞき込み、好奇心に目を光らせながら矢継ぎ早に質問を投げかける。
「で、どういうところが好きなんだよ? なんかきっかけでもあったのか?」
「えーっと、そろそろいかないとアパック様がお待ちかと……」
「照れるなよ。ヴルネイに黙っておくからさ」
「でしたら……今日の訓練をやり遂げたらお教えいたしますので……私も言葉をまとめておきますから……」
「よっしゃ、じゃあ約束な。あんなの目をつぶってれば余裕だから、しっかり教えてもらうぜ!」
意気揚々と胸を張るカランだが、彼は知らない。
ヴルネイが頼んだ鍛錬のせいで、汗をかいたアパックが雄臭くなってしまうことを。
どれだけ目を閉じて女性を思い浮かべたとしても、嗅覚は全くごまかせなくなってしまうことを。
壮年未亡人デカパイ狼騎士団長から授乳手こき後のパイズリも浴び、しっかり射精までさせられた白獅子の性癖がまた少し曲がってしまうのだが、今のカランには知る由もないことだった。
そんな生活を続けていれば、さすがにノンケを保つのは難しい。
朝から晩まで屈強な雄がはべり、射精までさせてくれる環境の中、いまだに雄相手の童貞を守り続けているのはさすが勇者といったところだろう。
だが、本人も気づかないうちにその性癖は少しずつ染められていた。
「最近カランの特訓が功を奏しているようだな」
教育が始まってから一か月、すっかり拠点として馴染んだ教会の一室で、ヴルネイが窓へと視線を移す。窓下では白獅子が全力で狼と打ち合っており、その太刀筋に上達がうかがえる。
負ければデカパイ攻めが待っているとなれば、カランもなりふり構っていられないようで、本人曰く騎士訓練よりもずっと本気でしているとのこと。
「まあ、それでもアパックには勝てんだろうがな」
曲がりなりにも聖鎧教騎士のトップ。多少魔物退治の心得がある程度では話にならないだろう。戦いと男色の特訓を同時にこなすという意味において、あの狼ほどの適任はいない。
人目があるところは絶対に嫌だと主張したカランに配慮して、眼下の庭は立ち入り禁止になっている。おかげで剣戟の音が鮮明に響き、虎は互いのりょ力を推し量ることができる。下手すれば剣が折れそうなほどの威力だが、狼は涼しい顔で受けているのだから驚きだ。
「この調子だと、今日も射精させられそうだな。何をされる予定だ?」
視線を部屋へと戻せば、書物を読んでいた赤牛が顔を上げて答えてくれた。
「いつも通りの授乳手コキとパイズリに加え、今回はフェラも加わるそうです」
「そこまで行くとかわいそうだな。あんな巨乳なかなかいるもんじゃないというのに、あれに慣れてしまったら俺の胸板なんぞ鉄板と変わらんだろうな」
「ですが、ヴルネイさんの胸もかなり大きいかと。柔らかさはない分、筋肉だけの分厚さです。カラン様にも、いつかその魅力が伝わりますよ」
「俺は別にあいつとやりたいわけじゃないが……」
(雄巨乳好きになったらロンベグに手を出しそうでな……)
おっぱい攻めがカランに効果的だということで、ロンベグも胸の筋トレに余念がない。魔法の勉強と筋トレ、それと戦闘訓練によって、パーティの雄濃度は着実に濃くなっていた。
「この調子ですと、カラン様の男性初体験はもうすぐですね」
「……それはお前が担当するのか?」
「カラン様がお許しになれば。ですが、それは外での話。ここは聖鎧教の教会ですから、一員ということでアパック様も候補に挙がっております。三人で初夜を過ごすことも視野に、教会ではさらなる教育を進める予定だそうです」
「そうか……」
想い人がカランとするところを見たくはないが、自分の入る余地がないというのも複雑だと、虎は悟られないよう兜で嘆息を隠す。
「このままだとアパックだけが担当することになるかもしれんが……」
願望を織り交ぜた言葉は少しだけとげとげしい。ヴルネイは自分の狭量さに辟易としながらも、希望を口にせざるを得なかった。
「そうかもしれません。問題はカラン様の意思ですから……あ」
すました顔で返答するロンベグが目を見開いたためヴルネイも視線を追えば、一目散に駆けだすカランの背中が見える。おそらく射精させられることを恐れて、逃げ出したのだろう。
「……まったくあの馬鹿は、往生際の悪い」
「逃走も訓練としてはいいかもしれませんね。アパック様から逃げられるとはあまり思えませんので……」
「だが、人が周りにいないのは確かだ。手伝いに行くか」
「そうしましょう」
そうして二人して階下に行けば、整えられた庭の中、悠然とたたずむ巨漢の狼がいた。
訓練用の軽装は起伏を隠しきれておらず、いかつく盛り上がった僧帽筋が山のような体躯を作り出している。水でもため込んでいるのかと問いたくなるほど膨らんだ胸は、その頂点の突起を布越しにアピールし、そこにいるだけで雄の煩悩を刺激する。
ヴルネイと並び立つ長躯は黒に近い紺の毛皮をなびかせており、凛々しい相貌には経験と年月が刻まれているのがよくわかる。
そんな筋肉の塊、聖鎧教騎士団長アパックはやってきた二人を落ち着いた声音で迎え入れた。
「ふむ、どうした二人とも。悪いが、私の訓練はまだ終わっていない。手合わせなら後にしてもらえるか?」
「なんだ。カランのやつが逃げ出したからてっきり追うものだと思っていた」
「ああ、剣の鍛錬は終わったから、実戦形式に変えただけだ。しばし時間を与え、私を狙うように指示してある。面と向かい合うだけが戦いではないからな」
「ごもっとも。なら俺らの出番はなさそうだな。部屋に引き上げるとするか」
「……まあ待て。せっかく来たのだ、どうせなら一緒に鍛錬していくといい」
ゆらりと、狼の体から剣呑な雰囲気が立ち上る。ヴルネイはとっさにロンベグの前に飛び出し、大剣に手をかけた。
「反応速度は上々だな。さすが勇者のパートナーに選ばれるだけはある」
「あいつのパートナーって響きはあまり好きじゃないんだが……まあいい、騎士団長様直々に鍛えてもらえるとはいい機会だ。それで、俺は何をすればいい?」
「時間稼ぎだ。カラン様が準備を整えるまでの間、打ち合おうじゃないか。ロンベグはカラン様と合流して、作戦でも練っておくといい」
「簡単で結構。何度もやり合ってくれたんだ、今度は勝たせてもらう」
「かしこまりました。それではヴルネイさん、ご武運を」
そうして一対一の打ち合いが始まった。
剣のぶつかる鈍い音が何度も響くが、先ほどカランが奏でていたものとは重さがまるで違う。どちらも剛腕を誇るため、大地を揺らすような振動が庭を這い、草木が不安気に揺れる。
時間稼ぎとアパックが断言する通り、先に膝をついたのはヴルネイの方だった。
重装の中では荒い呼吸が反射して、兜の隙間から漏れる鋭い眼光は勝者を見上げている。狼も肩を上下させているが、表情はまるで変わらず凛々しいままだ。
「まったく……ちっとも近づけている気がしない」
「だが、その重さを抱えながらここまで食らいつくのは見事だ。そも、お前の仕事は勇者の盾になること。私とこれだけ打ち合えれば何の問題もないだろう」
「俺は勝ちたいんだよ。盾としてだけじゃ、まだ力不足だ。俺らは三人パーティで、できることは増やさないといけない。……ふぅ、さすがに暑くてたまらんな。兜は外すか」
「素晴らしい向上心だ。やはり選定の儀で選ばれるだけはある。この調子でカラン様の補佐を……」
そこまで言いかけた狼の口が止まった。視線は虎に向けられており、見開いた目が驚きを表している。
「……ん、どうした?」
「おまえの顔を見たのは初めてだ」
「まあ普段は兜をかぶっているからな。こんな傷だらけな顔、あまり人前に出してもいいことはないしな」
「恥じることはない。聖鎧教は人々の盾となることを推奨する。その傷は誇りであり、決して後ろめたく思う必要はないのだ。それに、私は、お前の顔を……好ましく思うぞ」
「お、おう? それはどうも」
歯切れの悪い賞賛に首をかしげるヴルネイだが、気に留めることはない。酸欠の脳は違和感の追求より回復を優先している。それに男色を推奨する教会だとそういう価値観なのだろうくらいにしか思っていない。
「ヴルネイ、一つ聞きたいのだが。おまえには兄がいるのか?」
「なんだ急に……ああ、ひょっとして兄を見たことがあるのか。確かに聖鎧教で騎士をしていたが、顔見知りだったか。年の離れた兄だったが、良くしてもらってたよ」
「フランネルの弟か……」
「やっぱり……同じ部隊だったのか? 兄はあまり話してくれなかったから、教会内でのことはよく知らないんだ。良ければ今度、いろいろ教えてほしい。俺は兄の背中を追って騎士になったからな」
「おお……」
感極まった様子でよろよろと近づく狼は手から剣を落とす。騎士としての矜持よりも、目の前の虎が大事だとでもいうように。
どうしたのか訳も分からず目を瞬かせるヴルネイに構うことなく、アパックは大きな鎧を抱きしめる。困惑で揺れる虎の瞳に狼の涙が照り返した光が飛び込んで、その感情の正体に確信を与えてくれた。
「まさか、お前が亡くした恋人というのは……」
「フランネル……我が最愛……その唯一の肉親にようやく会えるとは……」
「そんなことが……恋人がいたなんてこと、初めて聞いたぞ……」
「フランネルがお前に騎士について何も言わなかったのは、後を追って危ない職業になってほしくなかったからだ。だから私に会わせるのも気が進んでいなかったせいで、お前の名前すら知らなかった」
「……察しはついていた。兄は『お前は平和に生きてほしい』が口癖だったからな」
「すまない、すまない……私が守り切れなかったばかりに……」
狼は鎧から立ち上る汗の匂いに構うことなく、ただきつく抱きしめながら悔恨を漏らし続けている。兄の死に自分なりの落としどころを見つけていたヴルネイではあるが、その慟哭は琴線を悲しみで揺らし、気付けばアパックを抱き返していた。
「別にお前のせいじゃない。騎士である以上、誰にでも起こることだった。兄はお人好しだ、恨んじゃいないさ。俺も恨んでなんかない」
「ううぅ……」
自分より地位も年齢も上の狼をなだめながら、ヴルネイは兄をここまで想ってくれている人がいたことに安堵していた。
教会での仕事についてあまり話を聞かなかったせいで、兄の存在が教会にあるのかすらもはやあいまいになっていたのだ。その存在が根付いていたことを感じて、自然と優しい声が溢れていく。
明るい庭で抱き合う巨漢の雄二人。慈しみを湛えたその光景は誰も踏み入ることができない雰囲気で、不可視のベールが敷かれているようだった。
……だからこそ、こっそりのぞいていた獅子と牛の二人は訳が分からず混乱することしかできない。
「な、何がどうなってんだ! なんでアパックとヴルネイがなんかいい感じなんだ?!」
「わかりません! 確かにヴルネイさんは魅力的で、人々の盾としての心も素晴らしく、聖鎧教基準でも好かれる方だとは思いますが……!」
「しれっとのろけるなよ! でもこれさ、まずいんじゃねえの? なんかもうあの二人くっつきそうじゃね?」
「あうあう……いやでも、まさか、アパック様に限って、そんな……!」
恋人を亡くしてからすべてを等しくパーソナルエリアからはじいてきた狼だ。それがああも親密な様相を見せるなど、ロンベグは想像すらできなかった。
焦りで口を無意味に開閉する赤牛の隣では、白獅子は目を輝かせてニヤついている。鬱屈とした環境でようやく楽しみを見つけたと言わんばかりに、狼と牛を交互に見比べては尻尾を浮つかせていた。
「これは面白くなってきたな! 頑張れよロンベグ!」
エンタメ扱いで恋路を見守られれば、さすがのロンベグもこめかみに血管を浮き上がらせるのも無理ないことだろう。
朗らかな日が差す今日は、誰にでも優しく慈悲深いロンベグが生まれて初めて人を殴りたいという感情を知った記念日になった。
もちろん、実際に手を出すことはなかったが。
****
ヴルネイとアパックの関係性が明るみになってから、ロンベグは毎日気が気ではなくなった。あの死んだ恋人にのみ愛を捧げていると評判の騎士団長が、虎の前で柔らかく笑うのだから。
最愛の人の弟を死なせるわけにはいかないと、アパックによる教育はいっそう熱が入っている。おかげで彼らの実力は日増しに伸びているのだが、カランにとってはそれだけではない。
今日も今日とて締め切った寝室では雄の熱気が立ち込め、精の名残を漂わせていた。
「はあ……はあぁ……」
「今日もたくさん出せましたな。射精間隔も短くなってきていて、大変良いことです」
ベッドの上で息を荒げるカランに、アパックがすました顔で告げる。
全裸にむかれた白い体は精液で汚れ、もはや立たなくなるほど絞られた一物はとろとろと残滓をこぼすだけだった。
狼もその豊満な胸部に獅子のザーメンを染みこませており、独り身になって以来不使用の一物はいきり立っている。だが、それでもあくまで指南役としての体裁を崩さず、これで訓練は終わりだとベッドから立ち上がる。
カランは狼と赤牛のダブルパイ攻めによって潮を噴くまで責められた。かと思えば、パイズリフェラで綺麗にされている間、金玉を鼻面に当てられ雄の匂いに興奮するように教育された。
授乳手コキから三本兜合わせまでも体験し、もはやカランが雄で知らないのはマンコだけになっている。それだけが、彼が自分をまだノンケだと思える最後の砦だった。
「ロンベグ、後は頼んだぞ」
「はい、お任せください。カラン様、今日はたくさん出せてとっても素晴らしいですね。後始末は私がしておきますから、ごゆっくりお休みください」
「ち、くしょぉ……最近激しすぎるだろぉ……」
女神の加護を維持するための性癖矯正であり、ひいてはヴルネイを守るためだ。アパックの気合を入れた教育によって、カランの性癖はもうねじ曲がっている。
ここにヴルネイがいないのは、聖鎧教の人ではないため勇者の教育は我々だけでいい、とアパックは主張したせいだ。だが、それはあの虎のためだということを、獅子と牛の二人は既に察している。
「んっ……それではこれで失礼します。また次の訓練でお会いしましょう」
デカ乳を揺らしながら艶めかしい吐息を漏らす狼は、全裸のまま部屋を後にする。訓練とはいえ、性行為をすれば昂りは止められない。この後一人自分を慰めることは、彼の日課だった。
そうして、部屋に残されたロンベグは甲斐甲斐しく世話を焼く。
指先一本すら動かせない獅子の体を拭いたり、床にとんだ体液を片付けたりと。あれだけ激しく行為をしたというのに疲れを見せていなかった。
「お前は疲れてねえのかよ……おれはもう一歩も動けねえぞ……」
「私は別に射精しているわけではありませんから。剣の訓練の後にこうしてしごかれるカラン様に比べれば、まだ余裕がありますよ」
「はぁ~このままだと男で初体験迎えそうだな……」
「いいではありませんか。慣れれば気持ちいいですよ」
「したことねえくせに……」
「ふふっ、教育は受けましたから。……シーツを変えたいので、ソファまで抱えますね」
断りを入れて、ロンベグは一般的に見たら十分大きな獅子を軽々と抱きかかえる。そのせいでデカ乳が獅子の眼前に来るのだが、それに興奮するには絞られすぎていた。
谷間に密集する金の体毛のせいで雄々しさしかないのだが、悲しいことに教育のせいでカランは興奮するようになっていた。あれだけ拒否反応が出ていた雄おっぱいも、今では性欲の的でしかない。
「でもさあ」ソファに置かれながら。「このままおれが男いけるようになっても、どうやって精処理するんだよ」
「と言いますと?」
「だってお前はヴルネイのことが好きなんだろ? 他の男が好きな奴を抱けねえし、ヴルネイにいたってはおれのこと好きじゃねえしさー。いくらおれが男いけたとしても、誰も付き合ってくれねえじゃねえかよ」
「そんなことはありません。私は確かにヴルネイさんのことを好意的に見ておりますが、使命は勇者様のお供です。望んでくださればいつでも抱いていいんですよ。それに……」
そっと獅子に布団をかぶせながら、ロンベグは目を伏せる。
「ヴルネイさんは選定の儀で選ばれた貴方のパートナー。カラン様が思う以上に、お二人の相性はいいんです。多分、ヴルネイさんはもう、カラン様のことを好いているはずです」
「うっそだー。あのヴルネイだぞ、何かあればおれのちんぽをちょん切ろうとするやつだ。ないない。絶対にないね」
慰めに明るい口調で話すカランだが、それでもロンベグの憂鬱が晴れることはない。物憂げに沈んだ瞳で、言葉を濁すだけ。
ロンベグの好意を知っているカランはどうしたものかと思考を回すが、特に経験などなく、うぶさで言えばロンベグと変わらない。出てきた答えも、シンプルなものだった。
「ならもう告白しかなくないか?」
「……そうでしょうか」
「想いを伝えるしかねえよ! このまま何も進展しないくらいなら、当たって砕けたほうがましだろ。そのほうがお前もすっきりするし」
「それは、そうかもしれませんが……」
「うまくいけばそのままベッドインできるしな。ヴルネイも兄の話を教えてくれるアパックに懐いてるし、進展は時間の問題っぽいぞ」
「う、ううぅ……ですが、私は勇者様のお供。初体験は絶対に勇者様に捧げるよう言われておりますので……」
「真面目過ぎるだろ。別におれがお前とやったとか言っとけば……」
「そんな不義理なことできません!」
「だよなあ……」
そこで獅子は赤牛の腕を引っ張って、ソファへと引きずり込む。巨体の墜落にきしんだ音が鳴り、二人は顔を近づけた。
困惑するロンベグに笑いかける獅子は気丈に振舞ってはいるが、尻尾の先は緊張でこわばっている。それを悟られないように、しぶしぶと表情を取り繕って赤牛の首に腕を回した。
「しょうがねえ。どうせこのままじゃ初体験はアパックかお前に食われるんだ。それならとっとと捧げてやるよ」
「カラン様、それは、その……私を抱いてくれるということでしょうか……」
「じゃねえとヴルネイとできねえんだろ? まあまだ目隠ししねえと駄目そうだけど……それでもいいなら……」
「も、もちろんです! 私のためにお慈悲を捧げてくださるとは、さすが女神様の選んだお方なだけはあります……」
「勘違いするなよ。おれはお前が心配だからやるんだ。女神なんて関係ねえよ」
くそ野郎とはいえ根っこのところはお人好しな獅子だ。それでロンベグが前に進めるならと、雄の臭気を受け入れる。
もともと性癖は修復不可能なまでに歪んでしまったのだ。これ以上あがくのも時間の無駄だと、最近は諦観を受け入れつつある。
絞りつくされたせいで立ちの悪い獅子だが、どうせ形だけだからと気にしない。それはロンベグも同じであり、初めてを前に緊張でそこまで気が回っていない。
赤牛の頭の中では、何をすればいいのかと今まで受けた教えが反芻している。ぎこちないながらも手を伸ばして獅子の頬を撫で、その鼻面にそっと口を付けた。
「カラン様」
ロンベグは獅子を起こすと、その脚にまたがり体面騎乗位の姿勢へと移る。
そうすることで、牛は獅子の視界をおっぱいで埋めることができるのだ。むにっとカランの顔に強い弾力がかかり、世界が暗転する。もはや慣れた感触だが、それでもカランの股間では血流が少し増していた。
「せっかくのお慈悲ですが、やはり私は貴方様の従者。その興奮を楽しませることが使命です。どうか、私の体をご堪能ください」
「だから、そこまでは別にいいだろうが……真面目過ぎる……」
なんて意地を張るカランだが、左右からデカパイで顔を揉まれれば自然と息が熱を帯びていく。以前は嫌悪の対象だった雄臭い乳袋。今は気持ちいい射精をさせてくれる性器として、脳は認識していた。
だから精根尽きたはずの陰茎がぐぐっと鎌首をもたげて、興奮している現実を否応なく突きつける。そのことを疎ましく思う余裕は獅子になく、卑猥なアイマスクから感じられる体温に意地がとろかされていくだけだった。
「ふふっ」尻で感じる硬い感触に喜悦を得た牛が。「カラン様も雄同士の交流に興味を持ってくれてとても嬉しいです。このロンベグ、カラン様を失望させないよう、しっかりと励みます」
「なんで好きな奴が他にいるくせに、ここまで熱心に奉仕できるんだよ……嫌になれよ……」
「まさか。私はここで勇者様のために育てられました。私自身の感情も大事ですが、同じくらい使命も大事なのです」
「くそ、これだから教会は……! 人ができすぎてて怖いくらいだ……」
悪態をつく獅子の股間に、ロンベグは尻をこすりつけながら発破をかける。
早くいきり立たせろと肉厚な奉仕を受けて、準備は徐々に整っていく。
このまま二人がつながるのは時間の問題だ。そしてようやく、彼らはそれぞれの道を踏み出すことができる。
そう思われた瞬間、ドアの開く音が二人の耳に飛び込んできた。
「片付けを手伝いに来たぞ。どうせアパックはまた後始末を全部ロンベグに押し付けたんだろう……」
鎧の巨体がぬっとあらわれた時、二人の反応は極端に分かれた。
「ありがとうございます、ヴルネイさん。ですが、もうしばらくお待ちください、今ようやく、カラン様と初体験を迎えられるところですから」
「うええっ! ヴルネイ……! いや、これは違くてだな……!」
勘違いされては困ると挙動不審になるカランと、特に隠すことはないと告げるロンベグ。ロンベグからすればこれは使命であり誇らしいことだ。臆する必要などどこにもない。
だがカランにとっては、由々しき事態だ。ロンベグの心を知っているため、これで関係性がこじれるのは彼の望むところではないのだから。
結果として、浮気現場を目撃されたような反応になってしまい、余計に疑わしくなっていた。
「あー……お邪魔だったか?」
「そ、そんなことはないぞ! むしろ代わってほしいくらいだ! っていうか今すぐにでも代わっていいぞ!」
「……それがお前の役目だろ。いい加減ロンベグやアパックを解放してやれ。お前が男好きになれば、こんな訓練もしなくていいんだからな」
わたわたと慌てるカランとは対照的に、ヴルネイは落ち着いた声音で応える。
その実内心では葛藤がものすごく渦巻いているのだが、兜のせいでばれることはない。
(わかっている。ロンベグはこれが使命なのだ。以前は俺が駄々をこねて失敗させてしまった……俺は受け入れる必要がある。だが、だが……!)
(ヴルネイさん、もう少しだけ待っていてください。カラン様に初めてを捧げれば、私は好きな人とできるのです。ヴルネイさんがカラン様のことを好きなのはわかっていますが……それでも……)
(なんでなんでなんでええぇ! こんなところ見られたら絶対誤解されるやつじゃん! なんでロンベグは涼しい顔してんだよ! ヴルネイのことが好きなんだろ! 普通の男は好きな奴が目の前で抱かれていい顔できねえの! おれも気が重すぎる!)
三者三様の思考に囚われ、寝室に沈黙が訪れる。全員が何を口にすればいいのか考えあぐねていて、まるでこの部屋だけ時間が止まってしまったようだ。
そんな耳に痛い無音を真っ先に切り裂いたのは、リーダーでもある勇者だった。
「な、ならさ……三人でやらないか?」
意外な提案、というよりかは二人にとって青天の霹靂のような提案。
だが焦っているカランは思考をそのまま口から垂れ流す。
「ほら、ロンベグは初めてをおれに捧げないと駄目だけど、ヴルネイも参加したいんだろ? 前の時そうだったからな。だから、ロンベグを真ん中にして、3Pとか……さ? 駄目?」
(こ、これならロンベグもヴルネイとできるし、使命も果たせるよな?! 最高の選択肢なんじゃ……いや待て、それだとあの暑苦しさを味わうってことか? 無理かも……)
冷静に考えて不可能を悟った白獅子が提案を引っ込めようとするのだが、それよりもロンベグが抱き着く方が早かった。
「ありがとうございます、カラン様。私はいいと思います! ヴルネイさんは、ど、どうでしょうか……?」
(確かにこれなら何も問題ありません。ですが、ヴルネイさんがカラン様とできないのですが、それは大丈夫なのでしょうか……?)
「ロンベグがいいのなら、俺は……構わない」
(どうせロンベグが初めてを捧げるのは必定だ。その後俺の入る隙間があるとは限らない以上、ここは乗っておいた方がいい)
「あ、やっぱ今の無しで……おれには男だけの3Pとかまだ荷が重い気が……」
怖気づいた言葉でなんとか場を流そうとするカランだが、抱き着かれているせいで胸部の中でもごもごとした音にしかなっていない。もちろん二人に伝わるわけもなく、寝室では第二ラウンドに進む空気が出来上がっていた。
「ではカラン様。ベッドにお運びしますね」
「い、いやーおれ実はもう干からびてて、全然立つ気配がねえんだ。悪いが3Pはまたの機会に……」
「何が立つ気配がない、だ。自分の股間を見てから言え」
呆れた言葉を虎からもらって獅子が視線を下ろせば、そこにはすでに完全臨戦態勢の一物が早く交尾させろと勇んでいた。
「うえぇ?! なんでっ!」
もはや教育の成果で脊髄反射に勃起していることに気づき、カランの脳裏を絶望の二文字がかすめた。慣れてきたとは思っていたが、まさかここまでとは本人も思っていなかったのだ。
その驚きが収まる前に、ヴルネイは鎧を脱いでいく。淀みない手つきで武骨な光沢から脱皮すれば、山のような筋肉を持つ虎があらわになる。緊張に引き締まった口は表情のいかつさを強調しており、恥ずかしそうに喋れば牙が光った。
「カランを移したところ悪いが、俺が一番下の方がいいだろ」
「確かにそうですね……」
巨体用のベッドではあるが、それでもヴルネイが大の字になればシングルサイズに見えてしまう。スプリングに沈む距離など問題にならないくらい分厚い筋肉が、山となって盛り上がっている。
「うわ……」
巨躯ゆえの重量でベッドがきしみ、隣にどいたカランが驚嘆の息を漏らす。虎は体を横に起こし、目を見開いたまま動かない獅子の顎へと指を伸ばした。
「なんだ、今回は逃げないのか。本気なようだな」
「どうせ遅いか早いかだけの違いだからな。腹をくくったんだよ」
くくっと喉で噛み殺した笑い声がしゃくに触って、獅子は指を払いのける。感情表現が豊かではないヴルネイがからかうような仕草をするのも珍しい。カランはそこまで気が回らなかったが、虎も緊張しているのだ。
「では、まず私が入れますから。カラン様はこちらに……」
そう言ってカランが運ばれたのはベッドの下側であり、ヴルネイの硬くデカい尻の方だった。
立って見下ろせば虎の大きな体が一望できる。筋肉で膨らんだ四肢は屈強すぎて、鎧を脱いだとは思えない、まさに筋肉の鎧そのもの。
変えたばかりのシーツに沈む黄色の巨体はもどかし気にしわの波をたて、期待を込めた視線を送っていた。
正確にはカランの側に立つロンベグへ、なのだが、その切ない相貌が醸す色気にありえない感情が想起されていく。男なんてと思っていたカランの中で、確実に何かが変わった瞬間でもあった。
「ヴルネイさん」
獅子の視界が色欲にぼやけていく中で、赤牛が虎へと覆いかぶさっていく。
分厚さでは負けないほど大きな肉体が重なり、ロンベグは鼻面を虎の首筋へこすりつける。ようやく到着した愛しい人の腕の中は、牛の心をときめかせるには十分だった。
「たくましいです……大きくて、かっこいい……ヴルネイさんは素敵です」
「お前こそ、優しく可愛い顔をしている。ロンベグ……」
二人は互いの顔を撫でながら、間に甘い空気を作り出す。虎の四肢は牛へと抱き着いており、赤い背中を急かすように撫でていた。
そこで感極まった虎がキスをしようと顔を近づけるが、すでに赤牛の視線は後ろに向けられていた。
「カラン様、私たちのおマンコをほぐしてみてください。やり方は教わりましたよね?」
「お、おれがっ?! こんなでっけえケツに指を突っ込むのかよ……折れるんじゃねえの……?」
「大丈夫です。よっぽどひどくしなければ、私もヴルネイさんも傷ひとつ付きませんから」
安心させようと微笑むロンベグだが、すでに顔は上気して赤の発色をさらに良くしている。興奮に突き動かされるまま、キス待ち顔で待機するヴルネイへと唇を重ね、尻をゆすって主導権を明け渡した。
「んっ、ヴルネイさん……ちゅぅ……!」
「ロンベグ、んっんっ、はぁ……ああ、もっとだ……!」
何度も深いキスを交わし、体をまさぐる黄と赤の巨体。口同士のまぐわう粘液の音がぴちゃぴちゃと響き、シーツのこすれる音と合わせて演奏が始まった。
リズムを取る獅子の心音はボルテージを上げている。カランは生の情事を前に感じたことのない興奮を持て余し、変わってしまった自分を憂うと共に、どうしようもない劣情に股間をいきり立たせていた。
獅子の目の前では黄と赤のデカ尻がもぞもぞと蠢いており、股間をこすり合わせることに終始している。はみ出た金玉が興奮に踊り、ぶらりと垂れ下がる。熱から逃げようと柔らかくなった袋では、玉の形がはっきりと浮かび上がっていた。
普段はあれだけたくましく頼りがいのある二人が、欲望をむき出しにして絡み合っている。そのギャップはカランの脳を焼き、体の支配権を獣欲へと明け渡す。
「確か、指を入れて……肛門を温めて……」
習ったことが頭の中でリフレインし、獅子の視野が狭まっていく。
ロンベグの尻は胸と同じで谷間に金の体毛を生やしている。形だけなら丸々としたデカ尻であり、女性だと言い訳もできるだろう。だが、尻から伸びる筋肉で覆われた脚や体毛がそんな甘えを許さない。
そんな赤尻につぶされている虎の尻も似たようなものであり、むしろ脚の太さはロンベグより上だ。だがぼこぼこに筋肉を膨らませた脚で牛にしがみつき、大好きホールドを決めている姿は愛らしさがあった。
そんな二人は一心不乱にキスをし続けており、唇が唾液でふやけそうなほどいたるところを舐めまわしている。片思い期間に募らせた感情は暴走し、自分の意志で止められないほど苛烈に迸っていた。
「んんんっ、ロンベグ、ロンベグ……!」
「ヴルネイ、さん……あぅ、んっちゅっ……んむ、ふぅ……ん!」
もはやキスだけで感情もわかりそうなものだが、そんなことを考える余裕はない。
白い指が二人の尻を割り、無毛の粘膜へと入り込んだのだ。
「んっああっ!」
「ひうぅ!」
筋肉で膨らんだ体から出たとは思えないほど、鼻にかかった甘い声が獅子の鼓膜をくすぐる。雄の匂いしかしないデカ尻に指を入れながら、カランは自分の荒い息が二人の毛皮を揺らしていることに気づいていた。
興奮しているのだと、認めざるを得ない現実を前に、やけになって指を潜り込ませる。
一本、二本と、排泄用の穴はすんなりと飲みこんで、火傷しそうなほど熱い内壁で指をなぶっていく。毛皮のない無毛の粘膜がうごめくさまから、獅子は目を離すことができなかった。
「んぅ……」唾液まみれの口でほほ笑む牛が。「カラン様……そのまま、指を動かしてほぐしてみてください。私のおマンコは慣れているはずですから、すぐ挿入できるかと」
「俺も……」獅子が聞いたことないほど儚い声が虎から漏れて。「問題ない、ロンベグ……早く入れてくれ……」
「そうしたいのですけど……入れたら止まらなくなりそうで……。カラン様が入れやすいように、もう少しキスをしてもいいですか?」
「お前がそう望むなら、構わない……んんっ!」
それから二人は会話もほどほどに、またも口を吸い合うことに耽溺していく。筋肉同士の重厚な絡みの合間から、ついばむ音が軽やかに響いていた。
むき出しの性欲は童貞の獅子には刺激が強い。金づちで頭部を殴られたような衝撃が脳で響きながらも、指だけは独立して動いている。
指を増やしても巨体たちは艶やかに尻を振るだけで、嫌がるそぶりはまるでない。それどころか飢えた獣がよだれを垂らすかの如く、赤く熟れた秘孔から愛液をしとどにこぼし始めていた。
「なんだこれ、エロ過ぎだろ……くそ、男のくせに、こんなケツしやがって……」
ノンケだった獅子は女性に手マンする想像くらいしたことがある。だが男の尻でもこれほど卑猥で粘着質な音をたてるなど、まったく知らなかった。
獅子の指先一つでキスの合間から喉を滑る言葉が漏れ、尻尾が過剰に反応を示す。普段鉄壁を誇る重戦士も、慈悲と慈愛に満ちた神官も、尻を弄られれば等しく雌のような声を出すのだ。
「ふあぁ……カラン様、もっと、激しくても大丈夫ですよ……」
「ん、おおぉ……いじり方がなってないな、ちんぽの根元を押さえるように、んっんっ!」
「もっと激しくったって、このままだと手首まで入っちまいそうだぞ! スケベすぎるだろお前ら!」
頭がオーバーヒートして叫べば、赤牛が体を起こして獅子に並ぶ。いつも通りの優しい笑顔だが、その口唇は唾液でてらてらと輝き、上気した頬は蕩けているようだった。
「ふふ、せっかくですからきちんと練習いたしましょう。私のは大きいのでちゃんとほぐさないといけませんし……ヴルネイさん、いいでしょうか?」
「……しょうがない。あまり焦らされるのは好きじゃないが、お前がそう言うなら……」
「ありがとうございます。ではカラン様、見ていてくださいね。私は本番こそまだですが、教育は受けてきておりますから」
獅子の代わりに牛の指が虎へと入り込めば、変化は歴然だった。
「んおおおっ?!」
ロンベグが指を体内で曲げるだけで、ヴルネイの重厚な筋肉が跳ねた。のしかかっていた赤が無くなったおかげで、ビン立ちちんぽが先走りを噴く様も鮮明だ。そのまま指に先導されて、ヴルネイの浮いた腰がカクカクと不格好に踊りだす。
「ロ、ロンベグっ……そこ、そこはぁ……おっおっおっおおぉぉぉっ!」
「男性には誰もが気持ちよくなれるところがあります。そこを撫でてあげると、ヴルネイさんみたいな強い方でも、こうしてよがってくれるんですよ」
「感じるっ、ああっ……気持ちいいぞロンベグ! 俺のケツが、マンコになるっ! うおっおおぉ!」
愛しい人から攻められているという興奮もあって、ヴルネイの一物は汁を漏らし続けている。すでに肛門は立派な性感帯であり、ロンベグの性技を前になすすべもなくアクメの波を浴びた。
獅子の時にはなかった大仰な反応で、足先の指が何度も開閉を繰り返し快楽に翻弄されているのは明らかだ。カランは目を奪われると同時に、優しい顔で虎を攻め立てる牛にも胸の高鳴りを覚えていた。
「わかりますか、カラン様。このまま指を増やして、おマンコをとろとろにしてあげるんです。そうしたらどっちも気持ちよくセックスができるんですよ」
「うおおぉっ! おおっ! おっおっ! ロンベグ、ロンベグうぅっ! お前のちんぽが欲しくてたまらないっ! ああ、早くっ! 早くっ、ぁ……~~~~~~!!」
虎の腰が浮き、硬直する。喉からは言葉にならない音が漏れ、巨根は爆発しそうなほど硬く張りつめていた。
「あっ、これがアクメですよカラン様。ヴルネイさんが私の手マンで感じてくれたんです。なんて雄々しいちんぽ……ああ、思いっきりしゃぶりたい……」
「すげえ……」
ベッドの上で跳ねるヴルネイを前に、カランは感嘆を漏らすだけだった。あまりにも刺激が強すぎる欲望の凝縮に、それ以上の言葉は出てこない。
「おおぉう……おぉ……」
余韻に浸った言葉がまろび出て、シーツへと滴っていく。尻が小刻みに動くのは誘っているのかただのけいれんなのか、カランには判断つかないが性欲を煽ることだけは確かだ。
獅子の股間では先走りが溢れ、糸を垂らしてぶらぶらと揺れている。ロンベグはそれを確認して、柔らかく微笑みながら四つん這いで尻を向ける。
むちっと張りよく膨らんだ臀部は左右から肉を押し付け合って密着している。豊満すぎて、震えると毛皮ではなく肉そのものが波を起こすほどだ。もはや金の尻毛など気にならないくらい、獅子の劣情は燃え盛っていた。
「本当はこの後実践してほしかったのですが……私も我慢できませんし、カラン様のちんぽも限界のようですね?」
「お、おれは……」
何を言おうとしたのか、獅子は自分でもわからない。目の前ではまたキスをしながらいちゃつく虎と牛がいて、艶めかしい吐息が誘い文句として響いていく。
先のアクメで我慢の限界が来たのか、ヴルネイのねだる声が合間に混ざっていた。普段の低音とは違う緩んだ声音は甘く、尻尾で赤牛の尻を撫でては舌を差し込んでいる。
「んちゅっ……ロンベグ、そろそろいいだろ? いくら俺が防御自慢でも、限界というものがある」
「私も入れて差し上げたいのですが……ちゅぅ」
「お前の献身には頭が下がる、んはぁ……」
このままではらちが明かないとヴルネイは見ている。初めての欲情に困惑しているカランの前に、いくら据え膳を置いても意味はない。
だからもっと直情的な言葉で誘う必要がある。気は進まないが、愛するロンベグとするためなら虎はプライドを捨てられる。
黄色い両手で赤い尻をつかんで開けば、金の体毛に囲まれた蕾がさらけ出された。指でほぐされたそこは少し膨らんでいて、ちんぽのための穴だと、見るだけで分かってしまうほどに熟れていた。
「カラン……いい加減、あきらめろ……! 男色も悪くないぞ。セックス、しような……?」
「んっ、カラン様、早く入れてください……! 私のおまんこはもう準備できていますから……」
「あぅ……」
少し背中を押すだけで、カランの理性は土砂崩れを起こす。
今までのうっ憤を晴らすかのようにロンベグにおおいかぶさり、遠慮のない挿入を行った。
「おおおぉぉっ! ああ、カラン様……!」
「なんだよこれ、ずぶずぶとこんな……こんなの雄の尻じゃねえだろ!」
ロンベグの中は柔らかくもきつい処女の穴であり、熱い内壁が脈打ってちんぽを愛撫する雌穴だ。想像よりずっと気持ちいい刺激をもらって、カランはキレ気味に吐き捨てた。
獅子の一物は形のいい巨根で、今、ロンベグのマンコはその型となっている。掌とはまるで違う粘液のようなしごきがちんぽを包み込み、快楽を与えてくる。
「ああ、ああ……ついに、カラン様に初めてを捧げることができました……このまま、どうか……んああっ! ちんぽ、すごいいぃい!」
「はぁ、はぁ……これでも感じるのかよ! 中が、うぉっ! すっげえびくびくしてる……!」
「カラン様ぁ……」
甘く優しい声を出して、ロンベグは体を起こす。そして獅子の手を取って自身の胸へと導けば、白い掌がぎゅっと赤い毛皮に沈み込む。
「おっ……! んおっおっ、ぶもっ! ああ、気持ちいぃ……!」
「ケツも胸もでかすぎるだろ! 前々から思ってたんだ、なんだこの巨乳! 片手で握ってもこぼれてくる!」
「カラン様のために、んふぅ、いーっぱい鍛えましたから! 乳首の方も、おんっ! あっあっあっ……カリカリ引っかかれるの、たまんないですぅ……!」
「ああもう! 雄とか雌とか関係ねえよ! ホモセックスがこんなに気持ちいいなら、さっさとやればよかった!」
すっかり男色の虜になったカランは赤牛の巨乳を揉みながら腰を叩きつけ、交尾の喜びをかみしめる。
自分より高く広い背中にしがみつき必死に腰を振る姿に、嫌悪はもう見られない。
赤牛はみつあみを揺らして喘ぎ、本懐を成し遂げた喜びを歌っている。だがそれは神官ロンベグとしての本懐だ。彼自身の望みは、もう一つ存在している。
「あっ、ヴルネイさん……」
「ロンベグ……」
黄と赤の手が繋がり、指を絡め合う。潤んだ視線は絡まり合って、これからに思いをはせている。もう二人を留めるものは何もなく、互いの手を強く握った。
ここまで来ると言葉はいらなくて、快楽の波に揉まれながらもロンベグは一物を虎へと突き立てる。虎の肛門は牛よりも少しだけ緩かったが、極太のソーセージでぎちぎちに開かれるところを見るに、限界まで拡張しているようだった。
「あっああぁ……ロンベグ……!」
「ヴルネイさん、ヴルネイさん!」
ロンベグのちんぽは優しい顔に見合わずグロテスクな巨根だ。太い血管が縦横無尽に走り、カサも十分に広い。へそまで続く金の陰毛も相まって、初めて見たカランがドン引きするほどには雄々しい。
柔和な表情と言葉遣いでごまかしているが、ロンベグという雄は見た目だけなら雄性の塊なのだ。
だが、それを胎で受けるヴルネイにとってはどうでもいいことで、大事なのは好きな人の熱を感じられているということのみ。虎は表情をほころばせ、傷だらけの顔に温かい笑みを作った。
「おぉ……腹が重い……! ちんぽが震えて、お前を感じるぞっ」
「んあっ! カラン様が、激しく犯すので、あうぅ! 体がっ止まりませんっ!」
「気持ち良すぎるんだよ! ずっとちんぽしゃぶられてる感じだ! 雄のケツって、こんなにいいのかよ!」
三人が連結したことで、いよいよ行為も佳境だ。乾いた破裂音を奏でる尻たちの喜びは甲高く、上ずる嬌声は吐息を交えて空気を震わせる。三人は貪欲に快楽を追い求め、体を揺らし始めていく。
「ふ、おおぉっ! ケツすっげすっげ! 搾り取られちまう! くそ、雄で童貞卒業とか、したくなかったのに! あーくそ、たまんねええぇ!」
カランは初めての挿入に翻弄されており、腰を無遠慮に打ち付け続けている。相手のことを考えていないセックスだが、当の二人は互いのことしか見えていないため気にされない。
それをいいことに本能のままにデカパイを揉みこんで、肉を変形させている。乳首を弄る余裕もなく、圧倒的な包容力に溺れていた。
「んあっああぁ! ヴルネイさん、気持ちいい、ですか……?」
「ああ、気持ちいいぞ! ロンベグ、俺も、お前を気持ちよくしよう……! だから中にくれっ! お前の種で、孕ませてくれっ!」
屈強な赤い背中の向こう側では、いまだ恋人つなぎをした二人がうっとりと見つめ合っている。この中で一番の長身であるヴルネイは土管のような脚で、ロンベグをはさむ。密着して腰を振っているカランも一緒だが、もはや誰も気にしていない。
傷だらけの虎は切なそうに歪んだ目で喜びと飢餓を訴えた。喘ぐたびに開く口からは寂しそうに舌がはみ出し、吸ってほしいと言わんばかりに光沢をまとう。
ベッドの中で見せるギャップにロンベグは心臓を高鳴らせ、腰の速度がどんどんとあがる。そのたびに獅子の一物に中をえぐられて、人生で最も強い快楽に脳がゆだっていく。
「ヴルネイさん……! 可愛いっ! 可愛いです! ずっと見ていたいです! 貴方のいろんな顔を! 私は……ずっとお側で!」
「お前も可愛いぞ、んぅ! ロンベグ、おおおぉぉっ、感じるっ! もっと俺の中に……!」
「はいっ! 私ももっと、ヴルネイさんを知りたいっ! もっと、もっと!」
もはや3Pというよりかは二人の世界だ。カランは自分のことしか考えない腰振りしかできておらず、オナホを使っているのと大差ない。たくましい背中に突っ込んだ鼻面で雄の臭気を吸い込みながら、射精に向けて一直線に動いている。
そんな中でロンベグは無意識にカランの速度と合わせながら、ヴルネイの中を探し続けている。どこを突けば喜んでくれるのか、愛情あふれる感情を陰茎に乗せて、屈強な虎マンコを犯し続けていく。
「んぐおっ! おぉっおっおおぉ~! そこ、すご、いいぃ!」
「ここですかヴルネイさん! あうぅ! ああ、ヴルネイさん、私頑張りますから……!」
虎ちんぽは栓が壊れてしまったのか、濁った先走りをぶしゃぶしゃと噴き出し続けている。それは綺麗に割れた腹筋に溜まり、毛皮をへたらせて筋肉の形をはっきりと浮かび上がらせていた。
ロンベグに負けないくらい大きい一物は限界まで張り詰めており、少し触るだけで暴発しそうだ。もういついってもおかしくないほど興奮しているヴルネイだが、それを抑えているのはこの時間を長く続かせたいという懇願のせいだ。
腹に収める愛しい時間を一秒でも長く。口下手な虎は自分にできる限りの方法で愛情を伝えていた。
だが、その均衡も破られるのは一瞬だ。
脱童貞したばかりのカランにとって、ロンベグという極上の雄おマンコは耐えられるものではなかった。
「ぐうぅああぁ! ああもう、いくいくいくいくっ! このまま出すからな! 出して、いいよな?!」
「もちろんですとも! 記念すべき初中出しを、貴方様の従者にぜひ!」
赤牛の体内に吐精できることを、虎はうらやましく思った。自身もこれから吐精されるというのに、嫉妬が沸き上がってきてしまうのだ。
「ロンベグ……」
だから虎は牛を呼ぶ。呼んでから思いっきりマンコを締めつけ、自分はここにいるのだとアピールをする。その女々しさに自嘲が漏れるものの、中でちんぽがひくつけばすべてどうでもよくなってしまう。
「んあああっ!」前後からの快楽に牛は喘いで。「ああ、そんなに締められると、私……私もいってしまいそうです!」
「いいぞ……! 俺の中に出してくれ!」
「おれはロンベグの中に出すぞ! さっきあれだけ出したのに、もう出しちまう! くそ、ホモマンコ良すぎる……!」
「ふぁあぁ! 申し訳ありません! 私は勇者様を導く使命を帯びているのに、真っ先に出して……ああっ、でも、気持ちよくて……止まらないんですぅううぅ!」
先に音を上げたのはカランの方だというのに、出したのはロンベグが先だった。
勇者への奉仕と好きな人との初めて、この二つを同時に行ったことで実際は誰よりも興奮していたのだ。
「出しますっ! ああぅうぅ! 私、ヴルネイさんの中に……ザーメンを、あううぅぅ!」
赤くムチムチと実った体が硬直し、ザーメンの発射準備を整える。その衝撃は背後の獅子にも伝わり、がっちりと食い込む柔肉によってとどめを刺されようとしていた。
「ぐおぉぉ! おれも出すっ! 出すぞ!」
そうして二人は同時に白濁をぶちまける。金玉から尿道を駆け抜ける衝撃に息が詰まるが、すぐに雄たけびとなって空気を震わせた。
「ううぅぅぅ!」
「んが、あああっ!」
ロンベグの射精は虎の膣内を満たすだけにとどまらず、結合部の隙間からドロドロとした白濁を逆流させるほど強い。粘っこく半分固体のようなザーメンは興奮の高さを物語っており、それが大量にヴルネイを孕ませようと飛び出してくる。
「おおぉ……これがロンベグの……」
腸を膨らませる熱源に愛おしさを抱き、ヴルネイは陶酔としながら腹を撫でる。赤牛の射精はまだ続いており、本当に孕んでしまうかもと思わせるほどの勢いだった。
対して、すでに何度も射精していたカランが出したものはほとんど水に近く薄いものだった。量も少なく、何とか絞り出した精液では前から漂う圧倒的なザーメン臭に勝てるはずがない。
「すげえ……ロンベグって、こんなに金玉が強かったんだな……」
「おぉ……おおぉ……止まりません……んおっおっ……」
びゅーびゅーと音が聞こえてきそうなほど強い射精だと、逆流してシーツに降りかかるものを見ていれば嫌でもわかる。それがぷるぷる震えるほど濃いのだと知れば、カランの雄としての自信にひびが入っていく。
「おおおぉ……ヴルネイさん……」
「ロンベグ……」
余韻を噛みしめるように二人はまた抱き合い、互いの顔に何度もキスを落とす。頬を撫で合い、鼻面を押し付けたりと、言葉を介さないコミュニケーションで充実を伝え合った。
同時に、赤牛が身体を倒した拍子に萎えた獅子ちんぽが抜けて、ぽっかり空いた穴から乳白色の粘液がこぼれていく。それはロンベグの出したザーメンとはまるで違うが、カランは鼻息一つでごまかした。
「ま、まあおれはすでに何回も出してるしな。……でも、こんな濃いの出したことねえけど」
試しに顔を近づけてつついてみれば、ゼリー状のザーメンが指に付きトロリと伸びた。考えてみれば当然のことなのだが、獅子の興味は完全に染まっており、抑えることができなかった。
そうしている間にも、虎と牛は体を擦りつけていちゃつき、鼻にかかった声で名前を呼び合っていた。巨躯の絡み合いを間近で見たカランは、射精後の冷静な部分であっても、煽情的だと思ってしまう。
「ロンベグ、今度は俺をいかせてくれないか?」
「もちろんです。ヴルネイさんにも、気持ちよくなってほしいです。ですがまず……カラン様」
振り向いたロンベグは行為の雄々しさとは打って変わった笑みを作り、獅子に祝福の言葉を放つ。いまだちんぽからは濃い残滓の玉をぶら下げている巨躯は、もう笑み一つで雄々しさを中和できていなかった。
「初体験お疲れさまでした。先ほどからたくさん出したせいで、もう種切れになってますね」
「本当だよ……気持ちよかったけど、もう立たねえ……」
「ではこれからお風呂に行きましょうか。体を洗って、本日はおやすみになったほうが……」
会話中に、ぬっと影が差す。壁のような大男、ヴルネイが体を起こしロンベグの背中に抱き着いたのだ。
大きな赤牛をすっぽり包み込むほどの体躯に、カランは人のサイズ感が麻痺してしまいそうだ。虎は萎えないものをこすりつけながら、不満気に口をとがらせていた。
「ロンベグ、俺は生殺しのままか……?」
「あ、いえ、ちょっと待ってくだされば……いくらでもお付き合いしますよ!」
「俺は今がいいんだ。わかるだろ? それに、カランに本当のセックスってやつを見せてやろう」
「ちょっと待ってください、ヴルネイさん……あっ!」
虎が体重をかければ立場が逆転し、ロンベグはカランに覆いかぶさり、その後ろでヴルネイがちんぽで狙いを定めている。後背位になった赤牛は困ったような、けれども嬉しそうな表情で背後を振り返った。
「ヴルネイさん……」
「駄目か? 俺はお前ともっとやりたいんだが……」
「い、いいえ……全然駄目じゃありません……」
好きな人に求められ、恥じらいながら喜びを表すロンベグ。すでに尻は迎合していて、赤熱した虎ちんぽを求めてヘコヘコ揺れている。すでに勇者に処女を渡した以上、ためらう必要はないのだ。
「今度は俺が入れるが、いいか?」
「もちろんです。私もヴルネイさんが欲しい……」
マンコを差し出して乞えば、重力にひかれた赤牛おっぱいが獅子の鼻先でたわむ。手形の付いた毛皮はへたっており、乳頭から盛り上がっている乳首がいっそう際立つ形になっている。
カランの口は自然と赤子のようにそれを求めてしまい、射精後だというのに吸い寄せられていく。だが、それより先に武骨で分厚い掌が、さっと覆い隠してしまった。
「悪いなカラン。今だけここは俺のだということにしてくれ」
「あ、おれは……」
「さっき見ていたが、あんな力任せに胸を揉むものじゃない。聖鎧教のやつらはお前に甘すぎる。胸ってのはこうやって弄るんだ」
好きな人の胸を力任せにいじられて、ヴルネイはいい気分ではなかった。
そして、手マンされた仕返しとばかりに、今度はヴルネイが赤牛の両乳首をこねくり回す。太く節くれだった武骨な指が繊細につまみ、乳頭をこする。すっかり立ち上がった乳首は弾力もよく、もどかしい快楽でロンベグの理性をなぶり始めた。
「あうぅ……んあっ! おっぱい、気持ちいぃ……!」
「確かに揉みたくなるほどいい胸だが、それだけだと相手は喜ばん。なあ、ロンベグ?」
「あんぁ、でも、私は……カラン様の手も、嫌いでは……」
「まったく優しいことだ。じゃあ聞き方を変えよう。どっちの方が気持ちよかったんだ?」
自分を選んでほしいと意地を張りながら、虎は急に力を入れて片方の乳頭を引っ張った。
「んあああぁぁっ!」
そして反対の乳首に軽く爪を立て、先端を丁寧にひっかいていく。緩急のついた攻めに赤牛の腕が震えて崩れそうになるが、下にいる獅子を見て何とかこらえた。
見た目こそ豪胆で雄々しいヴルネイだが、その実真面目な男だ。相手を悦ばせるための手間を惜しまず、乳輪から先端まで、すべてを愛撫して奉仕する。
「ふぅああぁ、おっぱい気持ちいいっ! あぅ、ううっ! そんな、んっ、手つきがいやらしくて……感じちゃう……! ヴルネイさんが、こんなに上手だとは、思いませんでした……!」
「よかった。これでも経験が豊富な方ではないからな。アパックにも協力してもらって、指使いを練習したんだ」
「んぅ、言ってくだされば、私でもお付き合いしたのに……! あんっ! 乳首弾かれるの、気持ちいいですっ!」
「お前を驚かせたかったんだ……その、下手なところを見せたくなかった……」
いい格好をしたいというプライドも本当だが、実際はアパックが勇者のためにと無理矢理仕込んだ側面の方が強い。それをロンベグのために使い、でかい胸に快楽を刻む。
乳首をなぶる合間に胸を揉むことも忘れない。下からすくい上げることで、むにっと大きな山が出来上がる。そこから徐々に手を登らせれば、臨界点に達した痴肉がぶるんっと乳首が掌にこすれて落ちた。
「ぅあああっ!」
「俺の方が気持ちいいだろ、ロンベグ?」
「ん、はい……ヴルネイさんの方が、上手です……」
呆けて赤らんだ顔で応えるロンベグの視界に、すでにカランはいない。
駄目出しからデカ乳が弾む瞬間まで、ずっと白獅子は呆然と見ているだけだった。
赤く広い体でカランからは見えないが、虎は勝ち誇るでもなくホッと安堵の表情を作っていた。頑張って学んだかいがあるというものだ。赤牛に喜んでもらえたことが嬉しくて、つい指先に力が入る。
「ああぁん、ヴルネイさん……もうおマンコ我慢できません……! 早く、欲しいです……!」
体内を奥まで犯してほしいと尻を振って懇願するロンベグは、ヴルネイのフィルターを通して見れば鼻血が出そうなほどに可愛らしい。その願いを叶えたくてぐっとちんぽが立ち上がる虎だが、あくまで口調は冷静だ。元から口下手でよかったと、ヴルネイもこの時ばかりは自分の性質に感謝した。
「もう少し我慢できるだろう、ロンベグ? 俺はさっき手マンでアクメさせられたのだから、そこまではさせてもらわないと、カランの教育にもならん」
「あぅ、それはそうですけど……んひゃあぁ!」
「だから、な……?」
(男は少しじらしたほうがいい……本当だろうなアパック……!)
本当なら速攻で合体して腰を振りたいヴルネイだが、その方がロンベグも喜んでくれると信じて取り繕うのに必死だ。実際はただのアパックの好みなのだが、そこは経験の少なさのせいで気づくことはない。
「だったら、ヴルネイさん……もっと強く……」
「もっと……?」
「はいっ! もっとぎゅっと、私のおっぱいをいじめてくださいっ! もどかしくて、私、どうにかなりそうなんですぅうぅ!」
「ん、むっ……わかった……!」
(じ、じらしすぎたか……?!)
みつあみを振ってねだる赤牛のため、虎は指先に力を込めて突起をつぶす。誰が見ても剛腕のヴルネイは乳首一つ潰すのにも気を使うのだ。
膨らんだ乳首は楕円形に変わり、みちみちと締め上げられる。それから指の腹で転がせば、ロンベグは背筋をそらして高らかに叫ぶ。
「ひぃあああぁぁ! これ、これですうぅ! あぅ、もっと、私のはしたないおっぱいをいじってくださいいいぃ!」
「むぅ……」
(痛くないのか……? だが、ロンベグがこれで気持ちいいというのなら……)
温和な聖職者が嘶いて、快楽を享受する。普段からチクニーで鍛えた乳首は多少の強さではびくともしない。だらしなく舌を垂らしているせいで、よだれがカランへと降り注いでいく。
「んあっあああぁ! 気持ちいいぃ……! ヴルネイさんがいじってくれるから、いつもより、ずっと……!」
「ん、むぅ……うぅ……」
(ロンベグが俺の手でこんなにも喜んでくれている。くそ、俺も我慢が……!)
赤牛が暴れるたびに膨らんだ尻が虎ちんぽに当たるのだ。そろそろ欲望の手綱を握るのも限界で、つながりたいという願望が熱暴走を起こし始めた。
誰にも見られていないことをいいことに、ヴルネイは何度もちんぽをこすりつけてわずかな快楽を咀嚼している。すでに赤い尻の毛皮はべったりと先走りによって汚されていた。
「ふん、ふん……ロンベグ、入れてほしいか?」
「はい……! お願いします……!」
「そうか……だが本当に入れていいのか……俺のはさっき見た通り、でかすぎるくらいだぞ?」
「構いません! 私は勇者様のために、おマンコをちゃんと拡張してありますから! ヴルネイさんのものがどれほど大きくても、私は、んうぅ……入れられたいのです!」
「わかった……!」
入れると決めてからの行動は早かった。ヴルネイは辛抱たまらんとデカ尻をつかみ、膨らんだ先端を押し当てる。一気に沈めないのはロンベグを慮った行動故だったが、ふりふりと踊る尻も同じ気持ちのようで、赤牛は潤んだ目で振り返り理性にとどめを刺しに来た。
「ヴルネイさん……もう、もう……早くヴルネイさんで私のおマンコをいっぱいにしてください……!」
「…………っ!」
そんなことを言われたら、ヴルネイが躊躇できるはずもなく。
ロンベグに負けないくらいの巨砲が、一息にマンコへと埋没していった。
「んあ、ああああぁぁ~~! ヴルネイ、さん……大きいですううぅ!」
「熱い……中もとろとろだ……! くぅ、気持ちがいいぞロンベグ!」
「はい、私も気持ちいいです! お腹の中が全部、ヴルネイさんで埋まってます! ……おおぉ~そこっ……当たる、奥まで……! でかすぎます、ああ、こんな大きいのが私の中に……!」
虎の一物は強大で、萎えていても人目を引くほどの大きさだ。完全勃起した今、似たような巨躯である赤牛の結腸までも易々と届いている。
経験はあると言っていたヴルネイだが、こんな巨根を入れられる相手など限られている。実際は受けしかしたことがないため、彼の童貞卒業はカランよりも遅かったりする。畏怖と尊敬を集める肉槍はようやく相手を見つけることができたのだ。
初めて感じる柔肉の筒は虎の想像以上に気持ちがよかった。頭の片隅ではロンベグへのいたわりが存在しているが、それを求められていないのだと本能は感じ取る。
だからヴルネイの角ばった肢体が腰を振る装置へと成り下がり、ケダモノのように激しい交尾に耽り始めた。カランとのセックスがお遊びに見えるほど重々しい打撃音を尻から響かせ、咆哮をもって意思疎通を図る。
「ぐうぉおぉぉ! 締まる……こんな、俺のちんぽが全部入るなんて!」
「ああ、嬉しい! ヴルネイさん、すごい、すっご……あううぅ! おマンコ感じすぎて、頭、おかしくなりそうです!」
むき出しの獣欲を叩きつけるような交尾を、カランはずっと下から見ていた。
淫語を叫びながら顔中の体液を漏らすロンベグや、眉間にしわを寄せた威圧的な表情を作って歯をむき出しにするヴルネイ。
二人は汗にまみれた毛皮を照明によって輝かせているが、綺麗という概念とは程遠い。ただ快楽を貪ることしか考えていない獣であり、結合音にも容赦がまるでない。
「ひぅ、あっあああぁ~~!」
「いったのか……!」
「い、いきましたぁ……ヴルネイさんのちんぽ、はめられたばかりなのに、アクメ……アクメ決めちゃって……あうううぅぅ!」
乳首攻めで昂っていた体に巨根をハメられて、赤牛は射精を伴わないオーガズムを迎えてけいれんする。胡乱な目はどこも見ておらず、カランはぞっと背筋を震わせるが、口元だけは嬉しそうに歪んだまま。
「アクメすごい……きもひぃい……もっと、もっとくださいいぃ! ヴルネイさんのっ! 種ほひいですうぅ!」
粘着質な音で抽挿を繰り返していくうちに、ぼたぼたと泡だった精液がこぼれていく。カランはすでに先ほど自分が注いだ薄い精などとうに無くなっており、今ロンベグの腹には虎のザーメンしかないのだと悟った。
広がったカリがロンベグの愛液をかき出して、自分用の寝床へと整えていく。ギリギリまで引き抜かれると肛門がぷっくりと膨らんで、ぶぴゅっとマン汁が飛び出す。ヴルネイの陰毛はどろどろになっており、金玉まで汚液が滴っていた。
「どこを突いても、吸い付いてくる……! これが雄マンコかっ……!」
「はひ、はひ……っふおおぉ! 気持ちいいぃぃ! ちんぽの衝撃が、体中に響いて……んあああぁ! 練習で使ってた張り型より大きいのに、温かくて、たまりませんっ!」
「ロンベグ……! 辛くないよな……?」
「はいぃ! ヴルネイさんのデカちんぽっ、すごくすごく、気持ちいいです! さっきから、あぅ、何度かアクメ決めてて……もう、くせになりそうですっ!」
「そうか……なら、その、なんだ……少し本気でやらせてくれ……!」
「はへ……?」
ヴルネイは重戦士だ。自分の体重よりずっと重い鉄の塊をまとい、戦場を駆ける騎士。味方の盾となるため、恐ろしい重さを抱えながらも素早い行動を求められてきた。
そんな彼にとって、いくら筋肉の塊とはいえロンベグを持ち上げるのは容易なことだった。
「ふえええぇ?! ヴルネイさんっ?!」
さすがに駅弁されるとは思っていなかったため、赤牛は驚愕に目を見開いた。ベッドから降りた虎は牛を抱きかかえ、全身で愛を表現している。おずおずとロンベグも抱き返せば、二人の尻尾が嬉しそうにゆらゆらと揺蕩った。
「いくぞ……」
「はい……来てください、ヴルネイさん」
少し腰を下ろしたまま、虎は抽挿を再開する。牛の自重によってより深くはまったちんぽは、何度も結腸弁をぶん殴り、そのたびにロンベグは壊れたような嬌声を上げるのだ。
「ふおぉっ、おおぉぉおおぉ~! すごっ、ひううぅ! 深い深いっ……んおっ! あだるっ……おおおぉ! 雄子宮、殴られるっ! 早く、孕めって、ヴルネイさんのちんぽが言ってますっ!」
「ふぅ、ふぅー……嫌か……!」
「嫌じゃないです! ゆ、優秀な雄の子が欲しいと願うのは、男女問わず本能ですから! ヴルネイさんのザーメン欲しくて、さっきから、おマンコ止まんないんですうぅ~!」
持ち上げられてガンガン突かれれば、どんな雄でも雌の自覚が生まれるものだ。しかも抱き着いている腕から虎の筋肉が鮮明に感じられ、その硬さにほれぼれしてしまう。
「ふぅー! ふぅー! たまらん゛っ!」
子どもの胴体よりでかい虎の太ももは筋肉の凹凸がはっきりとしていて、その溝を通って結合部で混ざった愛液が流れ落ちていく。雄の匂いは最大まで濃さを増していて、ベッドで食い入るように見つめる獅子の鼻を馬鹿にしていた。
虎の手が尻肉を抱え持ち上げると、ぱっくりと割れた中心では腫れそぼったマンコがちんぽを咥えこんでいる光景が現れる。そこから限界まで引き抜こうとすれば、ずるるると幹が縁をこすっていく。
「ふおおおっおっおっお~~~~っ! おマンコ、すごいいいぃぃ!」
「ふぅ……いくぞっ!」
そこから重力と共に下ろしていけば、ロンベグは息を詰まらせながらまぶたの裏に星を見る。しがみついた手足の指先を震わせながら、アクメで脳みそを真っ白に染め上げていた。
「ひひゃあああぁぁっ! お゛、また、いっちゃいましたぁ……!」
「わかるぞ、中が締まったからな……」
ロンベグは赤くたくましい四肢でがっちり虎をホールドし、与えられる快楽に前後不覚になっている。呼吸を合わせて腰を振ることもあまりできず、ただオナホのように使われながらも、脳は幸せでゆだっていた。
少し目線をずらせば、歯を食いしばりながら荒々しく息を吐きだすヴルネイの顔がある。傷だらけの頬に玉のような汗を浮かばせる姿は雄々しさの化身であり、改めて、虎の魅力に感じ入った牛は抱擁する手を強めた。
「ヴルネイさん、キス、したいです……! 上も下も、ヴルネイさんが欲しいんですっ!」
「ん、わか、った……ぞっ!」
噛みつくようなキスをして、無我夢中で舌を絡ませあう。もはや唾液を飲み干すことしか考えておらず、牙同士がぶつかっても意識をかすめもしない。
呼吸する時間すら惜しんで深くを求めて、そのままいたるところを舐めていく。ロンベグはマズルを傾けて最適解を探しながらも、虎の頭を押し付けてねだり続けた。
「んふぅうぅ……んおっおおぉ……気持ちいぃ……ぢゅる、んむぅ!」
「はふっ、んっ……ヴルネイ、さん……はむっ! んぐ、んぐ……!」
呼気に含まれるわずかな酸素だけでは足りないと脳が警告を出しているのに、二人は離れようとはしない。鼻息で向かいの毛皮を揺らしても、それでもキスを求めている。
上も下もぐちゅぐちゅと音を出し、駅弁のまま行われる荒々しいセックス。男女でのまぐわいでは決して見ることのできない光景に、獅子はあんぐりと口を開けたままだった。
たくましい筋肉同士のぶつかり合いは見た目も匂いも何もかもが雄臭い。漏れ聞こえる嬌声も上ずってはいるがベースは雄の低音で、華やかさなど皆無だ。
「ん、はあぁ気持ちいぃです……! あうぅ! おマンコいっちゃう……いっちゃいます……!」
でかい尻にでかいちんぽが入り、でかい体にでかい手足が抱き着いている。
カランが今まで想像したこともないようなスケールで行われる交尾を前に、心臓が壊れたように脈打って血流を無差別にばらまき始めていた。この興奮を体中に巡らせていくと、すでに萎えたはずの陰茎が立たないながらも参戦を希望し始めた。
だが、すでに行為は終盤に差し掛かり、二人はそれぞれのモノが予兆で震えるのを感じ取った。虎はマンコ内で、牛は腹で。自然と口が離れ、ちゅぷっと混ざった唾液が糸を引いて落ちていく。
「んあ、そろそろ、ですね……?」
「そうだな……さっきいってない分、たくさん出そうだ……」
「中にください、ヴルネイさんの濃いザーメンで、お腹をいっぱいにしたいんです……!」
「ああ……!」
そこからはもはや暴力のような抽挿だった。ヴルネイは自身の剛腕を全力でふるい、赤く重い筋肉を前後に揺らしながら奥を叩きつけていく。
ロンベグの尻が恥骨にぶつかるたびに汁がはじけ飛んで、獅子の頬を濡らす。虎の足元は淫液の水たまりができており、牛の尻からもどろどろと零れ続けていた。
「ふぅ……うおおおぉぉぉっ! ふんっふんっ!」
「ひっああぁ! すご、いいぃ! また、先にいっちゃいそうです! ヴルネイさんも早く……頑張って、締めますから……!」
「んぐおおぉっ?! ああ、お前がまとわりついて来る……! 一緒にいこう……ロンベグっ!」
「はい! 私、頑張りますから……!」
卑猥な音がけたたましく、観客の存在を忘れて鳴り響く。
激しい動きに虎の金玉袋も暴れまわっており、牛の尻を何度も打ち付けていた。それが今からお前を孕ませるという合図のようで、赤牛の心は自然とときめいていく。
赤子の握りこぶしはあろうかという金玉から来る射精は、どれほどなのか。ロンベグはマンコをきゅんきゅんと蠢かせながら、着床の時を待っている。
「んぐおおおおぉぉ! そろそろ、だ……!」
「ふぁい……わかりますよ……ヴルネイさんが私の中でびくびくしてますから……!」
「出す、ぞ……!」
「私も……ああ、もう……!」
きゅうっとちんぽが射精準備に入ったのは同時だった。
そして、この一往復が最後になるだろうということも、二人は理解していた。
「ロンベグ……俺の気持ちを、受け取ってくれ……!」
「ヴルネイさん、貴方の種を私に……!」
酸欠と興奮でぼやけた思考の中で、もはや二人は何を言っているのかもわかっていない。
それでも、感情は自然と口を付いて出て、互いをつなぎ合わせていく。
「ぐおぉぉ……出るぞ! ロンベグ!」
「私も出ます! んううう!」
すれ違った二人がようやく向き合った瞬間、ついに尿道から白いマグマが噴火する。
「があああああぁぁっ!」
「んああああぁぁっ!」
抱き合って腹を密着させていたにもかかわらず、ロンベグの射精は間からどぷどぷとあふれ出してきていた。巨根から発射されたザーメンの勢いは強く、少しの隙間をみつけては我先にと零れ落ちていく。二発目とは思えないほど濃く、最初よりもずっと強い興奮にさらされていたことは明白だった。
「はふっ……あううぅ! こんなに出したの、初めてです……! ちんぽが馬鹿になったみたいです……!」
「俺もだ! ぐぅ! 出すぎる……んんんっ! 金玉が空になりそうだ……!」
だが、それでもヴルネイの射精には及ばない。興奮を溜めに溜めた一発目であり、煮詰まった精液で裏筋がぱんぱんに膨れ上がっている。明らかに鈴口の排出限界量を超えているため、虎は射精しているはずなのに金玉が重いという矛盾を抱えていた。
ホースの先端をつぶしたような勢いでぶびゅぶびゅと種が飛び出して、牛を満たして着床させようとしていく。ロンベグは腹が重くなっていくことに歓喜して、本当に自分が妊娠しているような錯覚に溺れていた。
「はぁ……ヴルネイさんのザーメン、たくさん……! おおおぉぉ……!」
赤牛は蕩けた顔でちんぽを震わせて、目を細めて悦に浸っている。
それはカランが中出しした時とはまるで違う陶酔の表情で、改めて獅子はこの牛がヴルネイのことを好きなのだと思い知った。
ヴルネイのすさまじい射精に体内を殴られるような衝撃を受け、抱き着く赤い腕がけいれんを起こす。自重を支えることもできなくなって、ロンベグは幸せそうな顔のまま、虎の腕へと崩れ落ちていく。
「ふぅ……ふぅ……!」
愛しい人を孕ませようと、虎は腰を押し付けて歯を噛みしめる。我先にと溢れる精液は途方もない快楽を与えてくるから、よだれを垂らしながらも意識をつなぎとめるのに必死だった。
その顔は野獣さながらで、いつもの善性はみじんも見られない。番を孕ませることしか頭にないケダモノであり、絶頂に鼻の穴を膨らませる雄だ。
「すげえ……」
呆然としながら、カランは乾いた舌をはがして言葉をこぼす。
荒々しい獣性のぶつかり合いは男女の交接では考えられないほど下品ではあったが、だからこそ生々しく興奮を誘う。もはや立たなくなった獅子の陰茎だが、心臓だけは性癖の終焉を受け入れて脈打っていた。
「ああ、ヴルネイさん……」ぐったりとした赤牛が。「すごく、気持ちよかったです……」
「俺もだ……ふぅー……なあ、ロンベグ……」
「なんでしょう……?」
あ、とカランは尻尾をぴんと立てた。
欲望を抑えきれず感情のままにむさぼり合った行為の後には、しっとりとした空気が流れている。つながる目線は甘く、上気した相貌は恥じらいを散らし、詰まる言葉は上ずっている。
このまま告白が来るのだと、獅子は直感したのだ。
(まさかヴルネイもロンベグと……? え、ならなんでこんなに時間がかかってんだ? 早く言えばよくね?)
「……その……」
(お前の体は俺の好み……いやそれだと体だけ求めているようだな……俺のことを好きになったか? ……いやいやいや、どれだけ自惚れているんだ俺は! これが初めての挿入だぞ! やはりここは素直に好きだというのが一番か……?)
口下手な男ヴルネイは限界まで思考を回し、何が最適解かを探し求めている。
騎士団では何もしなくても男が寄って来て、山のような体を褒めそやされているうちにいつの間にかまわされていたこともあった。そのうちの一人と付き合ったこともあったし、経験人数で言えばそこそこに上る。
だからこそ、自分から告白するという経験がなく、何を言ったらいいものかとんと見当がつかない。ウケをしていたのもそうだが、基本的に流されやすい男でもあるのだ。
「ロンベグ、俺は……お前と、もっと……こうしていたいと思う……」
(手をつないだり、じゃれあったり……そしてこういうこともしたり。お前のことをもっと知りたい……もっとつながりたい……)
「ヴルネイさん、私もです……」
「そ、そうか……!」
広い背中の向こうで、細い虎の尻尾が直立する。
虎の首筋に頬をすり寄せるロンベグは嬉しそうに顔をほころばせた。
「私も、ヴルネイさんともっとこうしていたいです。カラン様のためにも」
「……ん?」
雲行きが怪しくなったことを虎と獅子が悟るが、時すでに遅し。
「私一人ではここまでカラン様を導くことができませんでした。ヴルネイさんがいてくれたから……きっと、カラン様もここまで興奮してくれたのでしょう」
(大好きなヴルネイさんと繋がれるだけじゃなく、カラン様への教育も行える。何と素晴らしいのでしょう。しかも、ヴルネイさんが私を求めてくださいました。これでカラン様を相手にするだけでなく私まで候補に入るはずです)
選定の儀で選ばれた騎士ヴルネイは、勇者であるカランとの抜群の相性を持っている。敬虔な聖鎧教徒であるロンベグはどうしてもその思考から抜け出せないため、前提条件として語ってしまう。
「待て待てっ!」こらえきれず白獅子がツッコミを入れて。「ヴルネイの言うそういうことってのはおれへの教育って意味じゃなくてだな……ああもうじれってえな! なんで肝心なところで鈍いんだ! 告白だよ告白! そうだよなヴルネイ!」
「おっ? え? ああ……そう、だが……」
口ごもった虎を見て獅子は自分の考えが正しいことを確信する。
そんな彼が口に出すのは当然――――
「ヴルネイはな、また三人でやろうって言ってんだよ!」
「……はあぁ?!」
勇者カラン、今日童貞を卒業したばかりであり、女性経験が皆無で気の利かない男。顔もよく騎士として働いていながらも今まで童貞だったのには、当然理由がある。
それがこの、あまりにも感情を察することができないところだった。ロンベグのように直接言われなければ、何も気付くことができない。ラブコメでは鈍感主人公になるような男。それがカランなのだ。
「おれを混ぜて一緒に盛って気持ちよくなりたいってことだよ。なあヴルネイ?」
「そんなわけがないだろ! 誰が貴様となんぞ!」
「まったく、照れるなよ。確かにお前はおれにアピールして来てたし、もっと早くに気づくべきだったんだよな」
「……やはり貴様、ちょん切っておくべきだったな!」
「なんで?!?!」
一世一代の告白を台無しにされて、怒り心頭で毛皮をわなわなと震わせるヴルネイ。
彼に取ってなお最悪なことに、カランの発言を真に受けたロンベグがなるほどと頷いていることだろう。牛にとってみれば何も不思議なことではなく、ヴルネイにとっての一番はずっとカランだと思っているのだから。
そうして体でつながった三人だが、結局関係性は一歩も前進しなかった。
ただただ獅子の性癖が壊れただけであり、この日以降、カランは男でしか興奮できない体になってしまうのだった。
****
それから関係性こそ変わらなかった三人だが、肉体関係はずいぶんと進んだ。
ヴルネイはロンベグとやりたいと思っているし、ロンベグもヴルネイとやりたいと思っている。だが、そこにカランが混ざるようになっていた。
「あー疲れた……今日の魔物は結構手ごわかったな……」
前の拠点である宿屋に戻ったカランは、特注ベッドに飛び込んで吐息を漏らす。すっかり男色の味を覚えた勇者は、教会から問題なしと判断されてようやく解放されたのだ。
「お疲れさまでした。今日のカラン様は素晴らしい活躍でしたね。女神様の加護も上手く扱えるようになって……やはりアパック様の特訓が効いたのでしょう」
甲斐甲斐しく獅子から装備品を脱がすのは、ロンベグの赤い手だ。赤牛は微笑みながら世話を焼き、脳裏に勇者の活躍を描いた。
戦闘訓練もこなしたことでカランの能力は上昇しており、パーティとして安定感が出てきた。いまだ獅子は魔王を倒せるのか半信半疑なようだが、この調子ならいつか達成できるとロンベグは信じている。
「カラン」そこにため息交じりの声が。「帰って早々ベッドを汚すな。ロンベグも、こいつを甘やかすからつけあがるんだ。ほら、とっとと起きろ。寝る前にシャワーに行け」
「ヴルネイーいいじゃねえか。今日のおれ、頑張っただろ」
「それとこれとは別だ。あまりに礼儀がないようだと、また教会に教育を頼むことになるぞ」
「うへぇ……もうあんなかっちりした生活は嫌だっての……」
辟易とした顔で返すカランの言葉を咎めるように、鎧の虎と同じくらいの大男が獅子の首根っこをつかんだ。
それは三人が宿に戻った知らせを受けてやってきた、アパックだった。
「カラン様。ヴルネイの言う通りです。ほら、お風呂に行きますよ」
「アパックもそっち側かよ……ってかいつの間に来たんだよ……最近お前ここに入り浸ってない? 騎士団の仕事は良いの?」
「ロンベグから相談を受けたからです。カラン様が三人での冒険に不安を抱いていると。そこで私が補佐に立候補しました」
「あーそんなことも言ったなあ……ってことはお前うちに入るの?」
「そう遠くない日には。今は騎士団の引継ぎ作業をしておりますので、しばしお待ちください」
「まあお前が来てくれるなら頼りになるからいいんだけど……ロンベグが……」
ロンベグの恋敵がやってきたんだと理解して、獅子はちらりと視線を送る。当の本人は割り切っているのか、ヴルネイと楽しそうに話している。
アパックの加入は最愛の人の弟を守るためだということくらい、いくら鈍いカランでもわかっている。だから断るのも忍びなく、そして、今後の展開が面白そうなので、むふふと笑って尻尾をくねらせる。カランにとって他人の恋路はエンタメでしかないのだ。
ベッドからつまみ出された獅子は赤牛の肩に手を置いて、こそっと耳打ちをする。
「ロンベグ~頑張れよ~」
「わ、わかってます!」
「ん、どうしたんだ?」
「何でもありません!」
首をかしげるヴルネイは相変わらず、ロンベグと仲の良いカランに嫉妬している。告白が失敗したこともあって、前よりも慎重になっており、ロンベグからの好感度をどうやって稼ぐかが目下の悩みだ。
自分の好意が伝わっていないのは、ロンベグから好かれていないからだと結論付けたヴルネイは、地道にいくことにした。
「んで、二人は何話してたんだ?」
「はい、実は今度、ヴルネイさんと一緒に食事に行くことになりまして……以前からずっと行けていなかったので、教会から出た機会にどうかと」
「おっ! じゃあどこ行く?」
(殺すぞ……!)
しれっと仲間入りしようとするクソ鈍感獅子に青筋を浮かばせる虎。兜のおかげでばれていないものの、鎧の中では怒気が渦巻いていた。
こう言われてしまえばロンベグが断るわけもなく、二人きりのデートの予定が仲間との食事会へと変わってしまった。これではロンベグも最初から三人でいくつもりだったのかと思ってしまうため、結局何も進展しない。
だがもちろんロンベグも何もしていないわけではない。
「あ、そうです。ヴルネイさん、あの……いつも着ている鎧がくすんでいる気がしたので、新しい鎧磨きを買ってきたんです……良ければ使ってください」
「お、おお……どうも……感謝する……」
そしてヴルネイは肝心な時に口下手な男であり、照れと嬉しさですぐに言葉を詰まらせる。そんなことをすれば空気の読まない獅子がしゃしゃり出てくるというのに。
「いいじゃん! おれにはないのか?」
「申し訳ありませんが……」
「じゃあせっかくだしパーティで使おうぜ。おれも装備の手入れしたいしさ」
(殺すぞ……!)
鎧からびんびんに放たれる殺意は、当然獅子には届かない。ロンベグの思いを知っていても、そこまで思考が回らないのだ。
そしてロンベグにとってはなお悪いことに、アパックという恋敵までも参入してきたのだ。もちろん、狼のヴルネイに対する感情は恋ではないのだが、それがいつ発展するのか、赤牛は気が気ではない。
「なんだ、装備の新調がしたいのか? 教会に申請すれば鍛冶屋くらい紹介してくれる。それに私の紹介なら腕のいいところが請け負ってくれるはずだ。何だったら私が費用を出してもいいぞ」
(け、権力と財力で完全に負けてます……!)
獅子に鎧磨きを取られた赤牛はどうしたものかと途方に暮れる。アパックに妨害の意図はなく、ただ全員の安全のためなのだが、聖鎧教騎士のトップを相手にするにはかなり分が悪い。
こうした様々な要因があって、二人の関係は何も進展していない。
いつか結ばれる日を信じて、もどかしく思いながらも、少しずつ距離を詰めていこうとしていた。
「よし、シャワー浴びたらセックスしようぜ。せっかくアパックもいるし、全員でさ!」
獅子が元気よく宣言すれば、すでにそういう空気が部屋を満たしていく。
ロンベグやアパックは聖鎧教の一員として光栄に思っているため断らない。ヴルネイはロンベグが参加するならと、しぶしぶ参加している。
巨漢四人による絡み合いは今日も夜遅くまで続くだろう。そこには童貞は誰もいない。淫らな宴が日常になった勇者一行だ。
いつか勇者が世界を救うまでには、二人の関係は進むのか。
それは女神すらも知らないお話だろう。