「貴様、悪魔だな。こんなところで何をしている?」
剣を喉元に突きつけられ、おれは震えていた。
月夜に照らされた街路は人気が無く、助けなんて絶対来ないことが明白だ。っていうかこの場合、成敗されるのがおれなので人はいない方がいいとは思うけど。誰か助けてほしいという感情は止められないんだ。
黒い毛皮に白い縞模様を持つ黒虎のおれは図体こそでかいけど、完全な温室育ち。魔界を出たのも初めてだし、戦いなんて訓練以外したことない。平民っぽい粗末な格好でごまかしてたのに、すぐばれちゃうしさあ。どうしようこの状況。
「え、えっと、悪魔なのはそうなんだけど、これには事情があってぇ……」
しどろもどろになって目の前の犬を見やる。全身金色の毛が綺麗に整えられていて、垂れた耳が温和なかわいらしさを演出している。
のだけど、こちらに向ける目があまりに冷たい。瞳が青いだけじゃなくて視線が冷たい。
騎士服に包まれた体は大きく、筋肉の塊のようだ。人のことは言えないけど、あっちは完全に実戦で鍛えたものだから勝てる気がしない。
「そうか、どんな事情があるかは知らんが、死ね」
「何してるか聞いたのはそっちだよね?! なんで即殺するの?!」
「答える気がなさそうだからな。殺したほうが早い」
「早くないよ! 大体おれみたいな悪魔は契約で動くんだから、召喚者が存在してるってことだよ! ねえ気にならない? おれはすっごく気になるな!」
「……お前、命乞いにしてはあまりに稚拙すぎないか?」
「しょうがないだろ! 魔界から出たの初めてなんだから! 授業で命乞いなんてやらなかったの!」
「道理で尾行もへたくそなわけだ」
呆れの視線が刺さるけど、命には代えられない。だけど、殺気が萎えることはなく、いつでも殺せるぞと訴えている。
そして尾行はバレバレだったと。だからこんなところまで誘い込まれたのか。しかも犬しかいないことから、一人でもいいって完全に舐められてる。そんなに雑な尾行だったんだ……ショック……。
「じゃあ聞くが、契約者はどこだ」
「……ひょっとして、君だったりしない?」
「死ね」
一考の余地なく即殺は無情が過ぎるって!
剣筋は素早く、命を刈り取るものとは思えないほど軌跡が綺麗だった。戦闘訓練は受けていたにもかかわらず全く反応できない速度。さすがこの国一番の騎士……。
だけど、犬の剣はおれに当たる直前で止まる。
ああよかった。授業で習った通りだった。駄目だったらどうしようと思ってびくびくしてしまった。
これならもっと余裕を持った振る舞いでもいけたな。今度から気を付けよう。
「なにっ……結界か? いや、この感覚は肉体の支配権を奪われたのか? どちらにしても小癪な……」
「えっと、どちらでもなくって、ただこれは契約者は悪魔に危害を加えられないっていう契約なだけだよ。悪魔を呼び出して殺す人もいるからね、対策のために魔法に盛り込まれたんだ」
「俺が貴様といつ契約した!」
「わかんないよ! おれだってそれで困ってるんだから! けど契約者と繋がるパスは君を指してる! 君は間違いなくおれと契約してるの!」
どういうことだとにらみを利かせる犬だけど、おれだって聞きたい。
「……おれが呼ばれた時には契約者はいなかった。だからパスを頼りに探してるんだ。君はそのうちの一人だよ」
「その口ぶりだと、契約者が複数いることになるな」
「そうなんだよ! 契約者が君を含めて三人もいる! こんなの授業で聞かなかったからおれもどうしていいのかわかんないんだよーー!」
初めての世界なのに契約者がいないんだ。こうして平民の恰好をして尾行するだけでも、すごく大変だったんだからね。しかもみんなおれより小さいから悪目立ちするし……。この世界の人たち、栄養が足りてないんじゃないかな。
でもようやく交流できた契約者の一人だ。おれはなんとかして、この犬の願いを叶えないといけない。
おれはできるだけ悪魔らしく、余裕ぶって微笑んで、犬に誘いをかける。散々うろたえた今、頑張っても無理だとは思うけど、やっぱり物事は形から入るのが大事だよ。
「ねえ君、おれに願いをかけてみない? 叶えられる願いには限りがあるけど頑張るよ。契約さえ果たせば、おれは帰れるからさ」
悪魔との契約は願いを叶える権利を得るということだ。対価さえあれば、おれがどんな願いも叶えてあげる。
もちろん無理なものは無理だけど。
「ふむ、金貨一枚で叶えられる願いはなんだ?」
「露骨に退散させようとしないで!」即座に余裕の仮面は剥がれた。「何度も言うけど、おれにとっては初めての召喚なの! 父さんも母さんも期待してるの! もっといい対価を持って帰りたいんだよ!」
「知らん、死ね」
「待って待って! 君、魂をかけてでも叶えたい願いってない? 君の魂はすごく価値がありそうだから、持って帰ったらみんな褒めてくれると思うんだよね。後生大事にするからさー!」
「……悪魔とはもっとあくどいものだと思っていた。手練手管で騙して魂を取るとかしないのか」
「そういう悪魔もいるけれど、おれは自分が悪魔であることに誇りを持っている派なの。人を騙して楽して対価を稼ぐなんて、そんなの楽しくないだろ! やっぱりいい働きを続けていけば、継続的に召喚されると思うんだよね。悪魔も契約なんだから、イメージが大事ってわけ」
「……」
おれがどれだけごねても、殺気は消えない。完全に疑ったままだ。
まあ悪魔相手なんだからそれでもいいとは思うけど、話は完全に平行線になっちゃった。
「ううぅ……駄目だこの人……取り付く島もない。他の契約者の所に行った方が良さそうだな……」
「待て。まさかお前、帰れると思ってるのか?」
「……見逃してくれたりは? ほら、おれってまだ取引内容もわからない悪魔だから、言っちゃえば無罪なんだよ。しかも初召喚だから完璧に無罪。だから殺さないで!」
契約によって危害は加えられないけど、それはこの犬に限った話で。増援を呼ばれると普通に死ぬ。初めての召喚が一番危ないって授業でも言ってたから、なんとか逃げないと。
こうなったら魔法で逃げるしかない。これでもおれは悪魔だ。魔法に関してはそこらの人より断然熟達している自信がある。それに学校でも優等生だった。
見たところこの犬はそこまで魔法に精通していないみたいだし、簡単に逃げられるだろ。
「悪いけど、逃げさせてもらうよ。でも君も契約者なんだから、何か願いがあればおれに連絡してね。初回の契約はサービスしちゃうよ」
「……」
うわ、すっごい殺気。泣いちゃいそう。黙ってれば垂れ耳で可愛らしいのに、表情が全く可愛くない! 悪魔より悪魔みたいな顔してるな。もっと人生楽しんだ方がいいよ。
いつ殺されるか分かったものじゃないので、ここは三十六計逃げるに如かず。すたこらさっさと踵を返したおれだけど、その背中に犬から声がかかった。
「待て」
「ん、願い事する気になった?」
「ああ。おまえは自分の契約者の場所がわかるのだろう?」
「それはね。傷害不可の契約もあるし、なによりおれは契約者と繋がっているバスがわかるから」
「つまりそいつが俺を使って勝手に契約を結んだわけだ」
「そうなるかも。おれも誰かはわかってないんだけどね。契約者が誰か知りたいってこと?」
「そうだ。最近誰の仕業か知らないが、悪魔召喚の知識が広まって風紀が乱れている。悪魔と契約するのは犯罪だ。俺はこの王都を守る騎士として、犯罪者を捕まえ、悪魔を根絶やしにする必要がある」
「犯罪~~? おかしいよ! 悪魔はちゃんと契約を守ってるだけなのに! いわば道具みたいなものだよ! 悪いのは間違った取引を結んだ人でありおれたちじゃない! 風評被害だ!」
「黙れ、殺すぞ。いいから対価を言え」
「暴君だ……悪魔にも基本的人権は保障されてしかるべきなのに……でも自分が願う分にはいいんだ……」
「契約はもう結ばれているのだろう? ならしょうがないと割り切って、使えるものは使うべきだ」
「ごもっとも……」
うーん、でも取引を結べそうだしいいかな。簡単すぎる願いだから対価もしょぼいけど、まあ初召喚ならこんなものか。
「その願いだと……セックス一回分かなあ」
「は?」
「これでもだいぶ破格なんだよ。君は魔力も魂も優秀だから、一回ですんでるんだ。おれは公平な悪魔だからね、感謝してほしいくらいだ」
「……ふざけてるのかお前? 死ぬか?」
「なんでだよっ! おれは願いを聞いたうえで真っ当な対価を要求しただけだろ!」
なんて言っても鋭い眼光が返ってくるだけ。いい加減眉間にしわができるよ。
確かに悪魔に詳しくない人からすると、突拍子もなかったかもしれない。相手は契約者だ、おれは悪魔として礼を尽くす義務がある。
おれはでかい黒虎の体を浮遊させて、月を背景に不敵な笑みを浮かべ犬を見下ろした。ふふふ、召喚されたらやってみたかった行動その2、悪魔らしい態度で浮遊だ。
「雄の精液は非浸食的に魂を取る方法の中で一番効率がいいんだ。だからおれは継続的な契約を勝ち取るためにも、契約者の寿命をできるだけ傷つけない方法で魂を取ることを研究している。ちなみに学位もこれで取った」
「そんな情報はいらん。その方法が、性行為だと?」
「そういうこと! まあ簡単に言えば精液をもらえればいいから、オナニーでもいいよ。君の優秀な魂なら、射精一回分で結構叶えられるんじゃないかな」
「頭が痛くなってきたな。だが俺の羞恥程度で叶えられるなら、安いものか……」
「ってことは……!」
「わかった、払おう」
「やったねー!」
テンション上がりすぎて空中でくるくる回ってしまった。悪魔らしい威厳がまるでないから気を付けないといけないのだけど、今は初の対価獲得に興奮が冷めないんだ。
なんてったってこんな優秀な魂と取引を結べたんだ。魔界の両親も鼻が高いに決まってる。もらえるのは魂すべてではないけれど、その価値はかなりのものだと思う。人で言うなら初任給すごくたくさんもらえた感じ。最高じゃない?
おれは感極まって犬に抱き着こうとしたけれど、問答無用で殴られてしまった。
「ふっごぉ!」
「いいから、名前を言え」
「ええ、精液は……?」
「いいから」
「はい……」
逆らえる雰囲気ではない。悪魔としての本能がそう叫んでいる。ここはおとなしく、後払いを認めよう。
おれは契約者たちを尾行して得た情報から名前も大体把握している。この犬だけを見てたわけじゃないんだ。今回はばれたけど、魔法を使ってれば問題にはならなかった。おれがそろそろ契約者と接触しようとしたから、ばれちゃったって感じ。
「おれの契約者は、まずは君、王国騎士団長ユランデータ=オリーブ」
「不本意ながらな」
「それに近衛騎士団長タラタネラ=クィネル」
「……まさかあいつが? いや俺と同じで誰かの策略という可能性もあるな」
「あと、王太子スウェンガルだね」
おれの上げた三人の名前を聞いた犬が、無言で剣を振りかぶったんだけどなに!
そもそも飛んでるおれに届かないでしょ、と言いたいところだけど、ユランは斬撃くらい飛ばせる。魔力に似たオーラを使える天才だからさ。身体能力もおれより高いかもしれない。
流石にオーラマスターの剣戟を受けるのは無理! そもそもおれは戦闘型の悪魔じゃないし! この図体は親譲りなだけ!
「その言葉に嘘はないな?」
「ないないないない! 絶対ない! だからおれは公平な悪魔だって言ってるでしょ! 契約者には長生きしてもらって、たくさん対価を稼ぎたいんだ! だから安心と信頼がモットー! 契約はちゃんと守るよ!」
まあ国の中枢にいる三人が悪魔と契約を結んでいるなんて、スキャンダル以外のなにものでもないし、怒るのはわかるよ。けどその矛先は絶対おれじゃなくない?
これ以上は危険だ。魂を少しもらえるのだから、とっとと次に行ったほうがいい。そもそも契約者が三人っていうイレギュラーな状況で長居する必要なんてないんだ。
「だから君も、ちゃんと約束を守ってよ」
「わかっているが、こんなところでするのは触りがある。家に付いてこい」
「え、ここでサクッと抜いちゃってよ。何なら口でしようか?」
「悪魔に口淫など、誰が許すか。それに候補の二人があいつらなら、お前の詳しい状況を聞きたい。事と次第によっては国が揺らぐからな」
「しょうがないなあ。アフターサービスってことにしとくよ。だから今後もごひいきに!」
なんて言いながら、おれは大事なことに気が付いた。慌てて魔法を発動し、平民の服から悪魔らしい黒スーツへと変える。いつまでもみすぼらしい格好じゃ、威厳がないからさ。
今のおれは黒虎なのは変わりないけれど、悪魔らしい角と尻尾がちゃんと生えている。そして広い肩幅に見合った立派なスーツに加えて、赤い目が爛々と輝いていた。誰がどう見ても悪魔、怖い怖い魔界の重鎮だ。
「何のつもりだ?」
「自己紹介がまだだったんだ、最初くらいは格好つけないとね。おっほん」
召喚されたらやってみたかった行動その3,悪魔らしい自己紹介。おれは空中で大仰な一礼をして、不敵に笑う。鏡の前で何度も練習したから、仕草は完璧に決まった。
一回目は誰もいない部屋で一人やってからノーカンだ。ちゃんと相手を見てこそ、自己紹介は意味を成すのだから。
「我が名はアスモ。精気を対価に願いを叶える悪魔なり。我を呼び出した召喚者よ、我は安心安全な契約をモットーに末永いお付き合いを求める所存だ。日常の小さな困りごとから、未来を見据えるお手伝いまで、このアスモを頼るがよい」
「後半完全にセールストークだろ」
「やっぱりお付き合いは第一印象が大事だから……怖がらせるのはよくないかなって……」
「はあ。お前と話していると緊張しているのが馬鹿らしくなる」
「それって親しみやすいってことかな!」
「なんだその無駄なポジティブは。もういい、早くついてこい」
「はーい」
初任給に頭がいっぱいなおれは浮足立ってユランに付いていく。夜の町を歩く黒い虎と金の犬は誰が見ても堅気には見えないだろうな。ユランの顔が怖すぎる。絶対もっと笑ったほうが人生楽しいって。
できればもっと絞れないかなー。こんないい魂そうそうお目にかかれないしさ。セックスでもできればもっと仲良くなれそうなんだけど。完全に人肌を知らない顔してるよこいつ。アフターサービスってことで童貞くらいもらってもいいかもね。おれも処女童貞だけど知識と練習は欠かしてないから多分大丈夫!
折角の顧客一号だ。絞れるだけ絞るぞー!
****
おれがこの世界に呼ばれた時の場所は、人気のない倉庫だった。
「ふははははっ! 契約者よ、よくぞ我を呼び寄せた。我が名はアスモ……あれぇ?」
意気揚々と魔法陣から現れて悪魔らしい自己紹介を決めていたのに、目の前は無人。普通こういうのって契約者がいるもんじゃないの?
だからおれは倉庫内を一生懸命探ったけど、人っ子一人見つからない。ただ朽ちた物がそこら中に散らばっているだけで、生命の痕跡なんてみじんもなかった。
魔法陣を照らすろうそくの明かりが揺らめく中、おれは途方に暮れてしまう。
「えぇ……悪魔を呼んでおいていないってことあるぅ?」
悪魔召喚は結構大変なのに、その成果すら見届けないなんて聞いたことない。大体、悪魔を呼ぶ人は多かれ少なかれ困りごとを抱えているはずだから、藁にも縋る思いで助けを求めてるんじゃないのかな。
「でもまあ、パスはつながってるし、これを頼りに探せば……んえええぇ?! 三人? なにそれ、どういう魔法で呼び出したの?!」
聞いたことない召喚方法だ。おれはすぐさま這いつくばって魔法陣を調べることにした。召喚魔法の発達は悪魔にとって不利な契約を結ばされる可能性もあるんだから、調べるに越したことはない。
授業でも魔法陣の制約や解析は必須科目だ。それだけ悪魔を唯一無防備にできる召喚魔法への理解は大事ってこと。
「ふむ、ふむ……契約者が三人になるように改良されてる……早く気づいてれば召喚に応じなかったのに……まさかこっちの世界でパスが分岐してるなんて思わなかった。魔界からじゃわからないように隠ぺいされてるんだね……でも、ここまでの腕前なのになんでいないんだろう? ……ちょっと待って?!」
魔法陣を調べていくと、とんでもないことが発覚した。
この契約、おれが魔界に帰るためには契約者三人との取引実績が必要になってる! なにこれ、こんな魔法初めて見た!
あまりに悪辣で、完全に人側が有利になる契約だ。だって自分に有利にならないなら取引しないって言えばいいだけなんだから。
こんなのが流行れば魔界じゃ大騒ぎになるはずだから、まだそこまで周知されていないはずだ。おれが被害者一号の可能性もある。
「うーん、しかもこんな改変を魔界側から隠してたのか、凄腕すぎる……ひとまず、魔界の両親に魔法陣の写しを送っておこう。連絡は取れるから現状を説明して……帰りは遅くなるから晩御飯はいらないですっと……」
初召喚ってことで、絶対ごちそうを用意してくれてたのにな……。ごめんねお母さん。でもその代わり、絶対いい対価を手に入れて戻るからね。
これからの苦難を思って肩を落としていたおれは、魔法陣の近くに落ちているハンカチに気が付いた。それは朽ちかけているが、血に濡れていることから触媒であることは明白だった。
「なるほど、契約者とのパスを繋げる時に血を捧げたのか、けどこれには三人分の血がついているからパスも三つと……まあいいんだけど、どうせ願いを叶えるのにも対価がいるし。三人分の対価がもらえると思えば……」
このハンカチを調査すれば契約者がわかるかもしれないけど、儀式が終わったことで役目を終えてボロボロになっていて、後は勝手に灰になるだけだ。それにおれにはパスがあるから、回収は別にいいかな。
「ってことは、三人が共謀して魔力を集めておれを呼んだってこと? でもそれなら誰もいないのはおかしくない? せめて一人はいてくれないと困るんだけど……なんかもう前途多難だよ……」
けど、魔界で待ってる両親にいい報告がしたい。それに魔界に帰るためにも、この世界を調べて契約者を探そう。
「それにこの血……ずいぶんと良い物だね」
ハンカチから漂う血はすべて極上だ。もう痕跡も薄くなっているのに、それらから芬々と漂う魂の残り香が素晴らしいというのがわかるんだ。きっと契約者たちはすんごくいい魂を持っているに違いない。
「誰がおれを呼んだのか、うーん、気になる! せっかくだし観光気分で探索しよーっと!」
外に出るんだから角とかは隠したほうがいいかな。まずは使い魔を飛ばして服装を確認して、それっぽいものを仕立てないと。
「美味しいものあるといいな。この世界はどうなってるんだろう。あ、お金稼がないと。日雇いでいい仕事何かないかな」
魔法でお金を出してもいいんだけど、この世界の労働を試すのも悪くない。溶け込むには働くのが一番。この世界の人の欲望を調べて、適切な契約プランを提示できれば継続的な召喚も夢じゃない。
それに契約者について調べるためにも、仮の身分はあったほうがいいしね。魔法で何でも解決してたら、他の悪魔みたいに傲慢になってしまいそうだ。
「……ってわけで、君に会ったのが呼ばれてから一か月後だね」
「悠長に構えすぎだろ。もうちょっと危機感を持て」
思い出話という事情聴取が終わって、ユランはあきれ顔でため息を吐いた。
今おれはユランの家、オリーブ伯爵家にお邪魔している。貴族ではあるけれど騎士の家系であるオリーブ家は、華美というよりかは質素に格調高くまとまっている。ユランの部屋も余計なものがあまりない、言ってしまえば寂しい部屋って感じ。
「ちょっと楽しくなっちゃって。なにせ召喚されたら願いを叶えてすぐ帰るか、契約者周辺に固定されるのが常だから、こうして自由な時間があるとは思わなくてね。ついつい遊んでしまった」
「家で家族が待ってるんじゃなかったのか」
「まあ契約が長引くことなんて往々にしてあることだから、そんなに気にしないよ。おれらの寿命から考えれば誤差だからさ」
おれは質の良いソファに横たわって満喫しながら、尻尾を揺らして会話に興じている。きっちり整えた黒スーツに似合わない姿勢だけど、こっちの方が楽だからしょうがない。
平民として暮らしていたから、この部屋の豪華さが嬉しい。こういう小さな幸せをありがたがれるのも、ちゃんと働いていたからだ。
「一か月も平民として働いていたのか? 悪魔のお前が?」
向かいのソファに座っているユランが胡散臭い話だと眉をしかめるけど、本当なんだからしょうがない。
金色の犬は部屋着へと変わっており、薄くなった服装のせいで筋肉の圧がやばいことになっている。たまに目を瞑って何かを考えているときがあるけど、普通に可愛い顔をしている。ふかふかの毛皮に垂れ耳、そしてずんぐりとしたマッチョな体。うん、本当に目を開いてなければ愛嬌のあるイケメンって感じでもてそうなのにね。
「いい魂がないか調べるためにも、人にまぎれるのは悪くない案だと思わない? それに日雇いでいろんな職を転々とするのも楽しかったよ。同じ仕事は三日で飽きたし、仕事自体にも飽きたから君に接触したんだけど」
「俺の知ってる悪魔とはあまりにも違うな……変わったやつだ」
「よく言われる。天才っていうのは得てしてそう言うものなんだよ」
「馬鹿と紙一重だとも言うな」
しれっと言葉でぶん殴ってくるの性格悪いよ。まあ剣で刺されるよりましだけど。
それでも彼は騎士の中の騎士と名高いユランデータ。その優先事項はいつだって揺らがない。
「民にまぎれていたのならわかっているはずだ。彼らは己が本分をずっと全うしている、そして俺はそんな彼らを守ることが本分だ。だからその倉庫がどこにあるのか教えろ。俺が調査する」
「なんにも出てこないと思うけどね。自分でも調べたけど、既に使われていない場所で持ち主から契約者を探すのも無理だったし」
「念のためだ。それに魔法陣があるのなら消しておかねばなるまい」
「それはおれが消しといたよ。あんなのが流行ったら悪魔にとっていいことないからね。でも場所を知りたいならそれもおまけで教えてあげるよ。だって、こーんなにたくさんザーメンをもらえたんだからね」
おれが指を振ると、テーブルに置いてある丸まった布がこちらに浮遊してくる。
それを開いていけば、中にはユランの精液がべったりと付着しており、すさまじい雄臭さを放っている。どれだけむすっとした強面でも、やっぱり出すものは出すんだ。しかもすごく大量に。結構むっつりなんだね。
「やめろ、開くな、殺すぞ」
「いいじゃないか。雄として強いってことなんだから、誇るべきだよ」
「殺す……」
約束を果たすために、ユランは一人オナってくれた。手伝いを申し出たけど、射殺さんばかりの圧だったから大人しく諦めた。人にやってもらったほうが絶対多く出ると思うんだけど。まあ一人でこんなに出せるくらいだから、杞憂だったかな。
おれは犬のザーメンに魔法をかけて、中の魂を保護しておく。ユラン本体に比べて微量すぎるから、放っておくとすぐ霧散しちゃうんだ。あとはビンに移し替えて保存してっと。
「さて、悪魔としての仕事はこれでおしまい。じゃあ帰ろうかな。後二人にも会わないといけないからね」
いい魂のかけらも手に入ったし、後二人との取引がしょぼくてもこれで胸を張って報告できる。
「……待て」
これからもご贔屓にと挨拶を投げようとしたおれよりも先に、ユランの方が待ったをかける。意外な言葉だったので、ちょっとびっくりして尻尾を伸ばしてしまった。
「どうしたの、まだ何か聞きたい事でもあった?」
「お前は精液さえ渡せば願いをかなえてくれるのか?」
「ものによるけどね。さすがに大それた願いなら魂本体をもらうよ。公平ってことはウィンウィンってことだから、そこは間違えちゃいけない」
「わかっている。俺とて悪魔相手だからといって無法を働くつもりはない」
「殺す気満々のくせに……?」
「悪魔を殺すのは我が国の法律的に何の問題もないからな」
「悪魔の労働環境最悪じゃん……」
こういうのも悪魔が好き勝手してきたせいだ。先祖の罪を若者があがなうなんて不公平だと思うな。まあ大体の悪魔は今も変わってないからしょうがないんだけど。
だけどそんな悪魔に確認を投げるくらいだ、まだなにか叶えたい願いがあるのだろう。おれとしては稼げるなら全然おっけーなので、話を聞く気満々だ。
「俺はお前を呼んだ奴を探したい」
「後の二人の中にいるんじゃないの?」
「あの二人がそんなことするわけないだろう」
その言葉には絶対の自信があった。そして、少しの付き合いだけど、ユランがこうなったら絶対意見を変えなさそうだという確信があった。
だからおれは特に異を唱えることなく、無言で続きを促すことにした。
「先ほども言ったが、最近巷では悪魔召喚が乱立しており、騎士団でも問題に上がっている案件だ。召喚者を探すことは召喚方法を流布しているやつを捕まえることにつながるかもしれん、協力しろ」
「悪魔の手を借りてもいいんだ」
「俺は悪魔に詳しくないからな。本来専門であるはずの神殿は今回の件で地位を上げようと協力を出し渋っているし、捜査の進捗は芳しくない」
「なるほど、それでおれという優秀で便利でエッチな悪魔に協力を要請したいってことか」
「お前の自己評価はどうでもいいが、おおむねそんなところだ。その場合対価はどうなる?」
「そうだね……さすがにどんな仕事になるのかわからないから、即答はできないな。悪魔召喚の方法を流してるってことは、本人が悪魔に詳しいし、なんだったら悪魔と戦いになるかもでしょ。おれの見立てだと、結構大変だよ」
「まあそうだろうな。騎士団でも行方をつかめていないんだ。難しい仕事なのは承知している」
何度も言うが、おれは戦いが得意ではない。完全学者タイプの悪魔だから。
だけどこれを成功させれば報酬がたくさんもらえるのは間違いない。ユランのザーメンをこれから数年分ももらえたなら、確実に魂一つ分くらいにはなるはずだ。
こんないい魂の持ち主にはなかなか会えないことを加味すれば、悪くない条件かな。その場合どういう取引がいいかな……。
と、おれが損得勘定でうなっていると、ユランは視線を上げておれの肩を超えて、扉の方へと向けた。
「俺一人の精液では足りないというのなら、もう一人呼ぼう。そういうわけだタラタネラ。お前も手伝え」
「はあ、深夜に急に呼び出されて何事かと思ったら、まさか悪魔と取引しようだなんて……私以外に知られたら極刑だぞ」
「お前なら問題ないと踏んだ。そして、お前も当事者だ」
「どういう意味だよ……」
やってきたのはリカオンの大男だ。広い肩幅に盛り上がった筋肉が乗っていて、全体の厚みもかなりのもの。最低限の支度だけしてきたようで、ユランとは違う色をした騎士服が窮屈そうに膨らんでいる。特に胸がすごいことになってた。
さすが近衛騎士団の隊長。いつ見ても肉体の圧がすごい。
だけどユランと同じ犬ではあるが、人当たりの良さは全然違う。やれやれと言った表情一つとっても、どこか親しみやすさがある。正直見習ってほしい。やっぱり近衛にするなら愛想がいい方が向いてるよ。
……でもあれ、なんでタラタネラがここに。
「うえええぇ! いつから!」
ユランの精液が嬉しくて、完全に油断してた。パスをたどればすぐ近くに来てることなんて、すぐに分かったのに!
「俺が対価を採取する前に、呼びつけておいた。どうせこいつにも関係ある話だからな」
「今すぐ来いと言われただけで、まだあまり話を理解できていないんだが……説明してくれるか?」
「まずはこいつを殴ってみろ。そうすればわかる」
「なんでおれ?!」
言わんとしてることはわかるけど、初手暴力は知的生命体にあるまじき選択なんだよ!
案の定タラタネラは得心がいってない顔をしているけれど、しぶしぶと拳を振り上げてから、勢いよく殴ってきた。
そして当然止まる。契約があるからね。
でも思ったより遠慮ない勢いだったな。契約が無かったら頭蓋骨陥没してたかも。ここの人たち悪魔に厳しすぎない? 泣くよ?
「止まった……? どういうことだ?」
「お前もこいつと契約をしているということだ。どうやら契約者は悪魔を傷つけられないらしい」
「私が?! いったいいつ?!」
「知らん。俺もいつの間にか契約を結ばされていた。民に知られたら大混乱は免れん。秘密裏に処理するのを手伝え」
「そういうことなら……確かにこれは直接来いとしか言えないな。詳しい話を教えてくれ」
それからソファに腰かけたタラタネラも交えて、今後の計画を煮詰めることにしたようだ。タラタネラもいい魂を持ってるから、おれは内心小躍りしてるし尻尾は揺れてる。
リカオンは神妙な顔をして話を聞いた後、重いため息を吐いた。国家中枢が悪魔と関わってることがばれたら、大変そうだからね。
「はあ……話は分かった。君、アスモと言ったね。本当に精液で願いを叶えてくれるのかい?」
「出来る範囲ならね。タラタネラの魂もユランと同等に質がいいから、射精回数もまけられるよ。二人とも契約者だから対価の折半は可能だし、だいぶ楽になるんじゃないかな」
「というわけだ」金色の犬が冷たい声で割り入って。「早急な解決が望まれる以上、射精回数を惜しむ必要はないと思っている。適当な女を買うつもりだったならやめておけ」
「そんなことしてないさ! それに、私も君も婚約者がいないんだ、それこそ余計なお世話だろうが!」
「冗談だ。お前がそんなことをしてるとは思っていない」
「君の冗談はいつもわかりにくいんだよ……」
あ、ユランってコミュ障なんだ。悪魔以外に対してもこれなら婚約とか無理でしょ。
「お前、何か失礼なこと考えてるな?」
「いや……さすがに友人っぽい人にその冗談はなくない? 悪魔もびっくりだよ」
「おお、ユランに真っ向からそう言ってくれる人がいるなんて助かるよ。彼は部下からも怖がられているから、自分の冗談が下手なのを理解できていなくてね」
「お前はどっちの味方だ!」
金色が牙をむいて吠えるけど、さすがに今回はおれに分があるでしょ。ユランもそれを悟っているのか、うなるだけで特に言及はしてこなかった。
こげ茶のリカオンの方はしてやったりと嬉しそうだ。この様子だと、結構冗談にやられてたんだろうな、かわいそうに。
「まあでも、冗談はさておき、ユランの国に対する忠誠心を疑ってるわけじゃないさ。私も巻き込まれている以上、その話には乗るよ」
「助かる。俺一人で動くにも限度があるからな」
「いいや、助かったのはこっちさ。王太子様も名前が挙がっているのなら、近衛の職務でもある。あの方を巻き込んだ輩にはそれ相応の報いを受けてもらわないとね」
にこやかに言っているけど怒気がすんごい。さっきのパンチもそうだったけど、やる時は徹底的にやるタイプだな。まあ今回は味方だから関係ないけどね。
ユランは仏頂面のまま尻尾を一振り。さっきの下手な冗談から考えて、心強い味方を手に入れられたことで上機嫌らしい。わかりづら過ぎる。
「それで今はアスモと取引をするための対価を相談していた。この事件を解決するのに必要な対価だ」
「なるほどね。それなら私も惜しまないよ。悪魔と取引するのは気が引けるが……どうやらそうも言ってられないようだしね」
よかった話はまとまった。これはがっぽり稼げそうなチャンスだ。
おれは頭をフル回転させて、どういう取引をしようか考える。
「うーん、今回の取引は特定の物や知識と交換というよりかは、労働力との交換だよね。正直なにが起こるかわからない以上、その都度対価を要求するのは非効率的だ。だから……」
おれは魔法を起動させて、二人のちんぽを包みこむ。ついでに形もわかってしまったけど、それは心の中だけにとどめておこう。二人共立派だったな……。
性器に一瞬だけぞわりとした感覚が走るせいで、二人の毛皮が一気にぶわっと広がった。ユランから睨みつけられたので、早く説明してしまおう。
「日給制にしようと思うんだ。これで君らが射精するたびに、おれに精液が届くようになった。婚約者もいないなら子作りもしないだろうし、いいよね。二人合わせて一日最低五回は射精してもらうことを条件に取引しよう」
「う……魔法を使うなら先言え。危うく殺しかけたぞ」
「ごめんごめん。でもこれなら効率的だし、おれを契約で縛ることもできるから裏切る心配もないでしょ? もしおれが裏切ったなら取引もできない。そうなると股間の魔法も解かないといけないから、わかりやすくなるよ」
「それはそうだね」タラタネラが感心しながら。「しかし君……悪魔のわりに素直だね。まさか裏切りの可能性を自分でつぶすとは思わなかった」
「まあおれは公平な取引がモットーな悪魔だからね。契約者からの信頼を勝ち取るのも、仕事の内だと思ってる。相手にも公平だと思ってもらうためには、信頼がないと成り立たない」
「そこらの商人より真っ当で驚いてるよ……でも一日五回は多くないかい?」
「悪魔を四六時中使役できる権利が射精五回分って、どう考えても破格じゃない? これでも結構割引してるつもりだよ。君らの魂の質がいいことを踏まえて、さらに長期で収益が見込めること前提の取引だ。これが他の人らなら、さすがのおれもここまで自分を安売りしないって」
「そう言われたら、ぐうの音も出ないな……」
そして射精回数を把握するため、二人のちんぽの根元には射精するたびに共通で線が引かれるようになっている。五芒星が完成すれば今日のノルマおしまいってこと。
それを説明すると二人がこっそりズボンを伸ばして中を確認し始めた。さっきユランが射精したことで一本だけ線ができているはずだ。
「でも、いくら二人合わせても毎日射精するのは大変だよね。おかずの問題もあるし。そこで、おれは契約者とのスムーズな取引のために、性処理具の貸し出しを無料で行っているよ!」
魔界ワームの口を参考に作ったオナホ、ちんぽを模した張り型や前立腺を押し付けるためのエネマグラ、振動する卵型の装置まで、魂を濃くするための道具は全部おれのお手製。契約者のことをこんなに考えている悪魔なんて、おれくらいしかいないかもしれない。
だけど、胸を張るおれに返ってきたのは、二人のげんなりとした視線だけだった。
「あれ、お気に召さなかったかな。でも無料だから一度使ってみて! 頑張って作ったから! 効果もすごいから!」
「いや……それはぁ」タラタネラが困ってる、なんで?
「悪魔の作ったものだからって心配してる? それならおれがここで実演してもいいよ」
「やめろ馬鹿、殺すぞ。汚いものを見せるな」ユランの殺気が強くなった、なんで?
「絶対気持ちいいのに……ひょっとして、二人とも性経験なし?」
なんて聞くと二人とも黙ってしまった。ユランはともかく、まさかタラタネラもだとは思わなかった。こっちはもてそうなのに。
「あ、なんかごめんね。でも射精に手間取って時間をつぶすくらいなら、使ったほうがいいよ。それに言ってくれれば、おれで初体験済ませてもいいからね。精液を濃くすることは魂を濃くすることだから、協力は惜しまないよ」
処女童貞なのはおれも同じだけど、早く初体験したいと思ってるのに。セックスってどれだけ気持ちいいのか気になるからさ。なんでこの二人はこんなに奥手なんだ。セックスに興味ない雄なんているわけないだろ!
それにおれは実戦は皆無だけどむちむちでむきむきないい体してると我ながら思ってるよ! 訓練はしてるし、あと悪魔として見栄えは気にする方だから、見た目だけは取り繕ってるんだ。
おれとセックスしたいと思ってもらえるのが、取引としては一番楽だ。おれも気持ちいいし、なおかつ精液が集められる。
だから二人には雄の味を覚えてほしい。契約期間中にセフレくらいにはなっておきたいな。
「今更だけど悪魔と契約して大丈夫なのか不安になってきたよ……」
「こいつはましな方だとは思うが、頭の方がな……」
「なんでだよ!」
悪魔なんて享楽主義の集団において、おれはかなり理性的だと自負している。契約者を慮れるし、こうして公平な取引を提案だってできる。
もしかして、ユランとタラタネラがお互いに気を使っているだけなのかもしれない。今度個別にこっそり提案してみよう。ふふふ、なんか唆してるみたいで悪魔っぽいな。ま、これくらいの唆しはかわいい提案ってことで。
「まあとにかく」タラタネラが咳払いでごまかして。「確認なんだけど、悪魔召喚なんて全く知らない私のような人でも契約者に仕立て上げることはできるのかい?」
「できるよ。やろうと思えばね」
そもそも契約は召喚に紐づいているだけで、仕組みさえ分解できればすげ替えは可能だ。現場にあった血はそのための物だろうし、契約者としてパスを繋げるには十分すぎる。
だけど、できるからと言ってそれをするかどうかは別問題。
だって願いを叶えてもらうために呼びだしたのに、その権利を譲渡するってことだからね。普通は独占したいものだろうから、魔界の歴史で見ても稀有な事件なんじゃないかな。
「だが召喚自体が犯罪になるのなら、罪を擦り付ける意味でもありえない話ではない。悪魔という誰の目で見てもわかる証拠が、そこにいるのだからな」
「私たちは一応それぞれ騎士のトップだし、蹴落としたいと思ってる人はいるだろうね。それに王太子様の王位継承も絡んでくると、候補は絞り切れないなあ」
「うーん、でも逆に考えて、ここまで魔法を解析して実行できるのなら、相手は手練れだよ。言い換えれば、悪魔召喚にかなり詳しいってこと」
「つまり、犯人さえ見つけられれば、そいつは十中八九犯罪者だ」
「悪魔召喚の痕跡か、依頼した証拠が見つかれば、芋づる式で膿を一掃できそうだね」
「え、いや、おれが言いたかったのはそうじゃなくって、呼び出した悪魔に二人を消してもらったほうが楽じゃないってことなんだけど……」
「出来ると思うのか?」
短い言葉だったけどユランの体を包む黄金のオーラが説得力を補強した。その密度はすさまじく、おれが全力で魔法を放っても致命打には絶対ならなさそう。
そして、一撃でおれは死ぬだろうから、出来るかどうかと聞かれたら絶対無理と答える。少なくとも正面切った戦闘は自殺行為だ。魔法で姿を隠して尾行する時でさえ気を使って離れていたのに、暗殺とかできるわけがない。
タラタネラも同じくらいの戦闘能力と考えれば、確かに悪魔をけしかけるのは意味がなさそうだな……。大悪魔と呼ばれる人らに依頼すれば可能性はあるけど、対価が膨大過ぎて割に合わない。そもそも悪魔ってすぐ裏切るし、暗殺の取引に失敗したら命乞いで依頼者暴露しそう。
って考えると、婉曲的だけど社会的に殺したほうが楽なのか。犯人は本当に悪魔の使い方がうまいな。
それからいくつか確認事項や捜査の方法も決めてから、タラタネラは立ち上がった。
「私の方でも調べてみるよ。王太子様の血が取られていたということは、相当中枢に犯人がいるってことだからね」
「頼んだ。危ない橋を渡りそうになったら、こいつを連れていけ。対価の分は働いてもらわんとな」
「まかせて! タダ飯食いは性に合わないから頑張るよ」
「悪魔の口から出ていい言葉じゃないだろ……」
こうして悪魔召喚を広めた犯人を捜すために、おれたちは動き出す。
これでたくさん稼いだらきっと、魂一つ分くらいにはなるかな。なんて期待して、おれの尻尾はゆらりと揺れた。
****
あれからおれたち三人での捜査が始まったけど、それよりも敵の方が早かったみたいで、ユランが殺気を振りまきながら牙をむいていた。
「俺や王太子様が悪魔と契約して圧政を強いていると噂になっている。大臣などの阿呆共は潔癖を証明しろと発破をかけてきた」
部屋のソファに座っている金色の犬はうなりながら自分の腕を握って怒りをこらえていた。力が強すぎるから家具に同じことをしたらすぐに壊れるからね。逆に筋肉が硬い体の方が被害が少ないって何? 強すぎでしょ。
「私の方にも来たよ。どうやら敵は私たちを完全に失脚させようとしているようだね」
タラタネラも渋い顔をして、重いため息を吐いた。
この国では悪魔と契約を結ぶのは犯罪だから、当然その責を問われるんだ。おれをすぐに帰らせないようにしたのもそのためだろうね。
姿を隠してユランの仕事に同行したおれも話は聞いたから知っている。騎士団の中ではユランの性格が知れ渡っているから誰も信じていなかったけど、王宮では猜疑の視線が結構突き刺さっていた。
「だが、こちらにも収穫はあった」ユランが手の力を抜いて。「アスモに噂の出所を確認させた。その結果、やはり第二王子派に行きついた」
「まあ……そうだろうね」
リカオンがまた重いため息を吐くのもしょうがない。どこの世界でも権力争いっていうのはめんどくさいよね。
王太子である第一王子から王位を奪いたいと思っている第二王子派からすれば、第一王子派であるタラタネラは邪魔だろうし。
ちなみにユランは中立派。相手が誰であれ、騎士として王に対して忠誠を誓うというスタンスだ。それは結構有名で、本人も公言してはばからない。自分は王ではなく国に仕えているだけだと。なので権力抗争に巻き込むなという姿勢を崩さない。
しかも賄賂も色目も効かないうえに、権力に媚びない鉄壁で潔癖な騎士としても名高い。平民の間では最高の騎士として人気だけど、本人は殺意の塊なんだよなあ。ただの長い反抗期なんじゃないかとすら思うよ。
だからユランは騎士団長で、タラタネラは近衛騎士団長なんだろうなっていうのがわかる話だ。
そう考えるとユランに関しては結構とばっちりと言うか、ついでに蹴落とされそうになってる感じがある。この怒りもまあ妥当だ。
「ユランは私と仲がいいから、できるなら一緒に排除したほうが安全だからね」
「やめるか……友人を」
「今更遅いって。こうなったらもう一蓮托生じゃないか」
「お前、敵は第二王子派だからと俺と協力してつぶそうとしてるだろ」
「元から派閥なんて関係なくそのつもりだったくせに」
確かにユランなら相手が誰だろうとも敵対したら殺してそう。
とにかく、これで大体の敵対関係が把握できたけど、問題はそれだけじゃないんだよね。
近衛隊長や騎士団長が悪魔とかかわりがあるなんて国の沽券にかかわると、潔白証明を求められている。
その方法が、神殿での聖別だ。これは祝福を与えるとともに悪魔とのパスを調べる方法で、反応すると契約を結んでることがばれて一発アウトになるやつ。
おれの契約者三人は近々神殿に招集されることが決まっていて、何としても対策を練らなければならなかった。
「こうなってくると、神殿が協力を渋っていたのもこのせいだと疑いたくなるな」
「十分あり得そうだよね。大神官に金でもつかませたんだろうさ。あそこはもう汚職の温床だ」
「ひょっとしなくても、この国って結構腐ってない?」
「悪魔に言われるとつくづく頭が痛くなるな……」
「本当だよねえ……」
平民として生活してた時からなんとなく感じてたけどね。
神殿も民のためにとか言ってたけど、特に何もしてくれなかったし。まあおれは悪魔なので近づかなかったんだけどさ。
「っま、それはユランたちに頑張ってもらうとして、聖別はどうする? タラタネラとの取引もしたし、後は王太子と取引すればおれは帰れるけど?」
「帰る? 馬鹿を言うな、殺すぞ」
「なんでだよ! 契約が無ければいいんだから、それが一番確実じゃないか」
「後手に回ってどうする。ただでさえお前が市井にまぎれていた一か月は対応が遅れていて、そのせいで噂の歯止めも効かなくなっている。だが神殿も動いた今、あいつらは確実に俺らを処分できると油断しているはずだ。その隙をついて全員殺す」
まじで敵対者絶対殺す騎士じゃん……。その殺意は悪魔にだけじゃないのかよ。
それにおれが一か月平民として遊んでいたせいで、二人の立場が悪くなってるのは本当だ。おれが悪いわけじゃないけど、ちょっと罪悪感があるのは否めない。
明らかに攻撃的すぎる意見にどうしたものかとタラタネラへと助けを求めると、こっちも苦笑しながら頷いていた。どうやら同意見らしい。
「でも実際、これを逃せば尻尾をつかむのがかなり遅れるからね。王太子様の安全のためにも早い方がいいから、ユランには賛成なんだ」
リカオンは優しく諭すように笑うが、薄着に浮かんだ筋肉がすごすぎてギャップがどうしても目につく。射精義務のせいでどんどんラフになっていった結果、もはや自分の家のような恰好になっている。部屋に着くなり脱ぎ始めるからね。
本人は無自覚だけど巨乳から乳首が浮いてるんだよね。これ部下の性癖壊してるんじゃないかって心配になる。しかも最近はおれが育成してるので、伸びしろの塊なんだ。物理的にも感度的にも。
「えっと……」おれの視線に気づいたタラタネラが困ったように。「今日の射精ノルマはこの後するから、意見が固まるまでもうちょっと待ってほしい」
「今日はお前の番だからな。まったくなんでお前もうちで射精するんだ」
「しょうがないだろ。アスモが結界を張ってくれたところで会合をしたほうが安全だし、後片付けもアスモが魔法でしてくれるんだ。さすがにあの汚れをメイドに洗濯させるのは気が引けるよ」
「わからんではないがな。だがお前、最近声がやばいことになってるぞ。結界が無かったら事件かと思うほどだ」
「そ、そんなにかい……?」
おずおずと視線を向けられたので頷いておく。ユランの寝室と私室周辺には結界があるので音は漏れないけど、ユランにはばっちり聞こえていると思う。
けど、あれを聞いておいて鉄面皮なの怖いんだけど。射精してないのは管理してるおれが一番よく知ってる。こいつ性欲ある?
「アスモ……その……」
「わかってる、今日は寝室に防音の魔法かけとくよ。タラタネラには気にせず出してほしい。射精量を増やすのはおれのためでもあるから、これはサービスね」
「助かるよ……でもそんなにひどい声してるかな……」
「おれはちんちんに効くから好きだよ」
「それ絶対褒めてないよね……?」
正直タラタネラは無自覚でスケベ垂れ流しすぎだとは思う。おれみたいな趣味の人なら放っておかないでしょ。
全身筋肉を発達させた巨漢で、黙ってればイケメンでしゃべれば人当たりのいい表情。地位も名誉もあって紳士的で悪魔のおれにも優しい。比較対象がユランだからってのはあるけど。
なんでこれで未経験なのか謎すぎる。むしろやりまくっててもよくないか。
「こいつは高嶺の花だからな。手を出そうとするやつなんていないんだ」
「そんなことはないと思うが……私のような汗臭い男はもてないだろ。婚約者も昔はいたが、破談になってしまったからな」
「あれは向こうが第二王子派に付いたからで、お前のせいじゃないって言ってるだろ」
「そうかもしれないが……」
なるほど、それで今まで経験がないんだ。けどいい出会いならそこら中に転がってそうなんだけどなあ。
たまにタラタネラにくっついて仕事に付き合うことがあるけど、周囲の視線を探ればたまに邪な目で見てる人いるよ。不思議なことにユランにもいるんだよね。まあ見た目だけならすごくいいからな……。
「いたとしても俺は別に気にしない。ただ手を出そうものなら返り討ちにするだけだ」
「これだもんなあ。まあでもタラタネラは最近積極的になってきてるし、初体験もすぐなんじゃ……」
「い、今はそんな話いいだろ! 大事なのは聖別をどうするかってことだ!」
強引に話を戻されたけど、実際どうしようね。おれが戻らないのなら、どうにかしてごまかさないといけないんだけど。
「神殿に行く前に、犯人を捕らえればいい。そうすれば王太子への害をなそうとした事件を立証できるから、そのごたごたでなくなるだろ」
「後は神殿と悪魔のつながりを見ることだね。犯人と繋がっているのかはわからないけど、第二王子派と繋がってるのは確かだから、うまくいけば神殿の権威を下げられる。そうすれば聖別の結果にも疑問を持たせられるだろうね」
「なるほどね、つまり敵を白日の下にさらして、うやむやにしようってわけか。それならどうやって調べるの? 最近は悪魔召喚が流行ってるせいで、怪しい家には全部結界が張られてるから、おれは入れないんだよね」
「悪魔に頼らず確実に黒であるやつの懐に潜り込めればいいのだが……」
「それなら……」
ふと何かを思いついたタラタネラが見たのはユランだった。友人相手というだけあって無防備に金色の犬が首をかしげると、戸惑いがちな提案が返ってきた。
「君の部下のニグレス、確か第二王子派の筆頭貴族の息子だったよね」
「ああ、あいつか……そうだな、確か第三子くらいだ」
「そして私の記憶が確かなら、ニグレスは君のこと……」
「愛人にしたいとふざけたことを言っていたな……おい、お前まさか……」
「その線からなんとかならないかなーって……」
「殺すっ!!!!!」
拳を振り上げるどころかそのまま振り抜いてぶん殴ったよ!
しかもオーラをまとった一撃だ。相手がタラタネラじゃなかったら死んでたかも。でもタラタネラが何事もなかったかのようにぴんぴんしてるのなに。こいつら悪魔より強いだろ。おれが学者型というのを加味しても勝てるビジョンが見えない。
……もしかして、初対面の時にあの勢いで殴られたの、十二分に手加減してた可能性があるな。
でもユランが怒るのも無理はない。要するに身を売ってくれって言ってるわけだからね。……とはいえ殺意が高すぎる。タラタネラはよくこれと友人やってるね。
「ん? ユランは十分手加減してくれてるよ。この程度私なら問題ないしね。それに、怒るだろうなとは思ってた」
「当然だろ、俺にあの馬鹿へ媚びろというのか。あいつは親のコネでうちに入ってきただけで、やる気も技量も体力もすべて足りてないんだぞ。本来なら第一騎士団から蹴飛ばしてやりたいくらいだ」
「なら他に案はあるかい?」
「…………」
好戦的だが騎士団長を務められる程度には頭が回るユランだ。第二王子派筆頭貴族へのコネを作るには、中立派の自分しかないのはおれらが言わなくてもわかっているだろう。
黄金の犬はいらだちを隠そうともせずに貧乏ゆすりを激しくしているが、やがて重いため息を、本当に重くて長いため息を吐いた後、にらみつけながら口を開いた。
「ないな。ニグレスは考えの足りない時が多いから、情報源としても悪くない。それは分かっているのだが……気が進まないな」
「いっそのこと魅了でも出来たら楽なんだけどね。アスモはそういうのもできたりするのかい?」
「それくらいなら余裕。二人みたいにオーラで守ってたりしない限りは楽勝だよ。でも向こうは悪魔召喚に詳しい可能性があるから、ばれて解除されたら言い逃れできないよ」
「あいつは家でも特に期待されていない三男で、本人もそれを自覚して奔放に過ごしている。当主たちの目に留まることはないだろう」
「それなら魅了しようか。元から好意があるのなら、そんなに強く魔法をかけなくていいしばれにくくはできるよ」
「複雑な気分だな……」
潔癖な騎士様は人の心を操ることを好まないみたい。殺意の塊だけど、常識人ではあるからね。だからこそ魂は綺麗に輝いているんだ。そこは尊重してあげたいけど、今回ばかりはどうしようもなさそう。
「でも、軽い魅了くらいで家を裏切るような行為をしてくれるかな? いくら浅慮とはいえ、さすがにそこまで短絡的に動いてくれるかどうか……」
「あ、別に情報を漁らせなくても、手はあるよ。おれに任せて、日当ザーメン五回分をもらってるんだ。このくらいはやらないとね」
「わかった、なら教えてくれないかい?」
これでもおれは学者タイプの悪魔だ。戦闘よりこういうことの方が得意なんだよ。特に魔法の扱いに関しては悪魔全部の中で見ても上の方だという自負がある。だてに学校を首席で卒業してないんだ。
おれが作戦を話すと二人はなるほどとうなずいた。これなら安全に結界内に入れるし、ニグレスにも悟られない。
「なかなかやるな。それなら問題なさそうだ」
「そうだね、魔法に詳しい君がいてくれて助かるよ」
「俺らが窮地に立たされてるのもこいつのせいだがな」
「おれは何もしてないですー! むしろ被害者なんだけど!」
方向は定まったので、ニグレスを誘う算段を付けたところで今日の定例会は終了だ。犯人捜しを始めて以降、こうして毎日顔を合わせて成果を確認するのは習慣になっていた。
そしてそれが終われば、おれへの報酬を払う時、すなわち射精の時間がやってくる。
「今日も頼むよ」
リカオンは柔らかく笑って、ベッドに腰かける。すでに何度も射精に使っているユランの寝室は、勝手知ったる他人の家みたいなものだ。
その股間ではすでに巨根が存在感を発揮し始めており、ズボンにくっきりと幹が浮き上がっていた。そこまで期待されちゃうと、やる気が出るってものだね。
「任せてよ。今日も最高に気持ちよくさせてあげるからさ」
「だんだん癖になってる自分が怖いよ。声もでかくなってるみたいだし……防音は忘れてない?」
「ばっちり。これでどれだけ喘いでもユランには聞こえないから、いつもみたいに獣じみた喘ぎを出しても大丈夫!」
「ほ、本当に私がそんな声を出してるのかい……?」
「じゃあ録音してみる? おれとの契約が切れた後のおかずにもいいかもしれないよ」
「いや、遠慮するよ……聞いたら立ち直れなさそうだ」
騎士二人が話し合った結果、一日おきに五回射精当番を変えるということになった。清廉潔白な騎士である二人だが、鎧の中は性欲たぎった屈強な雄でしかない。一日あれば金玉に精液をチャージするなんて余裕だ。
おれも堅苦しい黒スーツを脱ぎ捨ててベッドに上がり、タラタネラに抱き着く。ぶっとい首筋に鼻面をうずめて匂いを嗅げば、隠し切れない汗の匂いがおれを興奮させた。本人は香料で気を使ってくれてるんだけど、毛皮の根元にはタラタネラの色気が溜まっている。
「ん……」
タラタネラも同じようで、鼻から漏れた息はすでに熱を帯びている。おれが衣服の下に手を差し入れると、幹が窮屈そうに震えた。
服をめくりあげながらフェザータッチでマーブル模様の毛皮をくすぐると、リカオンはすんなりと両手を上げて脱がせることができた。すると盛り上がった太い体があらわになって、そこからいい匂いがする。
「いつ見ても立派だよねえ。全身骨太で筋肉の塊。抱き心地もすごくいい」
「こんな汗臭い私を喜んで抱くのは君くらいだと思うよ」
「違うんだよなあ……」
価値観がノンケすぎる。騎士とかいう男社会で暮らしてるのに、なんでまだ理解できていないのか。高嶺の花扱いされているのは本当なんだろうな。
こうして吐精の手伝いをするのも、おれの役目だ。ユランとは違って、タラタネラはおれのサポートを受けてくれている。その期待に応えるためにも、しっかりやらないと。
あと単純に、こんないい雄とできる幸せを噛みしめてるのもある。
「タラタネラ、キスしよ」
「いいとも」
もはや当然のようにおれらは口を合わせることだってできる。最初はぎこちなかったキスも、一日おきにやれば上達して、舌同士をくちゅくちゅと躍らせることだって余裕だ。しかもタラタネラはキスが好きだから、自分から言ってくることもある。
「んおっ♡じゅるぅ♡はふっはふっ♡♡んむぅ~♡♡」
リカオンのぶっとい体を撫でまわしながら舌を絡ませると、お返しにと抱き着かれる。おれとタラタネラの膨らんだ胸同士がむにっと密着して、その上からこぼれた唾液が降り注ぐ。でも、もう慣れたものだからどっちも気にしない。
おれもタラタネラも童貞だから、キスの時間が長いか短いかなんてよくわからない。
だから満足するまで唾液を舐めしゃぶるんだ。
「んっちゅ♡タラタネラ、今日はどうする♡おれがする?♡」
「自分でするから……♡んむっ♡アスモには♡ちゅっ♡胸を頼んでもいいかな♡」
「了解♡」
最低五回の射精がいるんだ、キス中に一発出すのは通例となっている。逆に言えば、一発出すまでキスが終わらない。ずーっと互いの口を吸ったままだから、おれらはもう唾液になんの忌避感も抱かない。
タラタネラがもぞもぞとパンツを脱いでいる間に、おれは浮遊して正面へと移動する。普通だと難しい体位も、悪魔のおれなら問題ない。オナニーを邪魔しないようにしながら少し顔を傾けて、リカオンのマズルに深く噛みついた。
「んっふうぅ♡♡」
すでにガチガチに勃起しているタラタネラのちんぽがパンツを飛び出して、自分の腹に当たる。巨根は見慣れない人が見たら凶器みたいな大きさで、リカオンのでかい両手握っても先端が余るくらいだ。
でも、だからこそしごくのに問題はなくて、ぐちゅぐちゅと先走りの音が下から聞こえてきた。肩の動きから見て、相当強くオナニーしてるな。
「んっおおぉ♡♡おっおっおおぉ♡♡」
すでに汚喘ぎの片りんが見えてきた。普段紳士然としたタラタネラだけど、やってる最中はすごく汚い声を出す。おれは好きだから全然いいんだけど、女性受けは悪いと思う。
最初こそ遠慮がちだったのに、今じゃ誰にはばかることなく嬌声を振りまいてるんだ。それだけ気持ちがいいんだろうし、おれにも慣れてきたんだろう。嬉しいな。
おれはタラタネラとするのが嫌いじゃない。むしろ好きだ。
この国では珍しく悪魔相手にも優しいし、尊重してくれる。ユランで荒れた心を癒してくれるいい人なのだ。
だからたくさん気持ちよくしてあげるね♡
おれは最近開発中の両乳首をつまみ、一気に引っ張った。
【続きは来月の支援者限定公開となります】