「……ふふっ。あははっ、本当に、本当に小さくなっちゃった」
頭上遥か彼方から降り注ぐ、甘く、けれどひどく歪んだ声。
床にへたり込んでいたトレーナーが恐る恐る見上げると、そこには天を突くような超巨大な壁……いや、トレセン学園のジャージを着た、見慣れた担当ウマ娘、ナイスネイチャの姿があった。
彼女が巨大化したのではない。ネイチャが持ってきた出所不明のスポーツドリンクを飲んだトレーナーが、文字通り1センチほどにまで縮んでしまったのだ。
「ネ、ネイチャ……?なんだよこれ、一体どうなって……」
彼の細く掠れた声は、巨人と化した彼女の耳に届いているのかも怪しい。
ネイチャは床で震える彼を見下ろし、普段の自嘲気味な笑顔とは全く違う、獲物を前にした肉食獣のような、ねっとりとした熱を帯びた瞳で見つめていた。
「ごめんね、トレーナーさん。アタシ、どうにかしちゃいそうで。……トレーナーさんのことが、好きで好きで、誰にも渡したくなくて。だから……アタシのポケットに入るくらい、ちっちゃくなってもらったの」
「す、好きって……だからって、こんな……!」
「あーあ。そんなにちっちゃいと、声も全然聞こえないや。……でも大丈夫。アタシにはちゃーんと伝わってるから」
ネイチャはゆっくりとしゃがみ込み、巨大な右手を彼へと伸ばしてきた。
五本の指はまるで大木のように太く、縮んだトレーナーに逃げ場などどこにもない。
親指と人差し指が、彼の胴体を両側から優しく、しかし絶対に逃れられないウマ娘の力で挟み込んだ。
「ひっ……!」
「よい、しょっと」
フワリ、と内臓が浮き上がるような感覚。
トレーナーは彼女の指につままれたまま、一気に空中へと持ち上げられた。床が遥か彼方へと遠ざかり、代わりにネイチャの巨大な顔が、彼の視界を完全に覆い尽くす。
「ふふっ、可愛い……。アタシの指先で、ブルブル震えてる……」
ネイチャの熱い吐息が、台風の突風のように彼の全身を打ち据える。
甘いリップクリームの香りと、ウマ娘特有の体温の高さが、圧倒的な生の暴力として彼に迫ってきた。
「ねえ、トレーナーさん。アタシたち、ずっと一緒にいようね。……まずは、アタシの特別なトレーナーさんを、たっぷり味見してあげる」
ネイチャの顔が、さらに近づいてくる。
そして彼女は、トレーナーの目の前で、艶やかな桜色の唇を、ゆっくりと、大きく開いた。
「あーん」
目の前に現れたのは、巨大な暗黒の洞窟だった。
湿気に満ちた熱い空気が吹き出し、ピンク色に濡れそぼった巨大な肉の絨毯が、獲物を待ち構えるようにうねっている。
そして、その周囲を囲む、人間の身体など簡単に噛み砕けそうなほど白く巨大な歯の列。
「う、嘘だろ……やめ、やめろネイチャ!! 食われるっ!!」
彼は必死に手足をバタつかせたが、ウマ娘の指の力から逃れられるはずもない。
ネイチャは楽しげに目を細めると、つまんでいた彼の身体を、その巨大な口腔内へと容赦なく放り込んだ。
「んっ……」
ポイッ。
トレーナーは暗闇の中へと落下し、べちゃり、と生温かく、ひどく粘り気のある大地に叩きつけられた。
直後、背後で巨大な門が閉まるように口が閉ざされ、光が完全に遮断される。
「あ、あああ……っ!!」
そこは、生き地獄だった。
ネイチャの口の中は、人間の想像を遥かに超える灼熱のサウナ状態だった。
ただ熱いだけではない。床である舌は生き物のようにうねり、彼の身体を容赦なく転がしにかかる。
『んんーっ……♡んちゅっ……れろぉ……』
外から、ネイチャが口を動かす生々しい水音が響いてくる。
彼女は彼を飲み込む気はないらしい。完全に、口の中で楽しむ「飴玉」として扱っているのだ。
巨大な舌が下から掬い上げるように彼を持ち上げ、そのまま上顎のザラザラとした硬い天井へと押し付けた。
「ぐっ、ぎぃぃっ!!潰れ、潰されるっ!!」
全身の骨が軋むほどの圧倒的な圧力。
そして、舌がこすり付けられるたびに、大量の粘り気のある甘い唾液が、滝のように彼の全身に降り注いでくる。
スーツもシャツも一瞬でびしょ濡れになり、粘液の重みで手足がベッドに縛り付けられたように動かなくなる。
『ちゅむっ……じゅるるるっ……♡とれーなぁさぁん……♡』
ネイチャのハミングが、口腔内の骨伝導で彼の全身を震わせる。
彼女は舌先で彼の頭から足先までを舐め回し、時には歯の裏側に押し付け、時には舌でグルグルと洗濯機のように回転させた。
息ができない。酸素の代わりに、彼女の濃厚な唾液と甘い息が肺に入り込み、彼は完全にナイスネイチャに溺れていた。
意識が遠のき、いよいよ窒息して死ぬと思った、その時だった。
「ぷはっ……! んっ、ペッ」
不意に光が差し込み、トレーナーは大量の唾液と共に、ネイチャの手のひらの上へと吐き出された。
「ゲホッ!ゴホッ、ゴボォッ……!!はぁっ、はぁっ……!!」
彼はネイチャの巨大な手のひらの上で、四つん這いになって激しくむせ返った。
全身は彼女の透明で糸を引く唾液にまみれ、ドロドロのぬめぬめ状態だ。スーツは肌に張り付き、髪からは唾液の滴がぽたぽたと落ちている。
「ぷはぁーっ。……あー、美味しかった。トレーナーさんの味、最高だよ」
ネイチャは唇についた唾液を艶やかに舐めとりながら、手のひらの上でゼェゼェと息も絶え絶えになっている彼を、愛おしそうに見つめた。
「ねえ、トレーナーさん?アタシの口の中、あったかくて気持ちよかったでしょ?ずっとこの中にいてもいいんだよ?」
「はぁっ……はぁっ……ふざけ、るな……っ!殺す気か……!」
トレーナーは必死に睨みつけたが、声は掠れて全く届かない。
「ねえ。アタシね、トレーナーさんのことが本当に大好きなの。……だから、アタシと付き合って?ずっとアタシだけの、カワイイカワイイおもちゃになって?ね?」
ネイチャは上目遣いで、とろけるような甘い声で交際を迫ってきた。
冗談ではない。こんな圧倒的な力の差を見せつけられ、口の中で溶かされかけた直後だ。
彼は恐怖と混乱、そして全身を覆う唾液の不快感でパニックになり、声が出なかった。口をパクパクさせるだけで、答えられない。
「……あれ? お返事は?トレーナーさん、聞こえてないのかな?」
数秒の沈黙の後。
ネイチャの甘かった声のトーンが、スッと数度下がった。
彼女の瞳から光が消え、暗く淀んだ執着の炎が灯る。
「……そっか。すぐにお返事してくれないんだ。……じゃあ、もう一回『お仕置き』だね」
「ひっ!?ま、待っ……!」
「あーん♡」
ネイチャは再び、彼の頭上に巨大な口を開けた。
そして、手のひらを傾け、彼をそのまま再び口腔内の暗闇へと滑り落とした。
「ぎゃああああっ!!」
二度目の地獄は、先ほどよりも遥かに苛烈だった。
ネイチャは彼の返事の遅さに拗ねたのか、あるいは嗜虐心を刺激されたのか、容赦のない蹂躙を開始した。
『んちゅっ!じゅぼぼぼぼっ……!!れろぉぉぉっ!!』
(ぐ、ごぼぉっ!! 息がっ、息ができないっ!!)
さっきよりも激しく、速く、暴力的に舌が動く。
彼の身体は飴玉のように口の中を縦横無尽に転がされ、頬の内側の肉に押し付けられ、さらには巨大な白亜の壁である歯の間に挟み込まれた。
『ん…っ……♡』
(ヒィィッ!! 噛まれる! 噛み砕かれるぅぅっ!!)
ネイチャは本気で噛むつもりはないのだろうが、ギリギリと万力のように迫る前歯の圧力に、彼は恐怖で完全に発狂しそうになった。
大量の唾液が気管に入り込み、猛烈にむせ返るが、口の中で逃げ場はない。
完全に胃袋に飲み込まれる一歩手前、喉の奥の咽頭の入り口まで押し込まれ、真っ暗な食道の奥底を見せつけられる恐怖。
トレーナーは完全に心が折れ、彼女の舌の上で「許してくれ」と祈るように蹲るしかなかった。
「……んっ、ぺっ」
パカッと再び光が差し込んだかと思うと、ネイチャはまるで味がしなくなった古いガムでも吐き捨てるかのように、ひどく無造作に彼を手のひらの上へと吐き出した。
べちゃり、と鈍い音を立てて落下した彼は、今度はもう立ち上がることすらできない。
完全に脱力し、ネイチャの濃厚な唾液の海の中で大の字になってピクピクと痙攣しているだけだ。
「はぁ……はぁ……っ。ごちそうさま。少し手荒くしちゃったかな?ごめんね、トレーナーさん」
ネイチャは指先で、彼の頭をそっと撫でた。
その指先ですら、今の彼にとっては重機のような圧迫感がある。
「で? 今度はちゃんとお返事、くれるよね?アタシのモノになってくれるよね?」
「あ……あ……っ」
トレーナーは必死に口を開こうとした。
「わかった」「付き合うから」と、この恐怖から逃れるために嘘でもいいから言葉を紡ごうとした。
だが、恐怖で喉が完全にひきつり、声帯が空回りするだけで、声にならない。
「……あれれ?まーだお返事くれないの?なんで?」
彼の必死な様子を「拒絶」と受け取ったのか、ネイチャの顔が再び歪んだ。
「もしかして、アタシの口の中がそんなに気に入っちゃったの?また入れてほしいの?」
(ちがっ、ちがう! 声が、出ないだけ……っ!!)
「ほら、見て? アタシの口、こんなに大きいの。トレーナーさんなんて、ひと呑みなんだからね?」
ネイチャは彼の顔のすぐ真ん前まで顔を近づけ、パカッと限界まで大きく口を開けた。
彼女の顔の半分を占めるほどの、巨大な深淵。
中からは、先ほどまで彼が揉みくちゃにされていた、真っ赤に充血した巨大な舌が、ベロンとうねってこちらを威嚇している。
(あ、あああ……っ!!)
「ここ、すっごく温かかったでしょ?唾液でドロドロになって、アタシの一部になれる特別席だよ?ほーら……」
ネイチャは脅すように、開けた口の中から「ハァーッ」と熱く湿った息を彼に吹きかけた。
その息だけで、彼は吹き飛ばされそうになる。
彼女はさらに、もう片方の手の指先で彼の身体をつまみ上げると、開いたままの自分の唇の端に、彼を擦り付けた。
(や、やめろぉぉぉっ!! 食べないでくれぇっ!!)
「ふふっ……お返事くれないなら、一生この中に閉じ込めちゃうからね?ほら、舌がトレーナーさんを欲しがってるよ……れろっ」
巨大な舌先が口から飛び出し、彼の顔面をベロリと舐め上げた。
彼は完全に限界だった。
ウマ娘の圧倒的な肉体の暴力と、いつ丸呑みされるかという死の恐怖。
トレーナーはポロポロと涙をこぼし、首をこれ以上ないほど激しく横に振りながら、ガタガタと震え上がった。
「(……っ!)」
その、彼が完全に恐怖に支配され、涙目で怯え切った姿を見た瞬間。
ナイスネイチャの動きが、ピタリと止まった。
彼女の瞳孔が限界まで開き、顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
口元を手で覆い、荒い呼吸を繰り返している。
「あ、あ……?」
「……っ、はぁっ、はぁっ……!! かわ、可愛すぎ……ッ!!」
(え…?)
「無理、耐えられない……!なにそれ、そんなに怯えちゃって、涙目でアタシを見上げて……!ああっ、もう、愛おしすぎて頭おかしくなりそう……ッ!!」
ネイチャは完全に、嗜虐心と独占欲のスイッチが最深部まで入ってしまったようだった。
彼女はもう、彼の返事などどうでもよくなっていた。
ただただ、この小さくて無力で、自分の暴力に震え上がる愛しい存在を、完全に「自分の体内」に隔離してしまいたくてたまらないのだ。
「もういい、お返事なんて聞かない!トレーナーさんはアタシのモノ!アタシだけのッ…♡♡」
(待ってくれネイチャ!!待って…あっ…)
「いただきまぁーすっ♡」
パクッ!!
「んぐぅぅぅぅぅっ!!!!」
彼の抵抗も虚しく、ネイチャは三度目、これまでで一番の勢いで彼を口の中へと放り込み、ガッチリと唇を閉ざした。
圧倒的な闇と、灼熱の熱気。
先ほどまでの「遊び」とは違う、完全に彼を味わい尽くそうとする狂気に満ちた舌の動きが襲いかかる。
巨大な舌が彼の身体に巻き付き、上顎と舌の間でギュウギュウに押し潰され、大量の唾液が容赦なく体内に注ぎ込まれていく。
『んんーっ……♡んちゅっ……じゅるるるるっ……♡』
(だめだ、もう、終わる……溶かされる……っ!)
意識が遠のく中、ネイチャの舌の動きが少しだけ優しくなった。
そして、口腔内に響き渡るような、骨伝導のねっとりとした声が、彼の脳髄に直接語りかけてくる。
『……ふふっ、捕まえた。もう一生、ここから出してあげないからね……♡』
『アタシの唾液で、ドロドロに溶けて、アタシの一部になっちゃえ……♡』
『だぁーい好きだよ、アタシだけの、ちっちゃなトレーナーさん……♡ んちゅっ、ちゅむっ、れろぉぉぉっ……♡』
逃げ場のない温肉の牢獄の中で、トレーナーはナイスネイチャの狂おしいほどの愛と唾液に完全に溺れ、果てしない蹂躙の波へと沈んでいった。