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超巨大神狼の黙示録

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1.神狼の降臨

 大陸の心臓部に輝くエストラの首都は1000万の魂が織りなす光と鋼のメトロポリスだ。

 平野を囲む三つの山脈と、人工の港湾に囲まれたこの都市は、政治と経済、文化の頂点に君臨する。

 夜空を切り裂く高層ビルの群れは、ガラスとネオンで彩られ、星屑を地上に落としたかのようだ。中心部には1000メートルの尖塔がそびえ、天へと伸びていく。この都市の誇りであり、繁栄の象徴だ。


 一方その地下深く、政府の秘密施設では、重苦しい空気が漂っていた。

 円卓を囲む政府高官たちの顔は青ざめ、額には汗が滲んでいる。円卓の中央にある巨大なスクリーンには、破壊された町の映像が映されていた。今この国は滅亡の危機に瀕している。

 隣国の大国の侵攻により、首都の目前まで迫られてしまった。最新鋭の兵器も、精鋭の兵士も、敵の圧倒的な戦力の前には無力だった。


「もはやこれしかない…禁断の召喚術を解き放つ」


 老齢の議長が震える声で呟く。禁断の召喚術。それは古の時代に神を呼び出すとされた秘術。

 だが、呼び出された神は召還主すら制御不能とされ、封印されてきた禁忌の力だ。しかし、滅亡を目前にした今、他に選択肢はなかった。

 スクリーンには魔法陣が描かれた石版が映し出されている。それはこの国の歴史が記された古文書の一ページであった。この国の歴史書の中で、最も重要とされながらも、決して外の世界に漏らしてはならない情報――。この国の命運をかけた召還が始まる。


 地下の巨大な魔法陣が赤く輝き、儀式が始まった。高官たちは息を飲み、古代の呪文が響き合う。魔法陣に光が宿り、まばゆい輝きを放つ。そして、光の塊がゆっくりと浮かび上がった。光の粒子が飛び散り、弾ける。閃光の中、それは現れた。


 魔法陣の中心に浮かぶのは、息を呑むほど美しい少女だった。身長は2メートルを超え、しなやかでグラマラスな体躯は戦士の強さと女性の優美さを兼ね備えている。

 白銀の毛に覆われた狼の耳と尾が、彼女がただの人間ではないことを示す。少女が身にまとうのは、動きやすさを追求したセパレートタイプの黒革装備。胸元と腰を覆う軽装で、戦場を疾走するための機能美が宿るようだった。

 銀髪からは犬のようなピンとした耳が立ち、お尻から伸びた尻尾はゆらゆらと揺れていた。金色の瞳は長いまつげに覆われ、見る者を魅了する妖艶な輝きを放つ。

 まさしくこの国に伝わる神話の女神、その名はルナリス、神狼の化身。あらゆる敵をなぎ倒し、その牙で魂を喰らい尽くすと言われる獣。その子細はどの歴史書にも記されていない。政府高官たちも、目の前に立つ存在が紛れもなく神であり、その神秘的な美しさに圧倒されていた。

 ルナリスはゆっくりと立ち上がり、周囲を見回す。彼女の圧倒的な存在感に気圧されながらも、高官たちは感嘆の息を漏らした。この存在こそ、この国を救う最後の希望となるかもしれない。


「我を呼び出したのは貴様らか?」


 ルナリスの声は低く、荒々しい戦士の口調に品格が滲む。

 その口調は見る者聴く者を威圧させるが、心身に響いて虜にする。高官たちは息を呑み、彼女の圧倒的な存在感に打ちのめされた。


「は、はい……我々があなた様を召喚いたしました」と議長は震える声で答える。

 ルナリスはその鋭い瞳で議長を睨みつけた。その眼光に恐怖を覚え、議長は次の言葉を発せられなくなっていた。


「契約を述べよ。我に何を望む」ルナリスは問う。

「この国を……お救いください」議長は声を絞り出す。

「我々の敵、隣国の敵軍を討ってほしい!」


 高官の一人が震えながら進み出て言い放った。

ルナリスは鋭い金色の瞳で男を見据え、薄く笑う。


「敵を屠るか。良かろう、契約は受けた。だが――我が戦に巻き込まれても、恨むなよ」


 ルナリスはそう答え、その大きな狼の耳をぴくりと動かす。そして彼女はゆっくりと施設の出口へ歩き出した。

 その後ろ姿は、まさに神狼と呼ぶに相応しい威厳に満ちていた。高官たちはその美しい姿に見惚れ、ただ見送ることしかできなかった。

 ルナリスが去った後、政府高官たちは安堵のため息をついた。


「だが……本当に任せておいて大丈夫なのか?」


 と、誰かが一人呟く。他の高官たちも同意見だった。神狼の化身の降臨、その圧倒的な存在感に圧倒された。しかし同時に彼らは不安も感じていたのだ。ルナリスは神の力を持ちながら、それを制御できていないとされる。もし彼女が暴走してしまえばこの国は壊滅的な被害を受けるだろう。

 だが、彼らにはもう後がない。この危機を乗り越えるには、あの力にすがるしかないのだ。


◇◆◇


 外に出たルナリスは繁華街の十字路に立っていた。そこは歩行者天国なので人で溢れ返っている。車の通行はなく、人々は大通りを自由に歩き回っていた。

 ルナリスは人々の群れを見て、その美しい顔に微笑を浮かべた。彼女の存在に気づいた人々は立ち止まり、彼女の風変わりな背格好に目を瞠る。

 ざわめく人々をよそに彼女は軽く右手を上げ、指を鳴らすような動作をした。

 すると突然、彼女の身体が膨張を始めた。白銀の毛が陽光を反射し、みるみる巨大化する。

 周囲の人々はその変化に驚き、悲鳴を上げた。ルナリスの膨張し続ける身体はやがて十字路のスペースに収まりきらなくなり、道沿いのビルに膨張する肉体が衝突し、ガラスとコンクリートを粉々に砕く。

 白く輝くような太ももが15階建ての商業ビルにぶつかると、メリメリという音と共に太ももがビルにめり込む。膨張する彼女の肉体に押しのけられ、悲鳴のような金属音を立てるビル。

 やがてガラスと合金で作られたビルは、そのまま砂細工が壊れるように崩れ去ってしまった。

 それでもルナリスの巨大化は止まらない。さらに多くのビルを押し倒し、周囲の建物を巻き込み破壊しながら巨大化していく。

 ルナリスの巨大化がようやく止まった時、彼女は全長2000メートルを超える巨大な狼へと姿を変えていた。

 今の彼女に匹敵する建造物は存在しない。50階建てのオフィスビルでさえ彼女の膝どころか、足首よりも少し高い位置にとどまる程度しかない。

 巨大すぎる素足が道路を占領しており、地面には亀裂が入り、道に収まりきらなかった素足が近くのビルに押しつぶしていた。


 ルナリスは巨大な金色の瞳で地面を見下ろし巨大化して踏み潰した地面と、足元で逃げ惑う人々を一瞥した後、雄たけびのような咆哮を上げた。

 その咆哮が大気と地面と人々を大きく震え上がらせ、人々は逃げ惑うことすらままならなかった。

 ルナリスは巨大な尻尾を振り下ろし、後ろにあった高層ビルを叩き壊した。

 ビルはルナリスの尻尾に打たれると同時に崩壊し、破片となって降り注ぐ。瓦礫の雨に打たれ、逃げ惑う人々は悲鳴を上げて、瓦礫の下敷きにならないよう祈ることしか出来ない。


「ククッ……やはり久方ぶりの実体の肉体とは心地よいものだな」


 ルナリスは上機嫌そうに鼻歌交じりでそう言うと足元の惨状に全く躊躇することなく悠々と歩き出し、さらに市街を破壊していく。

 その巨体はもはや人間が敵うものではなかった。ビルを越え、雲に届くほどの巨体。全長2000メートルのウェアウルフが大都市の空を覆った。山のようなその姿は、神というより破壊そのものだった。


 銀色の髪は月光のように輝き、金の瞳は都市を睥睨している。狼の耳と尻尾を持つ人型の体は、人智を超越した筋肉と美貌に満ちていた。

 その右足の踵だけで10を超すマンション、ビルを踏み潰しており、一歩踏み出すために上げた左脚は複数のビルを蹴飛ばし、空中に舞い上がった鉄骨とコンクリートが花火のように飛散し、降り注ぐ先で更にビルが粉砕され、煙を上げて崩れ落ちる。

 彼女の一挙手一投足で建造物が消し飛んでいく。

 政府施設も超高層ビルも公園も住宅街も関係ない。何もかも彼女の巨躯に巻き込まれた途端、消滅してしまう。轟音と土煙が晴れ渡ったはずの空を灰色に染めた。

 それでもなおルナリスは足を止めず、前進を続ける。

 彼女の目的はただ一つ、敵国の首都へ向かうことだった。契約通りに敵を跡形もなく粉砕するために彼女はこの大都会を最短距離で真っ直ぐに蹂躙しながら歩く。


「我が歩みを阻むものは、塵と化すのみ」


 陽の明かりを反射した白銀の獣がエストラの空を優雅に闊歩していた――それはまさに神話の世界だった。


 ルナリスの巨大な声が大気を震わせ、街全体に響き渡る。市民たちはパニックに陥り、逃げ惑う。

 高層ビルが彼女の足元で玩具のように見える中、ルナリスが一歩を踏み出すと地面が揺れ、ビルが倒壊する。

 彼女の巨体は無慈悲に街を踏み潰しながら進む。その圧倒的な存在感に人々は震え上がるしかなかった。


 ずぅうん……。 ずぅうん……。と、重々しい音と共に、大地が揺れる。ルナリスが一歩を踏み出すたびに、街は地響きと共に崩壊し、瓦礫の雨を降らせる。

 その巨大な脚が大地を踏みしめ、その巨大な爪で大地を引き裂く。

 その姿はまさに破壊の化身。

 白銀の巨獣は、その巨体を揺らしながらゆっくりと歩を進める。その歩みは全てを薙ぎ払い、その息吹は風となり木と人をなぎ倒す。

 その一歩の衝撃は半径数百m内の建物を崩壊させ、崩壊を免れた建物も全てのガラスが粉砕され、地面を大きく波打たせる。

 ルナリスはその美しい容姿に似合わぬ残酷な微笑みを浮かべ、その巨大な爪を地面に突き立て、巨大な足で大地を踏みしめる。

 一歩ごとに街が崩壊し、その下に無数の家やビル、車と人々を無秩序に踏み潰した。

 ルナリスの進撃は止まらず、大地に轟く足音はエストラの人々の心を打ち砕き、恐怖で縛りつけた。その巨体はもはや想像を絶するほど巨大であり、街の大半を完全に支配していた。


 だが、彼女自身は街を襲撃している意図はないのだ。彼女はただ目的地に向け一直線に歩いているだけなのである。

 しかし、その巨大な存在は街にとって脅威でしかなかった。巨大な彼女に対して人間の街は小さすぎる。300メートルを超す巨大な素足を置ける場所などあるはずもなく、道路に沿って歩くことなど不可能。

 所狭しと並んだ中層ビルも、彼女の前では雑草同然の存在だ。歩くために足を上げれば、たちまち巨大な素足が一気に500mも持ち上がり、遠く離れた場所に下ろされる。

 巨大な爪の下では、そこにあった街並みが踏みつけられ、その衝撃で周囲の建築物が倒壊した。その巨大な脚はビルをも簡単に踏み潰し、瓦礫の雨で街を埋め尽くす。

 そして彼女はまた一歩を踏み出し、大地が揺れる。


 彼女が通った後には瓦礫と廃墟しか残らない。彼女の歩幅は大きく、1分もあれば10km以上も進んでしまうのだ。

 人々は逃げ惑うことしかできず、恐怖と絶望の中で神に祈ることしかできなかった。

 しかしルナリスは無情にも歩み続け、ただ目的地に向かって歩き続ける。その巨大な脚が大地を踏みしめ、その巨大な爪で大地を引き裂く。


「地べたに這いつくばる虫けらどもめ……道を開けねば、踏み潰されるぞ?」


 ルナリスは不敵に呟き、その巨大な脚で街を蹂躙しながら自分だけの道を作り上げ、歩を進める。

 彼女は街を闊歩しながらもその行為に何の躊躇も見せない。人類が築き上げた建物はルナリスの重量に耐え切れず崩れ落ち、その巨体が通った後には、彼女の足跡だけが地面に刻まれていき、街の景観は瞬く間に悪化していく。

 彼女の進路に運悪く被ってしまった人間たちは、アリの行列のように一斉に動き出し、慌てふためく姿を見せた。

 しかし無常にも、彼らは逃げる暇さえ与えられないままその巨大な足裏に踏み潰されてしまうのである。


「脆いものだな、人の造りしものなど。歩くだけで街が崩壊する」


 ルナリスは巨大な脚で道なき道を進み、その圧倒的な存在感が破壊の限りを尽くす。

 繁華街を抜け、ルナリスは居住区へと進む。緑の公園は彼女の足跡に呑まれ、樹木が根こそぎ倒れる。

 ショッピングモールは、ルナリスの爪が軽く触れただけで崩壊し、色とりどりの商品が瓦礫に埋もれる。

 彼女の足元では車が逃げ惑うが、ルナリスの一歩が巻き起こす衝撃波で宙に舞い、地面に叩きつけられた。


「ふっ、踏みつぶされたくなければ、さっさと逃げればいいものを……」


 ルナリスは嘲笑し、さらに街の中を突き進む。逃げ遅れた市民は頑丈な建物の中にいれば安全だろうと考えたのか屋内に避難しようとしていた。 しかし、どんなに堅固な造りであろうとも巨人の前では脆く儚いものに過ぎない。どれほどしっかりとした構造であっても、その巨大な爪でビルをも無造作に切り裂き、道路を砕き、高層マンションもわずか数秒足らずで倒壊してしまうことになるのだ。

 ルナリスの視界には幾多の人がいるがそんなことは一切気に留めていない。

 逃げ遅れた者は次々と彼女の巨体と体重によって踏み殺されてしまい死体となった血痕だけが生前の証となっていた……。


ずどおおおおおおんん!!


 地響きとともに瓦礫が降り注ぎ、人間はただただ地べたにうずくまり、神狼の足音を聞かされることしかできない。その圧倒的な存在からは逃げることすら許されなかった。ただ彼女の歩みを見守り、踏み潰されないことを祈るしか道はないのだ。

 ルナリスは街を突き進む。その巨大な脚がビルを踏み潰し、道路を破壊し、車や歩行者を跳ね飛ばしながら前進する。彼女はまるで自分の存在を主張するかのように、一歩ごとに破壊を振りまくのだった。


 その大地震によって脱線した電車から、乗客が我先にと逃げ惑う。止まった電車にいつまでも残り続けるわけにはいかない。今この瞬間にも、大地を揺さぶる元凶がこちらに向かって近づいてきているのだ。


 乗客たちは我先にと電車から降りていくが、その中の乗客の一人が言葉にならない悲鳴を叫ぶ。 皆が彼の指さす方角を見ると誰もが息をのんだ。

 そこには、白銀の長髪を靡かせる巨大な少女がこちらに迫る姿があったのだ。

 眩しいほどに輝く金色の瞳に、長いまつげ、そして雪のように白く美しい肌、そしてしなやかで豊満な体躯を包み込む、黒いセパレートのボディスーツ。その美しさは、まるで神話の世界から現れた女神のようだった。

 その姿はあまりに美しく、神々しさすら感じさせるものだった。しかし、その美しさは破壊と混沌の象徴としてここに存在していたのである。


 あんなに遠くにいるにもかかわらず、高層ビルに遮られる事なく、はっきりと彼女の姿を見ることが出来る。それはまさしく、巨大な存在である証拠だった。それが意味することは唯一つだけだった。

 彼女はゆっくりと歩みを進め、その巨大な足は卵の殻を踏み潰す様にビルや道路を砕き、粉砕していく。

 一歩ごとに地面が揺れ、その振動で人々が転倒する。その巨体はまさに山のように巨大で、彼女が歩くだけで街が崩壊するほどだ。


 しかし、彼女の足取りに迷いはない。まるで目的地に向かって一直線に進んでいるかのように、ただ前進を続けているのだ。

 突き上げる衝撃が乗客たちを襲う。倒れ伏せた人々がこわごわと顔を上げると、そこには美しくも巨大な少女の姿があった。

 周辺に比較になる大きさのものは存在しない。

 人間の建てた建築物を踏み潰すのに、脚を大きく上げる必要もない。

 神々しいほどに超自然的なその存在感は、神に君臨するに相応しいものだった。

 その少女が歩くだけで街が砕け、建物は倒壊し、自動車や電車は粉砕される。そして踏みつぶされた人々の悲痛な叫びがこだまする。


 その光景を目の当たりにした人々は言葉を失い、ただ震えていた。自分達を見下ろす巨大な瞳は黄金色で宝石のようだったが、その瞳からは何の感情も読み取れなかった。

 いや、正確には目の前の人間に対して何の興味もなかったのだろう。彼女にとって人間は蟻よりも小さい生き物なのだ。小さな世界で生きる事を余儀なくされる矮小な命など彼女から見ればどうでも良かったのかもしれない。


 上空に君臨する300メートルを超す巨大な素足が脱線した列車めがけて振り下ろされようとしている。

 足の影に覆われた人々が狂乱して列車から離れようと走る。だが、その動きはまるで神狼に踏みつぶされることを余儀なくされる蟻のようだ。

 巨大な影は天から降り注ぎ、轟音とともに線路を砕き、逃げ惑う乗客もろとも車両を踏み潰してしまった。

2.戦場の巨影

――ある将校の回顧録より


 見渡す限りの平野部を機動部隊が駆け巡る。武装した装甲車の車体や、戦車のキャタピラが大地を抉り、土埃を巻き起こす。その上空では、戦闘機や爆撃機が空を駆け抜け、敵国への進撃を進めていた。

 彼らが目指すのは敵国エストラの首都だ。この戦争を一刻も早く終結させ、平和を取り戻すために、彼らの故郷リザリアから海を渡り、首都を目指す。

 先頭を進むのは機械化された機動部隊だ。機動部隊が敵国周辺へと侵入し、突破口を開く。彼らは敵の防御ラインをいとも容易く突破すると、そのまま敵の本拠地を急襲するべく、敵陣の奥へと進んでいった。

 敵首都まで我らの進軍を止められるものは存在しない。

 こちらの圧倒的な軍事力の前に、敵は為す術なし。昂る気持ちを抑えつつ、作戦は順調すぎるほど順調に進む。

 そしてついに敵の首都から100キロほどの距離に迫った。


「いよいよ敵の本拠地です」


 部下の一人が緊張した面持ちで口を開く。私たちはこの戦争を終わらせるべく、エストラ首都を目指している。その時だった――


 突然、大地を揺るがすような轟音が平野に鳴り響いた。そして地震のような揺れが起こる。次の瞬間には耳をつんざくような爆発音が響き渡った。同時に地面から土煙が上がる。まるで天地が逆転したような揺れと爆音に我々はパニックに陥る。

 敵の新兵器か?弾薬庫が吹き飛んだのか?それとも本当に地震災害なのか?


「分かりません!しかし、これは……地震では……」


 部下の一人が答える。確かに地震にしては揺れが不自然すぎる上に、まだ振動が続いている。それにこの音。まるで大地そのものが悲鳴を上げているかのような轟音だ。

 そして不気味なことに、その揺れと轟音が段々と大きくなってきたのである。

 皆の混乱の中、隊員の一人が叫び上空を指さす。その指さす先に視線を送ると、そこには信じられない光景があった。

 視線のはるか先、そこの山の斜面が突然に裂けて、山体にいくつもの割れ目が走り、山が見る見るうちに崩れていく。まるで地滑りでも起こしたかのように、地面がグワングワンと揺れ動きながら倒壊していくのだ。


 山体崩壊による土砂流だった。無数の岩や土塊が雪崩となって平野部に流れていく、大自然の猛威。だが、それは問題ではない。あの土石流の勢いはこちらまで届くことはないはずだ。それほどまでにあの山と我々は離れているのだ。

 皆が驚いているのは、あの山の割れ目が広がり、その向こうから巨大な物が姿を現したからだ。


 それはまさに信じられないような光景であった。空にそびえるほどに大きな山を引き裂き、踏みならしながら現れたのは、ありえないほどに巨大で美しく、そして恐ろしい姿だった。それは人型をしていたが人間ではなかった。


 その大きさは圧倒的としか言えなかった。2000メートル以上はあるだろうか?頭部は長い銀髪で覆われ、同色の獣を思わせる耳が立ち、伸びた長いまつげが、その金色の瞳に影を落としている。その美しい顔はまるで女神のように神々しい。しかし、その瞳は冷たく、表情からは何の感情も読み取れない。

 その体つきも人間の女性とほとんど変わらなかったが、その肉体はあまりに強靭で美しく、そして巨大だった。

 胸と腰回りには豊満な肉付きがありながら、それでいて余分な贅肉は一切なかった。その肢体はしなやかで健康的な筋肉に覆われており、胸当てと腰巻のような黒い布を身に纏うだけだった。

 その神々しい姿に、誰もが言葉を失った。この少女のような美しい存在があの山を引き裂いて出てきたのか?

 彼女の肉体は、壮大な自然現象を生み出した事を証明するかのように、割れた岩石と土砂を、全身からばらばらと地上に流星雨のように降らせていた。


 彼女のその美しい姿は、まるで神に愛された美の女神のようだった。だが同時にそれは恐怖と畏怖の象徴だった。彼女はただ静かにそこに立っているだけだというのに、それだけで大地が震え、大自然が悲鳴を上げているかのようだ。

 その圧倒的な存在感に、誰もが恐怖した。


 こんなことがあるわけがない!あの山は1000メートル以上あったはずだぞ!?それをこの少女のような存在が、引き裂いて砂山を崩すようにあっという間に崩してしまったというのか。


 これは夢なのか?残念ながらこれは紛れもない現実だ。その美しい顔から表情を読み取ることはできないが、彼女の視線はただ一点を見据えていた。まるでこちらには気づいていない様子。これだけの軍勢を誇っていながら、ああも無視されると、自分達の矮小さを嘲笑れている気がして、居たたまれなくなる。

 彼女はゆっくりとこちらに近づいてくる。一歩ごとに大地が揺れ動き、地割れが起こる。その圧倒的な存在感と威圧感の前に、誰もが恐怖に打ち震えた。

 だが、このまま逃げるわけには行かない。我々は何としてでもこの戦争を終結させる必要があるのだ。

 ここで我々が撤退すれば、敵の思う壺であり、再び大陸に戦乱の嵐が吹き荒れることになるだろう。


 部隊指揮官が、あの巨人に攻撃命令を発したのも、そのタイミングだった。

 号令に呼応して、全部隊が動き出す。前衛の車両部隊は狂ったように車輪を回転させて疾走し、彼女との距離を詰めていき、重砲部隊は彼女めがけて一斉に砲撃を開始した。砲弾が次々と彼女に向かって放たれる。

 この時はまだ自分も含め皆が、デカいだけの少女相手なのだから、砲弾があたれば彼女も無事で済むはずがないと誰もがそう思っていた。


◇◆◇


 ルナリスが足元のちっぽけな地上部隊の存在に気付いたのは、攻撃が始まってからの事だった。

 彼女は足元に展開する機動部隊のあまりの小ささに、はじめその存在にすら気づかなかった。

 最初に知覚したのは足元から伝わる痒みと雑音だった。その不快な痒みに彼女は眉をひそめ、視線を足元に落としてみた。

 見れば足元の地表がかなり隆起しており、まるでむき出しになった大地の断面が見えた。すべて、ルナリスの巨体が生み出す膨大な質量で、大地が押しのけられた結果だった。

 だが、そんなものは今はどうでもいい。その荒れた更地に、豆粒の様な小さな人間どもが群れをなし、彼女の足元のすぐ近くに群がっていたのだ。

 彼女は足元で蠢く小虫のような人間たちの群に意識を向ける。小さすぎてよく見えないが、彼らはどうやら武器のようなものを持っているようだ。その武器から何か光のようなものが出ており、それが彼女の体に当たっては弾かれている。

 

 おそらくこれが、契約時に話していた"敵"なのだろう。ルナリスはそう認識した。

 彼女はその小ささに、思わず失笑した。これでは、まるでシラミではないか。そのシラミのような虫けらの攻撃もルナリスに有効打を与えることは無い。攻撃が全く効いていないのだから。

 あまりにも小さすぎて、彼女の膝下にまでしか届かない攻撃しかできないのが、むしろ哀れになる。


「こんな小さな虫けらが敵とは笑わせる」


 ルナリスは足元でうごめく小さきものたちを見下ろすと、そう呟く。その呟きは彼女の吐息となって地上に降り注ぎ、地面を揺らした。

 その振動に驚いた人間たちが慌てて逃げ惑うのが見える。だがもう遅い。彼女の意識は虫けらの軍隊を踏み潰す態勢に入っているのだ。


「まずはこの煩わしい光を消すとするか……」


 ルナリスはそう言うと、足元の部隊に向けて巨大な足裏を振り下ろす。その圧倒的な質量の前に地面は陥没し、衝撃波が大地を抉り取る。彼女の素足の下で数百人の人間が命を落としたが、彼女は何の実感もわかない。彼女にとっては人間は虫けら以下なのだ。

 彼女は足元に群がる兵士どもの密集しているエリアに狙いを定め、再び脚を振り下ろす。先程よりも広範囲な範囲をなぎ払い、地面にクレーターができた。その威力の前に、地表には巨大な凹みが走り、土砂や岩石などが空に舞い上がる。

 彼女の足に巻き込まれた兵士は衝撃波で吹き飛び、周囲に散らばる大岩の下敷きになって押しつぶされた。まるで蟻の行列を踏み潰すかのように人間を蹂躙していく彼女はもはや、ただそこに存在するだけで周囲に破壊を撒き散らす災害と化していたのだった。


「足踏みだけで壊滅するとは、軟弱なものだ」


 ルナリスはそう吐き捨てると、足元を見下ろす。戦車や装甲車たちは、彼女の巨大な脚を目の前にしてもなお果敢に立ち向かうことを諦めていなかった。

 だが、彼らの必死の攻撃も彼女には傷一つつけることすらできない。

 人間の1000倍近い体躯を誇るルナリスからしたら、彼らの砲弾など芥子粒ほどの大きさにもならない。そんなものをいくら浴びたところで、痛くも痒くもない。

 住んでいる世界こそ違うが、ルナリスも彼らと同じ戦士であり、武人に対してはそれなりの敬意を払っている。だが、これほどまでに無様な抵抗をされると、その敬意すら失せてくるものだ。


 彼女が歩くだけで、人間は地面に這いつくばることしか出来なくなる。そんな彼女に向かって勇敢に立ち向かうのは構わないが、だからといって敵にすらならないようでは話にならないのだ。

 彼女はただ歩くだけで、人間どもを蹴散らしていく。彼女の行く手を遮る者はみな等しく踏みつぶし、その歩みを止めることは出来ない。一歩足を踏み出すたびに地面は揺れ動き、地響きが起こる。

 まるで地を這う虫けらを踏み潰すかのように簡単に命を奪っていく彼女に対して怒りを覚える者も中にはいたかもしれない。だが、そんなちっぽけな存在の怒りなど彼女には届くはずもない。


 彼女はその圧倒的な力と存在感をもって、ただ淡々と歩んでいく。彼女の一歩ごとに大地は揺れ動き、地割れが起こる。そしてついには大地震まで引き起こしてしまった。

 彼女はただ歩いているだけにもかかわらず、人間どもの必死の抵抗を無情にも踏み潰していく。それはまるで巨大な山がゆっくりと移動しているかのようだ。

 その圧倒的な力の前に、人間は為す術もなく逃げ惑うことしかできない。この巨大な存在を相手にするにはあまりにも無力すぎるのである。


 ルナリスは足元で蠢く人間たちを見下ろしながら嘲笑する。そしてそのままさらに一歩を踏み出すのだった。

 恐れおののき逃げ惑う兵士たちの頭上に、ルナリスの汚れた足裏が掲げられ、空が彼女の脚裏いっぱいに埋め尽くされた。その巨大な足裏が、まるで小さな山のように地面に影を落とす。それはまさに天変地異の光景であった。


 そのまま一気に脚を振り下ろしてしまえば、その瞬間に大地が大きく揺れ動き、衝撃によって大地震が発生する。その衝撃は凄まじく、辺り一面を更地にするほどの威力だった。

 その場にいた戦車は一瞬で板切れと化してしまい、兵士たちも地面と同化するまでに圧縮され、その肉体は血煙となって消し飛んだ。

 後には、まるで隕石が落ちたかのように巨大なクレーターが出来上がり、その形はルナリスの足形そのままだ。


 こうしてルナリスは歩いただけで、この世界最強の地上軍を壊滅させてしまった。

 彼女は生き残りがいないよう、執拗に念入りに歩き続けた。戦車やトラックなどの影に隠れていた生き残りを徹底的に踏み潰していった。

 それは、まさに一方的な蹂躙劇であった。

 人間が何人集まろうとも彼女にとっては小さな存在に過ぎない。人間のちっぽけな営みなどまるで無意味であり、何も変えることができないのだということを彼女自身が証明して見せたのだった。


◇◆◇


 ルナリスは、侵略軍が上陸して占領している都市へと向かっていた。都市に向かう先には平野部が続いており、彼女の目に留まるようなものは何一つなかった。だが、彼女の目に留まらないだけで、その周辺には小規模な町がいくつも点在しており、それぞれを高速道路や鉄道が繋いでいた。


 地平線から巨大な巨大少女が現れると、町の住民からもその存在を確かめることができた。

 その巨人は、まるで巨大な壁のようにも見え、それはまさに天を突くような光景であった。

 町に迫りくる巨大少女はまるで山が歩いているかのようで、その足取りは大地を揺るがし、一歩ごとに震度6以上の大地震を発生させていた。しかもその一歩は500mを超えるほどの大きな歩幅を持っており、瞬く間に町の近くにまで到達してしまった。

 その巨大な怪物の影に覆われた人々は、あの巨人に踏み潰されまいと、慌てて避難を開始を始めていた。


 一方の巨大少女は特に意図することもなく、その歩みを止めることはなかった。ただ黙々と前進し続けるだけだ。

 彼女にとってみれば地表の人間など道端のアリに等しい存在であり、彼女が歩いただけで人は簡単に死に絶えるのである。

 少女が町を通るたびに大地は激しく揺れ動き、轟音が鳴り響き、一歩ごとに数十から数百の建物が粉砕され、踏みつぶされる。それはさながら人間どもが築き上げた文明という巨塔が、無慈悲にも巨大な足で叩き壊されていくような光景であった。


 そして彼女の一歩は、その衝撃だけで大地に地割れを起こし、大地震を引き起こし、踏みつけを免れた家屋も彼女の足音によって崩壊していく。

 彼女はただ歩いているだけで、その圧倒的な質量と重量によって大地が震えるのだ。

 今まさに、彼女は郊外の小規模な駅と住宅地を備える町に足を踏み入れていく。

 影の中には、避難している住民の姿も見えるが、彼らに逃げ切る時間は与えられていない。


 多くの人間が逃げ惑う中、彼女は容赦なくその足を振り下し、建物を粉砕する。

 彼女が脚を振り下ろすたびに、周囲の建物は倒壊し、瓦礫が舞い上がる。体長2000メートルもある少女からすれば、人間の家屋など石ころ程度の存在でしかない。その圧倒的な質量の前には、人間の造り上げた建築物などまるで意味を成さないのだ。

 白い肌艶の素足が地面に叩きつけられるや否や、大地は震え上がり、地震のような衝撃が周囲に走ると、直下の建物は跡形もなく消え去ってしまった。

 そして何事もなかったかのように、巨大な足が上空に運ばれると、後には巨大な足跡が残され、周囲には巨大な瓦礫の山が築かれた。その有様はまさにこの世の終わりを彷彿とさせるものであった。


 人々は必死になって逃げ出す。しかし少女の脚はその巨大さ故に、彼らが逃げるチャンスがあるわけもなく、ただ巨大少女に追いつかれ、踏み潰されてしまうのだ。

 巨大すぎる彼女は、ただそこに存在するだけで災害そのものとなる。彼女が歩けば大地は激しく揺れ動き、一歩ごとに何千もの人間が踏みつぶされていく。

 彼女の一歩は地震となり、その衝撃で街中を無残にも破壊してしまうのだ。


 雷鳴の様な重い足音が連鎖的に響き渡りながら、町から逃げ出すべく国道へ向かう人間の頭上には、容赦なく巨大な素足が何度も踏み抜かれた。

 人々は悲鳴をあげながらも我先に逃げ出す。

少女の巨足が地面を強く蹴りつけ、そのたびに大地を揺るがすような激しい振動と共に爆音が響き渡る。一歩毎に街全体が大きく揺れ動き、その被害は甚大だった。地面は大きく唸り、巻き上げられた土埃が火山灰の様に舞い上がり、半壊した家屋に降り注いで行く。


 当然のことながら、街の道路には大勢の人々がひしめき合っていて、その巨足の影の下には既に何万人もの命が失われていることも容易に想像できる。

 だが、それでも巨大少女が歩みを止めることはない。彼女の元に広がる町は、その存在すら認知されること無く無慈悲にも破壊されていった。


 後に残るのは巨大な足跡だけであり、そこにかつての街並みは微塵も存在しないのだ。


 彼女の行く先々にある全ての建造物が踏みにじられ、人々はただ逃げ惑うばかり。その巨大すぎる存在感が、まるで神の怒りのように感じられていた。

3.占領都市の終焉

 敵の首都エストラへと進んだ友軍との交信が突然、途絶えた。無線に入ってくるのは意味不明な雑音ばかりだ。

 何が起こっているのか確認しようとするがまともな応答はない。占領した都市のホテルを接収して作られた司令部は、その状況を受けて騒然としていた。

 敵の首都に到達するまであとわずか、というところで突然通信が途絶したのだ。司令部は混乱し、状況確認を急いだ。

 だが、その努力も虚しく彼らは何が起きたかすら理解していなかった。


 だが、さらなる混乱が司令部を襲う。不自然な揺れが襲い始めたからだ。大地が大きく揺れ動き、その振動は周期的に訪れる。

 地震とは違う。地震ほど周期的に激しくはない、むしろゆっくりとした揺れだった。しかしそれは何者かが地面を踏みしめているかのように一定のリズムで襲ってくるのだ。

 その揺れは、次第に大きくなっていく。そしてその振動源が迫って来るのがわかる。


 司令部のホテルは地上数百メートルの高さにある。その窓越しに巨大な少女の姿が目に映った。

それはまさに天を衝くような光景だった……。

 司令部の人間はただ呆然としてその光景を見つめることしかできなかった。彼らの目には、山のように巨大な少女がゆっくりとこちらに歩いている姿がはっきりと見えた。

 だが、まだ巨人はあんなに遠くにいる。なのに、彼女が歩く度に引き起こされる地響きはここまで伝わってきている……。

 彼女の足元では、逃げ惑う友軍と敵国の市民がごっちゃになって逃げ惑っている。巨大少女からすれば人間などアリ以下の存在でしかないだろう。

 彼女が一歩踏み出す度に、逃げ惑う人間たちの頭上に容赦なく足が振り下ろされ、踏みつぶされている。

 そして彼女の足裏は大地に影を落とし、、その圧倒的な質量の前には人間など何の意味もなさないのである……。ビルに逃げ込もうが、森に隠れようが、彼女の前では無意味だ。

 もう手遅れだ。この激しい振動の下では逃げるどころか立っていることもできない。だが、不気味な振動はなおも近づいてくる。


 どおおおん.....


 ひときわ大きな衝撃を伴って、それははっきり分かるほどに近づいてくる。とてつもなく巨大な素足。そこから上空に伸びるしなやかな脚は、今まで自分達が仰いでいたオフィスビルすら遥かに凌駕する高さを誇っている。

 その脚がゆっくりと、しかし確実にこの街へと近づいて来る。


 地形が変わるほどの地響きを立てて、郊外の街を情け容赦なく踏みつぶした。

 その衝撃で地面は大きく揺れ動く。逃げ遅れた人々はなす術もなく、ただ彼女の素足に踏みつぶされるのを待つしかないのである。

 同胞たちが虫けらのごとく無慈悲に踏みつぶされるのを司令部はただ眺めているほかなかった。その巨大な素足はあらゆる文明の存在を粉砕していく。

 もはやこの少女は天災だ……人間が立ち向かえるような存在ではないことを思い知らされるのだった……。


 轟音と大地の唸りを立てて、大きなビルが次々と呑み込まれていく光景は、まるで終末世界の一旦でも見ているかのような衝撃だった……。

 そしてついにはこの街にも彼女の恐ろしい脚が迫ってきた。

 そして巨大な素足が間近に見える位置まで来た。


どおおぉぉん!!!!


 司令部の近くにその脚が着地し、建物全体が激しく揺れる。その衝撃は凄まじく、立っていることさえ困難だ。

 その後ろには踏みつけ跡から立ち昇る黒煙と瓦礫の山が見えた。

 しかし……次第に巨大少女の姿が近づき、その巨大さがより鮮明になっていくにつれ、その恐るべき存在感に背筋が凍った……。

 彼女の足の甲すら人間たちの高層ビルを優に超える。その足裏ひとつで、自分がどれだけ小さく非力かを思い知らされた。

 そんな巨人の影に覆われる恐怖の中、彼女はゆっくりと歩を進めているようだ……。


 彼女の巨大な素足が振り下ろされた瞬間、凄まじい衝撃が地面を覆い尽くし、土煙が噴煙のごとく天高く舞い上がる。

 街のあちこちで高層ビルが倒壊し、道路に亀裂が走る。

 土煙が収まり視界が開けると、そこには巨人の足があった。見上げるほど巨大な足首から先しか見えないが、それが恐るべき大きさであることは明白だ。

 そしてなにより恐ろしいのはその脚の大きさだった。2,000メートルは優に超えるだろうその巨体を支えるには充分なサイズのはずだ。


 司令部がおかれたこのホテルも世界有数の高層ビルに違いないのだが、彼女の巨大な脚に比べれば、その足首よりも少し高い程度の高さにしかならない。

 その大きさは人間の常識をはるかに超えている。もしこの足が一歩踏み出したらこの街はおろか周辺地域まで被害が出てしまうだろう……。


 まさに巨大少女が一歩歩くだけで災害と化してしまうのである……!

 そしてついには、その巨大な脚がゆっくりと持ち上げられた。彼女の素足が天高く突き上げられる。

 その影に司令部のビルはすっぽりと隠れてしまう。都市の上空は、薄汚れた巨大な脚裏が覆い尽くし、地上を覆い尽くす影を生み出した。

 その影の下では人類という矮小な存在がただ踏みつぶされるのを怯えながら待つことしかできない。もはや我々に抵抗する術はない……。

 そしてついに巨人の素足が大地に向けて勢いよく振り下ろされた。ものすごい速さで地上に落ちてくる巨大な素足……。

 それはまるで隕石が衝突したかのような衝撃を伴って地面に直撃する。アスファルトの路面が砕け散り、都市全体に大きな亀裂が走る。その衝撃でビルは崩壊し、地響きとともに街が崩壊していく。

 そしてついには司令部の目前にまで巨狼が近づいてきたのであった……。


◇◆◇


 ルナリスは敵の上陸してきた港湾都市に足を踏み入れていた。占領された港町には、大勢の人間たちがひしめいていた。そしてみな彼女の姿をみて怯えていた。

 ルナリスの視界一面には見渡す限り人間の群れがいた。港町全体が埋め尽くされているといっても過言ではないほどに多くの人間がいたのだ。その規模はまさに圧巻だった。街以外からも巨狼の少女から避難してきた市民が、続々と流入してきているようだった。

 だが、そんな人間どもの事情など彼女にとっては無意味なことだった。この街に侵略軍の拠点があるのならば、その建物を探し出して制圧するのが最優先事項だ。

 ルナリスの契約は侵略軍の殲滅であり、その目的のためにはこの街にいる無関係な人間が幾ら犠牲になってしまっても構わないつもりでいる。


 彼女はゆっくりと歩を進め、その巨大な素足で街を踏み荒らし始めた。足元では逃げ惑う人間たちの悲鳴が聞こえてくるが、彼女には何の感情も湧かない。

 ただ淡々と、まるで虫けらを踏みつぶすかのように足を進め、建物を粉砕し、道路を踏み砕き、瓦礫の山を築き上げていく。


 ルナリスは道路を無視し、建物を素足で踏み潰しながら、大通りをまっすぐ進んでいく。道に沿って歩いたところで、人間が作った道路などでは、彼女の巨大な足は当然収まりきらずにはみ出てしまう。はみ出た小山サイズの素足の裏で通りに面した数々のオフィスビルが巻き込まれ、踏みつぶされていく。


 一歩ごとにその足元で幾つものビルが蹴り崩され、何人もの人々が踏みつけられていく。

 足元をちろちろと逃げ回る小さな人間を気にすることなく悠然と歩く、その圧倒的な質量と質量の前には、人間など何の意味もなさない。ただその巨大な足跡が刻まれるだけだ。大通りを無視して直進する彼女の歩みが、道沿いのビル群を瓦礫の山へと変えていく。

 足元を歩くちっぽけな虫けらどもを踏みつぶすことに何の躊躇もない。敵を排除することが契約であり、それが彼女の存在意義なのだから。

 大通りのすべてを瓦礫の山に変えると、ルナリスはさらに先へ進んでいく。


 暫くして敵の司令部らしき建物が見つかった。それはこの街で一番大きなビルであった。そのビルは、他のビルと比べても明らかに大きく目立つ上に屋上には掲揚台があり、先端には敵の国旗がはためいていた。

 おそらくあれがこの街の司令部に違いないだろう。

 ルナリスはその建物に向かってゆっくりと歩き出した。彼女の一歩一歩に地面が揺れ動く。巨大な素足の下で、通りを逃げ惑う人間どもが次々と踏みつけられていく。彼女の足の裏にいた人々がどうなったのかは言うまでもない。


 そしてついにそのビルの前に辿り着いた。敵の本拠地だけあって、ビルの周りには多くの兵士が警備を固めているが、もちろん彼女の前ではただの虫けら同然であった。


 ルナリスは巨大な金色の瞳で、眼下にそびえる司令部ビルを見下ろした。そのビルは人間の尺度では壮麗で威圧的な構造物だったが、彼女の視点ではまるで積み木のように小さく、脆いものにしか見えなかった。

 ビルの屋上に掲げられた敵国の国旗が、微かな風に揺れている。彼女の吐息だけでその旗が千切れ飛びそうなほど、彼女の存在は圧倒的だった。


「フン……」


 鼻先を軽く歪ませ、彼女はその脆弱な人間どもの砦を侮蔑するかのように見遣った。

 司令部の周囲では、小人たちが蟻のように右往左往していた。彼女が近づくにつれて、彼らの恐怖は頂点に達し、逃げ惑ったり、意味のわからない叫び声をあげたりしている。

 中には銃火器を手にして反撃しようとする者もいたが、その砂粒のような弾丸が彼女の皮膚に当たっても、痛痒すら感じられない。


「愚かな……」


 ルナリスはつまらなそうに鼻を鳴らし、右足をゆっくりと持ち上げた。その足裏はビルの高さを軽く超える巨大さで、空を覆い尽くす影を地上に投げかけた。彼女の脚は太陽を遮るようにそびえ、地上の人間には巨大な暗闇が落ちてきたように感じられた。


「これで一つ片付いたな……」


 彼女の視線は混乱している港湾都市の中心部へと移った。

 そこには、敵軍の残存部隊が必死に撤退を試みている姿があった。彼らはルナリスの破壊の規模を目の当たりにし、完全に戦意を喪失していた。戦車や装甲車は全力で後退し、兵士たちは武器を投げ捨てて逃げ惑っていた。

 だが、ルナリスにとって、彼らの逃亡は無意味な足掻きに過ぎなかった。

 彼女は一歩踏み出す。その一歩だけで、彼女の巨大な素足が大地に沈み込み、地面に巨大な足跡が刻まれた。

 逃げ惑う兵士たちは、彼女の足音による地震で転倒し、這うようにして逃げようとした。だが、ルナリスの歩幅はあまりにも広く、彼女が数歩進むだけで、敵軍の後退部隊は彼女の足元に飲み込まれた。


「ふん、脆いものだな」


 ルナリスは鼻で笑うと、ゆっくりと敵兵士が集まっている大通りの上に素足を掲げる。ビルとビルに挟まれた通りは、都市の目抜き通りであり、敵国の兵士だけでなく大勢の市民も混じって、通りを埋め尽くしていた。

 しかし、ルナリスが足を上げた瞬間、大通りに居合わせた人々は、その足の大きさに圧倒された。

 ビルよりも巨大な素足。その巨影が大通り全体を覆い尽くし、街の人々はその影の中で恐怖に震えた。

 大通りに居合わせた人々は、そのあまりにも巨大な足の爪に視線を奪われて身じろぎすることすらできない。巨獣のような素足の威圧感を前に、皆一様に呆然とし、言葉を発する者さえいなかった。

 しかし彼女が一歩を踏み出せば、状況は一変する。

 彼女は通りに足を下ろし、大地ごと通りを粉砕した。その衝撃はすさまじく、街並みは完全に崩壊し、多くの建物や車両が瓦礫と化して、その場にいた兵士だけでなく、無関係の一般市民でさえ、一瞬で肉片と化した。

 彼女はただ歩くだけで都市を破壊したのだ。普通の人間にとって、彼女に対抗できる手段などないに等しいだろう。


「逃げても無駄だ」


 ルナリスはそう呟き、瓦礫と化した通りの上を通過していく。彼女にとって、この街も市民も関係ない。道端の石ころか、虫けらのようにしか認識していないだろう。

 契約にあった敵を踏みつぶした際に、運悪く巻き込まれた矮小な存在であり、特に思うことはない。彼女の仕事は契約通り、敵軍を殲滅することであって、その過程での犠牲など知る由もないからだ。

 彼女はまるで地を這うアリを踏みつぶすかのようだ。どんなに人が多かろうと彼女の足を止めるつもりは毛頭もない。

 巨大な足を持ち上げると、敵を探すかのように視線を動かした。巨大な金色の瞳が動くと、巨大な素足も一緒に動いて、足の裏にまとわりついていた砂や瓦礫が、飛び散って街全体に降り注ぐ。その瓦礫の雨は市民たちにとって恐怖の象徴となっただろう。

 彼女はそんな無辜の市民たちの様子を気にするでもなく、次に下ろす場所を決めた。


「そこにいたか、虫けらめ」


 彼女が視線を向けた先にいたのは、敵の敗残兵の集団だった。

 彼らは必死に逃げていたところを、ルナリスに見つかってしまったようだ。彼らは恐怖で顔を歪ませながら、必死に逃げようとした。

 だが、その努力も空しく彼らの運命は決した。彼らがどんなに走ったところで、300メートルもある巨大な脚からは逃げられない。

 空を覆いつくす広大な足裏が徐々に近づき、大きくなっていく。

 運悪くその場にいた市民たちも兵士たちに呪詛や怨嗟の声を投げかける暇もなければ、逃げる時間もなかった。ルナリスが素足を下ろすと、足裏は地面と接触した。


 ずずううぅぅんんん!!!

 その瞬間、大地が揺れて瓦礫が飛び散る。巨大な質量から発せられるエネルギー量は凄まじく、足の先から数十キロ先まで大地を揺るがし、周囲一帯に巨大な爪痕を残した。

 足裏が地面に接触した衝撃だけで、周囲にいた兵士や市民は吹き飛ばされてバラバラになった。


「ふん、この程度か。期待はずれだな」


 ルナリスは呆れたように言った。彼女の視線の先には、瓦礫の下敷きとなった兵士や市民など無力な存在がいた。彼らはただ逃げ惑うだけの虫けらであり、彼女の敵ではなかったのだ。

 彼女はそのまま足を上げ、再び逃げ遅れた兵士を踏みつぶしていく。その一歩ごとに大地は揺れ動き、建物は崩れ去り、多くの命が奪われていく。

 しかし、彼女がどんなに破壊を繰り返してもルナリスの心には何も響かなかったし、何も感じなかっただろう。彼女にとっては文字通り、淡々と道端の虫けらを踏みつぶす感覚で仕事をこなすだけだった。


◇◆◇


 一方、エストラの地下施設では、ルナリスの破壊の報告が次々と届いていた。政府高官たちは、彼女が敵軍を壊滅させたことに安堵する一方、彼女の制御不能な力を前にして新たな恐怖に震えていた。

 スクリーンには、望遠カメラの映像を通じて映し出されたルナリスの姿があった。2000メートルの巨体が、敵の占領地へと向かって進む様子は、まさに神話の再現だった。


「大変なものを呼び寄せてしまったのかもしれない……」


 一人の高官が震える声で呟いた。ルナリスがエストラを破壊しながら進んだ事実は、彼らの心に重くのしかかっていた。

 彼女は確かに敵軍を壊滅させたが、その過程で自国の都市も壊滅的な被害を受けていたのだ。彼女の「戦」に巻き込まれた市民の犠牲者は、すでに数十万人に上ると推定されていた。

 議長は額の汗を拭い、自身の判断に悩んでいた。当初は救世主として呼んだ存在だったが、彼女の力は予想を遥かに超えていた。

 あの巨神をこのまま野放しにすれば、敵国を滅ぼした後、エストラ自体が彼女の次の標的になるかもしれない。だが、彼女を止める方法は存在しない。禁断の召喚術には、召喚者を守るための制御術が含まれていなかったのだ。


「我々にできることは…祈ることだけだ」


 議長の言葉に、高官たちは沈黙した。彼らは、自分たちが解き放った神狼が、救世主であると同時に破壊神でもあることを、ようやく理解し始めていた。

4.海を越える巨神

 ルナリスはその後も街を破壊し続け、残存兵を見つけ次第踏み潰していたが、やがて敵部隊は残らず踏み潰されたようだった。

 港町はすでに廃墟と化していた。かつての繁栄を誇った建物は瓦礫の山となり、道路はひび割れ、街全体は静まり返り、人の悲鳴さえ聞こえない。

 ルナリスの巨体だけがまるで動く山脈のように、街の全てを支配している。

  彼女は足元の瓦礫を払い除けながら周囲を見渡した。

 この惨状を作り出したのは紛れもなく彼女自身の行動だが、その結果に対する罪悪感や哀れみといった感情は一切浮かんでこなかった。

 ただ、淡々と与えられた仕事を遂行しただけ。

彼女はただ単に自分の任務を果たしたに過ぎず、その行為に特別な意味など見出してはいない。


「これで全部か?」


 彼女はそう呟きながら、周囲を見渡した。足元には無数の瓦礫と死体が散乱しており、その数は数え切れないほどだった。


 しかしその時、彼女の背後で小さな物音がした。

 僅かな光と刺激だったが、彼女の鋭い聴覚はその微かな気配を察知した。

 彼女にはわかっていた。それが生き残った敵の僅かな抵抗だったという事を。

 攻撃のもとをたどっていくと、そこは人工の海岸線に設けられた港であり、その場には侵略してきた敵国の艦船がいくつも停泊していた。


 おそらく、彼らはこの隙をついて反撃の機会をうかがっていたのだろう。だが、それは無意味だった。

 彼女は攻撃されようとも意に介さないし、むしろ彼女を迎撃しようと試みた努力と勇気を讃えるが、彼らは次の瞬間には無残に踏み潰されて肉塊へと姿を変える運命にあったのだ。


「……まだそこにもいたか」


 彼女はそう呟くと、ゆっくりと足を踏み出した。敵が海にいようが関係ない。

 彼女の一歩は大地を揺るがし、海に足を踏み入れればその水面も大きく揺れた。海水は彼女の巨大な素足によってかき混ぜられ、泡立つ水しぶきが上がった。

 彼女はそのまま海の中へと足を踏み入れていく。

 水深は十分あったが、彼女には問題ない。大型船が入港できる深さであっても、ルナリスにとっては足裏を湿らす水溜りのようなもの。

 深さ100メートルの海域さえ、彼女の足首ほどの水位しかない。

 彼女が足を踏み入れる度に海水は大きく揺れ動き、津波となって港湾施設を飲み込んでしまう。

 その光景を見て港の岸壁に留まっていた貨物船が慌てて外海へ逃げ出そうとエンジンを全開にした。


「逃げても無駄だ」


 海に浮いている艦船に徐々に近づき、手を伸ばせば届きそうな距離になったところで、彼女はふいに立ち止まった。

 足元にある小さな船を見下ろすルナリス。そこには通常の輸送船に加え、敵の軍艦もいくつか見える。中心に位置する船は一隻だけ抜きんでて、巨大な軍艦だった。おそらくあの船には、敵の指揮官がいるに違いない。


 彼女は船のひとつを無造作に掴むと、そのまま持ち上げた。それは全長60メートル以上はある巨大な輸送船であり、中には多数の人員と大量の物資が積まれていたはずだ。

 だが、そんなことは彼女にとってはどうでもよかった。彼女はただ目の前の船を破壊するだけだ。彼女は掴んだ船を握り締め、力を込めた。

 鋼鉄でできた巨大な船体が軋みを上げる。亀裂が走り、崩壊していく甲板や柱を見て、乗組員たちは絶望の声を上げた。が、彼らは彼女の手の内から逃れることはできなかった。


「脆いな。所詮虫けらの船か……」


 彼女はそう呟くと、輸送船をより強く握りしめると、白く長い指が輸送船の船体にめり込み、船体には亀裂が入った。そしてそのまま、輸送船をアルミホイルのように握り潰してしまった。輸送船はルナリスが握った部分が、くの字に折れ曲がり、そのまま真っ二つに割れた。

 真っ二つになった輸送船は、バラバラになって海面に叩きつけられ、巨大な水柱を上げて沈んでいく。


「ふん、他愛もない」


 ルナリスはそう呟き、次の船へと視線を移した。彼女の金色の瞳は獲物を狙う獣のように鋭く光り輝き、その巨大な手もまた獲物に狙いを定めているかのようにゆっくりと動いた。

 彼女はそのまま手を伸ばし、2つ並んだ大きな手を敵艦に向けて伸ばし、その手で戦艦を掴み上げたのだ。

 膨大な排水量を誇る海上の要塞は、巨人の手に掴まれたまま宙に浮きあがり、その船体は大きく撓んだ。船は持てる砲を総動員して抵抗を試みるも、それは全く無意味だった。

 彼女は掴んだ戦艦をそのままに、戦艦から放たれる砲撃を一身に受けながら、ビクともしなければ、傷ひとつ負うこともない。

 船内は言いようのない絶望感と恐怖で満ちていた。巨大な船体と砲を備え持つ戦艦も、巨人の手にかかればただの鉄屑にすぎない。彼らは自分たちが絶対に勝てない存在を前にして、為す術もなく立ち尽くすしかなかった。


「どうした?この程度で終わりではないだろう?」


 彼女は静かに、しかし力強い言葉で戦艦に問いかけた。戦艦は彼女の問いかけに応えるかのように、船体が歪み始める。

 このままではいずれ、完全に崩壊してしまうだろう。そうなれば当然、艦内の乗員も無事では済まないはずだ。


「さあ、どうする?ここで死ぬか、それともまだ抵抗するか?」


 彼女はそう問いながらも、戦艦を握る手に力を込めていく。戦艦はミシミシと軋みを上げながら潰れていき、その巨大な船体が圧縮されて潰れていく音が艦内に響いた。

 船の中には彼女の問いかけに答えられるものは誰一人としていなかった。彼らはただ、この絶望的な状況を受け入れるしかなかった。


「ふん、やはり虫けらの船か」


 ルナリスはそう言い放つと同時に、戦艦を握りしめ、引きちぎる様にして破壊してしまった。船体はまるで紙切れのように引き裂かれ、バラバラになって海へと沈んでいく。

 戦艦が破壊されると、船内に絶叫が響き渡る。しかし、それもほんのわずかな間だけであり、次の瞬間には悲鳴や命乞いの声も途絶えた。


「……次だ」


 つまらなさそうに呟くと、彼女は次の獲物を求めて歩き始めた。

 彼女の行く手には、まだ多くの船が浮かんでいたが、小舟には目もくれずにただひたすら大きな船を選んで歩いている様子だった。

 大量の海水を押しのけて海原を突き進む巨大な太ももは、全長60m近い船を次々と押しのけ、そしてかき乱されて生まれた渦の中で転覆させ、飲み込んでいった。

 ルナリスはそんな足元の些細な出来事になど気づくことはなく、ただ一心不乱に前へと進んでいった。


「ほう、これなら少しは楽しめそうか……?」


 ルナリスが視線を落とす先にいたのは、艦隊の中心を担っていた巨大空母。全長300メートルを超える巨船もルナリスの体長の半分もなく、偉大だったはずの船体も彼女が一歩踏み出すごとに生まれる大波で大きく揺れて、水に浮かべた木の葉のようだった。


「なるほど……これは面白そうだ」


 彼女はそう呟き、空母へと歩みを進める。巨大な素足で海を突き進む彼女の姿は、まさに自然界の王そのものの姿だった。その一歩ごとに、海原は波立ち、甲板に駐機していた艦載機たちはバランスを崩して海面へと落ちていく。

 彼女はそのまま空母を跨ぐと、ゆっくりと腰を落として座り込む姿勢になり、上から空母を押しつぶすような形で乗り込んでいった。


 体長2000メートル、体重100メガトンクラスのヒップが、海原に君臨する姿はまさに圧巻だった。

 ルナリスの体重がかかると同時に、巨大な質量が生み出す桁違いの力によって海面が激しく揺れ動き、空母の船体が軋みを上げて大きく沈むのがはっきりと分かった。


「どうだ?こうやってみると少しだけ面白いだろう」


 ルナリスは口角を吊り上げて嘲ると、飛行甲板に駐機していた戦闘機を手に取り、持ち上げてみて弄んで遊んだあと、邪魔だと言わんばかりに海上に捨てていく。

 戦闘機を弄ぶのに飽きたのか、彼女は再び空母へと視線を向けると、今度は腰を大きく動かして空母をグイグイと揺らしはじめた。彼女の動作に合わせて激しく上下する空母。

 彼女の下敷きになった空母は巨大な尻肉が甲板に押し付けられ、船体に大きな亀裂が入り始める。

 ルナリスの尻が生み出す重量と振動により船体は限界を迎えつつあったが、それでもなお彼女は腰を動かすことを止めようとしない。


「ふふっ」


 彼女は妖艶な笑みを浮かべると更に尻を強く押し当てていく。と、ついには船体を引き裂きながら巨大な尻が空母内部へと侵入していった。そして彼女が少し左右に腰を振っただけで強烈なGがかかり、船体がバラバラに砕け散ってしまう。

 爆発的に溢れ出した海水が巨大な水柱となり、周辺の海域に猛烈な勢いで打ちつけていった。衝撃は空母だけでなく周囲の艦艇にも伝わり、付近の艦艇も大きく波立つ。


「ふむ、虫けらの船は椅子にもならないか」


 ルナリスは笑いながら、空母から立ち上がり尻についた汚れを払うようにしてパンパンっと手を叩いた。彼女の巨大な尻には傷一つ無く、周囲の景色は一変していた。

 巨大なヒップで押しつぶされボロボロになった空母の残骸が残された海域と粉砕された船体や漂流する金属片。それらは全て彼女によって蹂躙された証拠だ。

 だが彼女にはそれを気にする様子はまったくなく、ただ楽しそうに微笑んでいた。


「くく、そろそろ終わらせるとしようか」


 ルナリスがそう宣言すると、一隻の輸送船を捕まえると、目の前まで持ち上げ、船の内部を観察するように顔を近づけた。

 20メートルは超えているであろう、金色の巨大な瞳が輸送船を睨みつける。輸送船の乗組員たちは、恐怖のあまり声も出なかった。彼らはこれから何が起こるかを想像し、絶望に打ちひしがれていた。

 ルナリスはそのまま、輸送船を自分の口元まで運んでいき、大きく口を開いた。その中にある歯は鋭く、まるで肉食獣のそれだった。

 輸送船を丸ごと口に放り込めそうに見えるほど大きな口が、ゆっくり開かれる。

 口の中からは濃厚な匂いが立ち込め、その香りを嗅いだ瞬間、彼らは自分が食べられると確信した。

 しかし逃げ場のない船内で恐怖に震えることしかできない彼らは、ただ死を待つことしかできなかった。

 だが、彼女は輸送船を捕食するつもりはなかったのだ。


「貴様らにチャンスを与えてやる」


 ルナリスはそう言って舌舐めずりをした。その表情には愉悦と嗜虐心がありありと浮かんでおり、見る者を怖気させるものだった。

 その巨躯に似合わないほど小さな唇から漏れる艶のある吐息。それはまるで捕食者に捕らわれれた小魚の最後の光景に近しいものだったに違いない。

 ルナリスは妖艶な笑みを浮かべて輸送船の中にいる者たちに語りかける。


「貴様らの首謀者の場所を答えれば、命だけは助けてやるぞ」


 彼女は船の中にいた乗組員たちに語りかける。彼女の言葉は、海原を震わすほどの大音量で響き渡り、彼女の巨大な唇が動くたびに空気が振動し、艦艇がビリビリと震えた。


「お前たちの国はどこにあるのかと聞いている」


 彼女は語気を強めた。乗組員たちは恐怖に震えながらも、答えないわけにはいかなかった。

 彼らは、自分たちの母港や、自分たちの国はこの港からどの方角にあることなどを洗いざらい答えた。

 その答えを聞いて、彼女は満足げにうなずいた。そして輸送船を海面に下ろすと、ルナリスは何も言い残さず、再び新たな獲物を求めて海を進み始めたのであった・・・。


◇◆◇


 エストラと海を挟んだ向こう側にリザリア公国がある。

 リザリアとエストラ、両国は長年にわたって争いを繰り広げていた。しかし、今回の戦争では今までとは全く状況が違う。

 リザリアの圧倒的な科学力と軍事力を前に、エストラの劣勢は明らかであった。敵本土に上陸したリザリア軍の部隊は次々と敵の守備隊を壊滅させ、首都へ向かって侵攻を続けていたが、敵の首都周辺に巨大な少女が現れ自体は急変した。


 それは体長2000メートルを超す怪物だった。絹のように白い剛の肉体に白銀の髪がよく映える。金色の双眼は大きな月を思わせる美しさがあった。

 巨大な怪物はリザリア軍に襲い掛かり、瞬く間に上陸した部隊を蹴散らした。

 敵も味方も見境なく蹂躙するその姿はあまりにも凄惨であり、生存している兵士はほとんどいないという通信を最後に上陸部隊からの連絡は途絶えてしまった。


 それから数時間後、公国の領海内を哨戒していた巡洋艦は、ソナーに不自然な反応を見つけた。巨大な何かが船の直下にある。

 音紋解析を行うと、それは生物のものに近いが、クジラでもない未知のものだと判明した。信じられないが、その大きさは10kmを超えているというのだ。

 ソナーの故障を疑いつつも、その音の発信源が巨大な生物の可能性を捨てきれず、艦長は正体不明の危険物と判断して全速離脱を図ったが、時すでに遅く謎の巨大生物がすさまじい速度で浮上して海を割り、そのまま海上に姿を現そうとしている。


 巨大な何かが大量の海水を押しのけて海を盛り上げていく。

 水面は荒れ狂い、巨大な海獣が姿を現す瞬間のようにうねっていた。

 そして、ついに海面が破裂するように割れて姿を現した。

 それは、あまりにも巨大だった…。海上に現れたものを見て、彼らは皆息を飲む。戦艦よりも巨大な体躯を持ち、頭上を見上げてしまうほどに大きい。

 まるで山のように……いや、山よりも巨大な体長20,000メートルクラスの大巨人が、海上に姿を現したのだった……。


 突如現れた化け物から逃れるべく、必死の回避運動を行っていた巡洋艦は衝突は免れたものの、不幸なことにその時はまだ海面は平常に戻っておらず、艦のバランスは大きく崩れてしまう。

 巨大な海水の柱とともに、傾斜した甲板からは何人もの海兵が振り落とされていく。

 彼らが次に目撃したのは、視界を埋め尽くす程に広く、天高く聳え立つ巨大な塔。

 激しく揺さぶられる船の上でそれが一体何なのか、彼らにはすぐに理解できなかったが、ようやく理解できた。あれは巨大な脚だ。

 巡洋艦の倍以上の大きさを持つ純白の肌を持つ巨大な足。

 海面から数百メートルの高さに膝が君臨し、太ももの太さだけでも6,000mにも及ぶ大きさに加え、美しい流線型の輪郭を持ち、優雅な曲線を描いていることから女性の足であることがわかる。


 だが、それを理解できたとしてどうしろと言うのだろう。

 彼らにとって今の状況はすでにどうしようもないレベルに達していた。

 巨大な足が生み出す水流は尋常ではなく、巡洋艦の大きさを嘲笑うサイズを持つ巨人の足から発生する水流はとてつもない威力であり、とても耐えられるようなものではない。

 そしてさらに悪いことに、海と空を埋め尽くさんばかりの巨体が彼らの上空を埋め尽くしながら、今にも覆い潰さんと迫ってきていたのだった……。


◇◆◇


 海を越えた敵の本土に向かうため、ルナリスはその巨体をさらに巨大化させる。それまでも十分すぎるほどの巨体は先程の10倍に増大し、今や体長20,000メートルサイズの超巨大な姿となっていた。

 巨大化すれば深海の海底に足をついて、歩くこともできる上、その巨大さ故に大海をひと泳ぎで横断することも可能になる。

 海の中を泳いで移動するほうが早いと考えたルナリスは、しばらくの間、海を進んでいたが陸地が近くなったところで、海面に出ることにした。

 もうここまで来れば、海底に足をついて歩いた方が早い。


 ルナリスは海底に足をつけて、海面を突き破りながら立ち上がった。ルナリスが姿を現した瞬間、天地そのものが彼女の存在に屈するかのように震えた。

 20,000メートル。もはや彼女の姿は人間の想像を遥かに超え、雲を突き抜け、天にまで届くほどの巨体だった。

 人類が作り上げた最大級の建造物どころか誰もが敬う最高峰の霊峰ですらその巨躯に及ばないほどに巨大過ぎる美女を前にしたら人は畏敬の念を抱かざるを得なくなるだろう。

 海水で濡れた白銀の髪は陽光を浴びてキラキラと輝き、濡れた柔肌は陶器のように白く滑らかである。

 ルナリスは胸を張るようにして上半身を持ち上げて伸びをする。その身体の動きだけでも十分に世界中に影響を与えてしまっているほどで、その一挙手一投足には凄まじい迫力があり圧倒されてしまうほどだ。

 彼女はその巨大な存在を見せつけるようにして悠々と歩みを進めているが、その巨体から放たれている威容はまさに神話的存在であるかの如く感じ取れる。


 彼女の足元では、海が狂ったようにうねり、津波が生まれていた。水深数千メートルの海洋でもルナリスには浅すぎるようだ。

 20,000メートルという圧倒的で壮大なスケールから生まれてくる力は凄まじく、彼女が歩を進める度に大災害規模の天変地異が起きていた。


「この辺りか……?」


 ルナリスが見据えた先には先程聞いた敵国の港街が見える。しかし、彼女の目には豆粒程度しか見えない。

 ここからはまだまだ相当な距離があるようだがルナリスにとってはなんの障害でもない。少し歩けばたどり着けてしまう。それだけの事だ。


 彼女が一歩を踏み出し、海底を踏みしめれば、その一歩毎に衝撃波が発生し地盤沈下が発生して、巨大なクレーターが生まれ、周辺の海域は津波に襲われたかのように揺れ動く。

 彼女の足裏は人間の都市を飲み込めるほどの大きさで、その歩幅は優に7kmを超えるのだ。その一歩一歩のたびに生まれる衝撃は、遥か彼方の大陸を震撼させる程だった。


 そんな彼女が進む先には数多の船舶が存在していた。

 もちろんその殆どは商船なのだが一部武装した軍艦も存在している。

 とはいえ、これらはすべて彼女の眼中には入らない小さなものばかりであるため大して興味も湧かない。

 そのため特に意識せずに歩いて行ったもののそれでも彼女と比べればかなり小さい彼らは、大海を割って進んでくる大円柱の太ももにぶつかり、粉砕されてしまいそうになっている。

 無論そのことに気付いたとしても彼女は何も思わないし、むしろ邪魔だとすら感じるので敢えて避けるつもりなど無い。


 リザリア公国の海軍は、誇り高き戦艦や空母を揃え、圧倒的な軍事力を誇っていた。だが、ルナリスの前では、それらの兵器はまるで子供のおもちゃ以下に過ぎなかった。彼女が海を進むたび、艦隊の隊列は崩れ、船員たちはただ逃げ惑うことしかできなかった。

 ある者は甲板で膝をつき、祈りを捧げ、ある者は海に飛び込んで助かろうとしたが、ルナリスの巨体が生み出す波濤は、そんなわずかな希望すらも容赦なく飲み込んだ。


「ん、これは……」


 ルナリスはふと立ち止まり、目の前に浮かぶ巨大な空母に視線を落とした。

 全長300メートルのその船は、人類の技術の粋を集めたものだったが、ルナリスにとっては手のひらに収まるほどの玩具にしか見えなかった。

 彼女はゆっくりと身をかがめ、巨大な指で空母を片手ですくい取ってしまった。一万倍の巨人に捕まった空母は、手のひらの窪みに溜まった水の上に浮かべられてしまったのだ。


 ルナリスは巨大空母を手の中で弄びながら、金色の瞳で眺めていた。


「ここまで小さいと、見てるだけで哀れになってくるな」


 彼女の声は、神の審判のように冷たく響き、指にわずかな力を込めると、空母の船体は一瞬で圧縮され、金属の悲鳴とともに粉々に砕けた。破片は海面に降り注ぎ、巨大な水しぶきを上げた。

 ルナリスはつまらなそうに手を振ると、破壊した空母の残骸を海に投げ捨て、次の目標を探すように視線を動かすと、海を越えたリザリア公国の本土が、ルナリスの視界に映った。


 そこには、リザリアの首都ヴェルミオンが広がり、エストラに匹敵する巨大な都市がそびえ立っていた。

 だが、ルナリスにとっては、どの都市も同じだった。人間が作り上げたものは、彼女の足元でただの瓦礫に変わる運命にあるのだ。


 彼女は目的地を確認すると、再び歩を進め始める。1万倍の巨人となった彼女にとって、陸地までの100キロの距離はわずかにすぎない。

 ルナリスは誇らしげに前髪をかきあげながら歩き続ける。

 彼女の脚が引き起こす巨大な波は海岸線を襲う津波となってリザリアの海岸線を破壊していった。

 波に飲み込まれた人々は抵抗する暇もなく海の藻屑となり、沿岸の港湾都市は一瞬で水没し、ビルや道路が洗い流されてしまった。

5.欲望の目覚め

 それでも公国首都に近づくにつれ、巨人の足取りはますます力強くなり、地面が悲鳴を上げるように揺れ動いた。

 彼女が歩くたびに大地は揺れ動き、建物が次々と崩壊していった。その姿はまさに歩く天災であり、ヴェルミオンの住民たちは絶望に打ちひしがれていた。

 国の政治的・経済的な中心地として栄華を誇っていた大都市がルナリスの出現により、その栄華が一瞬にして崩れ去ろうとしている。


 ルナリスは、足元を見つめながら嘲笑を浮かべた。

 一万倍に巨大化したことで彼女の視野は劇的に広がり、今やリザリア全土が視界に入るほどだった。しかし、それでも彼女の興味を引くものは何もない。

 人間たちの巣に多少の違いがあっても、それが取るに足らない生き物たちの巣であるという認識に変わりはないのだ。

 彼女は足元の人間たちを鼻で笑う。


「これだと本当に砂粒みたいだな……」


 そう言うと同時に彼女は上陸する為、片足を振り上げてヴェルミオンへと勢いよく踏み込んだ。


 ズドォオオオオッ!!

 地盤が崩れる轟音と共に激しい砂塵が舞い上がる。

 それはヴェルミオンの中心部を貫通する巨大なクレーターが生じた瞬間だった。大地が大きく振動し建物群は根こそぎ吹き飛び跡形もなく消え去る。その様はまさしく圧巻の一言に尽きるものだった。

  踏み潰した足裏の感触を感じながらルナリスは愉快そうにして笑った。


「良い気分だ。足の裏でお前達の巣が潰れているのを感じるぞ」


 整然と立ち並んでいたビル群は彼女の足元で次々と瓦礫と化し、道路は彼女の巨足で引き裂かれた。公園は踏み潰され、川は彼女の足によって氾濫した。

 ヴェルミオンの人々は逃げる暇もなく、彼女の足に飲み込まれていく。彼らの悲鳴や絶望の叫び声は、ルナリスの耳には届かない。上空2万メートルの背丈が巨大過ぎるゆえに。

 彼女の歩みは止まらない。家や車、低層ビルも超高層ビルも人間も道路も区別なく全てが彼女の巨大な足によって蹂躙された。地面に叩きつけられる音が響くたびに人々は絶望に打ちひしがれ、必死に逃げようとするが間に合わない。


 彼女の足の全長は3,000メートルもあり、その巨大さは足の指の一つだけでも太さが50mを超えているため、高層ビルですら指一本で叩き潰せてしまうほどだ。

 彼女が一歩踏み出すたびに地震のような揺れが起こり、地面は震え建物は崩壊する。彼女が巨大な足を振り上げた際には暴風が巻き起こり、その風圧で建造物が粉々になる程だ。

 そして彼女の素足が着地すると巨大な衝撃波が生まれ、周囲一帯を破壊し尽くす。


「ここが敵の首都か」


 ルナリスはそう呟くと、首都ヴェルミオンのはるか上空から周囲を見渡した。彼女の周囲には小人の建造物が足の踏み場もないほどに敷き詰められている。

 小さいなりにもそれなりの数の高層ビルがあるが、それらはルナリスの巨体には及びもつかないほど矮小で脆い建物ばかりだったが、それでも大都市である証拠なのだろう。

 ルナリスはその小さな都市を観察するかのように見下ろし、自分の巨体と足元の矮小な建物を見比べて、小さく鼻を鳴らした。


「所詮、人間の街などこんなものか……」


 ルナリスの素足の周囲の街は、足をおろした衝撃だけで滅茶苦茶になってしまっていたようだ。

人間たちの小さな建物がみな崩れ落ちてしまっている。そのあまりにも弱々しい姿に思わず失笑してしまう。

 まだ無事な場所に目を向けてよく見てみれば、砂粒のように小さな小人がたくさん動いているのが見える。

 それらはみな慌てふためきながら逃げ惑っているようだ。しかし、ルナリスには到底逃げられるはずもない。なぜならば彼女の素足はそれらの小人の建物を全て押しつぶしてしまうほどに巨大だからだ。

 ルナリスの足の長さだけでも3,000メートル。横幅でさえ、1000メートルに迫ろうかという広大な面積をもち、足の指は一本一本が雑居ビルほどの太さがある。

 そそれに比べたら人は砂粒ほどの大きさしかない。つまりそれだけの圧倒的な差があるのだ。こんなちっぽけな人間たちの街などルナリスの巨大な足にとってはゴミ屑同然であった。


「ふふ……この程度で騒いでるとは情けない。やはり人間とは哀れなものだ」


 ルナリスは足踏みを止める事なくゆっくりと歩き出し始めた。

 その巨体に比べて小人達の街はあまりにも小さすぎる。

 ルナリスはゆっくりとその巨大な足を持ち上げる。彼女の足元にある街はまるで地面に絵が描かれたモザイク画のように見えた。その足を動かすだけで周囲に破壊の嵐を巻き起こせるであろう巨大な存在。

 そんな彼女の視線の先には人々の集まる街がある。そこには小人の生活がある。


「無駄な抵抗をするな……貴様らの命運はすでに尽きているのだから……」


 彼女の言葉と共に巨大な足が振り下ろされた。轟音とともに地面が大きく揺れ動き、ビル群が崩壊していく。

 足の裏が地面に接触した瞬間、凄まじい地響きとともに大地震が起きる。衝撃によって街全体が激しく振動し、建物は倒壊していく。

 彼女の足の指が街を踏み潰すと同時に巻き起こる爆風と砂塵で辺り一面が覆われる。逃げ惑う人々は瞬く間に吹き飛ばされ、悲鳴を上げることすら出来ずにその命を散らしていく。

 そして彼女が足を上げるとそこには瓦礫と化した街が広がっていた。そこには生存者など一人もいなかった。


 すべての命と建造物が消し飛び、代わりに残ったのは霊峰と呼ぶにふさわしい彼女の巨大な素足と、地上からでは足形だと認識できないほどに巨大なクレーターだけである。

 ルナリスの足がもたらす災害は計り知れず、その巨体から繰り出される一撃はまさに天災そのものであった。

 彼女が歩みを進めるたびにその巨大な素足は大地を揺るがし、建物や道路といったあらゆる障害物を無慈悲に破壊していく。


「ただ歩いただけで、どれだけの人間が死滅しているのか……」


 ルナリスはそう呟きながら次なる目的地に向かって歩いて行った。彼女が通った後には何も残らなかった。ただただ無惨にも破壊された街と粉々になった人々だけが残るのみだった。


 彼女の足元に広がる景色はまさに地獄絵図だった。山さえも軽く跨げてしまう巨大な少女。彼女が歩いた後を振り返れば、周囲の地形と比較してあまりにも巨大な足跡が規則的な間隔で刻まれていた。

 足跡の周りでは、土踏まずのアーチで潰されなかった高層ビルが大きく傾き、街路樹は薙ぎ倒され、車は横転しスクラップの山に、人々は吹き飛ばされて瓦礫に埋もれていた。

 恐ろしいまでの惨状、その全てはたった一人の少女によってもたらされたものだった。


「それにしても、この世界の人間は弱すぎるな……。この姿を見たとたんに慌てふためいて、逃げ出すことも出来ずに、踏み潰されるまで身を強張らせることしかできないとは……。まったく面白みの無い奴らだ」


 信じられないほどに強大で圧倒的な敵を前にした人間たちの姿は滑稽そのものだった。恐怖のあまり錯乱したり泣き叫び逃げ惑う有様は見ていられなかった。

 これでルナリスが襲来する前まではこの世界で最強の種族だと自負していたらしいのだから驚きである。

 お前たちなど、自分の前では虫けら同然ではないか。とルナリスは思う。

 自分が息を吹きかければ、吹き飛んでしまうような脆弱な存在。それが人間という生き物だ。

 だが面白いことに人間は己の強さに酔いしれて

自分たちの力が最強だと勘違いしていたようだ。


 それがとても可笑しくて仕方がない。彼らの力は所詮、足元にも及ばないのだというのに……。この程度で最強だと自負するとは愚かすぎるだろう。

 人間は傲慢で愚かで醜くて弱くて情けなくて滑稽で哀れで無力な存在にすぎない。


 ルナリスはそんなことを考えながら、無性に矮小で愚かなこの世界の人間たちに自分たちの脆弱さを思い知らせたくなった。

 彼らの自信に満ち溢れた尊厳や誇りといった物を恐怖と屈辱で歪ませてやりたかった。強者ゆえの愉悦と言ってもいいだろう。


 自分の力ならば、どんなことだってできる。街を壊すのも自由だし、生殺与奪を気ままに行使にすることだってできる。自分の持つ力の差を思い知らせてやりたい気持ちが昂ってきた。


「今からお前たちに私の力を見せつけてやる。せいぜい足掻くことだな」


 弱い相手に自分の力を見せつけるには、どうすればいい?簡単なことだ。群れの中でやっているのと同じことをすればいいだけの事。

 恐れ知らずの新入りに対して序列を知らしめるための儀式のようなものだ。

 ルナリスの天空にまで伸びる脚が膝から折り曲げられ、少しずつ地面に近づいて来る。

 それまで雲を突き抜けて天高くに屹立していた巨大な女神の太腿が少しずつ下降していく光景は壮大すぎて夢幻を見ているかのようだった。


 そして膝が地面に近づくにつれてヴェルミオンを覆い隠さんばかりの巨大な影が生まれる。それは人間の数百倍の太さを持つルナリスの脚による日陰だった。

 やがて巨大な脚が接地してヴェルミオンの街並みは凄まじい地震に襲われた。それはルナリスが膝をついただけで起きた事象だった。

 ただそれだけの単純な動きでも超巨大な存在が行う事で天変地異に等しい衝撃となる。地面は激しく揺れ動き、高層ビルは一斉に倒壊し、家屋は崩壊し始めていた。

 それも当然のことだろう。ルナリスの太腿の直径は山脈とほぼ同等であり、このような山塊が落下してきたとすればその被害規模は予想もつかないことになる。

 人間はこの規格外の自然災害によって甚大な被害を受けたであろう。ルナリスが足元に片膝をつくという行為自体は人間基準で言えばなんていうことのない日常的な行動だった。


 地響きを立てて地面が陥没し、ルナリスの膝を中心に放射線状に亀裂が走る。その衝撃で瓦礫が舞い上がり、周囲の建造物が倒壊していく。

 だが、これで終わりではない。続いて彼女の上半身も地面に倒れこんでいくと、突き出した両の手の平が地面に触れた瞬間にさらなる地響きが起こった。

 そしてそのまま彼女は首都ヴェルミオンを包み込むかのようにして、四つん這いの姿勢をとったのだ。その圧倒的なまでの巨躯のせいで周囲が暗くなっていくように見えるほどだった。


「ほら、お前達の街が腹の下に収まってしまったぞ?どんな気分だ?ん?」


 ルナリスは悪戯っぽい笑みを浮かべながら言った。その瞳は愉悦の色に染まっており、獲物を追い詰める猫のように妖艶な雰囲気を漂わせている


 彼女の豊満なバストがヴェルミオンを完全に覆い隠しており、巨大な乳房が都市の真下に向かってぶら下がり大きな山脈を成し、大きな唸りを上げて揺れている。

 それはまさに圧巻の光景であって人々は言葉を失ったまま呆然として見上げていることしかできないでいた。


「お前たちがどれだけ弱く価値のない生き物なのか、我が肉体を待ってして特別に教えやろう」


 そう言うとルナリスは四つん這いの姿勢から、少しづつ身体を倒しはじめた。彼女の身体はどんどん傾いて行き、それに伴って街を覆っている影も大きくなっていく。

 弱い相手に自分の力を見せつけるための儀式。

 ――マウンティング。それは相手よりも自分が優位な立場にあることを示す行為である。

 そして今からルナリスが行うのも同じ意味合いのもの。

 彼女はその圧倒的な身体を使って人間たちに対して己の力を見せつけるつもりなのだ。


「さあ始めるぞ。自分たちがどれ程ちっぽけでくだらない存在なのかを思い知って絶望しながら潰れるがよい!」


 ルナリスは四つん這いの姿勢からゆっくりと身体を倒し始めた。その動きに合わせて彼女の巨体が首都ヴェルミオンに覆い被さってくる。

 大巨人たる彼女はその巨体で人間たちの街の上に覆いかぶさるマウンティングをしようとしているのだ。

 マウンティングは相手の上に乗って自分が上位であることをアピールするが、人間の1万倍もあるルナリスと人間では体格差が大きすぎて通常のマウントを取ることができない。

 その結果、ルナリスは自分の巨体を人間の街全体に対してマウンティングを行おうとしていたのだ。

 はたしてそれはマウンティングとしての行動といえるのだろうか。本来ならば自分と同じ種族の相手に対してのみ行うはずの行動だが、ルナリスはあえてそれを実行したのである。

 街にマウンティングを行うことで人間たちに自分の存在を刻み込もうとしていた。


 徐々に接近するルナリスの肉体によって暗くなっていく空を見上げながら人々は必死になって逃げようと試みるものの、あまりにも巨大すぎるために逃れることは叶わないだろう。


 そしてルナリスのマウンティングが始まる。彼女の巨体が傾き始めた瞬間と同時に人々の叫び声が聞こえてくる。既に地面が揺れ始めており、次の瞬間には建物が崩れ落ちていく音も聞こえてきた。

 そしてついに彼女は、有り余る巨体を町の上にそっと下した。


ずどおおおおおおんんん!!!


 彼女の豊満な胸が街を押し潰す衝撃音が響き渡る。

 大都市を丸ごと飲み込んでしまいそうなほどに巨大で柔らかい双丘の肉厚で豊富な質量を存分に活用したマウンティングである。

 街中の建物は彼女の重みで粉々になり、街全体が大きく傾いていく。地面が割れ、建物が崩壊する轟音と共に巻き起こる猛烈な突風。その余波を受けた人間たちはまるで紙屑のように吹き飛んでいく。

 その光景はまさに地獄絵図。逃げ惑う人々は次々とルナリスの胸の下敷きになっていった。

それでも彼女は無慈悲なまでに街へのマウンティングを続けた。

 柔らかな胸の肉が横に広がり、辛うじて形を保っているビル群に迫ると、岩盤層ごとゴリゴリと削り潰されていく音が響いてきた。


「どうだ?マウンティングされた感想は?貴様らのような弱小種族にとって、この巨体は耐え難い重圧だっただろうな……」


 彼女の胸の圧力でビル群が倒壊していく様を想像しながら呟く。胸の下で潰れゆく街並みを感じるのは最高の快感だった。

 薄着とは言え、服越しでも胸の下で無数の高層建築郡が一気に崩壊していくのを感じる。まるで砂上の楼閣のように儚く消え去ってしまう建物達。

 その中にはきっと沢山の人々がいたことだろう。

 その人々は一体どんな表情をしているのかと思うと思わず口角が上がってしまう。

 ルナリスにとってそれは甘美で心地よい感触だったのだ。


 そして今度は腹を下ろす番だった。すでに崩壊寸前になっている建物を巻き込みながら腹部を街へと下ろしていく。

 彼女の巨大な腹が街に触れると、地面に深いクレーターができるほどの衝撃が走り、その上にあった建物が一瞬で消し飛んだ。


「んんっ……いいぞ……」


 腹の下に感じる圧倒的な質量と柔らかさにルナリスは思わず喘ぎ声を漏らす。

 そして彼女の腰と太腿も地面に下ろされると街へのマウンティングが完成する。ルナリスは四肢を広げて街を抱擁するように覆い被さった。

 それはまさに巨大な壁。人々の視界一杯に広がる彼女の肢体は巨大な壁に囲まれているかのような錯覚を覚えるほどだった。


 ルナリスから見れば単なるマウンティングに過ぎないが、人間にとってはまさに天災そのもの。ルナリスの巨大な肉体によって街は壊滅的なダメージを受けていた。

 その身体は途方も無く巨大なのであり、常識を逸脱した怪物なのである。

 そんな彼女の肉体でマウンティングされると言うことはすなわち街一つを丸ごと潰されるようなものなのだ。

 それは決して比喩表現などではなく文字通りの意味での蹂躙行為なのである。 


「ん…っ、まだ終わりじゃないぞ。これからもっと強く押し付けてやるからな」


 そう言いながら彼女はうつ伏せに寝そべったまま、ゆっくりと腰を起こし始めた。その動きに合わせて彼女の巨体が街から離れていく。

 そして彼女のマウンティングが始まる。巨大な女性が街を覆い尽くして広大な面積のヒップを天高く突き上げたのだ。

 その光景を見た人間たちは皆恐怖に顔を引きつらせていた。それはそうだろう。何せ彼らにとっては巨人どころか神そのものに近い存在なのだから。

 だがルナリスにとってそんなことはどうでも良い。今はただ自分の力を誇示したいだけなのだから。

 人間の1万倍もある彼女は天高く突き上げた腰を揺らしながら腰を下ろした。


ずうんん……


 大陸中に響き渡る重低音。それはルナリスの巨大な股ぐらが街に落ちた衝撃音だった。

 巨大な尻肉はその質量の重さで地面を深く陥没させつつ、その衝撃波はビルをなぎ倒し、人々を吹き飛ばした。


「んんっ……!はぁ……」


 ルナリスの口から熱い吐息が漏れる。彼女の巨大な局部は街中を圧迫し続けている。その圧倒的な質量で街を蹂躙している感覚は何とも言えない快感であった。


 ルナリスは股ぐらに感じる人間たちの感触に興奮を覚える。巨大な陰部に潰される恐怖や苦痛を感じながらも必死に抵抗している様が手に取るように分かるのだ。


ずうぅぅううんん!

ずうぅぅううんん!

ずうぅぅううんん!


 彼女の腰振りは段々と激しくなり、街の被害は甚大なものとなっていく。

 ルナリスが腰を揺り動かすたびに発生する巨大地震によって崩壊していない街は悉く倒壊し、人々は瓦礫の下敷きとなった。

 ルナリスが腰を左右にくねらせるごとに地面が抉れていき、巨大な溝ができていた。


(ああぁ……気持ちいい……)


 巨大な股ぐらを街に擦り付ける快感にルナリスは酔いしれていた。

 彼女にとって人間は遊び道具に過ぎない。巨大な陰部で街中を蹂躙する快楽に彼女は溺れていった。


ずうぅううん!!ずうぅうん!

ずうぅううん!!ずうぅうん!


 街中に響き渡る轟音。それはルナリスの巨大なヒップが街に振り下ろされる音は、有史以来で最も大きな音だったに違いない。


6.制御不能の神狼


「ふー……お前たちの巣の上で身体をこすり付けて遊んでいたら、興が乗ってきた……♡」


 ルナリスのマウンティングによりヴェルミオン市の9割以上が崩壊していた。

 街の至るところで火災が発生しており黒煙が上がり続けていた。街には大小様々なクレーターができており地面は大きく凹んでいた。もはや動いている者はいない。

 ヴェルミオンの大部分が瓦礫の山となっていたのだ。街の機能は完全に停止していた。


「この火照りを鎮めるためにお前達の街を使わせて貰うぞ」


 ルナリスの巨大な肉体が起き上がり、四つん這いの姿勢で新たな街へ移動し始める。

 首都は壊滅したが周りの街は健在だ。ルナリスの巨体の周りにはまだ無数の街があった。


 彼女は次の標的に狙いを定めると再び街に転がり、マウンティングを開始する。


ずうぅううん!!


 その音はリザリア全土に響き渡った。それはルナリスの背中と臀部が街に落ちてきた音だった。彼女の豊満な肉体によって街中の建造物が一瞬でぺちゃんこになり大地は激しく震動した。


 街は瞬く間に彼女の肉体に呑み込まれていき建物だけでなく人も車も動物もみんなまとめてルナリスに押しつぶされていく……。


「こんな街、纏めて尻の下敷きにしてくれる……♡」


 ルナリスは淫靡な声で呟きながら街中に巨大な臀部を擦り付けるように揺らし続ける。

 巨大な尻肉で街中を覆い尽くすと彼女の体重に巻き込まれた街が潰されていった。


 ずうぅうん!


 彼女の腰の動きに合わせて街中に響き渡る重低音。


「あぁ……いいぞ……♡」


 彼女の巨大な肉体が街を押し潰し快楽に身をよじる。街は彼女の欲望を満たす為だけに存在していた。

 人間など全く関係ない。彼女はただ自分の欲望を満たすために街を踏み潰しているだけなのだから。

 ルナリスは自分の背中や股ぐらの下で無数の建物が砕け散っていくのを感じながら快感を得ていた。

 彼女にとって人間の街など取るに足らない存在でしかない。

 だからこそそのような弱小生物の作ったものを破壊することが楽しいのだ。

ルナリスは自らの力で街を蹂躙することに悦びを感じていた。


「はぁ……っ♡」


 彼女の額には大量の汗が滲んでいた。

 彼女の身体は激しい運動と興奮高揚によって熱を帯びている。まるで全身から湯気が出ているようだった。彼女は自分の身体が火照っていることに気づくと更に興奮を高めていった。

 巨大なヒップで街を押し潰す快感にルナリスの頭の中は真っ白になっていた。

 ルナリスは自分の下敷きになっている街の惨状を見て嗤うと、また別の街へと移動してマウンティングを始めたのだった。


 人間の1万倍もある巨大な少女が腰をグラインドさせるたびに地面が激しく振動し巨大なクレーターを作り出していった。

 彼女の豊満なヒップが揺れる度に街中に響き渡る重低音。それはルナリス自身にとっても非常に心地よいものであった。

 巨大な彼女のヒップの下敷きになって街は崩壊していく。建物や車などが彼女の柔らかな尻肉によってぺしゃんこに潰されていったのだ。それはまさに地獄絵図だった。


「はぁ……♡はぁ……♡」


 ルナリスは荒くなった呼吸を整えながら街を眺めた。彼女の眼下に広がるのは廃墟と化した街々だった。

 ルナリスはその光景を見ても特に罪悪感を感じたりはしなかった。むしろ満足感の方が大きかった。彼女は自分の中に眠る破壊衝動を解き放って鬱憤を晴らしていたのだった。


 体長20,000メートルを超える彼女の存在はまさに圧倒的だった。横たわる巨大な脚は山よりも高く、腕は街一つを軽々と掴めるほど長い。

 全身からは生命力に溢れた雌フェロモン臭を漂わせており、周囲の大気を揺らめかせている。


「んっ……♡ 気持ち良い……♡」


 彼女の声には悦楽が含まれており、自分の巨大な身体で街を押しつぶしながら感じているようだった。

 彼女が身動ぎをするたびに地震が起き街全体が揺れ動き廃墟と化した建物たちも倒壊してしまう。


「んんっ……♡ もっと私を感じさせろ……♡」


 ルナリスは熱い吐息を漏らしながら、身に着けていた服を剥ぎ取った。ブラジャーもパンツも一切身に付けておらず裸体が露になる。

 1万倍のサイズ差が生み出す巨大な肢体は威容に満ちており見る者の視線を釘付けにする魅力があった。

 大きな胸の膨らみも大きな臀部も健康的で張りのある瑞々しい肌をしており、その表面には大量の汗が浮かんでいた。

 彼女の巨大な肉体が放つ熱気によって蒸発した汗が湯気となって空中に漂う。

 それはまるで霧のように地上をしっとりとした湿気を含んだ空気で覆い尽くして、街の匂いをすべて塗り替えていた。


「はぁ……♡はぁ……♡ 見ろ……私が本気を出したらこんなことも出来るんだぞ……♡」


 そう言うと彼女は仰向けになると右手で残存していた都市を真上から鷲掴みにすると掌に乗せて持ち去ってしまう。

 少女の手の平に都市の一区画を丸ごと摘乗せたままゆっくりと乳房へと運んでいく。

 手の平に乗せられた街のビルと比べると彼女の乳輪は十倍以上のサイズがあり巨大な乳首も100メートルを超え、その大きさの差は歴然としていた。

 手の平に載せた街を左胸へ運ぶと、そのまま彼女の下乳部分に押し当ててしまう。


「ふっ……♡んっ♡あぁ、感じるぞ……街が私の身体で潰れていく感触……♡」


 ルナリスは自分の胸に当てる手の感触に快感を覚え甘い声をあげてしまう。彼女は乳房を動かし残っていた街を揉み潰し始めた。

 彼女の巨大な乳房の下で街が崩壊し始める。建物は一瞬で木っ端微塵になり粉々になっていく。

 街は彼女の巨大な胸の弾力に翻弄され続けた。巨大な脂肪の塊の上で何度も上下左右に揺さぶられ最後にはペタンコになってしまう。


「ああぁ♡いぃ……♡私の胸で潰れてしまったな……♡可愛い奴らだ♡」


 自分の巨大な乳に揉まれて街が壊れていく感覚を楽しみながらルナリスは更に地上からビル群を毟り取ると左胸にも載せてみせると、巨大な手のひらで押し付けては揉み捏ねて弄んでいる。

 その度に柔らかく変形する巨大なおっぱいが街を圧迫し跡形もなく消えて行く。


「んふぅ〜♡この質感……癖になりそうだ……♡」


 ルナリスは満足げな表情を浮かべながら自らの乳房を愛おしそうに撫で回していた。

 その顔は紅潮していて頬が赤く染まっている。


「ふっ……♡ふっ……♡もう駄目だ……我慢できない……♡」


 そう言ってルナリスは自分の右手を股間に当てると指を膣内に入れて動かし始めた。

 すると次第に水音が聞こえてくるようになり彼女の下半身から流れ出てくる液体で濡れていく。


「あっ♡ああっ♡虫けらを下敷きにしながらする自慰、意外といけるかも……♡」


 巨大な少女の股から大量の愛液が噴き出してきて周囲に飛び散っていく。

 洪水のように大量の汁が流れ出て来て周囲の地面を濡らし、甘酸っぱい香りが漂い始め、地上最大の存在が放つフェロモンが辺り一面に拡散されていく。

 ルナリスはその匂いに更に興奮を高めてしまい自慰に耽り続けていた。


「んぁ……♡ふぅ……♡」


 ルナリスは快楽を貪るために手先を動かすスピードを早めていく。

 それに連動するかのように愛液の量が増えベチャベチャという卑猥な音が辺りに響き渡り始めた。


 彼女は仰向けのまま脚を開き恥部を露出させると秘部からトロリと蜜が溢れ出し地面に垂れ落ちて行く。

 彼女の陰部は形容しがたいほどに大きく、あの割れ目をこじ開けるのに必要な人員はどれ程いるのだろうか。きっと全人類の知恵と労力を結集しても、あの極大な肉穴を開けることは不可能であろう。

 そして秘部から流れ落ちた透明な液溜まりは街ひとつが浸かる巨大プールとなっている。


 彼女の股間から溢れ出る愛液は、まるで川が氾濫するように地上に流れ込み、ヴェルミオンの残骸をさらに押し流した。

 粘り気のある液体は、ビル群を飲み込み、道路を覆い尽くし、甘酸っぱい香りが空気を重くした。

 ずちゅ、ずちゅっと、彼女の指が動くたびに水音が響き、地面は彼女の情欲に塗れた沼と化していく。

 ルナリスは自分の快楽に溺れながら、地上の矮小な存在を完全に無視していた。彼女にとって、都市も人間も、ただの遊び道具に過ぎなかった。


「んっ……♡ もっと、もっとだ……お前たちの街で私を感じさせろ……♡」


 彼女の声は低く、熱を帯びた吐息とともに大気を震わせた。その巨体が悶える度に都市の建物が崩れ、大地が揺れた。


「ああぁ……♡ すごい……こんなに感じるのは久しぶりだ……♡」


 彼女の巨体がわずかに揺れるだけで、地面は大きく波打ち、周辺の街は次々と崩壊していった。ビルは彼女の愛液に浸され、コンクリートが溶けるように崩れ、鉄骨が錆びたように折れ曲がる。


 ルナリスは、快楽の頂点に達するにつれ、ますます大胆に動き始めた。彼女は仰向けの姿勢からゆっくりと身体を起こし、右の胸で都市を押しつぶしながら大地に横たわる。

 地面は深く陥没し、巨大なクレーターが生まれた。そのクレーターは、まるで彼女の欲望の形を刻むかのように、深く、広がっていた。


「ふふっ……♡ こんなに沢山の建物があるのに、私の身体を支えることが出来ないとは……」


 彼女は嘲笑しながら、左手を伸ばし、ヴェルミオンの隣に広がる小さな衛星都市を掬い上げた。彼女の手のひらには、ビルや道路、公園、そして逃げ惑う人々が丸ごと収まっていた。

 その小さな都市を、まるで砂遊びをするように、指先で弄んでみる。ビルは彼女の指の圧力でぽきぽきと折れ、道路はぐしゃっと潰れ、人々は彼女の指の隙間に挟まれて消えていった。

 金色の瞳はその光景を愉悦に満ちた表情で見つめていた。


「ん……♡ こんな小さなもの、すぐに壊れてしまうじゃないか……もっと楽しませてくれよ……」


 ルナリスは、掬い上げた都市を自分の胸元に持っていき、柔らかな乳房に押し当てた。

 彼女の肌に触れたビル群が潰れる音が響き、彼女の胸はさらに熱を帯びた。彼女の指が乳房を揉むたびに、都市の残骸は彼女の肌に擦り込まれ、瓦礫の粉塵が彼女の汗と混ざり合い、粘り気のある泥のような感触を生み出した。

 彼女の吐息はさらに熱を増し、はぁっ、はぁっと荒々しく響き、地上に霧のような湿気を降らせた。


「ああぁ、いいぞ♡お前たちの街はちっぽけでゴミ同然だが、玩具程度の価値はあっるみたいだなぁ♡」


 巨大な少女が快楽に酔いしれながら街を破壊し凌辱し支配する光景は残酷極まりないものだがどこか神聖さと美しさが備わっていた。ルナリスは絶頂を迎えようとしていた。


「はぁ……♡はぁ……♡もっと……♡もっと感じさせてくれ♡お前達の街で私を満足させてくれ♡」


 ルナリスは別の衛星都市に視線を移した。

 それはかつて繁栄した港湾都市だったが、今はルナリスの爪痕によって廃墟のように変わり果てた姿を晒していた。

 彼女は唇を舐め、その都市をも握り締めると、ゆっくりと自分の股間に持っていった。巨大な女性器は、すでに愛液で濡れそぼち、熱を帯びて脈動していた。

 彼女は都市をその敏感な部分に押し当て、ゆっくりと擦り始めた。ぬちゅっ、ぐちゅっと、ビルや道路が彼女の肌に擦れるたびに、淫靡な水音が響き、瓦礫が彼女の愛液と混ざり合って粘り気のある感触を生み出した。


「ああぁ……♡ いいぞ……お前たちの街、こんな使い方なら最高だ……♡」


 彼女は都市を彼女の秘所で愛撫し、そのたびに快楽に顔を歪ませた。

 都市は彼女の圧倒的な力の前で無抵抗に潰れていき、ビル群は彼女の指紋に埋もれ、道路は彼女のピンク色の膣壁に吸い付くようにへばりつき、人々は彼女の分泌物に沈んでいった。

 高層ビルよりも大きな指は執拗に都市の残骸を追いかけ、最後の一欠片まで探し出して敏感な粘液に擦り付けるまで動いた。

 彼女の瞳は潤み、口元からは唾液が垂れ落ち、巨大な少女は絶頂に向けて加速していく。


「ふふっ……♡ この感触、たまらない……お前たちの街、こんな風に使われるためにあったんだな……♡」


 彼女の巨体は、快楽に震えながらさらに大胆に動いた。彼女は四つん這いの姿勢になり、巨大な胸を地面に押し当て、更に股間を落とし、真下にあった都市をさらに強く擦り付けた。


 ぐちゅうっ、ずちゅっと、彼女の女性器が都市を飲み込むように動くたびに、地面は大きく波打ち、周辺の街は次々と崩壊していった。

 彼女の愛液は、まるで洪水のように都市を覆い尽くし、ビルや道路を溶かし、甘酸っぱい香りが空気を満たした。


「んんっ……♡ ああぁ……♡ 最高だ……お前たちの街、こんなに脆いのに、すごくいい……♡」


 彼女は右手を彼女の最も敏感な部位に這わせると、ゆっくりと刺激し始めた。

 ぬちゅっ、くちゅっと、淫靡な水音が響き渡り、彼女の指は愛液まみれになった。

 彼女の黄金の瞳は焦点を失いかけ、口元からは舌が覗き、巨大な少女は完全に快楽に支配されていた。

 彼女の指は、彼女の女性器を巧みに刺激し、絶頂がへと導いていく。

 彼女の巨体は大きく痙攣し始め、地面は激しく揺れ動き、周辺の街は次々と崩壊していった。彼女の愛液は、まるで火山の噴火のように噴出し、周囲に降り注ぎ、瓦礫の山を覆い尽くした。

 彼女の吐息は、獣のように荒々しくなり、巨大な少女は咆哮にも似た喘ぎ声を上げた。


「ああぁ……♡ いいっ……♡ すごい……♡ もうすぐ……♡ イキそうだ……♡」


 ルナリスは快楽の限界を迎えようとしていた。

腰を突き出し、そこにあった街に直接股間を擦り付け始める。

 巨大な性器によって街は一瞬で、ぐちゃぐちゃに、擦り潰され消滅してしまった。

 1センチも無い超高層ビルなどは、愛液の粘着力によってその超巨大な性器にくっついて恥垢の様にへばりついて、性器にこびりつくゴミとかしてしまう。


 無論、そんなビルだけでなく、愛液によって少女の性器にくっついてしまった人間が無数に付着していた。

 そんな人間たちも少女の愛液の粘力から脱出する事は不可能で、ルナリスが満足するまで股間に貼り付けられて悶える事を強制されるのである。


 そんなふうに股間を街にこすり付けている間にも、巨大な胸を街に押し付ける行為は止まることはない。

 巨大すぎる乳房は街や山などをその巨肉の下に呑み込み磨り潰しながら、自らの快楽の為に蠢く。

 乳房が通過した後には山さえ磨り潰された完全な平野が広がっている。


「んんっ……♡ イイ……♡ 私の股間、おまんこの下敷きになった感想はどうだ? んっ♡ ……んんっ♡ やはり気持ち良いなぁ……♡ 街ごとすり潰して味わう快感は格別だ……♡ んんっ♡ ああっ♡ 」


 少女は快楽に溺れながら独り言ちるのである。彼女にとってこの程度の虐殺など当たり前なのだと。世界は全て己の所有物であるという認識がある限り何をしようと自由だと信じている節さえあった。

 誰も彼女を止められない。

 誰もが自分達の大都市が自慰行為によって消費されていても黙って見上げる事しかできないでいる。

 その圧倒的な優越感が更に少女を滾らせ、より一層激しく責め立て続けるのであった。


「んんっ......♡イクッ……♡ イグゥウウッ♡ ……っ!っ……!あぁっ……!」


 ビクンッビクンッと大きく身体を跳ねさせるようにして達する巨大な少女。

 性器からは大量の愛液がほとばしり、それは小さな街の上にも撒き散らされた。

 股間から夥しい量の愛液が迸り都市に降り注ぎ街の殆どが愛液の海に沈んでしまう。

 人々にとっては湖ほどの規模もある愛液の水溜まりが生まれ、地図が書き換わるくらいの規模で地形を変えてしまっている。

 もし、この辺りで生き残っている人間たちがいたならば、彼らは皆愛液の津波に呑み込まれ溺れてしまったことだろう。


 彼女は満足そうな表情を浮かべながら大きく息を吐いて、ぐったりと横たわっていた。


「はぁ……はぁ……はぁ……ふぅ……」


 彼女はしばらくの間は動かなかった。微生物サイズの人間たちと首都を丸ごと使った巨大オナニーを終えて疲れきってしまったようだった。

 かつてない快感と、心地よい疲労感に満たされながらゆっくりと身体を休めていた。

エピローグ

 十分に休んだ彼女はゆっくりと身体を起こして立ち上がった。


「さてと……久しぶりからか、ずいぶんはしゃぎ過ぎてしまったな……」


 そこにはかつて都市であったものはなく、巨大なクレーターと廃墟が広がっていた。

 自分が行った破壊行為にも関わらず、その表情には達成感と事後のスッキリした爽やかさ以外は表れていない。


「まぁいい。暇潰しとしては中々楽しめたぞ」


 そう言って彼女は微笑む。

 巨大な津波が過ぎ去った後の彼女の股間の周りは、かつて栄えた大陸最大の都市があったとは思えない惨状となっていた。

 かつて大都市だった街は彼女の愛液によって水没してしまい完全な沼地と化してしまった。地面は泥濘と化しており建物だったものが無造作に転がっていて見るも無惨な姿となっている。


 かつては美しい都市景観だった場所は今や見る影もない。あちらこちらで炎が燻っている様子も確認できた。瓦礫だらけの大都市には、いくつもの巨大な足跡が残されていた。


「しかし、一度の行為でここまで街が潰れてしまうとはな……♡小さいというのは実に惨めだな♡」


 彼女の巨体にとって矮小な文明や生命など路傍の石ころ以下の存在でしかない。そんな存在を自分勝手に街を蹂躙し好き勝手に快楽を貪ってしまうのがルナリスにとってはとても心地よかったのだ。

 少女の黄金の瞳が妖しく輝く。彼女の瞳に映るものは全てが玩具であり、彼女の退屈を紛らわせてくれるオモチャでしかない。

 ルナリスは自分の一人遊びの惨状を見て満足そうに頷く。


「んっ、んん〜。さてと、契約も果たした事だし、奴らの住処に戻るとするか……。フフ、契約通りに人間共の街を壊滅させたんだ。少しは対価を貰わんといかんな」


 ルナリスは楽しげに呟きながらゆっくりと歩き出した。

 歩くたびに地鳴りのような音を立てて大地は大きく揺れ動き、その足跡に沿って新たな地割れが生まれていった。足の下にまだ生き残っていた人々やビル街を踏み潰している事など気にもとめず、巨大な足音を鳴らして遠ざかって行く少女の姿は見えなくなるまで続いたのだった……。

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POSTEDAug 18, 2025
ARCHIVEDJun 10, 2026