ファーストコンタクト
それは突然の事だった。なんて事のないとある一日、それは空の彼方からやってきた。
突如、都市に現れたのは、全長数十kmにもなる、空を覆いつくすほどに巨大な銀色の飛行体。
ありとあらゆるメディアは混乱のあまり、とりとめのない情報を発信しては、その混乱ぶりを露呈するかのように、雑多な情報しか流れてこない。
そんな地上の混乱をよそに、飛行体の一部が口を開くと、まるで飛行機のタラップのように地上に伸びていく。
「おい!一体なんだよあれは! 」
誰かが声を上げた。いや、その声を上げたのは一人だけではない。少し遅れて他の人間たちも次々に声を上げ始める。
しかし、そんな声すらも霞んでしまう、重低音があの飛行物体から重く響き渡る。
ズゥウン……。ズゥウン……。
それは人類が経験したことのない、規則正しく一定間隔で響く、地鳴りと地震のような揺れ。街路樹は枝だけでなく幹すら震え、電線や信号機が音を立てて揺れた。
人々がその振動の原因を不安げに、その正体をその目に捕らえるために、皆一同飛行船の開いた口に注目する。
そしてついに、開いた部分からその正体が現れた。
それは、紛うことなき人の姿だった。ただし、その大きさは、人々の大きさを遥かにしのぎ、この大都市の摩天楼を形成する高層ビルですら、あの巨人の足首にも届かないかもしれない大きさ。テレビやラジオは周囲のビル群から目測でおよそ、身長1,600m以上になると報道している。
1,600m、人間の1,000倍もの体躯を誇るその巨人は、タラップを降り切り、重い足音を響かせ、地上に降り立つと、仁王立ちとなり地上を見下ろしていた。
その巨人の容姿は、まるで人間の少女そのもの。まだ、あどけなさを残すその巨人は、ポニーテールにした黒髪を冷たい上空の風になびかせ、身体は銀色のボディスーツに身を包み、豊満な体を惜しげもなく見せつける。
だが、あの巨人は尋常じゃないほどにデカすぎる。彼女が履いている白いサイハイブーツと足元のビルを比べると、ブーツの高さどころか、黒いヒール部分に届かないビルがほとんど。
そのほとんどのビルは、彼女のヒールが織りなす、靴裏のアーチの下にすべて収まってしまうほどに、彼女は巨大だった。
あの巨人はそこにいるだけで、人々に背筋が凍るほどに恐怖を与えてくる。それは、人類が経験したことのない圧倒的な巨人を前にして当然の反応でもあった。
人々が恐怖でおののいているさなか、超巨大少女は首を左右に振って、地上を隅々まで見まわしたのち、ゆっくりと口を開いた。
「ねぇ、誰か私の話を聞いてくれる人はいるかしら?」
少女の口から発せられたのは、地上の人間たちでも理解できる言葉であった。しかし、そんな巨人の言葉でも、その大きさゆえ、地響きを引き起こす重低音に聞こえてしまう。
「まあ、返事が返ってくるとも思っていないわ」
少女はそう言葉を続けると、ふぅとため息交じりの吐息を履いたのち、立派な胸を誇る様に胸を張って、その巨体を見せつけながら言葉を発する。
「私は、クレイドル星系の外交官として来たユリシアよ。本日はあなた方、未開惑星との外交交渉のため、やってきたわ」
少女の口から放たれた言葉は、はるか遠くまで響き渡り、その重低音は10キロ先のビルの窓ガラスさえビリビリと震えさせた。
この少女の持つ、超常的なパワーをありありと見せつけられる人類。さらに、その少女は言葉を続ける。
「私自ら、わざわざこんな極小ヒューマノイドとの交渉に来たんだから、それなりに礼儀をみせてほしいものね」
そう言ってユリシアと名乗る少女は、再び辺りを見回す。その物怖じしない態度は、さしもの人類も畏怖を感じずにはいられない。
「そう、『返答は無し』ということね。なら、こっちから出向いてあげるから、感謝しなさい」
そう言って、ユリシアと名乗る少女は一歩前に踏み出す。
ズウウン……ズウウン……。
ゆっくりと前に進む度に、足元のビルや建物は激しく揺れ動き、その巨体の一歩一歩が圧倒的なスケールであることを誇示する。
やがて、その少女の一歩はビル一つを悠々と越すと、白いブーツを履いた長い足が地面に降りたつ。
耳をつんざく轟音と共に、ブーツの直下にあった街並みは、巨大なブーツの下に消え、周囲にあった建築物なども、着地の衝撃でぐしゃぐしゃに倒壊してしまう。
それだけの被害を出しておきながら、ユリシアと名乗った少女は、その歩みを止めることなく、右足を大きく振り上げると、高々と足が宙を舞う。
「これが、この都市で一番高いビルなの?私の足の親指にも満たないわね」
そう言って、ユリシアと名乗る少女はクスクスと笑う。掲げているブーツの下には、無数のビルと道路を埋めつくす小人がいる。
ユリシアの目線からでは、小さすぎて目を凝らさないと見つけられない、小さな砂粒みたいな小人がいるはずなのだが、ユリシアはその小人に全く気にもしない様子で、ブーツをゆっくりと振り下げると、凄まじい爆風が吹き荒れ、ユリシアの足元にあったすべてが吹き飛び、街は瓦礫の山と化してしまう。
「ふふん、小人の巣を潰すのは、いい気分だわ」
そう呟きながらユリシアは、続けて左足を一歩前に踏み出す。
ズシィイイインンン!!!
一気に500mも離れた場所に下された左足が踏み出すだけで、大地が揺れ動き、行く先の建物をなぎ倒して突き進んでいく。
彼女の進行を止める者も、行く手を遮る障害物も、この地上には存在しない。全てはこの宇宙人の少女の思うがままに、すべてがなぎ倒され、踏みつぶされてしまう。
「ふふふ、なかなか刺激的な歩き心地ね。足元に小人の巣があるなんて信じられないわ」
そう言って、ユリシアは嬉しそうに足を進める。
もはや、都市の5分の1はユリシアの巨大な足の下に敷き潰されたころだろうか。
彼女の一歩一歩に、ブーツが下ろされた地面は、建築物はなすすべもなくその靴裏に踏みつけられていき、靴裏に押しつぶされた人間などは蒸発してしまう。
彼女の歩いてきた後には、220m以上の長さになる足跡が、規則正しく並んでいる。そんな蹂躙劇でも不幸中の幸いなのは、彼女が履いているブーツのヒールが思いのほか高く、圧縮されているのは、つま先と、かかと部分に留まることくらいか。
だが、そんな足踏まずの部分も、天文学的な質量で揺さぶられてしまった為、壊滅的打撃を被っている。
彼女が歩いてしまった地域は、その足跡の分だけ踏みつぶされてしまった哀れな小人がいたことだろうか。
そんなことを考えているのだろうか、ユリシアは都市を蹂躙しながら、意地悪な笑みを浮かべている。イケナイことを楽しんでいる少女のように、まだ大勢の小人の生き残りがいる街を踏み潰しながら、練り歩く……。
「あらあら、まだ、こんなにも大勢の小人が足元にいたのね」
足元の街を踏みつぶしながら、歩みを進めていくユリシアはそう言うと、上半身を傾けて、地面に目を凝らして覗き込む。
大きな二重の目を細めて、じっと見ないと、地面にいるこの星の住人をその目に捕らえられない。
ようやく巨人の彼女に見つけてもらえた小人の集団は、あまりにも小さく、その動きも止まっているかのように遅い。
一歩で500m先も踏み出せるユリシアに比べると、彼女の歩幅を死に物狂いで走りきっても、一分近くかかってしまう、この星の住人たち。
そのあまりにも不憫で惨めな存在たちを、もう少しだけイジメたくなったユリシアは、にやりと口角を上げると、その場にしゃがみ込み、小人に近づいてみた。
それでも彼女の顔は、はるか上空に存在し、小人たちの空を覆いつくさんとその存在感を嫌でも見せつけてくる。
そして、膝が地面に着くと、ユリシアは耳元まで裂けそうになるほどに口角を上げ、笑顔を作り出した。
「ふふ、小さな虫けらさん、こんにちは」
そのユリシアの微笑みで、地上の小人たちはさらに恐怖を増長させる。
あの微笑は、何かたくらんでいる顔だ。それは無邪気な子供が、小さな命を弄ぶときにするような、残忍な笑みだ。
そんなユリシアの満面の笑みが、小人の集団に向かって降り注ぐ。
「あなた方のような、ちっぽけな生き物は、私が歩くだけで潰されてしまうのだから気の毒ね。でも仕方ないわよね、そんな小さな存在なのだもの」
そう言ってユリシアは、立ち上がり、左足を宙に浮かせた。足の真下にいた小人はその姿を見ると、たちまち悲鳴を上げ、一斉に逃げ惑い始める。
「ふふふ、こんなに小さいんだもの、逃げられるとでも思ってたのかしら?」
そう言ってユリシアは、ゆっくりとその足を降ろし、小人たちの目前にズゥウンと鈍い地響きと共に着地する。
そしてユリシアは、足元をグリグリと念入りに捻りつぶして見せて、辛うじて生き残った小人たちに、足元で何が起きているのかを確認させてあげた。
小人たちはその地面の惨状に、自分たちがどれだけ絶望的な状況に追いやられているのかを思い知らされる。
「ふふ、ほら?早く逃げないと、お友達みたいに死んじゃうわよ?」
ユリシアは楽しそうに、足元で生き残っている小人たちを見下ろしながら、右足を掲げ、真下にいる小人を煽る様に揺らしたのち、ブーツで踏みにじり、グリグリと足を捻ってビルごと跡形もなく、消し去ってしまう。
まるで、子供がアリの群れを踏みつぶすかのように。念入りに、いたぶり尽くすように、丹念に、小人の最後の生き残りをその靴底で踏みにじっていった。
「そう、あなた達はそっちの方に逃げたいのね……。いいわ、がんばって逃げてね……」
地上1,600mの高さからだと、細長い道路の行く先も手に取る様にわかってしまう。それは、ユリシアの脚の回りに蔓延る小人の逃げ道を、彼女に教えているようなものだ。
だから、ユリシアは、足元の小人がこれからどこに逃げようとしているのか分かったうえで、彼らの進行方向のビルにつま先を軽く当てて、押し倒して、道路を塞ぎ、小人たちの逃げ道を奪ってしまった。
「あらあら、逃げ道がふさがれちゃったわね。ねえ、どうしようか?諦めて、私に踏みつぶされる?それとも、別の逃げ道を探してみる?」
ユリシアの笑顔は、小人の進路を塞いで弄んでいる。そんなユリシアの愉悦を知ってか知らずか、彼女の足元の小人は、前方に佇んでいる巨人を振り返ることもなく、いまだ使える別の街路に逃げ込み、全速力で逃げ去っていく。
「うふ、そんなに必死に逃げちゃって……」
そう言ってユリシアは、上空から、足元の逃げ惑う彼らの様子をつぶさに観察した後、さらに、その巨大な足で彼らの進行方向先を踏みつぶして見せた。
こうしてユリシアは、彼らの行く先々の進路を先回りしては、道路やビルを踏みつけることで、彼らの希望を奪っていった。
「ふふふ、どうしたの?ほらほら、早く逃げないとおっきなお姉さんが追いつてきちゃうわよ?」
足元の小人たちの悲鳴や嘆きを心地よく楽しむ様に、ユリシアは大げさに足を突き出して見せて、小人たちをさらに煽る。
そのあまりの巨体と、途方もない力に、小人たちは翻弄され、逃げ回り、彼女の思惑通りに、瓦礫で袋小路となった路地に追い詰められてゆく。
そんな小人たちが罠にはまり、追い詰められたと気付くのにそれほど時間はかからなかった。
気付けば、目の前はビルの残骸で埋められ、上を見れば道路を跨ぐように巨人が聳え立っていた。
「あらあら、こんな所に逃げ込んで、どうしたの?逃げ道がなくなっちゃったの?」
ユリシアは足元で震えている小人に顔を近づける様にしゃがみ込み、わざとらしく言葉を投げかける。
「うふふ、まあ、最後まで逃がすつもりはなかったんだけど……♡」
地面にいる小人に聞こえるか、聞こえないかの声で、ポツリとつぶやくユリシア。そして、自分が追い詰めた獲物を観察するように、ねっとりとした視線で、小人であふれる道路を覗き込んでみる。
瓦礫と巨人の足跡で囲まれた全長1kmちょっとのその場所は、片側2車線の道路の上なのに、アスファルトが見えないほどに小人で埋め尽くされており、おそらく一万人はゆうに越えて、この通りを埋め尽くしているのだろう。
ユリシアが両手を付き、四つん這いの状態で姿勢を低くして、顔を地面に近づけてみる。顔を地面に近づける途中、上半身を倒し込んだことで、彼女の大きな胸がズシンと地面につき、広範囲のビルと道路を柔らかい胸で圧し潰してしまったのだが、彼女は全く気にする様子もない。
とにかく、顔が地面に着く寸前まで近づけたユリシアの瞳には、満員電車に乗っているように密集し、身動きもできない人々を捕えた。
「(うわぁ、ちっさいけど、こうしてみてみるとホントに人間なのね……)」
恐怖を感じ、お互いに寄り添いながら、翻弄されるままになっている小さな人々。そんな小さな彼らを、ユリシアはじっと観察している。
ユリシアにとっては、とるに足らない小さすぎる存在。しかし、足元で身動きがとれないほどに密集し、お互いに体を押し付けて寄り添うその姿は、何だか可笑しくて面白いのだ。
それにしても、砂粒みたいに小さい生き物たちは、見ているだけで、死んでしまいそうなくらい弱そうだ。よく見てみると、眼下の小人は吹き荒れる強風で吹き飛ばされんと踏ん 張っている。
――なぜ?風なんて吹いていないのに……。
ユリシアが疑問に思うと、その原因にすぐ気づいた。
彼ら小人は、自然に発生した風ではない。ユリシアが呼吸している、その吐息に吹き飛ばされようとしているのだ。
「プッ」
弱いとは思っていたが、ここまでとは。ユリシアは思わず笑いが抑えられなくなり、思わず噴き出してしまった。
「あっ!」
しまったと思った時には、もう遅い。ユリシアが吹き出した瞬間、小人の一集団が吹き飛ばされてしまう。まるで息を吹きかけた埃ように、彼女の起こす突風で散り散りになった。
「クスクス……、ああ、ごめんなさい。何だか、おかしくって……つい……」
ユリシアは、可笑しそうにクスクスと笑い声をあげながら、眼下にいる小人に謝罪した。そんなユリシアのすぐ目の前では、依然、逃げ場を失った小人が身を寄せ合い、恐怖におびえながら、巨人を見上げていた。
「ははっ、まさか噴き出した吐息で飛んでいくなんて……、ふふっ、久しぶりに面白いものを見せてもらったわ」
ユリシアは、恐怖におびえる眼下の小人をよそに、、面白そうに笑った。
この足元にいる、小さくて弱い生き物たちが、自分達を踏みつぶさんとする巨人の自分と対峙している状況を想像してみれば、それがさらにユリシアの心を大いにくすぐる。
そして、足元の集団が、自分の身を守るために、どうするかもユリシアはだいたい見当がついていた。
「(ほら、やっぱり……)」
ユリシアが足元に視線を落とすと、案の定、足元の集団が両手を大きく振りながら、命乞いをしているのだ。
逃場もなく、彼女の動き一つだけでさえ、命を落としかねない、そんな巨大な存在を前にすると人は、最後の望みをかけて、命乞いをするしかない。
この星の人間も例にもれず、自分たちが助かる一縷の望みをかけて、両手を挙げながら、命乞いをしているのだ。
「あら、そんなおびえた表情をしてどうしたの?クスクス……」
ユリシアは、足元にいる小人の態度がおかしくて仕方がない。こんなにちっぽけな存在でも、きちんとした人間であり、ユリシアと同じそれぞれの人生を歩んできている。
だが、今は自分の気持ち一つで、生死が決まってしまう。他人の生殺与奪を、この星の人類は、ただの少女であるユリシアに握られているのだ。
その事実が、ユリシアには楽しくて楽しくて仕方なかった。
「(ああ、面白すぎてゾクゾクしちゃう……)」
小人たちの、最後の抵抗が心地よくてたまらない。自分が今まで蹂躙してきた小人たちも、どんな気持ちで自分に踏みつぶされたのだろう。
想像するだけで、ぞくぞくする……。
「(可哀そうだけど、助けてあげないんだから……)」
ユリシアは、小人たちの願いを無視し、ズシン……と足を動かす。そういえば、ずっとしゃがんでたり、四つん這いになってたりしたので、足や手が痺れてきたのを感じ始めた。
「ねえ、ずっと同じ姿勢だったから、疲れてきちゃったの……。悪いんだけど、ここに座らせてもらうわね?」
ユリシアが座ろうとしているのは、瓦礫で囲まれた小人が犇めき合う、あの道路。かなり長い道路だが、ユリシアの大きなお尻の前では、道路の半分以上が下敷きになってしまうだろう。
もし、ここに巨人の彼女が腰かけてきたら、道路にいる自分たちは一瞬で圧し潰されてしまう。
自分たちにとって死と同義である彼女の行動に、足元の集団は一気にパニックに陥った。
「クスクス……、なにそんなに慌てているの?まさかとは思うけど、私のお尻がそんなに怖いの?」
図星である。この星の住民にとって、彼女のお尻はその質量だけでも凶器になりうる。巨人が腰を下ろした時点で、自分たちの命はないと断言できる。
「(ああ、こんなちっぽけな存在たちにもわかるくらいに、私のお尻がすごいってことなのよね?)」
そう考えるだけで、ゾクゾクとした感覚が、ユリシアの背筋を駆け抜けていく。ユリシアは、ゆっくりと腰を下ろしていく。
地面にいる小人たちの頭上で、お尻を軽く揺らしてみると、ゆれるお尻の動きに合わせて、小人たちが悲鳴を上げて、お尻の真下から逃れようとしているのが分かる。
大通りに密集していた小人たちは、この巨人のお尻から逃れるために、さらに密集して、お互いの体を押し付け合ってでも、何とかユリシアのお尻から逃れようとしているのだ。
「(バカね、そんな小さな動きじゃ、逃げられないのに……)」
ユリシアは、小人の滑稽な動きに心の中で、馬鹿にするような感情を抱いてしまう。
自分がただ座ろうとしているだけで、この有様。軽くお尻を動かしただけで、大げさに怯える小人たちが面白可笑しくて仕方がない。
ユリシアは、小人たちの悲鳴と命乞いを聞きながら、ゆっくりと腰を下ろした。
ズズズウウウゥゥンン……。
遂に巨人の臀部が大地に落ちる。推定体重4,500万トン近くもあるユリシアのお尻が、コンクリートやアスファルトを粉々に砕き、巨大な凹みを作ってしまう。
ユリシアの臀部が、大通りに敷き詰められたビルやアスファルトを、無慈悲にも一瞬にして圧し潰してしまう。そして、小人たちはユリシアの臀部が大地に衝突すると同時に、すさまじい衝撃で車や瓦礫といったものと一緒に、上空へと弾き飛ばされてしまった。
無論、ユリシアのお尻の真下に敷かれた小人たちが無事な筈はない。逃げ場を奪われ、身動きが取れないほどに密集していた彼らは、落下してきたユシリアのお尻によって、その痕跡すら残さないまでに極限まで圧縮され、地面と同化てしまった。
「んっ、くすぐったいじゃない……」
ユリシアは、自分のお尻を受け止めることも出来ない軟弱な地盤が、ずぶずぶと沈み込む感覚に思わずくすぐったさを感じてしまった。
それと同時に、轟音を立ててゆっくりとユリシアのお尻が持ち上がる。そのお尻には、彼女のとてつもない体重で圧し潰された小人の街の残骸が張り付いてる。
銀色のハイレグスーツの股間部分の汚れは、そのお尻によって圧し潰された小人たちが、彼女の股間部分にへばり付いた証でもある。
ユリシアは、自分のお尻に着いた小人たちの残骸を、何んとなしに手で触ってみる。手触りとしては、さらさらしていて砂のようである。
これでは、本当に小人を潰したのか、今一つ実感がわかなかった。かといって体をひねっても、お尻の様子はよく見えない。
「(なんだ、つまらないじゃない……)」
ユリシアがそう思った時、目線を地面に向けてみれば、まだ、彼女のお尻で潰されていなかった小人が、わらわらと犇めいているではないか。
思えば、彼女の丸い大きなお尻を使っても、瓦礫で閉じ込められた道路の半分しか潰れていない。
――そうだ、生き残った彼らに確認してもらおう。
そう思いついたユリシアは、生き残りの小人の上空に、ゆっくりと尻たぶを近づけた。
小人の悲鳴と恐怖が、ユリシアのお尻の下で満ち溢れている。ユリシアはその様子を見ながら、お尻を地面につける寸前で止めて見せ、地上に蔓延る彼らに聞いてみる。
「ねぇ、私のお尻にあなた達のお友達が張り付いているかしら?それとも、みんな潰れちゃったのかしら?」
ユリシアの質問にも関わらず、お尻の下にいる数千人の小人は泣き叫ぶばかりで、何も答えようとしない。
無理もない、なぜなら彼らの真上には、薄汚れたユリシアの臀部が遠くまで埋め尽くしており、今にも墜落してきそうな圧迫感を与えてくるのだ。
彼女の臀部を見上げてみれば、ハイレグスーツのお尻部分からはみ出た尻たぶに、色とりどりの汚れが付着している。
あれは、かつての自動車やバス、ビル、電車といった物の残骸である。つい先ほどまで、普通に街の一部を形成していたそれらは、ユリシアのお尻によって一瞬で無に帰したのだ。
さらに、ユリシアの股間を覆う銀色の生地にまで、瓦礫の汚れが付着している。ハイレグスーツでかろうじて守られてる股間部分は、その生地の明るさから、瓦礫の汚れがより一層目立つ。
さっきまでそこにいた同胞たちが、あの汚れの一部となった事実に、パニックを起こさない小人は誰一人としていなかった。
「クスクス……、聞こえなかったのかしら?もう一度聞いてあげる」
ユリシアは、ユリシアの臀部で、完全に覆い尽くされている小人に向かって、優しい口調で語りかける。
「私のお尻にあなたたちのお友達がくっついているかしら?それとも、このままお尻を降ろしてもいいのかしら?」
だが、ユリシアの声掛けにも小人は答える様子はない。一応、中には答えようと、大声で空に向かって叫ぶ小人もいたのだが、ダニみたいな大きさの小人が、一人、二人叫んだところで、あの大巨人の耳には届かない。
「はぁ、何も答えないのね……。いいわ、直接触って確かめて頂戴」
ユリシアが言うと同時に、彼女のお尻が地面にぶつかる。
ズズズウウウゥゥンン……。再び轟音と衝撃が、小人と瓦礫で埋め尽くされた大地を揺らした。その振動は周辺のビル街にも響き渡り、道路が波打つようにうねる。
「どうだった?私のお尻にお友達は付いていたかしら?」
ユリシアは、お尻をグイッと持ち上げ、股の真下にあるクレーターに話しかける。そこに数秒前までいたはずの小人の姿は、どこにもなく、あるのはユリシアの大質量で圧し潰したクレーターの底で、地層の一部と化した街の成れの果てと、彼女のお尻の汚れの一部と化した、小人や家だったものしか存在しない。
「あら?みんな潰れちゃったの?ふふ、私ってそんなに重かったかしら?」
ユリシアは、クスクスと笑いながら、クレーターとお尻の残骸に向けて喋りかける。
ユリシアのお尻によって、街を滅茶滅茶に壊された小人たちは、どうすることも出来なかった。
小人たちには、あの巨人から逃げることはもちろん、彼女のお尻すら抵抗もできずに潰される、虫けらのような存在。
いや、まだムシの方がマシかもしれない、人類の1,000倍もある巨人からすれば、自分たちなど、ダニ以下にしか見えないのだから。
巨人が歩けば、自分たちの住処ごと押しつぶされ、巨人が座れば、彼女のお尻の下でゴミ以下の存在と化す。
人類は、巨人の存在に恐怖しながらも、巨人の遊び場となった小人の街を見せつけられ、こう思わざるを得なかった。
――この星の生態系の頂点が置き換わってしまったのだと。
ユリシアは、地面につけたお尻をそのままに、沈んだ地盤を座りやすくするため、お尻を左右前後に動かして、大地を均してしまう。
彼女のぴっちりとしたスーツは、股間のラインをくっきりさせるまでに密着しているので、お尻を動かすたびに盛り上がった股間の土手が、小人の街を薙ぎ払ってしまう。
彼女の20m以上の高さもある股間の土手は、下手なビルよりも圧倒的にでかかった。柔らかいはずのそれは、ビルや高架橋を容易く呑み込んでしまい、すべからく彼女のモリマンの下に沈めてしまうのだった。
「ん、こうして座ってると、地面の温かさが感じられて、気持ちいいわね……」
ユリシアは、手を体の後ろに着いて、長い足を伸ばし、上体を反らすようにリラックスする姿勢をとる。
彼女の長く巨大な足が、無造作に投げ出される。見上げなくては全容を掴めないその脚は、低層ビルや住宅が密集するエリアにズドンと鎮座して、小さなビルをいくつも薙ぎ払いながら、潰してゆく。
巨大少女は、まるで自宅にいるかのようにリラックスして、脚の下で潰れる小人の建物の感触を楽しむように、投げ出した脚を開いたり閉じたりしてみた。
その感触はまるで砂浜の上にいるかのように、ざらざらしていながらも、柔らかい感触が脚に伝わってきて、とても癖になるのだ。
「クスクス……、潰れた瓦礫の感触もいいわね……。この細かい感じがたまらないわ」
ユリシアは、瓦礫の小さな感触が楽しくて仕方ないようだ。
それは、決して砂粒の感触ではなく、この星で暮らしていた人間たちの建物が粉々になる刺激に他ならない。
身体が大きいからと言って、小さな人間を虐げたり、踏みつけたりするのが許されるわけではない。
だが、それ故に、そのことをユリシアは小人の街に自分自身のお尻や脚を通じてその小さな体に刻み込んでやるのが、自らの自尊心を他では味わえないくらいに、満たして楽しませてくれるのだ。
「あら?ちょっと潰しすぎたかしら?私は、ただ座っただけなのよ?」
ユリシアは、小人の街に向けて侮蔑を込めた含み笑いを浮かべながら、悠々と見下ろしている。
この星の住民たちにしてみれば、山のような巨人が突然現れ、自分達の街を情け容赦なく蹂躙しているのだと思うのだろう。
だが、ユリシアにしてみれば、外交官として、この星の代表者を探すために、少しだけ歩いて、疲れたからその場に座っただけなのだ。
後の報告書にもその様に書いて提出すれば、身体の大きさがこれだけ違うのだから、仕方なしと処理されてしまう。
あれ程の大蹂躙をしでかしてもユリシアは、ただ座っただけという言い回しで終わってしまう事柄に過ぎないのだ。
ユリシアは心の中で、日常では味わうことのない優越感に浸りながら、高慢ちきな微苦笑で小人の街を見下ろしているのだ。
「それにしても、大したものがなきもないのね、この星は……」
ユリシアはそう言うと、座ったまま小人の街を見渡してみる。
今こうして座っているのに、山の向こう側まで、簡単に見渡せてしまう。
なんとちっぽけな世界なのだろう。ユリシアの目線からすれば、この星の住民たちは砂粒みたいに小さい存在なのだ。
彼らの目線からすれば、自分はどんな風に見えているのだろう。とてつもなく大きな存在に見えているのだろうか、とユリシアは思ってしまう。
「この星に来て、よかったのはこの暖かい日差しくらいかしらね……」
彼女は手で日差しを作りながら、日光浴を楽しむ。
雲ひとつない青空。暖かい日差しが降り注いでいて、ユリシアの白銀のボディースーツと四肢を綺麗に照らし出す。
小人の街でユリシアが優雅に日光浴を取っているのとは裏腹に、彼女の巨体の回りで圧死を免れた小人たちは、巨人に潰されまいと死に物狂いの形相で逃げ出してた。
「(このまま、この星の代表者を待つのも悪くないかも……)」
ユリシアがそんなことを思っていると、彼女の耳元で不愉快な音が聞こえてきた。
それは、蚊か蠅のような、品のないブゥンというような音を立てて、彼女の回りを飛び回る埃のような存在。
あまりにも小さいくせに、中途半端な速度で飛び回るので、ユリシアはそれが何なのか、瞬時には判別できなかった。
が、次第に数を増していくそれは、やがて、この星を守る戦闘機なのだと、ようやく気付くことが出来た。
「あらあら?私に向って飛んできて、歓迎でもしてくれるのかしら?」
ユリシアが、皮肉交じりでその蚊の軍隊にそう言うと、戦闘機の群れは、一斉にユリシアに向けて機銃の弾丸やミサイルを撃ち放す。
「ん?もしかして花火でもしてるの?まさかこの程度のイタズラで、攻撃しているだなんて言わないわよね?」
ユリシアは、ミサイルや機銃をいともせず、微動だにしないまま、飛び交う戦闘機を眺める。
何発ものミサイルがユリシアに向かって飛んでゆく。だが、彼女はそれを防ぐわけでも、避ける話でもなく、悠々とミサイルの波状攻撃を受け止めている。
彼女が着ているボディースーツの前では、1000分の1サイズの戦闘機の攻撃など、痛くもかゆくもない。
それどころか、攻撃を受けた地肌でさえ、その爆炎の温かさを感じられるか微妙なところだった。ミサイルを撃ち切った戦闘機は、今度は別の角度からユリシアに向けて弾丸を叩きこむ。
だが、その攻撃もユリシアにとっては、マッサージ以下も同然である。蚊や蠅のような羽虫ごときの攻撃など、ユリシアにとっては微かな刺激でしかなかった。
彼女の体を刺激して、快感を得ることも不可能な、あまりにも弱すぎる攻撃。
ユリシアはそんな無力な小人たちの反抗に対して、無視することに決め込んでいた。
まともな知的生命体なら、これが無駄な攻撃だと理解でき、すぐに止むはずだと、ユリシアは思っていた。
しかし、ユリシアの予想は外れた。攻撃が止むどころか、ゴマ粒みたいな羽虫どもは、その数をさらに増して、まるで夕暮れに出てくる蚊柱のように、ユリシアを取り囲んでしまったのだ。
「ねえ……いい加減、諦めたらどう?あなた達の攻撃なんて、虫けら以下だって、理解出来ないのかしら?」
ユリシアは、周りを右往左往に飛び回る戦闘機に対して、若干の苛立ちを込めながら、小人たちに向かってそう語りかけた。
だが、一向に止める気配のない小人軍。ユリシアは圧倒的な力を持っているからこそ、最初は優しく諭す様に、語り掛け、友好的な交渉に運ぶよう心掛けてはいたのだが、攻撃を止める気配のない小人に対して、次第にユリシアも我慢の限界が来たようだ。
「はぁ……、しょうがないわ。優しく話しかけてあげるのも、もう限界。お望み通り、戦ってあげるわ」
ユリシアはゆっくりと立ち上がり、腰に手を付けて、まるで獲物を見るかのような、冷徹な目つきで小人を見つめながら、宣戦布告を叩きつける。
ユリシアの上空には、50機にも及ぶ戦闘機が密集して旋回している。その中の編隊から、三機ほどが離脱し、下降を始めた。
出来るだけ、巨人にのみ攻撃を与えて、街への被害を最小限にするため、戦闘機たちはユリシアに対して肉薄して攻撃をしようとしているのか。
そんな小さな彼らに対して、防御を取ることもなく、むしろ手を上げて、指で小さく手招きをしてあげるユリシア。
彼女は、まったく彼らの攻撃が効かないことが分かっているので、余裕綽々で、小人を挑発している。
ユリシアの目の前に迫った戦闘機は、ミサイルや機銃を一斉に撃ち放つが、ボディースーツに炸裂しても、蒸発して消えてなくなってしまう。
「あらあら、やっぱり蚊どころか、蛆虫にも劣るわね。あなた達」
攻撃を終え、上昇して上空の編隊に帰ろうとしているのか、ユリシアを攻撃した3機の戦闘機は、彼女の目の前で上昇離脱し始めた。
すでに、彼らの動きは見切っている。ユリシアはすっと戦闘機たちに手を伸ばして、掌で煙を払うような動作で、戦闘機たちを薙ぎ払った。
たったそれだけのことで、ユリシアの指先に触れた戦闘機は、その場で一気に火を吹き上げ、塵も残さずに霧散してしまった。
「(えっ、これで終わり?)」
あまりにも呆気なく、霧散してしまった戦闘機たち。いくら小さいとはいえ、戦闘用なのだから、もっと手ごたえがあると思っていたユリシアは、戦闘機の余りにも脆すぎる弱さに拍子抜けしてしまう。
「くすくす……、ふふふっ!あれだけ私にやりたい放題しておいて、それはないんじゃないの?」
ユリシアは小人をあざ笑うかのように、上空を見てみる。
僚機の仇討のつもりなのだろうか、今度は上空の編隊から、5機の戦闘機がユリシアに向かって突撃してくる。
「うふふ、今度は5機ね、もう少し、楽しませてね♪」
ユリシアは、今度は両手を戦闘機に伸ばして、広げた手の平の間に戦闘機たちが来るように、狙いを定めた。
自分たちの回りを巨人の手のひらに囲まれている。そう気づいた戦闘機の編隊が気付いた時には、すでに遅く、ユリシアは一気に、彼らの数百倍の大きな両手を閉じた。
彼女が手を広げると、掌に5つほどの黒いシミが張り付いている。それが戦闘機の成れの果てだとは、言われないとわからないくらいに、くしゃくしゃに潰され、スクラップと化していた。
「本当に弱いわ。遊び相手にもならないわね……」
ユリシアは、飛行機の残骸を指で弾いたのち、残った汚れを拭う。
この星の技術の粋を結集した戦闘機も、ユリシアの前ではまるで玩具の様に簡単に、指で潰したり、手を開いただけで吹き飛ばされて、消し炭になる。
もはやユリシアが彼らを攻撃しても、戦いにもならない。それがより鮮明に身をもってわかると、上空にいた戦闘機集団はどうしたらいいのか、判断がつかないようで、攻撃を止めて上空で旋回を続けている。
彼らは、さすがにあの巨人でも、ここまでは手が届かないので、安全だと思っているのかもしれない。
ここまでいいように攻撃され、我慢の目盛りが振り切っていたユリシアは、彼らを見逃すつもりは毛頭なかった。
彼女が身に着けているボディースーツには、護身用の武器も装備されている。腰についている、その武器を手に取ってみた。手のひらに収まるくらいに小さい小型のレーザーピストル。
相手を怯ますくらいの威力しか与えないものだが、いま彼女が使える遠距離武器はこれくらいしかない。
「ふふ……、おもちゃみたいな武器だけど、これで十分よね?」
ユリシアはそう言い放つと引き金を引いた。
ユリシアの手元に放たれる朱色のレーザー。その閃光は上空の戦闘機に向かって一直線に放たれ、その光が当たった戦闘機は一瞬で爆散してしまう。
スタンガン程度の出力しかない護身用武器にもかかわらず、それでも倒せるほど、この星の兵器は脆かったのだ。
「あら?こんなもので十分みたいね♪」
ユリシアは面白いように何度も、戦闘機に向けて引き金を引いてみる。すると、殺虫剤を吹きかけられた羽虫みたいに、光線を浴びた戦闘機は破裂して墜落していく。
ユリシアが引き金を引くたびに、戦闘機の数はみるみる減っていき、気がつけば数えるほどしか残っていなかった。
「ふふふっ、他愛もないわね……。」
全滅に近い損害を出した戦闘機たちが、逃げる様にその場から離れていく。そんな様子を眺めながら、ユリシアはつぶやく。
そろそろ、無駄な抵抗をしないで、交渉のテーブルについてくれるだろうか。そんな淡い期待を抱きながら、ユリシアは小人の反応を待ち続けた。
しかし、待てども、待てども、彼らからの返事はない。
「(何をしてるのかしら……?)」
ユリシアは、苛立ちを覚えつつ、腹いせに足元のビル群と小人たちを踏みにじって、その苛立ちを鎮める。
彼女に対する、この星の返答が帰ってきたのはちょうどその時だった。それは、使節団や外交官といった高尚なものではない。
ユリシアに対する返答として帰ってきたのは、上空に広がる眩いばかりの閃光。それは、この星が持つ最も強力な攻撃手段。核攻撃だった。
一つのミサイルに12個の弾頭を持つ多弾頭核ミサイルは、本来であれば広範囲に攻撃範囲を持つミサイルだった。
だが、今回の目標は敵都市ではなく、一人の巨人。人類の1,000倍の体格を持つ、傍若無人で、無慈悲に、市民を蹂躙していく巨大な侵略者に対してだった。
攻撃を加えた戦闘機隊では全く歯が立たず、通常戦力ではあの巨人は倒せないと判断した政府が、自国の都市を破壊してでも、巨人を殲滅するべく核ミサイルを放ったのだ。
眩い閃光がユリシアの視界を覆い尽くす。ユリシアは一瞬で目の前が真っ白になり、後から爆音と衝撃波、そして核反応による熱波がやってきては、ユリシアの身体に当たって爆ぜる。
ユリシアは核ミサイルの爆風に晒されるが、高度な防護機能を持つボディースーツが、彼女の身体をコーティングしている今では、衝撃波も熱量も、ユリシアの身体を害すことはできない。
爆炎から晴れると、ユリシアはゆっくりと顔をあげて、空を見上げた。
核爆発の影響で、空には灰色の煙が立ち上り、街は黒茶色の荒野に変わり果てていた。
すぐに彼女は体の様子を確認するが、どこにも外傷はなく、彼女が着ていたボディースーツにも傷一つない。
ユリシアが纏っていたボディースーツは、核爆発の衝撃と熱をほぼ無効化していた。
「ふっ……!」
同胞を犠牲にしてまでの決死の攻撃が、不発に終わったのを目の当たりにしたユリシアは、その無力さと虚しさに笑ってしまった。
「そう、それがあなた達の返事なのね……」
ユリシアはそう吐き捨てながら、目線の先のまだ被害のない市街地を見つめる。
「いいわ、お望み通り、どこまでも踏みつぶしてあげるから、楽しみにしていなさいね♪」
ユリシアは市街地に向かって歩き始めた。こうして彼女の際限のない蹂躙劇が本格的に始まった。
女王の来訪 小人目線
それからという物、毎日のように、ユリシアは惑星中の大陸に上陸しては、目につく都市を蹂躙し、破壊し、小人たちの無力さを痛いほどに分からせてやった。
ようやく降伏の条件を彼女が持ち掛けてきたのは、そんな蹂躙劇が始まって1週間が過ぎたころ、すでにこの星の5割以上の都市が被害を受けて、総人口の2割ほどが減少したころだった。
降伏したらどんな仕打ちが待っているのか、戦々恐々としていた人類だったが、降伏条件は『惑星のすべての所有権はクラウディア女王に帰属する』といった文言だけが目立つ内容で、そのほかは特に当たり障りのない内容だったし、降伏して巨人の所有物になっても、人類が今まで通り活動することは認められていた。
条約を締結した後、あの巨人、ユリシアはそそくさと宇宙に帰ってしまった。
それから1年ほどすぎ、破壊された都市の復興も順風満帆とは言えないものの、ある程度の成果が見られるほどに進んできた。おとなしく従えば、巨人たちはこの星にもやってこないし、もちろん蹂躙行為もしてこない。
こんなことなら、さっさと彼女たちに従えばよかったのに……。
そんな声も聞こえそうなくらい、今のこの星には平和な時間が流れていた。
だが、巨人たちの所有物となった惑星がどうなってしまうのか、彼らは、まだ知らない。
***
ある日、ユリシアから惑星の代表団へ、『クラウディア女王が来訪するので、歓迎の準備を進める様に』と、通知が送られてきた。
彼ら巨人たちをどの様に歓待すればいいのか分からないが、とにかくあの巨人たちを怒らせたら、再びあの悲劇が繰り返される可能性がある。
我々人類は、不安を感じつつも、彼女の指示通り、歓迎の式典や公共施設の整備に余念がなかった。
この歓待式典に彼女たちが、満足するかどうかはわからない。だが、出来ることはすべてやるしかない。
人類一丸となり、巨人の女王を迎え入れることに余念を欠かさないつもりで、この大事業に取り組んだ。
だが、なんだろうか……。何かを忘れている気がする。何がとは言えないが、ずっと心残りになる、何かを忘れている気がするのだ。
嫌な予感がする……。だが、誰もその心残りの一点を思い出すことなく、ついに女王来訪の日を迎えてしまった。
***
あの日、ユリシアが訪れた時と同じように、空を覆いつくす銀色の巨大な船体がやってきた。
ゆっくりと、月が落ちてくるかのような錯覚をも覚えさせる、その巨大な宇宙船の進入に、市民は茫然と見上げることしか出来ない。
全長50kmという巨体と、例の巨人の女王が乗船している巨大な宇宙船は、音もなく大気圏に再突入して、地上へと降下してくる。
船底が地表に触れると、船底のハッチが開き、フラップが降りて、地上への階段が現れる。
ズゥウン……。ズゥウン……。
飛行物体から、大質量が動く振動と、足音が重く響き渡る。
ついに、船底のハッチから一人の少女らしき姿が現れた。あれが話に聞いた女王なのだろうか?
巨大な宇宙船のサイズに見合った、1,700m以上はある巨大少女は、地球風に言うと白を基調とした礼服に身を包み、金髪をアップに束ねている。
背中は、大きく開いたスタイルで、上半身をタイトに包み、ボディラインを露わにしており、赤と白を基調としたドレススカートを靡かせながら、地上のビルが矮小に見えるほどに巨大なヒールで、ゆっくりと地表に降り立っていく。
ズドオオオオン!!!
ドレスに合わせた白色の巨大なハイヒールが、地上の建物を踏みつぶしながら君臨した。その巨影に、都市部は昼間から夜になったかのように暗くなり、歓待セレモニーの準備をしていた市民たちは、怯えて聳える巨大王女を見上げるしかない。
ズシィィィン……。と靴底で地響きを鳴らしながら、彼女はゆっくり足の位置を調節し、そして、ゆっくりと地上の様子を見渡したのち、巨大な唇が動き出した。
「地上の皆様、初めまして、わたくしはクラウディアです。この度は、皆様の惑星への来訪を受け入れていただき、ありがとうございます」
彼女の巨大な唇は、上品に微笑むと、軽く頭を下げた。品のある動きから発せられる声は、上品かつ、静かだがよく通る声質だったが、その巨体故、地響きを引き起こし、地上にいた人間たちを文字通り震えさせるのに、十分すぎるほどの声量だった。
「早速ですが、会場はどちらでしょうか……。あまり歩き回ると、皆様があまりにも小さすぎるので、被害が大きくなってしまわないか心配でなりません。なので、出来れば案内していただきたいのですが……」
クラウディアは上品かつ優雅な笑みとともに、ビル群の真上につま先をかざして、ゆらゆらと揺らして、”このまま足を降ろしたら、このビルたちがどんな風になるのか、想像するに容易い”と、暗に脅迫しているようだ。
「お……、会場はこちらです」
代表団の一人がヘリコプターを使って、クラウディア女王の顔の位置まで上昇したのち、水先案内をする。
「ありがとうございます」
クラウディアは軽く会釈をすると、そのままハイヒールでゆっくりと都市部の街並みを踏みしめながら、案内役のヘリコプターのあとをついて歩く。
ヒールが下ろされるたびに、無数のビルや道路、そしてそこにいる市民が犠牲となってしまうのだが、それを咎められるわけもなく、ただ、これ以上の被害を出さないよう、一刻も早く歓待会場へ巨大女王を案内させる必要があった。
ヘリで水先案内人をしている代表者は、後ろに着いてくる巨大女王の巨大な顔と、ドレスに包まれた大迫力のボディに気圧されながらも、なるだけ被害の出なさそうなルートで案内するよう、パイロットに伝える。
無論、歓待を任された代表団は、巨人の来訪にあたって人的被害をなくすために、あたり一帯を閉鎖して、無人にしておいたのだが、こともあろうに巨人の宇宙船は、予定より遥か10km以上も着陸予定地点からはずれて、着陸してきたのだ。
だが、我々人類にしてみれば、10kmの距離は長大だが、あの巨大な女王にしてみれば、歩いて数歩の距離でしかないのだ。
そう考えれば、巨人である彼女らからみて10km程度など、数メートルくらいの誤差にしかならないのかもしれない。
だとすれば、彼女たちのスケールを見誤った、我々人類に非があるといわれても仕方がない。
”踏み潰されるのが嫌なら、もっと早く逃げればいいのに”
かつて、この星を蹂躙したユリシアなる巨大少女に言われた言葉を思い返す。彼女ら巨人から見ると、我々人類はアリよりも小さい体長1㎜ほどのミジンコ並みのサイズだ。
そんな自分たちは、彼女たちの足の長さを走りきるだけでも、30秒以上もかかるのだし、巨人の一歩は、人類が車を使っても数分を要する。
これほどまでにスケールが違うのだから、早く逃げようにも限界があった。
重々しいズシンズシンという足音が街を支配している。
地上に向けヒールが勢いよく落ちてくると、凄まじい振動が街全体を激しく揺さぶる。その振動で、多くの建物が崩れ落ち、無数の人がそれに巻き込まれて生き埋めとなった。
地上の阿鼻叫喚の地獄絵図とは、打って変わって、上空1,700mにある、クラウディアの表情は笑顔だ。
だが、きっとそれは地上の惨劇を知らぬからであるからだと、代表者は強く思いたかった。
ようやく、歓待セレモニーを催すため会場となった公園の前まで、巨大女王を連れてきた。
時間にして1分もかからない。だが、その間に、巨大女王が歩いてきた足跡が、宇宙船から一直線に規則正しく並び、地上の街に痛ましいクレーターとなって、無残な姿に変えられた建物の形跡を残している。
その光景を見て、代表者は息をのむしかなかった。
「着きました、こちらが会場でございます……」
息も絶え絶えになりながら、会場の公園を指し示すと、クラウディア女王はそれを見つけたようで、顔が明るくなった。
「まぁ、素敵。こちらで歓待のセレモニーを行うのですね、では早速、伺いましょうか」
クラウディア女王が、にこにこと満面の笑みを浮かべながら公園を進むと、その巨大な足が地面をえぐり取りながら進んでいく。
「あっ……」
女王の小さな叫びと共に、踏み下ろしたハイヒールがカクっと曲がって、バランスを崩した。
彼女がバランスを崩したのか、それとも巨人の体重で地面が滑ったのかは定かではないが、ともかく、5,000万トン以上もある巨体が、バランスを崩したのだ。
地上からは、山のような白いドレスを着た巨人が、ゆっくりと、まるで長い間、スローモーションのように前のめりに倒れていくようにも見えた。
まさか、あの巨人が倒れこんでくるのか!?
そんな嫌な予感を浮かべたその瞬間。ドレススカートから、反対の脚がとっさに伸びて、大地に力強く、踏み込んだのだ。
ドオオオオオンン!!!
クラウディア女王が、倒れる前に踏み込んだ脚のおかげで、彼女が地面に着く事態は免れた。
しかし、結果的に倒れかけた彼女を、大地への踏み込みだけで支えることになってしまい、再びヒールが地面についた時に起こった衝撃は、とてつもないものだった。
巨人が踏み込んだ脚の回りにとどまらず、あたり一面は、凄まじい轟音とともに、振動と、地震が起こり、広場を囲んでいた木々や、建物、そして人間がバタバタと倒れていった。
「あら? いけない。ヒールが滑ってしまいましたわ……」
クラウディア女王は何事もなかったかのように、目の前で起きた出来事を振り返っていたが、目の前の人間たちからしたら、たまったものではない。
突然、倒れかけた巨大な女性巨人が、ヒールを履いたおみ足を踏みしめたせいで、自分たちは虫のように潰されるか、跳ね飛ばされてしまったのだ。
そして目の前には、巨人が引き起こした地震で、滅茶苦茶になってしまった歓待式典の会場。このままでは、式を執り行えないのは明白だった。
「……そういうことですので、陛下には今しばらくお待ちいただく形となってしまい、大変申し訳なく……」
代表者は、歓待セレモニーの開始時間が遅れることを伝える。だが、クラウディア女王は、来た時と同様に、品のある微笑を絶やさないまま、地上の小人を心配するような様子で、代表者の居るヘリコプターに語り掛けた。
「構いませんわ、もとはと言えば、私のせいでもありますし、1時間でも2時間でもお待ちします。少しくらい延期したからといって、さほど問題ありませんわ」
クラウディア女王は笑顔を崩さずそう言ってくれたが、いつまでも彼女を待たせるわけにはいかない。
なぜなら、ここにあるのは、すべて地上の人間に合わせた世界しか存在しておらず、クラウディア女王が座れる椅子一つないのだ。
いつまでも、彼女を立たせておくわけにはいかない。女王は気品のある対応を見せてくれたが、この星を管理しているユリシアに、このことが知られたら、どんな事になるか、わかったものではない。
「お取込み中の所、大変申し訳ないのですが……、実はわたくし、ずっとトイレを我慢していまして、もう限界なのです……。申し訳ありませんが、お手洗いはどちらでしょうか?」
「え? トイレですか……? 」
代表者は、水を掛けられたかのように、急激に冷静になった。
そうだ、何かをずっと忘れていた気がしたが、トイレ事情のことをすっかり忘れていた。
巨人のトイレ……、それも1,000mを優に超す巨躯を誇る巨人である。一体どれだけの規模が必要なのかは計り知れないが、この街に彼女の生理現象を受け止められる施設はどこにもない……。
彼女が乗り込んでいた宇宙船ではどうだろうか?代表者がクラウディアの後ろを見てみるが、すでに宇宙船の姿はどこにもない。
「歓迎式典の間、大きな宇宙船は邪魔になるかと思い、宇宙に上げてしまいました。今から呼び戻しても、戻ってくるのは30分後くらいでしょうか……」
クラウディアが代表者の疑念を見透かしたように、宇宙船の事を話す。戻ってくるのは30分後……であれば、女王にはあと30分待ってもらうしか……。
「すみません、もう限界なのです……。迷惑にならないところで済ませますので……」
「あっ!ちょっと……」
代表者の制止も聞かず、巨大女王はさっさと式典会場とは反対に向かって歩き出す。ヒールの立てるズシンズシンという足音が、街全体の人間全てにさらなる恐怖を与えた。
「あの巨人がこっちにくるぞ!!」
歓迎式典から外れていた街では、一目巨大女王の姿を見てみようと、野次馬がごった返していた。
本来ならば、巨人が通らない安全地帯の筈のエリアに、ドシンドシンと足音を響かせながら、女王が向かってきたのだ。
パニックになる民衆。すぐに道路は人であふれかえり、市民たちの逃げ惑う姿が見られる。
だが、この巨大なドレス姿の女王にとっては、そんな矮小な小人の事よりも、自分の生理現象から来る不快感を済ませる事の方が気になる様子で、トイレにふさわしそうな場所を探して、きょろきょろと見渡している。
そうして、うろうろと歩き回ることで、多くの人々が逃げる間もなく巨大なヒールの下敷きになって踏みにじられ、次々と町に巨大な靴跡が刻まれていった。
そして、巨大女王が何かを見つけると、飛び出すように彼女は歩き出した。
巨人がそこに向かうまでの数歩。距離にして10kmほど。急いで向かっているのか、早歩きで向かうその勢いは、彼女の巨体のスケール故に、一歩歩くごとに住宅が踏みつぶされていき、建物と人々をかき混ぜながら、瞬く間に到達する。
そして、目指す場所にたどり着くと、彼女は立ち止まる。
彼女の脚の間にあったのは、スタジアム球場。
白い天蓋を被った5万人を収容できる、この街では一番大きな空間であり、巨大女王から避難した市民で満員状態だった。
巨大女王は、スタジアム横に立てられていた高層ビル3棟を、邪魔だと言わんばかりに片足のヒールの下に踏み潰しながら、そのドームの真上に、しゃがみ込むと、ドレスのスカートを捲り上げながら、巨大な純白のパンツが露わとなった。
「ふぅ……、すみませんが、ここで失礼させていただきます」
そういうや、クラウディアは、パンツをするするとずり下ろした。
球場にいた市民からは、突然、スタジアムの上空を巨大な尻が埋め尽くす光景が目に映っただろう。
ぷっくりと膨らんだお尻に、割れ目にある噴火口のような巨大な穴。巨大な桃尻を支える巨大な白い太ももが交互に視界に入る。
しかし、市民がその光景をまじまじと見る時間などなく、彼女が勢いよく腹部に力んだことによって、全てが終わった。
女王の来訪 女王目線
クラウディアが、地上に降り立つ前日。彼女の宮殿内で、地上に降り立つ日を待ちわびているクラウディアの姿があった。
「ああ、もう待ちきれませんわ。早く、あの星の地上を踏みしめてみたいものです……」
そう言いながら、小人の星に君臨した自分の姿を想像して、身震いする体を押さえる様に手を添える。
「まったく……姫様ったら……」
そう言って、呆れた様子で彼女の姿を見るのは、側近を務めるユリシアだ。
クラウディアに忠誠を誓う彼女だが、その反面、歳も近いこともあって、二人だけの時は友人のような関係を築いている。
「だって、聞くところによると、まるで文明も発展していない、原始的な文明のくせに、人口だけは一丁前に惑星中に蔓延る、矮小惑星ですのよ?あぁ、早く彼らを踏みにじって、絶望にも似た、その顔が見たいですわ……」
そういって、クラウディアは遠くを見つめながら、既に気品もかなぐり捨てて、気持ち悪いほどに身悶えしている。
「本当にクラウディア様は、小人をいたぶるのがお好きなようで……」
「あら、そう言うあなただって……。それよりも、歓迎式典とやらをしているのは本当なの?」
「ええ、事前にクラウディア様が来訪するので、準備するようにと言いつけてきましたので」
「そう、小人の歓迎なんて、どうせ大したものではないのにね……」
「まぁ、彼らなりの歓迎を見た後で、蹂躙してやるのも面白そうではありますが」
「それも、面白そうだけど、今回は『アレ』を久しぶりにしたいわ。ユリシア、ちゃんと街は残してあるのでしょうね」
「『アレ』ですか、クラウディア様。私には、あれのどこか楽しいのか、わかりかねますが、一応街は残しております」
「まったくユリシアは、『アレ』の楽しみを知らないなんて……、まぁいいですわ」
クラウディアは、そう言って玉座から立ち上がると、宮殿のバルコニーに向かう。
夜の帳が降りたバルコニーは静かで、涼しい風が吹いて、火照った彼女を心地よくなでてくれる。
「明日が楽しみね……」
クラウディアは、寝室に戻ると、側近のユリシアに見送られながら、明日への期待を胸にしながら眠りについた。
***
歓待式典当日。クラウディアは伴を連れずに、小人の惑星に降り立とうとしている。
小型の一人用の宇宙船で大気圏を通過し、地上が見える高さまで降り立つと、その矮小さがよくわかる。
地面に広がるのは、大小様々なビルで埋め尽くされている街並。この惑星では都会の部類に入るのだろう。
この星の小人に見合った繁殖力らしく、呆れるぐらいに、どこまでもビルが密集して続いている。
当初、小さすぎて楽しめるか疑問だったが、これほどまでに蔓延っていれば、2ミリ足らずの小人が作った街でも、壊しがいがありそう。
そう思いながら、クラウディアは街を見下ろすと、既に歓待式典は始まっているのか、中央では花火が打ち上げられ、音楽も鳴り響く。
後は予定通り、友好的な態度を崩さず、適当に微笑んでいれば、自分の企みも最後の時までは、バレないだろう。
宇宙船が着陸するとき、ちょっと意地悪して予定地より数メートルだけ離れた場所に着陸してみる。
自分にとってみれば、数メートルの誤差だが、きっと足元の小人にしてみれば、数キロ以上離れているに違いない。
予定とは違うところに降り立つと、どんな反応を返すのだろう?
砂粒ほどの小人の反応を楽しむべく、クラウディアは宇宙船のハッチを開き、外に躍り出る。
「地上の皆様、初めまして、わたくしはクラウディアです。この度は、皆様の惑星への来訪を受け入れていただき、ありがとうございます」
ドレスの裾を持ちながら、地上に降り立つクラウディア。
予想通り、地上を埋め尽くすビルは、10㎝にも満たない小さい物ばかりしかない。それはつまり、今日はいているヒールよりも低いビルがほとんどという事になる。
数メートルだけ離れたところに、30㎝程度のビルも見受けられるが、それでも彼女の膝よりも低いのだ。
クラウディアは全身に、この街の小人の視線を受け、ピリピリとした緊張感を感じる。
それは小人から見たら、1.7km級の巨人が降り立ったことによる恐怖による緊張が、小人の視線から伝わってきたものであり、街中が自分の姿を見て、恐れおののいている証拠なのだ。
知能のない微生物では発せられない、この視線による刺激をクラウディアはいつも楽しんでいる。
「早速ですが、会場はどちらでしょうか……。あまり歩き回ると、皆様があまりにも小さすぎるので、被害が大きくなってしまわないか心配でなりません。なので、是非とも皆様に案内していただきたいのですが……」
まずは、ゆっくりと、お道化たり、感情を込めずに、宮廷作法通りに小人に話しかける。こうすることで、身体の大きさは違うけれども、対等な立場として、礼儀をもって接しているつもりを、見せることが出来るのだ。すると、近くのビルの屋上から、ヘリコプターが飛び立つと、自分の顔の目の前の高さまで飛んできた。
おそらく、自分との接触を図るため、飛んできた小人なのだろう。
あまりにも小さすぎるし、顔の前をひらひらと飛んでいるのを見せられると、手でパチンと潰したくなる。だが、その欲求を抑えなければ……。
まだ、本性を見せる時ではない。ヘリコプターのスピーカーから、蚊の羽音よりも、さらに小さいか細い声が聞こえてきた。
「お……、会場はこちらです」
なるほど、こいつが案内をしてくれるのか。よたよたと儚げな飛行で、クラウディアの先導をしてくれるヘリコプター。
そのあまりにも遅すぎる飛行速度に、苛立ちを覚えるクラウディアだが、そんな苛立ちを見せる訳にもいかず、一言お礼を言って後を付いていく。
クシャ、クシャ。
足を降ろす度、小人の建物がつぶれる感触が、足裏から伝わってくる。今日はヒールの高い靴を履いているので、靴底の接地面が少なく、その分、体重がつま先とヒール部分に集中して、ずぶずぶと足が地面にめり込んでゆく。
今日は白い靴を履いてきたので、潰れた小人の建物と沈み込む地面で、靴が汚れるのが不愉快だった。
きっと、足の裏では、いくつもの建物がつぶれて、何千もの小人が巻き込まれているのだろう。
だけども、クラウディアの関心は、潰される小人よりも、歩く度汚れる靴の心配が勝ってしまう。
小人が用意した歓迎式典の会場は、歩いて数歩の距離だった。
「着きました、こちらが会場でございます……」
ヘリコプターから、この緑色をしている椅子ほどの広さの場所が、歓迎式典の会場なのだと説明された。
「(これが会場なの!?あきれた、私の使っている椅子よりもずっと狭い広さじゃない。よくこんな粗末なもので、歓待式典が行えるものだわ。)」
クラウディアは、心の中で会場をあざ笑い、一言皮肉でも言ってやりたかったが、まだ本音は抑えた。今はまだ、巨大だが優しい女王であるところを、小人たちに見せつけないといけないのだ。
「まぁ、素敵。こちらで歓待のセレモニーを行うのですね、では早速、伺いましょうか」
ふと、クラウディアの中で、悪戯心が芽生えた。
ここで、思いっきり足踏みをしたらどうなるのだろうか?
クラウディアは、自分の邪悪な計画を実行するべく、脚をくじいたふりをして、体勢を整えるために、反対の脚を思いっきり、小人の街に踏み込んでみた。
ドンっ!と大きな音が足元から聞こえる。クラウディアは決して体重が重いわけではない。にもかかわらず、踏み込んだ彼女の右足は、小さな街にちょっと踏み込んだだけで、猛烈な土埃を上げて、建物も乗り物も、砂のように舞い上がり、足を置いた土地を消滅させてしまった。
足元から伝わる、『ズシン』という振動が、街全体に伝わり、きっと小人からたら、天変地異のような衝撃だったのだろう。
土埃が晴れた地上から見えるのは、クラウディアが足を置いた衝撃で、ぐしゃぐしゃになった都市の情景。
たった一歩でこれだけの破壊力を見せつけることができ、圧倒的な力を誇示したことで、クラウディアの嗜虐的な感情が続々と体中を駆け巡り、気持ちがよくなってきた。
「あら? いけない。ヒールが滑ってしまいましたわ……」
一応、この状況を説明するために、言葉にしてみたが、ちょっとワザとらしかっただろうか?
すぐに、地上の惨状と状況が伝えられたのか、ヘリコプターから、式典が遅れる旨の説明があった。
予想通りの状況だ。ちょっと焦った様子で謝罪するヘリコプターからの報告を聞き、クラウディアはにっこりと微笑むと、気にしていない素振りで返答してみる。
だが、ただ待つのも面白くない。ちょうど、『アレ』も降りてきたところだし、もうやってしまおうか。
「お取込み中の所、大変申し訳ないのですが……、実はわたくし、ずっとトイレを我慢していまして、もう限界なのです……。申し訳ありませんが、お手洗いはどちらでしょうか?」
「え? トイレですか……? 」
――いい、この反応だ。
期待通りの反応が小人から帰ってくる。この世界で圧倒的に巨大な自分が、催したと言った時、小人はどんな反応を見せてくれるのか。
今回もそんな小人たちの反応は素晴らしく、あの巨人がトイレを済ませるにはどうすればいいか。だけども、我慢してもらいたいが、どうやって言えば、怒らせないで済むのか、頭の回転をフルに回して、考えているその姿が滑稽で愉快だ。
「歓迎式典の間、大きな宇宙船は邪魔になるかと思い、宇宙に上げてしまいました。今から呼び戻しても、戻ってくるのは30分後くらいでしょうか……」
トイレを宇宙船で済ませてほしいという、小人の逃げ道をあらかじめ、塞いでおく。本当は、宇宙船も呼び出せば、来るのに数分もかからないのだが、そんなその場しのぎの回答はつまらないし、受け入れてあげる気もない。
だが、この星の小人は頭が悪いようで、どうしたらいいのかわからない、といった様子が延々と続いている。
つまらない。クラウディアはいつまでも、こんなつまらない小人に付き合うつもりはなかった。
「すみません、もう限界なのです……。迷惑にならないところで済ませますので……」
「あっ!ちょっと……」
ヘリにいた小人の制止も聞く素振りを見せず、ずかずかと小人の街を踏み潰しながら、トイレに都合のよさそうな場所を探してみる。
だが、どれも、足の指よりも小さな建物ばかりで、つまらない。
せっかくだから、この街のシンボルのような、そんな場所で用を足してみたい。クラウディアは街の散策を続けていく。
小人のビルはとても脆く、ほとんど抵抗がなく靴底の下で潰れていく。これほどまでに貧弱な建造物では、クラウディアの”モノ”が覆いかぶさったら、一瞬で潰れてしまうだろう。
それでは面白くない。もっと、こう、街のシンボルを自分の産み落としたもので、汚して置き換えたい。
そんなことを考えていると、町の一角に開けた場所を見つけた。おそらくこの街のスタジアム型の施設なのだろう。高さは他のビルと同じくらいだが、広さがそこそこあるので、ここでいいだろう。
クラウディアはスタジアムを挟み込むように、脚を置いてゆっくりとしゃがんでゆく。
パンツを降ろし、ドレススカートが汚れないよう、裾を両手で抱え込むように座り込む。
準備は整った。後は、いつものトイレのように力むだけ。
「ふぅ……、すみませんが、ここで失礼させていただきます」
小人の街でトイレ 小人目線
巨人がドームを真下に跨いで、すぐに何をしようとしているのか理解できた。
それは、人間なら誰にでも理解できる。しゃがんだまま、踵に体重をかけるその姿勢は、人間が下腹部に力をいれやすい体勢だ。
先ほどまでの、トイレに行きたい欲求と付き合わせれば、身長1,700mの彼女がしようとしている事は、明白だった。
ヘリコプターに乗り込んでいた代表者は、高速で歩く巨大王女の後を追いかけて、ようやく追いついたところで、すでにクラウディアはスタジアムを跨いでしゃがんでいた。
「お! お待ちください。どうか、この場で用を足されるのだけは……」
代表者は必死に説得をするが、この距離では届かない上、クラウディアの姿を見て、諦めを感じずにはいられない。
彼女の括れた腰から、滑らかな曲線を描きながら大きく張り出したお尻は、人間たちが作り上げた建物に比べると、言葉にならないほどに大きさ、質量が違いすぎる。
巨人の股下に立ち並ぶビルなど、臀部の谷間に潜む、菊門の蕾よりも小さいといわれても、反論できそうもない。
その美しさと神々しさと同時に、得体の知れない恐怖感も醸し出す身体は、彼女の髪の毛ほどの体重もない、一人の小人の声掛けなどで、止まるはずがなかった。
ずっしりと、クラウディアの巨大なお尻が球場に被さると、そのまま巨尻の形に合わせて、丸い二つの影が天を覆いつくす。
スタジアムに避難していた人間たちからは、空一面に女性の股下がドアップで覆いつくしたように埋め尽くす。
人々はスケールの違いすぎるその物体に、一瞬何が覆っているのか、判別がつかなかったが、次第に冷静になるにつれ、ピンク色に染まった20mはありそうな割れ目が、巨人の女性器で、その後ろについているのが、肛門だと気付く。
すぐ目の前のピッチャーマウンドよりも大きく、肉感を醸し出しながらヒクつくその肛門は、今にも火蓋を切ろうかという大砲のような迫力に満ちていた。
巨人が迫ったことで、入り口がゆがみ、外に出られない人々は、その空を埋め尽くす巨大な尻がぶるりと震えるのを固まったまま見上げていた。
「んっ……、出そう……」
巨人がつぶやいた直後、あの大砲のような肛門を押し広げ、巨大な茶色いものがモリッと姿を現した。
長期間、大腸に閉じ込められ、硬質化した大便は、丸い大きな塊となって、クラウディアの肛門から、2つか3つほど、ぽろぽろと空から降ってきた。
ズゥウン!!ズゥウン!!
グラウンドの外野部に、巨人のうんこが降り注ぎ、芝生をめくり上げる衝撃を与えて、どっしりと鎮座してきた。
直径10mはありそうな、巨大なコロコロうんこ。それはまるで隕石のように、球場の中心で茶色く輝きながら、どっしりと鎮座している。
人々は、想像を超えた巨人の大便に声も出ない。
だが、巨大女王クラウディアの排便は、これからが本番だった。
「んぅ……出る……んっ」
ブブブブブっと上空から、ガスが漏れ出す豪快な音を立てたかと思えば、ムリッムリッ、と、巨大女王の大腸から高粘度の物体が移動する音がスタジアム全体に響く。その後すぐに、彼女の肛門から勢いよく大量の茶色い物体がひり出されてきた。
ブリッ!ブリリ……リュリュリュリュ……。
ぶりっと汚い爆音を鳴らしながら、モリモリと茶色い物体が一本の長い柱となって、スタジアム内に伸びてくる。
その直径は、40mを超えるであろう立派な一本糞。長さはどれほどになるのだろうか、まだクラウディアの肛門からは途切れることなく、大便が排出されている。
ズドオオオオオオオオオンンンン!!!!
綺麗なドームの芝生を茶色く染めて、なおも高粘度で、ねっとりと蛇行しながら、巨大女王の一本糞はドームの中心にとぐろを巻いてゆく。
上空では、まだ多くの茶色の物体が途切れることなく続いており、市民で溢れていたセンタースタンド席を押しつぶした後、折り重なるようにして、反対側のバックネット裏まで降り注ぎ、そこにいた無辜の市民を排泄物で圧し潰してしまう。
ズズズズズズズ……。
巨人クラウディアの大便が2、3回折り重なった時点で、すでにグラウンドは大便でいっぱいになり、高さは客席を遥かに超え始め、客席を茶色い悪臭漂う大便でどんどん埋め尽くされていく。
それでもなお、巨人の排便は収まることを知らず、さらにひり出してゆく。
巨大女王クラウディアの下品な大便が、人間の作った球場のキャパシティを超えるのは、時間の問題だった。
「ん……はぁ……うんっ」
ムリムリムリッ!!ブリブリッブリリ……!! クラウディアが大きな息み声をあげる度に、ミチミチと彼女の肛門を押し広げ、太い大便がひり出されていく。
球場のグラウンドをどんどんと埋め尽くしていく一本糞。その長さは球場全体が沈むまでに、長く太く成長していく。
全長550mに及ぶ巨大女の大便。その質量は計り知れない。その重量に抗うことが出来ず、スタジアムはミシミシと悲鳴を上げながら、大便に押しつぶされていく。
「うんんっ……」
ムリムリッ。
まだ続く巨大女王の排便。その排泄行為で5万人以上が生き埋めになったにも拘らず、そんなことは露知らず、排便はまだまだ続く。
「ふぅん……」
ブゥゥッ!!ブリリリリ……。
時折、艶っぽい声を出して、クラウディアが息み声をあげる。
ベキッ!バキッ!
遂に巨人の排泄物の重量に耐えきれなくなったスタジアムが、破滅的な音を立てて、折れていく。
スタジアムの外壁が、積み重なる大便の圧力で膨らんでいくようにも思えた。
クラウディアの排泄物で出来た巨大な大便が、球場全体をみっちりと覆いつくしたその結果、スタジアムの外壁はついに崩壊し、今まで抑え込んでいた巨人の排泄物がドバーっと、外に溢れ出す。
溢れ出た大便は、茶色の津波となって、逃げ遅れた民間人を容赦なく呑み込んでしまう。
さらに数万人が大便にどんどんと呑み込まれ、生き埋めにされて、巨人の排便はようやく終わりを迎えた。
小人の街でトイレ 女王目線
「んっ……、出そう……」
クラウディアは、お尻の真下にあるスタジアムを便器に見立てて、下腹部に力み始めた。
後ろで、ヘリコプターに乗っている小人が何かを叫んでいるようだが、あんなゴミみたいな小人の声など聞くつもりはない。
「(あぁ……、出てきた……)」
クラウディアは、下腹部にさらに力を込めて、うんこをひねり出し始めた。
ムリムリっと腸内が蠢き、直腸の出口に溜まっていた、硬質化したコロコロうんちが顔を出してきた。
ムリっ、メリメリメリメリ……。
括約筋をおしのけ、ミチミチとうんちがクラウディアのお尻から捻り出される。
ポト、ポトっと2,3個ほどうんちをひり出したら、スタジアムの中にうまく落ちたようで、お尻の真下で、小人の悲鳴がより一層大きくなったのが分かる。
便器から聞こえる小さな人間たちの悲鳴は、さながらトイレの音姫のよう。
巨大女王の乙姫役にされた小人の悲鳴を楽しんでいると、急に排便の勢いが増して、一気に便意が降りてきた。
クラウディアは、大腸いっぱいにあるうんちを勢いよくブリブリとひり出していった。
「んぅ……出る……ふんっ」
出てきたのは、肛門がめくれるほどにおおきな一本糞。あまりのサイズに、肛門からガスが漏れ出してしまう。
ミチミチ、ムリムリっと、彼女のお尻の穴を押し広げるように、立派な茶色い大蛇がひり出されれば、真下の便器から聞こえる音姫も、より一層強くなる。
「(ほら、がんばって、わたくしのうんち音をかき消してくださいまし♪)」
5万人の大観客が一斉に上げる悲鳴でも、かき消せない巨大女王の排泄音。彼女の排便音がスタジアムを、いや、市街地全体を包み込んでいた。
今、お尻にぶら下がっているうんちは、小人から見たらどんな風に見られているのだろうか。
茶色くて、ビルよりも太くて、長いそれは、小人から見たらきっとすごく大きくて、とてつもなく臭うものに違いない。
クラウディアは、自分に排便をさせた小人のことに想像をめぐらせながら、ブリブリとうんちをひり出していった。
ぼとっ。うんちがお尻から切り離され、スタジアムのど真ん中に横たわる。その長い茶色い物体は、グラウンドはもちろん。小人がたくさんいたスタンド席も押しつぶしてしまっている。
「(ああ、可愛そうに。うんちに押しつぶされるなんて、さぞ、怖くて屈辱的でしょうに……)
」
クラウディアは、小人たちがうんちの下敷きになっていることを想像して、ふっとほくそ笑む。
「(でも、やめてなんてあげませんわ……まだ、たくさんお腹に溜まってるのですもの♪)」
クラウディアは、小さな小人たちが生き埋めになっているのを想像して、ぞくぞくと背筋をふるわせる。
巨大女王の排便はまだまだ終わらない。お腹の奥でさらに縮み続ける、ぐつぐつと煮えたぎる熱い大便をひり出さんと、クラウディアは大きく息を吸って、思いっきり下腹部に力を込めた。
「ん……はぁ……うんっ」
ミチミチ……ムリムリッ。
ぼとっ。ぼとっ。何本もの茶色い固まりが、クラウディアのお尻からひり出され、ボトボトとスタジアムに落ちていく。
すでにスタジアムは、茶色い大便でいっぱいになり、小人で溢れかえっていたスタンドも、すべからくクラウディアの排泄物で圧し潰してしまっている。
あれだけ騒がしかったスタジアムの中は、嘘のように静まり返り、中で聞こえるのは、巨大女王の息み声と、うんちをブリブリとひり出す下品な排泄音だけ。
「ふんっ……」
ぶりゅりゅ!!むりゅりゅりゅりゅ!!! 一際大きなおならを放った後、クラウディアは排便の勢いを一気に加速させる。
ベキッ!バキッ!
足元で何かが壊れたような音がした。クラウディアが真下を覗き込むと、彼女の排泄物の重さに耐えきれなくなったスタジアムが崩壊していたのが見えた。
「(あらあら、せっかくのおトイレが壊れてしまいました。小人の建物はこれほどにも弱いのですね)」
クラウディアは自分が産み落とした大便で崩壊したスタジアムを見下ろし、ふっと鼻で笑う。
「ふぅ……。すっきりしましたわ……」
クラウディアは、すっきりした顔で、下腹部の不快感が解放された心地よさに、笑みを浮かべる。
青空の下、溜まっていたものを吐き出すのは、なんと気持ちの良いものか。それが知的生命体が築き上げた街のど真ん中なら、なおの事気持ちのいいものだ。
「んんっ……」
ぶりぶりっ……。ブビッ!!ブプゥウウ……!
クラウディアが排便の余韻に浸りながら、大腸に残ったカスとガスをひり出して、下品なピリオドを打つ。
後ろを振り返り、自分がもたらした災厄の惨状を確認してみる。
今しがた出た排泄物は球場を飲み込み、収まり切らなかったものは、外に溢れかえり、周囲のビル街まで埋め尽くしている。
クラウディアは自らの排泄物をたっぷりと見つめながら、あの大便の下には数万人の小人が生き埋めになってしまっているのだろうと、想像してしまう。
でも、悪く思わないでほしい。こっちはただの生理現象を済ませただけなのだ。お前たちもする人間でも行う排泄行為に変わりない。だから、そんな排泄行為に巻き込まれて死んでしまう方が、悪いに決まっている。
クラウディアは、自分がしたことに悪びれることもなく、むしろ、小人の建物よりも自分がひり出した排泄物の方が圧倒的に巨大で、そのスケールが全く違う存在感の方が誇らしかった。
そして思う、
――あなた達小人は、私のトイレ一回程度も、許容できないほどに矮小なのだと。
小人と人間の違いを叩きつけるかのような、茶色いオブジェに、思わず笑みが零れてしまう。
「はぁー、すっきりしましたわ……」
クラウディアは、自分が作った排泄物の山をみやり、誇らしい笑みを浮かべて、自分の肛門が汚れていることを思い出す。
「そういえばこの星には、私が使える紙はございませんの?」
クラウディアはわざとらしく、尻を拭く紙を地面にいる小人たちに所望してみる。
もちろん彼女の要望に応える小人など、どこにもいない。
「仕方ありませんわね。ここにあるビルを使わせてもらいましょうか」
そう言いながら、クラウディアは大便で沈んだビル街とは、反対方向の街区に右手を伸ばし、そこにあったビルを何棟か、土台ごと引っこ抜いた。
持ち去られたビルは彼女の尻の谷間へとあてがわれ、そのまま肛門へゴリゴリとこすりつけられた。
人が労力をかけて作ったビルを、トイレットペーパー代わりにしてしまう。彼女の傍若無人な態度は、もはや人間がどうこうできる領域を超えていた。
「ほぉ……、なかなか使い心地がよろしいではありませんか」
クラウディアは排泄物にまみれた菊門にこすりつけられたビルを気に入ったのか、何度も丁寧に自らの肛門へ押し当て、頑丈なビルと言えども、巨大の前では、紙くずも同じ。
尻の谷間や肛門を丁寧にビルを擦り付けると、ビルは徐々に茶色く変色していき、クラウディアの菊門が拭かれたところで、役目を終えたかのようにボロボロになって崩れ落ちた。
「使い終わったらゴミになりますわね」
巨大王女クラウディアは、自らの肛門の間ですり潰されたビルの残骸を投げ捨てると、すっと立ち上がり、綺麗になったお尻をパンツにしまう。
「それでは、式典へと戻りましょうか」
クラウディアは何事もなかったかのようにその場を立ち去った。
巨人の女が立ち去った後には、無惨に破壊された都市と、崩壊したドーム球場の跡地に鎮座する、山のように積もった茶色い排泄物。その下には不運にも5万人以上が生き埋めになっており、彼らを掘り返すため、都市の復旧作業をするために、数百万トンもの排泄物の除去作業をしなければならない。
この街で生き残った住人たちは、巨大女王が残していった、この星最高の汚染物質の処理に追われることとなり、その未来には暗雲が立ち込めていた。
巨大女王のために1000倍サイズのトイレを作る
あれから2年が過ぎた。クラウディアの衝撃的な来訪による復旧作業と、彼女が産み落とした排泄物の処理はあらかた完了した。
結局あの後、歓待式典が、終わるとクラウディアは、そそくさと宇宙に帰っていったのだが、この星を管理しているユリシアが、この自体を耳にしたのか、
"トイレひとつ用意できないで、女王陛下にご無礼をはたらくとは、女王陛下が許しても、私が許すわけには行かない"
と、惑星に降り立ち、不甲斐ない小人に罰を与える、と言う名目で、3つもの都市を潰されてしまったのだ。
ユリシアのお仕置きの後、残された人類は総動員で、巨大女王が残していった排泄物を除去することになった。
その巨大な置き土産の処理には、半年以上の歳月がかかったという。
自分たちの住処をトイレにされ、同輩が巨人の排泄物に押しつぶされ、挙句、巨人のトイレを用意できなかったからと、無関係な市民までもが蹂躙された人類。
そんな屈辱を受けたとして、彼らに抵抗する術はなく、巨人たちの要求にこたえることでしか、存在を許されない。
だから今度は、次回の女王訪問までに、彼女の使用に耐えられるトイレを建造する。
それが、彼らが導き出した生き残るための戦略。
この一大プロジェクトを立ち上げ、巨大トイレを建造し始めて、ようやくその全貌が見えてきた。
全周3kmにわたるエリアを頑丈な土台を築き、外壁として軽量コンクリートで囲い、巨人がしゃがみ込んだ際の目張りにする。
外壁の高さは最大で500m。巨人の全身を覆うことは到底かなわないが、太腿までの高さはあるので、しゃがんでくれればある程度は隠せる。
外壁の内側には、和式トイレをそのまま1,000倍にしたような施設が中心に据えられており、さすがに洋式トイレは用意できなかったが和式タイプならば、今の技術力でも建築可能と判断された。
あの日、クラウディア女王がひり出した大便の重さは約25万トン。それだけの量の排泄物は一度に下水や川には流せないので、雨水を地下に貯めておく、地下貯水池のような巨大な収容施設が作られた。
一旦はこの地下要塞に、巨人の排泄物を一時保管して、下水処理施設の処理速度に合わせて、埋め立て地や河川へと輸送するシステムとなっている。
もちろん、トイレの後の処理が怠らないよう、下水施設も通常のモノではなく、100万人を超えるような、大都市クラスの処理能力を備えた巨大な処理施設を下流域に複数建設した。
今この惑星で、できうる最大規模のトイレを建造したのである。プロジェクトの完遂の日は遠くない。
人類が一丸となって作り上げた、この巨大トイレが完成するころには、きっと女王も満足してくれるだろう。
その完成の日を心待ちにしながら、言葉にならない達成感で包まれた人類は、管理役のユリシアにも、巨大トイレ完成の予定日を報告したのだった。
しかし、それがまずかった……。
小人のトイレを使わせてもらう女王(10万倍)
「そう、わたくしが使えるトイレをね……」
「はい、前回訪問時にはトイレを用意できず、ふがいない結果となりましたが、このトイレが完成の暁には、姫様のご使用に耐えゆると、奴らは申しておりました」
「なるほど……。それは素晴らしいわね……」
クラウディアが、ユリシアの報告に顔をほころばせる。
「はい、あと1週間ほどで完成しますので、それまでお楽しみください」
「あらそう……。それは楽しみですわね……。では、完成の時にはお邪魔させてもらおうかしら、”本当の姿になって”」
「おや、それは……」
クラウディアはまんざらでもない顔で微笑むと、その整った顔をユリシアに近づける。
「献身的な臣民をもって、わたくしはうれしいわ」
「左様でございますね」
クラウディアとユリシアは互いの顔を見つめたまま、クスクスと笑いあった。
小人たちのトイレ完成まで1週間。その日、何が起こるのか。それはクラウディアとユリシアのみが知っている。
***
そして、トイレ完成当日。すがすがしい青空の下、ついに完成した巨大トイレの完成を祝い、多くの市民たちが竣工記念の会場に集まっていた。
まるで巨大要塞のような、堅牢な外壁に囲まれた巨大トイレは、見上げる人々を圧巻させる出来栄えであった。
これほど巨大なものであれば、あの巨大女王が使っても問題はないだろう。
そう思わせてくれるほどに、素晴らしい出来栄えであった。
しかし、唐突に会場が影で覆われてしまった。影の発生源を見上げると、そこには巨大宇宙船が空に漂っている。
「え……」
誰かが思わず声を上げる。無理もない。今まで巨人たちが利用してきた巨大な船よりも、さらに、異常なほどに巨大だったからだ。
まるで浮遊した大陸のような巨大さは、それを見ていた人々が心胆寒からしめるには十分であった。
「うそ……だろ?」
誰かがそう呟いた。こんな巨大な船が空を飛んでいるという事実に会場がどよめき始めたころ、船体の口が開き、中から人らしきものが降りてきた。
それはクラウディア女王であることに違いはないが、人々が驚いたのはその大きさ、以前に地球に降り立ったその大きさより遥かにでかい。
周りに比較対象となるものがなく、その全長を把握するのに時間がかかってしまったが、身長約170kmはあるという事が推察された。
「皆様、ごきげんよう」
その大きな唇から、女性の声が響き渡る。そのあまりの巨大さから会場の地面も震撼する。クラウディアの姿は、白のワイシャツに、スキニージーンズを身にまとっただけのラフな格好であることから、非公式な登場であることがうかがえた。
「今日はわたくしのために、皆様がトイレを作ってくれたと聞き、いてもたってもいられず、普段の大きさのまま、こうしてやってきてまいりました」
今日のクラウディアは、普通の大きさだという。1,000倍の時でも想像を絶する大きさだったのに、それが10万倍ともなると、もはや声も出ない。
「なんて素晴らしい……、わたくしのためにこんなに立派なトイレを……」
クラウディアは、巨大な腹をさすりながら、出来上がったばかりの巨大トイレを見下ろす。
彼女から見た地上の風景は、灰色の幾何学模様の絨毯にしか見えない。その中にあるピンポン玉サイズのトイレなど、言われなければ、見失ってしまうだろう。
「では、早速ですので、使わせていただきますね」
クラウディアがパンツごとジーンズを下ろす。巨大な臀部が露わになる。
そのサイズは、この街全体を覆ってしまうほどに巨大であり、空の代わりに広がる臀部は、人々の視界に収まり切らない。
街を覆いつくせるほどの大きさの、巨大な尻が惜しげもなく晒されている光景は圧巻であり、市民たちは、そのあまりの巨大さに息を呑み込んだ。
さらに、数十kmもある長い脚を折りたたんでしゃがみ込んだので、その巨大なお尻が地上に降りてきた。雲のずっと上にあった筈の巨尻が地上に降りてきて、女王の秘部が街の真上に君臨した。
しゃがんでもなお、雲よりも高いところに留まるクラウディアの臀部。しゃがんだことで、大分小さくはなっているものの、それでもこの星の最高峰よりも大きいことに変わりない。
パンツを脱いだことで街のいたるところから、女王の秘部を見上げることが出来る。縦に5,000mほどにもなる超巨大な割れ目。その後ろにある肛門は、山ですら呑み込めそうな巨大さだった。
そして、しゃがみ込み、位置を調節するクラウディア。肛門を小人が作ったトイレに合わせようとしているのだ。
「んっ、トイレがここまで小さいと、使うのも難しいですわね……」
しゃがみ込んだことで、ちょうど真下にあったトイレに向けて、お尻の穴が近づいてきた。
肛門のしわもはっきりと見えるその巨大な穴は、半径500mはあろうかという巨大なものだ。
もしも、あそこから大便が落ちてくれば、1年前のトイレ災害とは比べ物にならない被害が出てしまうだろう。
市民は、急いで逃げ始めた。が、すでに遅かった。
「ふんっ……」
クラウディアが力むのと同時に、彼女の肛門が、がばっと開いた。巨大なアナルが開き、中からクラウディアの大便が出てきた。
ブリュリュッ! ムリムリ!!
「ふぅん、大分溜まっていたから、ちょっと量が多いかもしれませんね……」
彼女の大きなお尻の肛門からモリモリと出てくる大便は、直径が3,000m以上にもなる、極太サイズであった。褐色に光り輝くその表面には、水分がたっぷりと含まれており、太く長いそれは、肛門からどんどんと伸びていく。
そして、排便とともにもたらされるのが猛烈な悪臭であった。いくら小人が作ったトイレがなくても、その何十万倍ものサイズであるクラウディアの大便はその量もすさまじく、それに比例して、匂いも当然強烈で、あまりの匂いに鼻が曲がってしまうほどである。
下品な光沢を浮かべる巨大なうんこは、女王の肛門から切り離させると、巨大な隕石のように地表へ落下した。
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
超巨大うんこが落下した衝撃で都市は大地震に見舞われた。
うんこの直撃を受けたトイレを含む、街の殆どは壊滅し、何万もの人々が巨大女王の排泄物の下敷きになった。
超女王の尻から産み落とされた大便は直径は4キロ以上、全長に至っては20キロを超す、文字通り大山脈サイズだった。
下敷きになった街にいた小人の一部は、トイレとして作った地下の貯蔵施設へ逃げ込むものも、少なくなかった。今一番身近にある安全地帯はそこで間違いないと考えたからだ。
大量の排泄物で圧し潰されないよう、法規で定められた構造強度の何十倍にも高めた鉄筋コンクリートで固められた地下空間。まさに、核攻撃にも耐えうる堅牢な地下要塞のはずだ。
だが、それも1,000倍サイズのクラウディアの使用に耐えられるというだけのモノ。今の彼女は人智を遥かに超えた10万倍という途方もないサイズ。
その小惑星サイズの巨体からひり出したうんこの荷重に耐えられる想定は全くしていない。
ズズズズズズ……。
全長20kmにもなる茶色い巨塊の重量に、地下施設が耐えられるはずもなく、クラウディアの大便が大地に横たわった瞬間、すぐに施設の天井がゆがみ始めた。
地下に避難していた小人が叫ぶ間もなく、段ボールを潰すかの如く、天井が崩壊した。
小人たちが大量の労力をかけて作った汚物入れは、クラウディアの排泄物の100分の1も収容できずに押しつぶされ、中に避難した数千人の小人と共に茶色い山脈の下に消えていった。
もちろん、それだけで終わりではない。クラウディアの活発な直腸は、次の大便の準備を始める。
「まだ出そうですわ」
ブリュリュッ!ムリムリ!!ボトッ!ヌチョ!ニュルニュル!!
一本目と変わらない立派なものが、再び肛門から伸び始めた。
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
二本目が落下して、世界は再び激しく揺さぶられた。
2発目のうんこは、先に産み落とされた一本目の上に、どっさりとのしかかる様に折り重なり、ついにうんこ山の標高は8000メートルを優に超した。
今、この星で最も標高の高い山の記録が塗り替えられてしまった瞬間であった。
生みたての大便山は、クラウディアの体温で温められたままで、ホカホカと湯気が立ち上っている。やがてその湯気は、上空の冷たい空気と交じり合い、やがて薄い雲を形成する。
雲の上には、湯気の立ち上る巨大な大便の山が2つも聳え立っている。その姿はまるで蜃気楼のように揺れていた。
結局、クラウディアは、自らがひり出した大便がもたらした災害に翻弄される小さな人間たちの悲痛な叫びなどお構いなしに、さらに2本の巨大うんこを産み落とし、数十万人が暮らしていた都市を巨大な大便で埋め尽くして、茶色い世界一の大山脈を生み出してしまった。
彼女のただの生理現象で、何十万人もの命が一瞬にして奪われ、生活していた都市は壊滅状態。
大便の隙間に逃げたことで生き残った人もいるだろうが、全人口に対して考えれば、ごく少数だ。
「ふぅ……すっきりしましたわ……」
クラウディアが腰を上げたころには、都市の残骸の上には、巨大な山が2つ鎮座していた。
2つのうんこ山は、標高が8,000mを超えており、うんこ山の断面からは、未だクラウディアの体温で暖められた湯気が立ち上り霞が発生している。
もくもくと白煙のように湯気が立ち上るうんこ山の光景はあまりに異質で、異様であった。
クラウディアは満足げに立ち上がると、自分が産み落とした大山脈を眺めながら呟いた。
「本当に素晴らしいトイレですわ……。感謝いたしますわ」
彼女はジーンズのポケットからテッシュを取り出し、汚れた肛門を拭きとると、そのままお尻を拭いたテッシュを無造作に小人の街に投げ捨てた。茶色く汚れた紙くずが、被害の出ていないビル群に落とされると、無数のビルがその神の下敷きになって潰れてしまった。
「さて、お暇いたしましょう」
クラウディアはそう言うと、都市の上空で待機していた宇宙船を呼び戻して乗り込むと、再び宇宙に向けて飛んでいった。
巨大女王が去った後には、大地にいくつも残された長さ25kmもの巨大な足跡と、かつて大都市があった場所に、総量2,500億トンにも上る、巨大なうんこ山が聳え立つ。
この惨状は、歴史書に”クラウディアの大便災害”として記されることになるだろう。
***
「ふふふ、本当に小人の星でするトイレは、気持ちがいいものですわね」
クラウディアが王宮に帰ると、自室でお茶を飲みながら、小人の星でしてきた被害報告を眺め、優雅にくつろいでいた。
「姫様が去ったあと、速やかに姫様が置いていった物の処理を済ませるよう、指示しておきましたので、今頃は国を挙げて撤去作業を進めている頃かと」
隣に立つユリシアが淡々と報告を述べる。
「さすがユリシアね、山よりも大きなモノを片付けるのは、どんな気分なのかしらね?」
「仕事が遅ければ、大陸ごと処分すると、きつく言いつけてきましたから、今頃は必死に働いていると思いますよ」
「まぁ、可哀想に。せっかく国中総出で作業しているというのに、きっと彼らの大きさだと1年以上はかかるのではなくて?」
「その時は、それ相応の罰を与えるだけです。姫様のトイレの後始末すらできないのなら、存在価値などないものです」
ユリシアは表情一つ変えず答えた。彼女にとっては、小人など下等な生き物なのだ。
「ふふふ、じゃあその時は、ユリシアが小人の街をトイレにするのはどうかしら?」
「わ、私ですか?私は別に……」
「あら?案外、悪くない物よ?それにあなたのその大きな丸いお尻から、どんな物が出てくるのか興味があるわ」
「姫様……、お戯れを……」
「あら、私は本気よ?ユリシア」
「……もう、姫様ったら」
女王のからかいに、恥ずかしそうにユリシアは顔を俯けた。
そんな彼女が可愛くて仕方のないクラウディアは、紅茶を飲み干すと席を立つ。
「そうと決まれば、今日の夕食はいつもより量を増やしましょうか。たくさん食べて、お腹の中で熟成させて、思いっきりひり出したいじゃない?」
「姫様……こ、今回だけですよ……」
ユリシアの忠告など聞かないとばかりに、クラウディアは自室を後にすると、巨大なお尻をぷりぷりと振りながら厨房に向かっていくのだった。