1.クラウディア
雄大な船体をなびかせ、悠々と航行する豪華クルーズ船。その巨大さゆえに海上の城と呼ばれるほどの大きさを誇る。全長300メートル、最大幅30メートル、喫水は10メートル以上あるこの鋼鉄の城に乗船しているゲストは1,300名ほど。さらに乗組員を合わせるとその数は2,000人を優に超す。
船内はゲストの為の施設が最上階から最下層までバランスよく配置されており、各階は様々なスタイルに対応した大人の社交場となっているパーティー会場に、プール、フィットネスジム等のアミューズメント設備があり、天気や気候を気にせず楽しめる作りになっている。
他にもスパ・エステサロン・ネイルサロン等のリラクゼーションスペースといったゲストに癒しと安らぎを与える空間も備わっているが、一番の華は船上カジノである。
洗練されたエレガントな空間デザインは豪華さと落ち着いた雰囲気の両面を巧みに演出している。見るものを圧倒する巨大なシャンデリアとそれを支える天井の高さが、さらにこの城を神々しく見せている。
その輝きに負けぬだけの光を放つゲームテーブルがずらりと並び、バカラやポーカー等のカードゲームからルーレット、スロットマシンまで、様々なゲームが楽しめるようになっている。
まさに絵に描いたような豪華絢爛なカジノ。そんなプレイフロアから一段上がったフロアに、シックで落ち着いた雰囲気のバーラウンジがある。
この船の中でも特に高級なそのバーラウンジのカウンターに座る一人の女性。
深紅のドレスを身に纏い、ヒールの高い黒革の靴でスツールに腰掛けて長い脚を優雅に組み、右肘をカウンターに乗せて、スラリとした細長い指を顎に当てている。
身長一七〇センチを越えるであろう長身と、それを包む深紅のドレスが見事にマッチし、彼女の美しさを引き立てていた。
肩にかかる程度のセミロングの髪は漆黒で艶やか。その髪を軽くかき上げながら物憂げにカクテルを口へ運ぶその仕草は気品に満ちていた。
「ふふ、こんな逃げ場のない海上に自ら飛び込でくるなんて、おかげでこちらの手間が省けたわ」
彼女は世界征服をたくらむ組織を束ねる若き総帥クラウディア。
このクルーズ船に敵対する組織の大幹部が乗り込むという情報が入ったので、招待客に紛れ込んで忍び込んでいる真っ最中だ。
「それにしても、中々の警備ね……」
クラウディアはカジノ内を見回して感心したようにつぶやく。
フロアには屈強そうな警備員たちが至る所に配置されており、厳重な警戒体制が敷かれていた。
だが、クラウディアは余裕の表情だ。
「でも、この程度なら……私の敵じゃないわ」
そう言ってニヤリと笑うクラウディアは大きく開かれた胸元から錠剤が入った小瓶を取り出す。
(これを使えば……私だって……)
彼女が手にしているのは開発したばかりの新薬。その効果は彼女の肉体を飛躍的に向上させ、超人的な力を得ることができる。
この薬はついこの間、動物実験が済んだばかりの新薬だ。それをクラウディアは組織の科学班に依頼し、彼女の肉体に合わせ完成を急がせた。
そして完成したのが、この怪しげな錠剤というわけだ。
(うふふ……この力があればあんな連中……簡単にね)
クラウディアはそうつぶやくと、手にした小瓶をひっくり返し、中に入っていた錠剤を一気に飲み込んだ。
続けて口に入れた大量の錠剤をカウンターに置いていたカクテルで一気に流し込む。
「んっ……ゴクッ……」
喉の奥に錠剤が張り付くような違和感を感じながらも、クラウディアは怪しげな薬をすべて飲み込んだ。
「ふぅ……これで私も……」
クラウディアはそうつぶやくと、軽く息を吐く。そして、スツールから立ち上がると、ヒールの音を響かせながらカジノフロアへと足を向けた。
その歩みは自信に満ち溢れている。今この瞬間からクラウディアは人間というカテゴリーから一歩踏み出した存在となるのである。
「見てなさい……もう、あなたたちになんか負けないんだから」
クラウディアはそう言って不敵な笑みを浮かべ、胸元で軽くこぶしを握り、勝利を確信する。
その姿は組織の総帥という立場に相応しい威厳に満ち溢れていた。
「ふふ、この私が……世界征服を成し遂げてみせるわ!……って、きゃっ!」
クラウディアがそう呟きながら、フロアへ踏み出すと同時に、突如彼女のヒールがバランスを崩して躓いてしまう。
「いたた……もう、ヒールが高すぎるのよ」
普段、着ることのないドレスとハイヒールで歩き慣れていないクラウディアは挫いた足をさすりながら、不満げにつぶやいた。
このように、彼女ははっきりいってポンコツの部類に入る。
組織の総帥として、黙ってじっとしていればカリスマ性は申し分ないのだが、いかんせん運動神経とセンスが壊滅的に悪い。
この様子を見るからに『新薬』の効果が現れるまでまだ時間はかかりそうだ。
恐らく今頃、彼女の肉体は劇的な変化を遂げているだろうが、それを実感できるまでにはかなりの時間を要するだろう。
「と、とりあえず、部屋に行きましょう」
クラウディアはそうつぶやくと、痛む足を引きずりながら自室へと戻っていく。その後ろ姿はどこか頼りない。
自室の扉を開けた彼女は、そのままベッドへ飛び込む。
「うう……なんだか頭が痛い……」
なれていない薬のせいか、船酔いのせいだからだろうか。クラウディアは軽い頭痛を感じ、そのままベッドの中で横になる。
「はぁ……」
クラウディアは軽くため息をつきながら天井を見つめる。そして、そのまま静かに目を閉じた。
暫くしていれば、頭痛も治まるはず。そしたら、計画を実行に移そう……。そう思いながら、クラウディアは眠りについた。
***
「んっ……」
眠りについてからどれくらいの時間が過ぎただろうか。クラウディアが目を覚ますと随分寝ていた様に思える。
「あれ……もうこんな時間?」
時計を見ると、遅い時間になってしまっていた。クラウディアは軽く伸びをしてから、ベッドから抜け出す。
「確か……薬を飲んで……」
そう言って眠りにつく前のことを思い出していくと、徐々に頭の中が鮮明になっていく。
「こうしちゃいけないわ!早くあいつを見つけないと!」
思いのほか、ベットがふかふかで気持ちよかったので、つい眠り込んでしまったようだ。いくら何でも、寝坊して敵を見失うなんて部下に示しがつかない、総帥失格だ。クラウディアは慌てるようにして部屋を飛び出した。
「はぁ……はぁ……」
クラウディアはこの船に乗り込んでいる敵の幹部を探して、船内を駆け回る。
(どこにいるの?)
クラウディアは息を切らせながら、辺りを見回す。しかし、その姿を捉えることができないでいた。
「くっ……どこに……」
クラウディアは歯噛みしながら、走り続ける。 薬による肉体強化は始まっているが、その効果持続時間にも限りがある。効果時間内に敵幹部を見つけ出し、暗殺しなければならない。
そんな折、銃で武装した男たちが曲がり角から姿を見せた。敵の侵入に気づいたセキュリティ達が彼女を排除するために動き出したのだ。
クラウディアはその男たちの姿を見ると、思わず叫んでしまい、声に気づいた男たちは足を止め、銃を彼女の方角に構えた。
(う……撃たれる?)
相手は多勢の上に武器を持っている。このままでは、ただでは済まない。自分に向けられた銃口たちを見て青ざめるクラウディア。
だが、男たちはそのまま彼女に向けて発砲してきた。
船内に乾いた銃声が響き渡る。だがしかし、銃口から発射された弾丸はクラウディアの身体に当たった瞬間、全て弾かれてしまった。
その信じられない光景に男たちは言葉を失う。
「な、なんで……どうして……」
同じくクラウディアも自分の身に起きたことが理解できず、思わずつぶやく。彼女と同じく、男たちもまた驚愕の表情を浮かべていた。
だが、全員がもっと驚いたのは、クラウディアの身体が突然膨張し始めたことだった。
「え、え、え……」
クラウディアは自分の身に起きたことを理解できず、ただ狼狽える。そして、その身体がみるみると巨大化して、あっという間に彼女の頭が天井について、尻もちを着いてしまう。
「きゃあああああ」
悲鳴を上げながら、クラウディアの身体がさらに大きく膨れ上がる。
「た……助けて……」
クラウディアはそう呟くが、男たちも呆然として動くことができない。
その間にもクラウディアの身体はどんどんと膨れ上がり、やがて廊下の空間を彼女の身体で埋め尽くし、天井を突き破って船内の構造を破壊し始めた。
「な……なんだこれは」
男たちはその巨大化する彼女を見上げながら、呆然と呟く。そして、我に返った男たちが銃で彼女を撃ってみるが、全く刃が立たない。
廊下を埋め尽くし、収まらなくなった彼女の肉体はM時開脚の姿勢のまま、ゆっくりと男たちのいる方にも膨張を始めた。
「う……うわああ!」
「た、助けてくれぇ!」
男たちは慌てて逃げ出すが、巨大化する彼女のお尻が床や壁を突き破り、ハイヒールを履いた大木の様な太ももが、ゆっくり男たちの上に落ちてくる。
ズンッ!
男たちは、悲鳴を上げながらクラウディアの脚の下敷きになった。彼らはそこから脱出しようと必死に藻掻くが、彼らの力では巨大な脚を持ち上げることはできなかった。
そして、ついに彼らも巨大化して重厚な彼女の太ももに押し潰され、床材と一緒に船底へと叩き落とされてしまった。
それでもなお、クラウディアの身体はさらに膨れ上がり、船内の構造物を突き破りながら巨大化を続ける。
「きゃあああああああ!!!」
バキィ!グシャ!メキィ!
膨張し続ける彼女の臀部は、広いはずの廊下を埋め尽くし、床板を押し曲げてしまう。広い船内も、巨大化した今のクラウディアにとっては狭い場所だ。そして、クラウディアは巨大化と共にその身体で船内を破壊し、埋め尽くしていく。
グングンと勢いよく巨大化していく巨体にはもう、腕の自由はほとんどない。それでも彼女は両の手で身体を抑えつつ、膨れあがった巨体を懸命に支えていた。
「くっ……くうぅ……!!」
クラウディアの声にならない声とともに、さらに巨大化を続けていく。
彼女のお尻が床を突き破り、その下にある部屋を押しつぶしてしまう。
伸びていく腕は壁や天井を破壊し、その場にいた乗客を下敷きにしてしまうが、クラウディアの巨大化は止まらない。
船内はすでに崩壊を始めており、クラウディアの巨大化によってさらに破壊が進み、増えた重量で浸水も進んでいる。
そんな中、船内にいた乗客たちも、この異変に気づき始めた。
船内で突如発生した巨大な振動と、船内のあらゆるものが破壊される音。そして、その揺れが次第に大きくなっていくことに、乗客たちは不安を覚えていた。
そして、目の前の壁や床をぶち破り、現れた巨大な肌色の肉体に驚き悲鳴を上げた。
その肌色は徐々に大きくなり、肉体が空間を埋め尽くし乗客、乗組員、関係なしに襲いかかる。しかし、そんな乗客たちも逃げることは許されなかった。
巨大化するクラウディアの尻肉に押し倒され、その下敷きになり、あるいは肌が天井を砕き落ちてきた瓦礫によって埋められてしまう。
それでもなお膨張し続ける彼女の肉体はついに甲板を突き破り、船外へと飛び出すことになる。
船体から飛び出たハイヒールが瓦礫を薙ぎ払いながら、窮屈そうな脚を船外に解放させる。
そして、瓦礫と一緒に船外へと押し出された乗客を海面に叩き落としながら上体を起こし、船体から解放されたその巨体は船にまたがる形で、巨大化がようやく止まった。
その大きさは、もはや人の域を超えており、海の上に浮かんでいる船と比較すれば、まさに山のような巨大さだった。
「はぁ……一体なんなのよ……って、きゃあ!」
クラウディアはそう呟くと同時に、巨大化した自分の身体に耐えきれなくなった船が真っ二つに折れてしまったのだ。
「きゃん!」
巨体が着水した衝撃によって巨大な水柱が発生し、水面が大きく荒れ狂う。
「私は……一体どうなっちゃったの……」
クラウディアはそうつぶやくと、海面から出た自分の身体を見下ろしながら事態を整理してみる。
陸地から離れた海の上にいるのにも関わらず、両足と臀部は共に海底に着いて、海面は胸元辺りにとどまっている。
この姿勢で上体が海面から顔を出すには、身体を大きくする必要がある。それも人間サイズの比ではない。高層ビルと並べるほどの大きさでないと無理だ。
「もしかして、おっきくなっちゃった?」
クラウディアは自分の変化に驚きを隠せず、思わずそう呟く。今やクラウディアは文字通り巨大化している。普通ではありえないこの変化に彼女は驚きを隠せなかったが、今回の目的を思い出すと青ざめた。
「あ!船!」
彼女の胸元に迫る海面には、船の残骸と思われる様々なゴミが至る所に浮かんでいる。
どうやら、さっき尻もちをついた時、船体を丸ごとヒップドロップで海底に沈めてしまったらしい。
「ま、まあ……目的は達成できたから、いいかしら」
クラウディアは取りあえず、敵幹部の暗殺?の目的を果たせたことに安堵した。
だが、こんな身体になって、一体これからどうすれば良いのだろうか。
クラウディアは例の薬を製作した化学担当のアリサに連絡を取り、助けを求めることにした。
「アリサ!アリサ、ちょっといいかしら!?」
『あ、はい。なんでしょう?』
「何でしょう。じゃ無いわよ!あなたの薬を試したら、こんな身体になっちゃったじゃないの!」
『えぇ、なんか凄いことになってますけど、おかしいですねぇ……』
クラウディアがインカム越しに怒鳴ると、とぼけたようなアリサの声が聞こえてくる。
『だって、改良を重ねた今回の新薬なら用量と用法を守れば、副作用はそれ程大きくはないはずなんですけれどねぇ……。クラウディア様、もしや錠剤全部飲んじゃいました?』
「あ……」
クラウディアはアリサの指摘に思わず言葉を失う。そして、船内で薬を服用した時の記憶が思い出される。
「た……確か全部飲んじゃったかも……」
『はぁ……やっぱり。まさかとは思いますが、アルコールも一緒に飲んじゃいましたか?』
「あぁ……うん」
クラウディアがそうつぶやくと、携帯端末の向こうからアリサのため息が聞こえてきた。
『はぁ……成る程。恐らくは薬品の過剰摂取それとアルコールによる異常反応が原因ですかねぇ…』
「……」
『あの錠剤を全部飲み干して……しかもまさか、アルコールと一緒に全部飲むなんて、思いませんでしたよ』
「そ、そんなぁ……」
『まあでも……服用して強大な力を得たことで、新薬の効果はちゃんと発揮されたって事です。
その効果の持続時間も個人差があるので、一概にどのくらい続くかはわかりませんが、しばらくしたら元に戻ると思いますよ…』
「ちょっと!暫くって、どれくらいなのよ!」
クラウディアは思わず声を上げる。
今の彼女は豪華客船でさえお尻で潰してしまえるほどの大きさなのだ。そんな巨大な女が街を歩いていたら、パニックどころの騒ぎではないだろう。こんな姿で生活などできるはずもない。
そんなクラウディアの不安をよそにアリサは続ける。
『幸い、薬と一緒に開発した伸縮自在のドレスのお陰で、全裸のまま過ごすことは無さそうですしね。』
その口調にはどこか楽観的な雰囲気があった。
「これからどうすればいいのよ……」
クラウディアは涙目になりながらアリサにそう聞くが、彼女の返答は相変わらず淡々としていた。
『取り敢えず、新薬の効果を相殺出来る方法もこちらで探してみます。では、続報があればまた連絡しますから』
「あ……ちょっと!」
アリサはそれだけ言うと、さっさと通話を切ってしまった。
「はぁ……」
このまま海の上にいても仕方がないし、取りあえず陸に上がるしか無いだろう。
クラウディアはそう思い、ため息をつきながらも巨大な足を一歩踏み出した。
2.巨人上陸
「ふう……なんとか歩けるかな」
クラウディアは足元を確認しながら一歩ずつ海をかき分け、慎重に歩を進める。
その巨体が動くたびに海面が大きく波立ち、巨大化した彼女の身体のお尻や脚の付け根が海面から顔を出し、それがまた新たな波を発生させて水面を大きく揺らしていく。
「もう!なんで私がこんな目に……」
そんな悪態をつきながらも彼女はゆっくりと進んでいくと、進行方向に旅客船らしき船が浮かんでいるのを見つけた。その船は彼女が沈没させた豪華客船よりも一回り小さいフェリーのようだ。とはいえ大型船に違いはなく、その船体は250メートルほどはありそうだ。もっとも、今のクラウディアからしたら25cm位にしかならないが……。
「あら……ごめんなさい。びっくりさせちゃったかしら?」
フェリーはクラウディアが歩いたことで発生した大波に煽られ左右に大きく揺れて、船上では大海原を掻き分けて歩いてくる巨人の姿に乗客たちが悲鳴を上げながら戸惑っている。
(そっか、今の私ってこんなにも大きいんだ)
クラウディアは自分が今、どれだけ巨大な存在で、強大な力を持っているのか改めて認識し、思わず笑みがこぼれる。
「ふふ……なんだか不思議な気分ね」
フェリーは大海原を予定通り安全に航行していたはずだったが、予期せぬ巨人の出現により、舵が取れなくなり航行不能に陥ってしまったのだろう、いつまでも立ち往生していた。
クラウディアはそんな玩具みたいな船を見て、少し可哀想に思うと同時に悪戯心も湧いてくる。
「ふふん……ちょっと驚かせてあげようかな♪」
彼女はそう呟くと、海を割りながら、フェリーに向かって歩き出した。
突然動きを再開した巨大娘に乗客たちはパニックに陥った。
彼女の巨大な足が一歩進むごとに海面が揺れ、大波に揉まれるフェリーは右へ左へと大きく揺れる。
そして、クラウディアはフェリーの真上に来ると、そのままゆっくりと両手を船の両舷に当てて、跳び箱に跨るかの様にしゃがみ込んだのだ。
膨大な質量がのしかかった事により、フェリーは大きく揺れ、船体が大きく沈む。
「あはは!ほらほら、沈んじゃうわよ♪」
クラウディアは嬉しそうに笑いながら、体重をかけたり、抜いたりしては、フェリーが浮き沈みする様を楽しんだ。
フェリーの船体ではクラウディアの体重を支えることは出来ない。
こんな大きな船を浮き輪みたいにして遊ぶなど、つい先程までの彼女なら想像もできなかっただろう。
しかし今は違う。今の彼女は怪しげな薬によって、その肉体を巨大化した事により、大型フェリーを模型の小舟様に弄ぶ事ができるのだ。
「ふふ……私の力を思い知ったかしら!」
クラウディアはフェリーが沈まないギリギリの力加減でフェリーの船体を押し込み、擬似的に船を沈めては、また立ち上がる。
そんな彼女の遊びも、フェリーの乗客にとっては恐怖以外の何物でもない。
遊び半分で翻弄されてしまう彼らの姿を見て、クラウディアは思わず笑みを浮かべ、自分が持つ力の大きさを実感し、更に興奮していく。
「あー、楽しかった!」
クラウディアはそう呟くと、フェリーを跨いでいた巨大なお尻を上げて立ち上がる。圧倒的な質量の巨人ともなると、ちょっとした姿勢の変化だけでも多大な影響が周囲に及ぶ。
クラウディアが上げた風圧はフェリーを大きく揺らして、乗客たちの不安を煽り、悲鳴がより大きくなった。
「ちょっと、怖がらせすぎたかしら?ごめん、ごめん。もう何もしないから」
クラウディアはフェリーに向かって謝罪の言葉を投げかけると、その場からフェリーを解放させてあげたのだった。
***
ザブザブと波を掻き分けて、クラウディアは海を進むと、ようやく陸地が見えてきた。
陸地の海岸は開発されており、コンビナートや倉庫群に、積み上げられた海上コンテナと大型のガントリークレーンが海を臨んでいる。
本来であれば、クラウディアが首を痛くなるまで見上げるような高さの建物も、今の彼女にとってはジオラマサイズの大きさでしかない。
その景色を見て、クラウディアは改めて自分が100倍サイズにまで巨大化してしまったことを実感したのだった。
「悪いけど、ここ通らせて貰うわね」
クラウディアの進行方向にはタンカーやコンテナ船が港を出入りしていたので、彼女が先に進むためにはそれらを避けるか、退かして通らなければならない。
クラウディアは海上の船たちにことわりを入れると、タンカーやコンテナ船といった船舶群をその巨大な脚で無造作に払いのけ、進路を確保していく。
高層ビルの様な巨人は、重厚なタンカーや貨物船など、まるで水に浮かべた発泡スチロールの様に簡単に蹴散らしてしまう。お陰で停泊する舶同士がぶつかり合い、破損してしまう船も出る始末だ。
そんな光景はまさに災害と呼ぶべきものだが、今のクラウディアにとってはただの移動に過ぎない。
「さてと……いよいよ上陸ね」
クラウディアは大混乱する港を尻目に、港へ上陸する為、行く手を遮る形で架かっている吊橋に差し掛かった。
吊橋は湾岸の埋立地をまたぐ様に架かっている全長1,500メートル、橋を支える主塔は80メートルにもなる。
クラウディアが橋へと近づくにつれて、その重量によって橋が大きく揺れて、彼女の身体が生み出す巨大な影が、長くて細い橋を覆い隠していく。
橋の上では襲来してきた巨人が迫ってきた事で、橋全体がパニックに陥っていた。
動く気配のない車はクラクションを鳴らし、人々は車を乗り捨て悲鳴を上げながら逃げ惑う。
そんな彼らに構うことなく、クラウディアは巨大な足を前へ進め、吊橋の主塔と主塔の中央部分にかかる橋桁を跨ごうとする。
脚を大きく上げる必要があるため、赤いドレスのスカートの裾をたくし上げながら、クラウディアは片足立ちとなり、次の瞬間には大きく上げた脚を橋桁の向こうに着地させた。
ズウウウゥンンン!!
大きな水柱と飛沫をあげて、クラウディアの巨大な身体が吊橋を跨いだ。橋の上から見上げると、彼女の赤いドレスのスカートは橋桁の上で大輪の花が咲いているように見え、その巨大さがより強調される。
「あらあら?私の大きさに驚いてるのかしら?」
クラウディアは吊橋の上を通る際に、足元を見下ろしながらそう呟く。
吊橋の下を通る人々は、彼女の巨大なお尻や脚が邪魔して、彼女の顔を見ることが出来ない。
その代わり、オーロラの様に広がるスカートの裾と、それを支える両脚の太もも、そしてその太ももの合流地点にあるクラウディアの黒いショーツが上空を埋め尽くし、恐怖を覚えるのであった。
(ふん!せいぜい恐れおののくが良いわ!!)
クラウディアは吊橋の上に立ったまま、股を開き腰に手を当てる。まるでマウントを取ったかのようなポーズを取って、彼女は股下を行き交う人々を見下ろしながら、優越感に浸っていた。
「さてと、上陸しますか」
クラウディアはそう呟くと、もう片方の足を吊橋の上へと持ち上げて、橋の上をまたぎ越す。
その瞬間、橋が大きく揺れ、吊橋上の人々が悲鳴を上げる。
巨大な質量を持つ彼女の脚が橋の上空を通過した際、恐るべき風圧が橋全体に襲いかかり、その風圧によって吊橋上の人間はおろか車までもが、強風に煽られる木の葉のように吹き飛ばされてしまった。
「「うわぁあああっ!!」」
クラウディアは自分の脚の動きだけで人々が吹き飛ばされたことなど気づきもせず、そのまま海上を進み、そして彼女は湾岸の埋立地へと足を踏み入れた。
ズドオオオンン!!
海から引き抜かれた巨足が大量の海水を巻き上げ、埋立地のアスファルトを水浸しにして大型トラック程もある黒いハイヒールが踏み降ろされた。
ズウゥゥンン……。ズウゥゥンン……。
クラウディアが一歩踏み出すごとに地面が大きく揺れ動き、その振動は埋立地のビルやコンテナヤード、コンビナートをも揺らしてみせた。
「うーん……。ちょっと地面が柔らかくて歩きにくいわね」
そんな感想を漏らしながら彼女は埋立地を歩き続けた。
彼女の大き過ぎる一歩は、埋立地の大地に巨大な足跡を刻み込むには十分な大きさだ。そして、彼女が歩く度に地面が大きく揺れ動き、埋立地の建物やコンテナが崩壊する音があちこちで響き渡っている。
「さてと……この辺りまで来れば十分ね」
クラウディアはそう呟くと、立ち止まり辺りを見渡す。
そこは湾岸の埋め立て地に連なるコンテナヤード群の一角。
人や建物が少ないこの場所なら、彼女の身体がもとの大きさに戻るまで留まっていても、被害を出さずに済むだろう。
そんなことを思いながらクラウディアだが、この国の行政府はそうは思ってはくれなかったようだ。
「あら?」
彼女の足元の回りには、どこからともなく現れた多数の装輪装甲車と銃で武装した兵士たちが彼女を取り囲み始めたのだ。
海上でクルーズ船を沈没させ、吊橋にいた車や市民を蹴散らし、湾岸の埋立地に巨大な足跡を刻んだ巨大な女性。そんな正体不明な存在が現れれば、当然、警戒するし、排除しようとする流れになるのも当然であろう。
「ちょっと!私は怪獣じゃないわよ!」
クラウディアは両手を上げ、攻撃の意志がないことをアピールした。
しかし、彼女の言葉など通じる様子もない。兵士たちは銃を構えると、クラウディアに対して威嚇射撃を行ったのだ。
乾いた銃声と共に放たれた銃弾はクラウディアの靴や足首に命中して火花を散らしたが、その程度の攻撃では今の彼女にとっては何のダメージにもならない。
「もう!くすぐったいじゃない!」
クラウディアはそう言って兵士に抗議をするが、彼らは構わず発砲を続ける。
だが、どれだけ弾を撃ち込んだところで巨大化し、強化されたクラウディアには傷一つ付けることは出来なかった。
それでもなお、小さな兵隊たちの攻撃は止まらない。無理ないか。ならば実力で止めるまで……。
「いい加減にして!」
クラウディアはそう叫びながら兵士に向かって歩きだした!
ズウゥゥン!!ズウゥゥン!!ズウゥゥン!!
クラウディアの突進に恐れをなして、兵士たちが慌てて逃げ出すも、クラウディアの一歩は彼らの逃走よりも早い。
クラウディアは埋立地の大地を踏みしめながら、逃げ遅れた兵士に狙いを定めると、そのまま勢いよく脚を下ろし、巨大な足跡を地面に刻み込んだ。
ズドオオォォンン!!!
クラウディアの巨大な足が地面に叩き付けられると、地面が大きく揺れる!その振動は埋立地全体に広がり、コンテナヤードや倉庫も漏れなくビリビリと震えさせた。
そして足の下に消えた兵士は当然ながら無事では済まない。
クラウディアの足跡には、バラバラに引き裂かれた兵士だったものがこびりつき、それが固く圧縮された地面に染み込んでいる。
一瞬で凄惨な姿に変えられた仲間を見て、他の兵士達は恐怖を覚えた。
「ふ、ふん!どう?私の力思い知ったかしら!」
クラウディアもさすがにちょっとやりすぎたかと思ったのか、言い訳じみた口調でそう叫ぶと、小人の兵士を見下ろした。
「ほら!もう踏まないわよ!だからもう攻撃してこないで!!」
クラウディアはそう言って必死に訴えるが、半狂乱した兵士達はより一層攻撃の手を強めてしまう。
「もう!そっちがその気なら、こっちだってやり返すわよ!」
クラウディアはそう言うと、巨大な右足を持ち上げ始めた。そしてそのまま、埋立地に生えた木々や建物を巻き込みながら地面に下ろした。
ドオオォォォォンン!!
クラウディアの一撃によって地面は大きく陥没し、周囲の建物を薙ぎ倒しながら周囲に粉塵が舞い上がるも、クラウディアの踏みつけ攻撃は止まらない。
ズドオオオォォン!!ズドオオオォォン!!ズドオオオォォン!!
巨大な彼女の足は攻撃していた兵士、戦闘車両、軍用車両などを踏み潰していく。
クラウディアの巨大な靴底が巨大な軍用トラックにぶつかった瞬間、トラックは一瞬でスクラップにされる。
堅牢な装甲を持つ装甲車も同様だった。
クラウディアが足を持ち上げた跡には、まるで紙のようにクシャクシャにプレスされた装甲車がへばり付いていた。
「ふん!人の言うことを聞かないあなた達が悪いのよ!!」
そんな言い訳じみた言葉を発するクラウディアだが、彼女の足元では多くの被害が出ていた。
彼女の靴底は兵士だけでなく、埋立地の建造物も巻き込んでいる。そのため、彼女が歩いた後には巨大な足跡と共に様々な建物や施設が踏みつぶされていた。
気づけば、埋立地は爆撃を受けたかのように瓦礫の山へと変貌し、埋立地全体がクラウディアの足跡だらけになってしまった。
『クラウディア様、お取り込み中のところ申し訳ございません。ちょっとよろしいでしょうか』
突然、通信機からアリサの声が聞こえてきた。
「なによもう!今いい所なのに!」
クラウディアは不満そうに呟く。
『先ほど巨大化した薬の効果持続時間が算出できました』
「そう、それでどれくらいで元に戻れそうなの?」
『はい、恐らく3日もすればお戻りになられるかと』
「3日ですって!」
そんなに時間がかかるのか?それじゃあ、まだしばらくは巨大化したまま……。
クラウディアは頭を抱えながら深いため息を吐いた。
こんな身体で3日間も過ごさないといけないのか……。そう思うと憂鬱な気分になってしまう。
「はぁ……」
クラウディアは深いため息を吐いた。
「もう、なんでこんなことに……」
『クラウディア様、そう気を落とさずに。いい機会ですし、この国のインフラを徹底的に破壊し尽くしましょう。そうすれば、この国も我々に降伏するでしょう』
「はぁ……。簡単に言ってくれるわね。でも、それもいいかも……」
クラウディアはそう呟くと、にやりと笑みを浮かべた。
彼女が視線を落とすと、そこには踏み荒らした地面と、無残に踏みつぶされた建物や車が目に入る。
クラウディアは、自分が踏みつぶした建物を見て、思わず笑みがこぼれる。
爆撃を食らったように破壊された街、これを全て自分一人でやったのだ。
それも戦闘をしていた訳では無い。ただ歩いていただけでこの有様だ。
さっきまで攻撃していた兵士や戦闘車両だって地べたを這いずる虫を踏み潰すみたいに、簡単に踏み潰すことが出来た。
その事実が彼女をより興奮させていた。
女は足元に広がる惨状を見て、自分が巨大な存在であることの優越感に浸っていたのだ。
「じゃあアリサ、早速だけど手伝ってくれるかしら?」
『御意』
「まずはこの国の中枢に攻め込みましょう!まずは政府機能の停止が最優先ね!道案内宜しく!」
クラウディアはそう言うと、意気揚々と歩き出し、この国を支配するための破壊活動を開始したのだった。
ズウゥン……。ズウゥゥン……。ズウゥゥン……。
彼女の一歩ごとに地面が揺れる。そして彼女が歩く度に、埋立地に巨大な足跡が刻まれていく。
その足跡は埋立地全体に広がり、もはやこの一帯は彼女の足型だらけになってしまった。そんな埋立地をクラウディアは上機嫌に歩き続ける。
道路にはクラウディアの巨大な足跡が刻まれ、道路標識も車両も靴底の溝に飲み込まれてしまったのか跡形も残っていない。
逃げ惑う群衆も、ビルも車も全てが彼女にとっては虫けら以下の存在でしかなく、簡単に踏みつぶせてしまう。
「あはは!ほらほら早く逃げないと、みんな踏み潰すわよ!」
無敵となったクラウディアは、靴底をかざしながら、道路を走り去る群衆を追い立てるように、地面に足跡を刻んでいく。
ズウゥン!!
クラウディアの巨大な靴底が道路のアスファルトを砕き、下敷きになってしまえば車や人間が一瞬にしてミンチになって潰れてしまう。
人々は必死の形相で逃げ惑うも、巨大化したクラウディアの巨体は容赦なく歩き続ける。
靴底のプレスに巻き込まれなかった人間たちはあまりの恐怖に声にならない悲鳴を上げていた。
だが、そんな悲鳴も今の彼女には心地よいBGMにしか聞こえない。
(いいわ……。そのまま私の力を目に焼き付けるのよ。この国は誰が支配するかをね)
クラウディアは地面に足跡を刻みこみながら、心の中でそう呟いた。
道路に残った車を踏み潰してはその足跡の巨大さを実感し、満足そうな笑みを浮かべる。
逃げ惑う群衆も、瓦礫に埋もれる高層ビル群も全て彼女には取るに足らない存在でしかないのだ。
巨大な彼女からすれば、どんな国も世界も皆等しく玩具でしか無い。
「はぁ……気持ちいい」
彼女は恍惚とした表情を浮かべながら、ゆっくりとした足取りで湾岸の埋立地を抜けて、都心部へと歩いていく。
『クラウディア様、見えました。あそこが政府庁舎のようです』
アリサの声に視線を向けると、確かに大きな建物がそこにあった。それは天をつくような巨大な高層ビル群の中でも特に目立つ存在であった。
「よぉし!じゃあ早速攻撃開始ね!」
クラウディアは気合を入れるように声を上げると、建物に向かって突撃した。
都心部は埋立地と違い建物が密集しており巨大化したクラウディアが道路を歩くには、ビルとビルの間をすり抜ける必要がある。そのため、クラウディアは建物と建物の間に脚を踏み入れ、身体を横にしながら建物と建物の間をすりぬけて行こうとするが……。
「んっ、ちょっと狭いわね……」
クラウディアはお尻がビルにつっかえないよう身体を横にしながら建物と建物の間をすりぬけようとするが、もともと大きかった彼女のヒップも巨大化したことで85メートル級の小山へと変貌を遂げており、建物が密集するこのエリアでは大き過ぎるサイズになってしまう。
そんな超質量のヒップが上下左右に揺れながら、狭い道路を通ろうとするものだから、言わずもがな彼女の大きなお尻は建物の間に挟まってしまい、クラウディアの行く手を阻んでしまう。
「ああん、もう!これじゃ私のお尻が大きいみたいじゃない!」
クラウディアはそう叫ぶと、お尻に挟まってしまった建物の隙間を広げるため、無理やり押しのけようとする。
バキバキバキッ!!
彼女の巨大な手が建物を鷲掴みにして力を入れれば、簡単に押し倒してしまい、巨大なクラウディアが通った後には、幅広く拡張された道路と、道の左右には倒壊したビルの瓦礫の山が出来上がった。
その一連の流れを何度も繰り返しながら、彼女は埋立地から都心部までの道を巨人が通れる幅にまで広げてしまった。
「ふう……。次に建てる時は、私が通れるようにもっと広く作りなさいよ」
『クラウディア様、お見事です』
アリサが褒めるように言った。
「ふふん!まあね!これくらい朝飯前よ!」
『自分のお尻が大きい事を棚に上げて、市民のビルを押し退ける。まさに支配者に相応しい所業です。さすがはクラウディア様』
アリサが褒めまくるのが、どうも恥ずかしい。クラウディアは恥ずかしさで赤面してしまう。
「うるさいわね!私がこの国を支配した暁には、こんなゴミゴミした街なんて全部平らにしてやって……やあん!」
クラウディアは喋りに気を取られて、ついうっかり足元にあった雑居ビルに躓いてバランスを崩してしまった。
「きゃあ!」
躓いてバランスを崩したクラウディアは、そのまま前のめりに倒れると、彼女の巨大なバストが雑居ビルをいくつも押し潰す!
ズウウウゥゥン!!
「いったあぁぁ……」
『クラウディア様、お怪我はありませんか?』
「ええ、大丈夫よ。でも、ちょっとドジな所を見せちゃったわね」
クラウディアはそう言いながら立ち上がると跡地には丸い形に陥没した道路とビルの残骸、そしてぺしゃんこになったパトカー等がバストに張り付いている。
その大きさは、クラウディアの胸がいかに巨大かを物語っていた。
『クラウディア様、お見事です。意図せず抵抗勢力を無力化するとは流石です』
「もう!だから褒めないでよ!」
クラウディアは恥ずかしそうに叫ぶ。
「あぁもう!!こうなったらヤケよ!!」
クラウディアはそう叫ぶと、己の身体を見せつけるように、邪魔な建物を押しのけ、蹴散らし、踏み荒らしながら道路を進んでいく。
ズドオオォォンン!! ズウゥゥン!! ズウゥゥン!!
巨大な脚が振り上げられては振り下ろされ、そして踏みしめられた場所にはクラウディアの足跡が刻まれる。
ビルを押し分けて、雑居ビルを踏み潰して進む巨大生物に、もはや抵抗の手段は市民に残されていない。
「ほらほら!邪魔する者はみんな踏み潰しちゃうわよ!」
クラウディアは楽しそうに叫ぶ。
今や彼女の体高は170メートルを超え、体重に至っては50,000トン以上に迫る勢いだ。
もはやこの街に、彼女に対抗できる手段は存在しない。
『クラウディア様、もはや怪獣ですね』
「うるさいわね!誰が怪獣よ!」
クラウディアは怒鳴りながら、進路上にあるビルを次々に踏み潰してゆく。
彼女の歩幅は100メートルを超えていて、しかもその歩く速さも相当早い。
クラウディアが一歩を踏み出す度に地面を揺らし、足跡を刻み、建物が倒壊していく。
彼女はただ歩いているだけで街を破壊してしまう。もはや歩く災害なのだ。
『クラウディア様、そろそろ政府庁舎に到達する頃です』
「あらそうなの?早いわね。じゃあ、せっかくだし新しい支配者の力を連中に見せてあげようかしら?」
クラウディアはそう呟くと、急に方向転換し、街を貫く高架道路の方角へと進路を変えてしまう。
『クラウディア様、そちらは首都高速線、この国の首都交通網の心臓部です。それを破壊してしまえば、復旧に相当な時間を要することになりますよ?』
アリサはクラウディアの余計な遊びを諭すように話す。
「分かってるわよ。でも、なんか頑丈そうな道路を壊す姿ってカッコいいじゃない?だからちょっとくらい壊しちゃってもいいかなって思ったのよ」
そんな理由で高速道路が破壊されては、この国の経済は大打撃だ。
「それに、この国が私のものになるなら、高速道路の一本や二本壊れても問題無いでしょ?」
『それはそうですが……』
「じゃあいいじゃない!ほら、いくわよ!」
クラウディアはそう言うと、首都高速道路に足を踏み入れた。
彼女の巨大な脚が踏み下ろされると、高架道路は崩落し、寸断された道路から走っていた車やトラックが落下していく。
そして、それらすべてが、彼女の巨大な足の裏に叩き潰され、その足跡は首都高速の下を通る道路と鉄道をも踏み潰し、踏みにじった。
ズウゥゥン! ドオォォン!
クラウディアの足跡は高架道路を寸断し、高速と並行して立ち並んだ建物も同じく足を踏み入れ、ひねり潰した。
大破壊はそれにだけに留まらず、そのまま橋桁ごと蹴り上げてしまうと、道路上にいたバスやトラック、乗用車などの車を巻き上げてなぎ倒してしまう。
そしてそのまま、橋桁と線路を踏み越えると道路下の鉄道も踏み潰してしまい、線路に押し潰された車や電車が火花を散らす。
それはまるで巨大な怪獣が通った跡のような惨状だった。
「あははっ!やっぱりこうして派手に壊す方が気持ちいいわ!」
クラウディアは上機嫌に笑い声を上げながら、脚を大きく振り上げ、そして下ろす。
ズドオオオォォンン!!
彼女の巨大な足によって、高架道路は崩落し、僅かに残った道路や橋脚も波打つ様に傾斜した無残な姿にされ、踏み潰した後には巨大な足跡がくっきりと残された。
「お前たちの作った道路は、私の足だけで踏み潰してやったわ!どう?悔しいでしょう?でも、これが現実よ。お前たちの文明は、この私の足元にも及ばないのよ!」
クラウディアはそう叫ぶと、政府庁舎に向かって指をさした。
「さあ、降伏するまでお前たちが作り上げたもの全て破壊してやるわ!そして私がこの国を支配するのよ!!」
クラウディアはそう宣言すると、再び政府庁舎に向かって歩き出す。
ズドオォォン!!ズウゥゥン!!ズドオォォン!! 彼女の一歩ごとに地面が揺れる。そして、そのたびにクラウディアの巨大な足跡が刻まれていき、首都が破壊され、街は火災に見舞われる。
その足元では首都の交通網を寸断された人々が慌てて逃げ出す姿があった。
「とっとと道を開けなさい!新たな支配者であるこの私に踏まれたくなければ、ね!」
クラウディアは地上を這い回る哀れな人々に向かって話しかける。彼女がこのまま歩けば、小さな人間たちは自分たちの頭上から降ってきた巨足に踏み潰されたり、彼女の凄まじい重量で吹き飛ばされた自動車に跳ね飛ばされて大怪我を負うか、その命を散らしてしまうことになる。
人々は巨大な彼女に踏まれないよう、クラウディアが踏み下ろしズタズタにした道路を走って逃げ、彼女が歩く道を開け渡していく。
こうして邪魔な建物を粉砕しながらクラウディアはあっさりと政府庁舎の前まで到達してしまった。
首都の中でも最も高いそのビルは、高さが300メートルを超える超高層ビルで、高さだけで言えば、巨大化したクラウディアよりもずっと高い。
「あら、結構高いわね」
『クラウディア様、政府要人はそのビルの最上階フロアにいるはずです。彼らを捕らえて、国を明け渡すよう要求すれば、この国はクラウディア様のものです』
「そう、ならさっさと捕まえて私の力を見せつけてやりましょう!」
とは言ったものの、どうやって要人たちがいる最上階へ行けばいいのだろうか。クラウディアの倍近くもあるビルの最端部には手を伸ばしても届かないし、ダメ元で飛び跳ねてもみたが、ズシン、ズシンと地響きだけが響き渡り、全く手ごたえが無い。
こうなったらビルによじ登るしかないか。クラウディアはとりあえずビル中央の外壁に両手をかけた。
しかし、クラウディアは計算違いをしていた。最新の耐震装備と基礎構造を備え持つ超高層ビルといえど、170メートルの巨人がよじ登れるほどの強度は想定していない。
早い話が、残念ながら今のクラウディアはものすごく重いのである。クラウディアが両手に体重をかけた瞬間、掴んだビルの部分は呆れるほどあっけなく崩れて落ちてしまう。
「きゃああ!!」
ズシぃィィンン!!
バランスを崩したクラウディアは思わず尻もちをついてしまった。そして、クラウディアが尻もちをついた場所には、圧縮された地面に原形を留めないビルや車の残骸が張り付いていた。
「いたた……。ちょっと!何よこのビル、脆すぎるじゃない!」
『クラウディア様、それは仕方ありません。そもそもクラウディア様の体重を支える設計になっていなかったのですから。まさか、本気でよじ登るつもりじゃなかったですよね?』
アリサの冷静なツッコミが入る。
「そ、そんなつもりないわよ!」
クラウディアはそう反論する。
「ただちょっと、どれくらい脆いのか試したかっただけで……」
クラウディアはそう言い訳するが、未だに政府庁舎ビルは健在である。
「まあいいわ。この生意気なビルはこうしてやるんだから!」
クラウディアはそう叫ぶと、ビルの中腹部分に握りこぶしを叩き込む。彼女の巨大な手から繰り出される一撃は、ビルに大穴を開けるには十分な破壊力を持っていた。
「あはは!やっぱり脆いわね!」
クラウディアはそう言うと、ビルに叩き込んだ腕を動かしてフロアを数階まとめて押しつぶし、そしてそのまま両腕を突っ込んでしまうと、なんとビルの上部を抱き上げてしまったのだ。
『クラウディア様、恐ろしい程の腕力ですね』
アリサが感嘆の声を上げる。
「ふふん!これが私の力よ!」
クラウディアは自信満々に言い放つと、持ち上げたビル上部を倒れないよう地面に降ろしてやった。あれ程までの高さを誇っていた政府庁舎ビルは、今やクラウディアの半分もない高さにまでなってしまっていた。
「はっ!見る影もないわね!さあ、私に降伏する準備はいいかしら?今すぐ私の足元に跪いて、許しを乞いなさい」
クラウディアは上機嫌で政府庁舎のビルにそう言い放つ。
ズシン!!
クラウディアが見せしめに足を大きく振りかざして、地面を踏み鳴らしてみせた。
その衝撃で足元のアスファルトがめくれ上がり、地面に亀裂が走る。そしてビルが大きく揺れ動き、窓ガラスが割れ、壁にはヒビが入り、ビル内部にいた政府関係者たちは、その衝撃に悲鳴を上げた。
「ふふん!これでわかったかしら?私がこの国を支配するにふさわしい支配者だって」
クラウディアは得意げに胸を張り、そう言い放った。
「さぁ、どうするの?このまま踏みつぶしてもいいのよ?」
クラウディアは、そう言って追い打ちをかけるようにビルの中を突き刺すような鋭い視線で覗き込む。
窓ガラス越しの大きな瞳に睨まれたフロア内から、悲鳴が上がるのが聞こえてくる。
ビルの中にいた人々は恐怖で言葉を失い、ただ震えることしかできなかった。
彼女に降伏するのを拒否しているのではない。あまりにも巨大な彼女に対して、恐怖で体が動かないのである。
「ふん!この私に降伏しないというのね?いいわ、それなら私に逆らうとどうなるか見せしめにしてあげるわ!」
クラウディアはそう叫ぶと、降ろしたビルを鷲掴みにして持ち上げてみせる。
「あはは!どうかしら?あなた達のビルなんて、こんなにも軽いのよ?」
クラウディアはそう言うと、更に手に力を込めた。
ミシミシ……と、ビルが悲鳴のように軋んだ音を立てる。ビルの中にいた人々は泣き叫び、許しを乞う。
しかし、クラウディアにはそんな声は聞こえないのか、そのまま力ずくでビルの外壁に指をめり込ませていく。
「このまま握り潰してやろうかしら?それとも、地面に叩きつけてやろうかしら?」
クラウディアは妖艶な笑みを浮かべつつ、その巨大な腕に力を入れて、ビルを真っ二つに引き裂いたのだ。
「あはは!脆い脆い!こんな脆いビルなんて私の力の前にはゴミ同然なのよ!」
クラウディアはそう言って、真っ二つになったビルを地面に投げ捨て、そのビルの残骸もろとも政府要人たちを踏みつぶしたのだった。
ズウゥゥン!!
「これでわかったでしょ?私に降伏する気になった?」
クラウディアがそう問いかけると、残されたビルの下部に残っていた官僚たちが慌てて外に飛び出し、クラウディアの足元に跪いて許しを請い始めた。
彼は皆クラウディアの巨体を見上げながら、必死に命乞いをしている。
その無様さにクラウディアは笑いが止まらない。
今まで感じたことのない、圧倒的な優越感が彼女の心を満たしていく。
「ふふん!いい気味だわ!お前たちは今後、私の為に尽くすのよ?わかったら返事をしなさい!」
クラウディアはしゃがみ込んで、足元に這いつくばる官僚達を見下ろしながら、そう言い放った。
ちっぽけな役人たちは、彼女の巨大な足に跪き、命乞いをする様に彼女の命令を受け入れるしかない。そんな惨めな姿を見て、クラウディアは満足げに笑う。
さっきまで政府の要職についていたエリート達、その彼らが今、自分の足元で虫ケラの様に命乞いをしている。
圧倒的な力で彼らを制圧する、その姿はまさに国を統べる女王そのものだった。
彼らの命はクラウディアの気分次第でどうとでもできるという現実を彼らも理解しただろう。その事実に、彼女は言い知れぬ快感を覚えた。
「分かればいいのよ。聞き分けのいい子は嫌いじゃないわ」
クラウディアがそう言った時だった。突如、彼女のお尻にいくつもの閃光と爆発音が襲った。
「ひゃん!!」
その閃光はクラウディアのお尻を焦がす事は出来なかったが、彼女を驚かせる程度には十分な火力があり、クラウディアは身体をビクッと震わせながら思わず悲鳴をあげてしまった。
「ちょっと!何するのよ!」
と、クラウディアは怒りの声を上げ、被弾したお尻をさすりながら、立ち上がって振り向くと、そこには戦車を中心とした武装集団の姿があった。
クラウディアが政府庁舎に襲いかかっている間に集結した地上軍だ。
『クラウディア様、彼らはまだ降伏していないようです』
「ふんっ!この私に歯向かうなんて、身の程知らずな連中ね!」
クラウディアはそう言うと、戦車部隊に向き直り、戦車隊を170メートルの上空から睨みつける。
しかし、彼女の巨大な瞳に睨みつけられてもなお、戦車部隊は果敢に攻撃を繰り出し、彼女に向かって次々と砲撃を撃ち込むが、彼女はそれをものともせずに、堂々と仁王立ちしてみせている。
「無駄よ。私には傷一つ付けれないわ!」
クラウディアは自信満々にそう言い放つ。
「無駄な足掻きは辞めて、大人しく私の前に跪くなら命だけは助けてあげてもいいけど?」
クラウディアは無謀にも攻撃を仕掛けてきた戦車隊に、降伏勧告とも取れる言葉を投げかける。
しかし、戦車隊はそんな言葉などお構いなしに、一心不乱に攻撃を継続していた。どうやらクラウディアの言葉に聞く耳を持たないらしい。
その反応を見て、クラウディアは苛立ちを隠さずに叫ぶ。
「全く、せっかくの私の寛大な提案を断って!覚悟はできてるんでしょうね!」
そう言ってクラウディアは、巨大な足で戦車を踏みつぶそうと右足を振り上げ、そのままの勢いよく踏みつけた。
ズウゥゥン!!と、地鳴りがして、彼女の体重に耐えきれずに地面が大きく陥没する。
頑丈な装甲で覆われた主力戦車も50,000トン超の質量で踏みつけられたらひとたまりもない。
黒光りするハイヒールの下敷きになった戦車は、見るも無残に大破し、履帯も砲塔も一枚のスクラップになる迄潰れて原形を留めない事だろう。
「ふふん!まだまだこれからよ!私の邪魔をする連中には容赦しないわ!」
クラウディアはそう言って、今度は反対の脚を大きく振り上げ、残りの戦車を踏み潰そうとした時、先に踏み降ろした右足の地面が突然崩れて、クラウディアはバランスを崩してしまった。
「きゃあっ!!」
クラウディアは悲鳴を上げて、そのまま地面に巨大な尻もちを付いてしまう。
「いったあ……。一体なんなのよ……」
クラウディアは大開脚を取る姿勢のまま、足元を見て驚愕した。
なんと彼女の巨大な右足が丸々地面に埋まってしまっているのだ。
「え?なんで!?」
『どうやらクラウディア様の体重に耐えきれなくなった地下鉄の天板が崩落したようですね』
アリサが冷静に分析する。確かに、クラウディアが踏み下ろした場所の真下に、巨大な空洞が広がっていた。
「ちょっと!これじゃあ動けないじゃない!」
クラウディアは慌てて起き上がろうとするが、彼女の右足は崩落した地面にすっぽりとハマって抜け出す事ができない。
さらにこの状況を好機と見た機甲部隊は、一斉にクラウディアの大きく開かれたスカートの内部を目掛けて砲撃を浴びせる。
「ちょっと!どこ攻撃してるのよ!変態!」
クラウディアは慌てて足を閉じようとするが、足首まで地面に埋まっており、黄金虫サイズの戦車たちにいいように攻撃されてしまう。
「ぁん!そんなとこ撃つなんて!もう!!」
クラウディアの悲痛な叫びも虚しく、彼女の股間を覆う下着に集中砲火を浴びてしまう。
だが、戦車の攻撃は全然効かなかった。なにしろ巨大化した彼女の肉体は、戦車の砲撃程度では傷一つ付かないのだ。
「ああ!もう!いい加減にしてよ!」
クラウディアはゴマ粒を投げつけるような攻撃を繰り返す戦車たちが鬱陶しくて仕方がない。足が自由になっていれば、こんな雑魚相手に好き勝手させる事など無いのに……。
そう思えば思うほど、イライラが募っていく。
もっと力があれば、こんな雑魚軍隊たちも抵抗しようとも思わないだろう。もっと力があれば……。
その時だった、クラウディアは身体の芯が熱くなるのを感じると共に、全身に力がみなぎってくるのを感じた。
そして、それと同時にクラウディアの身体が膨張を始める。
「え?何これ!?どうなってるの?」
クラウディアは突然の身体の膨張に驚きを隠せなかった。
170メートルあった身長も、今では200メートルを超え、さらに巨大化の速度は止まらない。
巨大化した彼女の身体に合わせて、脚力も増しており、地下に埋まっていた右足を大きく振り上げれば、その勢いで彼女の巨大な靴底が地面を突き上げて地上に顔を出す。
ズウゥゥゥゥン!! 地鳴りと共に黒いハイヒールが大地を叩きつけ、その衝撃で戦車や装甲車は吹き飛ばされてしまう。
さらにクラウディアの肉体は巨大化を続ける。
400m…、500m…とその速度は留まることを知らず、ついには1,700mの大きさにまで達した。
3.1000倍サイズで君臨するクラウディア
地上でクラウディアを見上げる人間達は、彼女のあまりの巨大さに言葉を失い、ただ呆然と見上げる事しか出来なかった。
『どうやら、クラウディア様の怒りとストレスが、さらなる巨大化を推し進めたようです』
アリサが冷静に状況を説明する。
クラウディアはゆっくりと立ち上がり、ひんやりとした上空の空気を大きく吸い込むと、地上の人間たちを睨みつけた。
その眼光は鋭く、冷徹なまでに地上の人間達を見下ろす。
その圧倒的な威圧感は、地上の人間たちに絶望を与えるには十分すぎるほどだった。
あれだけ集まった軍隊も上空1,700mから見下ろせばなんと小さい事か。クラウディアは彼らを見下ろしながら、不敵な笑みを浮かべる。
地上では群がっている小さな戦車や装甲車の攻撃が止まっていた。
1000倍にまで巨大化した彼女を見上げた彼らの目には絶望の色が浮かぶ。無理もないだろう。目の前に対峙した黒いハイヒールでさえ、先ほどの巨人よりもずっと大きい上に、そんな山のようなハイヒールを履きこなす、あの山脈のような怪物を前にして、どう立ち向かえばいいのか見当もつかないのだから。
クラウディアはそんな彼らの姿が滑稽で仕方がなかった。
「あら?さっきまでの威勢はどこへ行ったのかしら?随分と大人しくなったじゃない」
クラウディアはそう言いながら、地上の軍隊を見下ろし、鼻で笑う。
地上の軍隊たちは、あまりに桁違いな存在を前にして意気消沈してしまい、逃走を始める。
「今さら逃げようとしても、もう遅いわ」
クラウディアはそう言って、逃げていく軍隊の先にゆっくりと足を下ろしてやる。
上空から振り下ろされる巨大な靴底が、彼らの視界いっぱいに広がり、やがて進路上に巨大なハイヒールが降りてきた。
ズドオオォォンンン!!!
進路を塞がれた軍隊が方向を変えたとしても、その先にまた巨大なハイヒールが降ろされて行く手を遮られる。
「あはっ、つまらない鬼ごっこね!ほら、もっと必死に逃げ回りなさい!」
クラウディアは楽しそうに笑い声を上げながら、軍隊を追い詰めていく。そして、ついに軍隊はクラウディアの巨大なハイヒールと無数に刻み込まれた足跡と亀裂で身動きが取れなくなってしまった。
「あはっ!私の勝ちみたいね!」
クラウディアは勝ち誇った様子で地上を見下ろす。
「ふふ、私の靴に踏まれるなんて光栄な事よ」
そう言って彼女はゆっくりと足を上げて、軍隊の頭上でハイヒールを履いたまま静止する。
「ほら、私の足をよく見なさい」
クラウディアはそう言って、自分の足元でひれ伏す兵士たちを見下ろす。
彼女の巨大な足は、まるで黒い空のように広がり、兵士たちの視界を覆い尽くす。
その圧倒的な存在感を前に兵士たちは恐怖で動くことすらできなかった。
「どう?私とあなた達の圧倒的な力の差がわかったでしょ?あなた達なんて蟻以下の存在なのよ」
クラウディアはそう言って、足をゆっくりと地面に下ろす。
ズウゥゥン!!再び大地が大きく揺れる。そして、その揺れと共に彼女のハイヒールの靴底から、土煙が舞い上がった。
「ふふん、弱すぎる軍隊なんて靴裏で踏み潰されるのがお似合いね」
クラウディアは得意げに笑ってみせる。
もう、この国だけでなく世界中で彼女に敵うものなどいないだろう。彼女は首都の隅々まで見渡せる程の高みから地上を見下ろす。
「いい眺めね」
クラウディアは満足げに笑う。最高の気分だ。まるで自分がこの世界の支配者になったような気分だ。
いや、これから本当に世界を自分のものにするのだ。
自分こそがこの世界の支配者になるべき存在なのだ。クラウディアは改めてそう思った。
その時、彼女は足元でクシャッと何かが潰れる音を聞いた。
「ん?」
彼女はそう言って足元に視線を移すと、先ほど半壊させた政府庁舎ビルを踏み潰していた……。
300メートルはあった筈の超高層ビルは、今のクラウディアにとっては数十cm程度の砂の城に等しい。
彼女が足を少し動かしただけで、高層ビルは簡単に崩れてしまう。
「あら、ごめんなさい。踏み潰しちゃったわね」
クラウディアはそう言って軽く謝罪するが、その口調は完全に相手を馬鹿にしたようなものであった。
この様子だと地面にひれ伏していた官僚達もまとめて踏み潰してしまったかもしれない。でも、まあいいだろう。代わりはいくらでもいるのだから……。
「そうだ。せっかくだから跡地にはこれをあげるわね」
クラウディアは履いていたハイヒールを脱いで、政府庁舎ビルがあった跡地にキレイに並べて置いてみせた。
黒いハイヒールの踵は、約300mの巨大な黒い山脈となって聳え立ち、その存在感は凄まじかった。
濃厚な靴の臭気にクラウディアの汗と香水が混じった甘い香り。廃墟となった街に君臨する黒光りの巨大ハイヒール。
その巨大さは高層ビルを呆気なく更地に変えてしまった破壊力を物語るには十分すぎるほどの存在感だった。
当然、彼女の巨大な足が発する圧倒的なオーラの前に、誰もが言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くし、その光景を目に焼き付ける事しかできなかった。
それはまるで神と人間の圧倒的な存在格差を見せつけられているようであった。
今なら人間に踏み潰される虫の気分がわかった気がする……。自分たちは巨人の足より遥かに小さな存在でしかないのだ。
(ふふ、精々私の靴を見上げて、ちっぽけな存在なりにこのサイズの違いをせいぜい思い知ることね)
クラウディアはそんな地上の人間達を見下ろし、優越感に浸っていた。
これだけ大きいと見下しも格別だ。これが人間達の頂点に立つ者が持つべき視点なのだと思うと、クラウディアの心は更に昂ぶった。
靴を脱ぎ、素足になったことで足裏にビルやバスといった小さなものが潰れる感触がダイレクトに伝わり、こそばゆい感触が足裏から伝わってくる。
これだと人間達の建物の脆さが良く分かる。足裏の下で、瓦礫が粉々になる感触が楽しい。
そして、その感触は彼女の気分を更に高揚させた。
足元を見れば、数多のビルや道路があった場所に自分の素足がある。
その回りにはかろうじて踏み潰されなかった群衆が、彼女の巨大な素足を前に混乱して蠢いているのがよくわかる。
クラウディアはそんな彼らを見て、面白半分に軽く足指で弄んでやれば、指先に触れたビルはガラガラと崩れ去り、逃げ惑っていた彼らは抵抗する間も無く瓦礫の下敷きに消えるか、巨大な指の下に消えていなくなるか、潰されないよう肩を寄せて、祈る事以外出来なかった。
「あはは!いい気分だわ!あなた達の希望を踏み潰す瞬間って最高!」
クラウディアは高笑いを上げながら、足元で逃げ惑う哀れな人達を蹂躙して、楽しんでいる。
そしてその足元のちっぽけな存在……人類はただ見上げる事しかできない無力な存在であることを思い知らされ、彼らの絶望と恐怖がごちゃ混ぜになった表情を一望するのは最高の気分だった。
「ふふ、あなた達は私の靴以下の存在だもの。どんなに頑張っても私からは逃げられないわ」
クラウディアはひと思いに群衆を踏み潰してやろうとも考えたが、別の考えを思いついた。
「ねぇ?ずっと靴を履いてたから、足が蒸れちゃった……。だから、この足を舐めて綺麗にしてほしいの」
そう言ってクラウディアはわざとらしく足裏の臭いと汗が染み込んだ足指を彼らに差し出す。
足元で蠢いていた群衆達は、クラウディアの巨大な足から漂う強烈な臭いと、圧倒的な威圧感から思わず顔を背け後退りするが、クラウディアはそんな彼らの反応を楽しむように、ゆっくりと指先を地面に降ろした。
「あら?私の命令に逆らう気?なら、今すぐ踏み潰してあげるわよ」
クラウディアはそう言って、反対の足を上げる仕草を見せると、彼らは蚊の羽音のような悲鳴を上げてみせたが、それでも彼女の命令に従う素振りを見せないでいる。
「舐めなさい」
今度は短く、それでいてドスの利いた声で命じた。
すると、一人、また一人と彼女の巨大な足先に群がるように集まっていき、彼女の素足を舌で舐め始める。
クラウディアはそんな彼らの様子を面白そうに見下ろしていた。
(ふふん、いい気味だわ)
彼女は心の中で嘲笑う。
「あははっ!くすぐったい!」
クラウディアは、敏感な指の股部分を舐め回されて、思わず笑い声を漏らしてしまう。
しかし、彼女は決して足指を閉じようとはしなかった。
それは彼女の嗜虐心を満たすためだ。
クラウディアは、自分の巨大な素足に小さな人間が必死に奉仕する姿に興奮していたのだ。
(んっ……はぁ……)
無数の小さな舌が、自分の足の指先や指の間などを丹念に舐め回している光景を見下ろし、彼女は溜息をつく。
彼女にとっては、大した感触ではないのだが、足を舐めさせるという屈辱的な行為をさせているという事実が、彼女の興奮をさらに高めていた。
クラウディアの素足は、汗で蒸れており、足の指の間などはもっと蒸れて、その臭いは強烈だった。
「小さすぎて役に立たないあなた達に、特別に足を舐めさせてあげてるのよ?光栄に思いなさい?」
クラウディアはそう言って、足の指の間に挟まる小さな人々を見下ろしながら、クスクスと笑う。
彼らは必死でクラウディアの巨大な足の指の隙間を舐め、少しでも汚れを落とそうとしていた。
(ふふん、惨めね。所詮は虫ケラ以下なのよ)
クラウディアは優越感に浸りながら、彼らの必死の奉仕を眺めていた。
気分はまさに最高潮だ。これだけの力を手に入れられたならば、もう誰にも負ける気はしない。
自分こそがこの世界を支配するに相応しい存在だ。
クラウディアは、自分の足元に群がる虫ケラのような存在を見下ろしてそう確信した。
『……様、クラウディア様、聞こえてますか?』
愉悦の時を噛み締めて、自分の世界に入り込んでいたクラウディアだったが、アリサの声に気づくと、現実世界に戻された。
「え、ああ……。聞こえてるわよ」
クラウディアは平静を装ってアリサの通信に応えるが、内心は動揺していた。
『群衆に足を舐めさせて悦に浸っているところ、すみません。クラウディア様に伝えたい事がありまして』
「べ、別に悦に浸ってなんかいないわよ!これは、そう……。ただの調教よ!そう!自分たちがどれだけ無力で、私に従わざるおえないかを教えてあげてたのよ!」
クラウディアは顔を真っ赤にして反論する。
まさかアリサに自分が悦に浸っている姿を見られてしまったとは……。
彼女の気分は羞恥と屈辱が入り交じり、怒りへと変わっていく。
「そんなことより、用件は何なの?」
クラウディアはそう言って、話を逸らす。
『はい、先ほどクラウディア様の身体をもとに戻す方法がわかりましたので、それを伝えに……』
アリサのその言葉に、クラウディアは思わず胸が高鳴った。
まさか、本当に元に戻れるとは……。正直なところ、クラウディアは大巨人の姿になった事に不安を覚えていた。もしかしたら一生このままだと思っていたからだ。
流石にこんな山のような大きさのままだと、食事など生活するのに不便だし、好きな服も着れないし、お風呂に入るのも大変だ。何より排泄問題はどうする事もできない!
でも、アリサが治し方を見つけてくれたので、もう心配いらない。
元に戻る方法さえ分かれば、この巨大な力を使って小賢しい抵抗をする人間どもを痛めつけた後は、元の姿に戻ることが出来る!
『では説明しますね』とアリサは前置きして、彼女の身体に起きている事について話し始めた。
"服薬後に身体が巨大化した原因は、クラウディア様の体内で生成された特殊なホルモンが関係しています。
このホルモンは、人間の身体に急激な成長を促す作用が有り、一時的に肉体の強化や知能の向上などを起こします。
しかし、ある一定の条件下において、このホルモンはその真価を過剰に発揮します。
その条件とは、過度なストレスと緊張です。
これらの条件下において、このホルモンは急激に分泌され、身体の成長を促進させるとともに、その人の潜在能力を最大限に引き出す作用があります。
つまり、このホルモンは人間の身体を一時的に成長させ、知能と身体能力を向上させる反面、過度のストレスや緊張によってその効果が暴走してしまうのです。
その結果として、肉体の巨大化が引き起こされます。
そして、このホルモンの過剰分泌を抑える方法ですが……"
アリサがそこまで説明した時、クラウディアは彼女の話を遮るように言葉を発した。
「あーはいはい、薬の副作用で身体が大きくなったのはわかったわ。それで、元に戻る方法は……」
『はい、クラウディア様の身体が急激に成長したのは、急激なストレスと緊張による暴走によって巨大化してしまったのです。
なので、反対に身体に溜め込んだストレスや緊張を取り除くことで、元の身体に戻っていくと思われます』
アリサの言葉を聞いてクラウディアは安堵した様子を見せた。
「なんだ……それだけ?なら簡単じゃない」
と彼女は微笑を浮かべるが、アリサの言うストレスや緊張を取り除くにはどうすればいいのだろう?
「それで、ストレスや緊張を取り除くにはどうすればいいの?」
『確かに、いきなりストレスや緊張を取り除けと言われても難しいとは思います。そこで、即席ではありますが、クラウディア様の身体を元に戻すための薬を調合してまいりましたが、あくまでも非常用として……』
そんなアリサの説明と共にクラウディアの近くに小さなヘリコプターが現れた。
ヘリには機体よりも大きな特大サイズの薬瓶のようなものが吊り下げられており、これがその薬なのだろう。
「この薬を飲めばいいのね?」
クラウディアは巨大化した自分には小指ほどしかないサイズの薬瓶を回収するとそれを一気に飲み干し、空になった小瓶を投げ捨ててしまう。
(これで元に戻れる)
クラウディアはそう確信していた。
『あーぁ、また説明を聞かずに薬を飲んでしまって……』
アリサの呆れたような声が脳内に響く。
「だって、元に戻れるんでしょ?ならいいじゃない」
クラウディアはそう反論する。しかし、彼女の身体には変化が見られなかった。
『はい、確かに薬は効きます。しかし……その……』
アリサの歯切れの悪い言葉にクラウディアは不安になるが、次の瞬間、彼女の身体に変化が訪れた。
ドクンッ!
「な……何これ!?」
クラウディアは自分の身体が急激に熱くなっていくのを感じた。それと同時に心臓の鼓動が激しくなり、息苦しくなってくる。
そして、同時に彼女の頭がぼんやりとして思考能力が落ちていくのを感じた。
『クラウディア様が飲んだのは、ストレスや緊張を発散させるため、一時的に発情させる薬です。つまりは媚薬みたいなものですね』
「はぁ、はぁ……。そ、それを先に言いなさいよ……」
『説明を最後まで聞かなかったのは、クラウディア様です』
アリサは呆れたように言うが、クラウディアには聞こえていなかった。
彼女は今、身体の内側から湧き上がってくる強烈な性欲と戦っているからだ。
「はぁ……はぁ……」
クラウディアは急激な身体の変化に耐えていた。荒い呼吸を繰り返し、彼女の身体は熱く火照り、全身から汗を流している。
その汗によって彼女の着ていた服がしっとりと濡れて肌に張り付き、彼女の艶めかしい身体のラインを際立たせている。
『溜まっているストレスや緊張を取り除くには、性欲の発散が手っ取り早いです。なので、これから自慰行為を行っていただければ直ぐに元の姿に戻れます』
アリサの冷静な声が脳内に響く。
しかし、こんな巨大な姿で自慰行為なんてしたら、世界中にその姿を晒す羽目に……。それだけは避けたい。
だが、発情しきった今の彼女にこのまま我慢し続ける事など出来るはずもなかった。
「はぁ……はぁ……んっ……」
手が自然にゆっくりと自分の巨大な胸に手を伸ばしていく…。、その大きな胸を揉み始めた。
手の動きに合わせて巨大な胸が形を変える。そして同時に今まで感じたことも無い快感が襲ってくるのだ。夢中になって自分の胸を揉み続けると、その度に彼女の口から甘い吐息が漏れてしまう。
(ああん……気持ちいい……)
胸からの甘美な刺激によってクラウディアの思考が甘く蕩けていく。
そして、その思考は徐々に股間へと集中していく。
彼女の意思に反して巨大な股間には大量の愛液が溢れ出しており、まるで洪水のように流れ出し地面に水溜りを作っていた。
クラウディアはそんな自分の身体の変化に戸惑いつつも、胸からの刺激と股間の疼きによって理性を失いつつあった。
(だ、だめ……このままじゃ……)
そんな思いとは裏腹に身体はどんどん熱くなっていく。巨大化して圧倒的な力を手にした全能感と、自分の巨体を興奮させる淫猥な肉体臭が混ざり合い、彼女の情欲はさらに高まっていった。
「はぁ……んっ……♡」
クラウディアの口から熱を帯びた吐息が漏れる。
もう我慢できない……もっと強い快楽が欲しいのだ。
「はぁ……ん……♡あぁ……♡」
クラウディアは辺りを見回して見る。1000分の1サイズの街には彼女から見て1cmに満たない高さの建物が所狭しと密集している。
先程まで踏み潰しては、彼女の優越感を満たしてくれた小さな建物たちも、今の彼女にとっては取るに足らない石ころ以下の存在だ。
それらを踏み躙り、壊してみたところで、この肉欲を満たすことは出来はしないだろう。
彼女はもっと大きなものが欲しいと思った。
(もっと……もっと大きなもの……)
彼女はそう考えて周囲を見渡す。すると、彼女の目に留まったのは街の商業エリアの中心街にそびえ立つ大きな高層ビルだった。
それは地上200mはある超高層ビルと高い建造物だ。
その大きさは他の建物よりも群を抜いて目立っており、まさに今の彼女にとっておあつらえ向きなものだった。
「ふふ……いいわね……」クラウディアはそう呟くと、その巨大なビルに向かって歩き出したのだった。
4.制御できない肉欲
10km四方もある広大な商業エリア。そこには様々な商業施設が建ち並んでおり、つい先程まで多くの買い物客や観光客で賑わいを見せていた。
しかし今は、山すら跨いでしまえそうな大巨人が出現したことで、その賑わいは一瞬で消え去り、代わりにパニックと悲鳴が巻き起こる。
そんな声があちこちから聞こえてくる中、巨人はゆっくりと歩を進めてくる。
黒い髪を靡かせ、真紅のドレスを身に纏うその巨人は、姿だけで言えば紛うことなき美の結晶。
しかし、その身体の大きさはもはや異次元の領域に達しており、全長およそ1,700mにも及ぶその姿はまさに天災級の怪物と呼ぶに相応しいものだった。
彼女の一歩は1kmにも及び、その一歩の後には250mを超える深い足跡を残される。
彼女が歩く度に地面は大きく揺れ動き、地震かと思うような地響きが街を襲う。
まだ、あんなに遠くにいるのに、はっきりとその姿を街の至るところから見上げることができ、まるで近くから見下ろされているような錯覚さえ覚えてしまうほどだ。
そんな巨大な怪物を前にしたら、人々は恐怖と絶望に震えて立ち止まってしまう。
普段、人間は自分よりも強大な存在に出会う機会が少ないため、それに対する耐性がほとんど無いに等しい。
そのため、圧倒的な力で蹂躙されるという事態を前にすると体が動かなくなってしまうのだ。
ずうぅううんん・・・
ずうぅうううんん・・・
地鳴りが近づき、立っていられない程の激しい揺れが街を襲う。
突き上げる衝撃。
空気が震える振動。
振動と衝撃がビルを揺らし、トラックやバスを跳ね飛ばす。
まるで巨大な大地が波打つかのように錯覚する程だった。
巨人の一歩は、街にある全てのものを踏み砕き、蹂躙し、破壊する。
彼女の巨大な一歩は、まさに天変地異そのもの。
人々はただ逃げ惑う事しかできず、彼女の歩みの障害となる建物は全て踏み潰されて瓦礫と化す。
そんな光景を目の当たりにして恐怖しない人間などいるだろうか?いやいないだろう。
おびえる群衆を尻目に彼女は止まる気配すらない。
まるで自分の存在を見せつけるようにゆっくりと歩を進めてくるのだ。
その巨大な一歩で踏み砕かれるビルや道路。そして、地上で逃げ惑う多くの人間たちをまとめて長径250メートルの巨大なハイヒールが唸りを上げ、まるで虫けらを踏み潰すように、轟音と共に地面に叩きつけられる。
彼女のハイヒールが大地にめり込むたびに地響きと衝撃が発生して、街は地震に襲われたかのように大きく揺れ動き、周辺にいた人々や電車ともども、黒い巨大な靴裏の下に消えていった。
クラウディアは足元の凄惨な状況など、もはや眼中にもない。途中で何千人の人々を踏み潰したか知ったことではない。
少し歩いてたどり着いた超高層ビルは、細長く天に向かうように聳え立っていたが、今のクラウディアにとっては膝下に届かない高さしかない。
そんな高さの高層建築をクラウディアはじっと見つめてみる。中からはゴマ粒のような人間が大勢の人々が逃げ出して、押し合いへし合いのパニックに陥っている。
それは滑稽な有様ではあったが、今のクラウディアにはそんな人間達のことなどどうでも良かった。
ただ、このビルを使って自分の性欲のはけ口にしようと思っただけだ。
彼女は濡れた下着を脱ぎ捨てると、その巨大な指で割れ目を開いてみせる。
中の肉ヒダがぬらりと妖しく光り、ビクビクと痙攣している様子がハッキリと確認できた。
クラウディアはスカートの裾を持ち、膝立ちになると、高層ビルを跨ぎ、そのままゆっくりと腰を下ろした。
ズウゥウンン・・・ 地響きが周囲に響き渡り、地面が大きく揺れる。
そして次の瞬間には、巨大な尻肉を超高層ビルの上に沈めた。
高層ビルはずぶりと湿った音を立てて、彼女の巨大な洞窟の中に入っていった。
「ああんっ!♡」
その刺激によって彼女は軽く絶頂を迎えてしまった。しかし、まだ満足できないのか、さらに強く押し込んでいく。
ビルはミシミシと音を立てて、今にも崩れそうだ。
「ふふ……どこまで耐えられるかしら?♡」
そう言って、クラウディアは腰を動かし始めた。その動きに合わせて彼女の巨大な尻が上下し、そのたびに超高層ビルが揺れる。
高層ビルの中では人々が激しく揺さぶられ、床に這いつくばる者、壁に激突して気を失う者、手すりに掴まって揺れに耐えようとする者が入り乱れている。
地上ではパニックに陥っていた人々や車が、暴れ狂うクラウディアの巨体によって踏み潰されていく。
そんな阿鼻叫喚の光景などお構いなしに彼女は快楽を求めて動き続けた。
「ふぅ……♡んっ……♡ああん!」
ビルの細かい凹凸が膣の中を刺激する。
虫けらの様に小さく、無力な存在とはいえ、数十万人が見ている中で自慰行為をしている恥ずかしさで、顔が熱くなっていくのがわかる。だが、逆にそれが自分の興奮を煽っていることにクラウディアは倒錯的な快感を覚えていた。
「ああんっ!いいっ……♡もっとぉ……♡」
彼女の動きが激しくなり、それに合わせて高層ビルも揺れる。両手を地面につけ上半身の体重をかけて、腰のストローク運動がさらに加速する。
「はぁ……んっ!イクッ!イクゥウウッ!!!」
クラウディアの絶叫と共に、彼女の身体が大きく震えると、それと同時に地上は彼女が引き起こす振動なのか、彼女の喘ぎ声によるものなのか、もう分からないほどの地鳴りが響き、地上にいた人々は鼓膜が破れるのでは無いかと思う程の轟音の前に耳を塞いでいた。
「はぁはぁ、いいわ……もう少しでイケそう……♡」
クラウディアはそう言うと、今度は先程とは違い、グリグリと回転を加えたストロークを始める。彼女の巨大な指がしっかりと地面を掴み、その指の力だけで深い谷が形成されてしまった。
「ああんっ!いいっ!」
彼女は快楽に酔い痴れるかのように叫ぶと、顔を紅潮させて、髪を振り乱した。
いよいよ限界が近いのだろう。
「んああッ!」
クラウディアが一際大きな声で叫んだ瞬間、挿入していたビルがすぼっと、土台から引き抜かれてしまったのだ。
あまりの興奮に、膣圧の力加減が上手く出来なくなってビルを引き抜いてしまったのだ。
ビルは根元からすっぽり引き抜かれ、クラウディアの巨大な割れ目に突き刺さったままの状態で宙に浮いている。
「もう・・・弱いんだから!!」
クラウディアは不満げに言うと、ビルをまんこから引き抜き地面に叩き落としてやった。
轟音と共に地面に叩きつけられたビルは一瞬で崩壊してしまったが、それでも行為を中断されて気がすまないクラウディアは、さらにビルの落下地点へ握りこぶしを叩きつけてやった。
「ふん!」
ビルは一瞬で粉々になり、その余波で周囲の建物も倒壊してしまう。
しかしそれでもクラウディアの性欲は収まらない。
「ほかには……何かないの……?」
クラウディアは周囲を見渡すが、辺りには彼女の性欲を発散させるような大きな構造物は無かった。
「あら?良いものがあるじゃない……♡」
彼女はふとあることを思いついてニヤリと笑った。
その視線の先にあるのは巨大な橋だった。全長約1kmにも及ぶ橋は、上陸時に跨いだあの橋だ。
「ふふ……あれなら楽しめそうね」
そんな独り言を呟きながら、彼女はそのまま四つん這いになると、橋に向かって移動する。1000倍に巨大化した今なら、少し移動しただけでたどり着いてしまう。
クラウディアの膝と足が、通り道にある建物をすり潰しながら橋に向かって進んで行く。
運良く巨大な手に押し潰されずに済んだ者は、巨大なクラウディアの真下で山のような乳房がゆっさゆっさと揺れる様を呆然と見上げる事が出来た。
その乳房は片側だけで何百万トンもの質量を誇り、その重さは想像を絶する。
そしてその胸の谷間にはちっぽけな人間を数万人がすっぽりと収まってしまう事くらい容易い事だろう。
そんな巨大な乳房を間近で見てしまった人々は、あまりの迫力に言葉を失ってしまい、ただ呆然とその乳房を見上げている事しか出来なかった。
「ふふ、この橋も私のオモチャにしてあげるわ♡」
そう言ってクラウディアは巨大な身体を橋のすぐ隣で停止させると、そのままの姿勢で橋を見下ろす。橋の横幅は50m程あるが、クラウディアの足裏にそのまま入ってしまいそうな程度の幅でしかない。
そんな狭苦しい道路には、クラウディアから逃れようと、無数の車が渋滞を起こして所狭しと並んでいる。
「ふふ……逃がしはしないわよ」
そんな彼らを嘲笑いながらクラウディアはゆっくりと立ち上がり、仁王立ちの姿勢を取ると、片足を上げて巨大な足を振り下ろし、まるで蟻の巣を潰すかのように橋と陸地を結ぶ鉄骨を踏み砕いた。
ズウゥウンン・・・ 彼女の巨大な足が橋桁と道路にめり込み、橋と車が潰れる。
「反対も……♡」
クラウディアは反対の接続部も容赦なく踏み潰した。そして、ついに橋は両端部とも崩れ去ってしまった。
「ふふ……これでもう逃げられないわね♡」
そんなクラウディアの足下には崩落した橋の瓦礫の山が広がっている。残った部分は中央の橋脚と橋桁、そして橋を形作っていたアーチ状の部分だけだ。
橋の上にいた車と人間たちは逃げ場を奪われ、橋を跨いで仁王立ちする巨大な彼女を見上げる事しか出来なくなった。
「……いい光景ね♡」
クラウディアは満足そうな笑みを浮かべ、舌を出して唇を濡らした。そして、橋の様子をもっとよく見るため、ゆっくりとしゃがみ込んだ。
巨大な彼女が動くと橋の上の人間たちもざわめき立つが、逃げ場などドコにもない。
彼女はそのまましゃがみ込むようにして座り込むと、大きなお尻で橋を跨いでしまった。
「……どう?私のお尻は?♡」
クラウディアが妖艶な笑みを浮かべて自分の臀部を見せつけるように、巨大なお尻をゆさっ!っと揺らした。
股下の端ではお尻の動きに合わせて悲鳴が上がる。
頭上を覆うほど大きな尻だ。こんな間近で見せられる恐怖感は並大抵のものじゃないだろう……。
「ふふ……私のお尻でペチャンコにしてあげる♡」
ズウゥウンン・・・
巨大な尻肉が下ろされ、橋のアーチ状の部分を包み込むように被さり、さらにその圧力を加えて行くと車や人間が尻肉の下で押し潰される。
「ああんっ♡!いいっ♡!」
彼女は快楽に身悶えしながら腰を振り続けると、橋が重さに耐えきれずに大きく傾き始めた。
「ああッ!!!この快感っ!んっ♡!!」
巨大なお尻の下敷きになってしまったコンクリートの塊たちが悲鳴を上げ、橋全体が大きく震えた後、彼女の巨尻の下でバラバラに砕けていった。
橋全体が地震のように大きく揺れる中、クラウディアは更に興奮し、お尻を左右に動かして、自分の下敷きになった物体を踏み潰していく。
「あんっ、あんっ!あぁ……いいわぁ!……あぁんっ!!」
巨大な割れ目が車やトラックを飲み込み、ぐちゃぐちゃに潰していく……。
アスファルトが割れて、瓦礫が飛び散り、橋の上は地獄と化していった。
「あぁ!イクッ!イッックウゥゥウッ!!」
彼女の絶叫と共に、身体をビクンッと跳ねさせた。
そして、今まで以上に激しくお尻を動かし始めると、橋全体がギシギシと音を立て始める。
クラウディアの巨尻が暴れまわり、橋全体が大きく震えると、今までで最大の音が鳴り響いた瞬間、お尻の下で橋が崩壊してしまった。
「ひゃうっ!?」
突然、橋が崩壊した事でバランスを崩したクラウディアはお尻から川に落ちてしまう。
ドボーンッと、水しぶきを上げながらクラウディアは川の中へと落ちてしまった。
「ああん……!どれも弱いんだから……。んもう……!」
川の深さはクラウディアの臀部を軽く濡らす程度でしか無い。
彼女は不機嫌そうに橋があった場所を睨みつける。
そこには無残な姿になった橋が横たわっていた。
「ふん……まぁいいわ。ほかを探して……ん?」
クラウディアが川から立ち上がろうとしていると、川が海へ流れ込む河口部にひときわ目立つ大きな船体を見つけた。
それは巨大なクラウディアから逃れようとした市民と自動車を満載した大型フェリーであり、今まさにクラウディアから逃れようと必死になって外海へ向かって移動していた。
「あれにしよ♡」
クラウディアはにっこりと笑い、立ち上がって川沿いを歩きフェリーに向かって行く。
巨大な姿のクラウディアから見れば、フェリーなど片手で持ち上げられる玩具に過ぎない。
全速力で港から出ようとするフェリーに、簡単に追いつくと船体の後ろから掴んで持ち上げた。
「ふふふ……捕まえた……♡」
フェリーを両手で掴み上げ、クラウディアは笑った。
フェリーの中はパニック状態になっていた。
悲鳴と叫び声を上げながら人々は扉や窓に張り付いて必死に逃げようとしている。
しかし、上空1000m以上の高さに持ち上げられたフェリーはクラウディアの手から逃れる事は出来ず、その手の中で玩具のように弄ばれていた。
「さぁ……楽しませて貰うわよ……♡」
クラウディアはそう言うと、その場に腰を降ろし、足を大きく開くと、手にしたフェリーを濡れている股間にゆっくりと挿入した。
「あぁん……」
フェリーはクラウディアの股間に押し込まれ、その船体の表面をクラウディアの性器が撫で回した。
「ふふ……あなた達も、私の玩具なのよ……♡」
クラウディアは笑みを浮かべながら、股間に突き刺さるフェリーを前後に動かし始めた。
「あぁん……いいわぁ……♡」
フェリーを動かして股間を擦り上げるクラウディア。
船は先ほどのビルよりも大きく、またその表面も船体下部は滑らかだが、上部は様々な構造物でゴツゴツしているため、ビルとは違った刺激がクラウディアの膣壁に伝わってくる。
動かすたびにやって来る甘美な刺激にクラウディアは喘ぎ声を上げ身を捩った。
そして、徐々にスピードを上げてフェリーを動かし続ける。
股間から流れ出る愛液が、クラウディアの脚を濡らしていく。
「はぁ……すっごい、気持ち良いぃ……♡あぁん……♡」
そう言ってクラウディアは更に激しく股間を擦り上げていく。
すると、クラウディアの股間から水音と共に愛液が吹き出し、フェリーの船体が軋む音が聞こえてきた。
「あぁ、ダメぇ……♡壊れちゃうぅぅ……♡」
股間から愛液を撒き散らしながら、高速でフェリーを動かすクラウディア。
その顔は快楽に歪み、口からはだらしなく涎が溢れている。
「あぁん……ダメ、イッちゃうぅ……♡んんっ!」
じゅっぷっ……じゅっぷっ……。
下品な水音が更に大きくなり、やがてその音は更に加速する。
街中に卑猥な音が鳴り響き、自らの生命と街が巨人の性欲の消費物になったとしても、人類には彼女の動きを止める事など不可能な事だった。
「いいわぁ……もっとぉ……もっとよぉ!あぁぁん!!」
ぐちゅぐちゅと音をたてながら、クラウディアの股間は何度も出入りを繰り返す。
その度に、クラウディアは身体を大きく仰け反らせ、巨大で淫靡な姿を晒し続ける。
彼女が腰を下ろしている海岸も、大質量の巨体が震えるたびに大きく揺れ動き、津波のような波を起こし続ける。
「あぁ!すごいぃ……!!こんなの初めてぇ!!」
もっと小さな存在を感じたい。もっと欲情した肉体で小さな船を締め付けて、肉と船体の間で藻掻き苦しむ小人をもっと感じたい。
まるでディルドのように僅かに進めたり捻るだけで、船から振り落とされた表面の小さな粒たちはあっという間に弾け感触を失う。
船内部に残っていた小人の事などもはや眼中にない。
ただただ、その快楽に身をまかせ、己が満足するまで使い潰すだけ。
「あぁっ!だめ、もう我慢できない!」
クラウディアは絶叫と共に絶頂を迎えた。
同時に全身を大きく痙攣させ、膣を思い切り締め上げる。
ため込んだ快感が一気に解き放たれ、フェリーを包み込む肉壁がギュッと収縮した。
絶頂に達した膣は、フェリーを強烈に絞り上げていく。
その締め付けによって、クラウディアの中にあった小さなフェリーの船体は一瞬で圧壊してしまった……。
それと同時にクラウディアも脱力し、前のめりに倒れ込んだ。
巨大な乳房が水飛沫を上げながら地面に衝突し、その衝撃でまた津波が発生する。
陰唇からは、あふれ出てきた大量の愛液に混じって、小さな残骸と化したフェリーが吐き出され、水面を漂っていった。
クラウディアは絶頂に達した余韻に浸りながら海岸で横たわっていたが、その表情には満足感が見て取れる。
「あぁ……気持ちよかったぁ……」
そう言ってクラウディアは満足そうな笑みを浮かべたのだった……。
5.エピローグ
「はぁ……なんとかもとには戻ったけど……やりすぎたわね……」
2時間後。暴れまわっていた巨大なクラウディアの姿は完全に港から消えていた。
あの圧倒的な大きさを誇っていた巨大な身体は消えてなくなり、今では跡形もない程に破壊された、フェリーや橋梁の残骸と破壊され尽くされた街や港が残っているのみだ。
「もとに戻る方法があれって、冗談じゃ無いわよ、まったく」
まるで大規模爆撃を受けたかのように瓦礫まみれになったかのような街を一人で歩く、普通サイズのクラウディア。
彼女の体内に残っていたエネルギーも全て一人エッチで吐き出されたのか、元の姿に戻っていた。
「ううっ……死にたいぃ……」
オルガスムスが過ぎて、理性が帰ってくると、羞恥心が沸いてくる。しかも、あんな痴態を全世界に向けて晒してるのだ、それはなおさらだろう。
もういっそこのまま死んでしまいたいくらいに恥ずかしさを噛み締めながら、自分が踏み荒らして破壊した街で瓦礫を避けながら歩む。
巨大化した時の凄まじい質量で踏みつけたアスファルトは各地で激しくひび割れ、地盤を踏み抜いた場所では、舗装がめくれ上がりまともに道を通れないほどになっている。
その上、足跡を中心に放射状に大きく地崩れを引き起こしているせいで、道そのものが通行不能になってしまったエリアもあった。
「あぁんもう、ここも通れないし……何やってのよあたし!!」
道路が10m以上も沈んだ広大な窪地を避けながら、彼女は苛立ちながらぼやく。この長さ100m、幅は40mはありそうな巨大な窪地は、1000倍に巨大化したクラウディアのハイヒールの先端部分だけで形成された、巨大な靴跡なのだ。
特につま先やヒールの部分は一番深くまでめり込んでいるのだから、窪んだ底には道路や車などは当然、建物すら原型を留めていないモノがぺしゃんこに圧縮され張り付いている。
彼女は巨大化している時こそ無敵だが、小さくなった時はどこにでもいる普通の人間だ。
巨大化していた時は、道路を無視してゆく手に建物があろうと線路があろうと、お構いなしに片っ端から踏み潰して歩けたが、今となっては自分の足跡を超えるだけでも四苦八苦する始末。
しかも、地面は大雨が降ったかのように濡れてぬかるんでいて歩きにくい。
これはきっと、自分の巨体が揺れ動いたことによる液状化が原因に違いない。決して自分の汗や愛液で路面がぐしょ濡れになったからではないとクラウディアは思うことにした。そうじゃなきゃとても耐えられないからだ。
「ああ~もう!何でこうなるのよ!!」
またイライラとした気持ちが爆発してしまい、大空に向けて叫ぶことで発散させた。
顔を上げれば目に入るのは、壮大なる雄峰……ではなく、1000倍に巨大化した際に脱ぎ捨てた黒いショーツ。
目が眩むほどに巨大な自分の下着は、その場にあった建物を押しつぶして、廃墟になった街の上にどっかと鎮座しているのだ。
巨大化したクラウディアのショーツ一つでも十分な大きさを誇る。
その証拠に街の至るところから、巨大な下着を見上げることができる。
何で巨大化していた時に回収しなかったのだろうか……。バカでかい自分の下着を見上げてあの時の自分を恨むが、そんな事をしたって何も変わらない。
「うぅ……」
顔を真っ赤にして恥ずかしさをこらえながら、瓦礫を踏み分けて巨大ショーツの元へと向かったが、普通の人間に戻ったクラウディアでは巨大な下着をどうする事も出来ない。
「もう!!アリサぁ!何とかしなさいよぉ!!」
廃墟と化し、動くものがいなくなった街の中に、クラウディアの声が叫び声だけが空しくこだまするのであった……。