1. 異星からの訪問者(地球人視点)
夜空に浮かぶ満月が、極東の大都市を彩る摩天楼を照らす。21:00を過ぎたこの時間、街は活気に満ち、夜の繁華街は人々で溢れ返っていた。
摩天楼は煌めき、ビルの窓から漏れる光が星空と競い合い、ネオンの怪しい光が夜の闇を切り裂き、人々は喧騒の中でそれぞれの夜を楽しんでいた。
大通りは、老若男女たちで賑わい、さらに電車が駆け抜ける音と混じり合い、独特の活気を生み出し、光の途切れることの無いコンクリートの森の中を車両やバイクが通りを埋め尽くし、光と音の饗宴が繰り広げられている。
そんな日常の風景を、突如として異常な現象が覆い隠す。風が急に強まると、街路樹の葉がざわめき、紙屑が舞い上がり、ビルのガラスが振動し出した。
異変に気付いた人々は何事かと、周囲を見渡し始める。群衆の一人が空を見上げ、指を指すと、その方向に視線が集中した。
そこには、満月が輝いている夜空があるはずだが、その月を巨大な影が覆い尽くしているではないか。
巨大な影は、光と音に包まれた摩天楼に影を落とし、まるで闇から這い出てきたような不気味さを演出した。
空に浮かぶ巨大な影。それは巨大な飛行物体だった。その飛行体は、地上のどの建物よりも巨大で、その大きさは、空全体を覆いつくしたと錯覚させるほどに巨大だった。
夜の街に鳴り響くサイレンが群衆を恐怖へと陥れ、夜空にはサーチライトが飛び交い、様々な光が交差していた。
そして、その飛行物体はビル群の上空で停止し、ゆっくりと回転しながら地上を見下ろしていた。銀色の形状の流線型の胴体は、まるで映画の中に出てくるUFOのような姿だった。
ビル群から見上げる人々の視線に反応するかのように、船体中央部にあるハッチが開き始め、そこから姿を現したのは……。
一人の女性。長い金髪に青い瞳をした若い女性だった。
銀色のライダースーツのようなボディスーツに包まれ、その筋肉質でありながらも、非常に滑らかで美しい曲線を持つ彼女のスタイルを惜しげもなく披露していた。
彼女の顔立ちは、鋭く美しかった。高い頬骨、尖った顎、そして薄いが強い印象の唇を持ち、表情は冷静で、ほとんど感情を表に出さない。
そんな彼女が凛とした表情のまま金色の髪を靡かせ、ハッチから出ているタラップを降りる姿は、まるで映画の中のワンシーンを切り取ったかのようだった。
だが、人々がもっとも驚いたのは、巨大飛行体長でも、彼女の容姿でもなかった。
降りてきた女性は地球人によく似た姿をしていたが、問題なのはその大きさ。ハッチから覗く彼女の姿はどう見ても地球の人間の1,000倍はあろうかという大きさだった。
全長1,800mに迫る巨躯を持つ女性の登場に、夜の街は一気に大混乱に陥り、人々は超巨大宇宙人を前に怯え狂い 悲鳴をあげながら逃げ始める。群衆のパニックはあっという間に広がり、人々は我先にと逃げ惑い始めた。
しかし、そんな状況でも宇宙人の女性は全く動じるどころか、気付く様子もなく、悠然とした態度で東京の街並みを見下ろしていた。
その巨大な姿はまるで神か悪魔のような威圧感を放ちながら立ち尽くしていたのだった。
そして彼女はゆっくりと歩き出し、ついに少女はビルと駅を踏み潰して地球に上陸した。
ボディースーツと一体になった巨大な銀色のブーツがビル街へと足を踏み入れると、その一歩が地響きとなり、地面が震え、数百メートルの範囲でコンクリートが割れ、道路が大きく陥没する。
彼女の足元から広がる振動でビルを揺らし、窓ガラスが次々と割れ落ちる。
その一歩が踏み出す度に、地響きと振動が街を包み込み、避難警報が鳴り響く中、人々は恐怖に怯えながら逃げ惑った。
しかしそんな人間たちの逃亡をあざ笑うかのように巨大な彼女は容易に彼らに追いつき、270mを超す巨大ブーツの下敷きにした。
当の本人は、足元に何が存在しているのかすら、全く気がついていないのか、足元に何百という地球人を踏み潰したことなどまるで気にした様子は無い。
この日、人類史上初めての異星人との遭遇。しかも相手は、ビルをも凌駕する巨大な女性宇宙人だった。
この大異変は、地球に新たなる危機をもたらすことになるのだった。
2.星間追放者セレナ(セレナ視点)
時はさかのぼって数時間前。
銀色のボディースーツに身を包んだ少女、セレナは狭い宇宙船の中で悪態をつきながら、目の前の計器類をいじくり回していた。
「クソっ!このポンコツ宇宙船!なんでこんな時に限って故障するのよ!」
セレナは同世代の男子も見上げる長身の為、宇宙船の空間がより小さく見えてしまう。
そんな狭い空間で、腰まで伸びた金色の髪も乱れてボサボサになっている。
彼女は無限に広がる宇宙空間を全速力で航行している最中であった。理由は、彼女を追跡している宇宙警察から逃れるため。
彼女は、銀河連邦政府の機密情報を盗み出して、犯罪組織へ売りさばこうと活動していたところを見つかって、追跡されていたのだった。
「このままじゃ捕まってしまう……」
セレナは焦燥感に駆られながら窓の外に広がる星々を眺めた。無数の恒星が煌めいており、まるで宝石のような輝きを放っている。
しかし今のセレナにとってみればその美しさも虚しいだけだった。彼女は溜息をつくと再び装置の操作に集中した。
もし警察に捕まれば、彼女は一生刑務所から出ることは出来ないだろう。
彼女はそれだけ多くの犯罪を犯してきた。窃盗、詐欺、暴行に殺人未遂……数え上げたらキリがない。
「絶対に捕まるわけにはいかないのよ」
彼女は決意を新たにすると、装置を操作し始めた。宇宙船は頼りないエンジン音を響かせながら、なんとか航行を続けている。
しかし、こんな逃避行動もいつまでも続かないことは分かっている。
「何処かに身を潜めるのに都合のいい星……」
セレナは船の計器を調整し、銀河の辺境地帯の星図を確認する。
画面に映し出される星図は、既知の惑星や未知の領域を示していたが、その中でセレナは身を潜めるのに最適な惑星を探す。
宇宙警察が目につかない場所に身を潜め、その隙に宇宙船の修理を行うことが出来れば、逃れられると考えたのである。
そんな中、突然、船のコンピュータが一つの信号をキャッチした。
「何か…」
セレナは眉をひそめ、画面に映し出された小さな青い点に目を凝らした。それは、宇宙連邦のデータベースに登録されていない、生命体反応を持つ惑星だった。
「地球…」
セレナはその名前を静かに口にした後、すがるような思いで船のセンサーを最大限に活用し、この惑星に関する情報を集め始めた。
地球は、適度な水分が存在し、豊富な生命エネルギーを発していることがわかった。さらに、機械文明が発展している兆候もある。
セレナは笑みを浮かべた。この惑星は、彼女が求めていた隠れ場所以上のものを提供してくれるかもしれない。
「これは思いがけないチャンスね!」
地球に隠れて、さらに現地人に上手くコンタクト出来れば、宇宙船の部品も調達も可能かもしれない。
政府にも認知されない辺境な上に、ある程度の機械文明があるとなれば、地球は彼女が隠れて、宇宙船を修理するのに最適な場所だと判断した。
「地球……どんな星なのかしら?」
セレナは決意を新たにし、地球に向けて進む宇宙船のエンジンを全開にする。彼女の瞳は、地球に降り立ち再起する夢見ていた。
しかし、その夢は、地球の人間たちにとっては悪夢の始まりとなることを、セレナはまだ知らなかった。
彼女の存在は、地球の歴史に新たな一章を刻むことになるだろう事を……。
***
セレナの宇宙船は、静かに地球の大気圏に突入したのち、宇宙船が目立たぬよう、夜間になっているエリアに降りたった。
彼女が船から出ると、彼女の銀色のボディースーツに包まれた身体が月明かりに照らされる。
「まずは、この宇宙船を隠す場所がないか探さないと……」
セレナはゆっくりと船から降り立ち、近辺で船を隠せる場所を探し始めた。
「んん……目立たないよう、夜になっている場所に着陸したけど、これじゃ真っ暗で何も見えないわ」
セレナはため息交じりに呟く。彼女の周りは、月の光に照らされていたが、それでも視界は悪く、地上の詳細はわからない。
地面には光る砂のようなものが敷き詰められていたが、彼女が脚を下ろすとすぐに消えてなくなってしまう。
「この星には、人間が沢山いるはずなのに……どうして誰もいないのかしら?」
セレナは軽く後悔していた。しかし、今更考えても仕方がないことだと割り切り、再び歩き出すことにした。
3.巨人の一歩と震える街(地球人視点)
宇宙船から降りてきた大巨人は、雑居ビルからマンションまで所狭しと並ぶ街区に、その巨大な足を地面に下ろしてしまい、ズシンという地響きと共にいくつもの家屋と、大勢の罪なき市民を踏み付けていた。
だが、巨人の彼女は、まるで足元の事など、まったく無関心な様子で周囲を見渡している。
その巨大な瞳は、月の光に反射して宝石のように輝き、金色の髪と銀色のボディスーツが月明かりに照らされると、彼女の姿は神々しくさえあった。
しかし、その姿はあまりにも巨大過ぎるために、彼女が歩くたびに街の建物や車を踏み潰してしまう。
彼女の巨大なブーツが唸りながら上がると、次の瞬間には大きな靴底が、数棟のビルと数十台の乗用車をまとめて踏み潰す。
ズズゥゥンン!ズズゥゥウンン!
巨人が歩くだけで地震でも起こったかのように地面が震え、周辺の建物がガラガラと崩れ始める。
振動に耐えきれず倒壊した建物の瓦礫を長さ270mは越えていそうな巨大なブーツで踏みにじり、彼女の足の下では、ありとあらゆる物が判別不能になるまで極限に圧縮して踏み潰された。
それでも巨大異星人は足元に何も無いかの如く歩き続ける。恐らく彼女は、自分の行動が周囲にどれだけの影響を与えるか、理解できていないのだ。
人々は容赦なく人間や建物を踏み荒らす大巨人から一斉に逃げようと走る。しかし、それは巨大な彼女にとってみれば2mmもないケシ粒がチロチロと逃げ惑っている光景でしかないのだ。
しかも闇夜の中で、そのケシ粒サイズの人間を視認するのは困難である。
もし仮に巨大異星人が足元の人間たちに気付いたところで、建物が密集しているこの街に、彼女の270mもある巨大な靴を下ろせる場所など何処にも存在しない。
ずしぃぃぃいいいんんんんん!!!!
月と街明かりを受けて黒光りする巨大なブーツが地面に降りた瞬間、周囲を凄まじい揺れが街を襲う。
直下にあった建物は、なんの抵抗もできずに踏みつぶされ、まるで巨大な隕石が落下したかのように、原型すら残らないほどに圧縮された巨大な足跡がいくつも刻み込まれた。
ズッドオォオオオン!!
巨大ブーツの直撃を免れた地上では、ビルや電柱が倒壊し、アスファルトは砕け、地割れが生じていく。人々はその揺れに抵抗も出来ずに宙を舞った。
彼女はただ歩き続けるだけだったが、その一歩は数棟のビルを倒壊させ、数百台の車を踏みつぶしてしまっていたのだ。
そしてついに、巨人は都市の中心にある巨大な交差点に襲いかかる。そこはまるで地獄絵図のような光景だった。人々が逃げ惑い、道路や歩道には無数の人間が溢れかえっていたからだ。
ズゥウウン……ズゥウウン……。
足元の揺れと轟音が段々と大きくなり、迫りくる地響きに人々は恐怖に怯えた。
彼らのすぐ目の前には、巨大な銀色のボディスーツに包まれた巨人がこちらに近づいてきている。
ズズゥウウンン!
巨人がこちらに近づいてきているという事実に、全員が緊張し絶望した。
恐怖に震える市民をよそに、ついにそれは高層ビルに囲まれた交差点の中心からでも見上げられる距離に迫ってきた。
周囲のビルは決して低くないのだが、それらのビルよりも巨人の方が段違いに大きいがために、ビルの遥か向こうにいるにも関わらず、その姿を見て取ることが出来る。
身長1,800メートルという信じ難いサイズを持つ彼女は、地球上のどの生物よりも巨大で、圧倒的な存在感を放っていた。
それでいて、金色の髪をなびかせる美しい女性でもあるというのだから、その矛盾した存在は恐怖と畏怖を人々に植え付けた。
そして、彼女が一歩足を踏み出すごとに地響きが起こり、足元の風景は一変して、破壊されつくした荒れ地とブーツの裏の模様だけが残る。
その一歩が踏み下ろされる度に、大地がこれまで以上に大きく揺れる。しかし彼女はそれを気にする様子もない。ただ淡々と歩を進めるだけだった……
巨人はゆっくりと交差点の中心に歩みを進めて行った。彼女のブーツが地面に降り立つたびに地震のような衝撃が発生し、周囲のビルは激しくしなり、窓ガラスが割れ落ち、電灯や街灯が火花を散らして消えていく。
その巨大な質量が生み出す振動と衝撃は凄まじく、人々は立っていられないほどであり、車も次々と横転していく。
巨人はただ歩いているだけなのだから、彼女が意図して何かをしているわけではないのだが、それでも彼女の一歩はあまりにも大きすぎた……。
そしてついに、彼女は交差点の中心に辿り着いた。
周囲には人々が溢れかえり、巨大女性に停止を促す声や、悲鳴、クラクション、そして怒号が飛び交っている。
だが次の瞬間、人々の正面にある高層ビルの向こうから、高層ビルたちを跨ぐ形で超巨大なブーツの靴底が現れた。
大きい……あまりにも大きすぎて、空が見えない!
人々は、そのあまりにも巨大な靴底の迫力に言葉を失った。
あの靴底の面積だけで、何千㎡もあるに違いない。もし踏まれたらどうなってしまうのか……想像もできないほどの破壊力に違いない。
人々は戦慄した。だがどうすることもできない。彼らの命運は彼女に委ねられるしかないのだ……。
ズダァァァアアンン!!
巨人の巨大な靴底が地面に押し付けられる瞬間、激しい地震が起こったかのように足元の建物が倒壊し始め、アスファルトが砕けて陥没する。
まるで大地そのものが崩落していくかのようだった。人々が必死に逃げる中、巨大な靴底はまるで獲物を狩るかのように、交差点に集まっていた何千人もの人々を一瞬で踏みつぶしてしまった。
人間だけではない。交差点に面していたビルや車も、彼女の巨大な足によって踏み潰されてしまった。同時に、そこにあった喧騒やクラクションも打って変わって一切聞こえなくなった。
あれだけたくさんの人間が犇めき合っていたのに、今ではもう誰一人として生き残っている者はいなかった。
その圧倒的な破壊を前に、巨人は足を止める事無くいくつもの高層ビルを跨ぎ越しながら、前に向かって進行を続けていった。
あの巨人にとっては、歩いている最中の一歩に過ぎなかったのだ。興味をひくものがない以上、彼女はただ前に進むだけ……
彼女は足元の惨状に気付く事なく、そのまま地響きを立てながら、グシャグシャに踏み固められた交差点を後にした。
4.星砂と虫の追跡者(セレナ視点)
セレナは数分間歩き続けたが、住んでいる人間どころか、船を隠せる森や山すら見つけられなかった。
「はぁ……何にもないのね地球は。」
セレナは溜息をつくと、その場に座り込んだ。
地球の地表は大きな石もなく、まるで砂を敷き詰めたような感触だった。セレナは地球に来て以来、ずっとこの砂のような地面を歩き続けているので足が疲れてきていたのである。
後ろを振り返れば、柔らかい地面に自分の足跡がくっきりと刻み込まれており、所々に足跡の形をした窪みができていた。
「もう歩きたくない……」
セレナは何となしに空を見上げた。そこには数え切れないほどの星々が煌めいているのが見えた。
「綺麗ね……」
彼女は思わず感嘆の声を漏らした。彼女の目にはその星空はとても美しく見えたのである。
「奇麗と言えば、さっきからずっと地面が光っているけれど……」
そういってセレナは腰の周りの光る砂を一摑みして、目の前まで持ち上げて広げてみる。
すると、先ほどまでは光り輝いていた砂が、急に真っ黒に染まってしまった。
闇夜の中で宝石のようにきらめく地球の砂だが、触ったり、踏んだりするだけで黒く変色してしまうのだ。
「宝石かしら……と、思ったけど違うみたいね」
セレナは残念そうに呟くと、フッと息を吹きかけてそれを放る。すると砂はまた風に吹かれて消え去ってしまう。
セレナは、その輝く砂を掬ってみたり、足で蹴ったりと様々に試してみたが、しかし、何度試しても触れた瞬間、輝きが消えてしまう。それはこの宝石のような砂を使って何か装飾品を作ってみるのは不可能ということだった。
「これをアクセサリーにして売り出せば儲かるかと思ったんだけどね……」
セレナはそう呟くと、後ろに手をついて寝転ぶ。そして空を見上げて溜息をついた。
「ここには人もいないみたいだし、誰かに見つかる心配がないのが救いね」
彼女はそう呟くと、瞼が重くなってきたことに気づく。
思えば今日一日、逃避行や宇宙船の修理に追われ、食事もとっていなければ睡眠すら取れていなかった。
セレナは疲れ切った体を労うように体の力を抜いた。
「んんっ……」
セレナは目を擦るが、その目はほとんど開いていないような状態だった。そのまま数分もしないうちに寝息を立て始めてしまう。
だが、彼女が寝息を立て始めようかというタイミングで、耳元で鬱陶しい羽音のようなものが聞こえ始めた。
「ん……何?」
セレナが目を開けると、そこには小さな虫のようなものが飛び回っていた。その羽音は非常に耳障りで、思わず手で振り払うと、直ぐに何処かへ飛んだのか聞こえなくなった。
「なんなのよ……もう」
セレナは苛立たしげに呟くと再び横になる。しかし、また別の方向から、同じような音が聞こえてくるのだ。彼女はうんざりしたように溜息をつくと立ち上がる。
「はぁ……」
セレナは深い溜息をついて周囲を見渡した。暗くてよく見えないが、よく見てみると、蚊のように小さな虫のような生き物が無数に飛び回っている。その羽音は耳障りで、セレナの安眠を妨げている。
「もう!なんなのよ!」
セレナは苛立たしげな声を上げると、その小さな虫のようなものを追い払うように手を振ってみた。
するとそれは、驚いたように飛び上がり、セレナの手が届かないところまでひらひらと逃げだしてしまう。
が、すぐに踵を返すと再びセレナの身体の周りを飛び回り始めた。
「あーもう!鬱陶しいわね」
セレナは苛立たしげに声を上げると、その場で地団駄を踏むように足踏みをした。小さくてノロいくせに、逃げ足だけは速い虫のような生き物に苛立ちを募らせる。
「もう、こうなったら」
セレナはそう呟くと、その虫のようなものを捕まえようと手を伸ばし、そして……。
パチンッ!
まさに飛んでいる蚊を捕まえるように、手を叩いた。するとその瞬間に虫は煙を吹いて地面に落ちたのだった。
「?」
首を傾げきょとんとするセレナ。
正確に言うと、手を合わせる前、手の平に触れた瞬間に、虫は煙を吹いて地面に落ちたのだ。
セレナは不思議に思いながらも、もう一度手を伸ばし、虫を叩いてみる。
するとまたもやその虫は煙を出して落ちてしまう。今度は地面に落ちた瞬間に、ボンッ!と爆発したように散り散りになって消えてしまったのだ。
セレナはその不思議な現象に目を大きく見開いて驚いた。そして閃いたかのように手をパンッ!と合わせていく。その瞬間に飛んでいた蚊のような生き物たちは次々と姿を消して行ってしまうのだった。
「面白いわね」
セレナはしばらく自分の手の平を見つめてニヤッと笑みを浮かべた。
蚊は逃げ足だけは速いが、急な方向転換ができないようで、じっくりと観察すれば、その飛行ルートを予測して叩くことができる。
しかも、触れるだけで死んでしまうため、なかなか面白い玩具であった。
セレナは蚊のような生き物たちを追いかけ回し、次々と潰していくことにしたのだ。
「ふふふっ!これなら退屈しなくて済みそうね」
セレナは上機嫌で、蚊のような生き物たちを次々と潰していった。
「あはは。ほらほら、もっと速く逃げないと潰しちゃうわよ?」
セレナの楽しげな笑い声が響く。彼女はまるで鬼ごっこでもしているかの様に、笑顔で虫を捕まえていく。
いま彼女が追いかけているのは、胸の前をふらふらと飛んで逃げている蚊だ。
あまりにも遅いこの虫けらのために、歩く速度を少し落として追いかけている。そうでなくては簡単に追いついてしまうからだ。
自慢の大きな胸を張りだす様にして、蚊のように遅い虫を追いかけていく。
「もう。ちゃんと逃げているの?……ほらっ!」
セレナが手を叩くと、蚊は煙を出して落ちて行く。
そして地面に叩きつけられる前に、彼女の張り出した胸の上に落ちると、ボンッ!と小さな爆発音を立てて消えてしまったのだった。
「ふふっ」
彼女は楽しそうに笑いながら次々と虫たちを消していくのだった。
それからしばらく時間が経ち……。
もう何匹潰したのか分からなくなった頃だった。辺り一面に飛び回っていた蚊のような生き物たちはその数を激減させており、あたりはようやく静かな夜の平地へと変化していた。
「ふぅ……やっといなくなったわね」
セレナは手についた虫の残骸をパンパンッと払いながら一息ついた。さっき寝そべったところから随分離れたところまで歩いてきたようだ。
だが、ここも何もない。
「もう、本当に何もないのね……地球って」
セレナはつまらなそうに呟くと、またその場に寝転び空を見上げた。相変わらず星々が煌めいているだけで何も変わったことはない。
「はぁ……明日になったら、どうするか考えましょ……」
彼女は大きな欠伸をして目を閉じたのだった。
5.1,800mの美少女と崩れゆく首都(地球目線)
身長1,800メートルの巨大少女が首都を蹂躙している。
突然の超巨大飛行物体の出現に超巨大宇宙人の出現……。そのニュースは地球全体を混乱に陥れるには十分なものであった。
どのメディアからもたらされる映像や画像、情報はどれも正しかった。
金色の長い髪に青い瞳。スタイルの良い体を包む銀色のボディースーツ。その圧倒的な存在感は、見る者全てを圧倒し恐怖に陥れた。
人々が逃げ惑い、車や建物が破壊されていく。しかし巨大異星人にはそんな小さなことは関係ない、と言わんばかりに、圧倒的な力の差を見せつけ、ゆっくりと歩を進めていく。
世界有数の大都市である極東の首都は一夜にして大混乱に陥った。人々は我先にと逃げ出し、全ての道は大渋滞を起こしている。
巨大異星人は地球人との邂逅を求めることもなく、一方的にその歩みを止めることなく地球侵略を続けている。
巨大女の歩みは止まることはない……。その巨大な足の下には数百万トンにも及ぶ巨大質量が迫りくる。
彼女はただ歩き続けるだけで、街を破壊していくのだ……。
恐ろしいことに、この殺戮劇を繰り広げている巨人は、まだ年若い女であった。
身長1,800メートルの長身に、長い金髪と青い瞳を持つ美女である。
だが、彼女は山のようにでかい。自然が生んだ創造物でようやく到達できる高さの身長を誇っている。
そんな彼女が大都市の中心を歩けばどうなるか……。
その一歩は数キロにおよび、その足のサイズも数百メートルはある。そして彼女が歩く度に地面が大きく揺れ動き、ビルや家々が崩れ去っていく。
高層ビルも普通の家も関係ない。あの巨大な足は地上全ての建造物をぐしゃりと踏みつぶし周囲に砂煙を巻き上げてしまう。
そこに人間がいようが、建物があろうが関係なく。一人の巨大な異星人によって都市が無差別に破壊されていく……。
倒壊するビルと逃げ惑う人々。目の前で繰り広げられる惨劇に為す術もない人々。
ブーツのヒールの高さは70メートルにも及び、その質量は数百万トンにもなり得る。
地上のビルは巨大な彼女のヒールの高さにも及ばず、巨大なヒールとビルが並んでしまうと、高層ビルなどただの小さな石ころのようにしか見えない。
巨大女の足は自分の歩みを邪魔するものなど、存在しないと主張するようにビルを無造作に踏みつけていく……。
そして踏みつぶしたビルは砂細工のように粉々に砕け散り、その破片は周囲へと飛散する。
ずどおおおおん!!
彼女の歩みが生んだ振動で地面は大きく揺れ動き、立っていることすら困難だ。
転んだ人たちが空を振り返ると、頭上には巨大な足の裏が視界いっぱいに広がり、その圧倒的な質量に人々は絶望する。
落ちてくる靴底は、まず初めに高層ビルの屋上に直撃し、爆発したかのように砕くと、止まることなく地上に迫ってくる。
恐ろしいまでの落下速度。圧倒的なまでの靴底の面積。地面に倒れ伏す人々が逃げる猶予など存在しない。
巨大女はただ歩き続けるだけで街を破壊し尽くすことができるのだ……。
彼女はただ歩いているだけに過ぎないのに、その無造作な一歩が数百の命を、都市を破壊していく……。
侵略の事実を確認した政府は巨大異星人を撃退するべく、近くの空軍基地にスクランブルを要請した。
緊急発進した戦闘機たちは、巨大女の進路に重なる様にして展開し、進路を定めていた。
飛行中に入った無線によると、巨大女は街の破壊活動を止めたあと、被害の出ていない街のど真ん中に座り込んで、ビル群をまとめて掴み上げて握りつぶしては、その大きな口から吐かれる吐息で吹き飛ばすなどの暴虐を尽くした後に、寝そべっているという。
まるで、子供が飽きた玩具を適当に投げ捨てるかの如くである……。
高層ビルも民家も関係なく、巨大女は全てを握りつぶしてしまうのだ。
怒りに燃えるパイロットは操縦桿を強く握りしめる。
しかし、パイロットの視界に巨大異星人の姿を捉えた瞬間、そのパイロットは恐怖で顔を歪ませた。
そこには、月夜に照らされた美しい女性が寝そべっている姿であった。体のほとんどを銀色のボディースーツに包んでいる彼女の口元からは、可愛らしい吐息が漏れているのが見えた。
攻撃指令は降りているが、無闇に攻撃をして狙いを外したりしてしまえば、ミサイルは眼下に広がる街に落ちてしまう可能性がある。
まだ眼下の街には避難が完了していない市民が大勢いる。
パイロットたちは限界まで接近して巨大な異星人の様子を伺う。
はたから見たら、その女性はただ寝そべっているようにしか見えない。
しかし巨大女の身長は約1,800メートルもあるのだ。
そんな彼女の姿を間近で見ると、その大きさは想像を絶する。
ビルを踏み潰すブーツのヒールの高さ70メートル……その圧倒的な質量を支える島のような太ももからスラリと伸びる脚が900メートル近くもあるのだ。
さらに腰回りもくびれており、キュッと絞られたウエストと大きく張り出したお尻が女性らしいラインを描いている。
そして胸に至っては巨大すぎる乳房が突き出ており、それはもはや人間の部位と言うにはあまりにも大きすぎるサイズ……山のようだ。
そんな巨大なバストの上空を旋回しながら、パイロットは巨大女の姿を何度も確認する。
……しかし、それはあまりにも巨大な存在であった。
その美しい顔貌と長い金色の髪は月明かりに照らされて神々しさすら感じるほどだ。
だが、そんな姿とは裏腹に、彼女の足元には無残にも破壊された街が広がっているのだ。
暴虐無人な異星人をこのまま見過ごすわけにはいかない……。
「目標確認、攻撃開始!」
パイロットたちは巨大女に向かってミサイルを放った。その数は20発以上にも及ぶ。ミサイルは一斉に巨大女の胸へと飛来する。 そして次の瞬間、凄まじい閃光が夜空に広がった!
激しい衝撃音と共に、爆発が巻き起こる!
打ち込んだのは分厚いコンクリートだって一瞬で貫通してしまうほどの破壊力を持ったミサイルだ。
そのミサイルが20発以上も胸に直撃したのだから、いくら巨大異星人と言えどもひとたまりもない……。
しかし、そんな期待とは裏腹に、煙の晴れた先には無傷のまま寝そべる巨大な女性の姿があるのだった。
「な、なんて奴だ……」
パイロットたちは愕然とした表情を浮かべる。この攻撃でもダメージを与えることができないとは……。
いやそれどころか傷一つついていないのだ。
集中砲火を与えた胸部は何事もなかったかのように、まるでダイヤモンドのように白く光り輝いている。
そして次の瞬間、彼女はゆっくりと手を振り上げたのだ!
バアァァァァンン!!
巨大な手のひらによって叩き落とされた数機の機体が一瞬で地面に叩きつけられ、その衝撃でバラバラに砕け散ってしまった。
突如動き始めた巨大異星人に慌てふためくパイロットたち。距離を取って体制を整えようと試みる。
しかし、その瞬間、異星人の瞼がゆっくりと開き、現れた巨大な青い瞳がギョロリと動き、飛び回る戦闘機たちを捉えた。
「う、うわぁあ!!」
パイロットたちは恐怖に顔を引きつらせながら慌てて逃げ出そうとする。
だが時すでに遅く、彼らは巨人の瞳に捕らえられてしまったのだ。その瞳は、まるで獲物を狙う猛獣のように鋭く光っていた……。
「あ……ああ……」
巨大異星人はそんな戦闘機たちの残骸をまるでゴミのように手で払いのけると、むっとした表情を浮かべ、ゆっくりと立ち上がったのだ。
パイロットたちの目の前に、全長1,800メートルという、絶望すら覚えるほどの巨大な異星人の姿が立ちはだかる。
その威圧感たるや尋常ではない。この異星人の前では戦闘機など、まるで蚊のように見えるだろう。
巨大異星人はまるで戯れるように戦闘機に向かって巨大な手を叩き下ろした!
ズドオォォン!!
という音とともに大気が大きく揺れ動き、衝撃波が駆け抜ける!
巨大な手が動くたびに、何十機もの戦闘機が叩き潰されていった。
「うわっ……」
気付いたら、周りを飛び交っていた僚機たちは、9割がた叩き潰されていた。
そして目の前には巨大異星人が立っている……。
生き残ったパイロットたちは恐怖に駆られ、巨大異星人に背を向けて一目散に逃げ出した。
しかし、そんな彼らを見逃してくれるほど巨大異星人は甘くはなかった……。
パイロットのすぐ後ろまで、その巨大な影は迫っていたのだ。
恐怖に駆られたパイロットが後ろを振り向くと、そこには視界を覆い尽くすほどの銀色のスーツに覆われた胸元の盛り上がりが迫って来ている。
巨人の歩行に合わせてゆっさゆっさと重々しく揺れるその巨大な膨らみは、視界いっぱいに広がっており、距離感が狂うほどに迫ってきている。
そして次の瞬間、パイロットの視界に巨大な肌色の壁が迫りくる。それが巨人の掌だと気付いた時には、凄まじい衝撃が機体を襲い、コントロール不能になった戦闘機は、そのまま銀色の巨大異星人の胸の上に墜落してしまった。
巨大異星人は、戦闘機群を瞬く間に殲滅してしまうと、自分の胸の上にへばりついた金属片を軽くはたいた後、手の平に着いた残骸を叩き落し、足元に散らばる金属片と戦闘機の残骸を一瞥すると、再び寝そべり始めた。
彼女の足元では、無残にも破壊された街が広がっており、その破壊の限りを尽くされた光景に、巨大異星人はどこか満足そうな表情を浮かべた。
そしてそのまま眠りについてしまうのだった……。
6.足跡と地球の街(セレナ視点)
「んっ……もう、朝なの……?」
セレナが目を覚ますと、太陽が地平線から顔を覗かせていた。
「ん~っ!よく寝たぁ」
彼女は伸びをして起き上がると、大きく深呼吸をした……そして空高く伸ばした二の腕部分に、何か糸のようなものがぶら下がっていることに、ふと気付く。
(あれ……?何か体中に紐みたいのが、張り付いてる……?)
セレナは自分の体を見回し、そして腕だけでなく、脚や腰にも蜘蛛の糸のような細い何かが絡みついていることに気付いた。
「やだ、何これ……?また虫?」
セレナは困惑しながらもその蜘蛛の糸のような物を指で摘まんで、身体から引きちぎると目の前へ持ってきて観察してみた。
それは彼女の身体から剥がれると振り子のようにゆらゆらと揺れ動き、糸の先端には何かゴミのようなモノがくっついていた。
(気持ちわる……)
彼女は思わず顔をしかめるが、すぐに気を取り直して、その糸のような物を目の近くにぶら下げてよく観察する。
これは何だろう、地球の虫なのだろうか? その糸の先端にいるモノは、四角い形をした構造をしており動くことはないので、生命体ではなさそうだ。
だが、そんな四角い物体の中をさらに小さいものが、もそもそと動いている……。
「う~ん……これってもしかして……」
その動くものは、見れば見る程、セレナと同じヒューマノイドタイプの生物のようにも見える。
しかしそれはあまりにも小さく、体長は1㎜前後しかないが、人型の身体をしているではないか。
それはつまり……
「これが地球人ってこと……??」
セレナは、その小さな虫みたいな人間を指先で軽く触ろうとしてみる。
するとその虫のような人間は、慌てて逃げ出そうとでもするように指から距離を取ろうとするが、彼からすれば、そこは上空1,000メートルを超す上空。逃げようにも逃げる場所などどこにも存在しない。すぐにセレナの指に掴まってしまう。
セレナは指先についた虫をまじまじと見つめる。
やっぱりどう見てもヒューマノイドだ……。
この星にはこんな小さな人間がいるのね……。
彼女は、そんな地球人が逃げ込んだゴミのような物を拾い上げる。それはまるで紙屑のようなものだった。
「こんなもので何をしようとしていたのかしら……」
彼女は自分の体を見回してみた。するとそこには無数の糸が張り巡らされており、それは全て同じ種類のゴミのような物から伸びているようだ。
しかもよく見ればその小さな糸たちは皆、セレナの体に巻き付ける様に、彼女の体と繋がっているではないか。
「もしかして……私を束縛していたの……コレで……?」
セレナは改めて自分の周りを確認する。すると確かに、地面には大量のゴミのような糸が張り巡らされており、それが全て自分へと繋がっていることがわかった。
「こんなもので私を縛ろうだなんて……」
セレナは自分の体に絡みついた糸を摘んで引っ張ると、糸は何の抵抗もなく簡単に引き千切れた。
どうやらこの小さな人間達は、こんな貧弱な紐で束縛しようとしていたのようだ。
(それにしても……)
セレナは周りを見渡してみる。太陽が昇ったことで明るくなり、自分の周囲がどうなっているかがわかったのだが……。
「うわぁ……」
彼女の周りに広がっていたのは、無数の小さな箱がどこまでも密集して続いている光景だった……
足の置き場もないくらいに密集している小さな箱は、小さな消しゴムほどの大きさしかない。これが地球人の作ったビルなのだろうか。
しかし、その小さな箱がこれほど密集しているとは、おそらくここは地球でも有数の巨大都市に間違いないだろう。
だが、そんな都市も、セレナの巨大な足によって踏み荒らされてしまい、今では彼女の足跡がいくつも刻み込まれた無残な街並みを晒していた……。
「あらら……」
彼女は足元に広がる瓦礫の山を見て思わず苦笑いを浮かべる……。
昨日は夜だったこともあって、足元があまり見えなかったのだが、こうして朝になるとその全容を目の当たりにすることができた。
セレナの巨大な足によって踏みつぶされたビル群は、まるでグレー色の砂場の中を歩いた跡のように、ブーツの足跡が茶色の土色でくっきりとついてしまっている。
(この大きさだと私の足って相当大きいわよね……)
セレナは自分の足の大きさを再確認するためにも、しゃがみ込んでブーツの足元を見てみる。
数百メートルの上空から見下ろす様な景色に、ビルよりも何十倍も大きな自分のブーツが広がっている不思議な光景……。
驚くほど矮小な建造物でごった返している街並みをぶった切る様に、自分の足が地面を埋め尽くしている。
その巨大な足は地球の建築物よりも大きく、ブーツのつま先からヒールのアーチの下には、たくさんのビルを跨いでしまっている。
(この星だと私ってこんなに大きいんだ……)
セレナは改めて自分が巨人になってしまったことを実感した。
そして彼女はしゃがみ込んだ状態で再び周りを見渡してみる。
そこには高さが不揃いのビルが密集して建っており、建物の間には自分の小指よりも細い道路が無秩序に引かれており、その上をケシ粒ぐらいの車がたくさん動いている。
「へぇ……こんな小っちゃな道路の上を、こんなにたくさんの車が移動してるのね」
セレナは感心したように呟くと、その小さな車の一団へと視線を移した。
この地球の乗り物はなんて小さいんだろう……。それはまるで、顕微鏡で毛細血管を流れる赤血球を見ているかのようにも思える。
そんな車の群れが、セレナの足元でひしめき合うようにして動き回っているのだ……。
(この人たちにとっては私ってどんな風に見えているのかしら?)
彼女は足元にある小さな車の群れを、まるでアリの行列でも見るかのように見下ろしながら考える。
この小さな車たちは、今こうして自分達の頭上にいるセレナのことをどう思っているのだろうか? きっと彼らは自分たちの何千倍もの巨大な存在が突然現れたことに驚いていることだろう……。
そんな彼らの反応を想像してみるだけで、なんだか楽しくなってしまう。
(ふふ……)
彼女は思わず笑みを漏らしてしまう。誰も知らない様な宇宙の辺境に、こんなにも面白いものがあるのかと……。
セレナは、そんな好奇心に突き動かされるようにしてそのまま四つん這いの姿勢になるべく、地面に手を付こうとした時、ハッと気づく。
その手を降ろそうとした場所には、ビル街を 一直線に通っている大きな道路があった。よく見るとそれは高架道路であり、その上を車たちが鈴なりになって走っているのが見える。
セレナは、この手の真下にある小さな高架道路が気になった。それは彼女の指の太さとほぼ同じ道幅で、彼女の巨大な手のひらに潰されてしまえばひとたまりもないだろう……。
(ここに手を付いたら、この人たちはみんな潰れちゃうんだろうな……)
セレナはそんなことを考えながら、自分の手のひらに視線を移した。その手の大きさはこの高架道路よりも遥かに大きいのだ。
そんな手がゆっくりと降りてきて、逃げ出そうと必死にもがく人間たちを容赦なく握りつぶしていったら……それはいったいどれほど愉快な光景だろうか?
「あはっ♪」
彼女は思わず笑みを漏らしてしまった……。そして次の瞬間にはもうすでに彼女の手は、その小さな高架道路の上にそっと置かれていたのだ!
「どぉーん♪」
彼女が無邪気な声を上げながら手のひらに体重をかけると、小さな高架道路が音を立てて歪んでいく……。そして次の瞬間には、その小さな高架道路は彼女の巨大な手によってクシャっと、完全に押し潰されてしまった。
僅か数秒で、高架道路と隣接しているビル群は跡形もなく消滅してしまった。
手元を見ると、緻密に並べられた街並みが、彼女の手によって分断され、無残な瓦礫へと変貌している……。
たった一瞬にして、あんなにも多くの車が行き交っていた道路とビル群が姿を消し、代わりに巨大な彼女の手だけが、そこに鎮座していた。
さらに、高架道路は分断されたことで、道路上を走っていた車たちが、その勢いのまま止まりきれずに、次々と分断箇所へと突っ込んでは落下し、彼女の指に衝突してしまっているではないか。
(あらら……?ちょっとやりすぎちゃったかな?)
セレナは自分の指先に広がる惨状を見て思わず苦笑いをしてしまった。
さすがにここまでするつもりは無かったのだが……。ちょっと手を置かせてもらっただけで、この惨状である。
「ごめんなさいね。でもこれだけ大きいんだもん。仕方ないわよね?」
セレナは笑いながら、手の上に落ちてきた残骸を払い落として見せる。
しかし、この星の人間という存在が如何にちっぽけで、自分が思っているよりも矮小な存在なのか……その事実を改めて認識した彼女は興奮を抑えきれなかった。
この小さな星にとって自分という存在はどれほど巨大なのかを想像するだけでゾクゾクしてくる……。
(ふふっ♪)
そんな小さな街を見下ろしながら微笑む彼女の姿はあまりにも美しく、それでいて恐怖を感じさせた……。
手の平で大惨事を引き起こしてしまったが、昨日の歩き回った結果に比べれば、この程度の被害など、可愛いものだ。
セレナは、そう自分を納得させると、先ほど手を置いた場所に視線を落とす。
そこには、信じられないくらい小さな人間が忙しなく動き回っていた。
その、1ミリ程度しかない小さな人間たちは、皆一様にセレナの巨大な手とは反対方向に逃げ回っている。
「本当に必死で、見てて面白いわね♪」
そんな小さな人間たちを見て笑っていると、やがて彼らは近くのビルに入っていくのが見えた。どうやらセレナの巨大な手から逃れる為に隠れる場所を探しているようだ。
(ふふ……そんなところに逃げ込んでも・・・無駄じゃないかしら♪)
そんな小さな人間たちを見て、思わず微笑んでしまう。
地球人が逃げ込んだビルの大きさは、地面に着いているセレナの指の高さにも届かない物ばかり。
そんなちっぽけな建物に、逃げ込んでどうしようというのだろうか?
もしかして、この建物に入り込めれば、安心だとでも思っているのだろうか?
セレナはそんな小さな人間たちの必死な様子を眺めながら、ビルの中に入ろうとしている人間達を指で追いかけてみる。
すると、まるで蟻のように逃げ惑う人間たちを容易に追いかけることができた。
その様子を見ていて、セレナの中に悪戯心が生まれる……。
「えい♪」
彼女はなんの躊躇もなく人差し指を突き立てると、ビルの中に入ろうとしている小さな人々目掛けて指を刺した!
それはとても軽いタッチのつもりだったのだが、実際には指の長さだけでも80メートルもあるのだ……そんな指が降ってくる様子はさながら隕石でも落ちてくるような迫力で、その指先に直撃されたビルはあっさりと崩れてしまった。
セレナの人差し指がビルを突き破った瞬間、その衝撃で周囲の建物も次々と倒壊していく……。
「あ〜あっ♪潰れちゃった♪」
彼女は無邪気な声を上げながらも、さらに面白そうな獲物がないか、別のビルの窓をそっとのぞいて見ると、中には人々がたくさんいて、彼らと目が合った。
「あら、こんにちは♪」
セレナは笑顔で応えるが、その笑顔の先にいる人間達からすれば恐怖以外の何ものでもないだろう。
彼らは慌てて窓から離れると、そのまま一目散にビルの奥へと逃げてしまった。
「もうっ……逃げなくてもいいじゃない」
セレナは少しむくれながら呟く。しかし、小さな地球人の行動は彼女の悪戯心に火をつけてしまった。
(それなら、こっちから捕まえてあげる♪)
セレナは、先ほどのビルを目掛けて指を近づけ、そのままゆっくりと爪の先端をビルの屋上に、そっと置いてみた。
すると、まだ力も入れていないのに、その小さな屋上に彼女の巨大な爪が突き刺さる。
無機質なコンクリートのビルは、明るいネイルカラーのセレナの爪によって、まるで豆腐のように簡単に切り裂かれてしまった。
そして次の瞬間には、切り裂かれたビルは半分に割れて、片方は土埃を上げながら崩壊してしまったが、もう半分のビルは切り裂かれた断面図を残して、健在していた。
断面から覗くビルの中はパニック状態だった。
突然、巨大な爪にビルを切り裂かれてしまったのだから無理もないだろう。
蜂の巣をつついたように、人々は慌てふためいているが、こんな小さな建物で彼女から逃げ切れるはずがない。
「わぁ……こんなにも沢山いるのね?」
セレナはビルの中に居る人間たちに向かって話しかける。すると彼女の巨大な目が小さな獲物を追うようにギョロリと動き、その人間達と目が合った。
その巨大な瞳は、ビルの中に居る人間達の恐怖を駆り立てるには十分すぎる巨大なものに違いなく、地球人から見たらまるで巨大な怪物のように見えただろう。
人々は驚愕のあまり声も出なかったようで、皆恐怖に歪んだ表情をしていた……。
彼女はあまりにも大げさに恐れおののく地球人を見てクスリと微笑むと、ビルの内部をよく観察してみる。
建物はいくつかのフロアと部屋に分かれており、内装から察するに、地球の文明レベルはさほど高くはないと思われる。
なるほど、この文明レベルでこの矮小さなら、宇宙連邦に登録していないのも納得だ……。
取るに足らない、ちっぽけな存在でしかない。
それにしても地球人は本当に小さい。
これが、セレナの星にいたら、彼らは食物連鎖にすら参加できない、本当に下等な存在に成り下がるだろう。
そんな地球人達は、ビルの小さな部屋や通路を右往左往しており、まるで蟻のように動き回っていた……。
「ふふ……。そんなに驚かなくても、私はあなたを取って食べたりしない……クシュン……っ!!」
セレナは舞い散る粉塵が鼻に入り、思わずクシャミをしてしまった。
「あっ」と、慌てて口と鼻を押えたが、時すでに遅く、 彼女の口から漏れた吐息は残っていたビルの窓を粉々に砕いて、中に置いてあった家財道具もろとも吹き飛ばしてしまった。
「あらら……少し、クシャミが出てしまったわ。ごめんなさいね♪」
セレナは軽く謝りながらも再びビルを覗き込むと、その小さなビルの中にはもう誰もいなかった……。
どうやら皆、彼女のクシャミで吹き飛ばされてしまったようだ。
ただのクシャミ一つで引き起こされた大災害。それはビルの破壊にとどまらず、近くにいた人間達も巻き込み、その衝撃は大規模な破壊を招いた。
ビルの周りを蠢いていた人間や車も吹き飛ばされてしまったのか、辺り一帯からは人影も消えて悲鳴も聞こえなくなっていた。
(ちょっと、思ったより大きな被害になっちゃたわ……)
セレナは自分でもまさかクシャミだけでこれほどの破壊力を持っているとは思いもしなかったので、自分のクシャミの威力に少し驚いた。
「まあ、私のクシャミで吹き飛んじゃったのならしかたないわね……クシュン!!」
またしてもセレナはクシャミをしてしまった。
今度は先ほどよりも大きめのクシャミだった。
するとそのクシャミが引き金になったのか、辺り一帯の建物という建物が全て吹き飛ばされてしまい、セレナの顔の周りは瓦礫の更地と化してしまった。
この様子だと、当然そこにいた人間達も全てチリになって消し飛んでしまっただろう……。
「ふふ……。この星にとって、私は本当に脅威みたいね。」
セレナは、自分がクシャミをしただけで、一つのビル群が跡形もなく吹き飛んでしまったという事実に驚きつつも、その圧倒的な力に酔いしれていた……。
セレナは更地になった街区にはもう興味がなくなったのか、ゆっくりと立ち上がり、足元に広がる街を見下ろす。
そこには10センチもない小さなビルが隙間なく密集して、ゴミゴミとした街並みが広がる中に、セレナが足を踏み降ろした跡が、まるで砂浜を歩いた足跡のようにくっきりと残っている。
その巨大な足跡はまさに人間の街を踏み潰した証拠であり、コンクリートの道路も建物も一瞬で圧縮し沈み込み、薄こけた茶色の地面が剥き出しになってしまっている……。
足跡の周りを慌ただしく動き回る、小さな小さな人間たち……。だがその人々の動く速度はアリの動く速さと比べてもよっぽど遅いものでしかなかった。
ただ歩くだけで街を破壊してしまう自分自身の圧倒的な力、そしてそれを目の当たりにしても、何もできずに逃げ惑うだけの地球人。
彼女の足元にも無数の人間が蠢いており、皆一様に彼女を見上げて何か叫んでいるようだった。
しかし、セレナの耳までその言葉は届かない。それほどまでに、彼らの身長と彼女とでは差がありすぎるのだ……。
(んっ……♡)
足元から強い感情と視線がセレナの肉体に伝わってくる。皆、一様に恐怖と怯え……そして絶望の色に包まれている。
(んふふっ♡なんだかくすぐったいわ♪)
そんな彼らの感情がセレナの体に流れ込み彼女の体を駆け巡る。それは決して不快ではなく、むしろ心地よい感覚だった。何万もの人々に恐れられる感覚……それは、セレナの心に優越感と満足感を与えてくれたのだ。
そして同時に、そんな小さな人間たちが自分の足元を必死に逃げ惑う姿を見ていると、なんだか楽しくなってくる。
そんな感情に突き動かされるように、セレナは足元で逃げ惑う人々や渋滞した車で溢れる大通りに向かってゆっくりと右足を踏み降ろす。
トンッ……。
たったそれだけで、足元のビル群に大きな影が落ち……そして次の瞬間には、無秩序に並んでいたビルが視界から消えて、代わりにセレナの巨大なブーツが初めからそこにあったかのように君臨していた。
その光景は圧巻の一言に尽きるだろう。先ほどまで無数にひしめき合っていたビル群が、今やセレナの足裏によって消し去られ、そして天を支える大柱のような巨大なブーツが高く聳え立つ。
地上の矮小なビル群と比べると、山のようなブーツだが、それでもセレナの身体のごく一部でしかないのだ。
(ふふ……)
セレナは自分の足元に広がる惨状を見て思わず笑みをこぼしてしまった。
こんなにも小さい文明ならば、宇宙船など隠さなくてもよかった。
そう、身を隠す必要などなく、こんなちっぽけな地球人など無視して、堂々と船の修理を行えばよかったのだ。
もし仮に、地球人たちが宇宙船の修理に邪魔してきたとしても、彼女の敵ではない……それどころか、足元にも及ばないだろう。
「それじゃ、宇宙船の修理してる間、少しだけ遊んでも構わないよね?」
セレナは足元の街並みに向かってそう言うと、そのまま歩き始めた。
その一歩は、小さな人間たちにとっては、まるで天変地異のような衝撃だった。
彼女の一歩が地面につくたびに地面は激しく振動し、ビル群をなぎ倒しながら進む彼女の巨大な足跡が、その跡に瓦礫の山を築き上げていく……。そして彼女が歩いた後には、まるで巨大な獣が通り過ぎたかのような、大きな破壊の跡だけが残されていた……。
「ふふ……じゃあまずは何をしよっかな♪」
セレナは鼻歌を歌いながら次の目的地を考える。超高層ビルが、いくつもあった場所を思い出し、まずはそこに向かうことにした。
彼女が一歩を踏みしめるごとに、小さな建物がいくつも下敷きになりクシャクシャッという微かに乾いた音を立てて崩れ去っていく。
セレナの巨大な足が地面につくたびに、小さなビル群はその形を失い、まるで蟻のように逃げ惑う人間達は踏みつぶされて、そしてその後には巨大な足跡が刻み込まれる……。
足裏にいくつも敷き詰められた街は、あっという間に靴底によって平らな地面へと変わり、その踏み込みと地響きに人々はなすすべもなく散っていってしまうのだ……。
「〜♪」
セレナが後ろを振り返ると、地面には地球人の建物よりもはるかに大きな足跡がいくつも残っていた。
その足跡は、全て自分で刻み付けた物であり、地球人の街並みが自分の踏んだ部分だけ完全に押し潰され、茶色い地面が広がっている光景はなんともシュールではあるが圧巻であった。
これが、自分よりも圧倒的に小さく、弱いはずの人間を踏みにじった証なのだと思うと……セレナの心に何とも言えない達成感と高揚感が湧き上がってくるのを感じた。
その小さな足跡を一つ一つ辿っていけば、自分の一歩がどれだけ大きなものだったかがよく分かるだろう……。
そしてこの足跡こそが、自分がいかに強大な存在なのかという事を思い知らさせてくれるのだ。
セレナは足元に広がる無数の足跡を眺めながら思わず微笑んでしまう。
(ふふ……♡)
ブーツを履いた足を大地に下ろすと、地球人のちっぽけな建物が易々と潰れ、クシャクシャッと脆弱な存在感を露呈する。
あまりに儚く、しかし彼らにとっては巨大な建築物が、自分の足の下で粉々に砕ける感触に心が躍る。
セレナは一歩ずつ足元の感触を楽しむように地球人たちの町を歩き回る。
地球人はあらゆる場所に溢れかえっていたが、全てブーツの下で建物と一緒に消えていったことだろう。
セレナはそんな彼らの抵抗を楽しみながら、無傷で残っているオフィスビルや商業施設を目指して歩みを進めて行った。
7.巨大少女の足下に消えた都市(地球人視点)
昨日は地球史上、最悪の日となった。突如、出現した異星人の巨大少女によって、極東の首都は未曽有の災害に襲われたのだ。
巨大少女は、人々の営みを踏みにじり、蹂躙していった。
巨大異星人の暴挙を止めるべく、空軍が果敢に攻撃を試みたが……巨大少女には傷一つつけることはできなかった。
まるで巨大な鉄の壁が立ちふさがっているかのように、少女はビクともしなかったのだ……。
そして巨大少女は、飛び回るハエや蚊を追い払うかのように、軽く手を一振りすると、空軍の戦闘機は巨大な手のひらに衝突し、木端微塵になってしまった。
その圧倒的な破壊力の前に、人類は為す術もなかった。
だが、不幸中の幸いにして、巨大少女はその場で横たわると、寝息を立て始めたのだ。
どうやら人類と同じく睡眠を欲するらしい。
この隙に、巨大異星人を捕獲するための策を練り上げ、実行に移すことにした。
街中の重機をかき集め、一つの街を下敷きにして横たわる巨体に、ワイヤーを張り巡らせ、地面に打ったアンカーに固定して、巨大異星人の体を拘束することに成功した。
しかし、あの巨体にどれほどの効果があるかは分からない……。
人類の望みは、この拘束が一時的にでも持続し、その隙に市民の避難が終わることを願うだけだ。
だが、現実はそう甘くはなかった……。
夜が明けると、巨大少女は目を覚ましてしまったのだ!そしてあの巨大な瞳をカッと見開くと……次の瞬間には、大きなあくびと共に起き上がり、拘束はあっさりと破られてしまった。
拘束から解き放たれた巨大少女は、体中に張り巡らされたワイヤーに気付き、それを鬱陶しそうに手で払いのける。するとワイヤーはまるで紙切れのように千切れてしまい、あっという間に巨大少女は自由の身となった……。
さらに、どういうことか、摘まんだワイヤーを顔面に近づけて睨んだ瞬間、不敵な笑みを浮かべた。
そして、巨人は辺りを見回して、確信を得た様に頷くと、その巨大な足をゆっくりと持ち上げた……。
地上の作業員は慌てて重機から下りて、逃げ出したが……もう遅かった。
巨大少女はそのまま足を振り上げると……それを一気に地面に叩き落とした!
その瞬間、耳を劈く大轟音と大地震に見舞われ、地面が大きく揺れた……。
一瞬、何が起こったのかわからなかったが、足元に広がる凄惨な光景を見て理解できた。巨大少女が足を踏み下ろした衝撃だけで街が崩壊したのだ!まるで小枝をへし折るかの様にいとも簡単に、大都市は踏み潰されてしまったのだ……。
更に追撃は続く。巨大少女は地面を見下ろしながら、破壊されていない場所を見つけると、そこをめがけて巨大な足を踏み下ろした。
巨大なブーツが地面に降り立つと、人々の住む小さな建物が一瞬で圧潰され、聞いたことのないような恐ろしい音と共に崩壊していく。
長い時間を経て築き上げた偉大な建築物も歴史も、その足元で無価値な紙屑のように砕け散る。見上げるほどの存在が世界を踏みにじる恐怖に、心が凍りついた。
やがて、彼女の足はつま先が中央公園に向けられた。大都市によくある計画的に作られた人工の自然公園。
この時は、巨大異星人から人々を避難させるのに最適な場所だと思っていたが、今となってはその考えは甘かったと言わざるを得ない……。
公園の広場から、巨人の姿は高層ビルに阻まれ見えないが、足元の地面が、巨大な生物が歩く度に揺れ始めた……。
その揺れは徐々に激しくなり、やがて立っていられないほどの地震へと変わった。
人間が歩いたくらいで地震など起こるはずもないが、それは人類の常識を覆す大きさの巨人が歩けば話は変わる。
しかし、慌てたところで、どうすることもできないのだ、ただ祈るしかないのだ。
そうしている間にも巨大少女はゆっくりと公園に近づいて来る……。ビルが踏み潰される轟音と衝撃に思わず耳を塞ぐ。
だがその音すら掻き消すほどの大地震に見舞われ、地面に倒れ始める人々……。
すると今度は地面から激しい揺れを感じたかと思うと、群衆の上に巨大な影が現れ……そして、その巨大な影はゆっくりとその範囲を広げ、やがて公園全体をすっぽりと覆ってしまった。
群衆が絶望しながら空を見上げれば、土や砂で軽く汚れている超巨大な足裏が、空いっぱいに広がり、人々は言葉を失った……。
彼らはすでに絶望で腰が抜けているのか、それとも恐怖で身動きが取れなくなっているのか……いずれにせよ、その足裏から逃れる術はないのだ。
やがて巨大少女はゆっくりと足を下ろすと、公園は巨大なブーツに押し潰された。
ずどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!
常軌を逸した1000倍サイズの巨大ブーツが中央公園を踏みつぶした。
中央公園は、巨大少女の片足ですら満足に置くこともできないほどに小さかったのだ。そこに数百メートルの巨大な足が踏み降ろされたのだから、その衝撃は想像を絶するものに違いないだろう。
足の下敷きになって踏み潰された者はもちろん、直撃を免れた群衆も、足を下されたその衝撃に吹っ飛ばされ、地面に打ち付けられた。
凄まじい衝撃に空気が震え、地面には亀裂が走る。その様子はまるで地殻変動でも起こったかのようだ。
そして巨大少女の巨大な素足がゆっくりと持ち上げられる……。
ブーツの下敷きになった地面がどんな惨状になっているのか、想像するだけでも恐ろしい。
しかし、そんな心配をする必要はなかったようだ……なぜなら、ブーツを持ち上げたその下にあったはずの中央公園は跡形もなく消え去っていたからだ。
まるで最初からそこに何も無かったかのように、ただ硬く踏み固められた地面に、僅かな瓦礫だけが広がっており……その中心には踏み下ろされた巨大少女のブーツの足跡だけがくっきりと残されていた。
数千人を一瞬で踏みつぶした巨人は、足を止める事無く、そのまま次の街へと足を進める。
哀れな群衆は見向きもされず、さらに、その存在に気付かれることもなく踏み潰されてしまったのだ……。
たまたま、巨人の進行方向に居合わせてしまったアリの行列のごとく、巨大少女は踏みつけたことにすら気づかずに歩き去る……。
こうして、人々は無力さを思い知らされながら、その命を次々と踏み潰されていったのだ……。
8.巨人のブーツと虫ケラの街(セレナ視点)
靴底の至る所からクシャクシャと潰れていく、地球人の建築物。
そのほとんどが、ブーツのつま先の高さにも満たない小さな建物だ。
だが、これだけ踏み潰しても、まだ小さな建築物は所狭しと並んでいる。
地球人とは、大きさこそアリよりも小さい微生物サイズだが、その数だけは膨大だ。
これだけ数がいれば、命令させて宇宙船の修理を手伝わせることも出来るのではないか?
これでもかと、自分と地球人の力の差を見せつけたのだ。きっと自分の言う事を聞くに違いない。
「んん…この星の言語解析できるかしら……?あ、あ……これで大丈夫そうね」
セレナは、宇宙船のコンピュータとリンクして、翻訳機能を使うことにした。
「こんにちわ、地球人さん♪私の言葉分かるかしら?」
セレナが足元の街に向けて話すと、街はざわつき始める。
そして次の瞬間には大パニックが起こり、話どころではなくなってしまった。セレナはその様子に思わずため息を漏らす。
「もう……。せっかく、私が話しかけてるのに」
わざわざ、地球の言葉で話しかけたというのに、彼らは無礼にも自分の話を聞こうともせずに、逃げ惑うばかりだ。
ゴミのような地球人に無視されて、セレナは少しだけ腹が立った。
「もういいわ、あなたたちに用は無いから」
セレナは足元に吐き捨てるように唾を吐きかけた。すると次の瞬間には、避難民で溢れかえっている道路の上にびちゃりと落ちて広がる。
地球人の1000倍サイズのセレナが吐いた唾は、それだけで4車線もある交差点を埋め尽くす大きな水たまりとなり、飛び散った生暖かい激流が周りにいた車や人々を一瞬で弾き飛ばした。
水たまりというにはあまりに巨大なそれは、小規模なプール並みの規模となり、車は一瞬にして圧縮され、人々はその粘着質の液体の中に閉じ込められて、道路は悲鳴と混乱に包まれる。
それを見てセレナはクスクスと笑った。
「ふふっ♪ゴミ同然ね」
セレナはそう呟いて、唾を吐きかけた足元の街に向かって軽く足を上げると、そのままブーツのヒールを地面に叩きつけた!
ドゴオオオオン!!
凄まじい轟音が響き渡り、唾液の交差点と一緒にブーツのヒールにも満たないビルがいくつも踏みつぶされた。
しかし、それは些細な事に過ぎない。それよりも重要なことは……。
(あら……?)
セレナは上半身を倒して、近くにあった周りに比べて背の高いビルを根元でへし折って持ち上げた。
それは高さ数100mはあろう高層ビル。このビルを選んだ理由は特にない。強いて言えば、他のより高くて目立っていたからだ。
セレナが顔を近づけると小さな窓ガラスの向こうにたくさんの地球人が見えた。
「はぁい♪地球のゴミ虫さん。言葉、通じるでしょ?私はセレナっていうの。よろしくねぇ♪」
セレナは満面の笑顔で、窓ガラス越しにいる地球人に挨拶をした。
巨人の声をもろ受けて、ビルの窓ガラスは割れてしまい、中の様子がよく見える。中には大勢の人間が逃げ惑っているのが見える。
「私の宇宙船の修理を手伝ってほしいの。わかるわよね?」
セレナがそう問いかけると、ビルの中はどういう事かと、ざわつき始めた。
「あ、そうそう……あなたたちに拒否権は無いから」
セレナはそう言いながら、高層ビルを持ち上げたままゆっくりと足を後ろに引いて、その場で軽く足踏みをしてやった。
巨大なブーツが地面に叩きつけられ、凄まじい轟音と衝撃が辺り一面に広がった。きっとこのビルにいる人間にも、この足踏みの衝撃は伝わっただろう。
その衝撃で周りの建物は崩れ落ちて瓦礫の山と化す。しかしそんなことはお構いなしにセレナは続けた。
「私に逆らったらどうなるか、分かったかしら?」
片手に持っている小さな超高層ビルは、先ほどとは打って変わって、何の抵抗も示さない。
どうやら恐怖のあまり声も出ないようだ。セレナはその様子に満足して、高層ビルの地球人たちに再び言う。
「そうね。まず初めに、作ってほしい宇宙船のパーツを教えるから、あなた達はそれを作る人間と工場を用意して……ん?」
セレナが言い終わる前に、右頬のあたりで小さなものが爆ぜる感触があった。
その感触と同時に、右頰の周りを見れば、何やら小さなハエのようなものがブンブンと周囲を飛んでいる。
そしてそのハエから、さらに小さなものが分かれて、自分めがけて飛んできている。
それが自分に当たると、小さな爆発を起こしては消えていく。どうやら爆弾のようだ……。
地球の軍隊だろうか。昨日も羽虫が飛び回っていたが、もしかして虫と思っていた昨日のアレは、こいつらの仲間だったのだろうか?
小人の軍の攻撃は、別に痛くもかゆくもないが、邪魔されるのは気分が良くない……。
「あなたたち、私を倒せるとでも思ってるの?」
セレナは嘲笑を含んだ声で、空飛ぶ虫たちに警告した。
だがしかし、それが彼らの耳に聞こえたかはわからない……ただ相変わらずうるさく飛び回るだけだ。
「どうやら立場が分かってないみたいね……」
セレナはバキっと大きな音を立てて、手にしていたビルを粉々に粉砕すると、それを戦闘機達のいる方向に向かって投げた。
ビルは、まるで土塊のようにクシャクシャに潰れた状態で、空中に四散し、戦闘機たちに襲い掛かる。
瞬く間に空中は瓦礫の嵐となり、戦闘機たちはその嵐に巻き込まれ、次々と墜落していく……。
僅かに生き残った戦闘機たちにも、セレナの巨大な手が襲い掛かり、そのまま地面に叩きつけられた。
足元には無数の戦闘機の残骸と、そして墜落現場から上がる赤い炎たち。
セレナはその残骸を足で踏み潰しながら、虫たちに言った。
「あなたたちが私に勝てるわけないでしょ?……まぁいいわ、私に逆らったらどうなるのか、教えてあげる」
***
「はぁい♪地球のみんな♪私の言うことを良く聞きなさい♪」
巨人の魔の手が及んでいない無傷の街に、セレナの巨大な声が街に響くと、人々はパニックになった。
無理もないだろう、無慈悲に破壊を繰り返してきた巨人が、ついに自分たちの街にも襲来してきたのだから……。
「私ってね、とっても優しいから……。だからあなたたちにチャンスをあげることにしたのよ?」
セレナは、足元のビルをブーツで軽く蹴り飛ばすと、それは粉々になって地面に散らばる。
人々は悲鳴をあげながら逃げまどうが、そんな簡単に逃げられるはずもない……。建物はすでに瓦礫の山となり、道路は陥没して寸断されており、とてもじゃないが移動できる状態ではない。
「それなのに、私の言う事を聞かないなんて……。そんな悪い子にはお仕置きが必要よねぇ?」
セレナはそう言いながら、見せしめに足元にいた小人をまとめて踏みつぶした。そしてそのままさらに、生き残りがいないように、徹底的にブーツを捻り潰して、建物と地球人もろとも靴底に擦りつけていく。
「だからね、虫ケラの分際で、私に逆らったらどうなるか……。身をもって知ってもらうわ♪」
セレナは笑顔でそう言うと、そのままブーツでビル群を踏みつけ始めた。
踵が地面に触れれば凄まじい轟音が響き渡り、ビルを踏み潰せば、まるで砂の城のように簡単に崩れていく。
「ほらほら、早く逃げないと踏み潰しちゃうわよ」
セレナはそう言いながら、足元で逃げ惑う人間たちを次々に踏みつけていった。
もはやこの街に安全なところは何一つなく、人々はパニック状態に陥りながらも必死で逃げ惑うが……足音を響かせながら歩き回る巨大ブーツから逃れる術はない……。
セレナはまるで狩りを楽しむかのように人々を追いかけ回し、そしていたぶるようにゆっくりと歩を進めて街を蹂躙していった。
つま先とヒールの間のアーチの下にも、辛うじて踏み残した小人や建物は無数に存在するが……これは罰なので、踏み残しがないように、一人残らず踏みつけてあげた。
「どう?私のブーツは。小さなあなた達からしたら大きすぎて、まるで山みたいでしょ?うふふ♪」
セレナはクスクスと笑いながら、足元で逃げ惑う小人たちを蹂躙し続けていた……。
地球人を追いやっていくと、揃いも揃って、学校や公園といった開けた場所に逃げていく……。
セレナとしては、目に留まりやすい開けた場所に逃げ込む習性に理解できなかったが、わざわざ自分から踏みつぶされやすい場所に向かってくれたのだ、無視する訳にはいくまい。
セレナは集まってくれた小人を、せっかくなのでお尻で押し潰すことにした。
セレナのボディースーツに包まれた巨大なお尻。丸い二つの膨らみは、片方だけでも学校の敷地の100倍の面積はあるだろう。
その大きなお尻を地面に押し付けると、ズシッと膨大な質量が地面にのしかかり、アスファルトを砕いてまるで粘土のように建物を押しつぶしてしまう……。
そしてそのまま、お尻に体重をかけて完全に平らに潰してやると、何万人もの人々が詰められた避難所はあっけなく潰されてしまった。
だが、こんなもので地球人へのお仕置きは終わる筈はない。セレナは立ち上がり、新たな獲物を求め、歩みを進める。
「あらあら♪逃げまどう小人たちがとっても可愛いわ♪」
足元で必死になって逃げ回る地球人たちに微笑みかけると、巨大ブーツは一歩ずつ街を踏み潰しながら足を進める。
踏み下ろしたブーツの周りでは、踏み付けの直撃を回避した黒色の粒が、まるでアリのように地面を這いずり回る……。
「あら?踏みつぶされなかったなんて、運がいいのね。でもね、ごめんなさい。これは罰だから、あなたたちを全員踏みつぶさないと私の気が済まないの♪」
セレナは、自分の足元で這いずり回る小人たちを見下ろしながら言った。そして、そのままゆっくりと足をグリグリと踏み躙る。
すると、足元で逃げ惑う人々は、悲鳴を上げながら次々と踏み潰されていった。セレナはその様子を見て満足そうに微笑むと、そのまま足を動かし続ける。
「じゃあね♪小さな虫さんたち♪」
セレナはそう言い残し、無慈悲に街を踏みつぶしながら歩き去った。
その後、踏みつぶしに飽きたセレナは、四つん這いになり、街の大通りを蹂躙していく……。
先ほどのようにただ力任せに踏み潰すのではなく、手でビルを薙ぎ払い、高層ビルを膝で押し倒し、さらに脛で道路をすり潰していく……。
セレナの巨大すぎる四肢はどれも驚異的で、彼女の向かう先にあるビル群は、ひとつ残らず薙ぎ払われた。
彼女が通った後には、茶色い地面がむき出しとなった、平らの廃墟へと変貌していた。
「あらあら、こんなに踏み潰しちゃった。でも私のせいじゃなくて、あなた達がチビでノロマなのがイケナイのよ?」
セレナはクスクスと笑いながら、今度は身体を倒して街の上に横たわる。
地面に擦りつけられた胸は、無数のビルを瓦礫へと変えていき、そしてそのまま胸で圧縮して押し潰した。
「あはぁ♡小さな虫たちがいっぱい潰れのを感じるわぁ♪」
セレナの胸の下では無数の人々が押しつぶされて息絶える。しかしそんなことはお構いなしに彼女はさらに体重をかけて胸を地面に擦り付ける……。その度ごとに彼女の巨大な胸が街を破壊していくのだった……。
「ん…っ、んん…っ♡!」
彼女のボディースーツの下には、何もつけていない白い素肌が広がっている……。その白い肌は汗ばみながら紅潮して、呼吸のたびに上下する……。
その巨大な胸は、彼女の身体の上で潰れて平らになったビルをさらに押し潰しながら地面に擦り付けられ、そしてまたゆっくりと起き上がると今度は地面のビル群を押し潰して行く。
「んふ……っ♪私のおっぱいに潰されちゃった虫たちはみんな死んじゃったね♪」
セレナはそう言いながらも胸を地面にグリグリと擦り付け続け、その巨大な胸で、ビルをすり潰しながら快感に浸っていた。
彼女の大きな胸が通った後には、彼女の胸の形をした茶色い地面が出来上がった。
そして今度は体を捻り、お尻を持ち上げるセレナ……。
そのお尻の下では、なんとか踏み潰されないで済んだ人々が恐怖で顔を引きつらせている……。そんな彼らの顔を見ると、セレナの嗜虐心は満たされていくのだった。
(ふふ、みんないい顔……♪もっと怯えて?)
セレナは心の中でそう呟きながら、お尻を地面に押し当てた。そしてそのまま身体を揺すり始める。
「ん……っ、んふ……♪」
スーツ越しにたくさんの建物や小人が潰れる感触は、セレナの敏感な部分をくすぐり、それに伴って彼女の息遣いは荒くなる……。
「ん……っ、はぁ……っ」
セレナは甘い吐息を漏らしながら身体をよじらせていた。自分の巨大な尻をグリグリと動かして街を蹂躙していく……。
彼女の大きなお尻で押し潰されたビルはたちまち平らに潰れていき、残った人々は無慈悲にもその瓦礫の下敷きと化すのだった……。
「んっ…♡♡あああぁっ♡」
セレナは甘い吐息を漏らしながら、ゆっくりと身体をくねらせて、その巨大なお尻を持ち上げる。
するとそこには、もはやかつての街並みの面影は全くなく、夥しい瓦礫が地面に埋まる死の平野が広がっていた。
「ふーっ、ふーっ……♡」
セレナは瓦礫の上でゆっくりと呼吸を整えると、そのまま瓦礫を足蹴にして周囲を見晴らした。
セレナの周りには、もはや街の面影はなく、巨大な足跡や建物の残骸が転がっているだけだ……。
身体を少し動かすだけでも無数の地球人を巻き込むことができる。
圧倒的な力の差に絶望する人々、そして恐怖に震える小人……。セレナはそんな彼らを見て気持ちが昂る。もう我慢できない……。
「ふふ、みんないい顔……♪もっと、しちゃおうかしら♡」
セレナはそう言うと、再び身体をくねらせて、巨大な胸を地面に擦り付け始めた……。
彼女が身体をくねらせる度に、ボディースーツ越しに彼女の大きな胸が潰れて平らに擦り付けられる。
その度ごとにセレナは甘い吐息を漏らすのだった……。
しかしセレナの巨大な身体は、そんな小さなものを潰す程度では満足する筈もなく、さらなる快楽が身体から湧き上がる……。
もっと、もっと、蹂躙して気持ちよくなりたい……。
セレナは微笑みながら、蕩け切った視線を動かすと、そこに周りの高層ビルよりもずっと大きな白く細長い塔が目に入った……。
彼女がそれを見逃すはずはなかった。セレナはその白い塔を目指して歩き出す……。
その塔はこの街の、いや、この国のシンボルともいえる建造物だ。
しかしそのシンボルも、今の彼女にとっては自分の二の腕よりも細く短い、ただの棒きれでしかない。
セレナはフラフラと塔の前まで歩いていくと、巨大なブーツを塔の左右に踏み下ろして、その塔を跨いで仁王立ちしてみた。
地球人にとってみれば、その塔はまさに天を衝くほど巨大な柱であり、世界最高峰の建築技術を凝らして作り上げた傑作である。
しかし彼女にとっては、その塔も自身の股ぐらにも届かない、ちっぽけな存在に過ぎない。
セレナは地球人の超高層建築物を悠々と跨いで、優越感に浸る……。
地球人たちが首を痛くなるまで見上げても、全容を視界に収めることが難しいであろう超高層物を、自分は難なく跨げるのだ。
(ふふ、いい眺め……♪)
このまま、この塔をブーツで踏みつぶしたり、お尻で敷き潰す……なんてことも簡単にできてしまう。
でも、それだと面白くはない。せっかくだから、地球人が二度と歯向かう気も起きさせないよう、徹底的にわからせてやらねば……。
セレナはそう思うと、スーツを留めているチャックを下ろして、胸をはだけさせ、汗ばみ紅潮した白い肌を開放させた。
「ん……っ、はぁ……っ♡」
セレナの汗ばんだ素肌が、冷たい空気に触れ、湿った空気が雲を作り出す。
「はぁ……っ、ふふ……♪」
セレナは興奮気味に笑いながら、さらにチャックを股間の近くまで下ろす。
そして露わになった白い素肌は、太陽の光を受けて、艶かしく光り輝き、淫靡な雰囲気を漂わせる……。
その妖しい光を放つセレナの身体は、小人にとってはまさに女神のように神々しく見えたことだろう……。
「はぁ……っ♡疼いちゃう……っ、んふ♡」
セレナは甘い吐息を漏らしながら、ゆっくりと股間に手を伸ばす。
白い指で自分の秘所に触れると、そこはすでに湿っていて、その指先を離す度に糸を引いていた。
「よく見てなさい、おチビちゃんたち……♡今からあなたたちを滅茶苦茶にしてあげるわ♪」
セレナは意地悪な笑みを浮かべながら、股間の部分をずらして、そのままゆっくりとしゃがみ込むと、その塔を跨いだまま、自身の巨大な花びらに擦り付け始めた……。
9.巨女神の淫靡な蹂躙(地球人目線)
山のように巨大な異星人の女が、全身を使って街を蹂躙していく。
全長1,800mを超える巨躯が四つん這いになり、巨大な手足で暴れまわると、今度は胸にぶら下がっていた巨大な乳房を地面に擦りつけ始めた。
その巨大な胸の下には、いくつものビルが集まっていたが、それらは巨大な乳房を支える事ができず、一瞬で平らに潰されていき、白い煙を巻き上げ、地上から姿を消した。
そんな光景を目の前にして人々は絶望し…またある者は発狂したように泣き叫んだ。
悲鳴と怒号が飛び交い、人々は逃げまどうが、その巨躯から逃げることも、止めることもできない……。
人類の攻撃は、その巨躯に傷一つつけることができないが、逆に彼女からの攻撃は一撃で街を破壊できる。
彼女の攻撃はまさに天災だった……。
彼女の巨大な尻が地面に押し付けられるとその衝撃だけでビルは倒壊し……そしてそのまま彼女の臀部が持ち上がると、その尻に押し潰されたビル群が無残な姿で地面と同化しているか、臀部に張り付いているのが見て取れた。
巨大な異星人が横たわると、さながら一つの山脈がそこに出現したかのような錯覚を覚え、巨体の山に埋もれた街はあっという間に瓦礫の砂漠と化した。
彼女はその巨大な胸で街を蹂躙し……さらにその胸の谷間を地面に擦り付けて街を蹂躙していく。
彼女の大きな胸がビルや建物を押し潰す度に、白い煙が上がり、そしてそれはやがて赤い炎へと姿を変えていく……。
昂奮しているのだろうか、彼女の口からは熱い吐息が漏れ出し、その艶やかな唇がゆっくりと動く……。
『はぁ……っ♡はぁ……♡』
嵐の様に上空で轟く巨人の甘い吐息。彼女はだらしなく涎を垂らしながら、自らの胸と股間に手を伸ばしていく……。
銀色のスーツを身に纏った美しい女神は、自身の巨大な胸や臀部を地面に擦り付けながら悶えている。
その姿はあまりにも淫猥であり、見る者の理性を奪うには十分すぎるほどだった。
そんな折、ゆっくりと巨大異星人が立ち上がった。そして、そのままふらふらと歩き出す。
その行き先は、この街のシンボルでもある、世界最大の巨大な電波塔だった……。
その超高層建築物を彼女は軽々と跨いで仁王立ちする。
その姿はあまりにも大きすぎて、見上げてもその表情まで読み取ることはできないが……しかし、それでも彼女が笑っていることだけはわかった。
こうして見せつけられると、自分たちとは存在レベルのスケールが違うということを思い知らされる。
彼女の身長は1800m。地球に存在するどんな建築物よりも大きく、まさに神と呼ぶに相応しい存在といえる……。
そして、ご自慢の巨体を人類に見せつけたのち、銀色のボディースーツの前面に取り付けられている、チャックのようなものを下ろして、ゆっくりとそのスーツを左右に開いていく。
開いたスーツの胸元は、自身の巨大な胸で圧迫されたために、くしゃくしゃに皺が寄り……胸の谷間は汗ばんでいて、妖艶な光を放っていた。
開口部から、汗ばんだ白い素肌に、薄い色の乳輪が姿を現す……。その乳輪は大きく、そして綺麗なピンク色をしていた。
さらにその奥では、彼女の大きな乳首がピンと立っていて、その存在を主張している……。
彼女はそんな自分の胸を見下ろしながらニヤリと笑うと、そのままゆっくりとチャックを股間部までおろしすと、そこから出てきたのは、愛液で濡れた巨大な割れ目だった……。
地上のビル程度なら簡単に飲み込めそうな、巨大な割れ目。
その姿はあまりにも卑猥であり、見ているだけで頭がどうにかなってしまいそうだった……。
しかし、そんな姿に見とれていると、巨大な声が響き渡る。
『はぁ……っ♡疼いちゃう……っ、んふ♡』
重々しく、世界を震わせるほどの大音量。しかし、それでいて、どこか妖艶な響きをも感じさせる。
圧倒的なパワーと、艶めかしい美貌を持つ声……。
その声の主が、あの巨大な異星人であると理解するのに時間はかからなかった……。
『よく見てなさい、おチビちゃんたち……♡今からあなたたちを滅茶苦茶にしてあげるわ♪』
そんな声が聞こえたかと思うと、 巨大な異星人は、そのままゆっくりと足を開いていき、右手で真下の電波塔の中腹を掴む。
そして、そのままゆっくりと腰を落として、電波塔の先端に割れ目を擦り付け始めた。
それはまるでマーキングのようで、自分の存在を誇示するかのようだった……。
『はぁ……っ♡んふ……♡』
巨大な異星人は、ゆっくりと腰を動かしながら、艶めかしい吐息を漏らした。
その息遣いに合わせて、彼女の胸が上下し……そのたびに大きな胸がゆっさゆっさと揺れて、空気が震えていく。
巨大な彼女の前では、世界有数の超高層建築物も、何と細くて頼りないものか。彼女が腰を動かすと、電波塔は今にも折れそうな金属音を鳴らして、しなっている。
『ん……っ♡』
そして、巨大な異星人はその腰の動きを止めると、少しだけ腰を浮かせた。巨人の愛液でべとべとになった電波塔が、彼女の股間と糸で繋がっている……。
『はぁ……♡』
巨大な異星人は満足そうに微笑むと、再びゆっくりと腰を落とし、電波塔の先端に腰をにじり寄らせ、そしてそのまま腰を沈め始めた。
タワーの白い姿が、長さ数百メートルもある肉の割れ目に、ぬぷぬぷと呑み込まれていく。
巨大な美女の秘部に電波塔が呑み込まれる光景は、街のいたるところから見上げることが出来た。
『はぁ……♡んぅ……っ゛♡』
電波塔が呑み込まれるごとに、巨大な異星人は艶やかな声を漏らす……。その声はどこか恍惚としていて、とても艶めかしいものだった。
世界に誇る高層建築。それの全てが、彼女のオモチャのために作られたかのようだった。
巨大な割れ目がタワーの先端にしゃぶりつくと、その衝撃で先端部分の鉄骨が崩壊してしまうが、構うことなく、そのままさらに腰を沈め……電波塔の中ほどまで飲み込んだところで動きを止めた。
『はぁ……♡んふ……っ♡』
彼女は満足そうに微笑みながらゆっくりと腰を動かし始めた……。
その動きに合わせて、大地がぐらん、ぐらんと揺れ動く。まるで大地ごと持ち上げて動かしているかのような非現実的で圧倒的な光景だった。
しかし、そんな非現実的な光景も、目の前で展開されれば信じるほかないだろう。
そんな巨大な美女のスペクタクルショーを、世界中の人々が見上げていた。彼女から見たら、自分たちはノミやシラミのように小さいのだ。
国家プロジェクト相当の建造物を作り上げて、ようやく彼女のオモチャにしてもらうことが出来る程度の存在。彼女と人類の大きさのギャップに目眩がしそうにもなる。
今まさに、見せつけられる圧倒的なスケールの違いに、ある者は絶望し膝から崩れ落ち……またある者は恐怖で発狂したかのように泣き叫ぶ。
しかし彼女はそんな地球人たちの様子を意に介する様子も見せず、ゆっくりと腰を上下に動かし続ける。
その巨体から繰り出されるダイナミックな動きは、地球人たちにとってはこの世の終わりのように感じられたに違いない。
『んっ♡はぁ……っ♡』
そんな巨大な異星人は快楽に身体をよじらせると、そのまま腰をくねらせる。するとその動きに合わせて、彼女の大きな胸もぶるんぶるんと揺れるのだ……。
『はぁ……♡んふ……♡』
巨大な異星人は艶めかしい声を漏らしながら、ゆっくりと腰を動かす速度を上げていく。
その巨体が腰を動かす度に、大地が大きく揺れ動き……周囲の建物がガラガラと音を立てて崩れてしまう。
しかしそれでも彼女は動きを止めることはなかった。むしろその動きをさらに加速させるように、激しく腰を打ち付け始めたのだ。
『あっ♡あっ♡ああぁぁっ♡♡♡』
巨大な異星人は恍惚とした表情を浮かべながら、腰を動かし続ける。その動きに合わせて、彼女の巨大な胸は激しく上下に揺れ動き……そしてそのたびに彼女は大きな喘ぎ声を漏らし、街中に淫らな水音と喘ぎ声が響き渡る。
超高層建築物が彼女の玩具にされている……。そう、彼女は世界最高峰の電波塔をオモチャにして自慰行為をしているのだ……。
彼女が動くたびに地響きが起こり、そしてそれに合わせて地球人たちが翻弄されているのを、彼女は楽しそうに見下ろしていた。
自分のオナニーで、街全体を蹂躙し翻弄させる……。そんな歪んだ性癖が彼女の中に芽生え始めているようだ……。
一方の地球人たちは、そんな巨大な異星人の痴態を見せつけられて、ただ呆然と見つめるどころか、彼女のオナニーが引き起こす大地震で、倒れる建物や跳ね跳ぶ車両に巻き込まれる恐怖を抱きながら、揺れる地面に倒れてしがみつき、祈る事しかできなかった。
あんな巨大な生物に勝てるわけがない。あれなら地球を簡単に破壊できるだろう……そう思えてしまうほどの力の差があったのだ……。
『んあぁぁぁぁぁっ♡♡♡』
その場にいた地球人たちの鼓膜が張り裂けそうな絶叫と共に、彼女の身体がビクンっと跳ね上がる。それと同時に彼女の股間からは大量の潮が噴き出して、辺り一面に雨のように降り注いでいった。
その勢いは凄まじく、地球人たちの街はあっという間に夕立が通った如く、水浸しになってしまうほどだった。
しかしそれでも彼女は満足していないようで、再び腰を動かそうとし始める。
巨大な異星人は電波塔を自分の快楽を満たすための道具としか見ていない様子だった……。
『はぁ……♡んふ……♡』
そんな彼女は再びゆっくりと腰を沈めていくと、今度は先程よりも深くまで挿入していく。そしてそのまま腰を上下に動かすのではなく、ぐりぐりと捻る。
それはまるでドリルのように回転しているかのような動きだった。
『んふ……♡ふぅ……っ♡』
その行為によって、彼女はさらに強烈な刺激を味わっているのか、恍惚とした表情を浮かべている。そしてそれと同時に彼女の乳首はさらにビンビンに勃起して、空いている手で下から乳房を揉みほぐすように愛撫していた。
地球人からしたら信じられない光景だったが、しかし彼女にとっては当たり前のことなのだろう。彼女はそのまま快感に身を任せるように腰を振り続けた……。
そうしてしばらくすると、彼女は再び大きな嬌声を上げて身体を仰け反り、陰唇から水鉄砲のように愛液が噴き出した。
『はぁ……♡んん…ぅ♡!』
彼女の股間からはぼたぼたと愛液が流れ出し、足元に水たまりを作っていく……。
たった一滴の愛液でも、その量は地球人の数百人分に相当する……。そしてそれは、容赦なく雨のように地面に降り注ぐのだ。
びちゃびちゃと、地面に溜まった愛液が跳ね上がり、それが周囲の車に直撃すれば、車など一瞬でスクラップになってしまう。
そんな巨大な愛液の雨は、あっという間に街を水浸しにして、あらゆるものを飲み込んでしまった。
『はぁ……♡んふふ♡』
巨大な異星人は妖艶な笑みを浮かべると、今度は両手を地面につけ、今までにない速度で腰を動かし始めた。それはまるでスクワットのように激しく、それでいて力強い動きだった……。
史上最大の騎乗位オナニーは、どんどん昇り詰めていっているかのようなその動きとなり、彼女はついに絶頂を迎えようとしているのだなと、地面にひれ伏す人類たちは察した。
『はぁ♡んふぅっ♡』
巨大な異星人が身体を上下させる度に、彼女の大きな胸も上下に揺れる。その豊満な胸から飛び散る汗や愛液は、まるでシャワーのように降り注いでくるのだった……。
『あっ♡あぁんっ♡♡♡』
そんな大きな声と共に彼女が、大きく身体を震わせると、腰をあげて、巨大な割れ目から電波塔を引き抜いた。
『んんあああっ♡♡♡』
そしてそのまま彼女は身体を仰け反らせながら、絶頂を迎えた……。それと同時に電波塔が引き抜かれた彼女の割れ目から、堰を切ったように大量の潮が吹き出して、地球人たちの街へと降り注いでくる。
『はぁ……っ♡んふ……♡』
巨大な異星人は満足そうに微笑むと、力尽きたのか、ゆっくりと腰を下ろした。
ずううううんんん……。
そして、自分の臀部の真下で潰れた街など気にも留めずに、彼女はそのまま瞳を閉じて、余韻を味わうように、ゆっくりと深呼吸をする……。
その巨大な身体から放たれる濃厚な雌の香りに、生き残った地球人の男たちはみな股間を膨らませて、そして女達は顔を紅潮させていた……。
10.支配された地球で(セレナ視点)
「はぁぁ……。気持ちよかった……♡」
全身に汗をかきながら呟くセレナ。まだ余韻震えている彼女の股間からは、未だに大量の愛液が溢れて地面に落ちている……。
「はは……。ちょっと、はしたなかったかしら……?」
自分の足元で水浸しになっている地面を見下ろすと、そこは彼女の潮が降り注いだ跡がはっきりとわかるくらいに、色が濃くなっていた。
セレナは赤い頬を掻きながら苦笑しつつも、先程までの行為を思い出す。
「まさかあそこまで乱れちゃうなんて思わなかったわ……。」
セレナは自分の痴態を思い出し、顔を赤くする。自分があんなにも乱れてしまうなんて……。
でも、本当に気持ちよかった。大勢のこびとたちが、自分のエッチな遊びをなすすべもなく見上げている視線。
そして、地球人ご自慢の高層建築を使ったオナニー。その巨大な建造物をオモチャにするなんて……なんて贅沢なんだろう。
セレナは未だに快楽の余韻が抜けず、甘い吐息を漏らしながら上気した頬を冷まそうとするように手のひらで顔を扇ぐ。
そんな彼女の股間の前では、壮絶なスペクタクルショーを生き抜いた、白色の塔が姿を晒している。
巨大な塔の全体が愛液によってべっとりと覆われて、ところどころ崩れてしまって、上半分はぐにゃぐにゃに変形してしまった。
「ちょっと激しすぎたかしら?」
セレナは崩れた塔を見ながら苦笑する。まあでも、気持ちよかったし別にいっか……。それに、地球人がこのボロボロになった塔を見上げるたびに、今日の事を思い出して、自分に逆らうことの愚かさを痛感してくれることだろう……。
と、自己完結して、立ち上がろうとしたとき、ふいに尿意を感じた。
オーガズムが引いた後にやってくる、あの何とも言えない感覚……。
この場で済ませてもよかったが、さすがにそれは、地球人がかわいそうとだと思うし、宇宙船に戻ってからすることにした。
それに、また懲りずに反抗してきた時用の”しつけ”として残しておく方が面白いと思ったからだ。
そんなことを考えながらセレナは立ち上がる。巨大な塔をオモチャにしたことで十分に満足できたし、もうここにいる意味も無いだろう。
「じゃあね、おちびちゃんたち。これからは私の言う事をちゃんと聞くのよ?」
セレナはそういい残して、宇宙船へと戻るために歩き出した。
その巨大な背中が見えなくなるまで、地球人たちはただ呆然と見送るしかなかった……。
◇◇◇
その後、地球人達はセレナの宇宙船を修復するために、ありとあらゆるインフラを提供することとなった。
生活に必要なもの以外は、全て宇宙船のパーツ作成にあてられた。
そのおかげで、宇宙船の修理ははかどり、セレナの機嫌も良くなっていった。
「さぁ、虫けらたち、私の宇宙船の修理の糧になれるのよ?少しは光栄に思いなさい!」
セレナが上機嫌で街を見下ろしながらそう言うと、地球人たちはみな顔を青ざめさせるのだった……。
しかし、そんな中、セレナを追うように、一つの宇宙船が地球に近づいていることに、まだ彼女は気付いていなかったのだった。