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「おら、どーよ。ちゃんと優勝してみせたぞ」
宮下が生意気に、だが嬉しそうに俺に言う。
興奮にシングレットに包まれた逞しい大胸筋がふいごのように膨らみ、短いツーブロックの髪から汗がポタポタと落ちていた。
俺は苦笑して、「ああ、おめでとう」と宮下とハイタッチする。
バチンッ!といい音を鳴らした後、宮下はずいっ!と俺に顔を近づけてきた。
「優勝したらなんでも言うこと聞いてくれるんだよな?」
目を煌めかせる宮下。
180cm以上ある俺と目線の高さは変わらない。
俺は顔をしかめた。
「できることならな」
不良で帰宅部だった宮下をレスリング部に引きずり込んだとき、そう約束したのだ。
宮下が「できる」と、にっ、と笑った。
「抱かせてくれよ、吉岡」
「は?」
俺が意味がわからず顔をしかめていると、宮下が腕を伸ばしてムギュッ!と俺の尻を掴んだ。
「はっ!?う、うわっ、馬鹿やめろ」
驚いて反射的に宮下の胸を突き飛ばす。
80kg級の高校チャンピオンとは言え、元オリンピック金メダリストの俺の腕力は落ちていない。
グッ!?と空気の塊を吐き出し、跳ね飛ばされた宮下が床に尻餅をつく。
いってー、とガシガシ頭を搔く。
ふざけんなよ、と予想外の申し出に動揺を隠し俺は吐き捨てる。
なんだ?宮下はゲイだったのか?
「ふざけてねーよ」
宮下が立ち上がる。
笑うのはやめて真剣な顔だった。
切れ長の目が真っ直ぐ俺を見つめていた。
「俺、吉岡に憧れてここまでレスリング続けられたんだぜ」
グレきってタバコや酒にまで手を出し、不健康な面をしていた宮下が、今や凛々しく逞しい青年になっていることが、はっきりと痛感させられた。
だが……。
「だからってな……。というか俺はゲイじゃない」
俺だってゲイじゃない、と俺の言葉を遮るように宮下が言う。
「ただ吉岡が好きなんだ。なぁ、なんでもするって言ったじゃん。絶対気持ちよくさせてやるからさ」
熱い眼差し。その純粋な目つきに思わず視線を外し、生徒に、男の自分に言われる言葉とは思えない内容に目を回す。
思わず上を向いて思案にくれていると、なあ、と痺れを切らした宮下が俺の腕を掴んで来た。
その力強さと熱さにギョッとする。
「なぁ……頼むよ」
何かをこらえるような切実な表情で見つめられ思わず言葉に詰まる。
俺が宮下の真剣さに言葉が出ないでいると、宮下が俺の手を取り、あろうことが自分の股間を触らせた。
ビクッ!と思わず肩が跳ねた。
シングレットをギチッ!と盛り上げていたそれは固く熱く、そして想定以上に太く、デカかった。
高校生のくせにこいつエグいもんを……。
「わかる?吉岡でこうなってんだよ…」
俺の耳元で宮下がこらえるような熱い息で言う。
ゾクッ!と産毛が逆立つような未知の感触に俺は動揺し、思わず思い切り宮下の腕を振り払ってしまった。
ドタンッ!と再び床に倒れ込む宮下。
「馬鹿野郎。こんなポンポン俺に投げ飛ばされるような弱いやつに抱かれてたまるか」
自分でも顔が赤くなっているのがわかる。
どうしたんだ…?
ただ、耳朶を打った宮下の切なげな熱い声と、ドクドクと脈打っていた馬鹿デカい勃起の感触が妙に頭から離れない。
バッ!、とすぐに宮下が立ち上がる。
……興奮しているからか、若いからか、普段の練習時から宮下はまるでダメージを受けるという感覚がないように見える。異様に回復が早い。
「じゃあ、俺が宮下を余裕で絞め落とせるくらい強くなったら、抱かせてくれるか?」
真顔で言われた言葉に俺は、はぁッ!?と目を剥く。
「舐めんなよ、誰がお前みたいなガキに負けるか」
引退して10年。幾分脂肪がつき体重は90kgを超えているが、学生の指導に混じって鍛えている体はまだまだなまっていない。
高校チャンピオン程度、片手でどうにでもできる。
「じゃあいいじゃん。約束してよ。1年後、俺が勝ったら抱かせてくれるって」
宮下が歯を剥いて不敵に笑う。
その目がギラついていた。
「何を馬鹿な…」
「怖い?成長著しい俺に負けんの」
顔をしかめた俺を宮下が馬鹿にしたようにせせら笑い、カチンときた俺は思わず噛みつき返してしまった。
「ふざけんなよ!いいだろう。その代わり手加減しないからな。骨の1本や2本覚悟しとけよ」
脅したつもりだが、宮下は少年のように嬉しそうに笑った。
「もちろん。男に二言はないよな?」
自分より10以上若く体格の劣るガキにねじ込むように言われ、不愉快な俺は「当然だ」とブスッと答えることしかできなかった。
やりぃー!と宮下がガッツポーズをする。
そのあまりの無邪気さに苦笑した。
……まあ俺に勝つのは到底無理だが、高2で全国制覇した宮下の新しい目標ができたのならよしとしよう。
1年後、俺は自分のその安請け合いを死ぬ程後悔することになるとは、その時微塵も考えていなかった。
宮下がレスリングを始めたのは全国制覇をするちょうど1年前。
高校1年生の夏だった。
たった1年で全国制覇。
確かに飛び抜けた素質、恵まれた体格、そして俺の指導があったからだ、と自負している。
スポーツに力を入れる私立高校のレスリング部コーチに抜擢され、結果を出せず焦っていた俺が、たまたま喧嘩している宮下を目撃したのが全ての始まりだった。
3人相手に宮下は圧倒しており、何よりタックルを食らってもびくともしない下半身に、こいつはいいレスラーになる、と確信した。
止めに入ったが生半可の仲裁では宮下は止まらず、グロッキーの相手に重い一撃を振り下ろし続けたため、俺も本気になって絞め落とさなければならなかった(そんな闘志の強さも格闘技向きだと俺はより確信を深めていた)。
指導者が1生徒を絞め落とす、問題になるべき事案だが結果として宮下は俺に懐いた。
曰く、自分よりも明らかに格上の相手だと実感する相手に初めて出会ったらしい。
俺以外の人間には相変わらず態度が悪くなりがち、というか興味がないのがあからさまだっただが、俺の言うことは素直に効いたため、どんなハードなトレーニングにも音を上げず、カラカラのスポンジが一気に水を吸い尽くすように、技術を吸収し、肉体は逞しく成長していった。
その速度は俺の予想を軽く超え、高2で全国制覇するまでになってしまった。
今後のモチベーションをどうキープするかと言うところにこの珍事だ。
予想外だし、アイツの思考回路がよくわからない。
これからどうことやら……。
大会後の休み明け、宮下の練習態度は異様なのめり込み具合だった。
指導陣が思わず言葉を失うほどの苛烈さ。
スパーリング相手を本気で潰しかねない勢い。
ウエイトトレーニングでもこちらが決めたメニューを超える量と負荷を勝手にかけて猛然とバーベルを上げる。
昼は5人前くらいの食料を猛然と食らい、休憩時間にも狂ったようにトレーニングに打ち込む。
全神経を己を虐め抜くことに集中させているのが、無表情の中の力がみなぎる目でわかった。
やけになっているわけではなく、冷静に、ただひたすら強くデカくなろうとしている。
元々練習熱心ではあった。
俺の言うことをよく聞き、要求以上のことを見せてきた。
だが、今見せつけられている姿は常軌を逸していた。
みなぎり、はち切れんばかりのエネルギー、精力。
爆発せんばかりの渇望。
どう考えてもオーバーワークなのだが、あらわになった規格外の体力と宮下の本来の肉体の強さは易々とそれをこなし、爆発的に筋肉は肥大し、動きはキレを増して行く。
無尽蔵の体力。
全国制覇をしたことで各所と繋がりができたのか、オフ日も俺の知らないところで激烈なトレーニングを積んでいるようだった。
毎月、毎週、いや毎日、宮下が雄として成熟し、完成されていく。
大学生や他のコーチではもはや勝負にならない。
宮下の筋肉の塊のような極太の腕と分厚い体に一瞬で絞め落とされ失神する年上の男たち。
宮下は、来年の"その時"まで俺とスパーリングはしないと決めたようだった。
本来生徒にそんなことを決める権利はないが、俺は同意した。
別に負けると思ったからでは断じて、ない。
数ヶ月で筋肉量が20kg近く増え、バケモノのように強くなった宮下に、ある意味"ストップ"がかかったのは、冬の事だった。
激しい関節の痛み。
それまでの宮下の脇目も振らぬ打ち込み具合からは予想外のことに、宮下はすぐに練習を休み、整形外科へ行った。
その冷静さが、宮下の本気をまざまざと思い知らされる。
受診結果は、成長痛。
17歳とは言え180cmオーバーの筋肉隆々の男に、成長痛…?
かなりの異例だが、毎食常人の数倍は食べ、異様な強度のトレーニング、そして激烈な本人の「強くなる」という思いが、その肉体にさらなる変化をもたらしたのか……。
休みを申し出た宮下に、年末年始も近かったため、数週間のオフを命じた。
外部で勝手にやられることは止められないが……。
年が明け、久しぶりに現れた宮下に、ざわめきの絶えない体育館が静まり返った。
背をかがめないと入ってこれない程の身丈。
戸幅を埋めるほどの肩幅。
1ヶ月弱の間に、宮下の体は規格外の成長、成熟を遂げていた。
この体育館の中にいる誰よりも、デカい。
身長は2m近くはあるんじゃないだろうか。
そしてTシャツをメリメリと盛り上げる樽のような大胸筋に、同級生の男達の倍以上ある段違いの肩幅。
ボコッ!と太く筋肉が隆起する丸太のような腕は並の男の胴回りくらいはある。
トレパンをミチミチに引きちぎらんばかりに埋め尽くす競輪選手のような腿。
こんな脚に締められたら胴がぺしゃんこにされると思わされるような凶悪な大腿四頭筋の発達。
主張の激しい重量感溢れる股間。
顔つきは精悍さを増し、がっしりとした顎とくっきりとした目つきは雄としての成熟を指し示していた。
身長約20cm、体重は30kg近くの増量。
成長期のモンスターは1ヶ月弱で怪物となった。
最早、名門実業団の選手であろうと、まるで寄せ付けない。
二十歳にもならない若雄に、歴戦の猛者達が赤子のように軽々とひっくり返され、投げ飛ばされ、骨が砕けんばかりのパワーで絞め落とされていく。
宮下の極太の筋肉で容赦なく絞め上げられ泡を噴いて失神する全日本チャンピオンを見た時、俺は生まれてから感じたことのない感覚に襲われた。
17、18でこの体躯。底無しのスタミナ。
………俺よりも……。
だが、宮下のトレーニングにかける異様な熱は収まるどころか加速するばかりだった。
規格外の重量で何十回もウエイトを上げ続ける様を、慄きながら遠巻きに見ている事しかできない。
メギメギメギッ!!!!ボゴッ!!!!
太い血管を浮き上がらせ、皮膚をぶち破らんばかりに隆起する筋肉。
巨大な大胸筋の隆起はタンクトップに到底収まり切らず、分厚い腹筋が布越しにもボコボコと盛り上がる。
その男性ホルモンの強さを証明するような並外れた巨根は恐らくサポーターで腰骨に沿うように固定されているようだが、ボルンッ!と筒状にシングレットを盛り上げている様は異様だった。
宮下とやる相手はその極太の男性器を押し付けられることになり、そのまるで勝負にならないデカさと極厚の筋肉に、雄としての格の違いを教え込まれ、ただでさえ実力とパワーが桁違いなのにも関わらず、闘志さえ失われてしまう。
更に、トレーニングの最後のセットを終える瞬間や、相手を絞め落とす時に、その巨大な逸物がムクッ!と肥大し、メリメリとシングレットを盛り上げ、ボコッ!とした亀頭がギチギチ半ば腰幅から飛び出し引きちぎらんばかりになるのだ。
見せつけられる雄としての強さに、誰もが圧せられた。
夏の大会は125kg級で出場することになった。
それでも減量が必要だった。
1年で50kg以上の増量である。
常識では考えられない。
しかも宮下の体躯に脂肪はほとんど見当たらず、極厚の筋肉がうねるように全身を覆っている。
そのガタイのデカさは重量感は同階級の選手たちの間でも群を抜いていた。
試合は見てられない程に一方的だった。
破壊、蹂躙。
最早宮下の前では高校生を相手にすることなど赤子の手を捻るに等しい。
特に決勝戦の相手はなまじ根性がある分、思わず目を覆いたくなるほど宮下の圧倒的なパワーに弄ばれていた。
ボロ雑巾のようにのされ、文字通り病院送りになった相手を歯牙にもかけず、全国制覇のトロフィーを片手で軽々と持ち上げて見せる宮下。
スタンドにいる俺は、はっきりと宮下と目があったのがわかった。
この1年、まともに見つめ合うことはなかった。
宮下も俺も、それぞれの理由で避けていたのだろう。
だが、宮下はもう逸らさなかった。
俺の姿をじっくりと舐めるように見て、ニヤッと笑った。
表彰式が終わる。
……俺はロッカーで知らず深呼吸していた。
前回の優勝、そしてあの約束からちょうど1年。
これから、俺は宮下と闘う。
……なんの問題もない。
自分より体格の勝る選手とのスパーリングなど、何度も経験してきた。
力押ししてくるだけの若造などいくらでも料理してやれる。
経験の差というやつを見せつけてやろう。
「……吉岡?」
知らず考えにふけっていたところに声をかけられ俺は思わず「ん!?」と大声を上げ振り向いた。
鼻先に、青いシングレットをパンパンに盛り上げ、覆い尽くせないほど張り出した巨大な大胸筋が突きつけられる。
その容積、分厚さはコンクリートを限界まで詰め込んだドラム缶程もありそうだ。
その谷間に俺の顔が余裕で挟まれそうなバルク。
ムアッ!と獣のような若い雄の汗の匂いに包まれる。
ここまで至近距離で宮下と応対したこと自体、1年前のあの時以来かもしれない。
俺の目線は宮下の顎にも届かない。
「……近ぇよ」
動揺を隠し後退する。
宮下が「悪い」と答えながら無造作にトロフィーを机に置き、腕を組んだ。
顔の幅よりもデカい凶悪な肩の筋肉から伸びる剥き出しの極太の腕。
上腕二頭筋と上腕三頭筋が岩のようにグググ……と盛り上がりはち切れそうだ。
腕周りは俺の腿より太そうだ。
青黒い太い血管がボコッ!と浮き上がっている。
縦のような前腕もグウッ…!!とアームレスラーのように膨らんでいる。
とても10代のバルクとは思えない…。
「吉岡、覚えてるよな?約束」
宮下の声は1年前より低く、遥かに深みが増していた。
成熟した雄の声。
一瞬白を切りそうになったが、耐えた。
「当然だ。どうする、今からやるか?」
勢いで自分の口から飛び出た言葉に、ドクンッと心臓が跳ねた。
「いや、今月末でもいいか?周り気にせずヤれる場所があるんだ」
知らず睨むように見返していた俺からあっさり視線を外し、宮下が傍らのボストンバッグから軽くクシャッたメモを取り出した。
「ここ。好きに使える」
予想外の展開に、言わられるがままに受け取ってしまう。
駅近くの雑居ビルの住所が書かれていた。地下2階。
「あ、ああ。俺もオフだから…」
俺が答えると、コクリと宮下は頷き、俺に背を向け片付け始めた。
シングレットをギチギチに引き伸ばす逆三角形の見上げるような分厚い広背筋。山のような僧帽筋を見せつけられる。
……予想外だった。
去年の宮下の様子からして、今すぐがっつくものだとばかり…。
黙々とした様子も宮下らしくない。
「………ははっ、俺とやるのにビビってんのか?」
緊張が解け、反動で軽口を叩いてしまう。
「大丈夫だって、軽く揉んでやるからよ」
そう言ってそのデカい背中をバシバシ叩く。
ゆっくりと振り返った宮下と目が合う。
あ、やばい。
そう反射的に思った。
「あのさ……」
身を起こした宮下がズシッ!と俺に近づいてくる。
俺を遥かに凌駕する圧倒的な体躯の影に包まれる。
「俺がどんだけ我慢してるか、わかってる?」
俺を見下ろす宮下は真顔だったが、ギリギリと奥歯を食いしばっているのが、太い首に浮き上がる腱でわかった。
蒸気機関のような熱い息を漏らす。
その静かな迫力に俺は思わず後退したが、宮下が何かを堪えるような笑みで言った
「今の俺が、吉岡にビビるわけないだろ…?」
という言葉に煽られ「あ?」と睨み上げると、「調子に乗んなよ」と両腕で思い切り宮下の胸板を突き飛ばした。
ドムンッ!!!
ドガッ!!!!ガタタッ!!!!!
「ぐっ……!?」
跳ね飛ばされたのは、俺だった。
グオッ!!と隆起した大胸筋はびくともせず、反作用で俺は足が浮くほど弾き返され、背中からロッカーに叩きつけられた。
1年前は俺に吹っ飛ばされていた宮下は、その筋肉だけで俺を弾き返し、ベタ足のまま1mmも動いていない。
衝撃の強さに息が詰まり、立ちそびれ崩れ落ちそうになる俺の襟首を、宮下のいつの間にかデカくなったグローブのような両手が掴み上げた。
「ぐ、ぅ……ッ!?お、おい……」
俺の足がバタバタと宙を搔く。
ボゴォッ!!!と上腕二頭筋が俺の頭よりデカく隆起した宮下の腕が、重機のようにびくともせずに俺を持ち上げている。
手首を掴んで引き剥がそうとするが、小揺るぎもしない。
「……あんまりさ、煽んないでくれよ」
宮下が強張った笑みを浮かべる。
「ほんとは今すぐここでヤリたいのを、必死で堪えてんだぞ?」
グッ!!!と得体のしれない太さと大きさの硬いモノが俺の吊るされた腿に押し付けられた。
そのサイズに、戦慄する。
これがチンコ…?
「怖い?」
宮下が苦笑した。だがその目はギラついている。グムッ!!!と更にその勃起が容積を増す。
完全に俺を下に見ている言葉に、噛みつき返さずにはいられない。
「や、やってみろよ、腰抜け…ッ!」
俺の言葉に宮下はうっそりと笑ったかと思うと、突然凄まじい勢いで俺を横のロッカーに叩きつけた。
ドガシャッ!!!!!
「ゲホッ!?!?」
宮下の怪力でロッカーがへし折れ、くの字に折れる。
ズタ袋のように四肢を垂らす俺をそのまま容赦なく、両側のロッカーに、二度三度、交互に叩きつけた。
ドガッ!!!!
ドゴッ!!!!
ズギャッ!!!!!
凄まじい破壊音で鉄製のロッカーが潰され、グチャグチャに変形する。
俺の体は痛みより衝撃によるショックと軽々とブン回されるスピードで頭を回していた。
「ははっ……軽いなぁ、吉岡」
クラつく俺を相変わらず吊し上げたまま、宮下がギラついた目で覗き込むように俺を見下ろす。
その目は、出会った時の、一方的に喧嘩相手を蹂躙していた時と同様の、しかし更に激烈な光を宿していた。
俺の全身が総毛立ったその時、「なんだ?どうした!?」と遠くから誰かがやってくる音がした。
ドサッ、と徐ろに宮下が俺を締め上げる鉄のような指を緩め、俺は受け身も取れず尻から床に落ちた。
「じゃあ月末。逃げないよな?」
ドシッ、と重い手を肩に置かれ最後にそうねじ込むと、宮下は俺を置いて、破壊したロッカーはそのままに、更衣室をでていった。